総括所見:ネパール(第2回・2005年)


CRC/C/15/Add.261(2005年9月21日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年5月20日に開かれた第1032回および第1033回会合(CRC/C/SR.1032 and 1033参照) においてネパールの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.30)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、率直かつ豊かな情報を含んだ締約国の第2回定期報告書、および、事前質問事項(CRC/C/Q/NPL/2)に対する文書回答の提出を歓迎する。報告書の提出が遅れたことは遺憾であるものの、これらの文書は、締約国における子どもの状況をいっそう明確に理解させてくれた。委員会はさらに、代表団との間に開かれたかつ建設的な対話が持たれ、かつ、議論の最中に行なわれた提案および勧告に対して積極的な反応があったことに、評価の意とともに留意するものである。

B.積極的側面

3.委員会は、条約の実施の増進を目的とした以下の法律の採択に留意する――(a) 危険な労働の定義を定め、かつ16歳未満の子どもの雇用を禁じた児童労働(禁止および規制)法(2000年)、および、(b) 債務労働者の解放を成文化し、カマイヤ(債務労働者)の労働慣行に関与していた使用者を処罰し、かつ政府によるカマイヤ救援基金を設置したカマイヤ禁止法(2002年)。
4.委員会は、条約の実施の増進を目的とした、以下の条約の批准を歓迎する――(a) 人身売買および他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(2002年)、ならびに、(b) 〔国際労働機関の〕強制労働条約(1930年、第29号)(2002年)、最低年齢条約(1973年、第138号)(1997年)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2002年)。
5.委員会は、子どものための国家行動計画(2005~2015年)の採択を歓迎する。
6.委員会はまた、第9次計画(1997~2002年)に、条約にしたがった子ども開発政策が含まれたことも歓迎する。
7.委員会はさらに、その任務に条約の実施の増進を含む以下の機関が設置されたことを歓迎する――(a) 国家人権委員会(2000年)、とくに子どもの権利デスク、(b) 国家女性委員会(2002年)、(c) 国家ダリット委員会(2002年)、(d) 20以上の郡に設置された子どもクラブ、および、(e) 国家貧困緩和基金。
8.委員会は、締約国が、「同国における暴力の雰囲気および国内武力紛争に留意しながら人権および国際人道法の遵守を監視する」国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の事務所を設置する旨を定めた協定を、2005年4月11日にOHCHRと締結したことを歓迎する。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

9.委員会は、武力紛争のために不安定および暴力が蔓延する全般的情勢に関わって締約国が直面している諸課題を認知する。委員会はまた、貧困水準がきわめて高く、それが重い債務負担によって悪化していること、ならびに、多くの伝統的な信仰および慣習ならびにカースト制度が存在していることにも留意する。これらはいずれも、条約に掲げられた子どもの権利の全面的実現における進展を阻害する要因である。

D.主要な懸念領域および勧告

武力紛争が条約の実施に及ぼす影響
10.委員会は、締約国とネパール共産党(毛沢東主義派)との間で行なわれている武力紛争がネパールの子どもたちに著しい悪影響を及ぼしており、かつ、これによって最低限の条約の実施さえ困難な状態が生じてきたことに留意する。委員会は、武力紛争ならびに2000年および2004年非常事態宣言により生じた恐怖、不安定および不処罰の雰囲気が、締約国の子どもの健全な発達に対して深刻な身体的および心理的悪影響を及ぼしてきたことに留意するものである。委員会は、毛派の反乱兵による、学校の大規模な爆撃、破壊および閉鎖について著しい懸念を覚える。これは、子どもの教育に対する基本的権利の侵害である。委員会はまた、この総括所見でも概観されているとおり、紛争が、締約国における条約の実施について既に存在している諸問題の悪化にもつながってきたことにも、深い懸念とともに留意する。
11.委員会はさらに、議会が2002年に解散させられて存在しないことにより、締約国が法律を制定しもしくは改正することも、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を含む国際条約を批准することもできないことに、深刻な懸念とともに留意する。
12.締約国の領域の諸地域を国家以外の主体が事実上の統制下に置いていることに留意しつつ、委員会は、締約国が全面的責任を負っていることを強調するとともに、ネパール共産党(毛沢東主義派)に対し、同党が展開している地域で子どもの権利を尊重するよう促す。委員会は、締約国に対し、いかなるときにも条約を尊重し、かつ、非常事態を含む例外的状況下にあってさえ条約のいかなる規定からも逸脱しない、自国の義務を想起するよう求めるものである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもに対する暴力に関わる不処罰と闘うためにいっそう強力な措置をとるよう、勧告する。
13.委員会は、締約国に対し、議会を含む締約国の通常の機能を回復し、かつ条約の両選択議定書を批准するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。

