総括所見:ネパール(OPAC・2012年)


CRC/C/OPAC/NPL/CO/1(2016年7月8日)/第72会期
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2016年5月20日に開かれた第2112回会合(CRC/C/SR.2112参照)においてネパールの第1回報告書(CRC/C/OPAC/NPL/1)を検討し、2016年6月3日に開かれた第2132回会合(CRC/C/SR.2132参照)において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/NPL/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門にまたがる締約国の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国が条約に基づいて提出した第3~5回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/NPL/CO/3-5、2016年6月3日採択)、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいて提出された締約国の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/NPL/CO/1、2012年6月15日)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.一般的所見

積極的側面
4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな積極的措置、とくに以下の措置を歓迎する。
  • (a) 軍隊による子どもの徴募を禁じた2015年憲法の諸規定。
  • (b) 真実和解委員会および強制的失踪調査委員会の設置(2015年)。
  • (c) 学校と平和地帯に関する国家的枠組みおよびその実施ガイドライン(2011年)。
  • (d) 紛争の影響を受けた子どもの再統合に関する国家行動計画(2010年)。

III.一般的実施措置

調整
5.委員会は、締約国におけるすべての平和構築プロセス(これには武力紛争への子どもの関与に関する問題も含まれる可能性がある)を促進する目的で、2006年11月に平和復興省が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに関連する問題について関連機関間の調整を促進する主要な機関である中央子ども福祉委員会に意思決定の権限がないことを懸念するものである。そのため、十分な権限および明確な任務を有する調整機構が存在しない状況になっている。
6.委員会は、あらゆるレベルのあらゆる機関間で調整を図るための機構を設置する、選択議定書に基づく義務に対して締約国の注意を喚起する。委員会はまた、締約国が、中央子ども福祉委員会であれ今後設置された他の機構であれ、このような機構に対し、選択議定書に基づく活動の実施および評価を調整するための十分な能力および権限が与えられることを確保するとともに、あらゆるレベルでその任務を遂行するために必要なあらゆる人的資源、技術的資源および財源を提供することも勧告するものである。
包括的な政策および戦略
7.委員会は、2010年に発表された、紛争の影響を受けた子どもの再統合に関する国家行動計画を歓迎する。委員会はまた、武力紛争の影響を受けた子どもを就学させ、かつ奨学金を提供するプログラムも歓迎するものである。しかしながら委員会は、実際には、武力紛争の影響を受けたすべての子ども(とくに子ども兵士だった者および紛争中の人権侵害被害者)がこれらの取り組みの利益にアクセスできているわけではないことを懸念する。
8.委員会は、紛争の直接の影響を受けた子ども(子ども兵士または被害者など)および一方または双方の親を失ったことにより間接的影響を受けた子どもを全員包摂することを目的として、国家行動計画の評価を実施するよう勧告する。締約国は、その際、ダリットおよびマイノリティの子どもならびに(または)農村部の子どもを含む、被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払うべきである。
資源配分
9.委員会は、選択議定書の実施のための具体的な予算配分が行なわれていないことを遺憾に思う。
10.委員会は、締約国が、選択議定書のあらゆる分野の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源が配分されることを確保するよう勧告する。
普及および意識啓発
11.委員会は、締約国が、平和教育、人権教育および公民教育を初等中等教育のカリキュラムおよびカリキュラム資料に統合したことを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書が広く知られていないことを懸念するものである。委員会はまた、関連の専門家カテゴリーに属する者が選択議定書についての十分な研修を受けていないことも懸念する。
12.委員会は、締約国が、メディア等を通じ、とくに子どもを対象としながら、一般公衆の間で選択議定書の原則および規定を広く普及するよう勧告する。さらに、締約国は、関連するすべての専門家集団(とくに法執行に責任を負う者、裁判官、出入国管理担当者、ソーシャルワーカーおよび医療要員)を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的かつ包括的な研修活動を発展させるべきである。
データ
13.委員会は、選択議定書が対象とするすべての分野についてデータ収集、分析および監視を行なうための組織的機構が設けられていないことに、懸念とともに留意する。
14.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関連するすべての分野についての包括的なデータ収集システムを確立するとともに、収集された情報を、武力紛争の影響を受けている子どもおよび武力紛争に関与している子どもの保護に関わる包括的な政策およびプログラムの立案の基礎として活用するよう、勧告する。

IV.防止

年齢確認手続
15.委員会は、締約国の王立陸軍採用規則(1962年)に基づき、18歳未満の子どもには軍隊への入隊資格がないことに留意する。しかしながら委員会は、実際には、すべての者を対象とする実効的な出生登録が現在行なわれていないため、ネパール治安部隊に入隊する者の年齢確認に信頼が置けないことを懸念するものである。この結果、不正規な出生登録または出生証明書の偽造により、18歳に達する前の者が治安部隊に採用されている可能性がある。
16.委員会は、締約国に対し、軍隊への子どもの採用を効果的に防止するため、個々の新規入隊者の年齢が一貫した体系的なやり方で確認されることを確保するよう促す。委員会はさらに、条約に基づく総括所見(CRC/C/NPL/CO/3-5、パラ25)を再確認し、締約国が、締約国のすべての子どもを対象として普遍的な出生登録および身分証明書類へのアクセスを確保するための努力を引き続き強化するよう促すものである。
人権教育および平和教育
17.委員会は、徴集兵および現役兵に対し、選択議定書の規定に関する定期的かつ義務的な教育が実施されているか否かについての情報がないことを遺憾に思う。
18.委員会は、締約国が、徴集兵および現役で軍務に就いている者を対象とする義務的カリキュラムに選択議定書の規定に関する教育が含まれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。

