総括所見:アメリカ(OPAC〔第2回〕・2013年)


CRC/C/OPAC/USA/CO/2(20013年6月26日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2013年1月16日に開かれた第1761回会合(CRC/C/SR.1761参照)において、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づくアメリカ合衆国の第2回定期報告書(CRC/C/OPAC/USA/2)を検討し、2013年2月1日に開かれた第1784回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第2回提起報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/USA/Q/2/Add.1)の提出を歓迎し、かつ、多部門から構成される代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第2回定期報告書に関して2013年2月1日に採択された総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/2)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

III.一般的所見

4.委員会は、「政権は条約の目標を支持しており、かつ、どのようにすれば(子どもの権利)条約の批准に向けていよいよ行動を起こせるか再検討する意図を有している」旨の、対話の際に代表団によって表明された保証を歓迎する。しかしながら委員会は、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ34)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもの権利の保護を包括的なやり方で向上させるために条約の批准手続を加速させるよう促すものである。
積極的側面
5.委員会は以下の法律の制定を歓迎する。
  • (a) 子ども兵士責任追及法(公法第110-340号、2008年10月3日)。
  • (b) 子ども兵士防止法(公法第110-457号、2008年12月23日)。
6.委員会はまた、選択議定書の実施に関連する分野でとられた積極的措置、とくに子どもの徴募および武力紛争における使用(国以外の武装集団におけるものを含む)と闘う国際機関その他の機関への締約国の支援も歓迎する。

III.実施に関する一般的措置

生命、生存および発達に対する権利
7.委員会は、対話の際に締約国から提供された、文民の死傷者は過去2年間に減少した旨の情報に留意する。にもかかわらず、委員会は、報告対象期間中にアフガニスタンで米軍が行なった攻撃および空爆の結果、数百人の子どもが死亡した(その理由としてとくに予防策の欠如および無差別な武力行使が報告されている)という報告があることを憂慮するものである。委員会は、実際には2010年から2011年にかけて子どもの死傷者数が倍増したことに、重大な懸念を表明する。委員会はさらに、子どもの殺害に責任を負う軍隊構成員が常にその責任を問われてきたわけではないこと、および、家族の苦情について救済が行なわれていないことに、深刻な懸念を表明するものである。
8.委員会は、締約国に対し、締約国は文民(とくに子ども)の保護に責任を負っているのであって、これはあらゆる軍事作戦において優先されるべきであること、および、締約国は区別の原則、均衡性の原則、必要性の原則および予防の原則にしたがって文民の死傷を防止すべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 子どもを含む文民の殺害および回復不能な受傷がこれ以上起こらないことを確保するため、具体的なかつ確固たる予防措置をとり、かつ無差別な武力行使を防止すること。
  • (b) 米軍によって子どもの権利が侵害された旨のあらゆる訴えが透明な、時宜を得たかつ独立したやり方で調査されることを確保するとともに、これらの侵害の加害者が裁判にかけられ、訴追され、かつ有罪が認定された場合は制裁を受けることを確保すること。
  • (c) 攻撃および空爆の被害を受けた子どもおよび家族が常に救済および賠償を受けることを確保すること。
立法
9.委員会は、選択議定書の遵守状況を向上させるために2008年子ども兵士責任追及法が制定されたことには留意しながらも、同法が18歳に達するまでの子どもの徴募を犯罪化していないことを遺憾に思う。
