総括所見:韓国(第2回・2003年)


CRC/C/15/Add.197(2003年3月18日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2003年1月15日に開かれた第838回および第839回会合(CRC/C/SR.838 and 839参照)において、2000年5月1日に提出された大韓民国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.14)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の第2回定期報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/REPKO/2)に対する詳細な文書回答の提出により、締約国における子どもの状況についてより明確な理解が得られたことを歓迎する。委員会はさらに、締約国がいくつかの部門から選ばれたハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、討議中に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。

B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、子どもの権利条約をさらに実施するために制定された法律、とくに、児童虐待事案の調査および通報について扱うドメスティック・バイオレンスの処罰のための特別法(1997年)、および、19歳未満の者からの性的サービスの購入に関与した者を犯罪化する青少年保護法(2000年)を歓迎する。
4.委員会は、2001年に国家人権委員会が設置されたことを歓迎する。
5.委員会は、委員会が過去に勧告したように、締約国がそれぞれ1999年および2001年にILO第138号条約および第182号条約を批准したことならびに最低就業年齢を15歳に引き上げたことを歓迎する。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

6.委員会は、1997年のアジア金融危機およびその後に行なわれた国際通貨基金の構造調整改革プログラムにより締約国が経済的および財政的制約に直面し、そのため経済的、社会的および文化的権利を実施する締約国の能力に影響が生じてきたことを認知する。委員会はまた、厳格な財政緊縮措置によって締約国が時宜を得たやり方で国際融資を返済できてきたこと、および、経済がおおむね回復したことにも留意するものである。

