総括所見:東ティモール(第2~3回・2015年)


CRC/C/TLS/CO/2-3(2015年10月30日)/第70会期
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2015年9月25日に開かれた第2041回および第2042回会合(CRC/C/SR.2041 and 2042参照) において東ティモールの第2回・第3回定期報告書(CRC/C/TLS/2-3)を検討し、2015年10月2日に開かれた第2052回会合(CRC/C/SR.2052参照)において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解の向上を可能にしてくれた、締約国の第2回・第3回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/TLS/Q/2-3/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下の文書の批准またはこれへの加入を歓迎する。
  • (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2009年)。
  • (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年)。
  • (c) 国際組織犯罪防止条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年。)。
  • (d) 国際労働機関・最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2009年)。
4.委員会は、とくに以下の立法措置がとられたことに満足感とともに留意する。
  • (a) 労働法(2012年)。
  • (b) 民法(2011年)。
  • (c) ドメスティックバイオレンス禁止法(2010年)。
  • (d) 刑法(2009年)。
  • (e) 証人保護法(2009年)。
  • (f) 教育基本法(2008年)。
5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置が確立されまたは採択されたことも歓迎する。
  • (a) 東ティモール戦略開発計画(2011~2030年)。
  • (b) 国家教育戦略計画(2011~2015年)および教育行動計画。
  • (c) 就学前教育に関する国家政策枠組み(2015年)。
  • (d) 国家子どもの権利委員会(2009年、現在の呼称は子どもの権利委員会)。
  • (e) 子どもにやさしい学校プログラム(2009年)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6))

委員会の前回の勧告
6.委員会は、締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(2008年、CRC/C/TLS/CO/1)を実施するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた勧告の一部、とくに普及、意識啓発および研修に関するもの(前掲パラ23)への対応が全面的にとられていないことに留意する。
7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第1回報告書についての総括所見の勧告のうち全面的に実施されていないものに対応するために必要なあらゆる措置をとるよう促す。
立法
8.委員会は、継続的な法改正が締約国における子どもの権利の向上に役立ってきたことを歓迎する。しかしながら委員会は、条約の実施にとって重要な、子どもの権利に影響を与えるすべての分野における法律の採択が遅れていることを懸念するものである。
9.委員会は、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼすあらゆる分野で、条約に一致する一貫した立法上の枠組みを発展させるための努力を継続しかつ強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/TLS/CO/1、パラ9参照)をあらためて繰り返す。とくに委員会は、子ども法、少年司法制度、人身取引の防止、抑止および処罰のための法律、ならびに、子どもの保護および代替的刑事処分に関連して現在起草されている法律を速やかに採択するよう促すものである。
包括的な政策および戦略
10.委員会は、締約国における子どもの権利の実施のための国家的行動計画の策定について国民協議会で議論されている最中である旨の、締約から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、このような包括的行動計画の採択および実施が遅れていることを懸念するものである。
11.委員会は、締約国が、前回勧告されたように(CRC/C/TLS/CO/1、パラ11参照)子どものための行動計画を速やかに採択するとともに、その全面的実施のための戦略(締約国全域での子どもの権利の実施における進展を効果的に監視しかつ評価するための、具体的な、期限を定めた、かつ測定可能な大目標および達成目標を記載したもの)が策定されることを確保するよう、勧告する。このような国家的戦略は、加えて、その実施のために必要な人的資源、技術的資源および財源が適切に配分されることを確保するため、国家的な、部門別のおよび自治体の戦略および予算と関連づけられるべきである。
調整
12.委員会は、2009年に子どもの権利委員会が設置され、現在は国務大臣、社会問題調整官および教育大臣の権限のもとに置かれていることに留意する。しかしながら委員会は、同委員会が、その任務を効果的に履行するために必要な職員および資源を有していないことを懸念するものである。
13.委員会は、締約国が、子どもの権利委員会に対し、包括的な、一貫したかつ整合性のある子どもの権利政策の効果的な実施および調整をあらゆるレベルで進め、かつこれらの政策およびプログラムが子どもの権利に与える効果を評価するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう勧告する。
資源配分
14.委員会は、子どものための保健サービス、教育サービスおよび社会サービスに対する予算配分が相当に増額されたこと、ならびに、条約の実施に関連する国際的援助および開発援助が行なわれていることを歓迎する。しかしながら委員会は、条約に基づく子どもの権利の実施のために配分される予算の割合に関するデータがないことを懸念するものである。
15.子どもの権利のための資源と国の責任に関する一般的討議(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもの権利の視点を含んだ予算編成手続を確立するとともに、関連部門および関連機関における子どものための明確な配分額(具体的指標および追跡システムを含む)を定めること。
  • (b) 積極的是正のための社会的措置を必要とする可能性のある、不利なまたは権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもに関する予算科目を定めるとともに、当該予算科目が、たとえ経済危機、自然災害および緊急事態の状況下にあっても、とくに保健および教育との関連で保護されることを確保すること。
  • (c) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の効率性、十分性および公平性を監視しかつ評価する機構を設置すること。
  • (d) 国および地方のレベルで子どもの権利の実施のために配分される国家予算の割合についての、細分化された情報を提供すること。
データ収集
16.委員会は、データ収集のプロセスが発展中であり、かつ、子どもに関するデータの収集および分析のためのデータベースを開発した省庁もあることに留意する。委員会はまた、子どもの問題に関するさまざまな調査が実施されてきたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、子どもに関する全国的な中央データベースが開発されておらず、かつ、締約国の全般的データ収集体制に、とくに国家的計画立案、予算編成、監視および報告との関連で欠落があることを懸念する。
17.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、データ収集システムを速やかに改善するよう勧告する。データは、条約のすべての分野を網羅し、かつ年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。さらに委員会は、これらのデータおよび指標が関連省庁間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきことを勧告する。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)および地域機構との技術的協力を強化することも勧告するものである。
独立の監視
18.委員会は、人権・正義監視官事務所が〔人権の促進および保護のための国内機関国際調整委員会から〕「A」認定を受けているという情報、および、同事務所が行なっているさまざまな活動(ディリおよび各県における、条約に関連した調査、監視、意識啓発プログラムおよび教育プログラムを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、専門性の欠如、人的資源の対応能力および財政的制約を理由として、同事務所内に子どもに関する特別部署も子どもの権利に関する窓口も設けられていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、同事務所が、子どもの権利の擁護、および、子どもによってまたは子どもに代わって申し立てられた苦情のフォローアップにおいて積極的役割を果たしていないという情報が寄せられていることも懸念する。
19.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 前回勧告されたように(CRC/C/TLS/CO/1、パラ15参照)、子どもによって申し立てられた苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応し、被害を受けた子どものプライバシーおよび保護を確保し、かつ被害者のために監視、フォローアップおよび検証のための活動を行なうことができる、適切な人員および資源を与えられた子どもの権利担当部局を、人権・正義監視官事務所内に設置すること。
  • (b) 苦情申立ての権利に関する、一般公衆およびとくに子どもたちの意識啓発を図るとともに、手続がアクセスしやすく、秘密が守られる、かつ子どもにやさしいものとなることを確保すること。