10.委員会は、締約国が、18歳に達するまでの子どもを徴募することおよび〔敵対行為に〕関与させることを犯罪化するために2008年子ども兵士責任追及法を改正することを検討するよう、勧告する。
留保
11.委員会は、批准時に「了解」として提出された選択議定書の規定の制限的解釈を維持する旨の締約国の決定、および、とくに敵対行為への直接参加の定義に関する制限的解釈を遺憾に思う。
12.委員会は、これらの了解は選択議定書第1条への留保に相当すると考えるものであり、したがって、武力紛争の状況にある子どもの保護を向上させるため、締約国はこれらの了解を撤回するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ7、2008年)をあらためて繰り返す。
独立の監視
13.委員会は、締約国の半数以上の州で子どもアドボケイトまたは子どもオンブズマンの事務所が設置されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所によってその役割および独立度がさまざまであること、ならびに、選択議定書上の子どもの権利の充足における進展を恒常的に監視し、かつ子どもからの苦情を受理してこれに対応する、パリ原則にしたがった独立の国内人権機関の設置に関して進展がないことを遺憾に思うものである。
14.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(CRC/GC/2002/2)、および、パリ原則にしたがって独立の国内人権機関を設置する必要性について多数の国連人権機関が行なってきた勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、このような国家的独立機構を設置するよう促すとともに、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所をまだ設置していない州に対し、選択議定書上の権利の充足状況を監視し、かつ権利侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしい方法で迅速に対応する同様の責任を委ねられた、このような事務所を設置するよう奨励する。
普及および意識啓発
15.委員会は、締約国が、選択議定書の原則および規定が一般公衆、子どもおよびその家族の間で広く普及されることを確保するよう勧告する。
研修
16.委員会は、国防総省その他の機関が、軍事要員および軍隊のための業務に従事する文民要員の年次訓練に選択議定書についての研修を編入した旨の、締約国から提供された情報を歓迎する。
17.委員会は、締約国に対し、軍隊のすべての軍事要員および文民要員を対象とした選択議定書についての研修を継続するよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、子どもに対応するすべての要員(とくに、庇護希望者・難民である子どものためにおよびこれらの子どもとともに活動する公的機関、警察、弁護士、裁判官、軍法会議判事、医療専門家、ソーシャルワーカーならびにジャーナリスト)が選択議定書についての研修を受けることを確保するよう、勧告するものである。
データ
18.委員会は、委員会が前回勧告したように(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ11、2008年)、自国の管轄内にあって徴募されまたは敵対行為において使用された可能性があるすべての子どもを特定しかつ登録する目的で中央データ収集システムを設置するためにとられた措置についての情報がないことを遺憾に思う。委員会はまた、締約国が、子ども兵として徴募されもしくは敵対行為において使用され、抑留され、回復不能な傷を負わされまたは殺害された庇護希望者または難民に関する具体的データを収集していないことにも、懸念を表明するものである。
19.委員会は、自国の管轄内にあって徴募されまたは敵対行為において使用された可能性があるすべての子どもを特定しかつ登録すること、ならびに、そのような慣行の被害を受けた子どもの難民および庇護希望者に関するデータが適正に収集されることを確保することを目的とした中央データ収集システムの設置を勧告した、前回の総括所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ12、2008年)をあらためて繰り返す。すべてのデータは、とくに性別、年齢、国籍、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されるべきである。また。武力紛争の結果として抑留され、回復不能な傷を負わされまたは殺害された子どもについてのデータも収集されるべきである。