D.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.21)の検討を受けて採択された総括所見(CRC/C/15/Add.51)の勧告のほとんど、とくに以下の事項に関わる勧告が不十分にしか対応されていないことを遺憾に思う。
  • (a) 留保の撤回(パラ19)。
  • (b) 女子、障害児および婚外子に対する差別的態度と闘うための公衆教育キャンペーンの発展(パラ20)。
  • (c) 家庭、学校および社会生活への子どもの参加を促進するための措置(パラ26)。
  • (d) あらゆる形態の体罰の禁止(パラ22)。
  • (e) 条約第29条に掲げられた教育の目的を全面的に反映させることを目的とした、締約国の教育政策の見直し(パラ29)。
8.委員会は、これらの懸念をあらためて表明するとともに、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために持続的努力を行なうよう、促す。
留保
9.委員会は、第9条第3項、第21条(a)および第40条第2項(b)(v)に対する締約国の留保を、依然として非常に懸念する。
10.委員会は、犯罪を行なったことを理由として刑を言い渡された少年が上訴権を有することに留意しつつ、締約国に対し、第40条第2項(b)(v)に対して付した留保を可能なかぎり早期に撤回するよう奨励する。締約国はまた、1993年に採択されたウィーン宣言および行動計画にしたがって第21条(a)および第9条第3項に対する留保を撤回する目的で、子どもおよび親の双方が相互に接触を維持する権利を保障されるように民法改正のプロセスを進捗させること、および、国内養子縁組に対する公衆の態度を変革するための努力を強化することも奨励されるところである。
立法
11.委員会は、国内法の改正に留意しながらも、国内法がいまなお条約の規定および原則に全面的に一致していないことを依然として懸念する。
12.委員会は、締約国に対し、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう奨励する。
調整
13.委員会は、第8次社会経済開発5か年計画(1998~2002年)に、子どもに関する国家行動計画が含まれていることに留意する。しかし委員会は、種々の行政段階においてさまざまな省庁が運営している子どものためのあらゆる政策およびプログラムを調整する全面的権限を与えられた常設の中央機構が存在しないことを、依然として懸念するものである。
14.委員会は、締約国が、2001年に策定された「子どもの保護および子育てのための包括的計画」の適用範囲を拡大し、条約に基づくあらゆる権利、および、子どもに関する国際連合総会特別会期(2002年5月)で行なわれ、かつ「子どもにふさわしい世界」と題された成果文書に記載されたコミットメントを含めるよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、子どものためのあらゆる政策およびプログラムの調整を担当する常設の中央機構をひとつ指定するとともに、当該機構がその責務を効果的に履行するのに必要な権限ならびに十分な財源、人的資源および物質的資源を有することを確保するよう、勧告するものである。
公的機関による監視
15.委員会は、締約国が条約の実施を監視するための常設機関を政府内に設置することを検討している旨の、代表団から提供された情報を歓迎する。
15.委員会は、締約国がそのような監視機構の設置を進捗させ、かつ条約実施におけるその活動を積極的に監視するよう、勧告する。
独立の監視
17.委員会は、前掲パラ4に述べたとおり、国家人権委員会が設置されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、同委員会が子どもの権利についての専門性を何ら有していないことを懸念するものである。
18.委員会は、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(「パリ原則」)(国連総会決議48/134付属文書)および国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがって、次のことをするよう勧告する。
  • (a) 人権委員に子どもの権利の専門家が少なくとも1名いること、または同委員会が子どもの権利に関する小委員会を設けることを確保すること。
  • (b) とくに、子どもによる苦情申立てを子どもに配慮した方法で受理し、調査しかつこれに対応する同委員会の権限に関する意識を啓発することにより、国家人権委員会が子どもにとってアクセスしやすいものであることを確保すること。
資源配分
19.委員会は、この2年間の経済的回復にもかかわらず、子どものための中央予算の配分が、とくに健康および教育の分野において1997年以来着実に減少していることに、懸念とともに留意する。現在の支出水準は、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応するには不十分であり、かつ、同様の経済発展水準にある他の国々の予算配分に匹敵していない。
20.委員会は、締約国が、以下の対応をとることにより、条約第4条の全面的に実施に特段の注意を払うよう勧告する。
  • (a) 「利用可能な資源を最大限に用いることにより」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させること。
  • (b) 支出の影響を評価する目的で、かつさまざまな部門で子どもに提供されているサービスの費用、アクセス可能性、質および実効性の観点からも、公共部門、民間部門およびNGO部門において子どもに用いられている国家予算の額および割合を特定すること。
データ収集
21.委員会は、締約国がその文書回答で表明した、現行のデータ収集機構では条約のあらゆる分野における18歳未満のすべての子どもが対象とされていない旨の懸念を共有するとともに、子どもの権利指標を開発する計画があることに留意する。
22.委員会は、締約国に対し、とくに18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータを収集するための効果的システムを確立する努力を継続しおよび強化し、かつ条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のためにこれらのデータおよび指標を活用するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、条約の実施に関して達成された進展を継続的に評価できるようにするため、子どもの権利指標に関する活動を可能なかぎり早期に完了させるようにも奨励するものである。
市民社会との協力
23.子どもに対するサービスの提供における締約国と市民社会との協力には留意しながらも、委員会は、必要な基準設定が行なわれていないこと、および、政策立案レベルまたは報告プロセスにおける市民社会との協力が限られてきたことを懸念する。
24.委員会は、委員会は、条約の規定の実施におけるパートナーとしての市民社会の重要な役割を強調するとともに、締約国が、国および地方のレベルにおける条約実施のすべての段階(政策立案を含む)ならびに条約実施に関する将来の定期的報告書の作成に、より体系的かつ調和のとれた方法で非政府組織を関与させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割」をテーマとして2002年に開催された一般的討議の勧告(CRC/C/121、パラ121)を考慮に入れ、かつ、とくにサービス提供者の登録認可制度を改善することにより民間のサービス提供機関の監督を向上させるようにも勧告する。
普及
25.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に認識していないことを懸念する。
26.子どもの権利に関する情報を普及するためにNGOおよび国際組織が行なっている活動には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定ならびに条約の実施に関する自国の報告書を広く知らせるという、第42条および第44条に基づく自国の義務を想起するよう求める。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 一般公衆およびとくに子どもを対象とした、子どもの権利に関する公的意識啓発キャンペーンを行なうこと。
  • (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教職員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を実施すること。

2.子どもの定義

27.委員会は、女子(16歳)および男子(18歳)の最低婚姻年齢が異なることを依然として懸念する。
28.委員会は、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げるべきである旨の、締約国に対する前回の勧告をあらためて繰り返す。

