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かいぶつのなく頃に~讐たり散らし編~(後編)

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かいぶつのなく頃に~讐たり散らし編~(後編) ◆GOn9rNo1ts




意識が鮮明だった。
意志が明確だった。
『一発勝負』の舞台で、私は気が昂ぶっていた。


蒼い炎が、ゆらりと揺れる。


簡単な話だ。
先程の放送により、生き残っているのは残り24……梨花ちゃんを除いて23人。
そのうち素性が分かっていないのは『水銀燈』『御坂美琴』『佐山・御言』『新庄・運切』『ブレンヒルト・シルト』『ロベルタ』『ゼロ』『小鳥遊宗太』の八人。
目の前にいるのは男。外国人。ならば残る可能性は『ゼロ』だ。
ここで思い出す。あの男はなんと言った?

『本名もあるっちゃあるんだが』

そして、当ててみろと言った。
あの顔を思い出せ。全てを見通せ。恐怖で真実を見逃すな『名探偵』レナ。
残忍な顔の何処かに、悪戯を仕掛ける少年の面影がなかったか。
死の紅い隈取りの縁に、もしかしたら当ててくるかな、と僅かな期待を孕ませていなかったか。
『俺はいつだって本気だ』と。言っていたのは真実ではないのか。
つまり『本名はちゃんと名簿に記載されている』
信じる。私は私の直感を信じる。かいぶつのフェアプレイ精神を、信じる。


ならば本名はゼロ。あり得ない話ではない。
しかし、彼はこうも言った。

『今は『レイルトレイサー(線路の影をなぞる者)』と名乗らせて貰おうか。

ずっと片隅で疑問に思っていたことがあった。
『どうして私たちは意思疎通が出来るのだろう』と。
明らかに外人な人たちが、更にはチョッパー君でさえ『流暢な日本語』を喋っている。
これは、おかしい。明らかに、変だ。
そんなことを話し合ってもどうにもならないのは分かっていたのでわざわざ話はしなかったが、私は代わりに仮説を立てた。
すなわち、

『私たちは主催者側の何らかの仕掛けによって意思疎通を可能としている』

また、自己紹介やその他の会話時を顧みると、こうも言える。

『ただし、名前などの固有名詞は私たちの聞き取れる読み方であれば変換されることはない』

ならば。
あの男が『レイルトレイサー』と発音したのはどうも引っかかる。
レイルトレイサー。ガチガチの英語だ。それくらい私だって分かる。
つまり『彼』は少なくとも英語圏の人間であるといえる。
異世界の言葉を翻訳したとするならば、それは私の耳に『日本語』となって届くはずだ。
しかし、彼の言葉は『レイルトレイサー』という英語になって届く。
つまり彼の言葉は『英語を日本語に変換し、固有名詞である『レイルトレイサー』はそのままとなって』私の耳に届いた。

ここで『彼』が『ゼロ』であると仮定しよう。
彼には名簿に記載された本名があると類推される。
そして、少なくとも『英語圏出身で本名がゼロというのはあり得ない』
ゼロ。それはコードネームか何かだと思われる。
名字も名前もなく『ゼロ』が本名というのは些かおかしい。
そして、もしもゼロが本名ではないとしたら『彼』は『本名はあるが名簿にはゼロと記載されている。そして『レイルトレイサー』と名乗っている』ことになる。
おかしい。あり得ないとは言わないが、少々無理を感じる。

