総括所見:ロシア(第2回・1999年)


CRC/C/15/Add.110(1999年11月10日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1999年9月23日に開かれた第564回および第565回会合(CRC/C/SR.564-565) においてロシア連邦の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.5) を検討し、1999年10月8日に開かれた第586回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の第2回定期報告書が提出されたことを歓迎し、かつ、事前質問票(CRC/C/Q/RUS/2)に対して締約国が提出した詳細な文書回答に留意する。委員会は、委員会に出席した締約国の代表団が高官によって構成されていたこと、代表団が議論のなかで率直な態度を示したこと、および、対話の過程で追加的な情報を提供するため建設的な努力が行なわれたことに、評価の意とともに留意するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップの措置および達成された進展

3.委員会は、ロシア連邦の子どもの権利を保護するための法的基盤を強化する目的で締約国が行なった努力に留意する。このような努力には、家族法、刑法および教育法の改正、および、連邦児童虐待・少年犯罪防止法(1999年)および連邦子どもの権利基本的保障法(1998年)の制定が含まれる。
4.委員会は、人権コミッショナーが制度化されたこと(1997年)、部門横断型委員会が設置されたこと、および、5つの地域および都市で子どもの権利コミッショナーが任命されたことを歓迎する。委員会は、人権コミッショナー、連邦議会議員および国内NGOの勧告にしたがって「子どもの権利のための連邦コミッショナー事務所」を設置することに対し、締約国の代表団が表明した決意に満足感とともに留意するものである。