IV.防止

志願入隊
20.委員会は、軍に入隊した新兵のおよそ10%が18歳未満であることに懸念を表明するとともに、締約国が志願入隊年齢を18歳に引き上げる意図を有していないことを遺憾に思う。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。
  • (a) 新兵募集の方針および実務(人数割当制を含む)が、選択議定書第3条第3項に掲げられた保護措置を損なっており、かつ18歳未満の子どもの入隊の自発的性格を疑わせるものとなっていること。
  • (b) 前回の総括所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ15)で指摘したとおり、学校が、「ひとりの子どもも落ちこぼれさせない法」に基づき、軍の新兵募集担当者が中等学校の生徒の氏名、住所および電話番号の一覧表にアクセスできるようにすることを要求されていること、ならびに、そのような情報を開示しないよう要請する権利について親が常に告知されているとは限らず、かつ親または法定保護者の同意が常に得られているわけではないこと。
  • (c) 親および子どもが、学校で行なわれる軍務職業適性一連検査(ASVAB)が任意であることまたは当該検査が軍隊と関連していることをしばしば承知しておらず、かつ、場合により、生徒に対して当該検査は義務的なものであると告知されているという報告があること。
21.委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ16、2008年)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、全般的により厳格な法的規準を通じて子どもの保護を促進しかつ強化するため、現行の志願入隊年齢を再検討して18歳に引き上げるよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) とくに「ひとりの子どもも落ちこぼれさせない法」を改正することによって新兵募集の方針および実務を再検討するとともに、新兵募集の実務において18歳未満の者が積極的に対象とされないことを確保し、新兵募集担当者の人数割当制を廃止し、かつ、軍の新兵募集担当者による学校の敷地へのアクセスが制限されることを確保すること。
  • (b) 事前に親の同意を得ることなく生徒についての情報を開示することを禁止するとともに、新兵募集の方針および実務が子どものプライバシーおよび不可侵性の尊重に一致したものとなることを確保すること。これとの関連で、委員会は、締約国が、新兵募集担当者の違法行為について効果的に調査し、制裁を課し、かつ必要なときは訴追を行なうことによって、新兵募集担当者の不正および違法行為の監視および監督を継続しかつ強化するよう勧告する。
  • (c) 学校、親および生徒が、ASVABへの参加に同意する前に、当該検査が任意であることを知っていることを確保すること。
  • (d) 新兵募集担当者による不正事案の報告件数ならびに苦情申立ておよび言い渡された制裁の性質に関する情報を次回の定期報告書で提供すること。
22.委員会は、17歳の現役兵士が、本質的に危険な任務を果たすよう要請される可能性があり、かつ敵対行為に間接的にまたは直接参加する危険にさらされるおそれがある「危険任務手当」(HDP)または「切迫危険手当」(IDP)の支給該当地域に配備される可能性があることを、深刻に懸念する。委員会はまた、2010年の会計監査院報告書で強調されているように、法定年齢未満の志願者の申請書に親の署名が得られていないことにも懸念を表明するものである。
23.委員会は、締約国が、HDPおよびIDPが支給される地域への18歳未満の者の配備を禁止し、かつ、米軍への入隊を希望する法定年齢未満の新兵について親の同意を確実に得るよう勧告する。
軍事学校
24.委員会は、少年予備役将校訓練部隊(JROTC)が任意のプログラムであることに留意する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 子どもが、JROTCプログラムへの登録は任意である旨、常に適正に告知されているわけではないこと。
  • (b) 学校によっては、このプログラムが定員超過のクラスに登録した生徒の代替登録先として利用されていることがあり、その場合、子どもが登録を取り消せば履修単位を得られないこと。
  • (c) 締約国も認めているように、JROTCに登録した子どもが武器の使用訓練を受けている可能性があること。
  • (d) 登録された子どもについてのデータが存在せず、かつ陸軍将校候補生部隊で行なわれている活動に関する情報(とくに火器の取扱いに関するもの)がほとんどないこと、および、11歳という若年の子どもの登録も可能であること。
25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家族および子どもが、JROTCプログラムが任意のものであることについて適正に告知されることを確保すること。
  • (b) JROTCが正規の学校活動の代替として利用されないことを確保すること。
  • (c) 前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ20、2008年)で委員会が勧告したとおり、子どもを対象とする軍隊様式の訓練(火器の使用を含む)を禁止するとともに、子どもを対象とするいかなる軍事訓練においても人権の原則が考慮されること、および、その教育内容が連邦教育省によって定期的に監視されることを確保すること。
  • (d) 次回の定期報告書で、陸軍将校候補生部隊に登録された子どもおよびこのような子どもが行なっている活動に関する、性別、年齢、国籍、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されたデータを提供すること。
人権教育および平和教育
26.委員会は、人権教育および平和教育ならびに選択議定書に関する知識の学習が、初等中等学校カリキュラムの必須学習事項として、かつ教員養成プログラムにおいて、具体的に編入されていないことを遺憾に思う。
27.委員会は、締約国が、選択議定書にとくに言及しながら、すべての学校(軍事学校を含む)のカリキュラムに人権教育および平和教育を含めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、〔高等教育における〕人権教育ならびに教員および教育者、〔公務員、〕法執行官ならびに軍隊要員を対象とする人権研修に焦点を当てた「人権教育のための世界プログラム」第2段階(2010~2014年、A/HRC/15/28参照)のための行動計画を検討しかつ採択するよう、勧告するものである。