『彼は英語圏の人間である』
『彼の本名はちゃんと名簿に記載されている』
『彼の本名はゼロである』


この三つが上手く噛み合わない。


『彼の本名は名簿に記載されている』
『彼の本名はゼロである』
ならば『彼は英語圏の人間である』とは言えない。

『彼は英語圏の人間である』
『彼の本名は名簿に記載されている』
ならば『彼の本名はゼロである』とは言えない。

『彼は英語圏の人間である』
『彼の本名はゼロである』
ならば『本名はちゃんと名簿に記載されている』とは言えない。

結論。暴論かもしれないが、この男はゼロではない。
しかし、他の誰なのかも分からない。手詰まりだ。



しかし。



ここであの少年の情報が蘇る。


完全に又聞き。ならば。


「『とっても強い赤髪』のクレア・スタンフィールドさん。
私のお話、少しだけ聞いてくれませんか?」


レッドの情報が誤っていたとしたら?
『彼女』ではなく『彼』で『安全』ではなく『危険』なのだとしたら?
『とても強い』『赤髪』この情報は誤りようがない。
しかし、『性別』に関してはレッドの早とちり、『名前』だけで判断したのだとしたら?
『安全』だと思っていた人物が何らかの要因……例えば『信頼し合っていたフィーロ・プロシェンツォの死』によってゲームに乗ったとしたら?
『当てたら食わないでやる』とさえ言った彼の自信が『己の名前が女っぽい』という何とも安っぽいものだとしたら?

澄み渡る。冴える。頭の中で不純物が取り除かれ、不思議なくらいに思考が進む。
分かっている。これら全ては推理にもならない推論の寄せ集め。
全く美しくない『かもしれない』の集合体。
それでも。
それでも、私ははっきりと答えを言った。
馬鹿だと思うほど自信ありげに。余裕綽々と。
あの目を見て。飲み込まれそうになりながら、視線を逸らさずに。
覚悟を。決意を。見せつけるように。
完璧に賭けだった。
そして賭けには……勝利した。




「どこで聞いた」






商品に貰ったのは鉛玉だった。






気付く間もなく右足を撃ち抜かれ、無様に倒れ込む。
土に顔面がへばりついて、口には土の味が広がった。
目と舌だけは死守する。これは、私の最後の武器だから。
遅れてやってくるのは、苦痛。心を絶望と諦念が埋め尽くして行く。
痛い。泣き叫びたい。死ぬほど苦しい。
どうして私はまだ生きているんだろう。いっそ殺して。

(それが、どうした)

古手梨花はもう苦しむことも悲しむことも出来ない。
死んだ人間は、何も感じない。何も想えない。
私はどうだ。まだ生きている。少なくとも四体満足じゃないか。
何が絶望だ。何が苦しみだ。何が恐怖だ。
こんな矮小な己に勝たずして、どうやって強大な敵に立ち向かうことが出来る。
息を吸う。吐く。土を吐く。顔を上げる。目を合わせる。
誰にだって出来る簡単な作業だ。簡単すぎて困ってしまう。
チョッパー君、ウルフウッドさんに比べて、私の『戦い』はなんと単純なことだろう!
苦しみも混乱も渇望も全て全て仮面の下に押し込んで、もう一度、笑う。

「私の話を聞いてくださったら、その後にお話しします」
「ガキの遊びに付き合う気はないんだ」

もう片方の足からも、幾つもの穴が開いて行く。
血が自分の身体からドバドバ出て、何故かまた、笑いが出た。
こんな皮袋に信じられないくらい沢山のモノが溜まっていたなんて。
どうでもいい。足の一本や二本くれてやる。
がたがた震えるだけの棒が付いていても、仕方ない。
逃走手段なんか必要ない。好きなだけ持って行け。


「貴方はこの殺し合いをどう思いますか?」


のどまで出かかった悲鳴の代わりに、か細い問いを。無理矢理話を進めていく。
次のステップ。死なずにここまで来れたことが既に奇跡と言っても良いかもしれない。

だけど、まだだ。

こんなものじゃない。

油断するな、竜宮レナ。闘いはまだまだこれからだ。

「非常に困ってるよ。おかげで予定が滅茶苦茶だ」

彼はそう言いながら、こちらに歩みを進めてくる。
分かる。彼は先程までとは違い、こちらに興味を抱きつつある。
いつでも殺せるのに、今はまだ殺さない。
つまり、私には未だ価値があると思われていると言うこと。
活路は開いた。ただの獲物だと思われるよりは百万倍マシだ。

