総括所見:アメリカ(OPSC〔第2回〕・2013年)


CRC/C/OPSC/USA/CO/2(20013年7月2日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2013年1月16日に開かれた第1760回会合(CRC/C/SR.1760参照)において、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づくアメリカ合衆国の第2回報告書(CRC/C/OPSC/USA/2)を検討し、2013年2月1日に開かれた第1784回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第2回提起報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/USA/Q/2/Add.1)の提出を歓迎し、かつ、多部門から構成される代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。

II.一般的所見

3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第2回定期報告書に関して同日に採択された総括所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/2)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。
4.委員会は、政権は条約の目標を支持しており、かつ、どのようにすれば子どもの権利条約の批准に向けていよいよ行動を起こせるか再検討する意図を有している旨の、対話の際に代表団によって表明された保証を歓迎する。しかしながら委員会は、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ34)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもの権利の保護を包括的なやり方で向上させるために条約の批准手続を加速させるよう促すものである。
積極的側面
5.委員会は、以下の法律の制定を歓迎する。
  • (a) 2012年国際養子縁組統一認証法(公法第112-276号)。
  • (b) わが国の子どもたちに対するサイバー脅威を根絶するための資源、担当官および技術供与法(2008年子どもPROTECT法、公法第110-401号、2008年10月13日制定)。
  • (c) 2008年ウィリアム・ウィルバーフォース人身取引被害者保護(TVPA)再授権法(公法第110-457号)。
6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する、以下のものを含む制度の創設ならびに計画およびプログラムの採択に関して達成された進展を歓迎する。
  • (a) 保護者のいない子どもに対して合衆国における一時在留許可を与える「子どものときに入国した者に対する措置猶予プログラム」(2012年8月施行)。
  • (b) 国レベルで人身取引と闘うための全般的な目標を定めた「子どもの搾取の防止および禁止に関する国家戦略」(2010年8月)。

III.データ

データ収集
7.委員会は、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、2008年)で表明された、以下の点に関する懸念をあらためて繰り返す。
  • (a) 現在は多くの異なるデータシステムを利用している連邦、州および地方の公的機関が共有できる、子どもの売買、児童買春および〔児童〕ポルノに関する国レベルの効果的なデータ収集システムの設置について進展がないこと。連邦捜査局(FBI)の統一犯罪報告システムに人身取引が含まれることによってさらなる発展があったことには留意しながらも、委員会は、同システムが基本的に人身取引犯の摘発およびこれとの闘いに焦点を当てており、被害者または潜在的被害者としての子どもには十分な焦点を当てておらず、保護および防止よりも法執行を過剰に重視していることを懸念する。
  • (b) 子どもおよび子どもに影響を与える犯罪の根本的原因を中心とする調査研究ならびに証拠に基づいた政策・プログラム分析が不十分であり、かつ、現在行なわれている調査研究および分析は性的目的の人身取引に圧倒的に焦点を当てていて、労働搾取および選択議定書で対象とされているその他の犯罪にはほとんど焦点が当てられていないこと。
  • (c) データおよび分析情報の収集において、子どもに対する広範な犯罪活動(選択議定書で対象とされている犯罪を含む)を人身取引とみなすことから問題が生じていること。このことは、被害者を特定する際の、また国、州、地方および国際社会のレベルでこれらの犯罪を防止しかつこれと闘うための適切な戦略を明らかにする際の誤解およびばらつきにもつながっている。
8.委員会は、締約国に対し、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、2008年)で勧告されたように以下の目的のための努力を強化するよう促す。
  • (a) 選択議定書で規定されているすべての分野を対象とし、かつ、合衆国本土の全領域ならびに島嶼領域および合衆国が主権を行使しているその他の属領を網羅した、包括的かつ体系的なデータ収集機構(分析、監視および影響評価を目的とするものを含む)を発展させかつ実施すること。委員会はさらに、データが、とくに性別、年齢、民族的出身、社会経済的背景および地理的所在ごとに細分化されるべきであり、かつ、議定書で対象とされている犯罪の被害者になる具体的危険がある状況に置かれている子ども(保護者のいない外国人の子ども、移住者である家族とともにいる子ども、児童労働者、ホームレスおよび路上の状況にある子どもなど)にも焦点を当てるべきことを勧告する。委員会はまた、連邦および州のレベルで使用されるべき、データ収集のための共通の指標を確立することも勧告するものである。
  • (b) 子どもに影響を与える犯罪の根本的原因ならびに保護のための措置およびプログラムの規模および効果について、性的搾取および労働搾取ならびに子どもに影響を与えるその他の状況(貧困および周縁化を含む)を対象とした詳細な研究を実施するため、非政府組織(NGO)および中心的学術機関を支援し、かつこれらの機関とのパートナーシップを確立すること。
  • (c) データ収集のためならびに選択議定書のすべての分野を対象とする政策およびプログラムの計画および策定のための犯罪の定義を、議定書第2条、第3条および第10条に一致する形で明確にし、かつ子どもの被害者と成人の被害者を区別すること、ならびに、連邦、州および地方のレベルで、立法者、サービス提供者、法執行官および一般公衆によるこれらの定義の使用の一貫性を確保することを検討すること。