V.禁止および関連の事項

現行刑事法令
19.委員会は、軍隊による子どもの採用を禁じた新憲法第39条第6項を歓迎する。委員会はさらに、国の治安部隊(ネパール陸軍、ネパール警察および武装警察隊)による志願隊員採用の最低年齢は18歳であること、および、これらの治安部隊による採用は、志願に基づいて、かつ自由参加の競争を通じて行なわれなければならない旨の、締約国の説明に留意するものである。しかしながら委員会は、治安部隊または国以外の武装集団による子どもの採用を処罰する具体的法律がないことを懸念する。
20.委員会は、締約国が、軍隊、国以外の武装集団ならびに民間警備会社および軍需産業による18歳未満の子どもの採用および使用ならびに敵対行為における子どもの使用を例外なく明示的に禁止しかつ犯罪化する目的で、刑法改正のプロセスを速やかに進めるよう勧告する。締約国はまた、15歳未満の子どもの徴募を戦争犯罪として定義しかつ処罰するとともに、国際刑事裁判所ローマ規程の批准を検討するべきである。
不処罰
21.委員会は、強制的失踪調査、真実および和解委員会法(ビクラム暦2071年)(2014年)の一部規定を無効とした2015年2月の最高裁判所判決を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の平和復興省による継続的活動には留意しながらも、軍隊および国以外の武装集団による子どもの使用および採用に関連した事件の捜査、訴追および有罪判決の件数および結果に関する情報がないことを遺憾に思うものである。委員会は、同法において、国の軍隊または国以外の武装勢力による子どもの採用が明示的に犯罪とされておらず、これらの行為が処罰されないままになってしまうおそれがあることを深く懸念する。
22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 強制的失踪調査、真実および和解委員会法に関する2015年2月の最高裁判所判決を全体として尊重しかつ実施すること。
  • (b) 軍隊および武装集団による子どもの採用および使用について迅速かつ公平な捜査が行なわれること、ならびに、実行犯とされる者が訴追されることおよび有罪判決を受けた者が十分に処罰されることを確保すること。
  • (c) 過去の国内武力紛争の際に行なわれた選択議定書上の犯罪の実行犯を捜査し、訴追しかつ処罰するための努力を強化すること。
域外裁判権および犯罪人引渡し
23.委員会は、締約国の法律で、締約国において永住許可を有さない外国人が締約国の利益に反してまたは締約国の住民に対して行なった犯罪についての域外裁判権が定められていることに留意する。しかしながら委員会は、双方可罰性が犯罪人引渡しの要件とされていることを懸念するものである。
24.委員会は、締約国が、選択議定書で禁じられている行為(軍隊もしくは武装集団への子どもの徴集もしくは採用または敵対行為に参加させるための子どもの使用を含む)について、当該犯罪がネパール国民もしくはその他の形で締約国と緊密なつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を設定するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、選択議定書上で対象とされている犯罪を理由とする犯罪人引渡しについて双方可罰性要件が適用されないことを確保することも勧告するものである。

VI.保護、回復および再統合

被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置
25.委員会は、締約国に入国する子どもの難民、庇護希望者および移住者(保護者のいない子どもを含む)であって、国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもを早い段階で特定するための機構が設けられていないことを懸念する。
26.委員会は、締約国が、過去に武力紛争があった国または現在武力紛争が生じている国から来た子どもの難民、庇護希望者または移住者(保護者のいない子どもを含む)であって、敵対行為に関与させられた可能性のある子どもを早い段階で特定するための機構を整備するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、このような特定の担当者が子どもの権利、子どもの保護および事情聴取スキルについての訓練を受けていることを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、そのような子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助が提供されることを確保するための対応要綱および専門的サービスを発展させるよう勧告する。
身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助
27.委員会は、ネパール政府、ネパール共産党統一毛沢東主義派および国際連合との間で2009年に調印された具体的な除隊およびリハビリテーションのための枠組みにおいて、当初2973名の子ども兵士が対象とされたことに留意する。しかしながら委員会は、これらの子どもについて教育上の措置しかとられておらず、心理社会的処遇、武力紛争への直接の関与から生じた精神的トラウマについてのカウンセリング、または紛争被害者としての適切な補償が提供されていないことを懸念するものである。委員会はまた、多くの子ども兵士がこのプログラムの対象とされておらず、現在、被害者として認知されることならびに適切な援助および補償にアクセスすることに関して多くの阻害要因に直面していることも懸念する。
28.委員会は、軍隊もしくは武装集団に採用されていた子どもまたは敵対行為で使用された子ども全員に対し、身体的および心理的回復のためのサービスが提供され、かつリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムへのアクセスが保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。このような措置には、これらの子どもが置かれている状況の慎重なアセスメント、これらの子どもが利用可能な法的助言サービスの強化、ならびに、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に敏感な、子どもおよびジェンダーに配慮した、かつ学際的な援助の提供が含まれるべきである。締約国は、子どもの権利条約に基づく次回の報告書で、この点に関してとられた措置および当該措置を享受した子どもの人数についてのさらなる情報を提供するよう求められる。

VII.国際的な援助および協力

国際協力
29.委員会は、包括的和平合意およびその他の取決めの実施を支援するため、2007年1月にネパール平和信託基金が設置されたことを歓迎する。
30.委員会は、締約国が、赤十字国際員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施における国際連合児童基金その他の国際連合機関との協力の強化を模索するよう勧告する。

VIII.通報手続に関する選択議定書の批准

31.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。

IX.フォローアップおよび普及

32.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁(国防省を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
33.委員会は、選択議定書ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.次回報告書

34.選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される次回の定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2017年1月25日)。