総括所見:東ティモール(第1回・2008年)


CRC/C/TLS/CO/1(2008年2月14日)/第47会期
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2008年1月16日に開かれた第1289回会合において東ティモール民主共和国の第1回報告書(CRC/C/TLS/1)を検討し、2008年2月1日に開かれた第1313回会合において以下の総括所見を採択した。

2.委員会は、子どもの権利条約に基づく締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/TLS/Q/1)に対する文書回答(CRC/CTLS/Q/1/Add.1)の提出を歓迎し、締約国が包括的な共通コアドキュメント(HRI/CORE/TLS/2007)を提出したことに満足感とともに留意し、かつ、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう、求める。

A.積極的側面

4.委員会は、子どもの権利条約(「条約」)およびその選択議定書ならびに国際刑事裁判所ローマ規程に留保を付さずに加入したことを含め、締約国が主要な7つの国際人権文書に加入したことを祝福する。
5.委員会は、国内人権機関である人権・正義監視官が設置されたことを歓迎し、締約国が国家子どもの権利委員会の設置を計画していることに留意し、かつ、中央住民登録局が創設されたことを称賛する。
6.委員会は、条約に基づく第1回報告書の提出に至るプロセスにおいて広範な協議が実施され、かつ国連機関の強力な支援があったことに留意する。

B.条約の実施を阻害する要因および困難

7.委員会は、東ティモールの最近の歴史、ならびに、その結果として生じたインフラの破壊、行政能力の衰退および執行機構の弱体化に照らし、締約国が、条約で保護されている権利の全面的に実施に関して特段の困難および課題に直面していることに、留意する。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項)