IV.実施に関する一般的措置

立法
9.2008年TVPA再授権法は歓迎しながらも、委員会は、連邦および州の双方のレベルで、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が法律において区別されて扱われていないため、子どもの性的人身取引が児童買春または子どもの商業的性的搾取と同義になっていることを依然として懸念する。委員会はさらに、連邦の実施法が曖昧であり、かつ議定書のすべての規定に包括的に効力を生じさせるものではないことから、州によってその解釈が異なり、そのため法律および解釈に矛盾が生じていることを遺憾に思うものである。委員会はまた、連邦法と州法との間でおよび諸州間で子どもの年齢についての調和が図られていないことも遺憾に思う。
10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 選択議定書に掲げられた売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買の定義(人身取引の定義に似ているものの同一ではない)が修正されること、および、選択議定書上のすべての義務がすべての州および領域で一貫して適用されるよう選択議定書のすべての要素が連邦法で網羅されることを確保すること。委員会は、その際、締約国が、言及されている犯罪の被害を受けた子どもと成人が区別されることを確保するとともに、州レベルでの法律の調和化および強化を動機づけ、かつ促進する目的で模範立法および模範研修プログラムを開発するよう勧告する。
  • (b) 子どもの年齢について連邦法と州法との調和が図られることを確保し、18歳に達するまでの全面的保護を確立すること。
独立の監視
11.委員会は、締約国の半数以上の州で子どもアドボケイトまたは子どもオンブズマンの事務所が設置されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所によってその役割および独立度がさまざまであること、ならびに、選択議定書上の子どもの権利の充足における進展を恒常的に監視し、かつ子どもからの苦情を受理してこれに対応する、パリ原則にしたがった独立の国内人権機関の設置に関して進展がないことを遺憾に思うものである。
12.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(CRC/GC/2002/2)、および、パリ原則にしたがって独立の国内人権機関を設置する必要性について多数の国連人権機関が行なってきた勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、このような国家的独立機構を設置するよう促すとともに、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所をまだ設置していない州に対し、選択議定書上の権利の充足状況を監視し、かつ権利侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしい方法で迅速に対応する同様の責任を委ねられた、このような事務所を設置するよう奨励する。
国家的行動計画
13.委員会は、対話の際に締約国から提供された、人身取引被害者を対象とするサービスを強化するための包括的な戦略的行動計画を策定中である旨の情報、および、司法省における調整官の任命を歓迎する。しかしながら委員会は、このような計画立案の取り組みを、選択議定書上の犯罪を防止しかつこれと闘うという「子どもの搾取の防止および禁止に関する国家戦略」の諸目標を運用可能なものとする目的で同戦略と有効に関連づける対応がとられていない可能性があることを懸念するものである。
14.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止しかつこれと闘うための国家的行動計画の採択および実施を加速させるよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、あらゆる関係者および子どもたちと協議しかつ協力しながら、以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 「子どもの搾取の防止および禁止に関する国家戦略」および関連の計画立案過程において、選択議定書上のすべての犯罪が対象とされ、かつ具体的な目的および達成目標、進展の指標ならびに具体的な予算配分額が定められることを確保すること。