「仕事柄、拷問の仕方は色々知ってるもんでな。
吐く気がないんなら、少しばかり痛い目を見て貰うさ」

「良かった」

つまり、それは。

「私はまだ、貴方とお話が出来るんですね。
少なくとも、拷問が終わるまでは」

「……死ぬほど痛いぞ?」

「私が恐いのは死ぬこと。想いを届けられないことです。
生きていればなんとだってなる。そうでしょう?」

「その根性は敬服に値するな」

だが、と。

一本の指が右足の穴に思いっきり突っ込ま痛いれた。
中を痛い掻き混ぜら痛いれる。ぐ痛いじゅぐ痛いじゅと痛い、血痛い管も痛い肉も痛い骨も等し痛いくミック痛いスされる。
呼痛い吸が、乱れ痛いる。汗痛いが、止痛いまら痛いない。こ痛いの絶叫は、痛い私の痛い口か痛いら出て痛いいる痛いのだろう痛いか。

「どうだ?たったこれだけだ。たったこれだけでお前は息もまともに付くことが出来ない。
腕の骨を彫刻にされたいか?顔の皮を少しずつ丁寧にはがされたいか?
お話が出来る?舐めるな。本当の痛みを知らないガキが強がるもんじゃない。
さあ、吐け」

息を吐こうとして、げぼりと汚い音が出た。
ひゅーひゅー。必死に酸素を取り入れる。

「……貴方は」

半ば、反射的に言う。
頭が上手く動かない。今私は本当に言葉を発しているのか。

「フィーロ・プロシェンツォとどういう関係だったんですか?」

「……幼なじみだった。悪い奴じゃなかった。童顔をいつでも気にしていた。
…………少なくとも、こんなところで死んで良い奴じゃなかった」

ああ、意思疎通が出来ている。
それが分かれば、十分だ。
話を慎重に、慎重にスライドさせる。

「貴方は彼の仇を、取ろうとは思わないんですか」

腹に強烈な一撃。嘔吐感が込み上げる。
頭が地面に叩き付けられて、意識が飛びそうになる。
だけど、指がおかしな方向にねじ曲げられた痛みによって、嫌が応でも覚醒させられる。

「取るさ。全員殺せばフィーロを殺した奴も死ぬ。
もしそいつがもう死んでいたとしても、そいつを殺し仇討ちを邪魔した奴は殺せる」

何処に問題がある?と言った彼は。
狂気と凶相の裏側に。

「貴方は、本当にそんなことを望んでいるんですか?」

一抹の、やりきれなさを。
親友を助けられなかった悔恨を。
闇と光の狭間にある悲痛を。
感じては、いなかったか。

「貴方だって本当は人殺しをしたくないんじゃないですか?
でも、どうしようもなくて、だから仕方なく……」

「黙れ」

何の予兆もなく、右耳が抉られた。
身体と離ればなれになったそれは、ぼちょりと呆気なく地面に落ちて。
新たな苦痛が、私を蝕む。身体の一部の、消失。
分かりやすい喪失感が、こころを絶望に貶めていく。


負けるか。


負けて、たまるか。


「貴様に俺の何が分かる?この世界の中心たる俺を理解できると?。
お前ら全員を殺してギラーミンとか言うのも殺して帰る。
お前らはただの切符だ。待たせてる奴らのための、な」

貴様らの命など、その程度のものだ。
そう言った彼は、でも。
辛そうな顔を隠していると、思ってしまったから。
精一杯の強がりを『かいぶつ』の仮面の下に隠した彼を。
可哀想だと、感じてしまったから。