V.禁止および関連の事項

現行刑事法令
28.委員会は、2008年子ども兵士責任追及法が15歳未満の子どもの徴募を犯罪化したのみであり、したがって選択議定書第6条第1項に一致していないことに懸念を表明する。
29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 18歳に達するまでの子どもの徴募および武力紛争における使用を犯罪化するために2008年子ども兵士責任追及法を改正すること。
  • (b) 子どもに影響を与えるすべての法律を包括的に見直すとともに、国内法および国内政策を選択議定書の原則および規定に全面的に調和させるためにあらゆる必要な措置をとること。
30.委員会はまた、締約国が以下の国際文書の批准を検討するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ24および25)をあらためて繰り返す。
  • (a) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1977年6月8日の追加議定書(議定書I)。
  • (b) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1977年6月8日の追加議定書(議定書II)。
  • (c) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する1997年9月18日の条約。
  • (d) 国際刑事裁判所ローマ規程。
犯罪人引渡し
31.委員会は、締約国が、15歳未満の子ども兵を徴募しまたは使用する犯罪について広範な裁判権を採用していることに留意する。しかしながら委員会は、15歳未満の子どもを徴募し、かつリベリアにおける武力紛争で使用した戦争犯罪の容疑があるリベリア市民(合衆国住民)が、2012年3月に移民判事の決定を受けて自国へ送還されたこと、および、その結果、同人が現在では処罰を完全に免れていることを遺憾に思うものである。
32.委員会は、締約国に対し、不処罰を防止しかつこれと闘う目的で、武力紛争における子どもの徴募および使用についてのすべての訴えが適正に捜査され、かつ、容疑者が実効的に追及されかつ裁判にかけられることを確保するよう、奨励する。

VI.保護、回復および再統合

武装集団と関係のある子どもの取扱い
33.子どもが長期間、場合によっては1年またはそれ以上の期間拘禁されている旨の前回の所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ28、2008年)に照らし、委員会は、締約国が子どもを引き続き逮捕し、かつ国防総省の収容施設で拘禁していることに、深い懸念とともに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) 子どもが引き続き拘禁施設に収容されたままであり、これらの子どもへのアクセスが赤十字国際委員会(ICRC)およびアフガニスタン独立人権委員会に対してしか認められていないこと。
  • (b) 子どもが一般的に法的援助へのアクセスを否定されていること。
  • (c) 子ども兵とされる者が拷問ならびに(または)不当な取扱いおよび人権侵害的な尋問を受けていること、ならびに、ウマル・カドル(Omar Kadr)の事件で、裁判官が、カドルが収容中に受けた不当な取扱いに関する重要な証拠の提出を弁護側に対して禁じたこと。
  • (d) 成人から分離されるのは16歳未満の子どものみであること。
  • (e) アフガニスタンの収容施設に移送された子どもが拷問および(または)不当な取扱いに直面していること。
34.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) すべての子どもが、子どもとして処遇され、かつ、成人とともに拘禁されるのではなく、子どものニーズに対応するためにとくに設計された別の施設に拘禁されることを確保すること。
  • (b) 拘禁された子どもの拷問および(または)不当な取扱いが疑われる事案を公正に調査するとともに、加害者が裁判にかけられ、かつ、有罪が認定された場合はその犯罪にふさわしい刑罰をもって制裁を受けることを確保すること。
  • (c) 子どもが、最後の手段として、かつ可能なかぎり短い期間でのみ拘禁されること、および、あらゆる場合に拘禁に代わる手段が優先されることを確保すること。
  • (d) 18歳未満のすべての子どもがあらゆる状況下で少年司法制度によって扱われることを確保するとともに、年齢について疑いがあるときは若年者を子どもと推定すること。
  • (e) 拘禁されている子どもにかけられている罪状の調査を、公正な裁判の基準にしたがって迅速かつ公平に実施すること。
  • (f) 国連児童基金(ユニセフ)およびその他の人道援助機関に対し、拘禁されている子どもへの即時的なかつ妨害のないアクセスを認めること。
  • (g) 拘禁されている子どもが、無償かつ独立の法的助言援助および独立の苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。
  • (h) いかなる子どもも、拷問および不当な取扱いを受ける危険があるという相当の根拠があるとき、とくに信憑性のある訴えまたは報告について完全な評価が終わっていない場合には、アフガニスタンの収容施設に移送されないことを確保すること。
被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置
35.委員会は、移民国籍法(INA)第212条(d)(3)(B)(i)(8 USC § 1182(a)(3)(B)(i))にしたがい、国土安全保障省からテロ組織とみなされている非国家的武装集団に「物質的支援」を提供し、このような武装集団から「軍隊様式の訓練」を受け、またはこのような武装集団とともに戦った子どもが、締約国における庇護を拒否されることを懸念する。委員会はまた、締約国が、元子ども兵について一般的に裁量的免除を認めておらず、かつ、たとえその子どもが強迫されて行動していた場合にもそのような免除を認めようとしないことも、懸念するものである。委員会はさらに、締約国における難民の定義に基づいて実体的資格認定を行なう際、子どもの最善の利益が直接の役割を果たしていないことを懸念する。
36.委員会は、選択議定書第7条に照らし、締約国が、選択議定書に反する行為の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび社会的再統合を確保するため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、「テロ活動」禁止規定が適用されなければ申請している保護または利益を受ける資格がある元子ども兵を対象として、庇護、難民としての保護またはその他の永続的地位の申請を個別事案ごとに好意的に検討することを可能とするため、当該規定の裁量的免除を導入するよう促すものである。委員会はまた、締約国が、合衆国の難民認定手続に基づいて実体的資格認定を行なう際、子どもの最善の利益および自己の最善の利益を考慮される子どもの権利を全面的に顧慮することも勧告する。
身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助
37.委員会は、アフガニスタンに設けられた締約国の拘禁施設に拘禁されている子どもが、職業教育を含む教育へのアクセスをほぼ完全に奪われてきており、かつ現在も同様の状態であることを懸念する。委員会はまた、拘禁されている子どもおよび釈放された子どもであって徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもが利用可能な身体的および心理的回復のための措置が不足していることも懸念するものである。
38.委員会は、締約国に対し、拘禁されている18歳未満の子どもが全員、教育にアクセスできるようにすることを促す。委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ39(h)、2008年)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、国防総省の収容施設に拘禁されているすべての子どもが十分な身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置にアクセスできることを確保する目的で、あらゆる必要な措置をとることも促すものである。このような措置には、これらの子どもの状況について注意深くアセスメントを行なうこととともに、選択議定書にしたがい、これらの子どもの身体的、心理的および情緒的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に敏感な、子どもに配慮した、かつ学際的な援助を提供することが含まれるべきである。

