総括所見:ロシア(第3回・2005年)


CRC/C/RUS/CO/3(2005年11月23日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年9月28日に開かれた第1076回および第1077回会合(CRC/C/SR.1076 and 1077参照)において、ロシア連邦の第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.5)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.110)のフォローアップに関する情報を含む締約国の第3回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/RUS/3)に対する締約国の文書回答により、ロシア連邦の子どもの状況についての理解を深めることができたことも歓迎するとともに、締約国の代表団との有益かつ建設的な対話に、評価の意とともに留意するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、立法面における以下の進展を歓迎する。
  • (a) とくに有害な労働条件からの未成年者の保護を強化した新労働法が2001年12月に採択されたこと。
  • (b) 罪を犯した子どもの審判の手続におけるいっそう人間的なアプローチについて定めた刑事訴訟法改正が2002年7月に行なわれたことにより、子どもの権利に焦点が当てられ、かつこれらの権利が尊重される旨の保障が整備されるとともに、刑事司法制度の対象となる未成年者の人数および自由剥奪刑を言い渡される未成年者の人数の減少につながったこと。
  • (c) 拷問の定義を定めた、「ロシア連邦刑法の修正および改正の導入について」の連邦法が2003年12月に採択されたこと。
  • (d) 締約国の刑法に、最近、人身取引を禁ずる規範が導入されたこと。
  • (e) 刑法が(連邦法第162号により)改正され、ポルノの製造で子どもを使用することに関する責任の度合いを引き上げられたこと。この法律により、売買春関連の活動で未成年者を搾取することに対する刑罰も引き上げられ、かつ同意年齢も14歳から16歳に引き上げられた。
4.委員会は、人権に関する教育も含む「公民」の科目が学校カリキュラムに導入されたことを歓迎する。
5.委員会は、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が2003年12月に批准されたことを歓迎する。
6.委員会はまた、子どもの権利条約を実施するための多数の具体的措置および対象の明確なプログラムも歓迎する。

