ゆっくりいじめ系2943 ぎゃくたいプレイス(中編)


 翌日、老人の家に、男が五人やってきた。
 一人は、言うまでもなく、あの不動産会社の若い男。
 他の四人は年齢がまちまちの男たちであった。
 彼らは、男が以前勤めていたゆっくり駆除会社の同僚……では、もちろん無い。
 彼らは、インターネットで知り合った同じ趣味を持つ同好の士である。
「いやー、他の予定あったんだけど、そっちは拝み倒してキャンセルしてきたよ」
「ボクは、丁度暇してたんで」
「食べ物に不自由しないで、捕食種に襲われることもなくゆっくり暮らしていたゆっくり
かあ……それを好きに……ああ、もう夢でも見てるんじゃないか」
「ホント、誘っていただいて感謝してますよ」
 四人にそう言われて、男はニヤニヤと笑っていた。
 もう言うまでもないかもしれない。
 彼らの趣味は、ゆっくり虐待であった。

 その会社社長とは以前から何度か仕事をしていた。
 誠実で真面目な男を気に入ってくれているようだった。
 親しくなって世間話も交わしていたために、社長の父親である先代が郊外に家を建てて
隠居して、ゆっくりを飼っているらしいという話も聞いていた。
 その先代が、訪ねて来た隣人――と、言っても車で十分の距離があるのだが――に倒れ
ているのを発見され、病院に運び込まれて、そのまま逝ってしまった。
 すぐに社長から連絡があり、先代が隠居していた家を売りに出したい、という話が来た。
 早速、社長とともに家を見に行き、現在に至るというわけである。

「ゆっゆっゆっ……できたよ!」
「ゆわーい、できちゃよ!」
「ドスおじいしゃん、よろこんでくれりゅかな?」
「もちろんとってもゆっくりしてくれるよ!」
「たのちみー」
「ゆっくりしたおぼうしさんだね!」
 ゆっくりたちが花を繋げてお帽子を作っていた。お帽子といっても、要するにただの輪
である。これを頭に乗せるのだ。
「ゆっくりしていってね!」
 響き渡ったその声に、もちろんゆっくりたちは、
「ゆっくりしていってね!」
 と、ゆっくりした返事をした。
「ゆゆ、おにいさんたち、だぁれ?」
「むきゅ、そのおにいさんは、このまえごはんをくれた人間さんだわ」
「ごはん! ごはん! ごはんちょーらい!」
「おにゃかへっちゃよ、むーちゃむーちゃちたいよ!」
「はっはっはっ、これはとってもゆっくりしたゆっくりたちだねえ」
 舌なめずりするような声で、男が言った。
「みんな、ごはんをあげるけどその前に、お兄さんたちはおじいさんに頼まれて、おうち
の点検に来たんだ」
 若い男が言うと、ゆっくりたちは、そんなのいいからはやくごはんちょうだいね、と騒
ぎ出した。それほどやつれているようには見えないが、この前やった餌はきれいさっぱり
無くなっているので空腹なのだろう。
「むきゅ、どういうことなの、おにいさん」
 ぱちゅりーが進み出て言った。このゆっくりたちは安全も食もおじいさんに面倒見ても
らっていたために、野生ゆっくりの群れのように長やその側近の幹部がいたりはしなかっ
たが、このぱちゅりーは賢いために、自然にゆっくりたちの代表のようになっていた。
「おうちに壊れているところがないかどうか調べるんだよ。雨漏りしておうちの中が水浸
しになったり、穴が開いていてそこかられみりゃが入ってきたりしないようにね」
「おうちの中におみずがはいってきたらゆっくりできないよ!」
「れみりゃがはいってきたらゆっくりできないよ!」
 ゆっくりたちは、恐怖を突きつけられてざわめいた。
「うん、だから、そんなことにならないためにボクたちが来たんだ」
「ゆゆっ、それはゆっくりできそうだよ」
「ゆっくりおねがいするね!」
「でも、ごはんもちょうだいね!」
「よしよし、それじゃここにみんな集まるんだ。おうちの中には誰もいないようにしてほ
しい。そうしたらごはんをあげよう」
 若い男が言うのに合わせるように、他の男がゆっくりフードの入った袋を上下に振って、
音を立てる。
「ゆゆ、なかでおひるねしてる子たちがいたね、すぐに呼んできてね! ゆっくりしない
ではやくしてね!」
「ゆっくりしないで行ってくるよ!」
 何匹かのゆっくりがおうちに入って、おそとでごはんがもらえるよ! と叫ぶと、中で
ゆっくりしていたゆっくりたちは一目散に出てきた。
「うん、もういないみたいだな」
 おうちの中に入った男が確認すると、袋を持っていた男がゆっくりフードを地面にばら
まいた。
「ゆわーい、むーちゃむーちゃちゅるよ!」
「おいちちょーだよ、ゆっくちたべりゅよ」
「むーしゃむーしゃ、しあわせー」
「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー」
