残酷な神が支配する

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残酷な神が支配する ◆L62I.UGyuw


『4年三組』と書かれたプレートの下の扉をガラリと開けて、二重に首輪を嵌めた少年が薄暗い廊下に現れた。
少年は髪を金に染め上げ、前面に英字がデザインされたシンプルなTシャツを着ている。
妙に軽装だが、まるで寒さを感じていないかのように平然と細い五指で髪を掻き上げ、

「ざぁんねん、なーんにもないゎん♪」

そしてしなを作って、姿に似合わぬ艶っぽい声を出した。

少年の正体は蘇妲己。
より正確に言えば、蘇妲己という人間の娘の肉体を奪い、彼女に成り済ましていた狐の大妖である。
その蘇妲己の肉体は先頃滅ぼされてしまったのだが、紆余曲折を経て代わりに新しく手に入れたのがこの少年の肉体という訳だ。

デパート付近に張った空間宝貝『落魂陣』の中にいた彼女が――ここでは彼女と呼ぶことにしよう――何故この小学校にいるのかといえば、それも簡単な話だ。
落魂陣によって生成された亜空間が、元々あったワープ空間に妙な具合で結合していたのだ。
その影響で本来の出口とは別に、落魂陣の隅に小学校の体育館に繋がる裂け目が生じていた。
そして悪いことに、落魂陣とワープ空間が結合した状態で固定されてしまったらしく、落魂陣の解除が出来なくなっていた。
何らかの宝貝を使えば無理矢理解除出来るかもしれないが――所持している宝貝が映像宝貝だけでは、流石の妲己にもどうにもならなかった。
唯一の幸運は、混乱に陥っているであろうデパート周辺から、誰にも知られることなく離脱出来たことか。

そういう訳で、落魂陣には早々に見切りを付けて、彼女は小学校を探索していた。

校舎内部には、ガラスの割れた教室などの争った跡が見受けられたが、残念ながら武器の一つも落ちてはいなかった。
物質的な収穫は用務員室でいくらかの工具を手に入れた程度だ。
むしろ最大の収穫は職員室で発見したPCから得られたネット上の情報だろう。
ネット上には虚々実々の様々な情報が発信されていた。
真偽の判定は難しい情報も多かったが、重要なのはそんなことではない。

妲己が特に注目したのは、存在する情報ではなく存在しない情報だった。
ネット上で『安藤潤也』の名が登場したのはただ一度のみであり、それもゾルフ・J・キンブリーという危険人物の撹乱であると推測可能なこと。
つまり『安藤潤也』は、今のところあまりマークされてはいないと考えられる。
これは値千金の情報だった。
ここからはやはり潤也に成り済まして行動するのが得策だろうと彼女は考える。
無論、彼の兄を誤魔化し切ることは不可能だろうから、そこは十分に注意する必要があるが。

「それに今のままじゃ聞仲ちゃんを手懐けるのは難しいわねぇん……。どうしようかしらん♪」

静まり返った廊下を思案顔で歩く。
廊下半ばの階段の前に差し掛かったそのとき。
突如、外からスーパー宝貝にも匹敵するエネルギーの波濤が押し寄せて来た。
反射的に窓の外に目を遣る。

狭い校庭の向こう側に見える森が、白く淡く光っていた。
その白さは燃え尽きる寸前の炭火を想起させた。
恐ろしく静かで破滅的な光だった。

森の奥で何か途轍もないことが起きている。
妲己にもそれ以上のことは判らなかった。
しかし最悪なことに、エネルギーの奔流から逃れる術が一切ないことだけは、凡夫を誑し込むことよりも容易に理解出来た。

何の脈絡もなく降って湧いた死神の哄笑に、ぎり、と奥歯を噛み締めた瞬間――急激に光が膨れ上がり、世界の全てを真っ白に塗り潰した。


**********


それは異様な光景だった。

森の一角が、木の一本どころか葉の一枚すら残さず綺麗な擂鉢状に広く浅く削り取られていた。
積もっていた雪はその下の腐葉土ごと消滅し、赤土が剥き出しになっている。
地の下にあったのであろう岩や大木の根は、鏡のように滑らかな断面をそこかしこで晒している。