3.一般原則

29.委員会は、差別の禁止に対する権利(第2条)、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない旨の原則(第3条)、子どもの生命、生存および発達に対する権利(第6条)、ならびに、自己の意見を自由に表明し、かつその意見を年齢および成熟度にしたがって考慮される子どもの権利(第12条)のような、条約に掲げられた一般的原則および権利が、国および地方のレベルにおける締約国の法律、政策およびプログラムに全面的に反映されていないことを、懸念する。
30.委員会は、締約国が以下の対応をとるよう勧告する。
  • (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関するあらゆる関連の法律に適切に統合すること。
  • (b) 政治上、司法上および行政上のあらゆる決定ならびにすべての子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて、これらの原則を適用すること。
  • (c) あらゆるレベルにおける計画および政策立案、ならびに社会機関、保健福祉機関、教育機関、裁判所および行政機関による行動において、これらの原則を適用すること。
差別の禁止
31.委員会は、人種差別に関する情報が締約国報告書に存在しないこと、および、ひとり親家庭の子ども、婚外子、障害のある子ども、女子および移住者家族に対する差別行為についての情報量が限られていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、憲法において、条約において述べられているように人種、皮膚の色、言語、政治的その他の意見、民族的もしくは社会的出身、障害、出生またはその他の地を理由とする差別が明示的に禁じられていないことも、懸念するものである。
32.委員会は、締約国が、条約第2条に列挙されたすべての事由を含める目的で、差別を明示的に禁ずる法律を制定するよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、とくに公衆の教育および意識啓発のためのキャンペーンを通じて、とりわけひとり親家庭の子ども、婚外子、障害のある子ども、移住労働者の子どもおよび女子に対する社会的差別と闘うため、あらゆる必要な積極的措置をとるよう勧告する。
33.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの意見の尊重
34.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重がいまなお制限されていることを懸念する。
35.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 2000年に改正された児童福祉法が、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために改正されることを確保するとともに、裁判所、行政機関、学校および教育制度の懲戒手続において、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見の尊重を促進しかつ子どもの参加の便宜を図るために、立法を含む効果的措置をとること。
  • (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。
  • (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうこと。

4.市民的権利および自由

表現および結社の自由
36.委員会は、管理者による生徒会の厳格な統制、および、初等中等学校の生徒が学外で行なう政治的活動を制限しまたは禁止する校則により、生徒の表現および結社の自由が制限されていることを懸念する。委員会はさらに、10代が独自に立ち上げたインターネットのチャットルームが公的機関によって恣意的に閉鎖させられてきたという訴えについて、懸念するものである。
37.条約第12条~第17条に照らし、委員会は、締約国が、学校内外の意思決定プロセスおよび政治的活動への子どもの積極的参加を促進し、かつすべての子どもが結社および表現の自由を全面的に享受することを確保するために、法律、教育部が発する指針および校則を改正するよう勧告する。
体罰
38.委員会は、学校における体罰が公式に容認されていることに、大きな懸念とともに留意する。委員会は、体罰は、とくにそれが子どもの尊厳の重大な侵害であることから、条約の原則および規定に一致しないという見解に立つものである(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の同様の見解も参照。E/C.12/1/Add.79, para. 36)。教育部の指針によって、学校で体罰を用いるか否かの決定が個々の学校管理者に委ねられていることは、一部の形態の体罰は受け入れられていることを示唆するものであり、したがって積極的かつ非暴力的な形態の規律を促進する教育上の措置を阻害するものである。
39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 関連の法律および規則を改正し、家庭、学校その他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すべきであるという、国家人権委員会の勧告を実施すること。
  • (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について公衆教育キャンペーンを実施するとともに、そのような罰に代わる手段として、学校および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。