 楽しそうに食事をするゆっくりたちを残して、五人の男はおうちに入って扉を閉めた。
「よし、やりましょう」
「おう」
 そして、すぐに作業を始めた。床に分厚いビニールシートを敷き、それを壁にも貼り付
ける。窓にも被せたので、外からはおうちの中が見えないようになった。
 作業を済ませて表に出ると、ゆっくりたちは食事を終えていた。
「おにいさん、もっとごはんほしいよ」
「もっとちょーらいね!」
「ゆゆぅ、れいみゅほちょんどたべられにゃかったよ! もっちょちょーらい!」
 ゆっくりたちがごはんが足りなかったのでもっとくれと言い出した。
「おうちの中にデザートを用意しておいたよ」
「ゆゆっ!」
「で、今度は表の、れみりゃが入ってこないようにしている透明な壁と屋根を点検するか
ら、みんなはゆっくりとおうちの中でデザートを食べていてね。作業中に気付かないで踏
ん付けたらゆっくりできないことになるから、絶対にみんなおうちに入ってね!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「よし、ほら、入りな」
 男が扉の前からどいて道を開ける。ゆっくりたちは我先にと中に入り、そして床にばら
まかれた飴玉やらチョコレートやらを発見して歓喜する。
「あまあまだぁぁぁ!」
「これはゆっくりできるよ!」
「あまあまをむーちゃむーちゃちゅるよ!」
「れいみゅはあめさんをぺーろぺーろすりゅよ!」
「まりしゃはしゅーくりーむさんをたべりゅよ!」
 むーしゃむーしゃ、むーちゃむーちゃとゆっくりたちはデザートに舌鼓を打つ。
「むきゅ、おにいさん、これじゃおひさまのひかりが入ってこないわ」
 ぱちゅりーがビニールシートに違和感を感じて言った。
「ああ、点検のためさ。大丈夫、あとで全部取って元通りにしていくよ」
「むきゅ、それならあんしんね」
「ほら、ぱちゅりーもデザートを食べてきなよ」
 若い男が、扉を閉めた。
 やかましかったゆっくりたちのゆっくりした声が聞こえなくなる。
「うん、これなら大丈夫だな」
「まあ、扉に耳を押し付ければ微かに聞こえますけど、問題ないでしょ」
「換気扇があるから、火とか使っても大丈夫だよ。換気扇の音がけっこう大きいから、ゆ
っくりの声も漏れないし」
「あとは表にいるかの確認だな」
 男たちは、ゆっくりしていってね、と言いながら表を歩き回り、残っているゆっくりが
いないかどうか確認する。
「いないな」
「まあ、デザートがあるよ、って言われたら残ってるわけないか」
「よし、それじゃあいよいよ……」

「ゆっくりしていってね!」
 突然響いたその声に、あまーいデザートをたっぷりむーしゃむーしゃしたゆっくりたち
が返すのはもちろん、
「ゆっくりしていってね!」
 だ。
 声の主が、ごはんとデザートをくれた上に、おうちの点検をしてくれるドスおじいさん
の知り合いなのだから、とってもゆっくりした声だ。
「おにいさんたちもゆっきゅちちてね!」
「ゆゆぅ~ん、まりしゃといっちょにあちょぼーよ!」
 子供たちが足元に擦り寄って来る。
「えー、ここは君たちのゆっくりプレイスだよね」
 それは無視して、男が言った。
「もちろんだよ!」
「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!」
「こんなにゆっくりできるとかいはなばしょは他にないわね!」
「ゆっきゅちぷれいちゅ!」
「ゆっきゅち! ゆっきゅち!」
「うん、でも、ボクたちにとってはここはぎゃくたいプレイスなんだよ」
「……ゆ?」
 ゆっくりたちはゆっくりりかいしようとするが、ぎゃくたい、という聞きなれない言葉
がどうしても理解できないようだ。
「……むきゅ、ぎゃくたいはゆっくりできないわ。そんなことしないでね」
 唯一、ぱちゅりーはその意味を知っているらしい。ゆっくりできない、という言葉にざ
わめくゆっくりたち。
「いや、ボクたちは虐待しないとゆっくりできないんだ。ゆっくりりかいしてね」
「ゆっ! むーしゃむーしゃしたりすーりすーりすればゆっくりできるよ!」
「うーん、そうか、それならやってみようか」
 年上の男が言った。若い男が、ちょっと驚いたようだが、すぐに話を合わせた。
「そうですね、なんでもやってみないと」
「ああ、もしかしたらやってみたら虐待よりもゆっくりできるかもしれない」
「そうだよ、やってみればいいよ!」
「むーしゃむーしゃすればゆっくりできるよ!」
 足元にいた子れいむが言った。
「よーし」
 年上の男は、その子れいむを摘み上げた。
「ゆ? ……ゆわぁ、おそらをとんじぇるみちゃい~」
 おめめをキラキラ輝かせて喜ぶ子れいむ――次の瞬間、その表情が固まった。
