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私らしくあるためのImagine(幻想)

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私らしくあるためのImagine(幻想)◆YhwgnUsKHs





「離してってば!」
「いいから待て! お前はあの男の言葉を聞いていなかったのか!」

 市街の中で2人の男が口論を続けていた。
 1人はポケモントレーナーであり、図鑑所有者である少年レッド。そのレッドの腕を掴んでいるもう1人は、トゥスクルという国の白面皇、ハクオロである。
 その2人が争っている場所の近く、そこには服を鮮血に染め、倒れている少女園崎魅音がいた。その目は閉じられ、腕は胸で組まされている。
 2人の手によるものだ。その2人がなぜ口論になっているのか。


 レッドは襲撃者、クロコダイルをイスカンダルことライダーに任せ、ハクオロ、魅音とともにここまで逃げてきた。
 けれど、魅音の傷は深く、助ける事はできなかった。
(せっかくレナの仲間を見つけたっていうのに……レナ、ごめん)
 ハクオロは魅音の遺体の前で顔を伏せ、レッドは既に聞いていた情報から彼女が仲間から聞いた園崎魅音(ポニーテールが魅音で長髪が詩音の双子だと
聞いていたので魅音だと判断した)だとわかり、その魅音を守れなかったことに唇を噛み締めた。
 2人とも暗い顔のまま、せめてと思い目を閉じさせ、胸を組ませ、レッドがチョッパーの見よう見真似でハクオロの傷を応急処置しながらライダーが来るのを待った。

 そんな時、爆音が聞こえた。
 方向はついさっき自分達が走ってきた方向。つまり、今ライダーとクロコダイルが戦っているであろう場所だ。
 何かが爆発した。レッドはそう判断した。そして、ライダーの荷物には爆弾なんてなかったはずだ。
 つまり、爆弾を使ったのはクロコダイル。あるいは乱入者といったところだ。
 そこから浮かぶ可能性は、ライダーに向けて爆弾は使われた。まさか、ライダーは。

「っ!!」

 レッドはいてもたってもいられず、デイパックを持って立ち上がり、そこをハクオロに腕をつかまれた。
 そして今に至る。


「さっきの言葉?」
「そうだ、さっきあの男が小声で言った言葉だ!」


『30分で戻る。これ以上は語らん』


 レッドたちが走り去る直前、ライダーはそうレッドに囁いた。そばにいたハクオロはそれを聞き逃さなかったらしい。そして、その言葉の意味を。

「園崎から30分、というのがどの程度の時間かは聞いている。もうその時間は過ぎた。
あれはその時間内には必ず戻る。もし戻らなかったならば、自分に何かあったということ。その時はここから去れと、そういう意味ではないのか!」
「……多分、そうだと思う」

 ハクオロは目を開き、レッドを見つめた。
 レッドの様子を見る限り、どうやらライダーの言葉の真意は伝わっていたらしい。

「俺たち、次の放送までに劇場に行かなくちゃいけないんだ。仲間が待ってる。
 おじさんは俺を試してるらしいから、あんなはぐらかした言い方で試したんだと思う。自分が戻らなかったら劇場へ行け、ってことなんだと思う」
「わかっているなら」

 レッドがおとなしくなり、意味も悟っていた事に安堵したのか、ハクオロはつい手を緩めてしまった。
 だが

「でも!」
「!」

 そこでレッドが思い切り手を振り、ハクオロの右手を跳ね除けると、走ってすぐに距離を広げてしまった。

「でも、やっぱ俺、おじさんの部下は失格なんだと思う。イエローにもらった命は大事にする。俺は死ぬわけには行かない。だけど

 これが、俺なんだ! 大丈夫、危なかったらすぐに逃げて戻ってくるから!」
「っ!」


 それだけ叫ぶと、レッドは爆音のほうへと走っていった。
 その足に、迷いは見えない。


「『これが俺』か……どこまでも、自分を貫くと言うのだな……」

 ハクオロは走っていくレッドの背中を見続けていた。レッドの言葉に、何か心が揺さぶられた気がした。
 またも目の前で死人を出してしまい、後悔に凍りつきかけた心が。

 彼は横たえてある魅音を見つめた。
 彼女なら、こんな時どうするだろうか。


『何やってんのさ! おじさんの事はいいから、早くあの子を追いなよ!』


「……そうだな。私は、トウカもお前も守れなかった。
 王の資格は、ないのかもしれない。だが」

 ハクオロは自身のデイパックを担ぎ上げ、レッドが走って言った方を又見つめる。
 走っていった、迷いの無いけれど、小さい背中を思い出す。

「たった1人の少年を、危険なところにただいかせるなど……人としても、許されることではないからな」

 彼は魅音の遺体を道端においていく事を魅音に謝りながら、必ず戻ると決め、レッドを追った。
 足の傷が痛んだが、そんなものに構ってはいられなかった。


 『王として』ではなく、『ハクオロとして』、行かねばならぬのだから。


 *****


「な、なんだよこれ……」

 さっきの場所に戻ってきたレッドは、そこに広がる光景に言葉が出なかった。
 辺りには砂が大量に残っており、地面や端には大きな切り傷のようなものがいくつもある。
 そして、少し前まで確かに異常も損傷もなかったはずの橋……そこは、見るも無残に破損したり皹が入ったりしていて、
渡るにはかなり勇気がいりそうなほどの状態になっていた。
 一体どんな戦闘をすればこんなことになるのだろうか。
 その足元にあったデイパックを見てみると、中にあったのはライダーの荷物だった。荷物しかないという状況が、レッドを追い詰める。
 レッドは余計にライダーの事が心配になった。強いと言う事は分かってる。それでも、彼は心配になって叫んだ。それが、彼の性分だった。