C.主要な懸念事項、提案および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

立法
5.近年採択されかつ改正された多くの法律には留意しながらも、委員会は、国内法が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するべきであるという、委員会が1993年に行なった勧告に締約国が全面的にしたがっていないことを、依然として懸念する。
6.委員会は、とくに少年司法および刑事司法手続の運営、障害のある子どもの権利の保護、アルコール、薬物および有害物質の濫用からの子どもの保護、ポルノグラフィーからの子どもの保護、家族間暴力を含むあらゆる種類の暴力および虐待からの子どもの保護、および、子ども関連のさまざまな施設のすべてに関わる基準および監視機構の確立を向上させる改革との関連で法改正のプロセスを迅速化するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
7.委員会は、締約国に対し、必要な決議および指示を採択するプロセスを完了し、かつ、子どもに関連するあらゆる立法を効果的に実施するために必要な専門的人材および財源を配分するよう奨励する。
独立した監視機構
8.1997年に人権コミッショナーが制度化され、かついくつかの地域で子どもの権利コミッショナーに関するパイロット事業が制度化されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの機関の権限および地位が限られていること、および、締約国における条約の実施を審査するために締約国がどうしても独立した監視機構を用意する必要があることを、いまなお懸念する。
9.委員会は、締約国が、独立した子どもオンブズマンを連邦レベルに設置することを検討するよう勧告する。当該機関は地域レベルの同様の機構と明確なつながりを有するべきであり、かつ、それぞれの機構が明確に定義された適切な権限(ケアおよび少年司法のための機構の監視も含む)、ならびに効果を保障するのに充分な権限および資源を与えられるべきである。
調整
10.子どもの権利条約を実施するための調整委員会を設立するため締約国が行なった努力は認めながらも、委員会は、子どもに対応するさまざまな連邦政府機関間で充分な調整が行なわれていないこと、および、子どもの権利に関する締約国内の戦略、政策および活動を統括する窓口が存在しないことを、依然として懸念する。さらに、委員会は、責任および行動を連邦機関から地域機関に地方分権化する過程で、子どもの権利の保護における格差を防止するための充分な保証が存在しないことを懸念するものである。
11.委員会は、締約国に対し、子どもの権利に携わるさまざまな政府機関間の調整を連邦および地域のいずれのレベルにおいても強化し、かつ、調整の改善を促進する目的でさまざまな機関をひとつの窓口的省庁に統合することを検討するよう奨励する。委員会はさらに、締約国に対し、連邦機関および地域機関の間の責任分担において子どもの権利を可能なかぎり最大限に保護する用意が行なわれることを確保するよう、奨励するものである。
予算問題/財政状況/国の手当の配分/資金拠出
12.委員会は、長期化する財政危機が、子どもの生活条件の悪化をもたらすことによりその発達に悪影響を及ぼしていること、および、社会投資プログラムの実施、ひいては子どもの権利の尊重に悪影響を及ぼしていることを、懸念する。とりわけ、委員会は、貧困が広範囲にわたっていること、家庭の構造が弱体化していること、放任された子ども、ホームレスの子どもおよび路上で暮らしかつ働く子どもの人数が増えていること、自殺の件数が多いこと、薬物およびアルコールの濫用が大きな規模で生じていること、および少年非行が増えていることを、深刻に懸念するものである。
13.委員会は、現行の援助を一時的に最低所得家庭に「限定供与」するために締約国が行なっている努力を認めながらも、この暫定期間中に援助を受け取らない家庭および子どもが困難に苦しむであろうことをとくに懸念する。委員会はまた、国の手当、とくに児童手当の支給が行なわれていないまたは遅れていることも懸念するものである。
14.条約第2条、第3条および第4条に照らし、委員会は、子ども、とくに傷つきやすい立場におかれかつ周縁化されたグループに属する子どもを対象とした保健、教育その他の社会サービスのための予算配分が充分に保護されることを確保するため、締約国が、利用可能な資源を最大限に用いてあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
15.さらに、委員会は、締約国に対し、歳出の使途の再編成またはプログラムの優先順位の設定、および、締約国による子どもの権利条約の実施を前進させるために用いられる国際援助の割合の増加のような、予算問題を解決するための追加的な策を追求するよう奨励するものである。
16.委員会は、締約国に対し、あらゆる手当の支給が行なわれること、限定供与の対象となっている手当の使用が監視されること、および、「ロシアの子ども」に含まれるすべての大統領プログラムに対して適切な資金拠出が行なわれることを確保するよう、促す。
17.委員会はさらに、締約国が、利用可能な資源をもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもの保護に最大限に配分するため予算配分政策を見直し、かつ、経済危機が子どもの生活水準に与える影響の注意深い監視に関わる1993年の委員会の勧告をひきつづき実施するよう、勧告するものである。
NGOの参加
18.委員会は、条約実施へのNGOの参加を支援する必要性に関わる1993年の委員会の勧告の実施が限られていることを懸念する。
19.委員会は、締約国に対し、条約に関する訓練の提供および情報の普及ならびに実施の監視を行なうNGOの努力に関して、報告プロセスにおける、およびケア施設および少年司法施設の監視におけるパートナーシップの強化によるものも含め、NGOに対する支援およびNGOとの協力を増進させるよう奨励する。
条約の原則および趣旨の普及
20.委員会は、1993年に委員会が条約の規定および原則の普及を継続するよう奨励したこととの関連で締約国がいまなお努力を強化する必要があることを、懸念する。
21.委員会は、専門家グループおよび親を含むおとなおよび子どもの間で条約の原則および規定を広報しかつ教育するため、締約国がさらなる措置をとるよう勧告する。

2.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止の原則(第2条)
22.締約国が差別を禁ずる立法を採択したことは歓迎しながらも、委員会は、とくに極北を含む地域間の格差および都市部と農村部の子どもの間の格差が、保健、教育その他の社会サービスおよび特別な保護を必要とする子どもの状況に関わる立法、予算配分、政策およびプログラムに関して増大していることを、依然として懸念する。
23.委員会はまた、農村部の女子が、とくに教育、保健、および性的虐待および性的搾取からの保護へのアクセスに関して不利な状況に置かれていることも懸念する。
24.さらに、委員会は、締約国において人種主義および外国人嫌悪の発生件数が増えているという一般的報告があることを懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、経済的、社会的および地域的格差を減少させるための措置を強化すること、および、1993年の委員会の勧告にしたがって、障害のある子どもおよび宗教的および民族的マイノリティに属する子どもに関するものも含め、子どもに対するいかなる差別または子どもの取扱いのいかなる格差も防止するためにさらなる措置をとるよう勧告する。
生命に対する権利(第6条)
26.条約第6条に照らし、委員会は、とくに男子に関わって子どもの自殺および殺害の割合が急速に上昇していることにより、生命に対する子どもの権利が脅威にさらされていることを懸念する。
27.委員会は、最近の子どもの自殺および殺害の増加を減少に転じさせ、かつ防止のための努力を促進する目的で、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。防止のための努力には、子ども、とくに青少年、および危機的状況に置かれている家族を援助することを目的とした危機介入ならびに防止のための支援およびカウンセリング・サービスを増加させるためにすでにとられている措置を強化することも含まれる。

