100スレ記念5
まりさに案内されてやってきた巣はかなり大きな洞窟だった。
しかし、ドスまりさが出入りできるほどの大きさはなく、恐らく大所帯のゆっくりがドスにここに住むように命じられたのだろう。
柵が手元に無い以上、ここでの虐待に時間を割く余裕は無い。それにいい加減飽きてきた。
そう判断した青年は手近な木の枝を折り、それを二本構えてから、恒例の唐辛子玉を3個ほど放り込んだ。
「ゆぐぅ!かりゃいよおおおおおお!?」
「どがいはぢゃないわあああああ!?」
真っ先に飛び出してきたのは成体のゆっくりれいむとゆっくりありす。
喋り方から察するに子どもを口に入れている気配はなく、我先に飛び出してきたと言った感じだろう。
酷い親である。
「そぉい!」
まずは先に飛び出してきたありすの口内に右手の枝を突き立てる。
辛さによって混乱しているとは言え流石に強烈な痛みを感じたありすはくわっと目を見開き、刺さった枝を凝視する。
それから青年を見つめ、何かもの言いたげな表情を作るが喋れる状況に無い以上どうしようもない。
やがて痛みに耐え切れずにありすが気絶したのを確認した青年は枝を引き抜きつつ即座に次に飛び出してきた成体れいむの腹部に左手の枝を突き刺す。
「ゆびぃ!?あ、あがぢゃ・・・ん?」
そのれいむはどこか不自然にお腹が膨れている。どうやら胎生型のにんっしんっをしていたようだ。
青年が木の枝を突き刺した場所は見事に胎生の赤ゆっくりが収まっている場所を貫いてしまっている。
餡子さえ大丈夫なら貫通しても大丈夫だと言われているが、流石に胎内の未熟なゆっくりにとってこの傷は致命的だろう。
痛みとそれ以上の悲しさで動くことさえも出来ずに泣きじゃくるれいむから木の枝を引き抜くと次いで飛び出してくる集団を待ち構える。
「ゆっくりできないー!」
「ゆっくりしたいよー!」
「こんなのとかいはじゃないわー!?」
などなど、口々に唐辛子玉への不満や憤りを口にしながら洞窟から飛び出してくるれいむとありすの集団。
サイズは全員子ゆっくりサイズでれいむ種が12匹とありす種が11匹の合計23匹。
その大群を見た青年は母性の強いれいむ種とすっきり好きな上に優秀なありす種の組み合わせならこうなるな、と一人納得した。
そして、舌なめずりをしながら右手の枝を先頭の子ありすの右目めがけて突き刺し、2匹目の子ありすを右足で巣の奥へと蹴り飛ばす。
「ゆびゅ!?」「ゆがっ!?」
「ゆ゛っ!でいむのおぢびぢゃんーー」
今度はほぼ同時にやってきた子れいむと子ありすめがけて木の枝を突き立てる。
右手の枝には子ありす1匹がささったままだが青年は気にする様子も見せずに、ありす越しに子れいむを貫いた。
次いでやってきた子れいむを踏み潰しながら2本の枝を勢い良く振って枝に刺さった3匹をほうり捨てる。
これで親と合わせて7匹。
「ゆっぐぢでぎないいいい!?」
「どうぢでどがいはぢゃないのおおお!?」
またしても必死の形相で飛び出してくる子ゆっくりの集団。
唐辛子玉の効果で先ほど蹴り飛ばされたありすの様子を観察できるような余裕のあるものはいないのだろう。
まだまだ中から子ゆっくり達の阿鼻叫喚が聞こえてくる。
「ゆびぃ!?」「ゆ゛っ!?」「ゆぎぃ!!」
「やべでねー、でいむのおぢびぢゃんをゆっぐぢさせであげでねー」
先ほどまでと同じ要領で外へと飛び出してくる子れいむと子ありすを勢い良く潰してゆく青年。
そんな運命も知らずに目の前にあるゆっくり出来ないものから必死に逃げ出そうとする子ゆっくり達。
その傍らでは親れいむが必死に許しを乞うているが、青年の耳に届いてさえいない。