立法
8.委員会は、国内法を条約に一致させようとする締約国の努力に留意する。しかしながら委員会は、少年司法および教育を含む多くの分野で一貫した立法上の枠組みが存在しないように思われること、および、条約の実施に役立つ諸法律の採択が遅れていることについて、懸念を覚えるものである。
9.委員会は、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼすあらゆる分野で一貫した立法上の枠組みを発展させるための努力、および、子どもに関わるすべての国内法および行政規則が権利を基盤とし、かつ条約の規定および原則に一致したものとなることを確保するための努力を、継続しかつ強化するよう勧告する。委員会は、民法、刑法、教育法、ドメスティックバイオレンス法、養子縁組法、監護/保護監督法、および、子ども法などとくに子どもに関わるその他の法令を含むあらゆる必要な法律を、速やかに採択するよう促すものである。
国家的行動計画
10.締約国の第1回報告書で提供された情報に基づき、委員会は、子どもの権利を実施するための総合的な国家的行動計画がまだ策定されていないことに留意する。
11.委員会は、締約国が、期限の定められた子どものための国家的行動計画を採択するよう、勧告する。当該行動計画は、国家開発計画および国家人権行動計画を根源とし、かつ、2002年の国連総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」および「子どもにふさわしい世界+5宣言」を正当に考慮しながら、条約に掲げられた子どもの権利を包括的に網羅したものであるべきである。委員会はまた、達成された進展を定期的に評価し、かつ存在する可能性がある欠点を明らかにする目的で、締約国が、行動計画の全面的実施のための十分な予算配分ならびにフォローアップおよび評価の機構を確保することも勧告するものである。
調整
12.条約の実施に関して、委員会は、人権アドバイザー事務所が、社会連帯省国家社会復帰局および教育文化省によってとられる国レベルの実施措置の調整を担当していることに留意する。委員会はまた、国家社会復帰局が機関横断アプローチの策定プロセスのさなかにあることにも留意するものである。委員会は、国家子どもの権利委員会を設置し、子どもの権利の実施プロセスの支援を担当させることが意図されていることを歓迎する。
13.委員会は、締約国が、国および地方の双方で子どもの権利に関与しているさまざまな政府の機関および機構間の調整を強化するとともに、単一の機関または部門横断型機構に対し、条約の実施に関わる活動の調整を委ねるよう、勧告する。委員会は、締約国が、実効性のある国家子どもの権利委員会を設置するための努力を速やかに進めるとともに、同委員会に対し、国および広域行政圏の双方における調整を委ねるよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、条約の実施の調整および評価において市民社会の構成員、子どもの権利の専門家およびその他の専門職の関与を得るよう勧告する。
独立の監視
14.委員会は、人権・正義監視官の設置を歓迎するものの、子どもの権利に関わる当該機関の役割についてなんら具体的情報が提供されなかったことを遺憾に思う。
15.委員会は、子どもから申し立てられた苦情を、保護者の同意を得る必要なく受理し、調査しかつこれに対応できる、適切な人員および資源を与えられた子どもの権利担当部局が監視官事務所内に設置されるべきことを勧告する。締約国は、国内人権機関の地位に関する原則(「パリ原則」)および子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割についての委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)にしたがい、同部局が、監視官事務所内で、全面的に独立した監視機構として職務を遂行できることを確保するべきである。同部局の体制は、締約国の領域のあらゆる場所にいる子どもがその機能を利用できるようなものであることが求められる。