「貴方はそんなことを思っていない」

だから、突きつける。

「貴方はフィーロ・プロシェンツォの死を悲しむ、優しい『ひと』だ」

「私を、皆を」




「『仲間』を傷つけることなんて、望んでいない」




ハハハハハハハハハハと。
彼は笑っていた。
こちらを嘲笑するように。
可笑しいジョークを聞いてしまったというように。
腹を抱えて、見せつけるように。

「仲間、か。お前、面白いな」

彼の足が私の頭を踏みつけた。

「何人も殺してきた俺が」

ぐりぐりと、潰さないように手加減をしながら、私の右半分を土で装飾していく。

「お前の仲間、リカとやらを殺した俺が」

右耳が『あった』所を地面に擦りつけられ、頭がおかしくなりそうだ。

「お前達の仲間、か」

正しく『目の前』に、靴のつま先が見えた。

「嘘をつくのも大概にしろ」

閉じた瞳から血の涙が流れていく。

「お前はそんなこと、思っちゃいない」

サッカーボールのように身体を蹴り飛ばされる。

「稀代のペテン師にでもなったつもりか?」

空に舞う私は、どこが上でどこが下なのかも分からない。

「お前は俺を殺したいほど憎んでいる」

落ちた先は砂利だらけで、全身に痛みが食い込んだ。

「この俺が、お前の殺気に気付かないとでも思ったのか?」


こころに響く声は、なお一層酷くなっていた。


【殺したい殺したい殺したい殺したい】

【殴り殺したい斬り殺したい叩き殺したい括り殺したい焼き殺したい刺し殺したい】

【古手梨花はこいつが殺した。自己申告も確かに聞いた】

【ならば仲間の仇を取れ。死んでも殺せ。それが最高の弔いとなろう】

【叔母を殺した聡史のように、これはお前に課せられた使命なんだ】

【仲間のために戦え!怖じ気づいたのか?お前にとって仲間とはその程度の存在だったのか?】

【決断しろ、殺せ、竜宮レナ!これは『敵』だ!憎むべき呪うべき『仲間』を殺した存在だ!】



「貴方は私です」



目の前の『彼』に、中にいる『彼女』に、静かに言う。
『彼女』は、私だった。私の中の闇だった。
深層意識と呼ばれるものなのか、そんなことは分からないけれど。
『仲間を信じられない私』『ニコラス・D・ウルフウッドを憎む私』『目の前の仇を殺したがる私』
そんな己の醜さを信じたくなくて、私は『彼女』になっていたのだ。

【私は、目の前の男を殺したい】

(うん、その気持ちも『私』だよ。偽り無い私の本心だよ)

(でも、違う。それは間違っている)

(だって)

「殺すのが一番の方法だって思いこんで」

「一心不乱に実行して行動して、自分を誤魔化して」

「自分のしたことを必死に正当化しようとして」

「結局、幸せになんて……なれなかった」


口をついて出る言葉の意味は、正直言って自分でも良く分からなかった。
でも、何故か頬から一滴の雫が垂れた。私は、少し泣いた。
懺悔にも贖罪にも似た告白は、確かに自分のものだと理解する。
私が殺人を犯して、皆を信じずに、暴走して、死ぬ世界。
有るはずのない世界を、知るはずのない未来、もしくは過去を。
妄想の産物だと笑うなら笑うが良い。知恵の足りぬ小娘の戯れ言だと嘲るなら嘲るが良い。
遂に狂ってしまったか、と。思うなら勝手に思っていろ。
私は、忘れない。私は、繰り返さない。
悲劇を。惨劇を。私の、過ちを。
それが、私の幸せを願っただろう梨花ちゃんに対する最大の慶弔だ。
死者の気持ちなんて分からないけれど。
私も逆の立場なら、安易な復讐よりも困難な赦しを、望んだと思うから。
仲間を人殺しにしたいなんて思うはずがないと、信じているから。


「俺はお前とは違う」


突き放すように返された言葉。


「俺は世界の中心だ。この世界は俺を中心に回っている」

穴だらけの両足を踏みにじられる。

「俺が間違っている?」

悲鳴を上げた喉を、両手で締め上げる。

「人を殺すのはいけないことです?」

ぎりぎりと音がした。死ぬ、と思った瞬間、解放される。

「思い上がりもいい加減にしろよ、ちっぽけな餌が」

恥も外聞もなく、ぜいぜいと思い切り息を吸う。それを見て、ハハハと彼はまた笑う。

「俺はお前達を殺すのに、何の感情も抱かない『かいぶつ』だ」


最早、拷問でも何でもなかった。
ただの、生意気な子供の当たり散らしだ。
自分の言うことを聞かない相手を、暴力で服従させようとしているだけだ。



「貴方は、『仲間』です」



馬鹿にするように笑う彼に。
とても苦しそうに笑う彼に。
私も、笑って応えた。

ちゃんと出来たか分からないけど。
ひゅうひゅうと、肺は未だに酸素を求め続けているけれど。
顔は痛みで醜く歪んでしまっているかもしれないけれど。
涙でぐしゃぐしゃになっているかもしれないけれど。
笑い返す。目と目を合わせて。