降りしきる重たい雪の中。
一人は道路脇でアイドリングを続ける白いセダンの中で。もう一人はそのすぐ外で。
片や驚愕と恐怖を、片や驚愕と不安を顔に貼り付けて。
眼前に展開されたその景色に、白昼夢でも見るかのような覚束ない視線を向けていた。

その二人――ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークと西沢歩が見守る中。
巨大な擂鉢の中心に、先程炸裂した白い閃光の残り香が、意思を持った霧のように集まって行く。
集まった霧は瞬く間に形を成し、体格の良い青年に変じた。

青年の姿を認めた歩は、安堵の溜息を漏らし胸を撫で下ろした。

ミリオンズ・ナイブズ。
間違いない。
彼の姿だ。

すぐに歩は、雪を浴びることも構わず、マントをたなびかせて駆け出していた。息が白く弾む。
後ろで長身の伊達男が、諦めたように脂で少し汚れたスーツの襟元を直したことには、まるで気付かなかった。

歩がナイブズの下に辿り着くまでの間、彼は微動だにせずただじっと背を向けて立ち尽くしていた。
ナイブズさん、と息切れした声を背中に受けて、彼はようやく振り向いた。
雪の降りしきる薄闇に、彼の姿はよく馴染んでいた。
そのまま放っておけば、どんどんと濃くなる周囲の闇に呑まれてしまいそうだった。

呼吸を整え、この場で何があったのかを訊こうとして、はたと違和感に気付く。

「えっと……ナイブズさん、ですよね?」

おずおずと歩が尋ねた。
姿形は寸分の狂いもなく彼女の知るナイブズそのものだ。
出会って半日程度とはいえ、絶対に見紛うことなどない。

そしてだからこそ――彼女の知る彼とは何かが決定的に違うと思ったのだ。

随分と間を置いて、ナイブズはそうだと確認するように答えた。
見上げた顔は半分闇に隠れていたが、複雑な表情をしていることが窺えた。

何があったのか、と訊くのはやめた。
訊いてはいけない気がした、と言った方が正しい。

代わりに、少し離れた場所に視線を移す。
そこには黒衣の男が倒れ伏していた。
ぴくりとも動かない。

「その人は――」

死んではいない、とナイブズは短く答えた。
そして少し逡巡するように間を置いて、小さく口を動かした。
聞き取れず、歩は小首を傾げる。
ナイブズはもう一度、今度ははっきりと口を動かす。

「……悪いが、そいつの手当てを頼む。確か傷を治す道具を持っていただろう。
 それと――理由は判らんが、そいつは人間でないモノを憎んでいるらしくてな。
 俺ではどうにもならんだろうが――お前なら話くらいは出来るだろう」
「え……あ、はい。分かりました!」

何があったのかは判らないが、断る理由はない。
何よりあのナイブズが『頼む』と言ってくれたのだ。
少しでも彼の役に立てるというのなら、それは僥倖だった。

歩は妖精の妖精の燐粉を手にして、倒れた男の方に一歩踏み出した。

その瞬間――いきなり、男が跳ね起きた。

「うわっ!?」
「何!?」

黒衣の男の顔に刻まれた傷跡が大きく歪むのが見えた。
歩はその傷跡の下にある眼を直視して――金縛りにあった。
眼窩には、地獄の業火で煮詰めた墨が渦巻いていた。

「バ……ケ……モノォォ――」
「馬鹿な……意識などなかったはず――!」

ナイブズも驚愕する。
事実、まだ彼の意識は戻っていないし、まともに動ける状態でもない。

だが。
だが、それでもなお、符術師の漆黒の妄執はナイブズの予測を、人間の限界を凌駕したのだ。
呻くような呪詛を吐きながら絶対零度の殺意を振り撒くその姿。
それはまさに彼の憎むバケモノそのものだった。