資源配分
16.締約国が、資源の限られた状況下で、競合しあう多くのニーズに直面していることは認識しながらも、委員会は、締約国が、条約の実施に関連した予算配分額に関するいかなるデータも提供しなかったことを遺憾に思う。
17.条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、関連の予算配分において子どもの権利の視点が全面的に考慮されることを確保する目的で、とくに社会部門に関わって包括的な予算の見直しを行なうよう、奨励するものである。
データ収集
18.委員会は、条約が対象としている多くの分野で、締約国の子どもの状況を監視しかつ評価するためのデータが利用可能とされていないことに留意する。委員会は、このようなデータはきわめて重要であり、かつ、政策の計画および優先順位の設定に関して締約国の指針となる可能性があると考えるものである。
19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約が対象としているすべての分野についてデータが収集されることを確保する目的で、国家統計局の技術的能力を強化し、子どもに関する国レベルの中央データベースを設置し、かつ条約に一致した指標を開発するための努力を行なうこと。このようなデータは、特別な保護を必要としている子どもの集団別に加え、たとえば年齢層、性別および都市部/農村部の別によって細分化されるべきである。
  • (b) これらの指標および収集されたデータを、条約を実施するための政策およびプログラムの立案を促進する目的で活用すること。
  • (c) 関連の専門家集団を対象としてデータ収集に関する研修を行なうこと。
  • (d) ユニセフ、および、この分野で関連の専門性を有しているその他の機関との協力に努めること。
市民社会との協力
20.委員会は、市民社会組織に関する法律が採択されたことを歓迎し、かつ政府機関と非政府組織との連携例に留意しながらも、このような協力をさらに強化する余地があるという見解をとるものである。
21.委員会は、限られた資源がもっとも有効に活用されることを確保するため、相互の信頼を基礎とする、非政府組織とのいっそう緊密な協力を奨励する。委員会は、締約国が、条約の実施のあらゆる段階を通じて子どもとともにおよび子どものために活動する市民社会組織の設立および関与を組織的に促進するよう、勧告するものである。
条約の普及および研修活動
22.委員会は、教員、司法職員その他の関連の専門家集団を対象として子どもの権利に関するものも含む人権研修を行なうことに加え、条約に関する情報を普及し、かつ政府機関および市民社会全体を通じてその原則および規定に関する意識を促進する目的で、ユニセフその他の国連機関および非政府組織と協力しながら締約国が行なっている努力を、心強く思う。
23.委員会は、条約に関する情報を、ラジオ番組その他のメディア等も通じ、適切な言語で、子ども、親、コミュニティの指導者、市民社会組織および政府機関の間で体系的に普及しするための努力、および、関連するすべての専門家集団に対し、条約の規定および原則に関する、目標の明確な定期的研修を行なうための努力を、締約国が国際社会と協力しながら継続するよう勧告する。

2.子どもの定義(第1条)

24.委員会は、憲法第9条により、かつ条約が国内法の枠組み直接編入されたことにより、締約国が子どもを18歳未満のすべての者として定義していることに留意する。しかしながら委員会は、現在適用されている女子の最低婚姻年齢が低すぎることを懸念するものである。
25.委員会は、最低婚姻年齢を18歳と定め、かつ男子および女子の双方に平等に適用されるようにすることを目的として、締約国が法律をさらに見直すよう勧告する。

