総括所見:韓国(第3~4回・2011年)


CRC/C/KOR/CO/3-4(2011年10月6日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2011年9月21日に開かれた第1644回および第1645回会合(CRC/C/SR.1644およびCRC/C/SR.1645参照)において大韓民国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/KOR/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合(CRC/C/SR.1668参照)において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがって提出された締約国の第3回・第4回統合報告書、および事前質問事項(CRC/C/KOR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書の分析的および自己批判的性質を評価するものである。委員会はさらに、締約国の部門横断型代表団との建設的対話を評価する。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。
  • (a) 養子縁組特例法の改正(2011年8月)。
  • (b) 民法の改正(2011年9月)。
  • (c) 初等中等教育法施行令の改正(2011年3月施行)。
  • (d) 自殺防止および生命尊重文化の創造に関する法律の制定(2011年)。
  • (e) 家事訴訟法の改正(2010年3月)。
  • (f) 障害児福祉支援法の制定(2011年)。
  • (g) 児童福祉法の改正(2011年)。
  • (h) 多文化家族支援法の改正(2011年)。
4.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの加入も歓迎する。
  • (a) 障害のある人の権利に関する条約(CRPD)(2008年12月11日)。
  • (b) 女性に対するあらゆる形態の差別に関する条約の選択議定書(2006年10月18日)。
5.委員会はまた、以下の制度的および政策的措置も歓迎する。
  • (a) 第2次学校暴力防止・対策5か年計画の策定(2010年)。〔(b)以降が存在しないのは原文ママ〕