C.主要な懸念事項、提案および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
7.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.5)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.110参照)の一部、とくに条約に関する情報の普及、差別の禁止、拷問ならびに体罰、不当な取扱い、ネグレクトおよび虐待からの保護、子どもの措置の再審査、障害のある子ども、子どもと武力紛争および子どもの回復、ストリートチルドレン、性的搾取および虐待ならびに少年司法の運営に関するものへの対応が不十分であることを、遺憾に思う。
8.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。
立法および実施
9.締約国における条約の実施の向上を確保する目的で法律の採択および改正が行なわれてきたことには留意しながらも、委員会は、連邦法第122号が締約国の子どもの権利の享受に及ぼしうる悪影響について懸念を覚える。委員会は、社会サービスおよび社会手当の利用可能性およびこれらへのアクセスに関する全国的最低基準を設けようとする締約国の努力を歓迎しつつ、これらの基準の効果的実施に関する具体的情報がないことを依然として懸念するものである。
10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) さまざまなレベルにおける種々の役割および能力を評価しながら、地方分権化プロセスの結果およびそれが社会サービスの提供に及ぼす影響についての包括的分析を行なうこと。
  • (b) 子どもの権利の享受および保護に関する格差を防止するため、連邦法第122号で予定されている地方分権化の流れのなかで、子どもの権利の享受に関する最低基準が全面的にかつ効果的に実施されることを確保すること。
調整
11.子どもの権利条約の実施の調整に関する政府省庁間委員会の創設を通じ、政府が子どもの権利に関わる調整機構を向上させてきたことには留意しながらも、委員会は、この機関が2004年3月に廃止されたこと、および、連邦法第122号に基づく最近の地方分権化にともなって必要な調整手段がとられていないことに、懸念とともに留意する。
12. 委員会は、中央および地方の公的機関間の十分な協力ならびに子ども、若者、親および非政府組織との協力を確保するため、締約国が、子どもおよび若者のための努力の一貫性および調整を向上させるための努力を引き続き強化するよう勧告する。委員会はまた、この目的のため、子どもの権利条約の実施のための調整機関を再設置することも勧告するものである。このような機関に対しては、連邦レベルと地域レベルとの間で効果的調整を確保できるようにするための権限ならびに必要な人的資源および財源を提供することが求められる。
独立した監視体制
13.委員会は、連邦人権委員会が設置されたこと、および、38〔ママ〕の地域圏中18の地域圏で子どもの権利オンブズマン地域事務所が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、連邦子どもの権利オンブズマン事務所がまだ設置されていないことに、懸念とともに留意するものである。
14.委員会は、締約国が、すべての地域圏に子どもの権利オンブズマン地域事務所を設置する努力を引き続き行なうとともに、これらの事務所に対し、その職務を効果的に遂行できる十分な資金および人員が提供されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、連邦子どもの権利オンブズマン事務所の設置をさらに検討することも勧告するものである。これとの関連で、締約国は、独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)を考慮することが求められる。
国家的行動計画/調整
15.委員会は、2000年以降、締約国が全般的な国家的行動計画を定めていないことに、懸念とともに留意する。とはいえ、委員会は、さまざまな部門別行動計画に条約の実施のための国家的諸原則を含めるよう求めた、「ロシア連邦における子どもの状況の改善のための基本的指令」と題する国家戦略が定められた旨の情報を歓迎するものである。しかしながら委員会は、さまざまな部門別行動計画との関係における、同戦略の統合的かつ調整のとれた実施について懸念を覚える。
16.委員会は、締約国が、新しい国家戦略および関連の行動計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」が考慮されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とくに不当な格差を防止する目的で、連邦レベルおよび地域レベルで当該国家戦略および関連の行動計画の実施が包括的かつ効果的に調整されることを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、当該国家戦略の時宜を得たかつ効果的な実施のために十分な人的資源および財源が配分されることを確保するとともに、子どもおよび若者、親、NGOならびに関心および関連のある他の機関の積極的参加を促進しかつそのための便宜を図るよう、勧告する。委員会はまた、当該戦略の監視および評価のための指標および基準を開発することも勧告するものである。
データ収集
17.データ収集の分野で締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、子どもに関わって達成された進展を監視しおよび評価しならびに子どもに関わって実施された政策の効果を評価する目的で、条約が対象とするすべての分野についての細分化された量的および質的データを、すべての集団の子どもとの関連で体系的かつ包括的に収集することを可能とする十分なデータ収集機構が存在しないことを、依然として懸念する。
18.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とくに脆弱な立場に置かれた子ども(障害のある子ども、法律に触れた子ども、難民および人身取引の対象とされた子ども)を重視しながら18歳に達するまでのすべての子どもを網羅する、性別、年齢ならびに農村部および都市部の別によって細分化されたデータを収集するための包括的な常設機構を国家的統計システム内に設置する努力を強化するよう、勧告する。締約国はまた、条約の実施における進展を効果的に監視しおよび評価しならびに子どもに影響を与える政策の効果を評価するための指標も開発するべきである。
子どものための資源
19.委員会は、連邦法第122号の導入により、子どもが利用可能なサービスの範囲が締約国の地域圏間で相当に異なるようになる可能性があることを、懸念する。委員会はまた、地域レベルでは子ども関連のプログラムおよび政策に不十分な資源しか配分されないであろうことも懸念するものである。委員会はまた、とくに保健・教育部門および養子縁組手続において広範に行なわれている汚職が、権利の全面的享受の面で子どもに影響を及ぼしていることも懸念する。
20.委員会は、子どものための社会サービスその他のサービスの利用可能性およびこれらのサービスへのアクセスに関する不当な格差を防止する目的で、締約国が、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払い、かつ、国の全域で均衡のとれた資源配分を確保するよう、勧告する。締約国はまた、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および、必要な場合には国際協力の枠組の中で」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分も優先させるべきである。締約国は、真剣に対応し、かつこれを防止するためのあらゆる必要な措置をとることを求められる。
研修/条約の普及
21.委員会は、この分野で締約国がとった措置にもかかわらず子どもおよび若者の間で条約に関する意識が依然として低く、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。
22.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなによっても子どもによっても同様に広く知られかつ理解されることを(たとえばラジオおよびテレビを活用しながら)確保するための努力を強化する目的で、包括的な政策を定めるよう勧告する。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに法執行官、教員、保健従事者、心理学者、ソーシャルワーカーおよび子どものケアのための施設の職員の十分かつ体系的な研修を強化することも、勧告するものである。