3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
26.委員会は、とくに婚外子を含む子どもを差別から保護するための特別規定が締約国の憲法に含まれていることを称賛する。しかしながら委員会は、帰還民の子ども、洗礼証明書を所持していない子ども、家族構成員間の性的関係から生まれた子どもおよび障害のある子どもを含む一部の集団の子どもが、事実上の差別(もっとも重要な問題として教育へのアクセスに関わる差別)に直面していることに、懸念とともに留意するものである。
27.第2条にしたがい、委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、前掲の集団の子どもに付与されるスティグマを克服し、かつ、このような集団に属する一部の子どもが教育へのアクセスまたは他のいずれかの権利もしくは資格の享受に関して直面している障壁を取り除く目的で、締約国が、感受性の強化および意識啓発を含む立法上、政策上および教育上の措置を活用するよう、勧告するものである。
子どもの最善の利益
28.委員会は、締約国が、子どもにとくに関わる法律の規定を改正し、かつ関連の公的機関の能力を強化する途上にあることに留意する。条約第3条にしたがい、関連の行政措置および司法手続において子どもの最善の利益の原則がいっそう優先されることを確保するうえで、これらの積極的措置が役立つ可能性があるとはいえ、委員会は、いまのところ、子どもに関わる意思決定、たとえば養子縁組に関する意思決定においてこの原則が第一次的に考慮されているようには思われないことを、懸念するものである。
29.委員会は、締約国が、子どもに関わるすべての法律および実務に条約第3条を全面的に編入し、かつ、子どもの最善の利益の原則の意味および実際的適用に関する意識啓発を図るよう、勧告する。委員会は、締約国が、法律を見直す過程で、この原則が関連の法令に十分に反映され、かつ、子どもに関わるすべての意思決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるようにすることを目指すよう、勧告するものである。
生命、生存および発達に対する権利
30.委員会は、栄養不良が深刻な問題となっていることに加え、乳児死亡率が高いことを懸念する。
31.委員会は、締約国が、乳児死亡率を削減し、かつ栄養不良の問題に対応するためのあらゆる必要な措置(とくに後掲「健康および保健サービス」に掲げられた措置を含む)に優先的に取り組むことにより、条約第6条の全面的実施に努めるよう勧告する。
子ども参加および子どもの意見の尊重
32.委員会は、締約国が、子どもに影響を与えるすべての事柄において子どもの意見が正当に重視されることを確保する必要性は、新たな法律、基準および手続の起草の際に考慮されてきたと明言したことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの意見の尊重の概念が十分に理解されているとは思われないこと、および、関連の決定(行政上および司法上の手続におけるものも含む)が行なわれる際、何が子どもの最善の利益である可能性があるかを確定させるにあたって子どもの意見がほとんど求められていないことを、懸念するものである。
33.条約第12条に照らし、かつ、意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 市議会のような地方レベルにおけるものも含め、子どもの権利に影響を及ぼす可能性があるいかなる手続(とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる行動)においても、意見を聴かれる子どもの権利を子どもの年齢および成熟度にしたがって確保するための措置の実施を強化する目的で、あらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励する目的で、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに教員およびソーシャルワーカー)および市民社会(コミュニティの指導者および宗教的指導者ならびに非政府組織を含む)の関与を得ながら、体系的なアプローチおよび政策を発展させるよう努めること。

4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
34.委員会は、中央住民登録局が創設されたこと、締約国が子どもの名前の登録を促進するための措置をとってきたこと、および、締約国が出生証明書の発行を開始したことに留意する。しかしながら委員会は、これらの努力にも関わらず出生登録率がいまなおきわめて低く、かつ、民法案および住民登録法案が依然として承認および採択待ちの状態であることを、懸念するものである。
35.条約第7条に照らし、委員会は、締約国に対し、出生登録の利点について世論を喚起しかつ動員するための努力を強化することおよび登録担当者を養成すること等の手段により、出生登録制度の改善にさらに取り組むよう促す。委員会はまた、締約国が、民法案および住民登録法案を速やかに完成させかつ承認することも勧告するものである。
36.委員会はさらに、締約国が、移動出生登録、病院との協力その他の革新的アプローチに関わる最近の経験から得られた教訓の体系的適用を目指すとともに、登録実務における一貫性の欠如に対応するため宗教的機関と緊密に連携するよう、勧告する。
適切な情報へのアクセス
37.委員会は、締約国の多くの子どもがマスメディアその他の情報源に限られた形でしかアクセスできていないことに留意するものの、締約国で新たなメディアを発展させるための革新的措置がとられていることは評価する。
38.委員会は、締約国が、多様な情報源からの適切な情報、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的ウェルビーイングならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報に対する子どものアクセスを向上させるよう、勧告する。
39.委員会は、締約国に対し、子ども向けの適切な印刷媒体および番組の発展を正当に考慮しながら、活発なマスメディアを発展させるための措置を引き続きとるよう奨励する。
拷問および品位を傷つける取扱い
40.委員会は、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約に締約国が加入したことを歓迎するものの、警察によっておよび刑務所制度において子どもの品位を傷つける取扱いが行なわれているという訴えがあることを懸念する。
41.委員会は、締約国に対し、前掲条約に定められた最低基準を厳格に遵守し、かつ、いかなる子どもも、いかなる種類の非人道的なまたは品位を傷つける取扱いも受けないことを確保するよう、促す。
体罰
42.委員会は、体罰が家庭で一般的に見られる現象であり、かつ学校その他の教育現場で子どもの規律を維持するために頻繁に用いられているという報告があることを懸念する。
43.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校制度その他の教育現場を対象とした意識啓発キャンペーン等も通じ、あらゆる場面における体罰を明示的に禁止するよう、勧告する。