1.実施に関する一般的措置

前回の勧告
14.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.34)の検討後に委員会が採択した総括所見の勧告の一部、とくにパラ25(立法)、26(差別の禁止)、29(データ収集)、30(子どものための資源配分)、31(出生登録)、32(基礎的サービスへのアクセス)、33(難民の子ども)、34(虐待およびネグレクト)、35(ストリートチルドレン)、36(児童労働)、37(売買および取引)および38(少年司法)に掲げられたものについて、十分なフォローアップが行なわれていないことを遺憾に思う。これらの勧告は、この総括所見でもあらためて繰り返されているところである。
15.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を実施するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
立法
16.委員会は、条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で国内法(とくに挙げておくべきものとして1992年子ども法)を改正しようとする締約国の計画を歓迎する。しかしながら委員会は、このような作業の進行速度について若干の懸念を表明するものである。
17.委員会はまた、法律、とくに地方法、慣習法および宗教法における相違によって子どもの権利の保護および促進が不均衡かつ差別的なものとなっていることに関わる前回の懸念も、あらためて表明する。
18.委員会は、締約国が、法律(とくに1992年子ども法)と条約の原則および規定との全面的一致を達成するプロセスを引き続き強化するよう、勧告する。委員会はさらに、すべての年齢の子どもが裁判所に保護を求められることを確保するため、締約国が、子ども法に定められた現行の年齢制限を撤廃するよう勧告するものである。
19.委員会は、締約国に対し、とくに法執行および意識啓発活動を通じ、子どもの権利の保護および促進を目的とした現行法の実施を強化するよう、促す。
国家的行動計画
20.委員会は、子どものための国家行動計画(2005~2015年)の採択は歓迎しながらも、締約国に現在存在する治安上の懸念によって資源が基礎的社会サービスから相当に転用されており、そのためこの国家行動計画の実施が阻害される可能性があることを、依然として懸念する。
21.委員会は、締約国に対し、国家行動計画の効果的実施のために十分な資源を配分するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が、とくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求め、かつ同計画の実施に市民社会の関与を得るよう、勧告するものである。
調整
22.委員会は、郡子ども福祉委員会、中央子ども福祉委員会、女性・子ども・社会福祉省、〔同省の〕女性開発局、郡女性開発部および郡開発委員会のいずれもが、条約の実施に関わる事柄について役割を果たしていることに留意する。委員会は、最近採択された国家行動計画の実施におけるものも含め、これらの機関間で十分な体制に基づく明確な調整が行なわれていないことに、懸念を表明するものである。委員会はまた、これらの機関に現在配分されている資源がそれぞれの職務を効果的に遂行するために十分ではない可能性があることも、懸念する。
23.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関わるあらゆる活動の調整、監視および評価のための、省庁および諸部門を横断した単一の機構を指定しまたは設置するよう、勧告する。このような機関は、国家計画委員会との緊密な調整の対象とされ、かつその職務を効果的に遂行するための強力な権限ならびに十分な人的資源および財源を提供されるとともに、市民社会の構成員、子どもの権利の専門家その他の専門家ならびに政府代表の参加を得るべきである。
独立の監視
24.委員会は、締約国に、国家人権委員会(とくに子どもの権利デスク)ならびに国家女性委員会および地区子ども福祉委員会が設置されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国内のすべての子どもがこれらの苦情申立て機構にアクセスでき、およびこれを利用できるかについて、ならびに子どもの権利デスクの権限が限られていることについて、懸念を覚えるものである。委員会はまた、これらの機関がその権限を履行するために締約国が与えている政治的および財政的支援が不十分であることも、懸念する。さらに委員会は、現に活動中である郡子ども福祉委員会の数が限られていることを懸念するものである。
25.国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、国家人権委員会および他の独立の監視機関が条約の実施を効果的に監視できるよう十分な人的資源および財源を配分されることを確保するともに、これらの機関が子どもにとって容易にアクセスできかつ利用者にやさしいものであることを確保するためにあらゆる効果的な措置をとるよう、奨励する。委員会は、締約国が、子どもの権利デスクの権限を拡大して個別事案および子どもからの苦情への対応も含めることを検討するよう、提案するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもが苦情申立て機構を効果的に活用することを促進するため、意識啓発の努力を強化するよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、郡子ども福祉委員会の権限の強化を検討するよう提案するものである。
26.委員会は、締約国に対し、現在の委員会の任期が2005年5月25日に終了して以降も、国家人権委員会の有効性および独立性を維持するよう、強く促す。
子どものための資源
27.委員会は、締約国が直面している経済的および政治的困難、ならびに、基礎的社会サービスおよび教育への支出を増額するために行なわれている努力は承知しながらも、子どものためにおよび子どもの権利の実施のために十分な予算配分が行なわれていないことを懸念する。
28.条約第4条の実施を強化する目的で、かつ第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国が、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ権利を基盤とするアプローチを活用しながら子どもの権利の実施を確保するための予算配分を優先させるよう、勧告する。これとの関係で、委員会は、締約国に対し、国際協力の枠組みのなかで資源が効率的かつ効果的に配分されることを確保するよう、促すものである。
データ収集
29.委員会は、締約国に包括的かつ最新の統計データが存在しないこと、および、条約で対象とされているすべての分野についての十分な全国的データ収集システムが設置されていないことを、懸念する。
30.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢、地方行政区および被扶養関係によって細分化されたデータ収集および指標のシステムを発展させるよう、勧告する。このシステムは、とくに脆弱な立場に置かれた子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子どもおよびひとり親家庭の子どもを含む)をとくに重視しながら、18歳に達するまでのすべての子どもを対象とするべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための法律、政策およびプログラムの立案に際してこれらの指標およびデータを活用するよう、奨励する。委員会は、締約国が、この点に関してとくにユニセフの技術的援助を求めるよう勧告するものである。
普及
31.定期報告書の作成に市民社会の構成員(子どもを含む)を関与させ、かつ条約についての情報を普及するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、条約の原則および規定に関する意識を高めるためのこれらの措置が不十分であることを懸念する。とくに委員会は、条約の原則および規定がすべての教育段階のカリキュラムに編入されておらず、かつ、子どものためにおよび子どもとともに働く専門家の研修および啓発を導入する体系的計画がないことを、遺憾に思うものである。
32.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなおよび子どもの間で同様に広く認識されかつ理解されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもおよびその親ならびに子どものためにおよび子どもとともに働く専門家集団(とくに議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員、保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象として、条約の権利に関する体系的な教育および研修を実施することも勧告するものである。これとの関連で、委員会は、すべての教育段階の公式カリキュラムに人権教育が含まれるべきことを勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関してユニセフおよびOHCHRの技術的援助を求めることを検討するようにも勧告するものである。
市民社会との協力
33.委員会は、公的機関によって市民社会組織に課されている広範な制限(再登録要件、検閲、渡航禁止、および、ドナーから助成金を受領する前に政府の認可を得なければならないとする要件など)について懸念を表明する。
34.委員会は、条約の全面的実施における市民社会の役割の重要性を強調するとともに、締約国が、締約国における市民社会組織の自由な活動を妨げるすべての法律上、実際上および行政上の障壁を撤廃するよう、勧告する。

2.一般原則

差別の禁止
35.差別が憲法その他の関連法で禁じられていること、および、差別解消のために締約国がさまざまな努力を行なっていることには留意しながらも、委員会は、女子およびもっとも脆弱な立場に置かれた集団(ダリット・コミュニティ、先住民族または民族的マイノリティ集団に属する子ども、子どもの難民および非ぼ希望者、ストリートチルドレン、障害のある子どもおよび農村部に住んでいる子どもなど)に対する事実上の差別が広く蔓延していることについて、あらためて深い懸念を表明する。委員会は、差別的態度が蔓延している結果、脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもが虐待および搾取の被害者にとりわけなりやすいことに、重大な懸念とともに留意するものである。
36.とくに、教育、雇用、婚姻、公共の場所(水場および礼拝場所を含む)へのアクセスの面でダリットに対して根強く行なわれている事実上の差別についての人種差別撤廃委員会の懸念(CERD/C/64/CO/5)を参照しつつ、委員会は、このような形態の差別の蔓延が締約国におけるダリットの子どもの身体的、心理的および情緒的ウェルビーイングに及ぼす有害な影響について、深刻な懸念を表明する。
37.委員会は、第2条にしたがい、管轄内のすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保する目的で、締約国が、差別の禁止に対する権利を保障した現行法の実施を確保し、かつ必要な場合には適切な法律を採択するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どものための社会サービスを優先させ、かつ対象を明確にしながら提供するとともに、これらの子どもが搾取から保護されることを確保するためにあらゆる効果的な措置をとるよう、促すものである。委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆情報キャンペーンを開始するよう奨励する。
38.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの意見の尊重
39.意見を聴かれる子どもの権利を促進するため、締約国が市民社会の構成員と協力しながら行なっている取り組みは留意しながらも、委員会は、子どもの生活のあらゆる分野において子どもの意見が十分に考慮されておらず、かつ、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、または子どもに関連する政策およびプログラムに、第12条の規定が全面的に統合されていないことを懸念する。
40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第12条にしたがい、社会のあらゆる分野、とくに家庭、学校およびコミュニティにおいて、自己に影響を与えるすべての事柄について子どもの意見の尊重を促進しかつそのための便宜を図り、かつ子どもの参加を確保すること。
  • (b) とくに監護権をめぐる紛争および子どもに影響を与えるその他の法的手続において、子どもの権利〔意見〕が聴かれ、かつその意見が考慮されるよう、法律を改正すること。
  • (c) 子どもの意見が考慮されるようにし、かつ子どもの参加を可能とする目的で、とくに親、教員、政府行政機関の職員、司法関係者および社会一般に対し、子どもの権利に関する教育的情報を提供すること。

