総括所見:フィンランド(第3回・2005年)


CRC/C/15/Add.272(2005年10月20日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年9月22日に開かれた第1068回および第1069回会合(CRC/C/SR.1068 and 1069参照)においてフィンランドの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.5)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080参照)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の第3回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/FIN/3)に対する文書回答の提出により、委員会がフィンランドの子どもの状況に関する理解をいっそう明確なものにできたことを歓迎する。委員会は、部門横断型の代表団が出席し、追加的情報を提供してくれたことを評価するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下の点に評価の意とともに留意する。
  • (a) 未成年者の事情聴取に関するガイドラインの採択(2002年3月)。
  • (b) 子どもオンブズマン職の設置(2005年9月)。
  • (c) 国家行動計画「子どもにふさわしいフィンランド」の採択(2005年)。
  • (d) 人身取引対策行動計画の完成(2005年3月31日)。
4.委員会はまた、以下の文書の批准も歓迎する。
  • (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年5月10日)。
  • (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(2000年1月17日)。
  • (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2000年12月29日)。

C.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
5.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.3)の検討後に表明されたさまざまな懸念および勧告(CRC/C/15/Add.132参照)への対応が立法上、行政上その他の措置を通じて行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、一部の懸念表明および勧告、とくに子どもに関わる調整のとれた政策、子どもに対する暴力(性的虐待を含む)および民族的マイノリティに属する子どもに関するものについて不十分なまたは部分的な対応しかとられていないことを、遺憾に思うものである。
6.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた一連の懸念表明に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
調整/国家的行動計画
7.委員会は、子どもの権利のいっそう全面的な実施を達成しようとするいくつかのプログラムに留意するとともに、子どもに関する総会特別会期(2002年5月)で採択された最終文書「子どもにふさわしい世界」に基づく包括的な国家行動計画「子どもにふさわしいフィンランド」を歓迎するものの、これらの諸計画間の調整が十分ではないことを懸念する。
8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国家行動計画において、条約に掲げられた子どもの権利に対する志向が明確にされることを確保すること。
  • (b) その実施のために十分な予算を用意すること。
  • (c) 子どもの権利の実施に対する縦割り的アプローチを克服するため、他のあらゆる行動計画およびプログラムを国家行動計画の調整下に置くこと。
  • (d) 新たに設置された子どもオンブズマンに対し、国家行動計画を監視し、かつ達成された進展を評価する権限を与えること。
独立の監視
9.委員会は、2005年9月の段階で子どもオンブズマン職が設置されたこと、および、幅広い専門領域を代表し、かつNGOの代表も参加する諮問委員会が――オンブズマンの活動を支援する目的で――設けられたことを歓迎する。しかしながら委員会は、オンブズマンの権限が主として条約に関する普及促進活動および助言サービスに焦点を当てたものとなっており、個別事案には対応しない(個別事案の調査は依然として議会オンブズマンの権限であるとされる)ことにも留意するものである。
10.委員会は以下のことを勧告する。
  • (a) 独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)にしたがって子どもオンブズマンの権限を拡大し、子どもからの苦情を受理しかつ調査する権能も含めること。
  • (b) 子どもオンブズマン事務所が国内全域で条約の実施を効果的に監視できるよう、締約国が、十分な人的資源および財源をもって同事務所を支援すること。
  • (c) 子どもオンブズマンの年次報告書は、その勧告を実施するために政府がとろうとしている措置についての情報とともに議会に提出され、かつ議会における討議の対象とされるべきこと。
子どものための資源
11.委員会は、地方当局が広範な自治権限を有していることから、国内全域で子どものための資源の平等性およびサービスの利用可能性を確保するために変革が必要である旨の、締約国の懸念を共有する。
12.委員会は、締約国が、子どものために提供される資源について評価しかつ分析するための研究を行なうとともに、必要に応じ、すべての子どもが、どの自治体に住んでいるかに関わらず、サービスに平等にアクセスできかつサービスを利用できることを確保するための効果的措置を引き続きとるよう、勧告する。
データ収集
13.委員会は、子どもに関する統計の作成において、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子ども(とりわけ障害児、子どもの庇護希望者、法律に抵触した子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもなど)との関連で調整および恒常性が欠けていることに、懸念とともに留意する。
14.委員会は、子どもの生活条件およびその権利の実施に関する詳細な分析を可能とする目的で、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもについてのデータを包括的に収集するためのシステムを発展させる努力を引き続き行なうよう、勧告する。
研修/条約の普及
15.委員会は、条約に関する情報の普及をおおむね市民社会が担当しているままであることに留意するとともに、条約が、マイノリティおよび移民が使用している言語によって容易に入手可能とされていないことを懸念する。さらに委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした条約に関する研修が依然として不十分であることを、懸念するものである。
16.委員会は、締約国に対し、移民および先住民族マイノリティ、民族的または言語的マイノリティのような脆弱な立場に置かれた集団の間における普及にとくに注意を払いながら、学校カリキュラム等も通じて条約をさらに普及するとともに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続するよう、奨励する。