3.市民的権利および自由(第7条、第8条、第13条~第17条および第37条(a))

拷問からの保護(第37条(a))
28.委員会は、体罰をともなって法執行官が行なう行為も含め、拷問および不当な取扱いが広範に行なわれており、かつ、施設一般およびとくに拘禁所または収監所で生活する子どもの環境が非人道的なまたは品位を傷つける取扱いに達しているという申立てがあることを、懸念する。
29.委員会は、これらの慣行を終わらせかつ防止し、かつそのような行為の申立ての調査および加害者の処罰を適正に行なうため、締約国が適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、これらの懸念に関して拷問禁止委員会および拷問に関する特別報告者が行なった勧告の実施も支持するものである。
30.さらに、委員会は、締約国が、施設における体罰の慣行を監視しかつ終わらせるよう勧告する。

4.家庭環境および代替的養護(第5条、第18条(1~2項)、第9条~第11条、第19条~第21条、第27条(4項)および第39条)

虐待/放任/不当な取扱い/暴力(第19条)
31.家族間暴力の危険性に関して締約国の意識が高まっていることは歓迎しながらも、委員会は、締約国において家庭を背景とする子どもの不当な取扱いおよび放任が根強く行なわれていることを依然として懸念する。委員会はまた、女性に対する暴力が広範に発生していること、およびそれが子どもに与える影響についても懸念するものである。
32.委員会は、締約国が、家庭の内外における子どもの不当な取扱い、放任および虐待(性的虐待も含む)の問題に特別な注意を向けるよう勧告する。
33.委員会は、条約第19条にしたがって、子どもに対するいかなる形態の身体的または精神的暴力も防止しかつそれと闘うため、情報キャンペーンおよび教育キャンペーンを行なう必要があることを協調する。
34.委員会はまた、治療およびリハビリテーションのためのプログラムも含む政策およびプログラムの立案を促進するため、これらの問題に関する包括的な研究を開始するようにも提案するものである。
35.さらに、1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ21に掲げた委員会の勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、暴力および虐待の被害を受けた子どもを対象とした、苦情申立て、調査および証拠の提出のための子どもに優しい手続を促進し、かつ、行なわれた犯罪の調査ならびに加害者の訴追および適切な処罰を強化するよう奨励する。
子どもの措置の審査(第25条)
36.委員会は、施設措置の政策および慣行が支配的であること、施設で生活する子どもの人数が極端に多いこと、およびこれらの施設の生活条件に対し、深刻な懸念を表明する。条約第25条を踏まえ、委員会はまた、措置の定期的審査が制度的に保障されていないこと、および、この点に関する1993年の委員会の勧告が全面的に実施されていないことも、懸念するものである。
37.委員会は、1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ19を参照し、締約国が、脱施設化に関する国家的政策を立案すること、子どもの施設措置に代わる手段の利用を増やすこと、および地域志向型の社会サービスを強化する措置を検討することを追求するよう、勧告する。
38.この観点から、委員会は、締約国に対し、虐待、および親によるケアから子どもを分離する必要が生ずるのを防止する目的で、子どもが放任または虐待を受けるおそれのある家庭に支援、教育およびカウンセリング・サービスを提供するために効果的な措置をとるよう奨励する。委員会はまた、施設措置に代わる手段としての養子縁組および里親養護を強化するようにも勧告するものである。
39.委員会はまた、あらゆるタイプの措置が定期的に審査されるようにするため適切な手続を採択するようにも勧告する。条約第3条3項に照らし、委員会はさらに、施設の環境および施設の定期的検査に関する基準を確立すること、とくに独立した検査機構の役割および権限を強化し、かつそのような検査機構が抜き打ちで里親家庭および公立施設を検査する権利を確保することによって、法改正を含む施設制度の改革を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)および世界保健機関の技術的援助を求めるよう促す。
障害のある子ども(第23条)
40.委員会は、障害のある子どもの状況、とくに精神障害児の状況および施設で生活する子どもの状況を懸念する。とりわけ、委員会は、現在の診断システムおよび慣行ならびに施設で生活する障害児の環境について、障害児の発達、治療およびリハビリテーションのための充分な専門的援助が存在しないことについて、およびメインストリーム教育への障害児のインクルージョンのプロセスが遅いことについて、懸念するものである。
41.委員会は、締約国に対し、身体的および精神的障害のある子どもの早期診断を改善し、かつ、その施設措置をできるかぎり防止するための努力を追求するよう奨励する。委員会はさらに、子どもが家庭で生活することを可能にし、かつその社会的インクルージョンを促進するため、専門的治療サービスならびに家族に提供される支援およびカウンセリングの強化を勧告するものである。
42.委員会は、締約国に対し、このような子どもの社会へのインクルージョンに関する政策を増進させる目的で、条約第23条4項にしたがって国際協力から利益を受ける努力を強化するよう奨励する。
国際養子縁組(第21条)
43.委員会は、締約国外への不法な子どもの移送および取引に対する保障が不充分であり、かつ、とくに経済的および性的搾取を目的とした国際養子縁組の濫用の可能性があることを懸念する。
44.委員会は、締約国に対し、国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の批准を検討するよう積極的に奨励する。委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を締約国が検討しているという情報を検討し、かつ、締約国に対し、同条約に加入するための努力を加速するよう促すものである。条約第21条に照らし、委員会は、子どもの最善の利益を保護する目的で国際養子縁組に関わる手続を確立するための努力を強化するよう勧告する。