ただゆっくりを求めて飛び出してきただけの罪の無い子ゆっくり達は待ち構えていた青年によってことごとく蹂躙されてゆく。
「も、っちょ・・・ゆっくり・・・ゆべっ」
「れ、れいぶの・・・おぢびぢゃんがぁ、ゆっぐぢー」
「・・・・・・・・・ん?」
23匹の子ゆっくりを全て始末し、一息つく青年。
赤ゆっくりがやってくるのをじっと待つが、いつまで経っても姿を現す気配を見せない。
不審に思いながらもまたしばらく待ってみるが、やはり出てくる気配は無い。
ある可能性が頭をよぎった青年は口に布を当て、慎重に洞窟の中へ入っていった。
「・・・っち、やっぱりか」
洞窟の中には先ほど蹴り飛ばした子ありすと16匹もの赤ゆっくりの死体が散乱していた。
どうやら大きな巣だと思って3個も唐辛子玉を投げ込んだのが効き過ぎてしまったらしい。
せっかくの獲物を不可抗力で殺してしまったことを悔やみながら、外に出た青年は唯一の生き残りの成体れいむを洞窟の中に放り込んだ。
「流石に飽きてきたな・・・あとはドスを片付けておしまいにするか」
そう言いながら青年は道案内させていたまりさの口の糸を強引に引き千切り、口の中に収めていた赤ゆっくりを取り出す。
それから彼女らを捕獲用のポケットに移し変えるとまりさを地面に置き、話しかける。
「さあ、まりさ。君は約束どおりちゃんと働いてくれた」
「ゆぅ・・・まりさのおちびぢゃん・・・」
「でも、君に赤ちゃんを返すつもりは無い」
「ゆゆっ!ど「どうしたもこうしたも無い。返したくないから返さないのさ」
そう言いながらにんまりと意地の悪い笑みを浮かべた青年はまりさを蹴り飛ばす。
一撃で潰してしまわないように、長く苦しむように加減した蹴りをまりさの顔にめり込ませた。
「ゆぐっ!?」
ごろんごろん、と地べたを転がり木の幹に激突したまりさはぐったりと顔を伏せて嗚咽を漏らしている。
ゆっぐぢー、ゆっぐぢーと、まともに言葉もつむぎ出せないような有様で青年に許しを乞うている。
しかし、それは青年の嗜虐心をくすぐるだけ。
「ゆびぃ!?」
まりさは起き上がる暇も呼吸を整える暇も与えられずに再び蹴り飛ばされた。
柔らかそうな右頬に青年の靴のつま先がめり込み、勢い良く宙を舞う。
再び木の幹にぶつかるまで転がり続け、今度は衝突のショックで餡子を吐いてしまう。
「ゆ゛・・・ゆぐ・・・」
止まったと思った瞬間、吐き出した餡子を土ごと握り締めた青年が口内に拳をねじ込んだ。
手にしたそれを口の中に戻すと吐き出さないように両手で口を押さえつける。
「んー!?んんんーっ!?」
抵抗もむなしく、まりさが土ごと吐しゃ物を飲み込んだ直後、彼はまりさに馬乗りになる。
そして、陰惨な笑みを浮かべて彼女を何度も何度もただひたすら殴りつけた。
「ゆぐっ!」
右から繰り出された拳は頬を打ち抜き、衝撃で皮を僅かに抉る。
まりさは恐怖のあまりに大粒の涙を零し、がたがたと歯を震わせている。
半開きの口からは何か言葉が聞こえてくるが、震えのせいで何を言っているのかまったく聞き取れない。
そんな彼女に今度は左の拳をお見舞いする。
「何言ってるかわからないんだよ!」
「ゆがっ!」
まりさの言葉は「もうやめてね!ゆるしてね!ゆっくりさせてね!」だ。
しかし、聞き取れる云々以前に話を聞く気のない相手を前に言葉なんて何の意味もなさない。
再び繰り出された拳がまりさの顔を打ち付けると、その拍子に彼女は舌をかんでしまった。
口の中から餡子の甘い香りが漂う。
「くせぇ!!」
「ゆびぃ!?」
青年はその匂いに顔をしかめつつ、再び右手でまりさを殴打。
その衝撃で切れた舌から餡子が飛び出し、青年の衣服にへばりついた。
青ざめるまりさ。また殴られる、と。