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
6.委員会は、締約国の第2回報告書(CRC/C/70/Add.14)の検討後に行なわれた懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.197)ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)の第1回報告書に関する懸念表明および勧告の一部に対応するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念表明および勧告に、不十分にしかまたはまったく対応されていないものがあることを遺憾に思うものである。
7.委員会は、締約国に対し、第2回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないもの、とくに、韓国国家人権委員会内に子どもの権利に関する小委員会を設けること、体罰を包括的に禁止すること、および、教育政策が子どもに与えている高水準のストレスを軽減する目的で当該政策を見直すことに関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
留保
8.委員会は、条約第9条3項に付した留保を政府が2008年10月に撤回したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、条約第21条(a)(養子縁組が、最高の考慮事項としての子どもの最善の利益を正当に顧慮しながら権限のある機関による審査の対象とされることの確保)および第40条2項(b)(v)(締約国の刑法に違反したとして申し立てられまたは罪を問われたすべての子どもが、当該決定について、法律に基づき、上級の、権限のある、独立のかつ公平な機関または司法機関によって再審理される権利を有することの確保)に対する留保を維持していることを遺憾に思うものである。
9.委員会は、締約国が、条約の全面的実施の妨げとなっている、第21条(a)および第40条2項(b)(v)に対する留保の撤回を検討するよう、勧告する。
立法
10.委員会は、締約国の憲法で、国内法における条約の直接適用可能性が認められていることを歓迎する。しかしながら委員会は、条約の一般的規定を実施するための国内規則が不十分であること、および、締約国の裁判所による条約の直接適用がきわめて稀にしか行なわれないことを懸念するものである。委員会はさらに、法律による妊娠中絶の禁止(狭く定められた例外的状況の場合を除く)において妊娠した青少年の最善の利益が十分に考慮されておらず、妊娠した青少年が直面する困難を悪化させる状況が生じかねないことを懸念する。このような困難には、危険をともなう違法な中絶を利用し、ならびに(または)学業の中断を余儀なくされおよび(もしくは)子どもを養子縁組のために手放さざるを得なくなるおそれにさらされることが含まれる。
11.委員会は、締約国が、自国の司法決定において条約のすべての規定が十分に適用されることを確保するための措置(さらなる関連の立法を検討することも含む)よう勧告する。委員会はさらに、締約国が、妊娠中絶に関する法律において、思春期のシングルマザーが安全な妊娠中絶へのアクセスを認められ、かつ違法な中絶および子どもの養子縁組の強制から十分に保護されることを確保する等の手段によって子どもの最善の利益の原則が全面的に遵守されることを確保する目的で、当該法律を見直すことも勧告するものである。
調整
12.委員会は、とくに締約国の子ども政策調整委員会(CPCC)が2008年以降機能しておらず、かつ子どもおよび若者に関する締約国の政策が個別の省庁(それぞれ保健福祉部および女性家族部)によって実施されていて政策の断片化が生じていることにより、締約国による条約の実施における調整が後退していることを懸念する。青少年政策政府間評議会が設置されたことには留意しながらも、委員会は、青少年政策の調整を向上させる必要があることを依然として懸念するものである。
13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) CPCCを再建しおよび強化し、または、より好ましい方策として、必要な権限ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を有する適当な機関を設置すること。
  • (b) さまざまな省庁(保健福祉部および女性家族部を含む)間ならびに関連の国家機関、広域行政圏機関および自治体機関間において子どもの権利に関わる職務および関係が明確にされることを確保するとともに、その際、条約実施のために締約国が行なっているすべての活動を効果的に調整すること。
国家的行動計画
14.委員会は、2007年5月に国家人権政策基本計画(2007~2011年)が採択されたことに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、条約のすべての分野を網羅した、包括的な、かつ権利を基盤とする子どものための国家的行動計画が存在しないことを、依然として懸念するものである。さらに委員会は、現行計画の期間満了後にその後継計画となる国家行動計画が策定されていないことを懸念する。
15.委員会は、締約国が、関連のパートナーとの協議および協力に基づき、条約のすべての分野を網羅した、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源の提供ならびに監視機構の設置を可能にする、子どものための国家的行動計画を採択しかつ実施するよう勧告する。これに加え、委員会は、締約国に対し、2011年後の期間に関する後継国家行動計画の作成作業を、市民社会および子どもたちと透明かつ徹底的な協議を行ないながら速やかに開始するよう、促すものである。委員会は、締約国がその際、子どもに関する総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビューを考慮するよう勧告する。
独立の監視
16.委員会は、韓国子どもの権利モニタリング・センター(KMCCR)およびそれに付随して現場で活動する子どもの権利オンブズパーソンが設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点も含め、同制度が、国レベルで条約の実施を監視するための独立した機能的機構を有していないことを懸念するものである。
  • (a) KMCCRが法律上の地位を有しておらず、かつ保健福祉部の統制下にある予算科目の対象とされていること。
  • (b) KMCCRおよび子どもの権利オンブズパーソン制度に対し、子どもの権利侵害を能動的に監視しまたは調査し、かつ苦情を受理する権限が認められていないこと。
  • (c) KMCCRの権限が締約国による年次業績評価の結果次第とされており、そのためその独立性および継続性に影響が生じる可能性があること。
 委員会はさらに、国家人権委員会の規模が2009年3月に21%縮小されたこと、および、委員会のこれまでの勧告にも関わらず、依然として子どもの権利に関する専門部署が設けられていないことを懸念する。
17.委員会は、締約国が、KMCCRに明確な権限を与える目的でその法律上の地位をはっきり定めるとともに、条約違反を効果的に監視しかつ調査するセンターおよびオンブズパーソン双方の効果的運営を確保する目的で、十分な、かつ独立した人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、韓国国家人権委員会の独立性および継続性ならびに子どもの権利に関する専門化のための適当な条件を整備するよう、促すものである。
資源配分
18.委員会は、社会部門の実施のために配分される財源の増加(2008年より16.5%増)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の進んだ経済発展状況を踏まえれば、現行の財源配分額が利用可能な資源に占める割合は依然として低いことに、深い懸念とともに留意するものである。2009年の経済開発協力機構(OECD)家族データベースによれば、大韓民国は加盟国26か国のなかで最下位に位置している。委員会はさらに、条約実施のためにさまざまな自治体当局が利用可能な資源の水準に相当の格差があることを懸念するものである。
19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 進んだ経済発展状況にあわせて、かつOECDの水準との関連で財源配分水準をいっそう緊密に調整する目的で、条約実施のために配分される財源の水準を再検討しかつ高めること。
  • (b) 子どもの権利の十分な実現を確保し、かつ居住する自治体および(または)地域が異なる子どもの間の格差を防止する目的で、中央および自治体のレベルにおける財源配分額を子どもの権利の視点から評価すること。この目的のため、部門別および自治体別の予算ニーズに関する包括的アセスメントを実施するとともに、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対応する分野に対し、安定した配分が行なわれるようにすること。
  • (c) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。
  • (d) 可能であれば、資源配分の実効性を監視しかつ評価する成果基準予算を開始するべきであるという国連の勧告にしたがうこと。
  • (e) とくに子どもたちとの公的な対話を通じ、透明な、かつ参加型の予算策定を確保すること。
  • (f) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある、不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえば難民または移住労働者の子ども)に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。
  • (g) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。
データ収集
20.委員会は、締約国において、データ収集の取り組みが方法論的に一貫しておらず、かつ条約が対象とする諸分野についての細分化されたデータが存在しないことを懸念する。委員会はまた、子どもの相対的貧困および極度の貧困を削減しようとするさまざまな政策およびプログラムにも関わらず、締約国において貧困下で生活している子どもについてのデータが存在せず、かつ、貧困削減を支援する地方政府の予算および能力についての格差を縮小するための措置がとられていないことも、懸念するものである。
21.委員会は、締約国に対し、条約のすべての分野を網羅し、かつ、とくに民族、ジェンダー、年齢、地理的所在および社会経済的背景を考慮した細分化されたデータを包括的に収集するための一貫したシステムを確立するよう、強く奨励する。委員会はさらに、締約国が、データで判断可能な諸傾向に関する学際的研究を実施するよう勧告するものである。
普及、意識啓発および研修
22.人権に関する内容が締約国の学校シラバスに部分的に含まれたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、子ども、一般公衆および子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で条約に関する意識の水準が低いことを依然として懸念する。
23.委員会は、締約国が、とくに以下の手段によって意識を向上させるための追加的措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの権利および人権に関する教育を学校カリキュラムにさらに含めること。
  • (b) 子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家集団を対象として、条約に関する十分な研修が行なわれることを確保すること。
  • (c) 一般公衆の間で条約に関する意識を高めるための措置を強化すること。
国際協力
24.締約国が国際援助への拠出額を徐々に増やしてきたことは認めながらも、委員会は、国際援助に対する締約国の配分額が国民総生産(GNP)に占める割合はおよそ0.13%に留まっており、締約国が2015年までに達成することを誓約した、対GNP比0.7%という国際合意目標よりも相当に低いことに留意する。
25.委員会は、締約国に対し、2015年までに対GNP比0.7%という国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めにおいて子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するようにも奨励するものである。委員会は、締約国が、その際、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案する。
子どもの権利と企業セクター
26.委員会は、世界でもっとも活力ある経済国のひとつである締約国の企業セクターが、企業の社会的責任(現在のところ、もっぱら環境問題に焦点を当てているように思われる)への関心を高めていることを歓迎する。締約国の法律の諸側面においてとくに労働基準および最低賃金への対応が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、企業活動が人権に及ぼす悪影響の防止および緩和について定める包括的な立法上の枠組みが、締約国の領域における企業活動についても国外における企業活動についても存在しないことに、留意するものである。委員会はさらに、とくに以下の点に懸念とともに留意する。
  • (a) 締約国が、子どもの強制労働を用いているという報告があることを理由に国際労働機関(ILO)(および欧州議会)の調査対象とされている国々から製品を輸入しており、したがって重大な子どもの権利侵害に加担していること。
  • (b) 締約国出身の企業が、さまざまな国で、とくに水および居住に対する権利に悪影響を及ぼす可能性がある土地賃借契約を締結しまたは締結しようとしているという報告があること。
  • (c) 締約国が締結したまたは締結の承認を待っている自由貿易協定の交渉に先立ち、何らの人権影響評価も行なわれていないように思われること。
27.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年の人権理事会決議8/7および新たな作業部会に対してこの問題のフォローアップを要請した2011年6月11日の同決議17/4(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 韓国に本社を置く企業に対して、国内および国外におけるその活動(当該企業のサプライチェーンまたは関連業者のいずれによって行なわれるものかは問わない)から生じる人権への悪影響を防止しかつ緩和するための措置をとるよう求める立法上の枠組みを定めることにより、効果的な企業責任モデルの採用をさらに促進すること。子どもの権利に関わる指標および変数を報告に含めることが促進されるべきであり、かつ、事業が子どもの権利に及ぼす影響の具体的アセスメントが要求されるべきである。
  • (b) 子どもの強制労働を用いて製造された製品の輸入を防止する目的で製品の搬入を監視するとともに、自国の市場に持ちこまれる製品が児童労働と無縁であることを要件とする目的で貿易協定および国内法を活用すること。
  • (c) 自国の企業が国外事業を行なう際に子どもの権利を尊重することを確保するための措置をとるとともに、先住民族に影響を及ぼす事業について、自由なかつ十分な情報に基づく事前の同意を得るプロセス、または人権/子どもの権利に関する影響評価を実施している外国政府と協力すること。
  • (d) 自由貿易協定の交渉および締結に先立ち、子どもの権利を含む人権についての評価が実施され、かつ人権侵害を防止するための措置がとられることを確保すること。