「おじさーーーん!!」

 万が一、誰かが来てしまった時のため、支給品の中にあった白銀の杖を振りかざしている。
銃などには勝てないかもしれないが、それでも武器があるだけマシだった。
 説明書によれば、変わった攻撃ができるらしいが……。
 ちなみに、チョッパーからもらった大きな銃はいくらなんでも威力が高すぎて誤射が怖かったのでデイパックに入れてある。

「おじさーーん! どこにいるんだーー!?」

 いくら呼んでも返事はない。
 どこかに移動して今も戦っているのだろうか。
 それとも、既に戦いは終わって、気絶しているのか。

 それとも……。


「っ!そんなわけあるもんか!」

 最悪の状況を頭を振って振り払い、レッドはライダーを捜し続けた。
 その時だった。

「衛宮さん!衛宮さん!」

 甲高い女性の声だった。
 名前に聞き覚えはなかったが、ライダーを見かけたかもしれない。なにより、その悲痛な叫びをレッドは放っておけなかった。
 音が聞こえた方、土手を下った橋からいくらか離れた辺りをレッドは見た。

 そこにいたのは、自分よりはいくらか年上そうな少女、そして彼女の傍らに倒れている男だった。どちらもさっき来たときにはいなかった2人だ。
 そして、男の背中には鉄の棒が突き刺さり、そこから血が流れていた。

「!? だ、大丈夫か!?」

 血が流れているのを見て、レッドは慌てて声を荒上げた。
 ライダーの行方も気になるが、目の前で明らかに深い傷を負っている男と少女を見捨てることはレッドにはできなかった。
 声に気づいたのか、駆けてくるレッドに少女が目を向けた。その目は、一瞬驚きに満ちたかと思うと、


「え?」


 ばち、ばち、という不吉な音と共に


「来ないで!!」


 敵意のある視線へと変わり、どこか見覚えのある輝きが視界を覆った。


 それは、電撃の輝きだった。


 *****


「い、いきなり何するんだ!」

 美琴が放った電撃を素早く後ろに飛んでかわしたレッドが怒りを露にして叫んだ。
 対する美琴は、傷を負った切嗣を背後に、レッドを睨みつける。


 普段の彼女なら、ここまで攻撃的態度は行わなかっただろう。
 だが、今の彼女はクロコダイルとの戦闘、そしてその後の切嗣の負傷への動揺で、他者への警戒が倍増していた。
 故に、レッドにも過剰に警戒してしまう。

「うるさい! 近づくなら、そのデイパックとか全部そこに置いてからよ!」
「そんなことしてる場合かよ! その人を助けないと!」
「だから、その為にあんたが危険じゃないって証明しろっつってんのよ!!」

 美琴がヒステリックに叫ぶが、レッドはなおデイパックを捨てなかった。
 彼もまた、美琴を警戒する気持ちは同じだったからだ。

「俺はここにライダーのおじさんを捜しに来ただけだ! あんたたちを殺す気なんてない!」
「……ライダーですって?」

 その言葉に美琴が眉を細めた。
 レッドがその美琴の様子に気付き、はっとした表情をした。

「おじさんを知ってるのか!? なら教えてくれ、おじさんはどこ――」

 レッドが全てを言い終える前に、何かが美琴によって投げつけられた。
 元の世界でピカと一緒にいたりしたからか、見慣れた電撃が飛んでくるかと思ったレッドはそれに対応できず、それの直撃をもろにくらった。

「うあっ!!」

 それ――美琴の足元にあったデイパック――に視界を阻まれたレッドの腹に、一気に近づいた美琴の蹴りが叩き込まれ、
吹き飛ばされたレッドの体が地面に叩きつけられた。
 一緒に吹き飛ばされたデイパックが共に叩きつけられ、中身がレッドの周りにばら撒かれる。

「ごふっ、げふっ!」
「あっさりとボロ出したわねあんた……衛宮さんが敵って言ってたライダーの仲間ってことは、あんたも信用できないってことじゃない!」
「なっ……そんなっ!」

 腹を押さえながらなんとか立ち上がるレッドに、美琴が指を向けながら敵意を露にする。
 レッドも、自らの仲間を敵呼ばわりされた事に黙ってはいられなかった。

「おじさんが敵ってどういうことだよ!」
「衛宮さんはライダーは絶対倒さなければいけない相手だって言ってたのよ。それに、私達が南に行くのにあの2人の戦闘は邪魔だった。だから」
「なっ、なんだよ。おじさんに何したんだ!」