5.子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ

44.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書に掲げられた勧告を実施するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの関与を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。
  • (c) 前述の目的で、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めること。

6.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭を奪われた子ども
45.委員会は、子どもがさまざまな理由で家族から分離される慣行が広く存在しており、かつ、当該分離が通常は子どもの最善の利益であると見なされていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、外国の占領の結果として家族から分離された子どもという特有の問題にも留意するものである。
46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもが、条約第9条に定められた状況がある場合を除き、意思に反して親から分離されないことを確保すること等を目的として、家族支援プログラムを発展させ、かつ親からの子どもの分離をともなう慣行を規制するための努力を強化すること。
  • (b) 遺棄およびネグレクトに関連した分離事案について、定期的なフォローアップの措置をとること。
  • (c) 家族から分離されるおそれのある子どもまたはすでに分離された子どもを保護するため、救援活動関係者の間で「親から分離された子どもおよび保護者のいない子どもに関する国家指針」を広く普及すること。
47.委員会は、締約国に対し、外国の占領の結果として家族から分離された子どもの未解決事案、とくに親の明確な同意なくして子どもが親から分離されたままになっている事案を解決するための努力を引き続き行なうよう、奨励する。
代替的養護および施設養護
48.委員会は、子どもの施設措置を規制し、かつ施設における養護水準を向上させるための適切な手続を定めることを目的とした、子ども養護センターおよび寄宿舎法令案について進められている作業を歓迎する。しかしながら委員会は、一方で貧困が広範にかつ根強く存在しており、かつ、他方でさまざまな施設を運営する個人による積極的勧誘が行なわれているように思われる結果、施設養護に対する需要が高く、かつ多数の施設が設置されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、措置の定期的再審査のための信頼できる体制が整えられていないように思われるために、このような状況が悪化していることにも留意する。
49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家族に対する援助の提供に関する包括的政策を策定し、かつコミュニティを基盤とする補足的なサービスおよび保護制度を発展させることによって、代替的養護に措置される多数の子どもの人数を削減すること。
  • (b) 代替的養護への子どもの措置が、権限のある学際的な専門家集団による、子どものニーズおよび最善の利益についての慎重なアセスメントに基づいて行なわれることを確保すること。当該アセスメントは明確な基準に基づいて実施され、かつ司法審査の対象とされるべきである。また、親のケアを受けていない子どもに関する委員会の一般的討議(2005年9月)の際に採択された勧告(CRC/C/153、パラ636-689)を正当に考慮しながら、当該措置が条約第25条にしたがって定期的に再審査されることを確保すること。
  • (c) 子ども養護センターおよび寄宿舎法令案を完成させかつ採択するとともに、新たな施設の恣意的設置を制限するための措置をとること。
里親養護
50.委員会は、子どもが非公式な取決めに基づいて血縁家族ではない家族とともに暮らす現象が締約国で一般的に見られることに留意するとともに、締約国が里親養護制度に関する枠組みを策定中であることを歓迎する。
51.委員会は、現在行なわれている、子どもが血縁家族ではない家族とともに暮らす非公式な取決めを漸進的に規制するため、慎重に管理された措置がとられるべきことを奨励する。その際、条約で認められた諸権利(子どもの最善の利益および子どもの意見の尊重の原則を含む)および前掲パラ49(b)の勧告が正当に考慮されるべきである。
養子縁組
52.委員会は、養子縁組との関連で存在している問題を締約国が認識していることを評価するとともに、国内養子縁組および国際養子縁組に関する法律の完成まですべての養子縁組手続が停止されている旨の、代表団から提供された情報に留意する。委員会はまた、締約国が養子縁組指針の起草中であることにも、満足感とともに留意するものである。
53.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ第33号条約(1993年)を批准するとともに、養子縁組において子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保しながら、同条約および子どもの権利条約の規定にしたがった養子縁組法を採択するよう、勧告する。
虐待およびネグレクト
54.委員会は、締約国が、虐待、ネグレクト、暴力および不当な取扱いの問題との関連で国内法を強化し、司法機関の能力構築を図り、かつ公衆の意識を高めるための努力を継続中である旨の情報を歓迎する。委員会はまた、締約国が家庭および学校における暴力に対応するためにパートナーと連携しながら活動していることにも、評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、児童虐待事案が司法制度で十分に対応されていないこと、および、子どもに対する暴力事案の大多数が通報されていないことを懸念する。
55.条約第19条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもに対するあらゆる形態の身体的および性的暴力(家庭における性的虐待を含む)を禁止する目的で、ドメスティックバイオレンスおよび家庭における児童虐待のあらゆる側面に関する研究を実施し、この問題の規模および性質、ならびに、子どもに対する暴力に対応するための法的措置の効果についての評価を行なうこと。
  • (b) ドメスティックバイオレンスおよび児童虐待を防止しかつこれに対応するための包括的な国家的戦略を策定するとともに、子どもの虐待および不当な取扱いの事案の発見、通報および処理について親および専門家の研修を行なうこと。
  • (c) 15歳未満の女子の性的虐待の事案について子どもの親または保護者による申立ての要件を削除すること等も通じ、苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的な手続および機構を設置すること。また、虐待された子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保すること。
  • (d) 暴力および虐待の被害を受けたすべての子どもが、十分なケア、カウンセリングならびに回復および再統合のためのサービスをともなう援助にアクセスできることを確保すること。
  • (e) 暴力、虐待および不当な取扱いの被害を受けた子どもについての報道にメディアが前向きに関与することを奨励しかつ促進するとともに、メディアが子どものプライバシー権を全面的に尊重することを確保すること。
  • (f) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。