3.市民的権利および自由

出生登録および国籍に対する権利
41.出生登録が法律で義務づけられていることには留意しながらも、委員会は、締約国の努力にもかかわらず、低い出生登録率が、とくに農村部において依然として問題となっており、かつ、出生登録を含む「行政サービス」を遂行する地方公的機関の能力を減少させてきた紛争によって悪化していることを、懸念する。委員会は、出生時に登録されなかった子どもが、年齢の立証が不可能なために、武装集団への徴募を含む虐待および搾取の被害をより受けやすいことを懸念するものである。
42.委員会はまた、多くの集団の子どもが登録されず、かつ(または)ネパール市民権を得る資格を有していないことも懸念する。これにより、これらの子どもによる基本的権利および自由(とくに親を知り、かつ親によって養育される権利)の全面的享受に重大な悪影響が生じている。委員会は、出生、死亡その他の身元事項(人口動態登録)法(1976年)の現行規定上、母が子の登録に際して困難を経験する場合があり、かつ、同様に、市民権法(1964年)が子どもに対して母の名による国籍請求を認めていないことを、とりわけ懸念するものである。その結果、父が外国人である子ども、遺棄された子ども、両親がいない子ども、シングルマザーの子どもおよびバディ・コミュニティの子どもは、父の身元を明らかにできない場合、市民権を取得できない。加えて、委員会は、ブータン難民の出生登録が公的機関によって行なわれていないことに懸念を表明する。
43.条約第7条に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための努力(意識啓発キャンペーンを含む)を強化するよう促す。これとの関連で、委員会は、出生登録の事務を委ねられた地方政府当局が、出生が時機を失することなく実効的に登録されることを確保するために積極的に地域コミュニティの関与を得ることを、締約国が確保するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフ、非政府組織および市民社会の他の構成員の援助を求めるよう促す。
44.委員会はさらに、締約国に対し、条約第7条および第8条との全面的一致を確保するため、関連の法律、とくに出生、死亡その他の身元事項(人口動態登録)法(1976年)、市民権法(1964年)ならびに憲法第9条1項、2項および5項を優先的課題として改正するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、難民の出生登録に関する政策を優先的課題として見直すとともに、締約国で出生した難民および庇護希望者の子ども全員に対して出生証明書が発行されることを確保するようにも、勧告するものである。
プライバシーの保護
45.委員会は、「罪を犯した子ども、強姦被害者または困難な状況にある子どもの素性がメディアで明らかにされ続けている」(〔締約国報告書〕パラ124)ことに、懸念とともに留意する。これは条約第16条の明確な違反である。
46.委員会は、締約国に対し、ネパールで放送されるすべての資料において子どものプライバシー権が尊重されることを確保するための、行動規範および(または)自主規制などの機構を設置するとともに、メディア専門家を対象として、子どものプライバシー権に特段の関心を払いながら適切な人権研修が行なわれることを確保するよう、促す。
体罰
47.委員会は、子どもの体罰および不当な取扱いが家庭、学校その他の施設において蔓延していることを懸念する。委員会は、1992年子ども法および1963年ムルキアイン(民法)の規定で、家庭、学校その他の施設および諸形態の子どものケアにおける体罰が規定されていることを懸念するものである。これは条約第19条に明確に違反している。委員会は、子どもにとって有害な伝統的慣行を法律によって具体的かつ法的に〔重複ママ〕禁止することの重要性を強調するものである。
48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭、学校その他の施設における子どもの体罰および不当な取扱いを法律で明示的に禁止すること。
  • (b) 条約第19条との一致を確保するため、子ども法および1963年ムルキアインの関連規定の改正プロセスを加速させること。
  • (c) 体罰および不当な取扱いが子どもに及ぼす悪影響についての情報を、親、教員および子ども(とくに施設の子ども)とともに働く専門家に対して提供するための意識啓発キャンペーンを強化するとともに、このプロセスに子どもおよびメディアを積極的に関与させること。
  • (d) 前向きな、参加型の、非暴力的形態のしつけおよび規律の維持が、体罰に代わる手段として、社会のあらゆるレベルで、子どもの人間の尊厳と一致する方法でかつ条約(とくに第28条2項)にしたがって行なわれることを確保すること。