 慌てるレッドに、美琴は相手の化けの皮が剥がれるのを見る思いで、勝ち誇ったように言ってやった。

「私の電撃、鉤爪の奴もろとも喰らわしてやったわよ。その後すぐに逃げられたけどね」
「!! お、お前!」

 仲間を攻撃された事に怒ったレッドが、蹴られても手放さなかった金属の杖、『蓮の杖(ロータスワンド)』を振りかざした。
 その頭からは切嗣の事はもう抜け落ちている。
 対する美琴は、ついに本性を表したか、と笑みを浮かべて髪から電撃を放つ準備をする。相手の金属の杖は電撃を遣う美琴にとってはかえってこちらに有利な要素だ。

 互いに誤解を抱いたまま、二人が互いの攻撃を行おうとする。
 レッドは説明書を片手に蓮の杖を展開しようとし、美琴は電撃を杖に当てようと電撃を準備する。

「二人ともやめろ!!」


 と、にらみ合う2人を突然の声が静止した。
 美琴とレッドが共に横の方向を見る。
 そこにいたのは、白面の男。所々に包帯を巻いた、その奇妙な風貌に美琴の警戒心は更に強まる。
 だが、それと共にその男の眼力に軽く怯む。
 嫌が応にも、その男の前では沈黙しなければならない、そんな奇妙な強制感があった。

「お前達は何をしている! 傷を負っている者の前で戦いを続けるなど!
 そこの娘は挙動からしてその男を守っているのは明らかだ。確かに、その戦いの相手が敵意ある殺戮者ならば戦いにも納得はできよう。
 だがその少年はついさっき私達を助けてくれ、ここには同行者を捜しに来ただけだ! 本当にその戦いに意味はあるのか!?」
「っ! でも! その同行者ってのは敵で!」

 ハクオロの説得に美琴がうろたえながらも反論する。
 心のどこかでそれを受け入れる自分に戸惑っていた。自分でも、少年は実は、という考えがあったからだ。

「だからこそ今は双方落ち着けと言っている! お前達の間には何か大きな溝がある。冷静に情報を交換し、その溝を見極めるべきだ。
 少年は私達を助けてくれた。対して娘の方は巻き込んだとはいえ、私達を襲った男を攻撃した。遠く見れば、君らもまたあの男に襲われた私達を助けてくれたことになる。
 本来なら争う必要などないだろう。なのに、なぜ今争っている!
 どこかで何か食い違いが生じているというのはどちらもわかっているのではないか!
 ならば今は手を止め、その男を助けてその男も共に情報を交換するのが懸命ではないか」

 ハクオロの熱弁に、レッドも美琴もすっかり勢いが冷めたようだった。
 レッドは自分が熱くなりすぎた事を反省したようで、顔を俯かせていた。
 だが、美琴はまだ納得できていないようだった。

「でもまだあんた達は信用できない! 一緒になっていきなり2人がかりで殺されたんじゃ冗談じゃないわ!」
「ならば、これでどうだ」

 そう言うと、ハクオロは自らのデイパックを河原に放り投げ、地面に落ちた。
 その仕草に美琴が驚愕を露にする。

「レッドが何か不可解な行動を取れば、すぐに私を人質にするがいい。お前の雷の如き攻撃なら、私の命など一瞬で奪えるだろう。
 これでも駄目ならば……私達は去る。これが最大の譲歩だ。その男は、お前1人で助けるといい」
「っ!!」

 その言葉に、美琴は歯噛みする。
 いくらレベル5の≪超電磁砲≫といえど、結局は一介の中学生だ。男1人の脱力した体を運ぶのは大仕事になる。
 かといえ、こんな開けた場所で応急処置を行うのもかなり危険だ。どうしても人手が必要になる。

「私達は本当にその男を助けたいだけだ。もちろん、ライダーという男の行方やその他の情報を聞きたいのもある。だがその真意を悟って欲しい」
「……」

 美琴はそのハクオロのまっすぐな目から、つい目を逸らしてしまった。
 なぜか、それを真正面から見つめると何かに苛まれる。
 心が苦しい。何かに締め付けられるようだった。

(でも、信用しても、いいのかしら)

 切嗣を助ける為だ。いざと言う時は遠慮なく電撃を見舞えばいい。
 レッドも、自分が大丈夫だと示す為か、デイパックを手放すのが見えた。
 美琴はその二人の態度に、本当に危害を加えるつもりはなさそうだ、と思った。
 美琴の心が、少し警戒を解き

 逸らしたその視界に飛び込んできたものに、凍りついた。


「あ……あ……」
「?」
「ど、どうしたんだ?」

 突然視線を凍りつかせた美琴の様子にレッドとハクオロも気がつき、美琴の視線の先を見た。
 そこには



「っ……!!」
「さっきの、男!」

 そこにあったのは、ハクオロと園崎魅音を遅い、魅音の命を奪った砂使いの男、サー・クロコダイルの死体だった。

 その恐ろしいまでに歪んだ形相(デスマスク)。その上方に空いた穴、脳すらぐちゃぐちゃに粉砕しているのではないかというそれ。
 ハクオロには槍か何かという想像しかできなかったが、美琴にはそれが銃によるものだとわかった。それがあの時の切嗣の銃撃によるものだと。
 だが、美琴の視線が釘付けになったのはそこではない。
 クロコダイルの首元の惨状だった。血に塗れ、首の肉はぐちゃぐちゃになり、まるでミンチのようになっていた。そしてなにより、落下の衝撃ゆえか