B.子どもの定義(第1条)

20.成人年齢が17歳であることには留意しながらも、委員会は、18歳未満のすべての子どもが条約に基づく全面的保護を享受しているわけではないことを懸念する。
21.委員会は、締約国が、すべての国内法において、条約第1条にしたがい、18歳未満のすべての子どもが条約に基づく全面的保護を享受できるようになることを確保するための措置をとるよう勧告する。
22.委員会は、最低婚姻年齢が男女ともに17歳とされていること、および、とくに女子の児童婚が締約国で依然として広く蔓延していることを懸念する。委員会は、16歳の女子および男子が親の同意を得て婚姻できることをとりわけ懸念するものである。
23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 男子および女子の最低婚姻年齢が18歳に引き上げられ、かつ、16歳未満の子どもはいかなる状況下でも婚姻できないことを確保することこと。
  • (b) 世帯、地方当局、裁判官、宗教的指導者およびコミュニティの指導者を対象とした、早期婚が女子の身体的および精神的健康およびウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを発展させること。
  • (c) 有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号に照らし、締約国で子どもに対して行なわれている有害慣行に終止符を打つための積極的措置をとること。

C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
24.委員会は、締約国の憲法およびその他の法律に、差別からの子どもの保護に関する具体的規定(障害のある子どもおよび婚外子に関連するものを含む)が含まれていることを称賛する。しかしながら委員会は、特定の集団の子ども(とくに帰還民の子ども、洗礼証明書を所持していない子ども、婚外子、家族間の性的関係によりできた子どもおよび障害のある子ども)が、もっとも重要な点として教育その他のサービスへのアクセスとの関連で、事実上の差別に直面していることを懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、締約国のすべての子どもが法律上の差別も事実上の差別も受けることなく条約上の平等な権利を享受できることを確保するとともに、とくに意識啓発キャンペーンおよび教育(とくにコミュニティのレベルおよび学校におけるもの)を通じて、前述の集団の子どもおよび周縁化された状況に置かれているその他の集団の子どもに対するいかなる形態の差別も効果的に解消されることを確保するための措置を強化するよう、勧告する。
子どもの最善の利益
26.委員会は、子どもの最善の利益の原則は政府のあらゆる部門で主流化されており、かつ子ども法案および人身取引の防止、抑止および処罰のための法律案に掲げられている旨の、定期報告書に記載された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利をすべての行動において確保し、かつ、子どもに関連するすべての法律、行政上および司法上の手続、政策ならびにプログラムで当該権利を適用するために締約国が行なっている努力についての情報が不十分であることを懸念するものである。
27.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利がすべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫した解釈および適用がなされることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断することおよびこれらの利益を第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう、奨励されるところである。
子どもの意見の尊重
28.委員会は、子どもに関連するさまざまな法案および関連の行政手続および司法手続において子どもの意見の尊重を確保するために締約国が行なっている努力に留意する。委員会はまた、国家青年評議会、国家青年局および若者議会が行なっている、子ども参加の多数の活動および取り組みにも留意するものである。しかしながら委員会は、伝統的および文化的慣行において、家庭、学校およびコミュニティにおける子どもの意見が容易に配慮されかつ認められていないこと、ならびに、子どもの意見の尊重が、実際上、あらゆる関連の分野でかつ国および地方のレベルで、障害のある子ども等との関連で十分に実施されていないことを懸念するものである。
29.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがってこの権利を強化するための措置をとるよう勧告する。委員会は、この目的のため、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を定める等の手段により、関連の法的手続で意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。
  • (b) 家庭、コミュニティ、学校および生徒評議会において、脆弱な状況下にある子ども(障害のある子どもを含む)に特段の注意を払いながら、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するためのプログラムおよび意識啓発活動を実施すること。