「ゆぴぃ! いぢゃいぃぃぃぃ!」
 激痛を訴える。それもそのはず、体の後ろ半分が齧り取られてしまったのだから。
「むーしゃむーしゃ……しあわせー!」
 年上の男は、子れいむの後ろ半分を美味しそうに食べた。
「いやぁ、むーしゃむーしゃはゆっくりできるよ、君ぃ!」
「そうですか。だったらボクも」
「よし、おれも」
 若い男と青年が、ひょい、と足元の子ありすと子まりさを摘み上げる。
「ゆゆゆっ、あ、ありしゅをむーちゃむーちゃしにゃいでね、ゆっくちできにゃいよ!」
「まりしゃはおいちくないよ! むーちゃむーちゃするにゃらゆっくちフードにちてね!」
 懇願する二匹の子ゆっくりだが、二人とも笑顔のまま後ろ半分を齧った。
「いぢゃいぃぃいぃx」
「ゆびゃああああ」
「むーしゃむーしゃ……しあわせー!」
「本当だ。むーしゃむーしゃはゆっくりできるね!」
「おにいさんたち! おちびちゃんたちはむーしゃむーしゃするものじゃないよ! はや
くはなしてあげてね!」
「痛がってるよ、はやくちりょうしてあげてね!」
 子供の親らしきゆっくりたちが口々に抗議の声を上げる。ちりょう――治療すれば怪我
が治る、という知識をこのゆっくりたちは持っていた。怪我をした時にはドスおじいさん
が餡子や小麦粉で治してくれてその行為を「ちりょう」と呼んでいたからだ。
「うーん、でも、やっぱり一番ゆっくりできるのは虐待だな!」
「そうだな」
「そうですねえ」
「そいや!」
 男が、思い切りオーバースローで手に持っていた子まりさを壁に向けて投げ付けた。お
そらく成体の大人ゆっくりでも大ダメージを受けたであろうその衝撃に、当然のごとく子
まりさは耐えられず、放射状に中身を飛び散らせた。
「ゆ゛ああああああ、まりざのあがぢゃんがあああああ!」
「そら!」
「よっと!」
 他の二人もそれに倣って子れいむと子ありすを投げる。子まりさの飛び散った餡子に子
れいむの同色のそれが散り、その上に子ありすのカスタードの黄色い花が咲いた。
「ゆぎゃあああああ! おちびぢゃああああああん!」
 親たちは絶叫する。
「ヒヒヒ、ヒヒ」
 男たちは気味の悪い笑い声を出して、そんな親たちを楽しそうに見ている。
「ヒヒ、ヒヒ、ヒヒヒ」
「ゆゆ、その声ゆっくりできないよ、やめてね!」
「ヒヒ、ヒ、ヒ、ヒヒヒヒヒヒ」
「やめちぇぇぇ! ゆっくちできにゃいよお!」
「れいぶのおちびぢゃんがえじでええええ!」
「ありずのおちびぢゃんもがえせええええ!」
「ヒ、ヒ、ヒ、ヒ」
「おにいさんたちはゆっくりできないひとだよ! はやくでていってね! もうこないで
ね!」
「そうだよ、かえってね! もうこないでね!」
「かえりぇ! もうくりゅなあ!」
「ヒャアーーーッ! 虐待だあああああ!」
「ゆ゛っ゛!!!」
 男たちが床を蹴り、近くにいたゆっくりに襲い掛かった。
「いだいいいぃぃぃぃ、どぼちでごんなごとするのおおお!」
 子供を返せと喚いていたれいむは蹴り飛ばされて壁際まで運ばれ、そこからは蹴飛ばし
て壁に当て、反動で返ってきたところをまた蹴るというのを繰り返された。
「見えないよおおおお! いだいよおおおお!」
 まりさは、両目を抉り取られて盲目になったところを殴打されてから放り投げられた。
すっかりいつまた殴られるかに心囚われたまりさは他のゆっくりが心配して近付いてきて
も、その音を、また人間が殴りに来たと思い込んで暴れた。
「ゆ゛……ゆ゛……ゆ゛……」
 ありすは、目に指を突っ込まれ、先のまりさのように眼球を抉り出されはしなかったも
のの、そこから皮を強引にはがれて中身がむき出しになってしまった。
「やべでええええ! ひどいごとじないでええええ!」
「がえっで! もうがえっでよお! ここはドスおじいさんとれいぶだぢのゆっぐりプレ
イズだよ!」
「たちゅげでえええ! ドスおじいじゃん!」
「ドスおじいざん、たずげでええええええ!」
 いきなり降りかかった理不尽な暴力に対して右往左往泣き喚くばかりのゆっくりたちだ
ったが、やがてその行動が統一されてきた。
「ドスおじいざあああん! はやぐきでえええええ!」
 この素晴らしいゆっくりプレイスの主、みんなをゆっくりさせてくれるドスおじいさん
へ助けを求める声を上げる。
「あー、はいはいはいはい」
 赤ゆっくりを竹串に刺していた男が、その手を休めて言った。
「そうか、お前ら知らないのか」
 他の四人も、虐待を一時止める。
「ゆゆゆ?」
「ドスおじいさんは、お亡くなりになったよ」
「ゆ?」
「ああ、わかんねえか。要するに永遠にゆっくりしちゃったんだよ。もうここには来ない
よ」
「ゆええええええ!」
「う、うぞだよ! うぞづかないでね!」