2.一般原則

差別の禁止
23.委員会は、さまざまな宗教的および民族的マイノリティに属する子どもに対して差別が行なわれているという報告について懸念を覚える。委員会はまた、マイノリティに属する子どもおよびとくにロマの子どもが、とくに保健サービスおよび教育サービスとの関連で、その権利の全面的享受を制約される可能性が高いことも懸念するものである。委員会はまた、在留許可を有しない子どもおよび家族が直面している差別についても懸念を覚える。
24.委員会は、締約国が、宗教的および民族的マイノリティに属する子ども、ロマの子どもならびに在留許可を有していない親の子どものようなもっとも脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、とくに全国的および地域的な意識啓発キャンペーンならびにあらゆる差別事件への効果的な介入を通じてあらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
25.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの最善の利益
26.締約国における法律およびプログラムの大多数で子どもの最善の利益の原則に言及されていることには留意しながらも、委員会は、実際には、十分な財源および研修コースの欠如ならびに社会の態度を理由としてこの原則が制限されていることを懸念する。
27.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が理解され、かつ、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて適切に統合されかつ実施されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。
生命に対する権利
28.委員会は、締約国における嬰児殺の発生(その件数は減少していない)に関する前回の懸念をあらためて表明する。
29.委員会は、締約国に対し、締約国における嬰児殺の原因に関する研究を行ない、かつあらゆる必要な防止措置をとるよう促す。
子どもの意見の尊重
30.委員会は、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎しつつも、条約第12条が、家庭、学校その他の施設において十分に適用されておらず、かつ、司法上および行政上の決定ならびに法律、政策およびプログラムの策定および実施において実際には全面的に考慮されているわけではないことを、依然として懸念する。
31.委員会は、子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するためにさらなる努力が行なわれるべきであることを勧告する。これとの関連で、脆弱な立場に置かれた集団およびマイノリティ集団の構成員である子どもを含むすべての子どもの、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般における参加権がとくに重視されるべきである。この権利を、子どもに関わるすべての法律、司法上および行政上の決定、政策ならびにプログラムに編入することも求められる。締約国はまた、子どもおよび若者とともに働くおとなが子どもに敬意を示し、かつ、子どもが自己の意見を効果的に表明できるようにすることおよびその意見が考慮されるようにすることを確保するための研修を受けることも、確保するべきである。締約国はまた、子どものニーズに関する電話を受けるため、24時間利用可能な、3ケタの番号のフリーダイヤル電話サービスを提供することも求められる。

3.市民的権利および自由

拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰
32.委員会は、18歳未満の者が、多くの場合には警察による留置中にまたは法的手続の審判前段階で拷問および残虐な取扱いの対象にされ続けているという訴えがあることを懸念する。弁護人および(または)医療サービスならびに家族へのアクセスも、警察により留置されている若者に対しては制限されているように思われる。委員会はまた、これらの虐待について苦情を申し立てるための手続についても、当該手続が子どもに対する配慮を欠いている可能性があること、子どもが親/法定代理人の同意なく苦情を申し立てることが認められていないこと、および、その有効性が証明されていないことに関して懸念を覚えるものである。
33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに警察隊の研修を通じて、拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の行為を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 子どもおよび若者に対して拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の行為を行なった者を捜査し、訴追しかつ処罰するための措置をとること。
  • (c) 被害者の回復および社会的再統合のためのプログラムを設けること。
  • (d) 子どもが苦情を申し立てるための機構を強化するとともに、親/法定代理人の許可を要件とすることなく子どもが苦情を申し立てられるようにすること。
34.委員会はまた、締約国の寄宿学校その他の教育施設において拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰が用いられていることも懸念する。
35.委員会は、締約国に対し、教育者および施設で働くその他の専門家が、子どもを拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰の行為の対象とすることの禁止について十分に知らされることを確保するよう、促す。
体罰
36.委員会は、家庭および代替的養護の現場で体罰が禁じられていないことを懸念する。委員会はまた、締約国において子どもの体罰が依然として社会的に受け入れられており、かつ、家庭および体罰が公式には禁じられている場所(学校等)でいまなお実践されていることも懸念するものである。
37.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 家庭および代替的養護の現場におけるあらゆる形態の体罰を法律で明示的に禁止すること。
  • (b) 法律の効果的実施により、家庭、学校その他の施設における子どもの体罰の実践を防止しかつこれと闘うこと。
  • (c) 体罰に反対する意識啓発キャンペーンおよび公衆教育キャンペーンを実施するとともに、非暴力的な、参加型の形態のしつけおよび規律を促進すること。