D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条)

出生登録
30.委員会は、出生登録所の拡大、オンライン登録簿および移動出生登録所の開設ならびに子どもの登録全国キャンペーンを通じて出生登録を増やすために行なわれてきた努力に関する、締約国報告書に記載されていた情報を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されていない子どもまたは登録が遅れる子どもが多いこと、および、とくに農村部の子どもおよび証明書の費用に関わって、登録を妨げる障壁があることを懸念するものである。委員会はまた、住民登録法案がまだ承認されていない旨の懸念もあらためて表明する(CRC/C/TLS/CO/1、パラ35参照)。
31.委員会は、締約国が、すべての子どもに対して出生証明書が無償で提供されることを、締約国の遠隔地における移動登録所およびアウトリーチプログラム等も通じて確保するための努力を強化するとともに、出生登録の重要性に関する意識啓発を図り、かつ住民登録法案の採択および実施を進めるよう勧告する。

E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条)

体罰
32.委員会は、子ども法案が学校における体罰を禁じており、かつ、学校内外の児童虐待に関する通報義務を定めていることに留意する。委員会は、学校における体罰について申し立てられた苦情を調査するために教育省がとった措置に関する、締約国報告書に記載されていた情報を歓迎するものである。しかしながら委員会は、体罰が、子どものしつけおよび規律のための手段として社会で広く受け入れられており、かつ、学校ならびに家庭および入所施設においていまなお合法とされていることを懸念する。委員会はまた、あらゆる場面で行なわれた体罰の件数に関するデータがないことも懸念するものである。
33.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭、学校および施設を含むあらゆる場面での体罰を明示的に禁止するため、子ども法の採択および法改正を進めること。
  • (b) 体罰に代わる手段としての積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育てならびにしつけおよび規律維持を促進するとともに、親教育プログラム、ならびに、校長、教員ならびに子どもとともにおよび子どものために働くその他の専門家を対象とする研修を拡大すること。
  • (c) 体罰が子どもに及ぼす悪影響について公衆一般に知らせるための意識啓発キャンペーンを通じて行なっている努力の強化拡大を図るとともに、このプロセスへの子どもたちおよびメディアの関与を積極的に求めること。
虐待およびネグレクト
34.委員会は、締約国が、子どもの虐待およびネグレクトの問題に対処するためのさまざまな取り組み(締約国の全13県に子ども保護担当官を追加配置したことを含む))を行なってきたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国で子どもの虐待およびネグレクトが蔓延していることを懸念するものである。委員会はさらに、子どもの虐待およびネグレクトに関して利用可能なデータが限られていること、ならびに、調査、フォローアップ、回復および社会的再統合に関する情報がないことも懸念する。
35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 必要な法律および政策(とくに家族間暴力禁止法および子どもの保護に関する政策)の実施ならびに子ども保護法案の採択および実施との関連も含め、あらゆる場面における子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための包括的戦略を立案する目的で、子どもたちの関与を得ながら、意識啓発プログラムおよび教育プログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。
  • (b) 子どもその他の者が虐待およびネグレクトの事案を通報するための容易にアクセスできる機構を、被害者のための必要な保護を確保しながら確立すること。
  • (c) 被害を受けた子どもの身体的および心理的リハビリテーションの便宜を図り、かつ、これらの子どもが精神保健サービスを含む保健サービスにアクセスできることを確保すること。
  • (d) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家および職員を対象として、家族間暴力の防止および監視の方法、ならびに、このような暴力についての苦情を子どもおよびジェンダーに配慮したやり方で受理し、捜査しかつ訴追する方法についての必要な研修が実施されることを確保すること。
  • (e) 子ども保護ネットワークが暴力および虐待の根本的原因に対処するための長期的プログラムを実施できるよう、同ネットワークに対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。
  • (f) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得ることならびにこれらの者に研修および支援を行なうこと等の手段により、家族間暴力、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに対応することを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。
性的搾取および性的虐待
36.委員会は、刑法において性的搾取罪および子どもの虐待罪が犯罪とされていることを歓迎する。委員会はまた、子どもの保護を増進させるために締約国が行なっているいくつかの取り組み(性暴力および性的虐待の被害者に対する援助および支援を含む)も歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国において、近親姦を含む子どもの性的虐待が広く行なわれていることを深刻に懸念する。委員会はまた、裁判所に持ちこまれた事件の件数および当該手続の結果に関する情報がないことも懸念するものである。委員会はさらに、「ジェンダーを理由とする暴力に関する国家行動計画」がその効果的実施のための資源を欠いていることを懸念する。
37.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもの性的虐待、性的搾取および近親姦の事案の義務的通報、ならびに、これらの事案に関する迅速かつ効果的な捜査および加賀者の訴追を確保するための機構、手続および指針を確立すること。
  • (b) 性的搾取、性的虐待および近親姦の被害を受けた子どもに対するスティグマと闘うための意識啓発プログラムおよび教育プログラムを実施するとともに、このような人権侵害を通報するための、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしくかつ効果的な回路を確保すること。
  • (c) 子ども保護機関に十分な人員および資金が提供されること、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家および職員が、身元確認を受け、かつ必要な監督および研修を受けることを確保すること。
  • (d) 法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象として、このような暴力についての苦情を、子どもおよびジェンダーに配慮した、被害者のプライバシーを尊重するやり方で受理し、監視し、捜査しかつ訴追する方法についての体系的研修を実施すること。
  • (e) 子どもの商業的性的搾取に反対する一連の世界会議で採択された成果文書にしたがい、子どもの性的搾取の防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策が策定されることを確保すること。
  • (f) 「ジェンダーを理由とする暴力に関する国家行動計画」を効果的に実施し、かつ同計画に対して十分な資金が拠出されることを確保すること。