4.家庭環境および代替的養護

親からの子どもの分離/家庭環境を奪われた子どもと代替的養護
49.委員会は、締約国で現在行なわれている武力紛争の結果、ますます多くの家族および子どもが家族の解体および分離のおそれに直面していることを深く懸念する。委員会は、武力紛争のみならずHIV/AIDSの結果としてもますます多くの子どもが入所型養護施設に措置されており、かつ、これらの子どもの多くにはまだ両親の双方もしくは一方および(または)近親者がいることを、同様に懸念するものである。さらに委員会は、これらの入所型養護施設が締約国の定めた基準を満たしておらず、かつその多くは登録されていないことを懸念する。委員会はまた、これらの施設の質に関する十分かつ効果的な監視が行なわれていないことも懸念するものである。
50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 親としての義務の履行に関して親を支援するための、コミュニティの組織および社会保障手当を通じたプログラムを策定しかつ実施するとともに、これとの関連で、武力紛争の影響を受けている家族およびもっとも脆弱な立場に置かれた家族(ひとり親世帯など)に特段の注意を払うこと。
  • (b) 拡大家族のような既存の組織を強化するためのプログラムを実施することによって分離された家族の再統合を図り、かつ、十分な資源および十分に訓練されたスタッフを備えた里親養護制度を導入するために、効果的措置をとること。
  • (c) 入所型養護施設が条約に一致した質的基準を満たすこと、これらの施設が登録されかつ定期的に監視されること、および、このような措置が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられるようにするため、条約第25条にしたがい、これらの施設への子どもの措置が定期的に再審査されることを、確保すること。
親が収監されている子ども
51.委員会は、相当数の子どもが、しばしば国際基準を満たさない劣悪な環境のもと、親とともに成人刑務所で生活していることを懸念する。
52.委員会は、締約国に対し、子どもが親とともに刑務所で生活するという現在の慣行を、このような滞在をそれがその子どもの最善の利益である場合に限定し、かつ刑務所における生活環境が子どもの調和のとれた発達のためのニーズにとってふさわしいものであることを確保する目的で、見直すよう勧告する。委員会はまた、親が収監されている子どもが、たとえば拡大家族における十分な代替的養護を提供され、かつ親との定期的接触を認められるべきことを勧告するものである。
養子縁組
53.相当数のネパール人の子どもが外国人によって養子とされていることにかんがみ、かつ締約国で現在行なわれている武力紛争の文脈において、締約国は、国際養子縁組に関する明確な政策および適切な法律がなく、そのため赤ちゃんの取引および密輸のようなさまざまな慣行が行なわれていることを懸念する。委員会は、親の責任の停止をともなう事案について、適正な司法手続が(親または保護者の養育能力に関する技術的アセスメントを含む)存在しないことをとりわけ懸念するものである。委員会はまた、家事労働者としての子どもの搾取をともなう可能性がある、いわゆる非公式養子縁組の慣行についても懸念を表明する。
54.委員会は、締約国に対し、国際養子縁組の慣行が条約の原則および規定、とくに第21条と全面的に一致することを保障するため、この形態の養子縁組に関する政策および法規定を策定しかつ実施するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) とくに子どもの取引および密輸を防止する目的で、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准すること。
  • (b) 養子縁組事案を担当する専門家が、事案をハーグ条約に照らして審査しかつ処理するために必要な技術的専門性を全面的に備えることを確保する目的で、国内養子縁組および国際養子縁組に関する現行の機構および手続、とくに国および郡の段階の意思決定機関の役割および責任を見直すこと。
  • (c) ネパール人の子どもの養子縁組に関する厳格な基準を策定しかつ実施し、とくに武力紛争の結果として親族から分離された子どもの親または近親者を効果的に追跡するための合理的期間を確保するとともに、子どもの親の貧困が養子縁組のための法的根拠になりうると定めた「ネパール人の子どもを外国国民による養子縁組の対象とするための条件および手続」(2000年)の規定を廃止すること。
  • (d) すべての養子縁組関連事案において、親の責任の停止および(または)子どもの分離を防止するためにあらゆる手段が尽くされたことが明確な基準のひとつとされることを確保すること。
  • (e) 子どもが搾取されることを防止し、かつ子どものすべての権利(教育および保健ケアに対する権利を含む)が全面的に尊重されることを確保するため、近親者その他の者に子どもを措置する慣行を規制しかつ監視すること。
虐待およびネグレクト(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)
55.子ども法で、親、保護者または教員による子どものいかなる残虐な取扱いも禁じられていることには留意しながらも、委員会は、締約国で子どもの虐待およびドメスティックバイオレンスが蔓延していることを危惧するとともに、締約国で現在施行されている国内法は、子どもおよび女性に対し、虐待およびドメスティックバイオレンスからの十分な保護を与えていないという見解に立つ。とくに委員会は、子どもを残虐な取扱いから保護している子ども法が効果的な救済機構について定めていないこと、および、同法の違反が国法上の犯罪とみなされておらず、そのため民事訴訟手続に基づく救済措置しか提供されないことに、留意するものである。委員会はさらに、議会が解散前の2002年4月に通過させたドメスティックバイオレンス統制法案が正式に制定されなかったことを遺憾に思う。委員会は、締約国において、法律で処罰される犯罪としての女性および子どもに対する暴力に関する意識が、法執行官等の間においても不十分であることを懸念するものである。
56.委員会は、子ども法において児童ホーム、リハビリテーションセンターおよび孤児院で提供されているケアの査察についても規定されていることには留意しながらも、適切な苦情申立て手続が設けられていないこと、および、虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもの安全な避難所が指定されていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの虐待およびネグレクトの訴追が、法制度に重要な制度基盤上の問題があることによって阻害される可能性があることも、懸念するものである。
57.委員会は、締約国が、とくに以下の手段をとることによって、子どもの虐待およびネグレクトを防止するために必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) この現象を防止しかつ減少させる目的で、その原因および範囲についての研究を行ない、かつ、子どもの虐待、ネグレクトおよびドメスティックバイオレンスの事件の多発および増加に対応するための包括的戦略を確立すること。
  • (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家に対し、虐待およびネグレクトが疑われる事案についての通報義務を必須とする法律を導入するとともに、これらの専門家を対象として不当な取扱いの発見、通報および対応についての研修を実施すること。
  • (c) 被害者が援助を求めることを妨げる社会文化的障壁に対応しながら、子どもの不当な取扱いの影響、および、子どものしつけおよび規律のための代替的措置についての意識を高める公衆教育キャンペーンを実施すること。
  • (d) 子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的機構を設置するとともに、子どもの虐待およびネグレクトの加害者が適正に訴追されることを確保し、かつ証人および被害者の保護のための適切な制度を設けること。
  • (e) 性的虐待の被害者、および、虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害を受けた他のあらゆる子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのサービスを提供するとともに、NGOとの協力等も図りながら、被害者の犯罪者扱いおよびスティグマを防止するために適切な措置をとること。
  • (f) とくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めること。