4.家庭環境および代替的養護

家庭環境を奪われた子ども
38.委員会は、施設養護の対象とされる子どもの人数が増えていること、および、脱施設化に関する国家政策を実施する努力がうまくいっていないことを懸念する。委員会はまた、家庭的な代替的養護体制を促進するために十分な努力が行われていないことも懸念するものである。
39.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって援助および支援サービス(親を対象とする教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラムを通じてのものを含む)を提供することにより、家庭環境から子どもが分離することを回避し、かつ施設で暮らす子どもの人数を減らすことを目的として、包括的戦略を採択しかつ即時的な予防措置をとること。
  • (b) 施設養護への子どもの措置について、権限のある学際的な複数の公的機関によるアセスメントが常に行なわれること、ならびに、当該措置がもっとも短い期間で行なわれかつ司法審査に服すること、および、条約第25条にしたがって当該審査が再審査の対象とされることを確保すること。
  • (c) 子どもがいっそう全面的に発達することおよび子どもがあらゆる形態の虐待から保護されることを可能とするような環境づくりのための措置をとること。子どもが施設に措置されている間の家族との接触も、これが子どもの最善の利益に反しないときは、さらに奨励されるべきである。
  • (d) 条約で認められている権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払うことによって、伝統的な里親養護制度および家庭を基盤とするその他の代替的養護を発展させるための努力を強化するとともに、後見機関および管財機関の能力構築を目的とした措置を強化すること。
  • (e) 子どもが代替的養護プログラムの評価に参加すること、および、子どもが苦情を申し立てることを可能にする苦情申立て機構が創設されることを確保すること。
養子縁組
40.委員会は、自己の本来の身元を知る養子の権利が締約国で保護されていないことに、懸念とともに留意する。
41.委員会は、締約国に対し、自己の本来の身元を知る養子の権利を保護するとともに、この目的のための適切な法的手続(推奨される年齢および専門家による支援措置を含む)を定めるよう、奨励する。
42.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(第33号)に2000年に署名したことに留意する。委員会は同様に、養子縁組のために必要とされる書類、不当な支払い、および、養親になろうとする者に対して養子としようとする子どもの選択を認めていることとの関連で、連邦当局が外国の養子縁組斡旋機関を十分に統制できていないことに留意するものである。委員会は、2003年には国際養子縁組件数が初めて国内養子縁組件数を上回ったことに、懸念とともに留意する。
43.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を批准するよう勧告する。それまでの間、委員会は、締約国が、養親の適格性および養子縁組後のフォローアップを確保するため受け入れ国の当局と協定を締結するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国が、外国の養子縁組斡旋機関の認証および統制のためのシステムを確立するとともに、国内養子縁組を促進するための措置を発展させかつ実施することも勧告する。
措置の定期的再審査
44.委員会は、施設および里親家庭への子どもの措置の定期的再審査が不十分であることを懸念する。委員会はまた、子どもの施設において独立の査察機構がまだ整備されていないことも懸念するものである。
45.委員会は、締約国が、里親家庭または施設に措置された子どもの状況が十分に監督されることを確保するよう、勧告する。締約国はまた、市民社会との調整を図りながら、子どもの施設を独立のかつ公的な立場で査察するための機構も発展させるべきである。
虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力
46.委員会は、施設において多数の子どもが教育担当者による虐待を受けているという報告があることを懸念する。委員会はまた、家庭および施設で暴力にさらされた被虐待児が必ずしも十分なケアおよび援助を受けていないこと、および、この分野における防止(および予防介入)ならびに意識啓発との関連で十分な取り組みが行なわれていないことも、懸念するものである。
47.委員会は、締約国が、以下の措置をとる等の手段により、家庭および施設で暴力にさらされた子どもに十分な援助を提供するための努力を引き続き強化するよう、勧告する。
  • (a) 施設における暴力の規模を評価するための研究を行ない、かつこれらの行為の責任者を処罰するための措置をとること。
  • (b) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 身体的および情緒的虐待の事案に関する通報の手続および子どもからの苦情申立てを効果的に調査するための手続を確立すること。
  • (d) 予防介入のための法的枠組みを強化すること。
  • (e) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。
  • (f) 不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育キャンペーンおよび防止プログラム(積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する家族発達プログラムを含む)を実施すること。
48.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。

