オープニング

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オープニング ◆Fy3pQ9dH66



――そこは異質な光景だった。

寝起きのせいかまだ頭がはっきりしない。
寝る前の事を思い出そうとゆっくり身体を起こした俺は、やっと何かがおかしいことに気づくことが出来た。
上を見上げれば透き通るような青空が広がっている。
太陽も燦燦と光り輝いている。
にもかかわらず、だ。
影の中にでも居るように……いや違う。
むしろクレヨンかなにかでそこだけ塗りつぶされたかのように真っ黒な人影が居た。
叫んでいる影。
黙って考え込んでいる仕草の影。
不安に駆られ泣いている影。
三者三様でそれが本当かは確認することは出来なかったが、声や動きからそんな想像だけは出来た。
さらに見渡すと寝転がっていた影も次々と起き上がっていた。
そしてみな同じような行動を取る。
俺も傍から見ればそんな感じだったんだろうか。
違う、そもそもそこは重要じゃない。
とにかく何で俺はこんなところに居るんだろう。
昨日……は――

「全員が起きたようじゃの」

どこからとも無く聞こえてきた声に周囲のざわめきが止まった。
俺も声のした方に思わず目を見やる。
正面……ではない。それは俺の身体よりずっと上に居た。
真っ白い玉が宙に浮かび、だんだんと降下しているのがわかった。
ゆっくりとゆっくりと目線の高さまで降りてきたそれには、笑顔でトウモロコシを頬張っている少女の姿があった。
口調こそは年寄りがかってはいるものの、外見こそは歳幾ばくも無い少女だった。

褐色の可愛らしい笑顔に少し緊張が緩んだのもつかの間。
「さて、と。簡単に言うぞ?」
そう言って彼女は立ち上がり――
「御主等にはこれから最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう」
目の前の少女が口に出すにはあまりにも似つかわしくない単語に呆然としてしまった。

――コロシアイ?
彼女が何を言っているのか理解出来ない。
その時の自分はよほど間抜けな顔をしていたんじゃないかとさえ思う。
息を呑むような物音が周りからも聞こえた。
少しずつ波となり静寂を多い尽くす罵声・怒号へと変化するまで時間はかからなかった。
ふざけるなと言った内容の言葉が所々から飛び出している。
だが少女は気にも留めず再び口を開く。
「……話の途中じゃ、囀るでない」
ボソッと呟いたものに過ぎなかったその声が、今までのどの叫び声よりも大きく耳に響いていた。
他の人もそうなのだろうか?
まだ言葉を発しているものも多少はいるが、その声もむしろ独り言に近しい。
「ムルムルッ!」
空気が変わったような一瞬の間に割り込むようにまた一つの声が発せられる。
その言葉に目の前の少女の視線が一つの影へと移された。
声からして男、とは言ってもまだ声変わり前のような幼い声だが。
「1stか」
ムルムルと呼ばれた少女も口を開く。
「どうなってるんだよこれは? 日記は? デウスは!?」
日記? デウス? またわからない単語が出てきた。
わからないことばかりだ。
周りの人間もそうなんだろう。
気づけば周りはしんと静まり返り二人の会話だけが進んでいく。

「――デウスはもういない」
「なっ!?」
「そして新しい神が新しくゲームを開いただけじゃ。
人数は大幅に増えてしまったがな。やる事は今までと大して変わらんよ。
悪いが1st、お前一人に長々と説明する時間は無いんじゃ。
最後まで生き残った時に改めて説明してやるから頑張ってみせよ」
「……っ!」

「――さて、少しお喋りが過ぎたようじゃが勘の良い者は何か感じたものがあったかもしれん。
だが儂はその件に関して説明する気はさらさら無い。御主等には関係ない話なので時間の無駄じゃ。
必要なのは……これから殺しあってもらうと言う現実を認識してもらう事だけじゃ」
「ふざけんじゃないわよ! いきなりそんなこと言われてはいそうですかって納得なんか出来――」
誰かがそう叫んだ――直後。
「……彼女の言葉聞いてませんでした? 人の話はちゃんと聞かないとダメですよ? でないと……」
突如空中にピエロのような風体の男が現れ、そしてスポットライトに照らされたように叫んだ女性の姿が浮かび上がる。
「こうなります」
男の満面の笑みと共に一筋の光が流れ落ち、視界が真っ白に覆われ思わず目を覆う。
そして開いた時には――再び影のように真っ黒くなった女性の姿があった。
いや違う、影に戻ったのではない。
「麻子ぉぉぉぉぉっ!!」
絶叫……そして時が止まったかのように静まり返る空間。
焼け焦げた匂いが鼻をくすぐり――不快さに胃の中の物を吐き出しそうになった。
「雷公鞭か……申公豹! お主も何故このような事をするんじゃ!」
「師叔……私も二度は言いません。ですので聞きたいことがあればこれが終わってからゆっくりと聞きますよ。
これ以上無駄なことに時間を取られるのは御免ですので」
呼びかけに対し変わらぬ笑みを浮かべながら告げる申公豹と呼ばれた男。
「他の皆様も、これ以上の発言は同じような目にあってもらいますので、口はしっかり閉じてくださいね」