5.基礎保健および福祉

障害児
58.障害のある人に関する国家政策が策定されたこと、および、障害のある子どもの権利について定めた法律(1982年障害者保護福祉法、1971年教育法および1992年子ども法を含む)が存在すること、ならびに、障害のある人のためのプログラムを発展させかつ支援する国家障害者サービス調整委員会が設置されたこと(2000年)は認知しながらも、委員会は、以下のことを依然として懸念する。
  • (a) これらの法律およびプログラムの実施が不十分であり、かつ、必要な資源が締約国によって配分されていないこと。
  • (b) 障害のある子どもに関わる全国的な早期発見・早期介入システムが設けられていないこと。
  • (c) 障害のある子どもの教育制度および社会一般へのインクルージョンを促進するための努力(障害のある人に対する伝統的態度を変革し、かつ情報、医療施設等へのアクセスを向上させるための努力を含む)が不十分であること。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 障害のある子どもに関する包括的な政策の策定プロセスを速やかに進めるとともに、必要な措置、とくに効果的実施のための十分な資源の配分を行なうこと。
  • (b) 障害の原因および予防方法を明らかにするための研究を実施し、かつ、早期の発見、付託および介入のための全国的システムを設置すること。
  • (c) 適当な保健ケア、教育サービスおよび就労機会へのアクセスの観点からこれらの子どもの状況を評価するとともに、障害のある子どものためのサービスを強化し、その家族を支援し、かつこの分野における専門家を訓練するための十分な資源を配分すること。
  • (d) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に照らして、とくに、教員を対象とする特別訓練に対していっそうの注意を向け、かつ物理的環境(学校施設、スポーツ施設および余暇施設ならびに他のあらゆる公共の場所を含む)を障害のある子どもにとってアクセス可能なものとすることにより、障害のある子どもの普通教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励すること。
  • (e) 親、および、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門スタッフ(教員を含む)を対象とする訓練のための技術的協力を、とくにユニセフおよびWHOに対して求めること。
健康および保健サービス
60.委員会は、児童期疾病統合管理戦略を実施するための作業部会の設置(1997年)を歓迎するとともに、5歳未満の子どもの予防接種率を向上させるための締約国の努力(包括的なはしか予防接種キャンペーンが最近完了したことを含む)を称賛する。にもかかわらず、委員会は、保健サービスおよび社会サービスの資源が著しく制約されており、かつ、締約国の子どもが利用できる保健ケアの全般的な質および利用可能性が、とくに貧しい家族の間でおよび農村部において深刻なほど不十分であるという、締約国の懸念を共有するものである。とくに、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 乳児死亡率、5歳未満児死亡率および妊産婦死亡率が高く、かつ締約国における平均余命が短いこと。
  • (b) 予防可能な児童期疾病(下痢、栄養不良、貧血症、腸感染症、細菌感染症、はしかおよび肺炎を含む)により、引き続き子どもの生存および発達が脅かされていること。
  • (c) 産前産後のケアが不十分であり、やはり子どもの生存および発達を阻害する要因となっていること。
  • (d) とくに全般的なサービスの欠如に苦しんでいる農村部において、衛生設備および安全かつ清潔な水へのアクセスが不十分であること。
  • (e) とくに農村部において健康、個人衛生および公衆衛生に関する意識が低く、かつ、子どもの健康にとって有害となるおそれがある伝統的慣行(近代的医療施設ではなく呪術医に相談すること、および、下痢をわずらっている子どもに水を与えないことなど)が蔓延していること。
61.委員会はまた、危険な状況に置かれた子ども(ストリートチルドレン、児童労働者、子どものセックスワーカーおよびダリットの子どもを含む)が有する健康面の特別な脆弱性およびニーズに対応するための取り組みがほとんど行なわれていないことにも、懸念とともに留意する。
62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 適切な資源(すべての子どものための基礎的医薬品を含む)を十分に提供され、かつとくに農村部を重点的に対象とする基礎的な保健ケアおよび保健サービスへのアクセスを確保する目的で、国際協力等も通じ、保健インフラを向上させるためのあらゆる適当な措置を引き続きとること。
  • (b) 予防接種の実施範囲を同国全域に拡大するための努力を引き続き強化すること。
  • (c) プライマリーヘルスケアサービスへのいっそうのアクセスを促進すること。
  • (d) ハイリスク集団に属する子どものニーズに特段の注意を払いながら、児童期疾病と闘うための措置を引き続き強化すること。
  • (e) 一般公衆、とくに家族、子どもおよび保健ケアの提供に従事する者(伝統的保健従事者を含む)に対し、基礎的な救急ケアおよび保健ケアに関する適切な知識を提供するための意識啓発の努力を進めること。
  • (f) 量的データおよび質的データ双方の適時性および信頼性を確保しながら、とくに重要な保健指標との関連でデータ収集システムを強化するとともに、条約の効果的実施のための、調整のとれた政策およびプログラムの立案のために当該システムを活用すること。
  • (g) 子どもの健康を向上させるための協力および援助の追加的経路を、諸機関のなかでもとくにWHOおよびユニセフとの間で追求すること。
思春期の健康
63.委員会は、思春期の健康に関わる問題(発達保健、精神保健およびリプロダクティブヘルスに関わる懸念を含む)に対し、締約国が不十分な注意しか向けていないことを懸念する。委員会は、青少年が身体的および精神的健康に関わる特別なリスク(性的虐待、暴力、薬物およびアルコールの濫用、ならびに、HIV/AIDSを含む性感染症によるものを含む)に直面していること、および、リプロダクティブヘルスに関わる問題についての青少年の意識水準が低いことに、懸念を表明するものである。
64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 思春期の健康問題の性質および規模を評価するための包括的な研究を実施するとともに、青少年の全面的参加を得ながら、思春期の健康に関する政策およびプログラムの立案のために当該研究結果を活用すること。その際、とくにリプロダクティブヘルス教育および子どもに配慮したカウンセリングサービスを通じて性感染症を予防することに特段の焦点を当て、かつ、これとの関連で思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮すること。
  • (b) 発達保健および精神保健に関するカウンセリングサービスならびにリプロダクティブヘルス・カウンセリングを提供するとともに、これを青少年に対して知らせ、かつ青少年にとってアクセスしやすくすること。
  • (c) 学校カリキュラムにリプロダクティブヘルス教育を編入するための措置をとるとともに、リプロダクティブヘルスについての権利(HIV/AIDSを含む性感染症および早期妊娠の予防を含む)について十分な情報を青少年に提供するための意識啓発キャンペーンを実施すること。
  • (d) 青少年に関わる健康問題についての専門性を有する国際機関、とくにUNFPA〔国連人口基金〕、ユニセフおよびWHOと引き続き協働すること。
早期婚
65.女子の最低婚姻年齢が18歳であることは認知しながらも、委員会は、とくに一部の民族的および宗教的コミュニティにおいて早期婚の慣習が広く実践されており、かつ、いったん婚姻した女子は、条約に掲げられた子どもとしての権利(教育に対する権利を含む)を享受するための保護を与えられていないという、締約国の懸念を共有する。
66.委員会は、締約国が、早期婚を防止するための現行法の執行を強化するとともに、早期婚の慣行を抑制するための感受性強化プログラムを、コミュニティの指導者、宗教的指導者および社会一般(子どもたち自身を含む)の関与を得ながら発展させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法定年齢未満で婚姻した女子が条約に掲げられた権利(教育に対する権利を含む)を引き続き享受することを確保するための措置をとるようにも勧告するものである。
有害な伝統的慣行
67.委員会は、一部の有害な伝統的慣行(とくにもっとも顕著なものとしてカースト制度ならびにデウキ、クマリ、ジュマ、バディ、カムラリおよびチャウパディのような伝統)が締約国において引き続き蔓延しており、女子に対する極度の危険、健康上の危害および虐待を引き起こしていることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの伝統的慣行がその影響を受けている子どもによる権利の享受に及ぼしている有害な影響に対処するため、締約国が法律による禁止および十分な介入を行なっていないことを遺憾に思うものである。
68.委員会は、締約国が、意識啓発プログラムを強化することにより、子どもの身体的および心理的ウェルビーイングにとって有害であるすべての伝統的慣行を根絶するために必要な措置を、緊急にとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、このような慣行を禁止する法律を採択するよう勧告するものである。
HIV/AIDS
69.委員会は、HIV/AIDSの予防および統制のために締約国が行なっている努力(全国AIDS・性感染症統制センターの設置を含む)を歓迎するものの、とくにハイリスク集団の間で感染件数が増加しておりかつHIV/AIDSが広く蔓延していることを、依然として懸念する。委員会は、HIV/AIDSが、、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもの文化的、経済的、政治的、社会的および市民的権利(条約の一般原則を含む)に与えているきわめて深刻な影響について、とくに差別の禁止、保健ケア、教育、食糧および住居ならびに情報および表現の自由に対する権利を参照しながら、懸念を覚えるものである。
70.委員会は、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもについての一般的討議の日に採択された勧告(CRC/C/80、パラ243)を考慮に入れる等の手段により、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どものための、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重をさらに統合するとともに、この戦略の実施に際して子どもたちの関与を得るよう、勧告する。
社会保障、保育サービスおよび保育施設ならびに生活水準
71.委員会は、締約国において高水準で蔓延している貧困について懸念を表明する。このような貧困は、子ども(とくに農村部に住んでいる子ども、スラムおよび不法占拠地に住んでいる子どもならびに低層カーストおよび民族的マイノリティの子ども)の権利の尊重および充足、ならびに、子どもに十分な保護を提供する家族の能力を阻害している。
72.貧困下で暮らしている子どもの割合が相当に達することにかんがみ、委員会は、社会保障を受給する子どもの権利についての情報が欠乏していることに遺憾の意とともに留意するとともに、条約第26条と全面的に一致した、法令に基づく包括的な社会保障制度が存在しないことに、懸念を表明する。
73.条約第26条および第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 貧困と闘うための戦略を、子どもの権利に対する影響の監視を正当に重視しながら強化するとともに、その戦略の実施を確保するために十分な人的資源および財源(国際援助を通じてのものも含む)を配分すること。
  • (b) 経済的に不利な立場に置かれている家族(とくに農村部、スラムおよび不法占拠地で暮らしている家族)に対して支援および物的援助を提供し、かつ十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するための努力を強化すること。
  • (c) 貧困指標および公式の貧困線を定めること。これにより、締約国は、貧困の程度を定義し、かつ、貧困の緩和および締約国の子どもの生活水準の向上における進展を監視しかつ評価することができるようになるはずである。
  • (d) 社会保障政策を、明確なかつ一貫した家族政策とあわせて確立し、かつ社会的セーフティネットとしての諸給付を子どもの権利の促進のために用いるための効果的戦略を定めるとともに、社会保障制度に十分な財源を提供すること。
74.したがって委員会は、締約国が、社会保障政策を、貧困削減戦略の枠組みのなかで、明確なかつ一貫した家族政策とあわせて確立するとともに、社会的セーフティネットとしての諸給付を子どもの権利の促進のために用いるための効果的戦略を定めるよう、勧告する。〔訳者注/パラ73(d)との重複は原文ママ〕