5.基礎保健および福祉

障害のある子ども
49.委員会は、障害のある子どもは矯正目的の「補助学校」および「強制学級」に送致されるのが通例であるため、これらの子どもを主流の教育制度に包摂するために行なわれている努力が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、寄宿学校における障害のある子どもの割合が人口比に照らして相当に過剰であることも懸念するものである。
50.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもに対する差別の問題に対応すること。
  • (b) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもがサービスに平等にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 障害のある子どもの寄宿学校への措置について、このような措置はそれが子どもの最善の利益にかなう場合に限定することを目的として見直しを行なうこと。
  • (d) 「矯正学校」および「補助学校」の慣行を廃止すること、必要な支援を提供すること、および、教員が普通学校における障害のある子どもの教育に関する研修を受けることを確保すること等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。
基礎保健および福祉
51.委員会は、子どもの健康向上のために行なわれた多数のプログラムおよび措置に関する情報に留意するものの、締約国における健康水準について依然として懸念を覚える。しかしながら委員会は、結核の発生率が減少しているにも関わらず、結核の罹患件数が多いままであることを依然として懸念するものである。委員会はまた、ヨード欠乏症の発生件数が多いこと、および、締約国における母乳育児の実施率が低いことも依然として懸念する。
52.委員会はまた、改革された制度のもとで設けられたサービスおよびプログラムが、とくにプライマリーヘルスケアの発展との関連で条約第24条と全面的に一致していないことも懸念する。
53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) プライマリーヘルスケアにおける予防介入を増進させること。
  • (b) 保健に対する公共支出を増加させること。
  • (c) 食塩の完全ヨウ素添加に関する法律を制定し、かつその実施を確保すること。
  • (d) 結核を理由とする有病率を削減するための努力を継続すること。
  • (e) 全国母乳育児委員会の創設、医療専門家の研修および母乳育児実践の向上を検討すること。
思春期の健康
54.アルコールおよびタバコの消費水準が高い問題に対応するための措置および新法については認知しながらも、委員会は、青少年によるタバコおよびアルコールの消費水準が高いことを懸念するとともに、締約国における望ましい健康習慣の促進が不十分であり、栄養、喫煙、アルコール、身体的健康および個人衛生にほとんど焦点が当てられていないことに留意する。
55.委員会はまた、とくにリプロダクティブヘルスとの関連で、思春期の健康に関する情報が不十分であることも懸念する。委員会はまた、避妊手段の費用が万人に負担可能なものとなっていないために締約国におけるその使用が制限されており、かつ、十代の妊娠および妊娠中絶が多数発生していることも、懸念するものである。
56.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康に細心の注意を払うとともに、学校におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育の提供ならびに学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアも含む)の導入等も通じて、思春期の健康を促進する努力を強化するよう、勧告する。青少年の喫煙およびアルコール消費を減らすため、委員会は、締約国が、とくに青少年のために考案された、健康的行動に関する選択についてのキャンペーンを開始するよう勧告するものである。
57.委員会は、締約国における青少年の自殺率が高いこと、および、青少年の自殺を防止するために相応の努力がまったく行なわれていないことに対する懸念をあらためて表明する。
58.委員会は、締約国に対し、保健サービスの資源を強化しかつ精神保健サービスを向上させるとともに、自殺防止のためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。
HIV/AIDS
59.委員会は、締約国でHIV/AIDSが流行していること、および、若者のハイリスク行動(すなわち注射器による麻薬の使用および危険な性的行動)のより今後HIV/AIDS感染者の人数がさらに増える可能性があることを、深刻に懸念する。委員会はまた、予防措置にほとんど関心が向けられていないことも懸念するものである。
60.委員会はまた、締約国でHIVの母子感染が増加していることも懸念する。委員会はまた、HIVに感染した母親の子どもが子ども自身のHIV感染の有無に関わらず根強く差別されていること、ならびに、このような子どもが母親によってしばしば遺棄されおよび長期にわたって入院させられていることにも、懸念を表明するものである。
61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針を考慮に入れながら、HIV/AIDSの拡散を防止するための努力を強化すること。
  • (b) 母子感染の予防措置を強化すること。
  • (c) 母親がHIVに感染している新生児に対する抗レトロウィルス治療およびHIV陽性の母親の産後モニタリングを保障すること。
  • (d) 差別の禁止の原則を全面的に尊重する十分な医学的、心理的および物的支援を提供することにより、HIVに感染した子どもまたはAIDSによる親の死亡を理由として孤児となった子どもに特段の注意を払うこと。
  • (e) 締約国で行なわれている、HIV陽性の母親の子どもを病棟または特別孤児院に隔離する慣行およびHIV陽性の子どもが普通孤児院、医療ケアおよび教育上の便益へのアクセスを拒否される慣行についての研究を行なうこと。
  • (f) HIV陽性の母親に対し、このような母親による新生児の遺棄を防止し、かつこのような母親が子どもを養育できるようにするための十分な支援を提供すること。
  • (g) HIV/AIDSに感染した子どもおよび(または)HIV/AIDSの影響を受けている子どもに対する差別およびスティグマを削減する目的で、青少年(とくに脆弱な立場に置かれた青少年)および一般住民の間でHIV/AIDSに関する意識を高めるためのキャンペーンおよびプログラムを開始すること。
  • (h) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕、WHOおよびユニセフの技術的援助を求めること。

6.社会保障ならびに保育サービス・施設/生活水準

十分な生活水準
62.委員会は、低所得世帯で暮らす子どもが多数にのぼること、および、文書回答で提供された情報によれば子どものいる市民向けの予算配分額が相当に減少していることに、懸念とともに留意する。委員会は、劣悪な生活条件のため、家庭、学校、友人との活動および文化的活動における子どもの権利の享受が深刻に制限されていることを懸念するものである。
63.委員会は、十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障する目的で、締約国が、経済的に不利な立場に置かれた家庭に支援および物的援助を提供するためにあらゆる必要な措置(もっとも脆弱な立場に置かれた集団の家族に関わる、対象を明確にしたプログラムを含む)をとるよう、勧告する。