5.基礎保健および福祉(第6条、第18条3項、第23条、第24条、第26条および第27条1~3項)

健康に対する権利(第24条)
45.委員会は、基礎保健および福祉の分野で締約国が行なった努力、とくに周産期保健を向上させかつ乳児死亡率を減少させるための努力に評価の意とともに留意する。委員会はまた、予防接種プログラムに関して委員会が1993年に行なった勧告にしたがうなかで達成された成功も歓迎するものである。委員会は、高い乳児死亡率が根強く続いていること、および、保健のインフラストラクチャーおよびサービスが悪化していることをいまなお懸念する。さらに、寄生虫による疾患、感染性疾患および呼吸器系疾患(とくに結核)が増えていることは、栄養不良が増加していること、および母乳で育てられる子どもの割合が少ないことと同様に、委員会にとって大きな懸念の対象である。
46.委員会は、締約国が、プライマリーヘルスケアの悪化を向上に転じさせる努力をひきつづき行なうため技術的援助を求めることを検討するよう勧告する。とりわけ、委員会は、締約国に対し、結核その他の疾病を治療しかつその拡散を防止するための努力を継続し、避妊の手段としての中絶の利用を減少させるための努力を継続し、かつ、母乳育児を促進するよう促すものである。
47.HIV/AIDSおよび性行為感染症(STD)の予防キャンペーンおよびこのような疾患の発生率に関する情報が不充分であることは、委員会にとって懸念の対象である。
48.委員会は、避妊およびSTDに関する情報も含む性教育に青少年がアクセスできることを確保するための措置、リプロダクティブ・ヘルスおよび家族計画に関するサービスおよびカウンセリング・サービスを強化することにより青少年の健康を促進するための措置、および、HIV/AIDS、STDならびに10代の妊娠および中絶を防止しかつこれらと闘うための措置の効果を保障するよう勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条および第31条)

教育への権利(第28条および第29条)
49.委員会は、教育に関して締約国が行なっている努力、とりわけ、無償の義務的基礎教育の継続的提供を確保することおよび無償の中等教育へのアクセス可能性を高めることを目的とした新たな教育法の採択に、留意する。これとの関連で、委員会は、中退率が増加していること、中等課程の職業教育および技術教育への就学率が――とくに女子の間で――下降していること、および、学校のインフラストラクチャーおよび教員の労働条件が悪化していること(低賃金および遅配も含む)を、依然として懸念するものである。
50.委員会は、締約国に対し、中退率および中退の原因、ならびに規律上の理由で退学させられた子どもの状況に関する情報を収集するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、経済危機の影響から教育制度を保護するための努力を継続し、かつ、とくに、教員の労働条件にさらなる注意を向けるようにも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、子どもの権利を含む人権を独立科目として学校カリキュラムに導入するよう奨励する。
医療その他の社会サービスへのアクセス
51.委員会は、一部自治体が、法律によって禁じられているにも関わらず、居住許可を得ていない市において親および子どもが医療、教育その他の社会サービスにアクセスすることを妨げ続けているという報告があることを、懸念する。このような慣行は、国内避難民の子ども、移民および庇護申請者、ならびに路上で働きかつ生活している子どもにとってとくに有害である。
52.委員会は、締約国に対し、とくに地方政府および法執行官を対象とした訓練および意識啓発を通じて、居住許可を有しない子どもに対するこのような差別の慣行を終わらせるよう促す。