6.教育、余暇および文化的活動

教育(職業訓練および職業指導を含む)
75.万人のための教育に関する国家行動計画ならびに基礎初等教育基本計画(1997~2002年)および第2次基礎初等教育基本計画(1999~2004年)の策定は歓迎しながらも、委員会は、初等教育が義務的とされていないこと、および、初等教育の完全普及を2000年までに達成するという締約国の目標が、まったく満たされないまま2015年まで延長されたことを、深刻に懸念する。委員会はまた、教育に関する公共支出額が低く、かつ資源が構造的に欠乏していること(これがもっぱら原因となって、資格のある教員の不足、劣悪な物理的インフラ、学校における過密および学校における物質的不足が生じている)ことも、依然として懸念するものである。委員会はまた、中退率が高いこと、通学に関連する隠れた費用の問題もあって教育へのアクセスの面で相当の不平等が存在すること、および、女子および不利な立場に置かれた背景を有する子ども(ダリットの子どもおよび障害のある子どもなど)の相当の割合が教育機会を奪われたままであることも、懸念する。
76.委員会は、締約国が、この分野における予算配分およびとられた措置を、それが教育および余暇活動に対する子どもの権利の漸進的実施に及ぼす影響との関連で注意深く検討するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 初等教育を、すべての子どもに対して義務的かつ無償とし、かつ5年のみの初等学校期間よりも長期のものとすること。
  • (b) 就学率および学校出席率を高め、かつ初等中等教育における高い中退率を減少させるための措置を引き続き強化するとともに、子どもが、受ける資格を有する学校教育を全面的に受けられることを確保すること。
  • (c) 教育に配分される予算の増額のために追加的努力を行なうこと。
  • (d) 女子および男子ならびに都市部および農村部の間に蔓延している格差を解消する目的で、とくに女子を対象として、すべての子どもにとっての教育へのアクセス可能性を向上させるためのさらなる措置をとること。
  • (e) とくに学校の増設、物理的インフラの改善および学校における十分な設備の確保を図ることにより、教育の質を向上させるための措置をとること。
  • (f) 教員養成の取り組みを優先的に進めるとともに、資格のある教員、とくに女性およびあらゆる民族集団の出身者の採用を拡大すること。
  • (g) 貧しい家庭の子どもおよび周縁化された集団の子どもを重点的対象とするプログラムを導入し、かつ全面的に実施すること。
  • (h) とくに農村部における公的な乳幼児期教育の提供を引き続き強化するとともに、訓練を受けた就学前教育教員を増員し、かつ乳幼児期教育の価値に関する親の意識を高めること。
  • (i) 学校における体罰の使用と闘うために適切な立法上の措置をとること。
  • (j) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、あらゆる教育段階の学校カリキュラムに、子どもの権利を含む人権教育を含めること。
  • (k) 教育差別禁止条約(1960年)および技術教育および職業教育に関する条約(1989年)を批准すること。
  • (l) とくにユニセフおよびユネスコのさらなる技術的援助を求めること。
77.委員会はさらに、締約国に対し、紛争(および非常事態)が教育制度に及ぼす悪影響を解消し、かつ、学校の再建および再開ならびに教員および児童生徒の学校復帰を促進するためのあらゆる措置を優先的にとるとともに、これらの目的のために十分な資源が提供されることを確保するよう、勧告する。