5.家庭環境および代替的養護

代替的養護
40.委員会は、締約国が、家族から分離された子どもの施設措置に代わる手段としてグループホームを設置していることに留意する。しかしながら委員会は、グループホームの設置および里親養護制度の発展が依然として限定されており、かつ民間の代替的養護施設が政府の規制または定期的査察の対象とされていないことを、懸念するものである。
41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに里親家庭への金銭的支援を拡充し、かつ里親家庭を対象とするカウンセリングおよび支援のための機構を増やすことにより、グループホームの数および里親養護制度を引き続き拡大すること。
  • (b) 公立および私立のすべての施設にいる子どもについて、子どもの意見および最善の利益を考慮に入れ、かつ可能なときは常に家庭的環境への子どもの再統合を目的とする、措置の定期的審査が行なわれることを確保すること。
  • (c) ソーシャルワーカーを増員し、かつ、代替的養護を受けている子どもおよび脆弱な状況に置かれた家族に援助を提供するソーシャルワーカーの技術および能力を向上させること。
養子縁組
42.委員会は、否定的な文化的伝統が蔓延していることにより、国内養子縁組が権限ある公的機関の認可または関与なしに手配される場合があること、および、そのような手配においては子どもの最善の利益または適当なときは子どもの意見が必ずしも考慮されていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、国際養子縁組の件数が多いこと(これは、この形態の養子縁組が必ずしも最後の手段とされていないことを示唆するものである)にも懸念とともに留意し、前回の総括所見で述べた、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をまだ批准していないという懸念を繰り返すものである。
43.委員会は、締約国に対する前回の勧告を繰り返すとともに、以下のことを求める。
児童虐待およびネグレクト
44.委員会は、児童虐待およびネグレクトの通報に対応し、かつ被害者にカウンセリングおよび援助を提供する児童虐待防止センターが同国の多くの地域で設置されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、児童虐待およびネグレクトの苦情申立てを受理して効果的に対応し、かつ被害者に援助を提供する全国的システムが存在しないことを懸念するものである。
45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 児童虐待およびネグレクトの苦情申立てを受理し、監視しおよび調査し、ならびに必要なときは子どもに配慮したやり方で事案を訴追するための全国的システムを確立するために法改正を含むあらゆる適当な措置をとるとともに、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象としてこの点に関する研修を行なうこと。
  • (b) 介入または処罰だけではなく、適当なときは家族間暴力の被害者および加害者の双方に支援および援助を提供することを目的とし、かつ暴力の被害者全員がカウンセリングならびに回復および再統合に関する援助にアクセスできることを確保する全国的対応システムを発展させる目的で、児童虐待防止センターを設置する努力を強化すること。
  • (c) これらの問題の規模を適正に評価し、かつこれらの懸念に対応するための政策およびプログラムを立案する目的で、虐待およびネグレクトの加害者および被害者に関する、ジェンダーおよび年齢によって細分化されたデータを収集するための機構を確立すること。
子どもの扶養料
46.委員会は、離婚した親およびひとり親(主として母親)であって、法的に受け取る資格を有する子どもの扶養料の支払いを受け取っていない者の人数が多いことを懸念する。
47.第27条および子どもの最善の利益の原則(第3条)に照らし、委員会は、締約国が、裁判所の命令または当事者間の取決めに基づく子どもの扶養債務を、子どもおよびその監護権者である親にスティグマを与えないやり方で執行するため、あらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。たとえば締約国は、執行措置が定められるまでの間、支払期限が過ぎた子どもの扶養債務が監護権者に対して支払われることを確保するための国家基金の設置、または、子どもの扶養債務を負う被雇用者の給与から子どもの扶養料が自動的に天引きされる制度の導入を検討することが考えられる。

6.基礎保健および福祉

48.委員会は、子どもの保健指標が非常に良好であることを心強く感ずる。にもかかわらず、委員会は、保健に配分される政府予算の割合が1%に満たないこと、および、全保健ケア施設の9割は民間によって運営されていることを懸念するものである。委員会はまた、子どもを母乳で育てる母親の割合が1990年代以降顕著に減少していること、および、喫煙する青少年およびアンフェタミンその他の不法な物質を使用する青少年の人数が増えていることも懸念する。
49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 保健に配分される資金を相当水準まで増加させるとともに、低所得家庭が費用負担なしに保健制度にアクセスできるよう公的ケア施設制度を確立すること。
  • (b) 生後6カ月間は乳児に母乳のみを与えることを母親に奨励し、かつその利点について母親を教育するための措置をとるとともに、母乳育児に関する国家的規則を採択すること。
  • (c) 子どもを母乳で育てる女性の雇用にいかなる悪影響も生じないようにするための効果的対策をとること。
  • (d) とくにHIV/AIDSその他の性感染症に関する教育、10代の喫煙および薬物濫用の問題ならびに他の関連する問題に対応する包括的な青少年保健政策を策定する目的で、青少年の健康に関する研究を実施すること。
障害のある子ども
50.委員会は、〔障害のある〕子どもに対する社会的差別が広範に行なわれており、これらの子どもによる、「尊厳を確保し、自立を促進し、かつ地域社会への積極的な参加を助長する条件の下で(の)十分かつ人間に値する生活」に対する権利の享受が妨げられていることを、著しく懸念する。委員会はとりわけ、相当数の障害のある子どもが毎年遺棄されており、多くは学校に通うことができず、かつ学校に通う際は他の生徒から隔離されているという報告があることを懸念するものである。
51.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的討議(1997年)の勧告および障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 親、子ども、教職員および一般公衆を対象とする意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン等を通じ、障害のある子どもに対する差別の文化と闘うための効果的措置をとること。
  • (b) 障害のある子どもの教育上のニーズおよび教育その他の社会サービスへのアクセスについて評価する、障害のある子ども(現在通学していない子どもも含む)の人数についての包括的調査を実施すること。
  • (c) 公共の建物および場所(学校およびレクリエーション施設を含む)に対する障害のある子どもの物理的アクセスを改善するための現行プログラムを拡大し、かつ初等前、初等、中等および高等教育段階における統合教育プログラムの数を増やすこと。