F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条ならびに第27条(4))

家庭環境
38.子どもの養育責任の遂行にあたって親および法定保護者を援助するために目覚ましい数のサービスおよびプログラムが存在するにもかかわらず、委員会は、多くの家族が貧困状況にあり、食料が不安定な状況に直面しており、かつ適切な援助を受けられていないために、子どもが入所型養護施設に措置されていることを懸念する。委員会はまた、貧困削減の取り組みにもかかわらず金銭的支援が不十分であり、かつ乳幼児期教育および乳幼児のケアへのアクセスも不十分であることも懸念するものである。
39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの保護および子どものケアのために家族およびコミュニティを強化することに焦点を当てた「子ども・家族福祉制度政策」を完成させかつ実施すること。
  • (b) 家族給付および子ども手当ならびにその他のサービス(アクセスしやすい乳幼児期の教育およびケアなど)の制度を強化する等の手段により、子どもの養育責任の遂行にあたって親および法定保護者に(とりわけ貧困の状況にある者に対しておよびとくに農村部において)提供するための努力を強化すること。
  • (c) 家族カウンセリングおよび親教育のプログラムを拡大すること。
家庭環境を奪われた子ども
40.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 非公式な里親養育の取決めにより、子どもがさまざまな理由で実の家族以外の家族のもとに措置され、そのため虐待および搾取を受けやすい状況に置かれていること。
  • (b) 親族養育が東ティモールで広く行なわれている伝統的慣行であり、かつ一般論としては肯定的慣行であることに留意しつつも、保護機関による監視が限られているために子どもが虐待を受けやすい状況に置かれていること。
  • (c) 入所型養護施設への子どもの措置およびこのような施設における養護の質の監視に関して、政府による監督が不十分であること。
41.子どもの代替的養護に関する指針に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、金銭的もしくは物質的貧困またはこのような貧困を直接かつ唯一の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離すること、子どもを代替的養護に受け入れることまたは子どもの社会的再統合を妨げることの唯一の正当化事由とされてはならないことを強調する。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 家庭外への措置(非公式な取決めを含む)を防止するため、実の家族に提供される支援をさらに強化すること。
  • (b) 代替的養護を必要とする子どもが施設ではなく家庭を基盤とする養育先に措置されること、および、これらの子どもが、その子どもの最善の利益にかなうときは、家族との接触を維持しまたは家族のもとに復帰することを確保するための努力を強化すること。
  • (c) 子どもを代替的養護への措置の対象とすべきか否かの判断に関する、子どものニーズおよび最善の利益を基礎とした十分な保障措置および明確な基準(子どもホームへの子どもの措置の定期的再審査を含む)を確保すること。
  • (d) 入所型養護施設の運営に関する政府の監督を強化するとともに、「子ども養護センターおよび寄宿舎に関する政策、手続および基準」(2010年)を見直すことにより、すべての入所型養護施設が当該政策(これには執行のための機構も含まれるべきである)を遵守しながら運営されることを確保すること。
  • (e) 施設入所児のリハビリテーションおよび社会的再統合を可能なかぎり最大限に促進する目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護サービスに十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。
養子縁組
42.委員会は、しばしば貧困の状況または債務を理由として家族が子どもを他の家族に託すという、非公式な養子縁組に関わる慣行が締約国で行なわれていることを懸念する。委員会はまた、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准した締約国が、実際には同条約を実施していないことも懸念するものである。
43.委員会は、締約国が、締約国における非公式な養子縁組の問題について緊急に規制を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、条約にしたがった養子縁組に関する法律および政策を採択することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を実施するための法律および政策を採択するとともに、この点についてとられた措置(遵守を確保するための機構を含む)についての情報を次回の定期報告書で提供するよう勧告する。

G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3)および第33条)