  • (b) そのような計画立案の取り組みが、選択議定書の実施のための包括的かつ運用可能な計画を州レベルで策定するための模範計画となることを確保すること。
調整および評価
15.委員会は、調整を強化するために行なわれている努力に関して対話の際に締約国から提供された情報には留意しながらも、連邦、州および地方の公的機関間の調整、政府省庁間の調整ならびに選択議定書の実施に関する活動を行なっているNGOとの調整が依然として不十分であることを懸念する。
16.委員会は、締約国が、司法省内で任命された連邦調整官に対し、選択議定書の〔実施の〕調整、ならびに、「国家戦略」ならびに締約国内で議定書を実施するための関連の行動計画、政策およびプログラムの効果的な監視および評価に関する、全般的な部門横断型の責任を履行するための権限および資源が与えられることを確保するよう、勧告する。さらに委員会は、連邦政府が、地方レベルで計画を立案しならびに議定書を執行しおよび実施するための努力の調整を図るよう州に対して奨励する目的で、積極的な調整および意思疎通のための政策、監視ならびに情報伝達の機構および海路を発展させるよう、勧告するものである。
普及および意識啓発
17.委員会は、公衆および〔サービス〕提供者に積極的に情報を提供するために締約国およびとくに保健福祉省が行なっている努力、選択議定書で取り上げられている問題に関する意識啓発を目的とした教育省の児童生徒安全健康プログラム、ならびに、人身取引に関する意識啓発を目的として国土安全保障省が開始した「ブルー・キャンペーン」イニシアティブを歓迎する。しかしながら委員会は、これらの活動が人身取引一般に焦点を当てており、被害を受けた子どもと成人、または売買、児童買春および児童ポルノの被害者となるおそれがある者との重要な区別を行なっていないことを懸念するものである。
18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに、国および州のレベルで具体的かつ長期的な意識啓発プログラムを開発しおよび実施すること、ならびに、子どものためにとくに作成された適切な教材を活用しながら、教育制度のあらゆる段階の学校カリキュラムに議定書の規定を含めることを通じて、公衆、とくに子どもおよびその家族に対して選択議定書のすべての規定を広く知らせること。
  • (b) 市民社会およびメディアと協力しながら、選択議定書上の犯罪を防止しかつこれと闘う必要性についての意識を公衆一般の間で強化しかつ促進すること。その際、被害者となる危険性がとくに高い子どもおよびその親に焦点を当て、かつ、コミュニティの参加、とくに子ども(被害を受けた男女の子どもを含む)の参加を奨励すること。
研修
19.対話の際に行なわれた、戦略的行動計画の主要な要素のひとつは人身取引被害者に接触する可能性がもっとも高い官吏を対象とした研修の増進である旨の発言、ならびに、国内外で研修を実施するために司法省および連邦調整官が行なっている努力は評価しながらも、委員会は、研修で取り上げられているのは主として人身取引であることを懸念する。さらに委員会は、研修が十分に子どもに特化したものとなっておらず、かつ、研修が実際の理解および行動の変化に及ぼした影響についての評価が予定されていないことを懸念するものである。
20.委員会は、締約国が、研修活動を拡大しかつ強化するとともに、研修が、選択議定書で対象とされているすべての分野を含み、かつ子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家(裁判官、検察官、警察官、出入国管理官および税関吏、医療従事者、社会福祉職員、宗教的指導者およびコミュニティの指導者、養子縁組認証団体、メディア専門家その他の専門家ならびにあらゆる関係技術職員を含む)に対して提供されることを確保するよう、勧告する。
資源配分
21.委員会は、連邦および州のレベルで選択議定書を実施するためのものとされる活動に割り当てられた予算配分額が明確に特定可能となっていないことを遺憾に思う。
22.委員会は、締約国が、選択議定書を実施しかつその適用状況を評価するための、特定可能な予算配分を行なうよう勧告する。加えて、委員会は、議定書上の犯罪を防止するための調査研究およびプログラムに対する資金拠出を増額するとともに、売買、性的搾取および労働搾取ならびにポルノの被害を受けやすくさせる、家庭およびコミュニティにおける根本的原因を理解することに焦点を当てた公的機関、研究機関およびNGOにこのような資金を提供するよう、とくに勧告するものである。