VII.国際的な援助および協力

国際協力
39.委員会は、子どもの徴募の防止および元子ども戦闘員の社会への再統合を目的とした国際的プログラムへの相当の財政支援を歓迎する。これとの関連で、委員会は、締約国が、武力紛争における子どもの徴募および使用を撤廃するための多国間および二国間の活動に対する財政支援を継続しかつ強化するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、選択議定書第7条に照らして、現行の多国間、二国間その他のプログラムを通じ、ならびに選択議定書上の被害者である子どもを対象としてリハビリテーションおよび社会的再統合を実施するための総会規則にしたがって設置された自発的基金を通じ、技術的協力および財政援助を含む援助を提供することも促す。
武器輸出および軍事援助
40.委員会は、2008年子ども兵士防止法が、政府軍または政府の支援を受けている武装集団(準軍事組織、民兵または民間防衛隊を含む)が子ども兵を徴募しかつ使用していると事務総長によって特定された国の政府に対する特定の態様の軍事援助を禁止し、かつこれらの政府に対して軍用機器を直接販売することの許可も禁じていることは歓迎しながらも、以下の点について深い懸念を表明する。
  • (a) 2008年子ども兵士防止法で、免除が締約国の国益にかなう場合には軍事援助または軍事機器販売のいかなる禁止についても大統領による免除が認められていることから、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への、小型武器および軽兵器を含む武器の輸出が可能となっていること。
  • (b) 子どもを徴募しもしくは使用している国、子どもを殺害しもしくは子どもに回復不能な傷害を負わせている国、子どもに対して強姦その他の形態の性暴力を行なっている国または武力紛争の状況下で学校および(もしくは)病院への攻撃を行なっている国として武力紛争と子どもに関する2012年事務総長報告書で挙げられている国々(A/66/782-S/2012/261付属文書1~2)について、免除が認められたこと。
41.委員会は、締約国に対し、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への武器(小型武器および軽兵器を含む)の輸出およびあらゆる種類の軍事援助を全面的に禁止する規定を定め、かつ適用するよう促す。この目的のため、締約国は、このような国々に関する大統領による免除が認められないようにするために2008年子ども兵士防止法を改正するよう奨励されるところである。

VIII.通報手続に関する選択議定書の批准

42.委員会は、締約国が、子どもの権利の履行をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(OPIC)を批准するよう勧告する。

IX.フォローアップおよび普及

43.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府省庁、下院、上院、最高裁判所および地方の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
44.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した第2回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の総括所見を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.次回報告書

45.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、2016年1月23日を提出期限とする次回の第3回・第4回統合定期報告書に記載するよう要請する。


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最終更新:2014年04月17日 12:03