「――死ィィィ、ネェェェェァァァ!!」

手には血で描かれた符が数枚。
いつの間に取り出したのか。
目にも留まらぬ早業で放たれたそれらが、猟犬の群れの如くナイブズに四方から襲い掛かる。
ナイブズは精密機械の動きをもって、その全てを素手で叩き落す。
符に込められた霊力が皮膚を焦がした。

その隙に、ひょうはぼたぼたとドス黒い血が流れ落ちる右腕を強引に動かし、落ちていたパニッシャーを鷲掴みにした。
舌打ちをするナイブズ。

これは――完全に昏倒させるしかない。
冗談のような大口径がこちらを向いた。
銃弾をかわし、懐に入り込み一撃を加える。簡単なことだ。
引金に指が掛かったのを確認し――、

「――やめてっ!」

――――な。

射線に飛び出して来たジャージ姿の影を見て、ナイブズの思考が停止する。
完全に予測外。
歩が自分を庇ったのだと気付いたのは数瞬の後。

そして――生まれた刹那の空白は、全てを台無しにするには十分だった。



一閃。

突如虚空が裂け、光が縦に奔った。
雷が落ちたかのような音と共に、乾いた地に亀裂が走る。
僅かに遅れて土煙が舞った。

ずるり、と正中線に沿って符術師の体の左右がずれた。
同時に、くぐもった爆音。
符術師の頭が二つに分かれて宙に飛んだ。

巨大な十字架が地面にどすりと落ちた。
遅れて、支えを失った肉の塊が二つ、どちゃっと倒れた。
切断面から、赤や白や黄色の混ぜ物がミネストローネを皿に開けるように零れた。

ごろり、と。
ナイブズと歩の足元に、半分になった符術師の頭部がそれぞれ転がった。
互い違いの方向を向いた二つの眼が、血の涙を流していた。

ひょう。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードがその命を賭して護った人間。
それが無意味な肉塊となってしまった。

歩の頬が弛緩した。それは恐怖でも驚愕ですらもない、ただの反射的な虚脱だった。
彼女の理解は、まるで事態に追い付いていない。
十分に離れた位置で見ていたミッドバレイすら、起こったことを正確に把握するまでにたっぷり五秒は掛かった。
唯一、大きく見開かれたナイブズの眼だけが、全ての事象を狂いなく捉えていた。

落下の終端速度を遥かに超える速さで、何者かが天空から降って来て、その勢いで符術師を両断した。
至極単純で、しかし非常識極まる離れ業だ。

その離れ業をやってのけた何者かが、ゆっくりと立ち上がった。
土煙が晴れて行く。

「やあ、ナイブズくん――危ないところだったね」

鮮やかに華やかに煌びやかに。
全てを台無しにして、なお変わらぬ優雅な笑みを湛えて。
趙公明が超然と立っていた。



轟音。
ナイブズの足元の地面が爆裂した。
正確にはナイブズが一瞬前までいた場所の、だ。

空気の振動が歩の鼓膜を揺さぶったときには、ナイブズは既に趙公明の間合いに踏み込むところだった。
手には歩が持っていたはずの大鎌。
彼女の表情が驚きに変わるよりも早く、趙公明の脳天に鎌が振り下ろされる。

笑みを崩さず、鋭く右に身体を捻って半身になりつつ回避する趙公明。
切り返すように、横薙ぎに隙だらけの胴を狙う。

だが剣が振り切られる寸前、ナイブズは鎌を強引に手元へと引き戻した。
白い刀身が鎌の柄に激突し、火花が散った。

ほとんど必殺の一撃を力業で防御され、しかし趙公明は笑みを深める。

「覚えておきたまえ。怒りは視野を狭めるものだよ」

言うや否や、剣先が鞭の如くしなって伸び、後方にいた歩の身体に巻き付いた。

「わわっ、ちょっ」
「貴様ッ!」

ナイブズは咄嗟に鎌の柄を刃に滑らせて前へと踏み込んだ。
だがそれを見透かしていたかのように、趙公明は剣を傾けた。
踏み込みの勢いが右に逸れる。交差するように自身は左方へと跳ぶ。