V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項~2項)

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
23.委員会は、選択議定書上の犯罪の防止を目的とした現行の政策、プログラムおよび行政措置のアプローチが法執行志向型であり、子どもの生命および発達を中心に据えたより幅広いアプローチが犠牲にされていることを遺憾に思う。委員会は、以下のことに特段の懸念をもって留意するものである。
  • (a) 前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ22、2008年)で取り上げられているように子どもの性的サービスへの需要を減少させるために、かつ、性的サービスを買う成人の間で、自分が実際には子どもを虐待している可能性があるという意識を高めるために行なわれている努力が限られていること。
  • (b) 選択議定書で対象とされている犯罪の根本的原因およびリスク要因に関する調査研究への支援が不十分であること。
  • (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノの主要な要素である、ジェンダーに基づく差別および暴力と闘うためにとられた措置が限られていること。
  • (d) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となる危険性がとくに高い、脆弱な状況に置かれた子ども――貧困下で暮らしている子ども、移住者である子ども、困難な家庭状況のもとで暮らしている子ども(家出した子どもおよびホームレスの子どもを含む)、ネイティブアメリカンの子ども(とくに女性)、家を追い出される傾向および家出をする傾向が高い男子、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダー(LGBT)である子ども、思春期の女子ならびに「公的措置の対象とされている」子どもを含む――に対して注意がほとんどまたはまったく払われていないこと。
24.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 商業的理由によるものか他の理由によるものかを問わず子どもの性的搾取を防止し、かつ子どもが被害を受けることを回避するために、性的サービスを求める者および法執行官の態度および行動を変える目的で、児童買春および児童ポルノに関する社会的規範および見方についての意識および理解を促進すること。その際、防止および子どもの保護のために必要とされる保護措置および防壁(親の法的責任を含む)を確立するための、家庭およびコミュニティにおける努力に焦点を当てること。
  • (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者から勧告されたとおり(A/HRC/16/57/Add.5、パラ109(f)、2010年)需要側に対応する目的で、児童買春および児童ポルノの顧客の人物像に関する調査研究を実施すること。
  • (c) 2012年女性に対する暴力再授権法――H.R. 4271――を制定するとともに、ジェンダーに基づく差別および暴力と闘うための努力を強化すること。
  • (d) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となる危険性がとくに高い、もっとも脆弱な状況に置かれた子ども――貧困下で暮らしている子ども、移住者である子ども、困難な家庭状況のもとで暮らしている子ども(家出した子どもおよびホームレスの子どもを含む)、ネイティブアメリカンの子ども(とくに女性)、家を追い出される傾向および家出をする傾向が高い男子、LGBTである子ども、思春期の女子ならびに「公的措置の対象とされている」子どもを含む――を特定しかつ保護する目的で、根本的原因に関する調査研究、公衆意識啓発プログラムおよび公的討論を実施するとともに、このような子どもに対して必要な支援および援助を提供すること。
  • (e) 学校を基盤とする防止・早期介入プログラムを開発し、かつ主要なあらゆる関係者および子どもたちの関与を得ること。
  • (f) 介入が必要な分野を特定するうえで役立ちうる経験および識見を有しており、関連の解決策を立案でき、かつ調査研究の戦略的インフォーマントとして活動できる子どもおよび若者と協議し、かつその協力を得ること。
子どもの経済的搾取
25.委員会は、締約国において多数の子どもが労働(とくに農業部門における労働)を目的とした人身取引の対象とされていること、および、多くの子どもが強制労働を含む最悪の形態の児童労働に直面していることを、深く懸念する。委員会はまた、子どもの経済的搾取に関するデータがほとんど利用可能となっていないことも懸念するものである。さらに、委員会はまた、とくに外国国民をしばしば隷属状態に相当する条件で雇用している農業部門その他の部門における児童労働および子どもの経済的搾取について、関連の法律がほとんど存在しないことも懸念する。委員会は、16歳未満の子どもが、親の同意があれば小規模農場で働くために雇われうることをとりわけ懸念するものである。委員会はさらに、農業部門で危険な条件下で働いている18歳未満(場合により16歳未満)の子どもがしばしば見つかることを懸念する。