「本当だってば、お前らがこんなになってんのがその証拠だって」
「ゆゆぅ……」
「ドスおじいさんがいたら、おれたちがこんなことできるわけないだろ」
「むきゅ! おにいさんたち、誰なの? ドスおじいさんのこどもなの? に、人間さん
は死んだら持ち物はこどものものになるはずよ。ドスおじいさんが死んだら、このおうち
はおじいさんのこどものもののはずよ!」
 ぱちゅりーが、まくしたてるのに、男たちは一様に感嘆の声を上げた。
「へえ、ちゃんとここが自分たちのもんじゃなくて、おじいさんのものだと理解してるん
だあ」
「遺産が子供に相続されることも知ってるんだね」
「賢いなあ、このぱちゅりー、なんでそんなこと知ってるの?」
「むきゅ……ドスおじいさんに色々なごほんをよんでもらったのよ」
「へえ、それでかー」
「それじゃあちゃんと教えてあげよう。まずおれたちはおじいさんの子供とか孫じゃない。
ほら、おれと一緒に来たおじさんがいただろう。あれがおじいさんの子供さ。で、あの人
に言われて君たちを駆除しに来たんだ」
「むきゅ……なんでそんなことするの」
「ここはもう別の人がお金を渡す代わりに自分のおうちにしたんだよ」
「ゆっ! それならその人がれいむたちにごはんをくれたらいいよ!」
 れいむが割り込んでくる。
「その人は君たちにごはんをあげるつもりもここに住ませてあげるつもりもないんだ。ゆ
っくりりかいしてね」
「むきゅ、それならここを出ていくわ。だからぎゃくたいとかえいえんにゆっくりさせる
のはやめて」
 ぱちゅりーは、仲間たちの「なんででていかないといけないの!」「ぱちゅりー、なに
いってるの! そんなのゆっくりできないよ!」「ぜったいでていかないし、ごはんもた
べるよ!」という大ブーイングを背にしつつ言った。もちろん説得力ゼロである。
 ぱちゅりーとて、これだけの数の、自分で餌を集めたこともない子ゆっくりと、長いブ
ランクのあるゆっくりたちがいきなり外に出たらゆっくりできないことはわかっている。
それでも、ぱちゅりーはこの人間たちの言う「ぎゃくたい」が、自分たちを皆殺しにする
のとほぼ同義、生きられるものも死んだ方がマシという扱いを受けることだと理解してお
り、それならばここを出て行った方がいいと思ったのだ。
「うん、おりこうなぱちゅりーはわかっているだろうけど、絶対駄目だね。まず、君はそ
れで納得しても他のお仲間が見ての通り、一度出て行っても戻ってくるに決まっている。
そしてもう一つの理由は、ボクたちがゆっくりをいじめて虐待していたぶり殺すのが大好
きな人間だということさ」
「むきゅぅ……」
 ぱちゅりーは頭がよかった。よすぎた。だから、もうこの時点で自分たちの運命が窮ま
ったことを悟ってしまった。
「ゆっくりできない人間ははやくでてってね!」
「もうこないでね! まりさたちはこのゆっくりプレイスにずっといるからね!」
「ごはんはべつの人間さんにもらうからいいよ!」
「はやくでていかないと、ゆっくりできなくするよ!」
「そうだよ、まりさたち、つよいんだからね!」
 男たちは、軽蔑しきった目でゆっくりたちを眺める。
「おちょーさん、がんばっちぇ!」
「ゆっきゅちやっつけちぇね!」
「れいみゅのいもうところしたにんげんはおちょーしゃんにゆっくりころされてね!」
「ゆっくりしね!」
 男たちは、そんなゆっくりの声など聞こえないかのように顔を合わせて小声で話してい
る。
 やがて、話を止めて、歩いてきた。
「ゆゆっ! でていかないならゆっくりできなくするよ!」
 前に出ていた大人ゆっくりたちが、ぷくぅーっと膨らんで威嚇する。
「ゆ?」
 しかし、その上を、男たちが通り過ぎて行く。大股でまたいでいったのだ。
「ゆぴゃああああ、たちゅけちぇぇぇ!」
 男たちの目当ては後ろに隠れていた子ゆっくりだ。
 子れいむが踏み潰される。
 子まりさが取り上げられた帽子を破り捨てられて泣き喚いているところを蹴飛ばされる。
 子ありすが中身を半分搾り出されて辛うじて生きている状態で放置される。
 子ちぇんが尻尾を踏まれ、すり潰される。
「やべてね! おちびぢゃんをいじめないでね!」
「ゆっぐりじね! ゆっぎりじね!」
「やべろおおおお!」
 親たちが必死に体当たりをするが、男たちはビクともせずに逃げ回る子ゆっくりを余裕
で摘み上げて虐待する。
「うぜえ」
 時々、ぽんぽんと親ゆっくりを軽く蹴飛ばして、子ゆっくりの虐待に専念する。
「やべでええええ! やべでぐだざいぃぃぃぃ!」
「おねがいじまずぅぅぅ、たいぜつなあがぢゃんなんでずぅぅぅ!」
「あがぢゃんがじんだら、ゆっぐぢできま゛ぜんんんん!」
 その内、圧倒的な力の差に、何をやっても子供たちへの虐待を止められぬと理解したゆ