「や、きゃああっ!?」

同時に、歩は釣られた魚のように趙公明の手元まで引き寄せられた。
長く変形した刀身がとぐろを巻いて、完全に彼女の自由を奪っている。

「やれやれ、そう逸らないで貰えるかな。君はエレガントな振る舞いというものを学ぶべきだね。
 それにしても――君達は本当に興味深いね。死ぬまで外れないはずのこの首輪をこうも容易く外すなんて。
 いや……それとも一度死んだ――のかな?」
「えっ、あ……っ」

その言葉に、歩が目を丸くする。
確かに、彼の逞しい首には何も嵌まってはいなかった。

「安心したまえ! 首輪を失っても戦いに参加する権利は失われない。
 まだまだ君はこの心躍る戦いを楽しむことが出来るのさ」
「……人質を取ってほざくことが『心躍る戦い』か。大した下種だ」

侮蔑と憤怒が篭ったナイブズの視線に、軽く片手を上げて、心外だといった調子で趙公明は返す。

「ノンノンノン、少々誤解があるようだね。彼女は人質ではなく賞品なのだよ。
 いや、ここは優雅に囚われの姫君と呼ぶべきかな。
 メインイベントを君にすっぽかされてはつまらないからね」
「貴様、この上何を――」

大鎌をへし折らんばかりに握り締める。
だが、仕掛けない。いや、仕掛けられない。
身体に異常に重くなっているのだ。
比喩でもなければ錯覚でもない。
実際に、体重の十倍以上の力が確実にナイブズの肉体を地に押し付けようとしている。

見ると、いつの間にか趙公明の背後に闇を固めたような球体がいくつも出現し、彼に付かず離れず浮遊していた。
数こそ多いが、先の戦いで次元断層の刃を捻じ曲げたものと同じだろう。
球体の能力は――おそらく重力操作。
空間を曲げ、高速落下を可能とし、身体に重圧を掛ける力となればまず間違いない。

「おや、ネットを確認していないのかな。まぁ単純なことさ。
 僕はこれから華麗なる武道会を開催することにしたんだ。それもただの武道会じゃない。
 この遊戯盤の上で行われる最大にして最高のバトル・ロワイアルだ!
 これはまさにメインイベントと呼ぶに相応しいものになると僕は確信している!
 そして君はそのメインイベントの最重要ゲストという訳さ。どうだい、素晴らしい趣向だろう?」

どうでもいい。
じゃり、と草一本生えぬ大地を踏み締める。

仕掛けられない理由はもう一つ。むしろこちらの方が比重が大きい。
冷静に趙公明を観察してみると、確かに与えたはずの傷が――服すらも――再生しているのだ。

つまりは。
この不敵な男は、まだ何か奥の手を隠しているということだ。
迂闊な動きは命取りになり得る。

とはいえ――それでも、以前のナイブズならば構わず斬り掛かっていただろう。
だが、今下手を打てば捕らわれた少女の命も危ない。
初めて実感する命の重みが鎖となってナイブズの自由を奪う。

なるほど、重い。
命とはこれほどまでに重いものだったのかと、そしてあいつはこんなものを常に背負っていたのかと、改めて感嘆する。

そんなナイブズの葛藤など全く意に介さず、趙公明は喋り続けている。

「……それで、集合時刻は午前零時。場所は北の競技場だよ。
 勿論、参加人数は自由だ。向こうの彼にも是非参加して貰いたい」

ビシリ、とミッドバレイに向けて遠くから指を突き付ける。

「まだ知りたいことがあるかもしれないけど、僕はこれから武道会の準備をしなければならない。という訳で、詳しくはwebで!
 ハーッハッハッハッハ! それでは、一足先に競技場で待っているよ!」