7.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
56.委員会は、障害者に関する国家政策の立案のために締約国が行なっている努力を心強く思う。しかしながら委員会は、高い障害児率を固定化する機能を果たしている要因(劣悪な妊産婦保健水準および正規の保健サービスからの隔離を含む)が根強く残っていることを懸念するものである。委員会は、障害のある子どもがしばしば普通教育およびコミュニティの生活から排除され、かつ入所施設に措置されていることを遺憾に思う。
57.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)および障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)を考慮しながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもに関する十分な統計データを収集するとともに、社会における障害者の機会均等を促進する、障害に関する包括的かつ具体的な国家的政策を策定するにあたってそのような細分化されたデータを活用すること。
  • (b) 障害のある子どもが、十分なかつ標準化された社会サービスおよび保健サービス(早期介入サービス、心理サービスおよびカウンセリング・サービスを含む)にアクセスできるようにすること。
  • (c) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。
  • (d) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分に訓練されることを確保すること。
  • (e) 施設の子どもの権利が十分に保護されることを確保すること。
  • (f) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を批准すること。
  • (g) とくにユニセフおよびWHOとの技術的協力を追求すること。
健康および保健サービス
58.委員会は、国連機関その他のドナーとの連携により拡大予防接種プログラムが成功裡に確立され、予防接種率が相当に上昇する成果につながってきたことを歓迎する。委員会はまた、締約国が、ユニセフの支援を得て、栄養不良の根本的原因を明らかにする国家栄養戦略を作成したことにも、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的な進展にも関わらず、委員会は、締約国において子供の栄養不良が高い水準にあり、乳幼児死亡率および妊産婦死亡率がきわめて高く、かつ、思春期保健ケアが不十分であることを懸念する。加えて、ティモールの子どもがマラリア、はしか、腸チフスおよびデング熱のような疾病ならびに呼吸器系および消化器系の感染症に非常に罹患しやすいことも、懸念の対象である。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国内全域の母子が良質なプライマリーヘルスケア、カウンセリングおよび必須医薬品にアクセスできることを確保するため、コミュニティの構造を基盤とする保健政策を立案すること。
  • (b) 保健部門に適当な資源が配分されることを確保するとともに、子どもの健康状態を向上させるための包括的な政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。
  • (c) とくに産前産後保健に関わる良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障することにより、乳児および5歳未満児の死亡を削減するための措置(助産婦および伝統的産婆の研修プログラムを含む)を引き続きとること。
  • (d) 健康的な摂食習慣の教育および促進(「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」にしたがい、子どもの健康、発育および発達のための理想的食べ物を提供する比類なき方法としての母乳育児を促進することも含む)を通じ、子どもの栄養状態を改善するための努力を強化すること。
  • (e) リプロダクティブヘルスを含む思春期の健康の促進のための効果的サービスを提供する努力を強化すること。
  • (f) 子どもの健康的な発達にとって中核的である予防措置(安全な飲料水へのアクセスを向上させることおよび有効に処理された蚊帳の使用を増加させることなど)に加え、十分な保健ケアおよび治療を提供するための革新的措置(適当なときに移動保健班を活用することなど)等も通じ、マラリア、はしか、腸チフスおよびデング熱のような疾病ならびに呼吸器系および消化器系の感染症の脅威に対抗するための措置を継続しかつ強化すること。
  • (g) この点に関して、世界保健機関(WHO)、ユニセフおよび関連の専門性を有するその他の機関の技術的援助および協力を引き続き求めること。
生活水準
60.委員会は、締約国の貧困率が高いことを懸念するものの、特別な状況にあるまたは特別なニーズを有する社会的集団を支援するために社会連帯基金を設置しようとする締約国の最近の取り組みを心強く思う。委員会はまた、国家開発計画によって設置された国家開発財団に、子どものための一連の具体的措置が含まれていることにも、評価の意とともに留意するものである。委員会は、住居へのアクセスが不十分であることおよび土地所有に関して適切な規制が行なわれていないことから生じている諸問題について懸念を覚える。
61.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 効果的な貧困削減措置に資源を配分すること、および、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を実施しかつ監視する能力を強化することを通じ、貧困と闘うための努力を強化すること。
  • (b) 十分な住居へのアクセスを向上させるとともに、土地所有を規制するための継続的努力が土地の公平な配分につながり、かつ貧困緩和に役立つことを確保すること。
  • (c) 社会サービスへのアクセスを向上させるための努力を行ない、もっとも脆弱な立場に置かれた集団をとくに対象とするセーフティネット・プログラムを発展させ、かつ、すべての家族に最低限の生活水準を確保するための社会保障制度の設置を検討すること。
有害な伝統的慣行
62.委員会は、とくに農村部において、非常に幼い女子を対象とした――慣習法に基づく――取り決め婚の慣行が行なわれていることを懸念する。委員会は、このような慣行が子どもの権利条約の規定および原則に違反することに留意するものである。
63.委員会は、女子が婚姻を強制されないことを確保する目的で、締約国が、とくに非常に幼い女子が慣習法上の慣行に基づいて婚姻させられているコミュニティにおいて、若年婚の有害な影響に関する意識を高めるための措置をとるよう、勧告する。