B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
28.委員会は、締約国の反差別法案が国会で検討されることなく2007年10月に廃案となったこと、および、立法上の差別の定義に、性的指向および国籍に基づく差別の明示的禁止が掲げられていないことを遺憾に思う。さらに委員会は、締約国で根強く残り続けている複合的形態の差別について懸念するものである。このような差別には、多文化的背景もしくは移住者としての背景を有する子どもまたは朝鮮民主主義人民共和国出身の子ども、子どもの難民、障害のある子ども、および、シングルマザー、とくに思春期のシングルマザー(国による支援措置からの除外に関するものも含む)に対する差別が含まれる。
29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 条約第2条に全面的に一致する法律を採択する目的で、反差別法を速やかに制定すること。
  • (b) 脆弱な状況またはマイノリティの状況に置かれた子どもに対する差別的態度を根絶しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび公衆教育キャンペーンを含むあらゆる必要な措置をとること。
  • (c) 思春期のシングルマザーを含むシングルマザーに対し、十分な支援を提供すること。
生命、生存および発達に対する権利
30.委員会は、自殺防止基本計画(2004年)等を通じ、若者および子どもの自殺に対応するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、大韓民国における自殺率が深刻なほど高いことを、依然として深く懸念するものである。
31.委員会は、締約国に対し、調査研究の結果を具体的な政策、制度的措置および行政措置を実施する際の指針として活用する目的で、関係する子どもの家庭および教育制度の双方における子どもの自殺リスク要因についての調査研究を実施するよう、促す。委員会はさらに、このような政策および措置には十分な防止措置およびフォローアップ手続の整備が含まれるべきであり、かつ、これらの措置および手続を支えるため、ソーシャルワーカー、および、関係するすべての子どもを対象とする心理相談サービスが十分に提供されるべきであることを、勧告するものである。
子どもの最善の利益
32.委員会は、子どもに関わる締約国の法律で子どもの最善の利益の原則に対する明示的言及が見られず、かつ、司法上および行政上の決定ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいてこの原則が頻繁に適用されていないことを、懸念する。
33.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。
子どもの意見の尊重
34.子どもおよび若者の意見表明のために締約国が組織する会議が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の法的手続においても社会的態度の文脈においても、子どもに影響を与える決定についての子ども(とくに15歳未満の子ども)の意見が考慮されていないことを依然として懸念するものである。
35.委員会は、子どもが自己に影響を与えるあらゆる決定において意見を表明し、かつその意見を考慮される権利を有することを確保するための法改正を検討するよう勧告するとともに、条約第12条にしたがって締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) 自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために児童福祉法が改正されることを確保するとともに、裁判所および行政機関(学校および教育制度の懲戒手続も含む)において、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見の尊重を促進し、かつ意見を聴かれる子どもの権利の便宜を図るために、立法等も通じて効果的措置をとること。
  • (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ意見を聴かれる子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。
  • (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて、定期的検討を行なうこと。
  • (d) 意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮すること。

C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
36.委員会は、締約国における現行の法律および実務が、実親による子どもの完全出生登録をあらゆる状況下で保障するには不十分であることを懸念する。とくに委員会は、出生登録を養親または公的権限を有する者が行なえるため、思春期のシングルマザーが関わる状況等において、適切な司法的監督のないまま事実上の養子縁組が行なわれる結果につながっていることを懸念するものである。委員会はさらに、難民、庇護希望者または非正規移民の状況にある者にとって、出生登録が実際上または一貫した形では利用可能となっていないことを懸念する。
37.条約第7条にしたがい、委員会は、締約国に対し、親の法的地位および(または)出自に関わらず、すべての子どもに対して出生登録が利用可能とされることを確保するための措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、その際、登録において子どもの実親が正確に記載されていることを確保しかつ確認するよう促すものである。
思想、良心および宗教の自由
38.締約国が学校における義務的宗教教育を禁じたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、実際には、宗教機関が運営する私立学校において生徒(当該学校に自発的に入学したわけではない可能性がある生徒を含む)の宗教の自由が引き続き制限されていることを懸念する。委員会はまた、現行の取り組みにおいて、宗教的多様性に資する雰囲気が十分に促進されておらず、または特定宗教の子どもが有する具体的なニーズもしくは制約(食事面の要件に関わるものを含む)が十分に考慮されていないことも懸念するものである。
39.委員会は、条約第14条3項にしたがい、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が実際上およびあらゆる場面で全面的に尊重されることを確保するため、締約国がさらなる措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、このような措置が、特定の宗教の具体的な要件または制約(食事面の要件に関わるものを含む)に対して正当な考慮および配慮が払われる、宗教的多様性の認識に資する雰囲気を促進する目的でとられるべきことを、勧告するものである。
表現、結社および平和的集会の自由
40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.197、パラ37)にも関わらず、学校が生徒の政治的活動を引き続き禁止していることに懸念を表明する。さらに委員会は、学校運営委員会が生徒の参加を除外しており、かつ、学校に行っていない都市部および農村部の子どもにとって表現および結社の自由に対する権利を行使する機会が制限されていることを懸念するものである。
41.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、条約第12~17条に照らし、締約国に対して、学校内外の意思決定プロセスおよび政治的活動への子どもの積極的参加を促進し、かつすべての子どもが結社および表現の自由を全面的に享受することを確保する目的で、法律、教育部が発する指針および校則を改正するよう求める。これには、生徒が (i) 学校環境におけるものも含む政治的活動に参加しまたはこれを行ない、かつ、(ii) 学校運営委員会に意味のある形で参加できるようにすることに関連した措置も含まれる。
体罰
42.委員会は、家庭、学校および代替的養護の状況において体罰が引き続き蔓延していることについての前回の懸念(CRC/C/15/Add.197、パラ38)をあらためて表明する。
43.委員会は、以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) 関連の法律および規則を改正し、家庭、学校その他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すべきであるという、国家人権委員会の勧告を実施すること。
  • (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、学校および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけ(学校における体罰に代わる手段としての試験的グリーン・マイレージ制度を含む)を促進すること。
  • (c) 体罰の被害を受けた子どもが当該事件を通報できるようにするための機構を確立すること。
子どもに対する暴力(虐待およびネグレクトを含む)
44.委員会は、締約国において子どもの身体的および心理的虐待ならびにネグレクトの発生件数が増加していること、および、このような虐待を通報する法的義務が狭く定められていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、学校におけるいじめの発生率および深刻さが増していることも懸念するものである。さらに、地方の子ども保護機関が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、その数が依然として限られており、かつ財源および人的資源が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような虐待および(または)ネグレクトの被害者に対する、トラウマ後の対応およびリハビリテーションのための支援の提供が不十分であることにも、懸念とともに留意するものである。
45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 児童虐待およびネグレクト(学校におけるいじめに関わるものも含む)を通報する法的義務について、通報者の安全およびプライバシーを正当に考慮しながらこのような通報が行なわれるようにするための十分な機構を整備することにより、当該義務を強化しかつ拡大すること。
  • (b) 地方レベルも含めて保護機関を増設するとともに、これらの機関に対し、その効果的職務遂行(虐待および(または)ネグレクトの被害者に対し、トラウマ後の対応およびリハビリテーションのための十分な支援を提供することも含む)を保障するために必要な、十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されるようにすること。
  • (c) あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する子どもの権利委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮すること。
46.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。
  • (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。
    • (i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。
    • (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。
    • (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。
  • (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくにILO、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。