っくりたちは懇願を始める。それが無駄であることまでは理解できない。
「よし、道具使おう」
「ホットプレート出しますね」
 男たちは当然のようにそれには答えずに、持ってきた箱の中を漁り始めた。もちろんさ
らなる虐待のためなのだが、とりあえずは子供への虐待が止んだため、ゆっくりたちは勝
手に自分たちの言葉が通じたのだと思って安堵している。
「ゆああああ、れいぶのおぢびぢゃん、みんな゛じんじゃっだよぉぉぉぉぉ!」
「おちびたち、だいじょーぶなんだぜ?」
「ま、まりしゃはだいじょーぶだけど、ありしゅおねーしゃんがぁぁぁ!」
「ゆ゛……ゆ゛……ゆ゛……」
「ぺーろぺーろしてやるからしっかりするんだぜ! ぺーろぺーろ」
 限界寸前まで中身を搾り出された子ありすの傷口を、それで治ると思って必死にぺーろ
ぺーろする親まりさだが、ひょいと髪の毛を掴んで持ち上げられた。
「はなすんだぜ! まりざは、おちびにぺーろぺーろしてあげてるんだぜ! はなせ、こ
のクズにんげん!」
「うわ、口悪ぃなあ、こいつ」
 男は、そう言いながら、何か思いついたように目を輝かせた。
「はい、おくちあけてねー」
 強引にまりさの口を開けさせて中に手を突っ込む。引きずり出したのは舌だった。
「おー、のびーるのびーる」
「ゆ゛、やべで、はなぜえ、ぺーろぺーろ……して、あげないど」
 青年は両足でまりさの体を上を向かせた状態で固定して、左手で舌を引っ張り上げてい
た。そして右手には何時の間にか、包丁が握られていた。
 すぱっ――。
 あっさりと、まりさの舌は口の外に出ている部分を切り落とされてしまった。
「はい、もういいよ。好きなだけぺーろぺーろしてあげてね」
 舌を投げ捨てると、青年はにっこり微笑んで言った。
「ゆ゛……ゆ゛……ゆわぁあわ」
 まりさは、おそらく、まりさのベロがぁぁぁ、とか、ぺーろぺーろしてあげられないよ
ぉぉぉ、とか言いたいのであろうが、全く声にならない。
「ドスおじいさん、たずげでえええ! だずげでええええええ!」
「いや、だから、さっき話しただろうが」
 男は、なおもおじいさんを呼ぶれいむを十分に熱したホットプレートに乗せて押さえつ
けていた。ゆっくりの足ともいうべき底部がこんがり焼けていく。さらに焼いてカリカリ
に焦がせば、もうゆっくりは跳ねて移動できなくなる。
「やめりょぉぉぉ! おかーしゃんにひどいごとずりゅなあ!」
「ゆっぐちちねぇ! ゆっぐちちねぇ!」
「おお、このれいむのお子さんかい。はっはっはっ、このプレートは特大だから、君たち
が乗る場所もあるぞぉ」
 二匹の子れいむもホットプレートに乗せられてしまう。
「あ、あぢゅぃぃぃぃぃ!」
「ゆびゃあああああ!」
「おぢびぢゃぁぁぁん!」
 大きな大人ゆっくりは幾度か跳ねるとプレートから脱出が可能なので押さえつけている
が、小さな子ゆっくりだとそうすぐには出られないのでしばらく放っておいても大丈夫だ。
「ゆび! ゆびゃ! ゆ゛ゆ゛ゆ゛」
 必死に跳ね回る子れいむの激痛に歪む顔に、一筋、光がさした。もう二跳ねすれば、こ
の熱い黒い場所から出られる。
「はいはい、もっとゆっくりしていってね」
 だが、その目の前に人間の手が出現し、ぴん、と指で弾いて戻してしまう。
「よし、もういいかな」
 親れいむを持ち上げて底を見て、真っ黒に焦げているのを確認すると床に戻す。
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛」
 痛みに泣いてはいるが、絶えず高温に襲われる状態からは脱したためにほっと一息はつ
けているようだ。
「子供ももうよさそうだな」
 子れいむも一匹だけプレートから床に移された。親れいむとある程度の距離があるとこ
ろへと置かれる。
「ゆ゛ぅ……ゆ゛ぅ……ゆ゛ぎゃ!」
 一息つく暇も与えられず、髪の毛が毟り取られる。男の目的は髪ではなくリボンであっ
たがもちろん丁寧にリボンだけ取ってあげるような真似はしない。
「れ、れいみ゛ゅのおリボン、がえじでぇぇぇ!」
「ほら、勝手に取ってこい」
 ぽい、と少し離れた所に放り投げる。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
 跳ねられないためずりずりと悲しいほどの低速度で進む。
「ゆ゛あ゛あ゛あ゛、おがあざぁぁぁん! れいびゅのおリボンどっぢええええ!」
「ゆ゛ゆ゛、おちびぢゃん、まっででね」
 親れいむは、自分もこんがりと底部が焼けているにも関わらず、子供のリボンを取ろう
と必死に這いずって行く。
「こっちは食っちゃうか」
 もう一匹の子れいむはというと、底部が少し焦げたところで引っくり返されて頭頂部を