 クロコダイルの首は、胴体と完全に分かれていた。
 首輪爆発でボロボロに成った首の筋肉と骨は、落下の衝撃に耐えられなかったようだ。


「う、うえっ!」

 元の世界の状態ゆえ、死体には慣れていたハクオロですら顔をしかめた現状で、ここに来て2人の死体を見たといえ、人の死体に慣れていないレッドには耐え切れず、
胃の中の物を吐き出してしまっていた。それほどまでに、クロコダイルの死体の損傷具合は酷いものだった。

 では、この首の損傷はなぜ起こったのか。
 ハクオロと美琴にはすぐ想像がついた。自分達の首元にもある、爆弾。最初の説明で首輪を破壊された者も、思えば同じような損傷具合だった。

 では、なぜ禁止エリアでもないのに首輪が爆発したのだろうか。
 ハクオロにはそこの及びはつかない。ただ、襲撃者であるクロコダイルが自ら無理に外そうとした、とは考えにくいというところまでのみ。

 だが、美琴は違った。
 心当たりがあった。想像だが、機械で制御されているであろう首輪を爆発させた要因。


「あ……ああああああああああああああ!」


 クロコダイルの無事な首輪を最後に確認したのは、あの時だ。
 自らが天空に向けて雷撃を放つため、相手を視界に捉えたあの時。つまり、クロコダイルの首輪が爆発したのはあの直後。
 ここまで来れば、もう結論は一つしかない。
 切嗣の銃撃は首輪ではなく額を捉えた以上。

「あ、あ、あ、ああああああああああああああああ!!」



 クロコダイルの首輪を爆発させたのは、美琴の電撃だと。
 そして、首を爆発されて、生きていられる人間などいない。
 つまり、致命傷を与えたのは、美琴だと。



「私、私……私!!」
「お、おい、どうした! どうしたのだ!」

 突然錯乱を始めた美琴、その周りに発し始めたばちばち、という音と光。
 電撃など、雷という自然災害でしか知らないハクオロには何が起こっているかわからなかった。雷雲などない空で、こんなことが起こる要因を知らない。
 ただ、目の前の少女が原因だと言う事はなんとなくわかった。
 レッドはまだひざまづいて伏せっている。美琴の様子には気がついていないらしい。


「私、私……人を、人を!!」


 御坂美琴は人を殺すのを嫌う。
 圧倒的能力を持つからこそ、持つがゆえに。
 人間相手に≪超電磁砲≫を使う事はほとんどない。それが事件を解決する一番の近道でも。
 彼女は決して人を殺そうとしない。
 クロコダイルへの電撃も、相手の動きをしばらく止めるくらいの電撃だったはずだ。その計算の中に、首輪への配慮という要因が抜け落ちただけで。


 だが、それは砕かれた。
 切嗣の銃弾が先に当たった、という事も考えたかった。
 だが、銃の弾丸と雷撃、果たしてどちらが早いだろうか。
 上に向けて放つという条件下、重力の影響を受けやすいのはどちらだろう。
 なにより、砂嵐に塗れて切嗣に庇われたそのわずかな視界で見えなかっただろうか。


 クロコダイルの額が貫かれる光景を。
 ただし、その首は鮮血に満ちている状態で。



 御坂美琴は、人間を殺した。



「いやぁ……いやぁあああ!!」


 美琴は決して心の弱い人間ではない。
 覚悟も、充分できるはずだった。
 だが、あまりに彼女の精神状態がよくなかった。

 もしも妹達を助ける為、自らを犠牲にする覚悟を決め、それを上条当麻に阻まれ、彼に雷撃を当てて殺してしまったと思い込んだ時でなかったら。
 もしも2人の知っている人物が死んだ事を知った直後でなかったら。
 もしも自分を庇った者が傷を負った直後でなかったら。

 美琴はもう少し冷静でいられたはずだった。


「ああ、あああああ!!」


 錯乱する美琴をどんどん現実が苛む。
 衛宮切嗣はなぜ傷を負った? 自分が早く逃げていれば、クロコダイルを倒そうと拘らなければ彼と自分は攻撃から逃げる事もできた。
 ではなぜ自分はクロコダイルを倒そうと躍起になった? 目の前の障害を全て排除したかった。そんな脅迫観念が起こっていた。
 なぜ? 自分はそんな性格だっただろうか。そんなことはないはずだ。
 妹達を助けたかったから? でも、一方通行はもう死んだ。なら、実験はもう潰れたも同じではないのか。
 では、なぜだ?


 自分が生き残りたいからだ。


「私は、私はーーーーーー!!」

 思いたくなかった。
 御坂美琴はそんな人間ではないと。
 人間は無意識に自身を肯定する。それを自信と言う。
 『自分だけの真実(パーソナルリアリティ)』を能力の根幹に持つ能力者ならば、それは当然のことでもあった。

 だが、彼女は見つけてしまった。
 『自分の知らない御坂美琴』を。
 自分が生き残るため、遠慮なく目の前の敵に全て雷撃を見舞い、結局命を奪い、仲間を傷つけた御坂美琴を。



 それは、拒絶したい自分だった。



「おい、落ち着け! くっ……まさか」

 ハクオロの声に、美琴はぎょっと目を向けた。
 その白面の向こうの目。
 それは、全てを見透かしているような。
 死体を見て動揺した自分に、彼は全てを察してしまったのか。


(やめて)


「あの男は」


(やめて……!)