D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境を奪われた子ども
47.委員会は、養護を必要としている子どもに家庭的養護を提供するための努力を締約国が行なっていること、および、そのような養護を提供するための追加的施設が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、そのような代替的養護施設の評価において当該施設の運営管理しか対象とされず、養護の質、専門家の技能および訓練ならびに提供される処遇については評価されないことに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、そのような施設における虐待またはネグレクトの事例に対応するための苦情申立て機構に関する情報が存在しないことを懸念する。委員会はまた、親との接触を失った子供を追跡するシステムが設置されていないことも懸念するものである。
48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第25条にしたがい、代替的養護を提供する官民の施設における養護の質、関連の専門家の定期的研修(子どもの権利に関する研修を含む)および子どもに提供される処遇の態様についての体系的な定期的審査を確保すること。
  • (b) 代替的養護の現場における児童虐待についての苦情の受理、捜査および訴追のための機構を確保するとともに、虐待の被害者が苦情申立て手続、カウンセリング、医療ケアおよび回復のための他の適当な援助にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 代替的養護を受けている子どもに対し、親との接触を確立しかつ(または)維持するための十分な支援を提供すること。
  • (d) 2009年11月20日に採択され、総会決議64/142に掲げられた「子どもの代替的養護に関する指針」〔PDF〕を全面的に考慮すること。
養子縁組
49.締約国が養子縁組特例法および民法を改正したことにより、当該改正の施行とともに、養子縁組について家庭裁判所の承認決定が求められるようになることには積極的側面として留意しながらも、委員会は、当該法が施行されるまでの暫定期間中の子どもの養子縁組について懸念を覚える。委員会はまた、以下の点も依然として懸念するものである。
  • (a) 養子縁組についての規制の監督を行なう明確な権限を与えられた中央当局が設置されておらず、かつ、締約国の権限ある機関が国際養子縁組手続に介入する義務を成文化した法律が定められていないこと。
  • (b) 養子となる子どもが13歳未満の場合には子どもの意見が聴かれないこと。
  • (c) 思春期のシングルマザーのもとに生まれた子どもの圧倒的多数が養子縁組のために手放されていること、および、思春期のシングルマザーの親または法定保護者に対し、当該シングルマザーの同意なく子どもを養子縁組のために解放する権限が認められていること。
  • (d) 養子縁組後に利用可能なサービス、とくに国際養子縁組の対象とされた子どものためのサービスがほとんど存在しないこと(このような養子が自己の生物学的出自に関する情報を求める場合に直面する言語上の困難への対応に関するサービスも含む)。
  • (e) 締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約に依然として加盟していないこと。
50.委員会は、前掲法の施行前に行なわれる養子縁組について同等の十分な保護が提供されることを確保するために必要な措置を、締約国が迅速にとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法律を子どもの権利条約の原則および規定、とくに第21条に全面的に一致させるべく法改正を行なう目的で国際養子縁組制度のさらなる見直しを行なうとともに、具体的には以下の措置をとるようにも促すものである。
  • (a) 韓国中央養子縁組資料本部がハーグ条約第6条にしたがってその役割および職務を効果的に遂行できるようにするための明確な権限(養子縁組後のサービスの提供に関わるものも含む)を定めるとともに、そのための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。養子縁組後のサービスの提供にあたっては、国際養子縁組の対象とされ、かつ韓国語に堪能ではない可能性がある者が当該便益に実際的にアクセスできることの確保に対し、正当な考慮を払うことが求められる。
  • (b) 養子縁組手続において、子どもの意見がその年齢および成熟度を顧慮しながら正当に重視され、かつ子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保すること。
  • (c) 養子縁組のために子どもを解放することについて思春期のシングルマザーの同意を義務づけるとともに、これらのシングルマザーに対し、当該同意が事実上のまたは現実の強迫により得られることのないことを保障する環境が提供されることを確保すること。
  • (d) すべての養子縁組(国際的文脈で行なわれるものを含む)が、明確な権限を与えられ、かつ司法的監督および規制を行なう十分な能力を有する中央当局による認可の対象とされることを確保するための措置を実施すること。
  • (e) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を検討すること。

E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
51.委員会は、障害児福祉支援法、同法に基づく障害児リハビリテーション・プログラム、および障害児家庭子育て支援プログラムを歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どものための政府の援助が低所得世帯にしか提供されず、かつ理学療法および職業訓練は対象としていないことを懸念するものである。委員会はさらに、教育を受けるにあたって障害のある子ども(とくに女子)が困難に直面していること、特別教育の教員および監督者の利用可能性が限られていること、ならびに、障害のある子どもの大多数は、障害のない子どもから隔離された特別学校または特別教室で教育を受けていることを、懸念する。
52.委員会は、締約国に対し、2006年に採択された障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(CRC/C/GC/9)を考慮するとともに、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 障害のあるすべての子どもに対して適当な援助を提供すること。
  • (b) 障害のある子どもがその教育上のニーズについて十全な対応を受けられることを確保する目的で、障害のある子どもによる教育へのアクセスを促進するとともに、特別教育教員を増員するための措置をとり、かつ、教員および学校監督者に対して十分な研修を行なう措置をさらに強化すること。
  • (c) とくに十分な予算および人員による裏づけを図ることにより、障害者等に対する特殊教育法案〔ママ〕をより効果的に実施すること。
  • (d) 可能なときは常に、障害のある子どもに対してインクルーシブ教育が提供されることを確保すること。
健康および保健サービス
53.委員会は、締約国の保健予算が増額されたこと、および、健康保険の整備のために特別予算が配分されたことを歓迎する。委員会はまた、低所得世帯を対象とする医療扶助プログラム、喫煙に反対する公的キャンペーン、ならびに乳幼児の集団検診および予防接種を強化するための努力も歓迎するものである。しかしながら委員会は、このような増額にも関わらず、締約国の保健予算が総予算に占める割合が低いままであることを依然として懸念する。さらに委員会は、大規模な医療センターとそれよりも小さな地方病院との間で、小児保健および緊急ケアの利用可能性および質に格差があることを懸念する。
54.委員会は、保健に配分される資金を相当水準まで増加させるとともに、低所得家庭が費用負担なしに保健制度にアクセスできるよう公的ケア施設制度を確立するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/15/Add.197、パラ49(a))をあらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、小規模および中規模の地方病院に提供される、領域全体で小児医療ケアおよび緊急ケアを提供するための財源、技術的資源および人的資源を増加させる措置をとるよう勧告するものである。
精神保健
55.委員会は、とくに精神保健サービス・センターを全国32か所に設置することによって子どもの精神保健を向上させようとしている締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国における子どもの精神保健の状況が全般的に悪化しており、かつ、子ども(とくに女子)の抑うつ発生率および自殺率が上昇していることを懸念するものである。委員会はまた、自殺の早期発見・予防を促進するための診断ツールが実施されていることにも留意しながらも、当該診断ツールがプライバシーに対する子どもの権利に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念する。
56.委員会は、締約国が、子どもの抑うつおよび自殺の根本的原因に関する詳細な研究に基づいた子どもの精神保健ケア政策を策定するための措置をとるとともに、とくに女子の自殺行動の効果的防止を確保する目的で、包括的なサービス・システム(精神保健の促進および予防活動ならびに外来および入院による精神保健サービスを含む)の開発に投資するよう、勧告する。その際、委員会は締約国に対し、このような状況に置かれた子どもの施設措置を可能なかぎり最大限に回避するよう奨励するものである。さらに、自殺の発見および防止のための診断ツールの応用について、委員会は、締約国が、プライバシーに対する子どもの権利および子どもが十分な協議の対象とされる権利を十分に尊重するようなやり方で当該診断ツールが応用されることを確保するための十分な保護措置を確立するよう、勧告する。これらの勧告の実施について、委員会はまた、精神保健アプローチに加え、または適切なときは精神保健アプローチに代わるアプローチとして、自殺に関連する社会的および家族的要因を検討することの重要性も強調するものである。
思春期の健康
57.委員会は、子ども向け菓子等の製造、加工、輸入、頒布または販売を行なっている企業が子ども向けテレビ番組の放送中に高カロリー・低栄養の食品のコマーシャルを流すことを、韓国食品医薬品安全庁長が禁止できることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、小児肥満、および不健康な栄養摂取から生じるその他の健康問題を有する子どもが多いことを懸念するものである。委員会はさらに、韓国における子どもおよび青少年の喫煙率および飲酒率が上昇し続けており、かつインターネット依存症が深刻な問題となっていることを懸念する。
58.さらに委員会は、必修の性教育プログラムを行なおうとする取り組みにも関わらず、実際には、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する体系的かつ正確な教育が依然として学校で行なわれていないことに、懸念とともに留意する。このような文脈において、委員会はまた、青少年の無計画妊娠率が高いこと、および、そのような状況に置かれた青少年の中絶率がこれに対応して高いことも、深く懸念するものである。
59.委員会は、締約国に対し、マスメディアの関与等も得ながら、タバコ、アルコールおよびインターネット依存症の健康上のリスクに関する意識を高めるための広報教育キャンペーンを強化するよう、促す。その際、締約国は、そのようなキャンペーンが、青少年が置かれている具体的状況を考慮しおよびこれに対応し、ならびに、健康的なライフスタイルを送りおよびバランスのとれた消費パターンを実践する青少年の能力構築に寄与することを確保するとともに、子どもの健康に悪影響を及ぼす不健康な食品の販売促進を規制するために追加的措置をとるよう、奨励されるところである。委員会はまた、締約国が、学校カリキュラムにおける性教育プログラムが体系的かつ信頼のできるやり方で実施されることを確保するための措置をとるようにも勧告する。
社会保障および生活水準
60.委員会は、憲法第34条3項、4項および5項にしたがって女性、高齢者および若者の福祉を向上させるための締約国の取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、憲法が子どもの福祉を向上させる義務について定めていないことを懸念するものである。
61.委員会は、締約国に対し、子どもの福祉に対して十分な水準の資金を具体的にかつ義務的に配分することについての規定を置くために法改正を検討するよう、促す。締約国は、貧困を削減し、かつすべての子どもの生活水準を向上させるためのプログラムにおいて平等性および公平性を確保するべきである。