焼かれていた。焼いたばかりの底部は熱くて触れないので、少し冷めたところで上から押
して少し潰して平べったくする。
「ゆびゅ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」
 生きてはいるようだが、もう意識らしい意識は残っていないだろう。
「はふ、はふ、……んー、カリカリに焼けたゆっくりの皮はおいしいなあ」
「や、やべぢぇぇぇ! いぼうどをたべにゃいでぇぇぇ!」
「妹の心配より自分のリボンの心配しろよ」
「やべりょぉぉぉ! れいびゅのいぼうとをたべりゅなぁぁぁ!」
「うっさいなあ」
 ぱん、とあまりにも呆気なく、子れいむは叩き潰された。
「ゆ゛っ! おリボン、おぢびぢゃん、おリボンだよ!」
 しばらくすると、口に小さなリボンをくわえた親れいむがずーりずーりと帰ってきた。
 男は既に別の親子ゆっくりをプレートで焼いていて、そちらには気付きもしない。
「お、おぢびぢゃん! どこぉ! おリボン、おリボンとっでぎたよぉぉぉ!」
「ん、ああ、さっきのれいむか」
 ようやく親れいむの叫びを聞いて存在に気付いた。
「お、おぢびぢゃん、れいぶのおぢびぢゃんはぁぁぁ!」
「ああ、そこで潰れてる。もう一匹の方は食っちゃった」
「……ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
 れいむは、口からぽとりとリボンを落として泣き叫んだ。人間は、それに関心を失って
いるらしく、こんがりと焼けたまりさを床に置き、その子供の子まりさ三匹の帽子を、
「ほーれ、とってこーい」
 と、放り投げた。
「ま、まりちゃのおぼうち!」
 子まりさたちは当然それを取りに行こうとするが、人間の指に阻まれてしまう。
「お、おちょーしゃん!」
「ゆっ! まっででね、すぐにとってきであげるね」
 親まりさは、ずーりずーりと子供たちの帽子へ向かって這いずる。
 子まりさたちは、その間にプレートに口を押し当てるように乗せられた。悲鳴も上げら
れない。声が出せなくなったところでさらに押され、顔を下にして押し付けられる。
「……っ゛……!」
 しばらく焼いてひっくり返すと、焼けて目や口が潰れた子まりさの顔が現れた。
「あ、子ゆっくり焼いてるんですか」
「一つくださいよ」
 若い男と青年がやってきた。
「ああ、ちょうど三つあるよ」
 一匹ずつ子まりさを手に取り、まだぴくぴくと動いているそれをむーしゃむーしゃと食
べる。
「おぢびだち、おぼうしとってぎたよ……まりざのおちびだちは?」
「ああ、食べちゃった」
「美味しかったよ」
「しあわせーだったよ、ゆっくりさせてくれてありがとう」
 絶望に染まった親まりさの顔を見もせずに、男たちはさらなる獲物を求める。
「ドスおじいざん、だずげでええええ!」
「もうわがまま言いませんがらぁぁぁ!」
「ドスおじいしゃ~ん!」
「やれやれ、もういないって言ってんのに」
 なおもおじいさんへ助けを求めるゆっくりたち。
「ゆ……ゆっ! まりしゃのせいだよ!」
 突然、一匹の子れいむが子まりさに体当たりした。
「ゆぴゃ、にゃ、にゃにするの、れいみゅ!」
 当然、怒る子まりさ。
「まりしゃが、まりしゃがドスおじいしゃんにゆっくちちね、とか言ったから、ドスおじ
いしゃんがちんじゃったんだよ!」
 だが、そう言われると、ゆ゛っ、と短く呻いて俯いてしまった。
「そうだよ、まりしゃのせいだよ!」
「まりしゃのせいだったんだにぇ!」
「まりしゃのせいだったんだね、わかったよー」
「まりしゃのばきゃ! ちんじゃえ!」
「ゆっくちちね! このばかまりしゃ!」
「ゆっくちちね! ゆっくちちね!」
 ぷるぷると震えて泣いている子まりさをまわりの子ゆっくりが一斉に容赦なく責める。
 男たちが一体何事かと興味深そうに眺めていると、例の頭のいいぱちゅりーがぽよんぽ
よんと跳ねてきた。
「やめなさい、そんなことあるわけないでしょう。ゆっくりにしねって言われて死んでた
ら、人間さんは一人もいなくなってるわ」
 賢くみんなに一目置かれているぱちゅりーの言葉に、子ゆっくりたちは逆らえない。
「えーっとさ、よくわかんないんだけど、つまりそのまりさが、おじいさんにゆっくりし
ね、って言ったってこと?」
「むきゅ、そうよ、ごはんがもらえなくておなかが減った時にね。でも、もうゆっくりは
んせいして……」
「ひっでえなあ、おい!」
 ぱちゅりーの言葉が終わらぬうちに、男が叫んだ。
「うーん、確かにひどいな」
「やっぱりゆっくりっていうのは恩とかの概念自体がないんですかね」
 男たちは、恩のあるおじいさんにそんなことを言うとは、なんてひどいゆっくりだ、と
言い合う。