 ハクオロとしては、無意識の一言だった。
 決して彼女を糾弾したかったわけではない。
 事実だとしても、男は優勝しようとしていた様子だったのだから、正当防衛とみなす事もできる。
 その上で、ハクオロは彼女を何とか落ち着かせようと思っていた。


 けれど、完全に精神を不安定にした美琴にとってそれは死刑宣告に等しかった。

「きみが、殺したのか……?」



「ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!」



 それは、本能の一撃だった。
 自分を陥れる存在を、排除したいという原初の一撃。
 その瞬間、美琴の頭は真っ白になった。


 やめて……私をそんな目で見ないで……私は……わたしは……


 次に美琴の視界に写った光景は、人が倒れる光景だった。
 その腕に、雷撃を喰らったその人影は、ゆっくりと倒れていく。
 その人影を、その後ろの人物が受け止めた。
 その人物は、白い仮面を付けていた。


 倒れた少年は、赤い服を纏っていた。


「レッドーーーーーーー!!」


 *****

「レッド、レッド!」

 ハクオロは目を閉じ、動かない少年を揺さぶり続けた。
 少し焦げ臭い匂いは、少年の体が雷で焼かれたせいだろうか。

「私は……私はまた、守れなかったのか……いや、むしろ、またも守られただけではないか!!」

 ハクオロは自分の情けなさを恥じ、そして顔を上げた。
 そこにはもう美琴はいない。
 そして、その視線の先にあるのは、橋だ。



 その橋は、見るも無残に崩壊していた。



 レッドが倒れた直後、美琴は呆然とした後、再び錯乱し叫びながら土手を駆け上がっていった。
 ハクオロが止める声も無視し、ボロボロの橋を一心不乱に渡りきった美琴は、さらにとんでもない行動に出た。

 突然構えを取り、手に持った袋から何かを取り出したかと思うと、指から何かを放ち、それを橋に命中させたのだ。
 ハクオロには何が何だか分からなかったが、その一撃がとてつもない光と速さを持っていたこと、そしてそれが橋にとどめをさしたのだけは分かった。
 轟音と共に橋を瞬く間に皹が覆ったかと思うと、激しい音を響かせて橋が瓦礫と化し、落ちた瓦礫が川へと飛沫を上げながら落ちていく。なんとも恐ろしい光景だった。
 幸い、ハクオロたちは橋から離れていたため、崩落の瓦礫に巻き込まれることはなかった。
 だが、その崩落の砂塵が晴れた後には、もう美琴の姿は見えなかった。

「私は……やはり、もう王足り得ないのか」

 惨め過ぎた。
 今まで自分は何をやってきたのか。
 臣下トウカはミュウツーから自分を守って果てた。
 同行者魅音はクロコダイルから逃げずに斃れた。
 そして、今度こそ守ると決めた少年レッドは、美琴の電撃によって死を迎えた。

「誰も守れずして……何が、王か!」

 ハクオロの慟哭が響く。
 ただ、情けなかった。
 自分自身が。



「あのー……おじさん……勝手に殺さないでほしいんだけど……」

「っ!?」

 突然の声にハクオロは視線を手元に戻した。

 そこには、苦しそうにしつつも目を細く開けたレッドがいた。

「お、お前、無事だったのか!」
「うん……これのお陰で」

 レッドが震える手を持ち上げた。
 そこには、黒色の手を覆う布があった。ここに来る前にはつけていなかったはずのものだ。
 その布から煙が上がっている。さっきの焦げ臭い匂いはこっちだったらしい。

「おれもあの散らばった荷物の中にコレが混じってた時はびっくりした。たしか、サカキは『絶縁グローブ』って言ってたっけ。
 これ、電気を防ぐ効果があるんだ。ああ、要するにさっきみたいな雷みたいな攻撃の事」
「……つまり、防げるとわかっていて私の前に出たというのか」
「うん。あの子が使うのがでんきタイプの攻撃だってわかったから。それを拾い上げて、視線がそれた間に付けたんだ。
だからさ、おじさんが謝ることないよ、俺が勝手に出ただけなんだ――」


「馬鹿者!!」


 ハクオロの叫び声に、レッドがびくっと体を震わせた。

「何が防げただ! 防げたなら、なぜお前の体はこんなに震えている! なぜ苦しそうに汗を浮かべる! その程度の嘘、見抜けぬと思ったか!」
「う……」
「確かに、雷を受けて無事なのだ。防ぐ効用は認めよう。だが、それには限度があるのだろ。限界を超えた攻撃は、お前自身にも及ぶ! そうだろう!」
「……10万ボルトくらいは大丈夫な、はずだったんだけどな……」