26.委員会は、締約国に対し、とくに、児童労働に関連した現代的形態の隷属状態を定義し、かつ、児童労働目的で売られることに同意する能力も有さず、かつそのような成熟度にも達していない搾取されている子どもではなく政府に立証責任が課されるようにするためにTVPAを適用することにより、児童労働を目的とする子どもの売買を防止するために積極的措置をとるよう促す。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) とくに農業部門における最悪の形態の児童労働と闘うための、調整のとれた戦略および専用の予算を採択すること。
  • (b) 16歳という最低年齢が、親の同意があるか否かにかかわらず小規模農場にも適用されることを確保するため、連邦および州のレベルで法律を見直しかつ改正すること。
  • (c) 子どもを経済的搾取から安全に解放し、かつ自己の権利を全面的に享受しながら社会に再統合できるようにする目的で査察、監視、調停および斡旋が行なわれることを確保するため、労働省(とくに連邦および州の賃金時間部)の人的資源、技術的資源および財源を強化すること。
  • (d) 著しく劣悪な形態の児童労働(農業、一部の製造業、保育部門およびサービス部門におけるものを含む)を防止するため、国内外で子どもを雇用している合衆国の産業および企業に関する政策の見直しおよび基準の改善を行なうこと。
  • (e) 子どもの人数、性別および年齢、労働条件および生活条件ならびに子どもの権利および発達への影響に関するデータを収集するとともに、児童労働に関する記録を改善すること。
  • (f) 児童労働法において、保護者のいない外国国民であって経済的搾取に相当する目的で同国に連れてこられまたは到着した未成年者に具体的に焦点が当てられることを確保すること。
  • (g) 就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関(ILO)条約第138号(1973年)を批准すること。
児童ポルノ
27.児童ポルノと闘うために締約国が行なっている努力(2008年子どもPROTECT法を含む)は歓迎しながらも、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者が指摘しているように(A/HRC/16/57/Add.5、パラ100、2010年)、オンラインで児童ポルノがますます入手しやすくなっていること、これまでになく年少の子どもが利用されていること、および、記録された画像における暴力が増加していることを依然として懸念する。
28.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 違反を行なうインターネットサービスプロバイダ(IPS)その他のメディアを自動的にブロックする監視機構を通じて、子どもに関わるポルノ的資料の公表および配布を効果的に防止すること。
  • (b) インターネット上の安全、ISPの許認可および子どもにとって有害なコンテンツの監視に関する公的機関を設置するため、速やかな措置をとること。
  • (c) あらゆる環境およびメディアで児童ポルノの被害を受けた子どもを特定しかつ援助するための措置を強化すること。
  • (d) 世界中で児童ポルノを防止しかつ処罰するための国際協力を引き続き強化すること。
養子縁組
29.委員会は、2000年国際養子縁組法(IAA)の認証基準を拡大してすべての国際養子縁組を網羅することとした、2012年国際養子縁組統一認証法(S. 3331、UAA)の採択を評価する。しかしながら委員会は、2012年UAAが、〔ハーグ〕条約外事案の申請または孤児の申請について、施行後180日間は2000年IAAを遵守することなく提出できると定めていることに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は以下のことをとくに懸念する。
  • (a) 新たな認証法にもかかわらず、曖昧な定義および法律上の抜け穴が依然として残っており(たとえば、代理母を含む生母への産前報酬その他の費用の支払いが引き続き認められていることなど)、そのため養子縁組目的の子どもの売買の効果的解消が阻害されていること。
  • (b) 明確に規制されなければ子どもの売買に相当する代理出産について連邦法が定められていないこと。
  • (c) 2000年IAAにおいて、国際養子縁組に関与する他の国について同法を適用するためには当該国がハーグ条約の締約国でなければならないと定められていることから、すべての国際養子縁組事案における同法の効果的適用が制約されていること。
  • (d) 2000IAAにおいて、訴追事由のひとつとして「情を知って故意に法律を無視したこと」が要件とされているため、不法行為に関与した者または機関が責任を回避し、かつ法的手続を免れる可能性があること。