「むきゅ、やめてね。もうゆっくりはんせいしてるし、こどもの言ったことよ」
「いやー、そんなひどいゆっくりは是非ともおれたちの仲間にしよう」
「そうだな、仲間にしよう」
 男たちは、その子まりさを摘み上げると、ふわふわのクッションの上に乗せて、さらに
その目の前にチョコレートを置いた。
「まりささん、食ってください」
「ゆ? ゆ? ゆ?」
 子まりさはわけがわからず男たちの顔を見ている。
「ゆゆっ! まりしゃだけずりゅいよ!」
 さっき子まりさに体当たりした子れいむが叫んでぽよぽよと跳ねてくる。
「れいむにもちょーらいね!」
「うるせえ、このくそれいむがぁ!」
 男の足が、子れいむを踏みつける。絶妙の力加減で、ぷち、という軽い感触がした瞬間
に足を上げると、そこには、皮が破れ餡子が飛び出したもののなんとか生きている子れい
むがいた。
「お前ごときがおれたちの仲間のまりささんにタメ口きくんじゃねえ!」
「おう、とんでもねえやつだ。よし、こうしてやる」
 潰れかけて呻いている子れいむを別の男が摘み上げてホットプレートに乗せる。
 ジュッ――。
「あぢゅいぃぃぃぃぃ! いぢゃいぃぃぃぃ!」
 潰れかけて跳ねられない子れいむは、そのままじわじわと焼かれていく。
「や、やべでえええ! れいぶのおちびぢゃんがぁぁぁ!」
 子れいむの親らしいれいむがプレートに向かって跳ねるが、横から思い切り蹴飛ばされ
て壁に激突する。
「や、やめちぇあげちぇね! あのれいみゅはともだちにゃんだよ!」
 先ほど体当たりされたというのに健気にも子まりさは男たちに子れいむの助命を願った。
「ああ~ん? まりささんらしくもねえことを」
「ひょっとして、まりささん、おれたちの仲間に相応しくないんじゃね?」
「……それなら、ゆっくりできなくすることになるなあ」
「おめめに針を刺してやるか」
「帽子を燃やしちゃおうぜ」
「髪も燃やしちまえ」
「皮をはいでタバスコは?」
「こいつの親にもやろうぜ」
「妹とかもいるだろ」
 男たちは口々にゆっくりできないことを言い出す。それが自分だけならばともかく家族
にも矛先が向くに及んで、子まりさは折れた。
「やめちぇね! おかあしゃんたちはゆっきゅちさせちぇね!」
「おお、まりささんは家族思いだなあ」
「マフィアもファミリーは大事にしたりするよね」
「そうだなあ、それじゃ……」
 男が子まりさに顔を近づけてボソボソと何かを話す。
「ゆ゛っ! そんなこちょ、いえにゃいよ!」
 子まりさは全身を蒼白にして叫ぶ。
「いやいや、大丈夫だよ。それであいつらが怒ってもおれたちが守ってやるから。なんと
いっても、おれたちゃ仲間だもんな」
「そうそう、あいつらに押さえつけられて言えなかった本音を素直に言っちゃいなよ」
「そんなこちょ、まりしゃおもってにゃいよ!」
「……つまり、まりささんはおれたちの仲間じゃないってことか」
「こいつの家族探すか」
「ま、まっちぇ! 言うから、やめちぇぇぇぇぇ!」
 子まりさが涙ぐみながら言うと、男たちは満足そうに頷いた。
「よーし、饅頭ども注目!」
 と、男が言うまでもなく、なにやらごにょごにょとやってる子まりさと男たちには全て
のゆっくりが注目していた。
「今から、このまりささんがお前らクソ饅頭どもに抑圧されて言えなかった本音を言うか
らよーくあるんだかねえんだかわかんねえ耳かっぽじって聞け!」
「……ド、ド、ド……」
 子まりさは、泣きながら声を搾り出す。
「ド、ドスおじいしゃんはゆっくちちね」
 一瞬だけ、静寂が辺りを包んだ。
「まだぞんなごと言うのぉぉぉぉぉ!」
「まりしゃがちね! そんなこというまりしゃがゆっくちちね!」
「ゆっくりはんせいしたかと思ったら、ぜんぜんはんせいしてないじゃないのぉ!とかい
はじゃないわね!」
 もちろん、子まりさへの罵倒でそれはすぐに破られた。
「まりささん! もう死んでるそうですよ!」
「……」
 男が、合の手を入れるように言うと、それに子まりさは答えずに俯いた。
「そんなこというおちびちゃんは、もううちの子じゃないよ!」
「そうだよ、そんなおねーしゃんはおねーしゃんじゃないよ!」
「おねーしゃんのばきゃ! ちんじゃえ!」
 轟々と渦巻く罵倒の中にそんな声が混じっていた。
「あいつらが家族か」
「よし、捕まえてくるわ」
「まっちぇ! 言うからやめちぇ! やめちぇぇぇ!」
「うーん、まあ、まりささんがそう言うなら」
 数歩前に出ていた男が、その足を戻す。
「まりささん! もう死んでるそうですよ!」
 仕切り直しということか、先ほどの男が、もう一度同じことを言った。
「じゃ……じゃ……じゃ……」
 子まりさは、この期に及んで、なんとか勘弁してもらえないかと男たちを見上げる。も