7.特別な保護措置

子どもの難民/庇護希望者および国内避難民
78.委員会は、ノンルフールマンの原則に根ざした公式の政策が2004年8月に採択されたことを歓迎するものの、締約国が、難民の地位に関する条約、無国籍者の地位に関する条約または無国籍の削減に関する条約をまだ批准しておらず、かつ、難民および庇護希望者の権利を取り上げた国内法が定められていないことを、遺憾に思う。これとの関連で、かつこのような者の多数が子どもであることにかんがみ、委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) ネパールのブータン人キャンプで差別および不当な取扱い(女性および子どもの性的虐待が多数発生していることをふくむ)が行なわれているとの報告があること。
  • (b) チベット人庇護希望者(保護者のいない未成年者を含む)がネパールによって中国に送還されているとの報告があること、および、チベット難民福祉事務所が2005年1月に閉鎖されたこと。
  • (c) 一定のカテゴリーの庇護希望者(具体的には、1990年にネパールに到着したチベット人、およびブータン人)しか難民申請を行なえないのが原則とされていること。
  • (d) ブータン難民が、移動の自由ならびに健康および教育に対する権利の享受を制約されていること。
79.委員会は、継続中の武力紛争により自宅を強制退去させられた国内避難民(子どもを含む)の状況について締約国から情報が提供されなかったことに、遺憾の意とともに留意する。
80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 難民の地位に関する条約、無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約を優先的課題として批准すること。
  • (b) 国内避難民、難民および庇護希望者であるすべての子どもならびにその家族が保健サービスおよび教育サービスにアクセスでき、かつ、条約に掲げられたこれらの子どものすべての権利(出生時に登録される権利を含む)が保護されることを、優先的課題として確保するように努めること。
  • (c) 自国の管轄下にある、国内避難民および難民であるすべての女性および子どもがあらゆる形態の性的搾取から保護され、かつ加害者が適正に訴追されることを確保するために、即時的措置をとること。
  • (d) 子どもの国内避難民、難民および庇護希望者(保護者のいない未成年者を含む)の状況に関する詳細な情報を次回の定期報告書に記載すること。
  • (e) 諸機関のなかでもとくにUNHCRとの連携を引き続き強化すること。
武力紛争下の子ども(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)
81.委員会は、締約国における武力紛争で殺害される子どもが多数にのぼることを著しく危惧する。委員会は、政治的洗脳、ならびに、戦闘員、密告者、調理人または荷物運搬人および人間の盾としての使用を目的として、武装集団が子どもの誘拐および強制的徴集を行なっている旨の報告があることに、重大な懸念ともに留意するものである。委員会は、政府軍が、武装集団の構成員の疑いがある18歳未満の者を攻撃対象としていること、ならびに、失踪および恣意的拘禁が行なわれており、かつ政府軍が子どもをスパイおよび伝令として使用している疑いがあるという、著しく危惧される報告があることを、同様に懸念する。委員会はまた、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令の2004年改正に基づいて子どもが拘禁されているという報告があることも、深く懸念するものである。委員会は、このような暴力が被害を受ける子ども(子どもの戦闘員を含む)に対して及ぼす直接の影響、ならびに、このような子どもがこうむる深刻な身体的および心理的外傷について懸念を覚える。委員会はまた、子どもが武力紛争のために家族から分離されていること(インドに避難した子どもを含む)、および、これらの家族の再会のために締約国がほとんど努力していないことに、懸念を表明するものである。委員会はまた、武力紛争が食糧供給、教育および保健ケアに及ぼす悪影響についても懸念する。
82.委員会は、締約国が、武力紛争の影響を受けている子どもの権利を実施するための包括的な政策およびプログラムを策定し、かつしかるべき人的資源および財源を配分するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) いかなる軍隊または武装集団によるものであれ、軍事目的の子どもの誘拐、徴募および使用を犯罪化すること。
  • (b) 治安部隊を対象とする、子どもに関する独立の部隊行動規則を定めること。
  • (c) 少年司法に関する国際的な基準および規範に照らして、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令を改正しまたは廃止すること。
  • (d) 武力紛争の影響を受けている子ども(とくに子どもの戦闘員、保護者のいない国内避難民および難民、帰還民)を対象とする心理社会的支援および援助のための包括的システムを、NGOおよび国際機関と連携しながら発展させること。
  • (e) 紛争の影響を受けている子どもが教育制度に再統合できることを確保するための効果的措置をとること。そのための手段には、非公式教育プログラムを提供すること、ならびに、紛争の影響を受けている地域における校舎および諸施設の復旧ならびに水、衛生設備および電気の供給が含まれる。
  • (f) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約を批准すること。
  • (g) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を、優先的課題として批准すること。
  • (h) この点に関してとくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めるとともに、新たに設置されたOHCHRネパール事務所に対して最大限可能な協力を行なうこと。
搾取的状況にある子ども(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)
有害物質濫用
83.委員会は、子どもによるアルコール消費が広く蔓延していること、および、子どもによる有害物質濫用(大麻、ヘロインおよびアヘンの使用ならびに静脈注射による薬物使用を含む)の件数が増えていることに、懸念を表明する。委員会はまた、親によるアルコールおよび有害物質の消費が締約国の子どもの身体的、情緒的および心理的発達およびウェルビーイングに与える有害な影響についても、懸念を覚えるものである。アルコール法で16歳未満の子どもに対するアルコールの販売が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、同法では違反の場合の罰則についてなんら定められておらず、かつ、未成年者によるアルコールの使用を禁じた法律の実施が全般的に有効ではないことに、懸念を表明する。委員会はまた、子どもによる統制薬物の販売、使用および取引を禁じた具体的法律が存在せず、かつこの点に関する治療プログラムも提供されていないことも、懸念するものである。
84.委員会は、締約国が、公的な教育啓発キャンペーン等も通じて子どもによる薬物およびアルコールの濫用と闘い、かつ、アルコールを濫用する子どもおよび(または)薬物その他の有害な物質を使用する子どもが、治療、カウンセリング、回復および再統合のための効果的な機構および手続にアクセスできることを確保するための取り組みを進めるよう、勧告する。委員会はさらに、親によるアルコールおよび統制薬物の使用が子どもの発達およびウェルビーイングに与える有害な影響について、とくに意識啓発キャンペーンを通じ、親を対象とする教育が行なわれるべきことを勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもによる統制薬物の販売、使用および取引を禁止するために必要な法律を採択するとともに、子どもによるアルコールおよび有害物質の使用を禁じたすべての法律の効果的実施を確保するよう、促す。
ストリートチルドレン
85.路上で生活しかつ働く子どもの人数が増えており、かつ、このような子どもが虐待、ネグレクトおよび搾取の主要な被害者に挙げられていることを締約国が認めていることにかんがみ、委員会は、このような子どもが置かれた状況に対応するための具体的なプログラムおよび措置に関する情報が不足していることを、遺憾に思う。
86.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) この現象を防止しかつ減少させる目的で、この現象の原因および範囲に関する研究を実施するとともに、ストリートチルドレンの多発および増加に対応するための包括的戦略を確立すること。
  • (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支える目的で、このような子どもに対し、十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)が提供されることを確保するための効果的措置をとること。
  • (c) これらの子どもが、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用の被害者であるときは回復および社会的再統合のためのサービスを提供され、警察による陵虐から保護され、かつ、家族およびコミュニティとの和解のためのサービスを提供されることを確保すること。
  • (d) この点に関してとくにユニセフの技術的援助を求めること。
性的搾取および性的虐待
87.子どもの性的搾取の現象を解消するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、締約国の多数の子どもが性的に搾取されていることについて重大な懸念を覚える。委員会は、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもを性的搾取から保護するために行なわれている努力が不十分であるとの見解に立つものである。具体的には、委員会は、セックスワーカーの間で低層カーストの子どもが不相応に多いこと、および、バディとして知られる、バディ・カーストの幼女が売春を強要される慣習的慣行が根強く残っていることに、懸念とともに留意するものである。
88.委員会はさらに、残虐な取扱いまたは拷問から子どもを保護する子ども法第7条の規定が、残虐な取扱いまたは拷問の基準に達するとはかぎらない性的虐待事件には適用されないことに、留意する。委員会はまた、子どもの性的虐待を行なった加害者の訴追率が低いこと、および、性的搾取について定めた法律に関して住民を教育するための公的キャンペーンがほとんど進められていないことも、懸念するものである。
89.委員会は、締約国が、以下の措置をとるための資源を優先的に配分するよう勧告する。
  • (a) 18歳未満の男子および女子が性的虐待および搾取から保護されることを確保する適切な法律を制定すること。
  • (b) 子どもの性的搾取について検討するための包括的研究を実施し、その蔓延度に関する正確なデータを収集すること。
  • (c) 子ども、とくにバディその他の低層カーストに属する子どもがそのような搾取の対象とされる危険性を高める要因も含めて子どもの性的搾取に対応する、適切な立法上の措置の採用および効果的かつ包括的な政策の策定を進めること。
  • (d) 性的搾取の被害を受けた子どもが犯罪者として扱われないようにし、かつ加害者の適正な訴追を確保すること。