7.教育、余暇および文化的活動

教育(職業訓練および職業指導を含む)
64.学校を中退する子どもの人数を減らすための措置など、心強い思いを抱かせる若干の進展が最近見られたにも関わらず、委員会は、無償の初等教育が法律で保障されているにも関わらず初等学校について種々の費用負担が求められ続けていることを、依然として懸念する。委員会はまた、連邦法第122号がもはや就学前の子どもに対する金銭的および物的支援を保障していないこと、および、同法により農村部で働く教員を対象とした若干の奨励策が中止されたことも、懸念するものである。委員会は、成人の非識字者数が減少したことおよび女性の非識字者の割合が低下したことについて締約国を称賛するものの、青少年の非識字者が多いことおよび青少年の非識字者に女子が占める割合が上昇していることを懸念する。委員会はまた、職業訓練制度に透明性が欠けていることも懸念するものである。
65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) すべての子どもが初等中等教育にアクセスできることを確保するために必要な措置をとること。
  • (b) 教科書、改修および安全対策のようなすべての直接費および間接費を考慮に入れながら、初等教育が無償であることを確保するためにあらゆる適当な措置をとること。
  • (c) マイノリティ言語を使用する人々の教育の促進に特段の注意を向けながら、教育における人種的格差を是正するための努力を強化すること。
  • (d) (着任前および現職時の)教員研修に向けた努力を強化するとともに、(とくに連邦法第122号に照らして)教員の給与および労働条件の問題に対応すること。
  • (e) 職業訓練制度を拡大し、かつそのあり方を改善すること。
  • (f) とくに非公式な教育機会を提供することにより、若者の非識字を解消するための措置を全面的に実施すること。