障害のある子ども
44.委員会は、健康促進との関連で戦略開発計画に障害が含まれていることを歓迎する。委員会はまた、障害のある子どもを普通教育の場で支えるための研修を教員に対して実施する3か所の研修センター(ディリ、ローテムおよびアイレウ)が、パイロット事業として設置されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。
  • (a) 社会のあらゆる領域で障害のある子どもの権利および積極的参加を保障するために必要な、法律および政策の改革ならびに国レベルでの調整が実施されていないこと。
  • (b) 障害のある子どもが、広範な差別、ネグレクトおよび虐待の対象とされており、教育および保健ケアにアクセスできておらず、かつ社会生活のすべての分野に効果的に統合されていないこと。
  • (c) 障害のある子どもの権利に関する公衆の意識が欠けていること。
  • (d) 学校、スポーツ施設、余暇施設および入所施設における、障害のある子どものための質量ともに十分な便益が、とくに農村部において整備されていないこと。
  • (e) 締約国における障害のある子どもに関する統計データが存在しないこと。
  • (f) 障害のある人の権利に関する条約を締約国がまだ批准していないこと。
45. 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、 障害に対する人権基盤型アプローチを採用し、障害のある子どものインクルージョンのための包括的戦略を定め、かつ、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 「障害のある人々のための国家行動計画」および「インクルーシブ教育に関する国家政策および行動計画」の見直しおよび承認を図り、かつ障害のある子どもが利益を得られるようなインクルーシブなやり方でこれらの計画が実施されることを確保する等の手段により、障害のある子どもの権利の促進および保護のための立法上および政策上の枠組みの強化、ならびに、法律および政策を調整するための努力の強化を引き続き進めること。
  • (b) カウンセリングおよび研修の機会を提供すること、「ボルサ・ダ・メイ」(母の財布)給付金を増額すること、ならびに、障害のある子どもを支援する一助とするための養育者向け給付の実施を検討すること等の手段により、障害のある子どもの養育者に対する支援を強化すること。
  • (c) 障害のある子どものために働く専門家(教員、ソーシャルワーカーならびに保健、医療、治療およびケアに従事する専門家など)を対象として継続的研修が実施されること、指針および研修資料が作成されること、ならびに、ケア提供者の実績を監視するための機構が整備されることを確保すること。
  • (d) 学校および保健ケア施設がアクセシブルであり、かつ十分な人員および資金を提供されること、ならびに、障害のある子どもが尊厳および敬意をもって扱われ、かつ実効的保護を享受できることを確保すること。
  • (e) 公衆およびその他の関係者に対して障害のある子どもの権利について周知するための、持続的な公衆意識啓発キャンペーンを実施すること。
  • (f) 障害のある子どもが社会生活のあらゆる分野(学校、スポーツおよび余暇活動を含む)に全面的に統合されること、ならびに、諸施設およびその他の公的空間が障害のある子どもにとってアクセシブルであることを確保するために必要なあらゆる措置をとること。
  • (g) 障害のある子どもの状況を前進させるための適切な政策およびプログラムについて主要な部門が十分な情報を得られるようにする目的で障害のある子どもの状況に関する包括的評価を行なうため、障害別に細分化されたデータの収集を強化すること。
  • (h) 障害のある人の権利に関する条約の批准を検討すること。
健康および保健サービス
46.委員会は、締約国の全国民がプライマリーヘルスケアに無償でアクセスできるようにすることに対する締約国の決意を称賛するとともに、「国家保健部門戦略計画」ならびに予防接種、栄養ならびに子どもおよび青少年の健康関連のさまざまな戦略を実施する計画があることに留意する。委員会はまた、5歳未満児死亡率が減少したことならびに発育阻害、消耗症および低体重に分類される子どもを少なくするための努力が行なわれていること、子どもの栄養状態が全般的に改善されたこと、ならびに、子どもの予防接種の範囲が拡大されたこと(とくに妊産婦破傷風、新生児破傷風、天然痘およびポリオが根絶されたこと)も称賛するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。
  • (a) 十分なスキルを有する保健ケア専門家の人数が不十分であること、保健に関する基準が劣悪であることおよび締約国全域(とくに農村部)で公式な保健サービスが不十分であることが、いまなお高い乳児死亡率および5歳未満児死亡率、高い妊産婦死亡率、子どもの障害ならびに疾病発生件数の多さを固定化させる根強い要因となっていること。
  • (b) 栄養不良、微量栄養素欠乏症および発育阻害率の水準が高いこと、予防接種を完全に受けていない子どもの人数が多いこと、ならびに、とくに農村部において安全な飲料水、基礎的衛生設備および個人衛生のための便益へのアクセスが(学校および保健施設等においても)不十分であること。
  • (c) 伝統的調理慣行のために屋内空気汚染の水準が高くなっていること。
  • (d) 母乳育児および補完食の与え方の実践について継続的に改善を図っていく必要があること。
47.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とりわけ農村部において、とくに新生児ケア、産前ケアおよび産後ケアのために十分な財源および人的資源が供給されることを確保するための努力を引き続き強化すること。
  • (b) 出産に関する保健ケア専門家および助産師の研修ならびにこれらの専門家へのアクセスを向上させるとともに、保健ケア施設における分娩件数を増加させるためのコミュニティ出産準備イニシアティブを拡大すること。