7.教育

52.委員会は、締約国の経済発展水準が相対的に高いにもかかわらず初等教育しか無償とされていないことを懸念するものの、締約国が中学校教育の無償化を進めているという情報を歓迎する。同様に、初等教育においては女子および男子の就学率に格差は存在しないものの、高等教育に進む女子は男子よりも相当に少ない。最後に、委員会は、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されるおそれがあるという懸念をあらためて繰り返す。
53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 学校に提供される物質的資源を増加させ、かつ授業の質を向上させることにより、私立学校に比べて低い公立学校の質を高めること。
  • (b) 初等前教育および中等教育の費用負担を軽減しかつ撤廃するための、期限を定めた戦略を策定すること。
  • (c) 女子の就学を促進し、かつ根強く残るジェンダーの固定観念に対応することにより、すべての者が能力に基づいて高等教育にアクセスできることを確保するための効果的措置をとること。
  • (d) 競争を軽減し、かつ条約第29条第1項ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた教育の目的を反映させるため、教育政策を見直すこと。

8.特別な保護措置

性的搾取
54.委員会は、子どもから性的サービスを購入した者の処罰を目的とする青少年保護法が2000年に制定されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、同法が効果的に実施されていないこと、および、子どもの性的搾取の蔓延度に関する利用可能なデータが限られていることを懸念するものである。委員会はまた、思春期の女子が金銭と引き換えに年上の男性と性的関係を結ぶ「援助交際」(Wonjokyuje)現象が広がっているという報告があることも懸念する。
55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) それぞれ1996年・2001年に開催された第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で合意されたとおり、効果的なデータ収集措置を含む「子どもの商業的性的搾取に関する国内行動計画」を策定すること。
  • (b) 子どもに配慮した方法で苦情申立てを受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を研修すること。
  • (c) 性的虐待および性的搾取の被害を受けたすべての者が、回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。
  • (d) 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。
少年司法
56.委員会は、法律に違反したとして申し立てられかつ保護処分の対象とされた少年が、刑事手続を経ることなく、かつ弁護士による援助にもアクセスできないまま自由を奪われる可能性があることを懸念する。
57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保するとともに、少年司法制度に関与する職員を対象として専門的研修を実施すること。
  • (b) 自由の剥奪を最後の手段としてのみ用いるようにするとともに、自由の剥奪に至る可能性がある保護処分に関与するすべての少年が早期に弁護人にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 未成年者を刑事手続または保護処分のいずれに付すかを決定する検察官の裁量権を撤廃するため、法律を改正すること。
移住労働者の子ども
58.委員会は、教育および社会福祉に関する法令に外国人の子ども、とくに資格外移住労働者の子どもの福祉および権利について定めた具体的規定が含まれていないことを懸念する。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国内法、とくに教育および社会福祉に関する法律を改正し、外国人の子ども(資格外移住労働者の子どもを含む)全員に対してサービスへの平等なアクセスを確保する具体的規定を含めること。
  • (b) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(1990年)の批准を検討すること。

9.子どもの権利条約の選択議定書および条約第43条第2項の改正

60.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書に署名したものの、批准はしていないことに留意する。
61.委員会は、締約国が子どもの権利条約の2つの選択議定書を批准するよう勧告する。

10.文書の普及

62.委員会は、条約第44条第6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般およびとくに子どもが入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。

11.次回の報告書

63.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2008年12月19日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう促す。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


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