……最早口を開くものは誰も居なかった。

「……続けよう。とは言ってもルールは簡単じゃ。
我等二人を除く、この中の人間が最後の一人になればそこでゲーム終了。その過程においては何の反則も無い。
ただし少しでも公正さをきす為に細工をさせてもらっておる。
身体の動きが鈍いと感じているものはおらんか? 力が使えないと思っているものは?
ここまで言えばわかるじゃろう?
そして生き残るために食料や地図など必要最低必要限なもの、そして武器も用意した。
当たりや外れもあるとは思うがそれは使い手しだいじゃな。
後は……6時間ごとに誰が死んだかを放送する。
その時同時に入れなくなる場所も放送するので聞き逃さないことじゃ。もしそこにいてしまったら――」
ムルムルはそう言い放つと、持っていたトウモロコシを宙へと放り投げた。
ゆっくりと放物線を描きながら――
「っ?」
影の中の一人に当たると同時に、一人の少年の姿が浮かび上がる。
さきほどの麻子と呼ばれた少女と全く同じシチュエーション。
「お主も運が無いのう……まあこれも運命じゃ、諦めてくれい」
「何をしようとしてるかは知らないけど、さっきの子みたいにはならないぜ?
俺は何があっても歩以外には殺――」

ボンッ

時間で測ればほんの数秒の出来事。
瞬きを数回すれば過ぎてしまう時間の中でそれは起こった。
爆発音と共に少年の頭が彼自身の足元にへと落ちコロコロと転がる。
そして一瞬の間を置いて少年の身体が糸を切られたように崩れ落ちて行った。
分かたれたその表情・その目は、自分が死んだことを理解する暇さえなかったのが見て取れる。
亡骸となった少年の名を呼ぶ声と、恐怖に駆られた悲鳴と、不愉快になりそうな微かな笑い声とが聞こえてくる。
俺はどれでもなく、目を反らす事も出来ずにただ呆然と立ち尽くしていた。

誰かこの状況を説明してくれ、と。

「――と、まあこんなわけで、御主等の首につけた首輪が爆発する。
外そうとしたり強い衝撃を与えても爆発するから気をつけるようにしたほうがいいのう。
24時間死者が出ない場合も然り、全員に参加の意思なしとみなし強制終了として死んでもらう」

そう言う説明が欲しいわけじゃない。

「ああそうじゃ、誰が参加しているかわかるような名簿も配るつもりじゃ。
ただしそれが読めるようになるのは最初の放送が終わってからになるがな。
知り合いがおらんことを祈っておれ」

でも俺にはムルムルの言葉に黙って耳を傾けることしか選ぶ道が無かった。

「――こんな所かの」
二人が顔を合わせ、小さく頷く。
「それではみなさんには会場へと移動していただきましょう。立っていた場所がスタート地点になります。
合図と同時にそれぞれのスタート地点に飛ばします。あ、危険なことはありませんのでご安心を」

「それではサバイバルゲームの始まりじゃ」

ムルムルの言葉を最後に、俺は見知らぬ場所へ立っていた。
何が何やらわからないが一つだけ確かなことがある。
まだ夢を見ているだけなのかもしれない……でも

仮にこれが現実であるならば


俺は何かわけのわからない事に巻き込まれてしまった


『殺し合いゲーム』と呼ばれる何かに――


GAME START




【中村麻子@うしおととら】死亡
【ミズシロ火澄@スパイラル~推理の絆~】死亡



【一日目 00:00 {第十三因果律大聖堂}】
【ムルムル@未来日記】
【申公豹@封神演義】

【備考】
以降首輪のついている限り大聖堂への入場は出来ない


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