  • (c) 子どもの発育阻害、消耗症および栄養不良を防止するための対象特化型の介入策(乳幼児に対する適切な栄養補給実践の促進を含む)を継続するとともに、改訂国家栄養戦略等も通じ、栄養問題に関する意識啓発および全般的栄養教育の促進を引き続き進めること。
  • (d) 子どもが質の高い保健ケアサービス(全県における予防接種を含む)にアクセスできることを確保する目的で保健ケア専門家の増員および配置範囲の拡大を図るとともに、すべての子どもが予防接種登録の対象とされることを確保するために電子式の子ども追跡システムを実施すること。
  • (e) とくに農村部において、家庭、学校およびその他の公的施設に安全な飲料水、基礎的衛生設備および個人衛生のための便益が十分に備えられることを確保するための努力を強化し、かつそのための資源を増加させるとともに、屋外排泄ゼロの農村を促進するための政策を実施する等の手段により、屋外排泄ならびに適切な衛生維持のための実践および手洗い実践についての意識啓発を図ること。
  • (f) 政府による調整を強化し、行動計画を策定し、かつ水道局および公共事業省に対して十分な人員および十分な予算を提供することにより、とくに農村コミュニティを対象として、清潔な水道設備へのアクセスを向上させること。
  • (g) 清潔な調理技法の導入、および、呼吸器疾患と伝統的調理慣行における薪の使用との関連に関する意識啓発のための措置を強化するとともに、調理用燃料の費用を補助する等の手段によって薪への依存度を少なくすること。
  • (h) 東ティモール母乳育児政策ならびに母乳代替品、母乳補助品および関連製品の販売促進規則を承認しかつ実施し、これらの取り組みを支持する保健センターの数を増やし、かつ、適切な乳児栄養を支援するために産後休暇を現行の3か月から6か月に延長すること。
精神保健
48.委員会は、子ども、とくに性暴力およびセクシュアルハラスメント、虐待ならびにネグレクトを含む暴力にさらされた子どもにとって、子どものための精神保健ケアおよび心理社会的リハビリテーションへのアクセスが限定されていることを懸念する。
49.委員会は、一般的意見15号を参照しつつ、締約国が、子どもの精神保健のために現在設けられている良質なサービスおよびプログラムを強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの精神保健の専門家を増員し、かつ心理社会的リハビリテーションのための十分な施設および外来サービスを確保するための措置をとること。
  • (b) 子どもとともに働くすべての専門家が、とくに子どもホーム、安全確保施設および少年矯正施設において、精神保健上の問題を特定しかつこれに対応するための訓練を受けることを確保すること。
思春期の健康
50.委員会は、思春期の健康問題(リプロダクティブヘルス関連のものを含む)の予防および治療を目的としたプログラムおよびサービスに関する情報を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 10代の妊娠率が高いこと(これは締約国における児童婚の蔓延と関連している)、リプロダクティブヘルスに関する知識が限られていること、ならびに、社会的および文化的障壁によって若者および思春期の子どもがリプロダクティブヘルスに関する情報およびサービスを求められなくなっていること。
  • (b) 思春期の子どもがセクシュアル/リプロダクティブヘルスのためのサービス(HIVおよび性感染症の予防のためのものを含む)の実効的対象とされ、かつこれらのサービスにアクセスできることを確保するうえで、締約国が相当の課題に直面していること。
  • (c) 思春期の子どもによるタバコおよびアルコールの消費水準が高いこと。
  • (d) 締約国によって、思春期の健康問題の性質および規模を(有害物質濫用およびHIV/AIDS予防との関連も含めて)評価するための包括的研究が実施されていないこと。
51.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 若年妊娠が女子の身体的および精神的健康およびウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを、世帯、地方当局、宗教的指導者および裁判官を対象として発展させること。
  • (b) 10代の妊娠および性感染症(HIV/AIDSを含む)の予防に特段の注意を払いながら、青少年の子どもおよびコミュニティ一般を対象とした、年齢にふさわしい性教育を促進すること。
  • (c) アルコールの消費および喫煙についての最低年齢を定めた法律を採択するとともに、有害物質濫用に対処するための支援プログラムおよび支援サービスならびに介入プログラムおよび意識啓発キャンペーンを確立すること。
  • (d) 今後の保健政策および保健プログラムの基礎とするため、思春期の健康問題の性質および規模を評価するための包括的研究を、思春期の子どもの全面的参加を得ながら実施すること。
生活水準
52.締約国が家族に対して若干の金銭的援助を配分していることには留意しながらも、委員会は、貧困線以下の生活を送っている子どもの割合が高く、そのため条約で保護されている権利の多く(健康、教育および社会的保護に対する権利を含む)の享受に影響が生じていることを深く懸念する。
53.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもの貧困と闘うための公共政策および国家的計画を立案する等の手段により、高い水準の子どもの貧困に短期的にも持続的なやり方でも対処するための努力を強化すること。
  • (b) 子どものための成果をさらに向上させる目的ですべての社会的保護プログラムを強化するとともに、子どもの排除に対抗するための優先的行動を特定する目的で、具体的かつ測定可能な目的、明確な指標、期限ならびに十分な経済的および金銭的支援をともなった貧困削減戦略を強化すること。
  • (c) 国際連合「社会的保護の最低水準」イニシアティブの一環として、ユニセフ等と連携しながら、子どもが基礎的サービスにアクセスできるようにするための社会的保護の最低水準に関する国家的定義を創設すること。