「何度でも言いましょう」


笑みを止め全くの無表情を貼り付けた彼に、届ける言葉。
沈黙の奥に苦渋を敷き詰めた彼に、贈る言葉。
恨み、憎しみ、負を凝縮させた呪いではなく。
祝いを。ただひたすらの祝辞を。
戻ってこれるのだと。
やり直せるのだと。


「貴方は私の、私達の仲間です」

私は、思ったのだ。

「私達と何も変わらない」

戦うべきは目前の『仲間』じゃない。

「『ギラーミンに連れてこられた参加者』です」

何処かで私達を嘲笑っている主催者だ。

「貴方はただ、間違えてしまっただけなんです」

殺人という間違いを、私はどうして一方的に裁けようか。

「強すぎるが故に」

力こそが正義となり、絶望に覆われたこの世界で。

「独りだったが故に」

頼れる仲間がいなかったならば。

「道を踏み外してしまった」

私だって、どうなっていたのか分からないのだから。

「優しい人です」





「フィーロに関する情報を、吐け」





殺気が私を包み込む。肌が総立ち、動かない足がまた、震え出す。
今までにない激情は。彼の『本気』の強がりは。
もう聞きたくない、と喚いているようで。
消えてくれ、と泣いているようで。
我が儘を言う駄々っ子のように。
彼は話を打ち切ろうとする。
彼は私を撃ち切ろうとする。

「ギラーミンに従って殺し続けても、未来はありません」

でも、止まらない。

「……三つ数える。その間に吐け」

今更、止まってなるものか。


「私の貴方への恨みは消えません。皆の恨みも消えないでしょう」


死は、弱い私達を押し潰すほど、優しい人を狂わすほど巨大だ。
小さな胸に入りきらないほど、強大な感情を植え付ける。


「一つ」


でも、それに囚われては誰も報われない。
憎しみの螺旋階段を降りていけば、待っているのは絶望なのだから。


「だけど、私は貴方を赦しましょう。何者ものの悪意から、私が貴方を守りましょう」


「……二つ」


私は弱い『私』と闘っている。憎しみに餓え、殺意を奔らせる私と、闘っている。
私の信じる幸せを目指して。これ以上、誰一人欠けることない未来を夢見て。
負の連鎖を止めるために、これが、今の私に出来る最適解。


「お願いです」


逃げることは、もうしない。
私は、どうしようもない運命に、立ち向かう。
復讐という名の袋小路から、抜け出していく。



だから、貴方も。



「…………三つ」



「――――私を、」





伸ばした、この両手を。



銃を捨てて、掴み取って。





私と一緒に、いきましょう。








「――――信じて」







何処かで、ひぐらしがないていた。



『もっともよい復讐の方法は、自分まで同じような行為をしないことだ』



◇ ◇ ◇



「そうですか」



自分でも驚くほど、静かに応えたと思う。



「リヴィオ?」








なるほど、これが本当の憎しみか。








俺には何かが足りないと思っていた。
ラズロと同じ場所で始めても、空虚さが付きまとい。
仇と出会って殺し合っても、満足のいく結果を出せずに。
同じ志向で集まった烏合の衆未満の中でも、何処か置いて行かれたように感じて。
病院での戦いでも、戦い尽くしたとは言い難い物足りなさを感じて。