2.一般原則

差別の禁止
17.2005年2月に反差別法が施行されたことは歓迎しながらも、委員会は、移民およびその他のマイノリティ集団(とくにロマ)との関連で、差別的および排外主義的態度ならびに日常生活における事実上の差別が残っており、かつ若者の間で高まりつつあることを懸念する。
18.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子ども(ロマおよび外国人の子どもを含む)に対するあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための努力を継続しかつ強化するとともに、差別的態度に関わる若者の教育にとくに注意を払うよう、勧告する。
19.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。
子どもの最善の利益
20.子どもの最善の利益が法律でしばしば考慮されていること(たとえば、新外国人法第6条で子どもの特別な状況が明示的に認められていることを含む)には留意しながらも、委員会は、この原則が、子どもに影響を与えるすべての政策領域において、実際上も十分に尊重されかつ実施されているわけではないことを、懸念する。
21.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の一般原則が理解され、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに直接間接の影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて適切に統合されかつ実施されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。
子どもの意見の尊重
22.委員会は、法的手続、たとえば監護または子どもの保護に関する措置において子どもの意見を聴くための規則に関する情報に留意するものの、裁判官/裁判所によって直接意見を聴取される権利を有しているのは15歳以上の子どものみであることを懸念する。当該年齢に満たない子どもについては、直接意見を聴取するかどうかは裁判官の裁量に委ねられている。直接の意見聴取が行なわれず、子どもの意見が第三者を通じて裁判所に提出される場合、子どもが当該第三者によって直接意見を聴取されていない場合がある。
23.委員会は、条約第12条が全面的に実施されること、とくに、子どもに影響を与える司法上および(または)行政上の手続において決定が行なわれなければならない際、子どもが裁判官に対して直接自己の意見を表明する権利が認められることを確保するため、締約国が立法上その他の措置をとるよう勧告する。

3.市民的権利および自由

適切な情報へのアクセス
24.マスメディアにおける表現の自由の行使に関する法律(第460/2003号)をはじめ、締約国がこの点について行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、とくにインターネットを通じて、子どもが暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされていることについて懸念を表明する。
25.委員会は、締約国が、移動通信技術、ビデオ映画およびゲームその他のテクノロジー(インターネットを含む)を通じて暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされることから子どもを効果的に保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、移動通信技術、メディア広告およびインターネットを、子どもの福祉にとって有害となる情報および資料について子どもおよび親双方の意識を高めるための手段として活用するためのプログラムおよび戦略を発展させるよう、勧告するものである。締約国は、メディアの有害な情報にさらされることから子どもを保護し、かつ子ども向けの情報の質を向上させる目的で、ジャーナリストおよびメディアとの取決めおよびプロジェクトを発展させるよう、奨励される。