もはや半狂乱の彼女には正常な思考など期待できるはずもない。
痛みを和らげるために、殴られても仕方のない理由を探して恐怖から逃れようとしていた。
「服が汚れた!」
「い゛いぢゃ!?」
そして予想通りの理由で青年はまりさを殴りつけた。
今度は左手。ただし、頬ではなく目を狙っての、その機能を破壊するための容赦のない一撃だ。
彼の拳骨がスローモーションでまりさの視界を占領し、半分近くが覆い隠された瞬間、今までとは比較にならない痛みが走った。
正常でない思考さえもその一撃吹っ飛ばされてしまった。
「ご、ごべっ・・・!?」
もうまりさは何も考えられない。ただこの痛みから逃れたい。
その一心でわけも分からず謝罪の言葉を口にしようとするが思うように言葉にならない。
痛みが、恐怖が僅かに残された自由を完全に奪ってしまっていた。
そんなまりさをあざ笑うかのように、青年は再び拳を振り上げ、残された左目めがけて振り下ろす。
「んな゛・・・!」
さっき以上にスローモーションで世界が覆い隠され、何も見えなくなった。
直後、意識を根こそぎ奪うような強烈な痛みと、それすら許さない絶望的な苦痛がまりさを襲う。
痛みで纏まらない思考の中で何も見えないことに気がつき、よりいっそう恐怖におののく。
「ざぃ・・・っ!?」
それでも痛みから逃れたい、もう許して欲しいという思いが彼女に「ごめんなさい」という言葉をつむぎ出させた。
しかし、そんな言葉なんて青年の前では何の意味の無いただの空気の振動に過ぎない。
彼は立ち上がり、跳躍するとまりさの腹部に着地する。
その一撃によって、まりさはようやくゆっくりすることが出来た。
「さて、と・・・お前らはドスの元に逃げな」
「「ゆゆっ!ゆっくちぃ?」」
流石の赤ゆっくりも青年がそんな言葉を口にすることに違和感を覚えるらしい。
じっと、彼を見上げながら首をかしげるような仕草をしている。
その様子に気付いた青年ははぁ、とため息をつき一言。
「俺は虐待出来ないとゆっくり出来ないから全滅されると困るのさ」
「「「ゆっくちー!」」」
その言葉に納得した赤ゆっくり達は我先にとドスのもとへと跳ねて行く。
青年は赤ゆっくり達の背中を見守りながら、物陰に隠れて彼女らの後を追いかけていった。
彼にはドスまりさを目視することが出来ない。
「「ゆゆっ!どちゅーーーーー!」」
「「「ゆっくちー!!」」」
「「どちゅー!ゆっくちー!」」
家族を殺され、口の中に放り込まれ、散々ゆっくり出来ない思いをした赤ゆっくり達は目に一杯の涙を浮かべてドスまりさに近寄ってゆく。
ココに来るまでの苦難の道のりを思い出しながら、家族の犠牲を思い出しながら。
しかし、これでようやくゆっくりできる。
そう思うってドスの下まで駆けて行く彼女達の目には確かに希望が宿っていた。
『ゆゆっ!おちびちゃんたち、どうしたの?赤ちゃんだけでこんな・・・ゆぎぃ!?』
ゆっくりしたいという思いゆえに青年の言葉を鵜呑みにした赤ゆっくり達。
彼女達の希望の光は驚愕と恐怖によってあまりにもあっけなく黒く塗りつぶされた。
「先制攻撃、成功」
赤ゆっくり達の視線の先には、ドスの大きな瞳。
その大きくて綺麗な2つの瞳に大きな木の枝が突き刺さっている。
枝を突き刺したのはドスまりさを見ることが出来ないはずのあの青年。
「ゆっ・・・ゆっ・・・」
「・・・ゆぅ?」
赤ゆっくり達の未熟な思考では理解が追いつかないらしい。
しかし、ドスまりさだけは全てを即座に理解した。
人間には見えないドスまりさを攻撃する時ににもっとも一般的な手段。
ゆっくりに見つけてもらい、さっさと目印をつけてしまうというものだ。