高笑いと共に、背後の球体の群れが蠢き、土埃が派手に舞い上がった。
同時に歩の長い悲鳴が上がり、あっという間に遠ざかって行く。
直後、ナイブズに圧し掛かっていた重圧がふっと無くなった。

「チッ……あの男……」

土埃が晴れたとき、趙公明の姿は忽然と消えていた。



サイドウィンドウに背中を預け、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークは一部始終をただ悄然と眺めていた。
呆けていた、という訳ではない。ナイブズに襲撃されてから今の今まで、彼の脳細胞は忙しく火花を放ち続けている。
吐き気がするほどの恐怖の中でも、出口の見えない絶望の中でも、決して思考をやめることはない。
戦場では思考を放棄した者から死んで行くということを、数々の修羅場を潜り抜けた経験から理解しているからだ。
半ば自棄になりながらも、身体の芯にまで染み付いたその習性が失われることはなかった。

意外なほど繊細な指先で、気休めにコインを弄びながら考える。

自らの眼と、そして耳で認識した事実。
そしてその意味を。

何が起こったのか、あのヴァッシュ・ザ・スタンピードが一帯の森と共に消滅したということ。
同時に塵と消えたはずのナイブズは、平然と元通りの姿を現したこと。
突然上空から乱入した男は、ナイブズに匹敵する戦闘能力を持っているらしいこと。
そしてどうやら――自分もその男に目を付けられてしまったこと。

「絶望の大交響曲、だな。フン、仰々し過ぎる。……俺の趣味には合わんな」

出来れば今すぐに途中退席したいところだ。
ろくでもないことに、この無粋なオーケストラの会場には『途中退席厳禁』という貼り紙がべたべたと貼り付けられているのだが。

だが。
しかし。
もしかすると。
これは千載一遇の好機なのかもしれない。

あの気障な男は競技場で大規模な戦いを引き起こすつもりのようだ。

ならば。
上手く立ち回れば、ナイブズを含めた厄介な者達を纏めて相討ちに――。

突然、ナイブズが大鎌を一振るいし、地面に人間大の穴を開けた。
心を読まれたような気がして、ミッドバレイは思わず震えた。
勿論、いくらナイブズといえども他人の心を読むことなど不可能だ。
八つ当たりか何かだろうかと一瞬考える。
だが、すぐにその考えは否定された。

ナイブズは文字通り四散した黒衣の男の亡骸を拾い集め始めた。
集め終えると、先程開けた穴に丁寧に降ろした。
そして鎌を使ってそこらから土くれを掬い、穴に投げ下ろし始める。

ミッドバレイはこれ以上ないほど当惑していた。
あれは――死体の埋葬をしている――のだろうか。
馬鹿な、と思う。
それは人類全てを憎悪する怪物の行動では到底あり得ない。
だが、他に解釈のしようがないことも確かだ。

ミッドバレイの困惑をよそに、穴に土を掛け終えたナイブズは、近くに散乱していた荷物も次々と拾い集めていった。
そして、最後に真紅のコートを拾い――顔の前に掲げて、少しの間、風になびく様を眺めた。
ちょうど沈む直前の夕陽が雪雲の合間から顔を出し、コートを照らした。
鮮烈な紅だった。
ゆっくりと、ナイブズは真紅のコートを羽織った。

そして、急にくるりとミッドバレイの方を向いて鋭く叫んだ。

「ホーンフリークッ!」
「……は? は、はっ!」

声が上擦る。

「聴こえていたな。競技場だ、追うぞ」

やはり見逃しては貰えないらしい。
ミッドバレイは暗澹たる面持ちで、ナイブズの後に続いた。

気付くと雪はみぞれに変わり始めていた。


**********




1:気のいい兄ちゃんに協力求めたら肺をブチ抜かれたんだけど(Res:10)