8.特別な保護措置

子どもの難民および国内避難民
66.モスクワ地域圏で子どもの難民および庇護希望者に対して教育へのアクセスが提供されていることは歓迎しながらも、委員会は、他の地域圏でこのようなアクセスが提供されていないことを懸念する。委員会はまた、保護者のいない未成年者が、後見人がいないことを理由として国の難民認定手続にアクセスできないことも懸念するものである。委員会はまた、難民および庇護希望者のもとに生まれた子どもに対する出生証明書の発行において登録が条件とされていることが多いことを懸念する。
67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの難民、庇護希望者および国内避難民がロシア連邦のすべての地域で教育へのアクセスを享受することを確保するため、必要な立法上および行政上の措置をとること。
  • (b) 具体的かつ明確な手続を設けることにより、保護者のいない未成年者および養育者から分離された未成年者が国の難民認定手続およびその後の援助にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 保護者のいないまたは養育者から分離された子どもに法定後見人を任命することについて明確な行政上の責任を負う、国の特定の機関を指定すること。
  • (d) ロシア連邦に在留する難民および庇護希望者のもとに生まれた子どもがその出生を自動的に登録されかつ出生証明書を発行される旨を定めた特定の行政規則または行政命令を導入するとともに、チェチェンのすべての国内避難民に対し、イングーシで生まれた子どもについての出生証明書が発行されることを確保するために必要な措置をとること。
紛争の影響を受けている子ども
68.委員会は、チェチェンおよび北カフカースに住んでいる子ども(およびとくに国内避難民である子ども)が、とくに教育および健康に対する権利との関連で、紛争の影響をいまなおきわめて深く受けていることを依然として懸念する。委員会はまた、反乱集団との関係を疑われた若者の、治安部隊員による逮捕および失踪が報告されていることも懸念するものである。委員会は、過度に傷害を与えまたは無差別の効果を有することがあると認められる通常兵器の禁止または塩湯制限に関する条約の改正議定書IIを締約国が最近批准したにも関わらず、地雷敷設地帯の特定および標示または地雷除去の努力が限られていることを懸念する。
69.委員会は、締約国が、子どもの権利条約第38条1項にしたがい、とくに健康および教育に対する権利との関連で、チェチェンおよび北カフカースにおける紛争の影響から子どもを保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、治安部隊による子どもの身体の安全の侵害がなくなることを確保するための措置をとることも促すものである。委員会はさらに、締約国が、地雷除去の努力をさらに進めるとともに、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を批准するよう、勧告する。
70.委員会はまた、「軍部隊の隊員として未成年のロシア連邦市民を入隊させかつ当該隊員に必要な手当を支給することについて」の規則で、14~16歳の男子の志願採用および軍部隊への配属が認められていることも懸念する。
71.委員会は、締約国に対し、普通教育を修了していない子どもが軍部隊に採用されることを防止する目的で、「軍部隊の隊員として未成年のロシア連邦市民を入隊させかつ当該隊員に必要な手当を支給することについて」の規則が子どもの権利条約を全面的に一致するための見直しを行なうよう、促す。
児童労働
72.委員会は、子どもに対する特別な保護を拡大する目的で、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を批准したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の子どもが、路上、家庭その他の場所において搾取的な状況下でまたは定期的通学を妨げられるほどに働いているという報告があることにも留意するものである。
73.委員会は、条約第32条、ならびに、締約国が批准した、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約および第182号条約にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ILOの最低年齢勧告(1973年、第146号)および最悪の形態の児童労働勧告(1999年、第190号)を正当に考慮しながら、条約第32条ならびにILO第138号条約および第182号条約の実施を確保するための措置をとること。
  • (b) 児童労働(規制対象とされていない労働を含む)の規模を監視するための統制機構を確立し、防止を増進させる目的でその原因に対応し、ならびに、子どもが合法的に雇用されているときは、その労働が搾取的なものではなくおよび国際基準にしたがっていることを確保するための努力を強化すること。
  • (c) この点に関してILO児童労働撤廃撤廃国際計画の協力を求めること。
ストリートチルドレン
74.委員会は、ストリートチルドレンの人数が増えており、かつこれらの子どもがあらゆる形態の虐待および搾取の被害を受けやすいこと、ならびに、これらの子どもが公共の保健サービスおよび教育サービスにアクセスできていないことに、懸念を表明する。このような状況に対応し、かつこれらの子どもを保護するための体系的かつ包括的戦略が存在しないことも、委員会にとって懸念の対象である。
75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) あらゆる形態の虐待および搾取を防止しかつこれと闘うための包括的な戦略および政策を立案しかつ実施する目的で、路上で暮らしかつ働く子どもの人数、構成および特徴に関する包括的な全国的調査を行なうこと。
  • (b) 子ども自身の意見を考慮に入れながら、ストリートチルドレンが親その他の親族と再統合することを促進しかつその便宜を図り、または代替的養護を提供すること。締約国は、これらのサービスを提供するための十分な資源が地方政府に与えられることを確保するべきである。
  • (c) ストリートチルドレンの全面的発達を支援するため、これらの子どもに十分な栄養およびシェルターならびに保健ケアおよび教育機会が提供されることを確保するとともに、これらの子どもに十分な保護および援助を提供すること。
  • (d) 路上で暮らしている子どもに関する公衆の否定的態度を変革するため、これらの子どもについての意識啓発を図ること。
  • (e) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織および子どもたち自身と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。
薬物濫用
76.委員会は、子どもの薬物濫用を防止しかつこれと闘うためにさまざまな措置がとられたことで薬物依存が減少していることを歓迎しつつ、締約国において薬物を消費する子どもの人数がいまなお多いことを依然として懸念する。委員会はまた、子どもが薬物取引に関与していることも懸念するものである。
77.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 薬物濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を子どもに提供するとともに、子どもが薬物取引に関与することを防止するための措置をとること。
  • (b) 薬物を使用した子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われ、かつ適切な援助およびカウンセリングを提供されることを確保すること。
  • (c) この現象の原因および影響を注意深く分析するための研究を行ない、かつ、その研究の成果を活用して薬物の使用を防止するための努力を強化すること。
  • (d) 薬物濫用の被害を受けた子どもの回復および再統合のためのサービスを発展させること。
性的搾取および性的虐待