4.家庭環境および代替的養護

親の責任
26.委員会は、フィンランドにおける監護紛争が非常に長く続き、そのための子どもに悪影響が生じる可能性があることに留意する。
27.委員会は、子どもの監護をめぐる紛争が適当な期間内に解決されるべきこと、および、離婚家族の支援活動に、訓練を受けた専門家による支援サービスが含まれるべきことを勧告する。
代替的養護
28.委員会は、子どもがしばしばその意見を十分に考慮されることなく代替的養護に措置されていることに留意するとともに、公的機関が根本的な親子のきずなの維持を必ずしも十分に支援していないことを懸念する。さらに、新たな「子どもの福祉発展プログラム」には留意しながらも、委員会は、代替的養護に措置される子どもが増えていることについての前回の懸念をあらためて表明するものである。
29.委員会は、締約国が、親に対する十分な支援等も通じ、代替的養護に措置される子どもの人数の増加の根本的原因に対応するよう勧告する。締約国はまた、子どもが施設で育てられるときは、小集団で生活し、かつ個別のケアを受けることも確保するべきである。
30.委員会はまた、締約国が、代替的養護への措置に関わるいかなる決定においても子どもの意見を十分に考慮に入れることも勧告する。さらに委員会は、代替的養護への措置によって親子関係に悪影響が生じるべきではないことを勧告するものである。
暴力、虐待およびネグレクト
31.1997~2002年の暴力防止キャンペーンおよび2004~2007年に予定されている第2回キャンペーンは称賛しながらも、委員会は、子どもに対する暴力および家庭内の性的虐待がフィンランドにおける子どもの権利の全面的実施を妨げるもっとも重大な要因のひとつになっているという、フィンランド議会オンブズマンの懸念を共有する。
32.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) あらゆる形態の子どもの虐待を防止しかつこれと闘う目的で、子どもの関与を得ながら意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを強化すること。
  • (b) フリーダイヤルの全国的ヘルプライン「子ども・若者フォン」に対する支援およびこれとの連携を増強すること。
  • (c) 子どもの虐待の事案の通報を奨励し(代替的養護を受けている子どもにそのための機会を与える等の手段によるものも含む)、かつこれらの行為の加害者を訴追するための措置を強化すること。
  • (d) 暴力の被害を受けた子どもに対し、ケア、全面的な身体的および心理的回復ならびに再統合を引き続き提供すること。
33.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の継続的かつ詳細な研究および政府に対して送付された関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、同地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。

5.基礎保健および福祉

健康および保健ケア・サービスへのアクセス
34.委員会は、子どものアルコール消費が増えており、かつ体重過多および肥満の子どもの人数が増加していることに懸念を表明する。
35.委員会は、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)に照らし、締約国が、子どもおよび青少年の健康、とくに子どものアルコール消費の問題に対応するための措置を強化するとともに、保健プログラム(とくに青少年の間で健康的なライフスタイルを促進することを目的としたものであるべきである)についての活動をさらに進めるよう、勧告する。
36.この点に関する締約国の努力は認知しながらも、委員会は、青少年の自殺率が高いことをいまなお懸念する。
37.委員会は、締約国が、青少年の自殺を防止し、かつ精神保健ケア・サービスを強化するための措置を増強するよう勧告する。
38.委員会はまた、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)について誤診が行なわれており、そのため、精神刺激薬の有害な作用に関する証拠が増えているにも関わらずこれらの薬が過剰に処方されているという情報があることも懸念する。
39.委員会は、ADHDおよびADDの診断および治療についてさらなる調査研究(子どもの身体的および心理的ウェルビーイングに対する精神刺激薬の悪影響の可能性も含む)を行なうとともに、これらの行動障害への対応に、できるかぎりその他の形態の管理および治療を用いることを勧告する。
生活水準
40.貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画(2003~2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもがいる家族のうち貧困下で暮らす家族の数が増えていること、および、金銭的援助および支援が必ずしも経済成長と軌を一にしていないことを、懸念する。
41.委員会は、締約国が、貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画を効果的に実施するとともに、金銭的援助およびそれ以外の援助を提供することにより、貧困が削減され、かつ経済的苦境が子どもの発達に及ぼす悪影響から子どもが保護されることを確保する目的で、経済的苦境下で暮らしている家族のための支援を強化するよう、勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動

42.この点に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は、ロマの子どもが高い率で学校から中退しており、かつ教育へのアクセスの面で困難に直面しているため、その発達および将来の雇用へのアクセスに悪影響が生じていることに懸念を表明する。加えて、委員会はまた、ロマ語の教員および就学前教材が存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。
43.委員会は、締約国が、条約第28条および第29条が国内全域のすべての子ども(ロマの子どものような、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもも含む)を対象として全面的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
44.委員会は、初等中等学校の全国カリキュラムに人権教育が統合されたことを歓迎するものの、この科目を含めるかどうかがいまなお最終的には教員の決定次第とされていることから、すべての子どもが人権教育(子どもの権利に関するものも含む)を受けているわけではない可能性があることを、懸念する。
45.委員会は、締約国が、人権教育が学校でどの程度利用可能とされているかについて検討するとともに、すべての子どもが、人権について教えられるのみならず、人権に関する基準および価値観が家庭、学校またはコミュニティのいずれであっても現実に実施されるプロジェクトにも参加することを確保するよう、勧告する。
46.委員会は、学校における暴力およびいじめに取り組むために締約国がとった措置(すべての学校がいじめおよび暴力に反対する行動計画を策定しなければならないとする要件の導入も含む)は歓迎しつつ、これらの行動が、とくに障害のある子どもおよび親が障害者である子どもに対していまなおきわめて一般的に行なわれていることを懸念する。
47.委員会は、締約国が、学校で醸成されている友人関係の質について生徒、職員および親に対する定期的調査を行なう等の手段により、子どもの全面的参加を得ながら、学校におけるいじめおよび暴力の現象と闘うための適当な措置を引き続きとるよう勧告する。障害のある子どもおよび親が障害者である子どもに対するいじめおよび暴力に対し、とくに焦点が当てられるべきである。