『あ、赤ぢゃんを利用するなんて・・・ゆっぐりしてないお兄さんだね・・・!』
「そんなことより動くと赤ゆっくりが潰れるぞ。っても見えないだろうけどな」
「ゆっくちー・・・?」
『ゆぐっ!お兄さんはどうしてこんな事するの!?』
あらゆる戦いにおいて言えることだが、先制攻撃が決まるというのは勝敗を決する上で非常に大きな要素である。
前もって準備しておいた最大級の一撃を、相手の最も重要でありながら脆いところに叩き込む。
それに成功し、ドスまりさの視力を奪った青年と視力を奪われた上に足手まといを抱えた状態のドスまりさでは明らかに彼女のほうが分が悪い。
切り札のドスパークも赤ゆっくりにも纏わりつかれた状態使えない・・・そこまで即座に判断しての苦肉の説得。
「お前に虐待仲間を殺されたからだ」
『ゆぅ?どういうごど?!』
圧倒的優位にいる彼がその言葉に応じてくれるとは考えていなかったドスまりさだけに、彼が食いついたことに内心喜び、話を続ける。
『まりさ達そんなゆっくり出来ないことしないよ!』
「ああ、お前達は何もしていないさ。ただな、お前らがいい子ぶりっ子だったせいで僕の村では虐待禁止令が出されたんだよ!」
『あ、当たり前だよ!まりさ達は悪いことしないでゆっくりしているだけなんだから!?』
「そうさ、その通りさ!でもな、僕らは虐待がしたいんだ!お前達を殴り、蹴り、摩り下ろし、焼き上げて嬲りつくしたいんだよ!」
万が一にもドスパークを撃たれないように少しずつ移動しながら青年は両手を広げて天を仰ぎ、高らかに叫んだ。
「善良で迷惑をかけないゆっくり?良いことじゃないか!僕はそんな真面目で純朴で心優しい君達を理不尽にぶち殺したいんだよ!」
「悪辣で小ざかしいゲスゆっくり?知ったこっちゃないね!どの道人間には勝てないんだし、せいぜい制裁と称して痛めつけてやるよ!」
「家族を連れて幸せそうにしているゆっくりどもをさぁ!後ろからいきなり殴りつけて、子ども達を踏み潰しまくってさぁ!」
『・・・・・・・・・うわぁ』
「そしたらお前達は目に一杯涙を溜めてこういうだろ?どほぢでぞんなごどずるのおおおおおお!?ってさ!アレがたまんないんだよ!」
「アレを見てるとさ、もっと苛めたい、もっと痛めつけたい、もっと弱らせたい、もっと絶望させたい、もっと殺したいって感情が湧き上がってくるんだよ!」
「ああ、そうだ。好きな女の子を苛めちゃう感情に近いかもしれない!いいや、違うな!そんなもんじゃない!僕のこの気持ちはそんなもんじゃないなんだ!」
「お前達を見ていると語りかけて来るんだよ、頭の中からさ!もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと・・・って!」
「何なのお前ら!?何でそんなに魅力的なの!?どんだけ可愛いんだよ!?本当にさ、いい加減にしてくれよ!お前ら見てるとムラムラして来るんだよ!」
「分かるだろ?僕らは誰よりもお前らが大好きなんだよ!恋の病で死んでしまいそうなくらいに大好きで大好きで仕方がないんだよ!」
『そんなの分かりたくないよ』
「だからさぁ、虐待禁止なんていわれたら頭がおかしくなっちまうんだよね!分かる?分かるだろ!?分かれよ!」
「そのせいで僕の仲間は皆死んじゃったんだよ!穀葉の奴は我慢しきれずに飼いゆっくりを襲って村八分にあってそのまま死んだ!」
「南田の野郎は我慢しすぎたせいで発狂した!玉男と姉木はヤリ過ぎて死んだ!椋ちゃんは風邪をこじらせて死んだ!」
『言いがかりにもほどがあるね!』
「どうしこんなことするの?決まってるだろ!好きだからだよ!大好きだからだよ!お前達、もしくはお前らを虐待することが!」