 絶縁グローブの効果は絶大で、“10まんボルト”の為に電撃を蓄えたピカのモンスターボールを手に持っていても平気だったくらいだ。
 だが、御坂美琴の放つ雷撃は強ければ10億ボルトにも匹敵する。さすがの美琴も咄嗟にそこまでの電気量は出していなかっただろうが、それでも桁が違う。
 絶縁グローブで防ぎきれなかった電撃は、確実にレッドに襲い掛かっていた。
 共にいたピカのイタズラの“でんきショック”、ロケット団幹部マチスとの2度の戦いで味わった多数の電撃。
 電撃に対していくらか耐性(できれば備わりたくない耐性だが)があるレッドでも、レベル5の電撃使いの電撃はかなり堪えた。

「大分、体が痺れてるや……」
「ならば、なぜ私の前に立ちはだかった! お前は言ったではないか。『危なければすぐ逃げる』と! それがなぜ!」

 声を荒あげるハクオロに、レッドは震える唇で言った。

「だって……放って、おけないじゃんか……仮面のおじさん、怪我で逃げられないんだし…それだけだよ」
「っ!! お前と、言う奴は!」

 ハクオロにはレッドが愚かしく、そして同時にあまりに羨ましく思えた。
 彼もまた、全てを守ろうとしている。自分の命も、他人の命も。
 現に彼は果たした。ハクオロを守ることを。
 自分に、できなかったことを。

「俺はいいから……早く、あの人を治療してあげて。このままじゃ、あの人の方が危ないから。
 はは、さっきまで俺がおじさん治療してたのに……逆になっちゃった」
「……お前も放っていけるわけがあるまい」

 ハクオロは右手からレッドを降ろすと、散らばった荷物の中から何か役立つものがないかと探した。

「あ、それ……多分薬だと思う……傷口とかに、塗って……」
「ふむ……確かに、エルルゥの使っていたものと匂いが似ている……ような気がする」

 どうにも不安になりそうな手つき(しかも片手)で、レッドの指示でレッドの荷物から包帯(本当は同盟の証に使うつもりで入れておいたのだが、この際仕方ない、ていうかハクオロに既に半分は使ってしまっていた)を取り出した。

「この分じゃ……劇場には、間に合わないかなぁ……」
「その体ではな。処置を終えたら、2人とも民家に連れて行くぞ。ここでは開けていて危ない」
「え、でもおじさん片手しか」
「ひきずっていく」
「……まだ怒ってる?」
「気のせいだ。ああ、気のせいだとも」
「そ、そう…………ねえ、おじさん」
「なんだ」

 男の傷口の鉄筋を抜こうとしているハクオロに向かって、まだ体を動かせないレッドは言った。

「俺……治ったら、あの子を追いたい」
「なっ……!?」

 ハクオロの手が思わず止まった。
 あの子、とは紛れも泣く雷を浴びせた美琴のことだろう。

「だが、彼女は」
「わかってる……でも、でもさ。放っておけないよ。彼女、もしかしたら劇場方向に行ったかもしれないし、それならレナたちとの合流のわき道になるわけじゃない。それに」
「それに?」

 そう聞き返したハクオロだったが、レッドが彼女を助けたい理由はなんとなくわかっていた。
 なぜなら、彼もまた、少しだけ彼女を助けてやりたい、と思っていたからだった。


「あの子……泣いてたんだ」

【B-4 橋の河原(北岸)/一日目 午前】

【レッド@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:疲労大 背中に擦り傷、左肩から出血(両方とも簡易治療済み) 腕に○印 体に痺れ
【装備】:包帯、蓮の杖@とある魔術の禁書目録、絶縁グローブ(軽く焦げ)@ポケットモンスターSPECIAL
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0~1個(確認済み。モンスターボール・スコップなどの類はなし)、二重牙@トライガン・マキシマム
【思考・行動】
 1:殺し合いを止める。必ず生き残る。
2:痺れが治ったら、なんとか川を越えて美琴を追う。
 3:女の子(魅音)を救えなかったことを後悔。
 4:ライダーと慎重に仲間を捜し、『ノルマ』を達成する。
 5:ある程度はライダーを信用していますが…。
 6:次の放送までに劇場へ向かいたい。でも無理かもしれない。
 7:赤い髪の『クレア』に会ったら、フィーロの名前を出す。
 8:絶対に無常からフシギダネと取り戻す。
【備考】
※参戦時期はポケモンリーグ優勝後、シバの挑戦を受ける前です(原作三巻)
※野生のポケモンが出てこないことに疑問を持ってます。
※フシギダネが何故進化前か気になっています
※ライダーと情報交換を行いました。
※『クレア』をフィーロの彼女だと勘違いしています。
※後回しにしていますが図書館にあったパソコンに興味

【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備】:なし
【所持品】:大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、
      基本支給品一式×2<ハクオロ、魅音>、クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL、
      空気ピストル@ドラえもん メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONE PIECE、
      デリンジャーの残弾20
【状態】:右足と右肩に銃創(包帯処置、止血処置済み。ただし消毒なし)、左手首骨折(包帯と添え木済み) 深い哀しみ
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒す。
 2:私は、王の資格がない…。
3:切嗣を応急処置した後、レッドと共に民家で休ませる。
 3:仲間(魅音の仲間含む)を探し、殺し合いを止める。全てを護り抜きたい。だが…。
 4:美琴を助けたい。
 5:ミュウツーに対して怒りの念。
 6:アルルゥを失ったら……失った家族を取り戻す為に……?
【備考】
※クロコダイルの名前は知りません。
※クロコダイルの能力を少し理解しました。