7.特別な保護措置

子どもの庇護希望者
48.委員会は、子どもの庇護希望者の地位を向上させ、かつそのニーズに対していっそう注意が払われることを確保する目的で、〔欧州連合〕理事会指令2003/9/ECを編入する、移民の統合および庇護希望者の受け入れに関する法律の改正が、2005年6月に採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、現行外国人法に基づいた一部カテゴリーの庇護申請に適用されるいわゆる「迅速手続」が、子どもに悪影響を及ぼす可能性があることを懸念するものである。
49.保護者のいない子どもの申請を処理するために要する期間が相当に短縮されたことは歓迎しながらも、委員会は、家族再統合のために必要な期間が依然として長すぎることをいまなお懸念する。
50.委員会は、締約国が、いわゆる「迅速手続」において庇護希望者のための適正手続および法的保障が尊重されることを確保するよう、勧告する。
51.委員会はまた、締約国が、条約第10条にしたがい、家族再統合を目的とする申請を積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱うことも勧告する。
性的搾取および人身取引
52.フィンランド法に人身取引罪を導入した最近の刑法改正、ならびに、子どもの商業的性的搾取と闘う国家行動計画(2000年)および人身取引対策行動計画(2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもを含む人が、同国へおよび同国を通過する形で引き続き取引されている旨の情報があることを懸念する。
53.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、性的目的およびその他の搾取的目的で行なわれる子どもの人身取引を発見し、防止しかつこれと闘うための努力をさらに強化するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書への加盟を検討すること。
  • (b) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加盟を検討すること。
少年司法の運営
54.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) とくに重大な事情がある場合に子どもが「無条件の収監」刑を言い渡される可能性があること。
  • (b) 条約第37条(c)の全面的実施を阻害する可能性がある、市民的および政治的権利に関する国際規約第10条2項(b)および3項に対する留保を、締約国が維持していること。
55.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約(とくに37条、第40条および第39条)および少年司法分野における他の国連基準(少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む)ならびに委員会が少年司法に関する一般的討議の際に行なった勧告(CRC/C/46、パラ203-238)と全面的に一致させるよう、勧告する。これとの関連で、委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 18歳未満の子どもの自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い期間でのみ行なわれ、かつ、このような子どもが収容中に成人から分離されることを確保するため、引き続きあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 条約の全面的実施を確保するため、市民的および政治的権利に関する国際規約第10条2項(b)および3項に付した留保の撤回を検討すること。
マイノリティ集団に属する子ども
56.委員会は、フィンランド人の子どもとロマの子どもとの間の格差が引き続き存在し、ロマの子どもによる権利(とくに住居および教育に対する権利)の全面的享受に深刻な影響が生じていることに、懸念を表明する。
57.委員会は、締約国が、ロマの子どもの社会的包摂に向けた措置を引き続きとり、かつロマの子どもの周縁化およびスティグマと引き続き闘うよう、勧告する。さらに、ロマの子どもが条約に掲げられた権利を(とくに教育へのアクセスおよび十分な生活水準との関連で)全面的に享受することを確保するため、追加的措置が必要である。

8.子どもの権利条約の選択議定書

58.委員会は、対話の際に締約国が表明した、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が間もなく批准される旨の言明を歓迎する。
59.委員会は、締約国が、可能なかぎり早期に子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の加盟国となるよう、勧告する。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
60.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府の構成員、議会ならびに適用可能なときは自治体の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
61.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

62.委員会は、締約国の定期的なかつ時宜を得た報告を評価するとともに、締約国に対し、2008年7月19日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/118参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年3月23日)。
最終更新:2012年03月23日 10:26