「生きるのに必要ないとかさ、倫理的に間違ってるとか!そんなことは言われなくても分かってるんだよ!」
「大体さあ、お前達だってゆっくりしたいがために他の生き物を食ってるじゃん?!なのになんで理由なんて聞くんだよ!馬鹿じゃねえの?!」
「生きるためなら大人しく食われてくれるのか?!だったら気が狂って死んだ奴がいるから虐待だって十分生きるためじゃないか!?」
『虐待しなければダメなこと自体おかしいんでしょ!』
「仕方ないだろ!お前達が可愛すぎるせいなんだからさぁ!それこそあれだ!可愛くてゴメンねって奴だ!」
「だから僕らの虐待はお前達がゆっくりするために弱者を食むと何も変わらないんだよ!」
『ゆぅ・・・でも、草さんも虫さんも喋らないよ!』
「そうかそうか!喋らないときたか!じゃあ、言葉をちゃんと話せない赤ゆっくりは殺しても問題ないんだな!怪我して喋れない奴は問題ないんだな!?」
「もう御託はいいんだよ!理由とか理屈とか正当性とか知ったこっちゃねえ!どうせ薄汚れた道なんだ!だから言うよ、言っちゃうよ!?」
「ひゃああ!我慢できねぇ、虐待だああああああ!!!」
いくらなんでもはしゃぎすぎだろう。
誰もがそう思う長ったらしい語りの後に青年は適当に調達した木の枝を片手にドスまりさに飛び掛った。
直後、ドスまりさから発せられた不思議な光があたりを包み込む。
『ゆっくり光線だよ!』
「ゆっくちできるよー」「ゆっくちー」
『これならお兄さんでも・・・ゆべっ!?』
ゆっくり光線。それは範囲内に入った相手を問答無用にゆっくりさせてしまう不思議な光線。
これにかかれば人間はおろか、妖怪でさえもゆっくりさせられてしまうというある意味ではドスパークを上回る切り札だ。
しかし・・・
「無駄だああああああああああ!」
目の前にいる青年には何の効果もなかった。
信じられないことにゆっくり光線の中にいながら、青年は木の枝を捨てて素手でドスまりさを殴り飛ばしていた。
彼よりはるかに重いはずの彼女が拳を振るわれるたびに顔面がひしゃげ、苦痛に呻き、底部を引きずる。
『ど、どうぢで・・・っ!?』
「ひゃっはあああああああああああ!!」
ドスまりさには理解できないかもしれないが、答えはあまりにも簡単。
彼が今とてもゆっくりしているのだ、彼なりのやり方で。
ドスまりさを痛めつけることで、それも圧倒的強者として弱者をいたぶるという対ゆっくりの図式で。
そう、青年の強烈な虐待欲求がドスのゆっくり光線の「強制的にゆっくりさせる」力を上回り、そのエネルギーを取り込んだのである。
「ひゃっはああああああああああああ!!」
右ストレート、回し蹴り、フック、アッパー・・・手足のないドスには繰り出される攻撃の名称など知る術もない。
ひとつだけ確かなことは青年がゆっくり光線を無効化した上でドスまりさを圧倒しているということだ。
しかし、ドスは痛みに屈さない。足元の赤ゆっくり達を守るためにどっしりと底部を地に着けて青年の攻撃に耐える。
「ひゃ・・・ッはああああああああああああああああああ!!」
が、それももう限界。青年はドスまりさの頬を掴むと彼女を思いっきり、天高く放り投げた。
ありえないほどの力で持ち上げられたドスまりさは抗う術もなく宙を舞い、そこから地上を見下ろし、赤ゆっくりが既に潰されているのを確認する。
何もかも失ってしまった絶望の中で目の前の脅威だけでも排除すべく、青年めがけてドスパークを放つ。
対する青年は満面の笑みを浮かべたまま天を仰いでその光を見つめていた。ゆっくり光線の圏外ではただの人間だというのに。