 10(?) 名前:たま藻のまへな名無しさん 投稿日:1日目・夕方 ID:ES0uTss1M
 ド派手な格好のバカが女の子を人質にして島の北部に向かってる。
 多分上の趙公明ってヤツだ。
 目的地は競技場だと思う。
 戦闘狂と言うだけのことはあって、ヤツの身のこなしは常識ハズレだった。
 女の子を救いたいんだが、悔しいがオレ一人では勝てそうにない。
 出来たら協力者が欲しい。




「ぅふん♪ 趙公明ちゃんったらノリノリねぇん♪
 面白そうだから、わらわも手伝ってあげちゃうわよん♪
 でもぉん……趙公明ちゃんに全部持って行かれちゃうのは困っちゃうわぁん♪
 わらわも競技場に行って、便利な駒をちょぉっと頂いちゃおうかしらん♪
 そのくらい構わないわよねぇん、趙公明ちゃん?」

小学校の正門から悠々と出て来たのは妲己その人。
そのまま迷わず遠くに乗り捨てられていた白のセダンに向かい、運転席に乗り込む。
エンジンキーは付けっ放しだった。

「……あらん?」

サイドブレーキの脇にリボルバーが挟まっていた。
運転手が置き忘れていったらしい。
相当動揺していたのだろう。

無理もないことだと妲己は思った。
目の前の、巨大なスプーンでくり抜かれたような窪地を眺める。
何しろ妲己ですら対処のしようがなかったのだ。
ただの人間がこの大破壊を目の当たりにして平静を保てるはずがない。

リボルバーを手に取り、それが宝貝などの特殊な道具ではないことを確かめると、助手席のクッションの上に放る。

競技場までは山道を行くか海沿いを行くか。
どちらにせよ途中で進入禁止エリアに引っ掛かるのだが、実のところそれは大した問題ではない。
首輪の爆破までの猶予は、エリアに入ってから抜けるのに十分であることを知っているからだ。

「途中で宝貝の一つくらいは手に入れたいわねぇん♪」

少し考え、向かう方向を決めると、妲己はギアを切り替えアクセルを踏み込んだ。


【ひょう@うしおととら 死亡】

【G-4/森/1日目/夕方】

【趙公明@封神演義】
[状態]:疲労(小)
[服装]:貴族風の服
[装備]:オームの剣@ONE PIECE、交換日記“マルコ”(現所有者名:趙公明)@未来日記
[道具]:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演義、狂戦士の甲冑@ベルセルク、橘文の単行本、小説と漫画多数
[思考]
基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。
0:キンブリーにゾッドの事を伝える。
1:闘う相手を捜す。
2:競技場に向かいつつ、パーティーの趣向を考える。
3:カノンやガッツと戦いたい。
4:ヴァッシュ、ナイブズに非常に強い興味。
5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。
6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。
7:キンブリーが決闘を申し込んできたら、喜んで応じる。
8:ネットを通じて更に遊べないか考える。
9:狂戦士の甲冑で遊ぶ。
10:プライドに哀れみの感情。
[備考]
※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。
※参加者の戦闘に関わらないプロフィールを知っているようです。
※会場の隠し施設や支給品についても「ある程度」知識があるようです。

【西沢歩@ハヤテのごとく!】
[状態]:手にいくつかのマメ、血塗れ(乾燥)、拘束
[服装]:ジャージ上下、ナイブズのマント、ストレートの髪型
[装備]:なし
[道具]:スコップ、炸裂弾×1@ベルセルク、妖精の燐粉(残り25%)@ベルセルク
[思考]
基本:死にたくないから、ナイブズについていく。
0:趙公明に対して――?
1:ミッドバレイへの憎しみと、殺意が湧かない自分への戸惑い。
2:ナイブズに対する畏怖と羨望。少し不思議。
3:カラオケをしていた人たちの無事を祈る。
4:孤独でいるのが怖い。
[備考]
※明確な参戦時期は不明。ただし、ナギと知り合いカラオケ対決した後のどこか。
※ミッドバレイから情報を得ました。