F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
62.生徒のストレスを軽減するために締約国が行なっている努力、および、子どもが遊び、かつレクリエーション活動および文化的活動を行なえることを確保するためのプログラムの採用にも関わらず、委員会は、締約国の教育制度において、深刻なほど競争的な状況がいまなお蔓延していることを懸念する。委員会はまた、課外で行なわれる民間の追加的指導を子どもが広く受けている結果、子どもが深刻かつ不相応なストレスを受けており、かつその身体的および精神的健康に悪影響が生じていることも懸念するものである。さらに委員会は、このような民間の指導の金銭的負担のためにすでに存在する社会経済的非対称性が悪化していること、および、これによって余暇および文化的活動に対する子どもの権利の十分な充足が阻害されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、とくに外国系の子どもに対するいじめの深刻さおよび頻度が増しており、かつ、そのようないじめの実行に携帯電話およびインターネットが利用されていることも懸念するものである。
63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 第29条、および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を正当に考慮しながら、現行教育制度および関連の試験についての評価を行なうこと。
  • (b) 民間の課外教育に対する幅広い依存の根本的原因およびその結果として生ずる高等教育へのアクセスの不平等に対応する目的で、公教育制度を強化するための努力を倍加すること。
  • (c) 条約第31条にしたがい、十分な余暇、文化的活動およびレクリエーション活動を享受する子どもの権利を確保すること。
  • (d) 学校へのアクセスの平等の達成に関わる具体的成果についての情報を体系的に収集し、かつ締約国の次回定期報告書に当該情報を記載すること。
  • (e) 外国系の子どもにとくに注意を払いながら、いじめと闘うためにとられる措置を強化するとともに、いじめを削減するための取り組みへの子どもの参加を確保すること。このような措置においては、教室または校庭の外で行なわれる新たな形態のいじめおよびいやがらせ(携帯電話によるものおよびバーチャルな会合場所におけるものを含む)への対応も行なわれるべきである。

G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条)