その姿はありえないことだが、どこか慈悲を感じさせるもので、その日仮を受け止めようとしているように見えた。
「散々虐待したし、僕はもう満足したよ。だからさっさと地獄に行って仲間と一緒に虐待をしよう」
そんな言葉を言外に匂わせるたたずまいだった。
結局、彼は最後の最後までドスパークをよけようとする素振りすらも見せずに光に飲まれた。
一方のドスまりさも彼が消し炭になったのを確認し、満足げな笑みを浮かべながら重力に引かれ、一本の木に体を貫かれて息絶えた。
こうしてドスを失ったの森で青年の虐待を受けたゆっくり達は心と体に負った傷を引きずって生きてゆくことになった。
「ちぇえええええええええええええん!?」
「「「「ら、らんしゃまああああああああああ!?」」」」
ドスが死んだ直後もずっとそんな雄叫びを上げ続けていたのは、家族のちぇんを木に括りつけられたちぇんとらんの一家。
らんは何とかパートナーや子ども達を助けようと米弾を撃つが、それによって赤ちぇんを2匹、子ちぇんを1匹死なせてしまっていた。
赤ちぇんは米弾が当たった時点で潰れてしまい、子ちぇんは落下した時点で潰れてしまう。
幸いこのらんは米弾を当てるのが上手だったためまだ1発も外しておらず、尻尾の弾(もといおいなりさん)はまだ5発も残っている。
「ちぇん!いまたすけるよ!」
「らんしゃまあああああああああああああ!」
だから彼女は子ども達を助けることを諦め、パートナーのちぇんを全力で助けることにした。
1発目。ちぇんの頬に直撃するが、彼女を揺らしただけで落下する気配を一向に見せない。
成体ちぇんの丈夫な尻尾は弾の勢いだけでは引き千切ることが出来ないようだ。
「らんしゃまあああああああああああああ!?」
今度はもっと強く・・・そう思ったらんは更に勢い良く空気を吸い込み、思いっきり米弾を吐き出す。
今度もきっちりちぇんの頬に命中。が、それでもまだちぇんは落ちて来ない。
これであと3発。しかし、どう頑張っても無事にちぇんを助け出せるとは思えない。
「ゆぅ、こうなったら・・・」
らんは母の言葉を思い出していた。これは決して使ってはいけないと。
先ほどと同様に思いっきり空気を吸い込んでぷくぅっと膨れ、思いっきり良く米弾を撃ち出す。
それも先ほどまでのように1発ずつではなく、3発を立て続けに。
「ゆ゛っ!ぐっ!?わがっ!?」
1発目。先ほどと同様に頬に直撃し、ちぇんが大きく揺れる。
2発目。幸いにもちぇんの揺れの勢いを殺すことないタイミングで命中し、その衝撃によってちぇんの尻尾の皮が僅かに裂ける。
3発目。これまた幸運にも先ほど裂けた尻尾に直撃し、ちぇんの尻尾は本体から完全に離れた。
「ら、らんしゃまあああああああああああ!!」
木から落ちるちぇん。らんは自分の名を呼ぶ彼女の元に駆け寄ろうとするが・・・
「ゆゆっ!うごかないよ!?」
「りゃんもうごかにゃいいいいい!?」
「わがらに゛ぁいいいいいいいいい!」
青年に底部を焼かれてしまっていたことを完全に失念してしまっていた。
そうこうしている内にちぇんは地面に落下し、その衝撃で底部に穴が空いてしまった。
幸いにも中身の流出は少ない。しかし、この怪我では動くこともままならない。
「らんしゃまああああああああああああああああ!」
「「ちぇえええええええええええええん!」」
成体ちぇんはせっかく木から降りることが出来たにもかかわらず、泣き叫ぶことしか出来ない。
そして、彼女が動けない以上餌を取ってくることの出来るものが1匹もいない。
木に括りつけられたままの子ども達も、動けない底部を地に着けたまま立ち尽くす3匹も、数日後には物言わぬ饅頭となった。
最終更新:2022年01月31日 03:06