7.特別な保護措置(第22条、第38条~第40条第37条(b)~(d)および第32条~第36条)

難民の子ども(第22条)
53.委員会は、庇護申請者の取扱い、および、子どもおよび親、とくに旧ソビエト連邦の領域外からやってきた子どもおよび親に庇護申請の登録権を認めない慣行を、懸念する。
54.委員会は、締約国に対し、保健、教育その他の社会サービスへのアクセスも含めて難民の子どもの充分な法的保護を確保するよう奨励する。
55.委員会は、とくに保護者のいない子どもの代理で庇護申請を登録する権利に関わる手続、政策および慣行の見直しを行なうよう勧告する。
子どもと武力紛争ならびに子どもの回復(第38条および第39条)
56.委員会は、締約国で武力紛争が継続しているチェチェンおよびダゲスタンのような地域において子どもの権利が尊重されていないことを懸念する。委員会は、とりわけ、国際人道法の規定に違反して子どもが武力紛争に関与していること、ならびに国内避難民の子どもの人数および状況を懸念するものである。委員会はまた、チェチェンの裁判所によって、子どもに刑を言い渡すさい死刑および特定の体刑(手足の切断を含む)が適用されていることも懸念する。加えて、委員会は、同地域において子どもの即時的処刑、非自発的失踪、恣意的拘禁、拷問および不当な取扱いが行なわれている疑いがあるという報告を懸念するものである。
57.委員会は、締約国に対し、紛争時に子どもその他の文民が保護されること、および、国難避難民の子どもおよび武力紛争地域に生活する子どもが支援およびリハビリテーションのための援助(心理的援助も含む)を利用できることを確保するよう、奨励する。
児童労働(第32条)
58.委員会は、児童労働および経済的搾取が締約国の子どもにますます影響を与える問題となっていることを、依然として懸念する。加えて、委員会は、路上で働きかつ(または)生活する子どもの人数が多いことを懸念するものである。このような子どもは、犯罪組織を通じてのものも含む少年犯罪、アルコールおよび有害物質の濫用および性的搾取をますます受けやすい立場に置かれていることから、特段の注意を必要とする。
59.委員会は、締約国に対し、とくに「インフォーマル」部門における労働法の全面的実施を監視することに具体的に注意を向け、かつ売買春も含む経済的および性的搾取から子どもを保護するよう奨励する。委員会は、締約国が、路上で生活しかつ(または)働く子どもに関わる政策、慣行およびプログラムの向上を目的として、このような子どもの問題に関する調査を行なうよう勧告するものである。
60.最後に、委員会は、締約国が、増大しつつある児童労働の問題を防止しかつそれと闘うための包括的政策を発展させるさいにILO/IPECの技術的援助を求めることを検討すること、就業の最低年齢に関するILO条約(第138号条約、1973年)の規定を実施するための努力を強化すること、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(1999年)の批准を検討することを、勧告する。
薬物濫用およびその他の形態の有害物質の濫用(第33条)
61.委員会は、子どもおよびその家族の間でアルコール、薬物その他の有害物質の濫用の問題が増大していることを懸念する。
62.委員会は、子どもによるアルコールの濫用および薬物の頒布および消費への関与を防止するため、締約国が追加的な努力を行なうよう勧告する。委員会はまた、アルコール、薬物および有害物質の濫用に携わった子どもおよびその家族に対して治療、リハビリテーションおよび支援のための充分なサービスを提供するため、さらなる措置をとるようにも勧告するところである。
性的搾取および性的虐待(第34条)
63.商業的性的搾取、性的虐待およびポルノグラフィーから子どもを保護するための立法、政策およびプログラムが不充分であることは、委員会にとって懸念の対象である。
64.1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ24に掲げた勧告に加え、委員会は、締約国が、子どもの性的搾取および性的虐待ならびにポルノグラフィーにおける使用に関する包括的な研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護を増進させ、かつ被害を受けた子どもの治療およびリハビリテーションを確保する目的で、追加的な立法措置をとることおよびサービスを拡大することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、商業的性的搾取に対応する努力のなかで、1996年にストックホルムで開かれた子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された行動のための課題に掲げられた勧告を考慮にいれるよう奨励する。