子どもの庇護希望者および難民
64.委員会は、締約国の法律が、同国の領域で生まれた子どもの難民および庇護希望者の民事上の地位の証明書類について定めていないこと、および、庇護希望者および人道上の理由による在留資格保有者の子どもが置かれているこのような脆弱な状況が、その親が労働市場へのアクセスを制限されており、かつ生計手段の援助を受けられないために悪化していることを、懸念する。委員会はまた、難民の社会的統合を援助するプログラムが存在しないこと(学校への受け入れが親の出入国管理法上の地位を条件としているため、難民および庇護希望者の子どもの教育へのアクセスが制限されていることを含む)も懸念するものである。委員会はさらに、難民または庇護希望者と直接接する職員に対して提供される、難民の権利に関する教育プログラムまたは研修の機会が設けられていないことを懸念する。
65.委員会は、締約国に対し、自国の領域内で生まれたすべての子ども(難民および庇護希望者の子どもを含む)の登録を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、庇護希望者および人道上の理由による在留資格保有者の家族に対して十分な金銭的および社会的援助を提供するとともに、そのような状況にある子どもが締約国の国民と同様に教育にアクセスできることを確保するよう、奨励するものである。
 さらに委員会は、締約国に対し、公務員、とくに難民または庇護希望者と接する公務員に対して難民の権利に関する特別研修を行なうよう促す。
66.さらに委員会は、子どもの難民および庇護希望者ならびに保護者のいない子どもが、締約国の出入国管理法に基づいて収容される可能性があることを深く懸念する。委員会はさらに、そのような収容が行なわれる場合は子どもにとって不適切な施設で行なわれ、かつ、当該収容(送還命令の執行待機中の場合については法定期間制限が定められていない)の定期的かつ時宜を得た再審査を確保する規定が存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。
67.委員会は、締約国に対し、難民、庇護を希望中または保護者のいない状況にある子どもの収容を行なわないよう促す。送還が行なわれる場合、委員会は、締約国に対し、そのような状況に置かれた子どもが、可能なかぎり最大限にこのような子どもの権利に配慮しかつそれを尊重する施設に収容され、かつ時宜を得た定期的再審査および明確に定められた期間制限の対象とされることを確保するよう、促すものである。
移民の状況にある子ども
68.委員会は、韓国における生活への外国人の統合を促進する在韓外国人〔処遇基本〕法(2007年)、および、不法移民の子どもの入学および転校を認める初等中等教育法施行令の改正(2008年)が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、移住者の子どもの学校出席率がいまなお低いことを依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもが小学校および中学校に出席することを確保するよう親に要求する締約国の法律が、同国の国民でない親に対しては適用されないことを懸念する。
69.委員会は、締約国が、移住者の子ども(不法移民の子どもも含む)が教育にアクセスしかつ実際に教育を受けることを確保するための政策および戦略を策定しかつ採択するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する〔国際〕条約を批准し、かつ国内法をその規定に一致させることも奨励するものである。
経済的搾取(児童労働を含む)
70.委員会は、子どもを搾取から保護するための未成年労働者保護総合対策(2005年)が確立されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下の点について懸念を覚えるものである。
  • (a) 働く子どもの人数が増えていること。
  • (b) 子どもを雇用している雇用主が、労働基準法で定められた未成年労働者のための基準をしばしば満たしていないこと(夜間労働および最低賃金以下の労働に従事させられている15歳以上の子どもとの関連も含む)。
  • (c) 賃金の支払われない待機時間のような不正規な労働慣行を規制する法規定が不十分であること。
  • (d) 労働監察が不十分であること。
  • (e) 言葉によるおよび性的な虐待および暴力が広く発生していることにより、働く子どもの問題がさらに悪化していること。
  • (f) 興行従事者および性の対象として雇われる子どもの人数が増えていること。
71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもが働くことにつながる根底的な社会経済的要因に対処するための措置をとること。
  • (b) 18歳未満の者の労働条件に関して定められた基準が、夜間労働の禁止の効果的執行および最低賃金の支払いとの関連も含めて厳格に執行されることを確保すること。
  • (c) 不正規な労働慣行を規制する追加的な法規定を制定すること。
  • (d) 労働監察を改善することにより、労働環境のあらゆる側面が包括的に監視されることを確保すること。
  • (e) 労働環境における暴力およびセクシュアルハラスメントに対応しかつこれを防止するための効果的措置をとり、かつ、このような問題が発生した場合に責任の追及およびリハビリテーションの保障を行なうための効果的機構が利用できるようにすること。
性的搾取
72.委員会は、性的搾取からの青少年の保護に関する法律が2008年に改正されたことにより、子どもの性的搾取に関するデータの定期的収集が定められ、かつ、被害者に対し、一時的および緊急の生活支援、法律上および医療上の援助ならびに職業訓練を提供するとされたことを歓迎する。委員会はまた、虐待の被害者を対象とし、かつ性的搾取の被害を受けた子どもにカウンセリング、保護および治療を提供する「ひまわり児童センター」および「ワンストップ・サポートセンター」が設置されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下の点について依然として懸念を覚える。
  • (a) 締約国において子どもに対する性暴力が劇的に増加しており、かつポルノの消費率が高いこと。
  • (b) 子どもの性的搾取の訴追率が低いこと。
  • (c) 男性および男子のためのまたは外国語による被害者リハビリテーション・サービスが存在しないこと。
  • (d) このような虐待の発生率が高まっているにも関わらず、防止および被害者支援に対する予算配分額が削減されていること。
73.委員会は、締約国が、国内法を条約第35条ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第2条および第3条と一致させるために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どもに対する性暴力を防止するために適当な措置をとること。
  • (b) いかなる手段によるかを問わず、子どもを性的搾取の目的で提供し、引き渡しまたは受け取ることを構成するすべての行為を犯罪化する等の手段により、子どもの性的搾取を効果的に訴追するためにさらなる努力を行なうこと。
  • (c) 子どもを対象とする性犯罪の加害者に対する制裁が、犯罪の重大性にふさわしいものとなり、かつ刑事司法制度において行なわれることを確保すること。
  • (d) いかなる形でも刑事責任を免除することなく、性犯罪者を行なった者を更生させるための努力を継続すること。
  • (e) 人身取引および性的搾取の被害者の出身国としてもっとも一般的な国々を考慮に入れながら、多言語方式によるものも含むリハビリテーション・サービスを、女子のみならず男子に対しても提供すること。
人身取引
74.委員会は、性売買防止総合計画の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の法律であらゆる形態の人身取引が処罰の対象とされているにも関わらず、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および強制労働を目的とした人身取引の対象とされ続けていることを懸念するものである。委員会は、人身取引を行なった者の訴追率および有罪判決率が低いことをとりわけ懸念する。
75.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、取引および誘拐の加害者に対して自己の犯罪の責任をとらせるための十分な措置がとられることを確保するよう、促す。さらに委員会は、締約国が、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准を検討するよう、勧告するものである。