H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
54.委員会は、あらゆる段階の教育について相当の進展が見られたこと、校舎の建設および改築に相当額の投資が行なわれていること、ならびに、職業教育を含む教育のための予算配分が相当に増額されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 就学前教育施設に就学する子どもの人数が少ないこと、とくに農村部において中等学校就学率が低いこと、とくに中等教育以前の段階で子どもの脱落および留年が多いこと、ならびに、とくに男子の脱落率が高いこと。
  • (b) 公立学校の数が不十分であること、設備が不十分であること、教育に間接的費用がかかっていること、専門家として養成された教員の人数が不十分であること、教員の研修および教員用資料が不十分であること、ならびに、テトゥン語およびポルトガル語の識字水準が低いこと。
  • (c) 障害のある子ども、思春期の母親、働いている子ども、親のいない子ども、貧困下で暮らしている子どもおよび言語的マイノリティの、教育へのアクセスが不十分であること。
  • (d) 学校でセクシュアルハラスメントおよび性暴力が行なわれていること、思春期の女子の間で若年妊娠が生じていること、ならびに、そのような女子が復学した際にスティグマおよび排除に直面すること。
55.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 「就学前教育に関する国家政策枠組み」および関連の戦略行動計画を実施し、かつ、子どもにやさしい学校イニシアティブの一環としてアイレウ県およびエルメラ県の遠隔地コミュニティに12の就学前教育施設を設置するパイロット事業を実施するとともに、乳幼児期教育の発展および拡大のために十分な財源を配分すること。
  • (b) とくに障害のある子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、妊娠している10代、遠隔地に住んでいる子どもおよびマイノリティ言語集団の構成員である子どもを対象として、インクルーシブな、より質の高い教育を通じ、基礎教育へのアクセスならびに基礎教育の継続および修了を増進させること。
  • (c) すべての子どもを対象として教育のアクセス可能性および質を引き続き向上させるとともに、農村部をとくに重視しながら、教員を対象とする質の高い研修を実施すること。
  • (d) すべての中核的科目について、二言語の教科書および教員用指導書の開発を継続すること。
  • (e) 学校奨学金および学校給食プログラムを増進させる等の手段により、とりわけ被害を受けやすい状況に置かれた子どもを対象として、間接的費用の支払い能力にかかわらず教育にアクセスできることを確保するとともに、学校設備の不足に対応する能力を引き続き拡大すること。
  • (f) ジェンダーの問題およびジェンダーへの配慮に関する研修があらゆる段階のあらゆる教員養成および教員研修における不可欠な、実質的なかつ必須の要素とされることを確保しながら、教育部門におけるジェンダー平等政策の主流化を進めるとともに、学校における暴力およびセクシュアルハラスメントの状況に対処すること。