マイノリティまたは先住民の子ども(第30条)
65.マイノリティへの支援の提供を目的とした連邦民族文化自治法(1996年)およびプログラムには留意しながらも、委員会は、とくに北部の民族的マイノリティの生活条件、および保健、教育その他の社会サービスへのアクセスについて依然として懸念する。委員会はまた、民族的マイノリティに属する子どもへの社会的差別の発生件数が増加していることも懸念するものである。
66.委員会は、マイノリティの子どもを差別から保護し、かつこのような子どもに教育、保健その他の社会サービスへの全面的アクセスを保証するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
少年司法の運営(第37条、第40条および第39条)
67.少年司法の分野は、とくに、少年司法に関する法律の採択および少年裁判所の設置を含む少年司法制度の確立の必要性に関して委員会が1993年に行なった勧告を締約国が充分に実施していないことに関わって、委員会にとって根強くかつ深刻な懸念の対象である。
68.委員会は、申し立てられた行為の捜査の過程で拘禁された少年に対して行なわれている警察による蛮行および拷問の報告があること、および、拘禁された少年の審判前拘禁の期間が検察官の裁量により延長されることをめぐって、懸念を表明する。委員会はまた、教育収容所、審判前拘禁所または特別教育施設で生活する罪を犯した少年の取扱い、および、拘禁および刑務所一般の環境の悪さも深刻に懸念するところである。
69.1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ22および23に掲げた委員会の勧告、条約第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則に照らし、委員会は、締約国が、計画されている少年司法制度改革を可能なかぎり早期に実施するため特段の措置をとるよう勧告する。このような改革には、少年司法に関する包括的立法の採択、訓練を受けた少年裁判官による特別少年裁判所の導入、少年の逮捕を命令する権限を検察官から少年裁判所に委譲し、審判前拘禁の期間を制限し、かつ裁判手続を迅速化するための刑事訴訟法改正、および、子どもの権利、および条約が規定するように少年司法制度が社会復帰を目的としていることに関する法執行官および司法職員の訓練が含まれる。
70.委員会は、締約国に対し、条約が求めているとおり、少年司法を実施するにさいして自由の剥奪を「最後の手段」としてのみ用いるよう強く促す。この目的で、委員会は、締約国に対し、自由の剥奪に代わる手段を広く用いること、そのような代替的手段を運営するために必要な資源を利用可能とすること、および、非行を行なった少年の社会復帰を増進する目的で少年矯正施設の再編成を行なうことを、促すものである。
71.委員会はまた、締約国に対し、子どもに法的援助を提供すること、および審判前拘禁センターおよび教育収容所を含む拘禁場所の環境を改善することにより、自由を奪われた子どもの権利を保護するための措置をただちにとるようにも促す。さらに、委員会は、適切な、独立したかつ子どもに優しい苦情申立て機構をNGOと協力して設置すること、権利侵害が認められた場合に時宜を得た対応を行なうこと、および、釈放後に少年が社会に復帰しかつ再統合する援助を行なうためのプログラムを実施することを、勧告するものである。
72.委員会は、締約国が、国際連合少年司法委員会を通じ、少年司法に関してとくに国際連合国際犯罪防止センター、人権高等弁務官事務所、ユニセフおよび国際少年司法ネットワークの国際協力および技術的援助を求めることを検討するよう勧告する。
報告書の普及
73.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を、関連の会合の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに公衆が広く利用できるようにすることを勧告する。そのような幅広い配布は、とくに政府、関連省庁、議会および非政府組織の間で条約およびその実施状況に関する議論および意識を喚起するようなものであるべきである。


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