子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書
76.委員会は、議定書第2条および第3条に掲げられたすべての犯罪が締約国の立法で十分に網羅されていない旨の懸念(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ30)をあらためて表明する。さらに委員会は、前掲(パラ35)のとおり第三者による子どもの出生登録を防止するための措置がとられていないことにより、これらの子どもが売買の対象とされる結果が生じうることを懸念するものである。委員会はまた、議定書第3条1項に掲げられた犯罪について、当該犯罪が自国の国民もしくは自国の領域に常居所を有する者によって国外で行なわれる場合または被害者が大韓民国の国民である場合に裁判権を設定するためにとられた措置に関して、締約国から何らの情報も提供されなかった旨の懸念(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ38)もあらためて表明する。
77.委員会は、以下の措置をとるよう求めた勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) 国内法が選択議定書第2条および第3条と全面的に一致することを確保するために必要な措置をとること。
  • (b) 選択議定書第4条2項に照らし、選択議定書に掲げられた犯罪について、当該犯罪が自国の国民もしくは自国の領域に常居所を有する者によって国外で行なわれる場合または被害者が大韓民国の国民である場合に域外裁判権を設定するため、必要な立法措置をとること(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ39)。
武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書
78.委員会は、18歳未満の者を義務的に徴募しまたは敵対行為に参加させることを犯罪とする具体的規定がない旨の懸念をあらためて表明する(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ12)。
79.委員会は、締約国に対して以下の措置をとるよう求めた勧告をあらためて繰り返す。
  • (a) 子どもの徴募および敵対行為への子どもの関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律により明示的に禁ずること。
  • (b) すべての法律が選択議定書の規定と全面的に調和させられることを確保すること(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ13)。
  • (c) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ13)。
少年司法の運営
80.委員会は、締約国において非行率が引き続き上昇しており、かつ少年犯罪率が高いこと(このような犯罪者の再犯率が高いことも含む)を懸念する。委員会はまた、このような変化に対する政府の対策が、子どもがこのような状況に置かれる根本的原因に対応するのではなく、主として懲罰的措置の強化に焦点を当てるようなやり方(罪を犯した子どもの社会への再統合を目的とした効果的措置をとるのではなく、成人が収容されている拘禁施設にこのような子どもを措置することも含む)でしか行なわれていないことにも、懸念とともに留意するものである。さらに、少年担当検察官が任命されたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、少年司法に関する専門性を効果的に高められるような状況が提供されていないため、これらの検察官がこの役割を十分に果たせていないことを懸念する。
81.委員会は、締約国に対し、少年犯罪および高い再犯率に効果的に対抗するための十分な措置をとるよう求める。したがって委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準に、少年司法制度を全面的に一致させるよう勧告するものである。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 締約国全域で、十分な人的資源、技術的資源および財源を有する専門の少年裁判所を設置すること。
  • (b) 刑法に違反したとして申し立てられた子どもに対し、手続の早い段階でかつ法的手続全体を通じて、十分な法的その他の援助を提供すること。
  • (c) 自由を奪われまたは更生センターもしくは拘禁施設に措置された子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。
  • (d) 自由を奪われた子どもが措置に関する決定について定期的再審査を受ける権利を確保すること。
  • (e) 拘禁が最後の手段として用いられることを確保するとともに、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、自由の剥奪に代わる措置を促進すること。
  • (f) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。
犯罪の証人および被害者の保護
82. 売春防止および被害者保護等に関する法律において、16歳未満の子どもの被害者または証人に対してビデオ録画による陳述が認められているにも関わらず、性犯罪の被害を受けた子どもに関する事情聴取手続および法的手続は、以下の理由から依然として不十分である。
  • (a) 職員が録画に習熟していないため、被害者および証人が証言を繰り返さなければならないことが多い。
  • (b) 裁判所がビデオの有効性を認めないことが多い。
  • (c) 被害者および証人が、十分な配慮がなされているとはいえない条件下で反対尋問を受けなければならないことが多い。
  • (d) 被害者の同意を得ることなく、犯罪者との和解が要請される場合がある。
  • (e) 被害者のプライバシーを保護するための十分な措置がとられていない。
  • (f) 被害者が、警察官および医療従事者のような職員から真剣に受けとめられないことが多い。
  • (g) 被害者に対応する医師または法執行官による、被害者に対する言葉の虐待の例が報告されている。
83. 委員会は、締約国が、子どもにやさしい手続規則をさらに発展させ、かつ、被害を受けた子どもが、そのプライバシーおよび尊厳をいっそう尊重されながら取り扱われることを確保するよう勧告するとともに、締約国に対し、十分な法律上の規定および規則を通じて、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されること、および、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮することを確保するよう、勧告する。

H.国際人権文書の批准

84.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を含むすべての中核的人権文書に加入するよう、奨励する。

I.地域機関および国際機関との協力

85.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。

J.フォローアップおよび普及

86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会、広域行政圏機関および適用可能なときは他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
87.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

K.次回報告書

88.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2017年6月19日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年11月25日)。/国連の正式文書を参照しつつ、先行未編集版に基づく訳を修正(2012年5月7日)。パラ50(c)で養子縁組に関するシングルマザーの同意が「必須」から「義務的」とされた点、パラ61で「公平性および公正性」が「平等および公平性」とされた点以外は基本的に技術的修正のみ。/前編・後編を統合(10月20日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2015年12月31日)。
最終更新:2015年12月31日 16:04