【H-3/森/1日目/夕方】

【ミリオンズ・ナイブズ@トライガン・マキシマム】
[状態]:融合、黒髪化進行、手に火傷、【首輪なし】
[服装]:真紅のコート@トライガン・マキシマム
[装備]:エレザールの鎌(量産品)@うしおととら、青雲剣@封神演義
[道具]:支給品一式×4、不明支給品×1(治癒効果はない)、パニッシャー(機関銃:90% ロケットランチャー0/2)@トライガン・マキシマム、
    手製の遁甲盤、筆と絵の具一式多数、スケッチブック多数、薬や包帯多数、調理室の食塩、四不象(石化)@封神演義、
    正義日記@未来日記、携帯電話(研究所にて調達)、秋葉流のモンタージュ入りファックス、折れた金糸雀@金剛番長、
    ヴァッシュのサングラス@トライガン・マキシマム、リヴィオの帽子@トライガン・マキシマム、ガッツの甲冑@ベルセルク、
    ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(3/6、予備弾23)@トライガン・マキシマム、ダーツ×1@未来日記、
    ニューナンブM60(5/5)@現実、.38スペシャル弾@現実×20
ナギの荷物(未確認:支給品一式×7、不明支給品×2(一つは武器ではない)、ノートパソコン@現実、
          特製スタンガン@スパイラル ~推理の絆~、木刀正宗@ハヤテのごとく!、イングラムM10(13/32)@現実、
          トルコ葉のトレンド@ゴルゴ13(4/5本)、首輪@銀魂(鎖のみ)、旅館のパンフレット、サンジの上着、
          各種医療品、安楽死用の毒薬(注射器)、カセットテープ(前半に第一回放送、後半に演歌が収録)、
          或謹製の人相書き、アルフォンスの残骸×3、工具数種)
[思考]
基本:神を名乗る道化どもを嬲り殺す。その為に邪魔な者は排除。そうでない者は――?
0:レガートと彼を殺した相手に対し形容し難い思い。
1:趙公明を追う。
2:ヴァッシュの分まで生き抜く。
3:ナギの支給品を確認。用途を考える。
4:搾取されている同胞を解放する。
5:エンジェル・アームの使用を可能な限り抑えつつ、厄介な相手は殺す。
6:自分の名を騙った者、あるいはその偽情報を広めた者を粛正する。
7:交渉材料を手に入れたならば螺旋楽譜の管理人や錬金術師と接触。仮説を検証する。
8:グリフィスとやらに出会ったなら、ガッツの伝言を教えてもいい。
[備考]
※原作の最終登場シーン直後の参戦です。
※会場内の何処かにいる、あるいは支給品扱いのプラントの存在を感じ取っています。
※ヴァッシュとの融合により、エンジェル・アームの使用回数が増えました。ラスト・ラン(最後の大生産)を除き約5回(残り約5回)が限界です。
 出力次第で回数は更に減少しますが、身体を再生させるアイテムや能力の効果、またはプラントとの融合で回数を増加させられる可能性があります。
※錬金術についての一定の知識を得ました。
※日中時点での探偵日記及び螺旋楽譜、みんなのしたら場に書かれた情報を得ました。
※“神”が並行世界移動か蘇生、あるいは両方の力を持っていると考えています。
 また、“神”が“全宇宙の記録(アカシックレコード)”を掌握しただけの存在ではないと仮定しています。
※“神”の目的が、“全宇宙の記録(アカシックレコード)”にも存在しない何かを生み出すことと推測しました。
 しかしそれ以外に何かがあるとも想定しています。
※天候操作の目的が、地下にある何かの囮ではないかと思考しました。
※自分の記憶や意識が恣意的に操作されている可能性に思い当たっています。
※ミッドバレイから情報を得ました。

【ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク@トライガン・マキシマム】
[状態]:背中に裂傷(治療済)
[服装]:白いスーツ
[装備]:ミッドバレイのサックス(100%)@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式×3、サックスのマガジン×2@トライガン・マキシマム、
    ベレッタM92F(15/15)@ゴルゴ13、ベレッタM92Fのマガジン(9mmパラベラム弾)x3、
    イガラッパ@ONE PIECE(残弾50%)、銀時の木刀@銀魂、
    ヒューズの投げナイフ(7/10)@鋼の錬金術師、ビニールプール@ひだまりスケッチ
    月臣学園女子制服(生乾き)、肺炎の薬、医学書、
    No.7ミッドバレイのコイン@トライガン・マキシマム 、No.10リヴィオのコイン@トライガン・マキシマム、
[思考]
基本:ゲームには乗るし、無駄な抵抗はしない。しかし、人の身で運命を覆すかもしれない存在を見つけて……?
0:ナイブズ、由乃、趙公明に対する強烈な恐怖。
1:ナイブズの態度に激しい戸惑い。
2:ひとまずナイブズに従う。
3:慎重に情報を集めつつ立ち回る。殺人は辞さない。
4:強者と思しき相手には出来るだけ関わらない。特に人外の存在に強い恐怖と嫌悪。
5:或の情報力を警戒しつつも利用価値を認識。
6:ゲームを早く終わらせたい。
7:鳴海歩を意識。ひとまずは放置するが、もし運命を打開して見せたなら――?
8:上手く立ち回って強者同士の相討ちを狙う。
[備考]
※死亡前後からの参戦。
※ハヤテと情報交換し、ハヤテの世界や人間関係についての知識を得ています。
※ひよのと太公望の情報交換を盗み聞きました。
 ひよのと歩について以外のスパイラル世界の知識を多少得ています。
 殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
※呼吸音や心音などから、綾崎ハヤテ、太公望、名称不明の少女(結崎ひよの)の死亡を確認しています。
※ガッツと胡喜媚を危険人物と認識しました。ガッツ=胡喜媚で、本性がガッツだと思っています。


【H-3/道路/1日目/夕方】

【妲己@封神演義 feat.うしおととら&魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:字伏の肉体(白面化15%)、潤也の魂魄が僅かに残留
[服装]:英字プリントのTシャツ
[装備]:首輪@銀魂(鎖は途中で切れている)、エンフィールドNO.2(1/6)@現実
[道具]:支給品一式×3(メモを一部消費、名簿+1)、趙公明の映像宝貝、大量の酒、工具類
[思考]
基本:主催から力を奪う。
1:競技場へ向かう。
2:自分の体や記憶の異変について考える。
3:主催に対抗するための手駒を集めたい。
4:うしおを立て対主催の駒を集めたい。が、獣の槍に恐怖感。
5:聞仲を手駒に堕としたいが……。
6:利害が一致するなら、潤也の魂魄の記憶や意思は最大限尊重する。
7:当面、『安藤潤也』として行動する。
[備考]
※胡喜媚と同時期からの参戦です。
※ウルフウッドからヴァッシュの容姿についての情報を得ました。
※みねねと情報交換をしました。未来日記の所持者(12th以外)、デウス、ムルムルについて知りました。
※みねねとアル及び剛力番長の一連の会話内容を立ち聞きしました。
 錬金術に関する知識やアルの人間関係に関する情報も得ています。
※みねねから首輪に使われている爆薬(プラスチック爆薬)について聞きました。
 首輪は宝貝合金製だが未来の技術も使われており、獣の槍や太極図が解除に使える可能性があると考えています。
※対主催陣が夜に教会でグリフィスと落ちあう計画を知りました。
※聞仲が所持しているのがニセ禁鞭だと気づいていません。本物の禁鞭だと思っています。
※潤也の能力が使用できるかどうかは不明です。

※落魂陣を通して小学校体育館とデパート跡地が繋がっています。



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