  • (e) 第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領、ならびに、第2回世界会議で採択された「横浜グローバルコミットメント2001」にしたがい、子どもの被害の防止、被害を受けた子どもの回復および再統合のための適切な政策およびプログラム(すべての地域にリハビリテーションセンターを設置することも含む)を実施すること。
  • (f) とくにユニセフの援助を求めること。
子どもの経済的搾取(児童労働を含む)
90.委員会は、最悪の形態の児童労働を撤廃するため、締約国が、市民社会の主体、ドナーコミュニティおよびとくに国際労働機関と協力しながら行なっているさまざまな努力(関連のILO諸条約の批准および国内法の制定(前掲パラ3および4参照)、ならびに、予定されている国家基本計画および期限付撤廃プログラムの採択を含む)に、満足感とともに留意する。
91.にもかかわらず、委員会は、締約国の相当割合の子どもが、著しく危険な労働にしばしばフルタイムで従事していることについて、依然として重大な懸念を覚える。委員会はまた、この分野における国内法の執行が弱いままであることも懸念するものである。委員会は、締約国に財源がないために労働査察官が不足していることを懸念する。委員会はまた、子どもを含む人口の大多数はインフォーマル経済で働いているにも関わらず、子どもの不法な雇用を禁じた児童労働法は経済のフォーマル部門にしか適用されないことも、懸念するものである。
92.カマイヤ債務労働制が2000年に廃止され、かつカマイヤ禁止法が2002年に制定されたことは歓迎しながらも、委員会は、多数のカマイヤの子どもが解放されないまま債務労働者として働き続けており、かつ、子どもを含む数千人のダリット債務労働者(ハリヤ)がネパール西部の農場でおよび平野部で働いていると報告されていることを、懸念する。委員会は、これらの債務労働者が住居、土地、労働および教育に対する権利の分野で深刻な困難に直面し続けていることを、とりわけ懸念するものである。
93.委員会は、締約国に対し、子どもによる債務労働の慣行の根絶を目的とした現行の法律および政策の執行を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、労働に従事するこれらの子どもが、子どもにとって有害な条件下で働くことのないようにし、かつ引き続き教育にアクセスできることを確保するため、防止措置をとることを含むあらゆる努力を行なうようにも促すものである。委員会は、締約国に対し、児童労働の必要な規制があらゆる分野の労働(経済のインフォーマル部門を含む)に適用されるよう、児童労働基本計画、児童労働法その他の関連の法律を改正するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、とくに子どもの権利の保護に関する公衆意識啓発キャンペーンおよび公衆教育を通じ、児童労働に関わるすべての政策および法律を全面的に実施するための措置をとるよう、勧告するものである。
94.さらに委員会は、締約国に対し、カマイヤ禁止法の実施を強化するとともに、解放されたカマイヤ労働者の社会的統合を確保するために効果的措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国が、この点に関してとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう勧告するものである。
売買、取引および誘拐
95.委員会は、子どもの人身取引と闘うために締約国が行なっているさまざまな努力に留意するとともに、警察官が女性および子どもの性的搾取および人身取引に関わる問題についての研修を受けている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、ネパール国内においておよび国境を超えて、性的搾取および債務労働を目的とする子どもの取引および売買の現象が頑強に残っていることを、依然として深く懸念するものである。委員会は、一部の集団の子ども(女子、子どもの国内避難民、ストリートチルドレン、孤児、農村部出身の子ども、子どもの難民、および、より脆弱な立場に置かれたカーストに属する子どもを含む)にとって、売買および取引の対象とされる危険性がとりわけ高いことに、重大な懸念とともに留意する。委員会はさらに、現行法(とくに人身取引統制法)による人身取引被害者の保護が不十分であり、かつその実施が深刻なほど不十分であることに懸念を表明するものである。委員会はまた、性的搾取の被害を受けた子どもが十分な保護および回復援助を与えられていないことも懸念する。
96.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの売買、取引および誘拐に関するデータ収集システムを改良するとともに、すべてのデータおよび指標が政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価に活用されることを確保すること。
  • (b) 子どもを人身取引から保護するための包括的な法的枠組みを発展させること。
  • (c) 法執行を強化するための効果的措置をとるとともに、子どもの売買、取引および誘拐に関するコミュニティの意識を高めるためになおいっそう努力すること。
  • (d) 包括的かつ効果的なアプローチを完遂する目的で、HIV/AIDSに関する国家戦略(2002~2006年)、万人のための教育プログラム(2004~2009年)および児童労働基本行動計画のいずれについても、その実施が国家人身取引行動計画と関連づけられることを確保すること。
  • (e) 被害を受けたすべての子どもに対し、適切な援助および支援(送還を待っている子どもが基礎的サービスにアクセスできるようにすることを含む)が提供されることを確保すること。
  • (f) 子どもの売買、取引および誘拐を防止し、かつこのような子どもの保護および安全な家族復帰を促進する目的で、近隣諸国、とくにインドとの二国間協定の締結に努めること。
  • (g) 国連・国際組織犯罪防止条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。
  • (h) とくにユニセフおよび国際移住機関との協力を追求し、かつこれらの機関の援助を求めること。
少年司法の運営
97.法に抵触した子どもに関わる事案に対処するための少年裁判部がすべての郡裁判所に設置されたこと、および、法執行官を対象とする研修プログラム(警察学校におけるものを含む)が整備されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の法律および政策が少年司法に関する国際基準に一致していないという見解を依然としてとるものである。委員会は、刑事責任に関する最低年齢が10歳という低さに定められていること、および、公式な年齢確認制度が設けられていないことについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、拘禁環境について、および、少年拘禁施設が存在しないため、ほとんどの場合、18歳未満の者が拘禁中に成人から分離されていないことについても懸念を覚えるものである。委員会はまた、子どもがしばしば「適正な捜査を経ずに」審判の対象とされていること、および、少年事件のうち、準司法機関である郡行政事務所によって処理されているものがかなりの割合にのぼることも、危惧する。委員会はまた、刑務所で教育のための便益が提供されていないことも懸念するものである。
98.委員会はまた、最低年齢を定めておらず、かつ、武装集団との関係が疑われるいかなる者(子どもを含む)でも逮捕しかつ拘禁する広範な権限を治安部隊に与えるテロ活動および破壊活動(統制および処罰)令に基づいて、18歳未満の者が収容されているという報告があることも懸念する。
99.委員会は、締約国が、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)ならびに第40条2項(b)(ii)~(iv)および(vii)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(総会決議40/33)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(総会決議45/112)の全面的実施を確保する目的で、かつ少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、法律および政策を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 18歳未満の被拘禁者が常に成人から分離され、かつ、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。
  • (b) 18歳未満の者を対象とする独立の施設(児童矯正センター)および拘禁施設内の独立房の建設を速やかに進め、これらの施設がすべての郡に存在することを確保すること。
  • (c) 自由の剥奪が回避不可能であり、かつ最後の手段として、もっとも短い適当な期間で用いられる場合、逮捕の手続および拘禁環境を向上させるとともに、法に抵触した子どもの事件を扱う特別部局を警察内に設けること。
  • (d) 18歳未満の者が反テロリズム法に基づいて責任を問われ、拘禁されまたは訴追されないことを確保すること。
  • (e) 法律に違反したとして申し立てられまたは罪を問われた18歳未満のすべての者に対し、条約第40条2項に定められた公正な裁判を受ける権利が全面的に保障されることを確保する目的で、郡行政事務所の手続を含むすべての手続(司法手続、法的手続および保護手続)を見直し、かつ必要なときは改正すること。
  • (f) 司法専門家を対象として、少年司法の運営と人権に関する公式な研修を実施すること。
  • (g) とくにユニセフおよびOHCHRの技術的協力を求めること。
100.委員会は、締約国が、少年司法に関する国際的な基準および規範に照らし、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令を改正しまたは廃止するよう勧告する。

8.子どもの権利条約の選択議定書

101.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書または武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に署名したものの、まだ批准していないことに留意する。
102.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
103.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関ならびに適用可能なときは州〔ママ〕の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
104.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

105.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)で説明した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、締約国に対し、第5回報告書の提出期限である2010年3月13日までに、単一の統合報告書として第3回、第4回および第5回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。