8.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
64.委員会は、締約国が劣悪な教育インフラを受け継いだことを認知するとともに、1999年の事件後の緊急対応が、貧困下で暮らしている子どもおよび農村部の子どもの就学率も含む就学率の向上および初等学校の教員の増員につながったことに、評価の意とともに留意する。委員会は、締約国がユニセフと連携して開始した「100のやさしい学校」プロジェクトを称賛するものである。しかしながら委員会は、締約国において6~11歳の子どもの多数がいまなお就学していないこと、第6学年に進学する子どもが50%に満たないこと、および、一部農村地域で学校へのアクセスに問題が残されていることを、懸念する。委員会はまた、教員養成の水準が不十分であること、締約国も認めているようにもっとも基本的な教材が欠乏していること、および、学校におけるポルトガル語への移行が理解力の水準に影響を及ぼす可能性があることも、懸念するものである。
65.条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。
  • (a) 教育部門の法的土台とするべく提案されている法律の制定を急ぐこと。
  • (b) 憲法第59条にしたがって9年間の初等教育を義務的なものとするための規定が関連法に含まれること、および、すべての子どもがいかなる金銭的障害もなく無償の初等教育に平等にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 教育政策枠組みで構想されているようにすべてのスコ(村)に初等学校を設置し、かつ、適切な輸送手段ならびに必要に応じた交通インフラの維持および向上により農村部に住んでいる子どもによるアクセスを促進すること等を通じ、就学率および在学率をさらに上昇させるための漸進的措置を引き続きとること。
  • (d) 多言語的学校制度からポルトガル語への移行期間中、理解力の問題に引き続き正当な注意を払うこと。
  • (e) 適切な資格を有する初等中等学校教員を効果的に採用しかつ(または)養成するための措置を案出すること。
  • (f) 初等段階後の教育への女子の参加を向上させるため、ジェンダーに基づく偏見およびステレオタイプに対応するための措置をとること。
  • (g) 学校給食プログラムを強化しかつ拡大するとともに、学校補助金プログラムを実施すること。
  • (h) 乳幼児の発達を刺激し、かつ就学の準備をさせるため、このような子どものケアおよび教育のための便益を拡大すること。
  • (i) 職業訓練の機会を拡大するとともに、職業訓練・技術訓練プログラムの分野における教会および非政府組織との協力を強化すること。
  • (j) 教育部門をさらに向上させるため、ユニセフおよび関連の専門性を有するその他の機関との協力を継続すること。
教育の目的
66.相対的に短い期間で学校制度を向上させるために締約国が行なっている努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、訓練を受けていない教員の割合が高いため、教育の質に深刻な影響が及んでいることに懸念を表明する。委員会は、教育カリキュラムにおいて先住民族文化にいっそう注目する必要性について締約国が検討していることを歓迎するものである。
67.条約第29条に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 教員を対象として適切な着任前研修および現職者研修を行ない、かつ教員の適切な生活賃金を確保することを通じ、教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。
  • (b) 公式な学校カリキュラムに、人権に関する教育(子どもの権利に関するものを含む)および重要なライフスキルについての教育(リプロダクティブヘルスの問題および10代の妊娠の問題に関連したものも含む)を含めること。
  • (c) 教育カリキュラムが先住民族の文化および言語の性質を正当に考慮しながら開発されることを確保すること。また、学校およびコミュニティを基盤とする教育を通じ、先住民族の遺産および伝統的芸術形態に焦点を当てながら、文化的な意識および実践を発展させかつ促進すること。
  • (d) とくに国連教育科学文化機関(ユネスコ)、ユニセフおよび非政府組織の技術的協力を引き続き求めること。
余暇、レクリエーションおよび文化的活動
68.委員会は、学校を基盤とするスポーツおよびレクリエーションに対して締約国が向けている関心、および、学校制度外で行なわるスポーツ関連の活動およびイベントに対して提供されている支援を歓迎する。委員会はさらに、文化的な意識および実践を発展させかつ促進するために締約国が行なっている努力に評価の意とともに留意するものの、十分に訓練された教員およびコーチならびに適当な参考文献が存在しないことによる障壁が存在することを懸念するものである。
69.条約第31条に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 十分な資源配分および技術的協力プロジェクト等も通じ、子どものスポーツ、遊びおよび文化的活動への焦点を維持しかつ強化すること。
  • (b) 学校およびコミュニティのレベルで、リソースパーソンとして若者の参加を得ながら、遊び場、競技場、子どもセンターおよび若者センターならびにその他のレクリエーション・スペースを維持しかつ創設するとともに、東ティモール全域で図書館へのアクセスを拡大すること。
70.正規の教育カリキュラムに先住民族文化を統合することに加え、締約国は、文化的な意識および実践を促進するうえで役に立つ可能性がある、コミュニティを基盤とする取り組みを推進するための措置を検討しかつ実施するよう、奨励される。