78.委員会は、締約国で性的に搾取されている子どもおよび若者の人数が多いことを懸念する。委員会は、締約国で10代の売買春が深刻な問題となっていることを懸念するものである。委員会はまた、14~18歳の子どもが売春およびポルノへの関与から法的に保護されていないことも懸念する。
79.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの性的搾取および虐待を防止しかつこれと闘うための措置を強化すること。
  • (b) 性的搾取および性的虐待の事案の報告が(被害者の権利を正当に考慮しながら)捜査されること、ならびに、加害者が適切に訴追されおよび処罰されることを確保すること。
  • (c) 子どもの証言が適切な方法で記録されること、および、聴取を行なう者が必要な専門の資格を有することを確保すること。
  • (d) 14~18歳の子どもが売春およびポルノへの関与から法的に保護されることを確保するための措置をとること。
  • (e) 性的搾取、人身取引およびポルノにおける子どもの使用に対処するための戦略を策定する目的で、子どもの虐待の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。
売買、取引および誘拐
80.人身取引を禁ずる規範が最近になって刑法に導入されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの規定を効果的に実施するための十分な取り組みが行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、人身取引被害者のための保護措置が十分に整備されていないこと、および、人身取引を行なう者と国の職員の共謀行為の報告が全面的に捜査されかつ制裁の対象とされていないことにも、懸念を表明するものである。
81.委員会は、締約国に対し、人身取引に関する新たな規定の全面的実施における効果的な機関間の調整を確保するための努力を強化するよう、奨励する。締約国は、人身取引の被害者が保護され、かつその地位および権利がさらに詳しく定義されることを確保するべきである。委員会はまた、締約国に対し、そのプログラム活動において防止活動にいっそう焦点を当てるとともに、人身取引を行なう者と国の職員の共謀行為の報告を捜査するよう、奨励する。
82.委員会は、締約国が、まだ批准はしていないものの、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に署名したことに留意する。
83.委員会は、締約国に対し、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書および人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約を批准するよう、奨励する。
少年司法の運営
84.委員会は、締約国が、いくつかの立法上の試みにも関わらず、罪を犯した少年が司法制度のもとで別に対応されるようにするための特別な連邦手続および連邦裁判所をまだ確立していないことを懸念する。
85.委員会はまた、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 防止活動に関するまたは現行の措置の妥当性に関する調査研究および評価を行なうための機構が不十分であること。
  • (b) 法律に触れた子どもにスティグマが付与されること。
  • (c) 法律に触れた子どものための、拘禁に代わる措置および諸形態の再統合〔のための措置〕が存在しないこと。
  • (d) 自由を奪われた18歳未満の者を対象とする適切な場所が存在せず、これらの者がしばしば成人とともに拘禁されていること。
  • (e) 自由を奪われた18歳未満の者の拘禁の物的環境が劣悪であること。
  • (f) 拘禁された18歳未満の者による教育へのアクセスが不十分であること。
  • (g) 法律に触れたものの自由剥奪刑を言い渡されず、かつ十分な治療措置および教育措置の利益を得ていない未成年者の状況を監視するための措置が不十分であること。
86.委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の討議(1995年)にも照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む、少年司法の分野における他の関連の国連基準が全面的に実施されることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、以下の措置を優先的にとるよう奨励するものである。
  • (a) 刑事責任年齢に達しない子どもが犯罪者として扱われないことを確保すること。
  • (b) 18歳未満の者が普通司法制度ではなく特別の少年司法制度によって審理されることを可能にするため、少年司法制度改革の作業を迅速に進めること。
  • (c) 自由の剥奪が最後の手段として用いられることを確保する目的で、法律に触れた18歳未満の者を対象とする効果的な代替的量刑制度(地域奉仕活動または修復的司法など)を発展させること。
  • (d) すべての子どもが適切な法的援助および弁護人に対する権利を有することを保障すること。
  • (e) 未決拘禁に関する刑事訴訟法の規定を適用すること。
  • (f) とくに刑の執行猶予および条件付釈放を活用することにより、自由の剥奪を適切なかぎり短期間とするために必要な措置をとること。
  • (g) 18歳未満の者が拘禁時に成人から分離されることを確保すること。
  • (h) 18歳未満の者が、少年司法制度の対象とされている間もその家族との定期的接触を保つことを確保すること。
  • (i) 裁判官および法執行官を対象として継続的研修を行なうこと。
  • (j) 拘禁されている18歳未満の者が教育および再統合プログラムを利用できることを確保すること。
  • (k) 少年拘禁センターにおける生活環境に関する基準および監視機構(独立機関による訪問も含む)を確立しかつ実施すること。
  • (l) 刑の言い渡しを受けたすべての子どもに対し、必要なときはカウンセリングその他の社会的援助措置へのアクセスを提供すること。
  • (m) 関連の国連機関、とくにUNDP〔国連開発計画〕、UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕およびユニセフの援助を求めること。

9.条約の選択議定書

87.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に締約国が署名し、かつその批准を予定していることを歓迎するとともに、締約国が子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書への署名を検討していることに留意する。委員会は、締約国に対し、この点に関わる計画を遂行しおよび完了させ、ならびに条約の2つの選択議定書を批准するよう、促すものである。

10.フォローアップおよび普及

フォローアップ
88.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、連邦議会ならびに適用可能なときは州または地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
89.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

11.次回報告書

90. 委員会は、締約国に対し、次回の定期報告書を、第5回定期報告書について条約で定められた提出期限、すなわち2012年9月14日までに提出するよう慫慂する。この報告書は第4回および第5回定期報告書を統合したものであるべきである。しかしながら、委員会が毎年多数の報告書を受領しており、かつ、その結果として締約国報告書の提出日から委員会による検討までに相当の遅延が生じていることから、委員会は、締約国に対し、第4回・第5回統合報告書を提出期限の18か月前、すなわち2011年3月14日に提出するよう慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年1月12日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
最終更新:2012年10月20日 09:11