  • (e) 州裁判所および連邦裁判所が競合管轄権を有していることから、法制度の悪用が生じる可能性があること。
  • (f) 養子がいかなる形態の虐待およびネグレクトを受けないことを確保するためにとられた措置についての情報がないこと。
  • (g) アニエリ・リセス・ヘルナンデス・ロドリゲス(Anyeli Liseth Hernandez Rodriguez)事件についての情報がないこと。
30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。
  • (a) 大統領が2012年UAAに署名してから180日の間に提出される養子縁組の申請について、それが売買に相当せず、または国際養子縁組に関するハーグ条約に掲げられた他のいかなる規範にも違反しないことを確保するためにとくに注意を払うとともに、養子縁組の申請がどのように処理されたか監視すること。
  • (b) 選択議定書にしたがい、連邦レベルおよびすべての州において子どもの売買を、とくに議定書第3条第1項(a)(ii)および第5項にしたがって不法な養子縁組目的の子どもの売買を定義し、規制し、監視しかつ犯罪化すること(代理出産および産前報酬のような問題、ならびに、何が「合理的費用」に相当するのかの定義も含む)。
  • (c) 国際養子縁組目的の子どもの売買の発生を抑制するため、国際養子縁組に関するハーグ条約を十分かつ効果的に実施すること。
  • (d) 2000年IAAを修正して「情を知って」の定義を改善することにより、これが必ずしも違反について現に自覚していることを要件とするのではなく、そのような疑いを有していれば虐待または売買等の捜査事由として扱えるようにすること。
  • (e) 締約国出身の機関または個人が、関係国の法的手続を無視して養子縁組を追求する目的で他国に入国することを防止するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (f) 直接または仲介者として養子縁組を扱っているすべての個人および団体が効果的かつ組織的に認証されおよび監視されることを確保し、その数を制限することを検討し、ならびに、養子縁組手続がいかなる当事者にも金銭的利得をもたらさないことを確保すること。
  • (g) 養子縁組のための準備に際して、かつ養親家族への養子の統合を援助するために、養親に対して十分な社会的支援およびカウンセリングが提供されることを確保するとともに、養子縁組の十分なフォローアップおよび監視(虐待、ネグレクトまたは搾取が行なわれた場合に養親の法的責任を確定するための体制を含む)を行なうこと。
  • (h) ソーシャルワーカーおよびケースマネジャーを対象として養子縁組に関する法令および諸問題についての研修および監視を実施すること。
  • (i) 子どもの年齢および成熟度を正当に顧慮しながら子どもの意見が可能なかぎり最大限に考慮されることに加え、養子縁組手続全体で子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保すること。
児童セックス・ツーリズム
31.締約国から提供された、セックス・ツーリズム関係者を追及するために合衆国官吏が利用できる手段が最近の立法によって拡大された旨の情報には積極的側面として留意しながらも、委員会は、国外における児童セックス・ツーリズムへのアメリカ市民の関与に関して進展がほとんどないこと、および、締約国が依然として児童セックス・ツーリズムの主な源泉国のひとつであることを懸念する。委員会はさらに、被害者が18歳以上であると合理的に考えたことがセックス・ツーリストの法的抗弁として認容される可能性があることについて懸念を表明するものである。
32.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 法律を見直し、被害者が18歳以上であると合理的に考えたことがもはやセックス・ツーリストの法的抗弁として認容されないことを確保すること。
  • (b) 前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ29、2008年)で勧告されたように、外国で貧困下で暮らしている子どもを虐待しおよび搾取することは容認されるという考え方のような態度を変えるために意識啓発を図ることも含め、セックス・ツーリズムと闘うための努力を強化すること。
  • (c) 児童セックス・ツーリズムは人身取引および売買に相当し、かつ合衆国法上不法な犯罪であることについて、観光業界に働きかけを行なうこと。
  • (d) 旅行代理店および観光業者の間で国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光倫理規範を広く普及するとともに、これらの事業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範に署名し、かつ児童セックス・ツーリズムを防止するための自社の取り組みについて公に報告するよう奨励すること。

VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(第2項~3項)、第5条、第6条および第7条)

現行刑事法令
33.委員会は、選択議定書の禁止規定の一部がいくつかの州の法律に編入されたにもかかわらず、国内法がいまなお議定書と全面的に一致していないことに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) 連邦法において、子どもの売買そのものが禁じられるのではなく、児童買春、児童ポルノおよび養子縁組のような特定の目的のための子どもの売買が禁止されていること、および、子どもの売買に関連する法律が、または連邦レベルで定義されている人身売買に関連する法律さえ、すべての州で制定されているわけではないこと。
  • (b) 子どもが、被害者を逮捕から保護するセーフハーバー(安全港)タイプの法律を制定していない州の大多数でいまなお売春を理由とする合法的な逮捕、拘禁および訴追の対象とされており、かつ、そのような法律を制定した州においてさえ、法律の欠陥および弱点を理由としていまなお逮捕および訴追が行われていること。
  • (c) 児童ポルノが犯罪とみなされるのは視覚的に表現されている場合のみであること。
34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 連邦レベルおよびすべての州において、選択議定書第2条~3条にしたがって児童買春およびあらゆる目的の子どもの売買(経済的対価の有無は問わない)を定義しかつ禁止すること。
  • (b) 売買春への子どもの関与を法律的にかつ実質的に非犯罪化し、売買春に関するいかなる州法においても買春の対象とされた未成年者の逮捕および拘禁は認められないこと、ならびに、被害を受けた子どもの保護に関する上限年齢が締約国の領域全体で18歳とされることを確保すること。
  • (c) 買春の対象とされた子どもが保護されることおよび逮捕または拘禁の対象とされないことを確保するため、まだセーフハーバー法を制定していないすべての州でそのような法律を制定するとともに、そのような法律の促進および適用のための研修および資金拠出を行なうこと。
  • (d) 選択議定書上のすべての犯罪を、連邦および州の両方のレベルで、その重大な性質を考慮した適切な刑罰によって処罰できるようにすること。
  • (e) 選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の未遂および共謀または当該犯罪への参加が選択議定書第3条第2項にしたがって処罰されることを確保すること。
35.委員会は、信仰を基盤とする一部の団体および宗教的組織の聖職者および指導的メンバーにより、子どもの性奴隷制または性的隷属に相当する性的虐待が大規模かつ長期的に行なわれているという情報があること、ならびに、締約国が、事件を適正に捜査し、かつこれらの組織および機関の構成員であって告発された者を訴追するための措置をとっていないことを、深く懸念する。
36.委員会は、締約国に対し、聖職者が行なった子どもの性的虐待事件(単発の事件か、大規模かつ長期的に行なわれているものかは問わない)をすべて捜査するためにあらゆる必要な措置をとること、これらの事件を積極的に訴追するようすべての関連当局に明確に通達すること、ならびに、事件の防止、捜査および訴追のために積極的なかつ開かれた協力を得る目的で信仰を基盤とする団体、宗教的組織およびその指導者と対話を行なうことを促す。締約国はまた、不作為および(または)汚職の場合に法執行機関に課される可能性がある制裁について、これらの機関の注意を促すべきである。
法人の責任
37.委員会は、締約国が実際には選択議定書上の犯罪に参加した法人の責任を認めていることを認知する。にもかかわらず、委員会は、この責任が法律に明示的に反映されていないこと、および、これが雇用との関連でのみ適用されていて、ほとんどの場合には関与した企業を利することになっていることを懸念するものである。
38.委員会は、締約国が、選択議定書上のいずれかの犯罪に参加した法人の責任を法律に明示的に編入するとともに、行なわれた犯罪の深刻さにふさわしい法的制裁を定めるよう、勧告する。
域外裁判権
39.委員会は、犯罪者の国籍に基づく締約国の域外裁判権が選択議定書で対象とされているすべての犯罪に及ぶわけではない旨の前回の懸念(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ35、2008年)をあらためて表明する。委員会はまた、連邦法に、被害者が締約国の国民である場合の域外裁判権の主張について一般的定めが置かれていないことにも留意するものである。
40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ36、2008年)をあらためて繰り返し、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムをともなう行為の責任者を訴追しおよび処罰するための枠組みを強化する目的で、締約国が、第4条に列挙されたすべての事案について裁判権を設定するよう勧告する。さらに委員会は、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪を国外で行なった容疑がある者が自国の領域内にいる場合であって、締約国がその者を他の締約国に引渡さないときは、犯罪が行なわれた国が選択議定書の締約国ではない場合または国内法でこれらの行為を犯罪としていない場合であっても、締約国が当該容疑者を訴追できるようにすることも勧告するものである。
犯罪人引渡し
41.委員会は、締約国が、選択議定書の発効後に調印された二国間協定に、選択議定書上の犯罪についての犯罪人引渡しを含めていることを歓迎する。同様に委員会は、締約国が、議定書上の犯罪を対象とする目的で、やはり議定書を批准している国との間でその発効前に調印されたすべての二国間協定は議定書によって修正されると考えていることも、認知するものである。しかしながら委員会は、議定書を批准していない国との協定ではこのような犯罪が対象とされているとはみなされないこと、および、たとえ他国が議定書を批准していても二国間協定が締結されていなければ犯罪人引渡しの決定は行なわれないことを懸念する。さらに委員会は、締約国があらゆる事案で双方可罰性を要件としていることを懸念するものである。
42.委員会は、締約国が、あらゆる事案で選択議定書上の犯罪を犯罪人引渡し犯罪とみなすために法改正を行なうよう勧告する。同様に委員会は、締約国が、議定書に含まれている犯罪については、たとえ二国間協定が締結されていない場合でも犯罪人引渡しの法的根拠として議定書を援用できる旨の第5条第2項の規定を活用するよう、勧告するものである。いずれにせよ、委員会は、締約国が、議定書上のすべての犯罪について双方可罰性の条件を撤回するよう勧告する。
臓器売買
43.臓器売買に関する情報が存在しないことから、委員会は、締約国に対し、臓器売買の防止を目的として捜査を行ない、責任者を訴追し、かつ被害を受けた子どもを保護するよう促す。委員会は、締約国が、次回の定期報告書にこの点に関する情報を記載するよう勧告するものである。

VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項~4項)

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
被害者の回復および再統合
44.委員会は、保護サービスが著しく不足しており、性的に搾取された子どものためのシェルター(そのほとんどは民間機関および民間慈善団体から資金拠出を受けている)の定員が締約国全体で数百名分にしか達しないことを深く懸念する。被害者のサービス付託について定めたセーフハーバー法が存在する州でさえ、このような保護サービスがしばしば存在しない結果、ほとんどの場合に、子どもをさらなる人権侵害および苦難から「保護する」ために逮捕および拘禁が行なわれている。委員会はまた、これらの子どもが、全面的な身体的、心理的および情緒的回復ならびに社会的再統合ならびに賠償のための十分なサービスを受けられないことがいまなお多いことも、懸念するものである。
45.委員会は、締約国に対し、人身取引の対象とされた子ども、性的目的もしくは経済的搾取目的で売買された子どもまたはその他の形態で選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものために必要とされる専門的サービスを直接またはサービス提供者を通じて確立する目的で資源の配分および支出を増加させるよう、強く促す。このようなサービスには、被害を受けた子どもが身体的、心理的および情緒的に回復し、かつ社会に再統合できるようにするため、即時的救援および長期的サービス(とくに、適当な場合の家族再統合または家族的環境への措置ならびに保健および教育)が含まれるべきである。法的におよびその他の手段を通じて、十分な救済および補償が追求されるべきである。
保護者のいない外国人の子ども、庇護希望者、難民および移住者
46.TVPAに基づき、人身取引被害者が、母国に送還された場合に異常かつ過酷な危害をともなう著しい困難をこうむるときは合衆国への滞在が認められることには留意しながらも、委員会は、人身取引を構成する行為および救援を受ける資格がある者について締約国が非常に狭い定義を適用している旨の情報があることを懸念する。委員会は、保護者のいない外国人の子どものスクリーニングのために行なわれている努力には留意しながらも、人身取引の対象とされた子どもが政府職員によってしばしば犯罪者として扱われていることをとりわけ懸念するとともに、このような子どもが、その最善の利益に関する判断が行なわれることなく、人身取引被害者として特定されないまま送還または退去強制に直面する可能性がある旨の、前回の懸念をあらためて表明するものである。
47.委員会は、締約国が、とくに2008年TVPAおよび2011年難民保護法の将来的な再授権を通じ、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どもの外国人移住者が送還または退去強制の対象とされないことを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、被害を受けた子どもの移住者に対し、その身体的、心理的および情緒的回復を目的としたあらゆる必要なサービスを提供するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、保護者のいない子どもを対象とした「最善の利益認定」を、出入国管理関連の手続全体を通じたあらゆる決定に編入するよう求めること、ならびに、出入国管理関連のすべての手続において子どもの最善の利益を保護する目的で、保護者のいないすべての子どもに独立の子どもアドボケイトが任命され、かつ、出入国管理関連のすべての裁判手続において、保護者のいないすべての子どもが資格のある弁護士によって代理されることを確保することを勧告する。
刑事司法制度上の保護措置
48.委員会は、子どもの事情聴取およびスクリーニングがしばしば、トラウマに十分配慮した事情聴取の経験を欠いた職員によって、かつ不適切な、居心地の悪い、かつ恐怖心を呼び起こすような環境下で行なわれているという主張があることを懸念する。さらに委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者から勧告されたとおり(A/HRC/16/57/Add.5、パラ76)が指摘しているように、被害を受けた子どもが、公開の法廷で、人身取引の加害者または周旋人の面前で証言するよう求められることが多いことを懸念するものである。
49.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 犯罪の被害者および(または)証人である子どものケアおよび保護に関する明確な手続および基準を定めるとともに、質を保つために当該手続および基準の適用が監視されるようにすること。
  • (b) 選択議定書第8条第1項および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)にしたがい、すべての専門家が、刑事手続および司法手続のあらゆる段階における、子どもの被害者および証人への子どもにやさしい接し方に関する研修を受けることを確保すること。
  • (c) 選択議定書に定められた犯罪の被害者である子どもが刑事司法制度によって処遇されるにあたり、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保すること。
  • (d) 選択議定書上の犯罪の被害者全員に対し、法的援助を利用可能とすること。
  • (e) すべての州に対し、子どもの再被害を回避する目的で、被害者/証人による陳述なしに加害者を訴追できるようにし、かつビデオ録画された陳述/事情聴取を法廷で証拠として利用するための手続的改革を行なうよう奨励すること。

VIII.国際的な援助および協力(第10条)

多国間、地域間および二国間の取り決め
50.委員会は、選択議定書関連の問題について締約国が行なっている重要な国際協力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の国内法で人身取引と子どもの売買の違いが明確にされていないため、議定書の適用における国際的一貫性が阻害されていることを遺憾に思うものである。
51.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(人身取引と売買との違いに関して国内法の明確化を図ること、当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。

IX.通報手続に関する選択議定書の批准

52.委員会は、締約国が、子どもの権利の履行をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(OPIC)を批准するよう勧告する。

X.フォローアップおよび普及

フォローアップ
53.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、下院、上院、最高裁判所および州当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
総括所見の普及
54.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

XI.次回報告書

55.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、2016年1月23日を提出期限とする次回の第3回・第4回統合定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2014年4月17日)。
最終更新:2014年04月17日 12:06