やっと分かった。
俺は今までラズロに頼りすぎていたんだ。
戦いだけじゃない。技術だけじゃない。

殺意を。憎しみを。狂気を。衝動を。

それらは全て『あいつ』のものだと勝手に錯覚して。
俺は汚いものから、無意識に目を逸らしていたのだ。
馬鹿じゃないのか。どうして気付かなかったんだろう。


欠けていたピースが、嵌る。


「やっと気づきやがったか、おっせーんだよチンカス野郎」


ラズロは『俺』だ。

『俺』はラズロだ。

多重人格?目を背けるな。理屈をこねるな。
俺は『俺』だ。それ以上でも以下でもない。
『ラズロ』も『リヴィオ』も何もかも全てを含めての『俺』だ。

『いつか帰ってくる』

何を言っていたんだ俺は。
それこそが弱さだ。それこそが甘えだ。



『ラズロ(俺)』は最初の最初から、ここにいるじゃないか。



「お前……誰や?」

「リヴィオですよ。貴方のよく知る泣き虫リヴィオですよ」

「ラズロだよ。『GUNG-HO-GUNS』の11、ラズロ・ザ・トライパニッシャー・オブ・デスだよ」


すまないな、ラズロ。

良いってことよ、チンカス。

これからは、一緒に背負っていこう。

なにいっちょ前の顔してやがる。

細かいことはどうでもいいさ、それじゃあまずは……

ああ、まずは。



「「マスターを殺したお前を、殺す」」



孤児院は俺の居場所じゃなかった。
ミカエルの眼が、マスターCが俺の唯一の居場所だった。
初めてだった。人殺ししか能がない『俺』を、マスターは初めて必要だと言ってくれた。

『いいか?障害になるものの人間性 思想 立場 一切考えるな 』

すいません、マスター。
俺は目の前の障害をただ、一の敵だとは思えない。
彼は間違いなく俺の恩人だった。
だからこそ、許せない。
だからこそ、憎しみを止められない。
身内?身内だって?
マスターを殺した貴様がそれを言うのか!
我らを裏切った貴様が俺にそう宣うのか!


「俺達を生涯孤独に戻したお前を」

「マスターを殺しておいて、のうのうと俺達を生かすお前を」

「「殺す」」

「お願いですから」

「一瞬で終わらせてくれるなよ?」



マスター。マスターC。
今から貴方に捧げましょう。
俺たちの全てを尽くした最高の闘争を。
貴方に頂いた殺戮技術の数々を。



「「俺たちのマスターを裏切った罪を背負って、苦しみながら死んでいけ」」





もしも。

もしもリヴィオ・ザ・ダブルファングが呼び出された時間軸がこうでなければ。

もしも彼が『ウルフウッドがマスターCを撃破した時』よりも先に。

もしも彼が『マスターCがリヴィオ諸共ウルフウッドを殺害しようとした時』よりも後に。

呼び出されていたならば、こうはならなかっただろう。
リヴィオは涙と共に再起し、力強い仲間となり得たかもしれない。
しかし、そうはならなかった。
人生の恩人とも言えるマスターCを殺した相手からの、慈悲。
それは何よりもリヴィオを、その奥のラズロを苦しめ、傷つけた。
その結果が、この悲劇。
もしくは、誰かにとっては――――喜劇。



『復讐という料理は、冷めてから食ったほうがうまい』



◇ ◇ ◇



俺の目の前で。










「――――こんな良い女を振るのは、はじめてだ」










レナが、■んだ。


頭にぱーんって穴が開いて。


血が上から下までドバドバ出て。


レナは、真っ赤になりながら、笑っていた。


最期まで、笑っていた。









「――――――――――ランブル!!!」









■れ、俺どう■ちゃっ■んだ■う。


目の■にミ■チュ■な木が■山あっ■。


下■誰か■い■。■故か■ても■かつ■た。


あ■、■に浮■ぶこ■は、誰■■だっ■だ■う?


■■■フィ■■■■■■■■■■ップ■■■■■ラ■■■■
■■ジ■■■■ロ■■■■ミ■■■■■■ビ■■■■ル■■
■■■■■ド■■■リ■■■■■ダ■■■■■■レ■■■■
■R■レ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ルルク


何■大■なこ■を忘■てい■よ■な■が■る。


■が世■から消■■いく。そ■な馬■な考■■頭に■かぶ。


あ■、も■良■分か■ね■や。考■る■が面■く■く■■てきた。



とり■え■。





「お前も、ないてるのか」





「――――■■■■■■■■■■■■!」





――――――――全部、壊そう。





そして、トニー・トニー・チョッパーは考えるのを止めた。





【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【残り17名】



◇ ◇ ◇



この時。この瞬間。


「さあ、続けようか」

「今まで通り、いつものように」

二人のかいぶつは奇しくも、同じ言葉を吐く。

「後悔はない」

「憂いなんてあってたまるか」

合い言葉のように。
自分に言い聞かせるように。


『どうせ全員殺すんだから』


かいぶつのなく頃に、生き残れた者はなし。



『やむを得ず人を傷つける場合、その復讐を恐れる必要が無くなるまで徹底的に叩き潰さなければならない』





【H-2/1日目 真夜中】



【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:怪物(モンスター)化。
[装備]:
[道具]:[思考・状況]
 1:全部壊す。
【備考】
 ※参戦時期はCP9編以降。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。