ちろん男たちの顔には同情の色など一切無しだ。それどころか子まりさがいつまでも言わ
ないのを威圧するように、子まりさの家族たちをじっと見つめている。
「じゃ……じゃまーみろ」
「声小さい」
「じゃ、じゃまーみろ!」
 子まりさが大声を上げたので、何事かと一瞬罵倒が止む。
「ド、ドスじじぃめ……ゆっくりちんで、じゃまーみろ!」
 今度の静寂は長かった。あまりにもありえない……この子まりさがそういうことを言い
かねないと理解しているにも関わらず、それでもそこまでひどいことは言わないだろうと
思っていたことによる隙間。
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」
「ゆ゛あ゛あ゛あ゛! ゆっぐりじねぇ! このゲスまりさぁぁぁ!」
「ちね! ちね! ちねぇぇぇ!」
 声量こそ変わらぬものの、込められた憎悪が倍増した悪罵に子まりさは目を閉じ俯いて
耐えている。
「もうがまんでぎないよ! まりざがゆっぐりでぎなくじてやるっ!」
 ぽよんぽよんと跳ねてきたのは、子まりさの親のまりさだった。自分の子供の度重なる
暴言にとうとう自らの手で始末をつけんと決意したのだ。
「おちびちゃんをころすのはいけないことだけど、こんかいはしょうがないね!」
「あのまりさはあまりにもゲスすぎるよ!」
「やっちゃえ! ゆっくちやっちゃえぇ!」
「むきゅ、まって、きっとまりさは無理矢理言わ」
 そこまで言って、ぱちゅりーは口を塞がれてしまった。
「はーい、おりこうなぱちゅりーはいらんこと言いそうだからここに入っててね」
 口を塞いで抱えた男が、別の男が開いた透明の箱にぱちゅりーを入れる。
「これは防音効果があるから、何を言っても表には聞こえないよ」
 そう言って蓋を閉める。最後に「むきゅ」とだけ聞こえた。その後に何か続けているら
しく口を動かしているが、その声は透明の壁を抜けることはない。
「お、おきゃーしゃん……」
「おまえなんかに、おかあさんってよばれたくないよ! ゆっくりしね!」
 親まりさに体当たりされて、子まりさがふっ飛ぶ。
「調子に乗んなよ、デカブツ」
「おお、おめえなんかにまりささんがやられるかよ」
「散々世話になった人が死んだのにざまーみろと言ってのける! まりささんは悪のカリ
スマ(笑)だぜ!」
 男たちは周りで好き勝手言いながらそれを見物している。
 何かあっても守ると言っておきながら、いざとなると男たちは「まりささんならあの程
度の相手にはやられないっしょ、ウフフ」と言って全く助けないのである。
「ゆっくりしね ゆっぐりじねぇぇぇ!」
「ゆ゛びっ、や、やめぢぇ、おきゃーしゃ、やめぢぇ、ゆるちちぇ」
「ゆっくちちね! ゆっくちちね!」
 親まりさが子まりさをいたぶるのを周りで妹たちが囃し立てる。
「ゆ゛……る……じ、で……」
「とどめだよ!」
 息も絶え絶えな子まりさの上に大きくジャンプした親まりさが落ちてきた。その衝撃に
子まりさの目玉は二つとも飛び出し、餡子も大量に噴出した。皮と、僅かな餡子しか残っ
ていない子まりさは、必死に餡子を舐めようと舌を伸ばす。
「ゆっくちちね!」
 その舌を、妹たちが代わる代わる押し潰した。舌先が潰れてしまった子まりさは、絶望
しきった顔で、最期の言葉を呟いた。
「も゛っ……ぢょ、ゆっ、ぐり、ちた」
「ゆっくちちね!」
 その言葉も言い終える前に、妹の攻撃によって阻まれてしまった。
「もっちょゆっくちちたかったなんて、ずーずーしいよ!」
「そうぢゃよ! くずのまりしゃはさっさとちんでね!」
 動かなくなった子まりさに妹たちはなおも体当たりを仕掛けている。
「あーあ、やられちゃった。ま、当たり前だけど」
「うーん、そろそろ一気にやっちゃう? なんかいざやってみると、ちまちま虐待しちゃ
ってるし」
「これだけいるんだから、大味にばーっとやっちまおうか」
「そうだな!」
 なんだかゆっくりできない話をしている男たちからできるだけ離れようと壁際に寄り添
うゆっくりたち、中には扉に取り付いて押しているものもいるが、施錠されたそれは当然
ビクともしない。
「それじゃ、改めて……」
「いきますか」
「「「ヒャアッ! 虐待だあああああっ!」」」
「「「ゆ゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!」」」

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最終更新:2011年07月30日 02:05
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