I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条)

経済的搾取(児童労働を含む)
56.委員会は、国家児童労働対策委員会(2014年)および労働監察総監(2010年)が設置されたことならびに「最悪の形態の児童労働撤廃プログラム」が実施されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、労働に従事する子どもの多さ(その大多数は、コーヒー部門を含む農業、漁業、建設業、家事労働、路上および市場での物売りならびに売春に従事している)、および、家族の未払い債務を清算するために家事労働者として働くことを余儀なくされている子どもの状況について、懸念を覚えるものである。
57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 正規部門および非正規部門の双方における児童労働に対処するための法律および政策を採択し、かつ、条約第32条の遵守を確保すること(そのため、とくに、債務労働を含むすべての不法な活動および危険な労働のために子どもを調達しまたは提供することを禁止すること)によって、子どもが経済的に搾取されることを防止するための措置をとること。
  • (b) 公衆教育プログラム(児童労働反対世界デー記念キャンペーンなど、オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じ、児童労働の有害な影響に関する意識啓発を引き続き図ること。
  • (c) 国際労働機関・最低年齢条約(1973年、第138号)の批准を検討すること。
  • (d) 国際労働機関・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めること。
路上の状況にある子ども
58.委員会は、路上の状況にある子どもに対応するために締約国が行なっている取り組みについての情報を歓迎する。しかしながら委員会は、路上の状況にある子どもについての情報およびデータが不十分であり、かつ、この点に関する政策が策定されていないことを懸念するものである。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 貧困、家族間暴力および教育へのアクセスの欠如など、子どもを路上の状況へと追いやる根本的原因についての包括的研究を実施すること。
  • (b) この現象の防止および縮小を目的として、路上の状況にある子どもの保護のための包括的戦略を策定すること。
  • (c) 路上の状況にある子どもに対し、シェルター、教育および職業訓練、十分な保健ケアサービス(HIV/AIDS検診を含む)およびその他の社会サービス(有害物質濫用治療プログラムおよび精神保健カウンセリングを含む)を含む、十分な保護ならびに回復および再統合のための援助を提供すること。
売買、取引および誘拐
60.委員会は、人身取引に関する省庁間作業部会が設置されたことを称賛するとともに、子どもの被害者および証人について具体的に取り上げている人身取引の防止、抑止および処罰のための法律案が、現在国民議会に上程されていることに留意する。しかしながら委員会は、締約国が、女性および女子の性的人身取引の目的地国であり、かつ、強制労働を目的とする成人および子どもの〔人身取引の〕送り出し国となってきたことを懸念するものである。委員会はまた、性的搾取(買春、児童ポルノおよび人身取引を含む)に関与させられた子どもの人数についてのデータがないこと、ならびに、国境管理官および法執行官を対象として実施された人身取引防止研修についての情報がないことも懸念する。
61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 人身取引の防止、抑止および処罰のための法律の採択および実施、人身取引と闘うための国家的行動計画の策定、承認および実施、ならびに、人身取引事件に関わる法執行官の対応を向上させるための能力構築の取り組みの強化を進めること。
  • (b) 責任の履行、透明性および条約違反の防止を向上させる目的で、このような虐待の捜査および是正のための監視機構を設置するとともに、買春または強制労働の目的で子どもを搾取した者の実効的な訴追および処罰を確保すること。
  • (c) 一連の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された成果文書にしたがい、被害者に対して教育および訓練ならびにカウンセリング、保健ケアおよびその他の社会サービスが提供されることを確保しながら、子どもの性的搾取の防止ならびに被害者の回復および社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを引き続き実施すること。
  • (d) 被害者および加害者となりうる者の発見、防止措置ならびに観光産業内の援助および是正のための回路(世界観光倫理規範を含む)に関する公衆教育キャンペーンを拡大すること。
少年司法の運営
62.委員会は、少年司法制度についての相当の見直しおよび改革が現在進められている旨の、締約国報告書に記載されていた情報に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 12~16歳の未成年者に関する保護教育法案に関する情報がないこと、および、16~21歳の未成年者に関する特別刑事制度法案で少年司法上の保護年齢が16歳とされていること。
  • (b) 子どものための司法の運営に従事する人員(弁護士、裁判官、検察官、公選弁護人および矯正官を含む)の対応能力および専門的訓練が不十分であること。
  • (c) 法律に抵触した子どもに提供される法的援助、ダイバージョンプログラム、および、地域奉仕活動および保護観察のような拘禁に代わる措置についてのデータがないこと。
  • (d) 警察署での留置および未決拘禁の対象とされている子どもの人数、ならびに、このような子どもが裁判官または判事の前に引致されるまでの拘禁期間に関するデータがないこと。
  • (e) 法律に抵触した子どもの重大事案に対応するために非公式なコミュニティ調停機構が利用されていること。
  • (f) ベコラ刑務所で少年と成人受刑者がまとめて収容されており、かつ単一の少年センターが設置されていないこと。
63.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約に一致させるよう促すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) すべての子ども(定義上、18歳未満の者をいう)が少年司法制度によって保護されることを確保すること。
  • (b) 支援介入プログラム、職業訓練およびその他のアウトリーチ活動を拡大する等の手段により、リスクのある状況に置かれた子どもを早い段階で支援することを目的として、法律に抵触した子どもの問題および根底にある社会的要因への対処に関してホリスティックかつ予防的なアプローチをとること。
  • (c) 可能な場合には常に、法律に抵触した男女の子どものためのプログラムにおけるジェンダーの差異化を考慮に入れながら、修復的司法および拘禁代替措置(ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕活動など)を促進するとともに、拘禁が、最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられ、かつその取消しの方向で定期的に再審査されることを確保すること。
  • (d) 拘禁が避けられない場合、法律に抵触した子どものための十分な施設が存在すること、子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準(教育および保健サービスへのアクセスに関するものを含む)を遵守したものとなることを確保すること。
  • (e) 立ち直りのための効果的サービス(精神保健カウンセリングおよび有害物質濫用治療へのアクセスを含む)ならびに効果的な社会的スキル育成教育(職業訓練プログラムを含む)を提供すること。
  • (f) すべての少年司法関係者(法執行要員、弁護士、裁判官およびソーシャルワーカーを含む)のスキルおよび専門性を高め、司法を強化し、かつ研修資料を強化すること。
  • (g) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、ユニセフ、国際連合人権高等弁務官事務所およびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。

J.通報手続に関する選択議定書の批准

64. 委員会は、子どもの権利の実施をさらに強化する目的で、締約国が、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。

K.国際人権文書の批准

65.委員会は、子どもの権利の実施をさらに強化する目的で、締約国が、障害のある人の権利に関する条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、事務総長に寄託された中核的人権条約の選択議定書であってまだ加盟国となっていないものを批准することも勧告するものである。

L.地域機関および国際機関との協力

66.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会ならびにポルトガル語諸国共同体と協力するよう勧告する。

IV.実施および報告

A.フォローアップおよび普及

67.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第2回・第3回統合定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。

B.次回報告書

68.委員会は、締約国に対し、第4回定期報告書を2020年8月15日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。
69. 委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがって42,400語を超えない範囲で作成された、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2017年3月18日)。
最終更新:2017年03月18日 03:33