総括所見:韓国(OPAC・2008年)


CRC/C/OPAC/KOR/CO/1(2008年6月27日)
原文:英語(平野裕二仮訳)


1.委員会は、2008年5月23日に開かれた第1322回会合(CRC/C/SR.1322)において大韓民国の第1回報告書(CRC/C/OPSC/KOR/1)を検討し、2008年6月6日に開かれた第1342回会合(CRC/C/SR.1342)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関して大韓民国で適用される立法上、行政上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPSC/KOR/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の代表団が、建設的対話のために必要な若干の情報を有していなかったことを遺憾に思うものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2003年1月15日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.197)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して2008年6月6日に採択された総括所見(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

4.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。
  • (a) 締約国が選択議定書の批准時に行なった、大韓民国国軍への志願入隊に関する最低年齢は18歳である旨の宣言。
  • (b) 兵役法第14条第1項の改正(2004年12月)による、軍への志願入営に関する最低年齢の17歳から18歳への引き上げ。
  • (c) 空軍規則の改正による、18歳未満の者が武力紛争に関与することを認める規定の削除。
  • (d) 子どもの権利モニタリング・センターの設置(2006年)。
5.委員会は、締約国が以下の文書を批准しまたはこれに加入したことを歓迎する。
  • (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(2004年9月)。
  • (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2006年10月)。
  • (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年11月)。
6.さらに委員会は、締約国が国際協力の分野で行なっている活動(武力紛争に関与する子どもを保護するための行動に対する財政支援の提供も含む)に、評価の意とともに留意する。

I.実施に関する一般的措置

普及および研修
7.委員会は、学校カリキュラムにおける人権教育および一般公衆を対象とする人権教育を促進するために大韓民国国家人権委員会(NHRCK)が行なってきたさまざまな取り組みを歓迎しながらも、選択議定書で対象とされている問題についての情報の普及および研修(軍事学校のカリキュラムおよび平和維持要員を対象とする派遣前研修プログラムを含む)に関する情報が締約国から提供されなかったことを遺憾に思う。
8.委員会は、締約国が、第6条2項に照らし、選択議定書の原則および規定が、軍事学校のカリキュラムに含まれ、かつメディアを含む適当な手段により一般公衆および国の職員ならびに軍の要員および平和維持要員に対して広く普及されることを確保するよう、勧告する。
9.委員会はまた、締約国が、保健従事者、ソーシャルワーカー、教職員、弁護士、裁判官および出入国管理官のような、子どもとともにおよび子どものために活動しているすべての関連の専門家集団(武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および難民とともに活動している専門家集団を含む)を対象として、議定書の規定に関する意識啓発、教育および研修のための体系的プログラムを発展させるようにも勧告する。
独立の国内人権機関
10.委員会は、NHRCKの独立を維持するという、締約国が2008年2月20日に行なった決定を歓迎するとともに、同委員会が、国の代理人(軍隊を含む)による個別の子どもの権利侵害を監視する権限を有していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、NHRCK内に、選択議定書の十分な監視および促進を可能にするであろう子どもの権利部局が存在しないことを遺憾に思うものである。
11.委員会は、第2回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.197、パラ18)で述べたことを繰り返しつつ、締約国が、NHRCKに対し、選択議定書を十分に監視しおよび促進し、ならびに子どもにとっての可視性およびアクセス可能性を高めるための意識啓発措置をとる子どもの権利部局を設置できるような、必要な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。

II.禁止および関連の事項

立法
12.委員会は、兵役法第14条第1項の改正(2004年12月)により、志願入営に関する最低年齢が17歳から18歳へと修正されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、18歳未満の者を義務的に徴募しまたは敵対行為に参加させることを犯罪とする具体的規定がないことを、依然として懸念するものである。
13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの徴募および敵対行為への子どもの関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律により明示的に禁ずること。
  • (b) すべての法律が選択議定書の規定と全面的に調和させられることを確保すること。
  • (c) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること。
裁判権
14.委員会は、締約国の国内法に、15歳未満の子どもを軍隊または武装集団に徴募することについて域外裁判権を行使できる旨の規定があることを歓迎する。
15.軍隊もしくは武装集団への子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国が、とくに二国間または多国間協定を締結することにより、子どもを徴募する犯罪および子どもを敵対行為に参加させる犯罪についても域外裁判権を設定することを検討するよう、勧告する。

III.保護、回復および再統合

被害者である子どもの権利を保護するためにとられた措置
16.朝鮮民主主義人民共和国からやってきた子どもは庇護希望者である子どもとは見なされず、かつ保護者のいない子どもが締約国に到着した事例は報告されていないという締約国の立場には留意しながらも、委員会は、徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもの庇護希望者および難民を特定するための機構が存在しないことを依然として懸念し、かつ、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための具体的戦略が存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、紛争地域出身である子どもの庇護希望者を対象とするものも含め、締約国による庇護認定率が著しく低いことに、懸念とともに留意するものである。
17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 大韓民国に入国する子どもの難民および庇護希望者のうち国外で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある者を、可能なかぎり早い段階で体系的に特定できるようにするための機構を導入すること。
  • (b) このような子どもの状況のアセスメントを慎重に行なうとともに、選択議定書第6条第3項にしたがい、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に配慮された、かつ分野横断的な援助を提供すること。
  • (c) 自国の管轄内にある子どもの難民および庇護希望者であって、母国で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある者に関するデータを体系的に収集すること。
  • (d) この点に関わってとられた措置に関する情報を次回報告書に記載すること。
18.委員会はさらに、締約国が、徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある朝鮮民主主義共和国出身の子どもの特別な脆弱性を考慮するとともに、選択議定書第6条第3項、および、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮に入れ、このような子どもに特別な保護および援助措置を与えるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある朝鮮民主主義共和国出身の子どもであって締約国の保護を求める者が強制送還されないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるようにも促すものである。

IV.国際的援助および協力

国際協力
19.委員会は、武力紛争に関与した子どもの保護および支援を目的とする多国間および二国間の活動に対する財政支援について、締約国を賞賛する。
20.委員会はまた、締約国に対し、武力紛争における子どもの保護のための行動に対する財政支援の提供を含む、国際協力の分野における活動を継続するよう奨励する。委員会はまた、子ども、およびとくに武力紛争に関与する子どもに関する援助支出の評価および監視を可能にするため、締約国が、韓国国際協力団(KOICA)が提供する援助に関わる財政データの細分化を検討することも勧告するものである。
武器輸出および軍事援助
21.小型武器および弾薬の輸出を統制するための締約国の法律およびプログラムは歓迎しながらも、委員会は、18歳に達していない者が国の軍隊または国の軍隊とは異なる武装集団の構成員として敵対行為に直接参加している国への輸出を禁ずる具体的法律が存在しないことを懸念する。
22.委員会は、締約国が、現在のまたは最近の武力紛争において子どもを参加者として関与させているまたは関与させていた可能性がある国への小型武器および軽兵器の貿易を禁ずる、関連の法律を制定するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、国内法がどのように改正されたか、および、当該改正の実施がこれらの国への小型武器の販売を停止させることにどのように寄与したかについて、次回定期報告書で明らかにするよう勧告するものである。

V.フォローアップおよび普及

23.委員会は、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、国会議員、国務会議、国防部および適用可能なときは第1級行政区画の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
24.加えて、選択議定書第6条第2項に照らし、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。
25.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合報告書(提出期限・2008年12月19日)に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年8月18日)。
最終更新:2011年08月18日 22:10