【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(大)、背中に深い傷、出血中、意識不明、令呪残り二画
[装備]:コンテンダー・カスタム@Fate/Zero 、防災用ヘルメット
[道具]:コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾27/30) 、基本支給品一式
    ロープ×2、消火器、防火服、カッターナイフ、鉄パイプ爆弾×2、黒色火薬入りの袋、ライター
[思考・状況] 基本:なんとしてでも元の世界に帰る
1:ループを作り出しているだろう基点を探す。
2:情報を得るため中心街を目指す。
3:美琴には慎重に接する。
4:圭一が心配だが後回し。
5:ライダー、特にアーチャーには絶対出会いたくない。
【備考】
※ 会場がループしていると確信。
※ クロコダイルの名前は知りません。
※ スナスナの実の大まかな能力を知りました。
※ 美琴に自分たちが並行世界の人間であること、自分が魔術師であることを話していません。
※ 暗示の魔術の制限によく気づいていません。


※B-4の橋が美琴の超電磁砲によって完全に崩落しました。渡る事はまず不可能です。
※B-4河原(北岸)に、美琴のデイパックと荷物(基本支給品一式<美琴>、起源弾@Fate/Zero(残り28発)、
 不明支給品0~1、鉄パイプ爆弾×2、双眼鏡、医薬品多数(数種類使用中)、ライター)が散らばっています。
※B-4木陰に園崎魅音の死体が腕を組まされて横たわっています
※B-4橋崩落現場付近に、クロコダイルの首と胴に別れた死体があります。

 *****


 御坂美琴は歩いていた。

 その足はふらついていて、まるで幽鬼のように見えた。
 手元には唯一の武器、コイン入りの袋を握り締めて。
 目の焦点は合っておらず、どこを見ているか分からない。気力の失せたような、そんな顔だった。
 そして、市街をさ迷う彼女の周りを、ばちばち、ばちばち、と電撃がスパークしている。
 あまりの精神の混乱に、能力が暴走していた。


 ――なんでこうなってしまったんだろう――


 あの鉄橋の上でも同じ疑問を抱いた。
 なぜ一万人のクローンたちが殺されることになってしまったのか。自分がDNAマップを提供したのが悪かったのか、と。


 今もそうだ。
 なぜ2人もの命を奪うことになってしまったのだろう。いや、重傷の切嗣を見捨てて逃げてきてしまったのだから、もしかしたら3人かもしれない。
 怖かった。ただただ怖かった。自分のなすことすること、全てが裏目になるのが怖かった。
 自分の殺人から逃れたかったのに、また1人殺すことになってしまった。
 何かするたびに悪化していく。まるで底なし沼に落ちてもがいている様だった。


 ――なんでこうなってしまったんだろう――


 怖かった。どんどん人を殺していく、『御坂美琴』が怖かった。
 そんな自分が誰かの目に晒されるのが怖かった。自分の罪がありのまま見られているようで怖かった。
 だから逃げ出した。白色の仮面の男の声も無視して、切嗣によく似た声が、尚更苦しくて。その切嗣にも見られたくなくて、置き去りにした。


 ――なんでこうなってしまったんだろう――


 橋を渡りきって、さらに恐怖が押し寄せてきた。
 あの男が自分を追ってくるかもしれない。切嗣が自分を追ってくるかもしれない。
 嫌だった。こんな『御坂美琴』を誰にも見て欲しくなかった。もう、誰かを傷つけたくなかった。
 だから、橋を破壊した。その≪超電磁砲(レールガン)≫で。


 ――なんでこうなってしまったんだろう――


 彼女は問いかけ続ける。
 なぜこうなってしまったのか、と。

 彼女にはわからない。
 なぜなら、それを知るには彼女自身を客観視するしかないのだから。

 御坂美琴は本来ならば弱い少女ではない。
 勝気で乱暴なところはあるが、思慮深く、誇り高く、優しい少女だ。
 だが、ここでの彼女はそんな面が薄かった。
 邪魔者の排除、戦闘を切嗣よりも率先して進め、首輪の遊爆を察することができなかったとはいえ、遠慮ない電撃をクロコダイルやライダーに浴びせた。
 少年であるレッドに異常な警戒をし、クロコダイルを殺害してしまったことに大きく動揺した。
 果てに暴走し、レッドへと雷撃を当ててしまった。


 いつからだろう。
 ギラーミンの説明を受けた時? この会場でカズマと戦った時? 切嗣とクロコダイルの姿を見かけた時?
 答えは全て否。彼女の何かが歪み始めたのは、放送の時からだ。

 自分より強者であるはずの一方通行が死んだから? 確かに危機感は抱いたが、それも違う。
 一方通行が死んだから、なおさら妹達を助けるため死ぬわけにはいかないと思った? それはあるだろうが、彼女を大きく歪ませたわけではない。