9.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第49条〔ママ〕、第37条(b)および(d)、第30条、第32~36条)

ストリートチルドレン
71.委員会は、もっぱら社会経済的要因ならびに家庭における虐待および暴力を理由として路上で働きまたは生活している子どもの状況について、これらの子どもがさらされているリスクに照らし、懸念を覚える。
72.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 防止のための国家的政策を策定する目的で、同国におけるストリートチルドレンの存在の規模、性質および根本的原因を評価するための包括的研究を実施すること。
  • (b) ストリートチルドレンに対し、第12条にしたがってその意見を考慮に入れながらシェルター、回復のための措置および社会的再統合のためのサービスを提供し、かつ十分な栄養および必要な保健ケアならびに教育へのアクセスを提供すること。
  • (c) 可能でありかつ子どもの最善の利益にかなう場合に家族の再統合を図るための政策を策定すること。
  • (d) ストリートチルドレンに付与されるスティグマに対応するための公的意識啓発キャンペーンを実施すること。
  • (e) ユニセフまたは他の関連の機関の技術的援助を求め、かつNGOと協力すること。
少年司法の運営
73.委員会は、締約国が、刑事責任年齢を引き上げ、かつ、16~21歳の若年犯罪者を対象とする特別規定が別の法律で定められる旨を定める真刑法案を起草したことに留意する。委員会はさらに、締約国が、法執行官および子ども保護要員を対象とする組織手続規則を策定したことに留意するものである。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、司法制度において公正に取り扱われる子どもの権利の保護が不十分であることに、懸念とともに留意する。
74.委員会はさらに、未決拘禁が、適用される規則で定められた期間の上限を超えてしばしば延長されること、拘禁されている子どもが成人の被拘禁者から常に厳格に分離されているわけではないこと、および、修復的司法措置が組織的に考慮されていないことに、留意する。
75.委員会は、締約国が、条約第37条、第40条および第39条、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(「北京規則」)、少年非行の防止に関する国連指針(「リャド・ガイドライン」)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(「ハバナ規則」)、ならびに、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10)を正当に考慮しながら、少年司法に関する基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 刑事責任に関する適切な最低年齢制限を定めることにとくに焦点を当てながら、少年司法法制を完成させるための努力を急ぐこと。
  • (b) 裁判官その他の専門家を対象として少年司法問題に関する体系的研修を行なうとともに、罪を犯した少年が適切な法定代理人を恒常的に利用できることを確保すること。
  • (c) 子どもの自由の剥奪が最後の手段としてのみ行なわれることを確保し、コミュニティを基盤とする再統合プログラムおよび同様の修復的司法措置を継続しおよび拡大し、ならびに、拘禁がやむを得ないときは、子どもが成人の被拘禁者から分離され、かつ自由の剥奪に関する決定について再審査が行なえることを確保するための措置をとること。
  • (d) 国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフ、OHCHRおよび非政府組織も参加する国連・少年司法に関する機関横断パネルの技術的援助を求めること。
経済的搾取
76.委員会は、締約国が旧労働法を改正中であり、かつ新労働法を完成させる途上にあることに留意する。しかしながら委員会は、締約国で、とくにインフォーマル部門において児童労働が引き続き広く存在していることを懸念するものである。委員会は、子どもの労働および福祉に関わる問題の担当が国家社会サービス/社会復帰局であることに留意する。
77.委員会は、締約国が、国際労働機関(ILO)およびユニセフと連携しながら、児童労働を防止しかつこれと闘うための努力を強化するよう勧告する。
78.委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告する。
  • (a) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を批准すること。
  • (b) 新労働法が、前掲ILO条約に掲げられた基準に全面的に一致することを確保すること。
  • (c) 十分な資源および権限を与えられた十分な人数の労働監察官を通じ、最低年齢が厳格に執行されることを確保すること。
薬物濫用
79.委員会は、ヤシ酒およびタバコの消費を例外として、子どもによる有害物質濫用の流行パターンが知られていないことに留意する。
80.条約第33条に照らし、委員会は、締約国が、防止に関する国家的政策を策定する目的で子どもの有害物質濫用の流行パターンに関する調査研究を実施すること、喫煙に関連した健康上のリスクについて子どもおよび親の意識を高めるためのあらゆる適当な措置をとること、ならびに、子どもに対するアルコール飲料(ヤシ酒を含む)の販売を防止する目的で国内法の見直しおよび更新を行なうことを、勧告する。
売買、取引および誘拐
81.締約国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書を提出しているので、当該報告書に関して採択された総括所見を参照するよう要請される。
武力紛争における子ども
82.締約国は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書を提出しているので、当該報告書に関して採択された総括所見を参照するよう要請される。

10.フォローアップおよび普及

フォローアップ
83.委員会は、締約国が、これらの勧告を政府および議会の構成員に送付して適切な検討およびさらなる行動を求める等の手段により、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
84.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティの指導者および子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

11.次回報告書

85.委員会は、締約国に対し、第2回・第3回統合定期報告書を、第3回報告書の提出期限の18か月前である2013年11月16日までに提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年多数の報告書を受領することによる例外的措置である。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年3月16日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
最終更新:2012年10月20日 08:24