【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】
[状態]:疲労(中)、拳に血の跡
[装備]:スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険、スプリングフィールドXDの弾丸×7、拳銃の予備弾×30
    二重牙@トライガン・マキシマム(50%、90%)、AMTオートマグ(3/7 予備弾×15)
[道具]:支給品一式×5<クレア、一方通行、レヴィ(一食消費、水1/5消費)、クリストファー、カルラ>、未確認支給品(0~1)
    クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ、ミカエルの眼の再生薬×3@トライガン・マキシマム
    噴風貝(ジェットダイアル)@ONEPIECE、応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
    パ二ッシャーの予備弾丸1回分、ロケットランチャーの予備弾頭2個
    ○印のコイン、ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾6、マシンガン残弾65%、徹甲弾残弾10)
    AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、蓮の杖@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、ギラーミンから元の世界へ戻る方法を聞き出す。
 0:……殺すか。
 1:目の前の化け物を片付ける
 2:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。
 3:再生薬はもう使わない方が良い。
 4:ウルフウッド、沙都子、クリス、カズマ、と再び出会った時には彼らを殺す。
 5:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。
 6:スター・プラチナに嫌悪感はあるがある程度割り切っている。
【備考】
 ※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明)
 ※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりました。
 ※梨花が瞬間移動の能力を持っていると思っています。
 ※名前を聞いていなかった為、カズマとクリスの死を知りません。
 ※コンクリートと一体化していた右半身の機能が元に戻りました。
 ※もう一度ミカエルの眼の再生薬を服用すれば、命に係わるかも知れないと思っています。
 ※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。



※チョッパーの周辺に彼のデイパック(支給品一式×4(2食分、水1/10消費)、タケコプター@ドラえもん
タオル、救急箱、病院で調達した医療道具、ホテルで調達したコーラ )はチョッパーの近くに放置されています。


【H-3/1日目 真夜中】



【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身にダメージ(極大)肋骨骨折、深い悲しみ、無力感、腕に○印
[装備]:デザートイーグル50AE(1/8 予備弾10)、包帯、ラズロのパ二ッシャー(弾丸数50% ロケットランチャーの弾丸数0/2)@トライガン・マキシマム

[道具]:梨花のデイパック
[思考・状況]
 0:リヴィオ……?
 1:逃がしたレナといチョッパーが気になる。
 2:託された北条沙都子を守る。
 3:リヴィオを救う。
 4:ヴァッシュとの合流。
 5:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。


【備考】
 ※ラッドの再生がミカエルの眼の改造技術に起因するものではないかと推測を立てています。
 ※クレアを殺害したと思っています。
 ※梨花のデイパックの中身は以下の通りです。
  支給品一式×3(1食分消費) インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム
  月天弓@終わりのクロニクル、フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL
  きせかえカメラ@ドラえもん、きせかえカメラ用服装イラスト集


※古手梨花の遺体がG-3南門前、カルラとドラえもんの墓の横に埋められました。首輪は付いたままです。
※鳩がH-3からB-4方向に飛んで行きました。足には手紙を付けています。


【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
【状態】:ラズロ帰還。激しい憎しみ。内臓にダメージ。両手両足にダメージ、筋肉断裂。その他全身にダメージ(大)、全て再生中。背中のロボットアーム故障
【装備】:パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数50% ロケットランチャーの弾丸数1/2)
【道具】:支給品一式×9(食料一食、水1/2消費)、スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、
     M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×19、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×3@トライガン・マキシマム
     ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×2、.45口径弾×24(未装填)
     天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム、三代目鬼徹@ワンピース
     、コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム
     投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero、レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL、コルト・ローマンの予備弾35
     グロック26(弾、0/10発)@現実世界、謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 50%)
     パ二ッシャーの予備弾丸 1回分、キュプリオトの剣@Fate/Zero 、首輪(詩音)

【思考・状況】
0:目の前の『敵』を殺す。
1:南あたりで参加者の探索。
2:参加者の排除。
3:ウルフウッドを強く憎悪。
【備考】
※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。


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