 答えは決まっている。
 上条当麻の死だ。

 彼女自身はショックを受けた程度のつもりだった。
 いつも自分の能力を無効化する、それでいてそれを謙遜するむかつく奴の死、それだけのつもりだった。

 だが、彼女の心には大きな欠落感が生じた。
 ぽっかりと穴が開いてしまったような。
 それを彼女は自覚できなかった。自覚しても、それを不安と脅迫感と受け止めてしまった。
 もう少し未来の、例えばボロボロの当麻に会った後の、自らの気持ちを認識した彼女なら、まだ自覚できただろう。
 だが、このときの彼女の想いは、あまりに淡すぎた。自覚できていなかった。
 自覚できないからこそ、自分の喪失感を受け止められなかった。
 そんな喪失感が、無意識に彼女を責め立てた。
 彼女を無意識に焦らせ、正確な判断力を奪っていた。
 彼を失った悲しみを、喪失を、紛らわせようとしていた。


 上条当麻。
 その存在の欠落が、御坂美琴の精神を歪ませ、破壊していく。
 まだ20にも満たない、少女の心の歯車を狂わせる。

「………――けて」


 彼女の唇が小さく動いた。
 焦点の合わない、まるで彼女の妹達のようなその瞳から、うっすらと涙を流しながら。


 それも、また鉄橋で呟いた言葉だった。
 誰もいない場所で、ただ呟いた言葉だった。


 今も、周りには誰もいない。
 そもそも、誰かから逃げたくて、誰かを傷つけたくなくてここまで来たのに。
 けれど、自分を拒絶する気持ちと、それでも妹達を助けたいと、生きたいという矛盾した、ぐちゃぐちゃとした精神の中で、
彼女はそれを無意識に呟いていた。
 ぐちゃぐちゃとして、心が苦しい。
 ぐちゃぐちゃとして、息が苦しい。

 その言葉の相手は、多分1人しかいない。


「助けてよ……」


 その小さな呟きは、彼女の暴走放電の音に紛れていく。
 ばちばち、ばちばち、と。



 ある未来の彼女は、助けられた。自分が殺したと思った少年によって。
 少年は一方通行を倒し、妹達を助けた。
 助けて、という言葉は確かに彼に届いた。


 けれど、『この御坂美琴』は、まだ救われていない。
 救われる前に、ここに来てしまった。
 言葉が届く前に、ここへ来てしまった。
 そして、もう彼に助けてという言葉は届かない。
 彼は美琴を助けに来てくれはしない。
 そう。

 上条当麻が死んだ時点で、そんな幻想は粉々に壊れていたのだから。



【C-4北・市街地車道/1日目 午前】

【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】:疲労(大)  自分への強い嫌悪感 軽い暴走状態 大きな喪失感 精神不安定
【装備】:なし
【道具】:コイン入りの袋(残り99枚)
【思考・状況】
 基本行動方針:脱出狙い?
0:もう誰とも会いたくない。
1:脱出の邪魔になる相手は排除する?
3:切嗣を見捨てたことを後悔。
4:“あいつ”の事は……
5:自分が素性を喋ったことに対して疑問(暗示には気づいていません)
【備考】
 ※ 参加者が別世界の人間とは知りません(切嗣含む)
 ※ 会場がループしていると知りました。
 ※ 切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。

【蓮の杖(ロータスワンド)@とある魔術の禁書目録】
ローマ正教シスター、アニェーゼ・サンクティスの使用した魔術礼装。
銀の杖に、先端に考える人のような像があり、普段はその背中の羽が閉じたようになっているが、展開用の詠唱をすることで羽が開く。
展開すると、杖を叩きつけたり刃物で杖を傷つけることで、離れた場所への座標攻撃が可能になる。ただし、衝撃から座標攻撃への間は一定のタイムラグがある。
ロワでは制限により、魔力がない者でも体力消費で術式を行使可能(消費するのは杖が展開してから)とし、攻撃可能範囲は杖を中心に15メートルの範囲内、タイムラグは3秒とする。
使用描写は7巻で確認可能。
説明書に載っている展開用詠唱は以下の通り
『Tutto il paragone(万物照応)
 Il quinto dei cinque elementi(五大の素の第五)
 Ordina la canna che mostra pace ed ordine(平和と秩序の象徴『司教杖』を展開)
 Prima!(偶像の一!)
 Segua la legge di Dio ed una croce Due cose diverse sono connesse!!(神の子と十字架の法則に従い異なる物と異なる者を接続せよ!!)』

【絶縁グローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
御坂美琴に支給された。
レッドが手に嵌めている黒い指出し型のグローブ。
元々はロケット団幹部マチスが自身に強力な電気が及ばないように着けていたものだが、レッドが勝利した際それを戦利品として奪っていた。
電気を絶縁する効果があり、サカキ戦ではこれを使ってピカの攻撃準備をボール時点で済ませるという策で勝利をもぎ取った。
10万ボルト程度なら楽に防げるが、あまりに範囲を越えると通用しない(この描写は本編にはないため、推測です)
入手経緯や使用描写は3巻で確認可能。




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殺人連鎖 -a chain of murders-(後編) 衛宮切嗣 静かに訪れる色なき世界
limitations レッド 静かに訪れる色なき世界
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