人は二度死ぬらしい。一度目は息が止まった時。
二度目はその後に誰かが名前を最後に呼んだ時だ
― Banksy
A1:お、オレの父ちゃん、す、スイスにいた。
…お、おめぇフランス語、しゃ、しゃべれるか?
そか!お、オレ少し英語得意ない。フランス語でいいか?
ー以下フランス語でー
まだ小さかったんで詳しくは知らないんですが、うちの家系は先祖代々の傭兵だったそうです。
祖父はは欧州戦争にも参戦して、たくさん勲章もらったんだぞって、父が自慢してました。
もちろん父も傭兵で、いろんな国で戦争してました。
そう、最後はユカタン半島のレジスタンスに参加していました。
えっ、母ですか?
僕が生まれてすぐに亡くなったらしいんですが…
すみません、よく知らないんです。母の話になると父は不機嫌になるんで…
きれいな人だったって話は酔った時に一度話していたのを聞いたことがあります。
A2:と、父ちゃん、い、いつも怒る…あ
ー以下フランス語でー
父は、そしておそらく母も、ヒューマンなんです。
えぇ僕はチェンジリングです。
母が亡くなったのも、おそらく僕が原因だと思います。
父からやさしい言葉をかけてもらった記憶はあまりないですね。
それに、見ての通り(トロールにしては)貧弱な体で、父の仕事の役にもあまりたたなかったんで、
いつも怒られてばかりいました。
ただ…、あんなに僕のこと、嫌っていたはずなのに、どこの国に行く時も、
僕を連れて行ってたのは何故なんですかねぇ?
Q3:じ、地面揺れる、水、いっぱいくる…あ
ー以下…ー
そう、ユカタン半島の地震、そのあとの津波…
あの時は、アズトラン軍の焦土作戦のせいで、物資が不足していて、
アズテックの補給船を強奪するって作戦だったんです。
だからみんな港に集まっててそれで…
たまたま僕は、どうせ役に立たないからって、トラックの中で留守番してたんです。
流されるトラックの荷台の中からずっと見てました。
横転した船、なぎ倒される家々、濁流に飲み込まれていく敵、そして仲間、もちろんその中には父も…
何も出来ずに…
ただただ見てました…
A4:とっトラック流れた。何日もいっぱい…
あ、えっと、そう津波で流されたんです。トラックごと…
一応ジャングル仕様で渡河機能なんかもついてたので、すぐに沈むってことはなかったんですが。
何日くらいったったんでしょうか、非常食もとうに尽きて(まぁ、もともと大してなかったんですけど)、
あもうダメかなって思ったところで、たまたまアレスの災害救助船に助けられて。
そこで知り合ったんです、ミセス・ジョンソン‐マリア・ジョンソン‐とは。
ミセスは、マザー…何とかって団体に参加してるとかで、事情を聴いてくれて、最後には僕を引き取ってくれたんです。
それから三年くらいでしょうかあの村で過ごしたのは。
えぇ、楽しかったですよ。
この体なので、最初はみんな怖がってましたけど、打ち解けるのは早かったです。
本当に、みんないい人たちばかりで…
あの事件が起こるまでは…
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‐ホライズン・ニュースデータバンク‐
トピックス
「山間部の農村で謎の津波?」
2065年○月×日
○○州××郡のMOMコミュニティの集落が、
局地的な原因不明の水害で壊滅。
死者128名行方不明者23名
周辺地域には一切被害は報告されておらず、
被害者の死因の多くは”海水”による溺死?とみられ、
捜査関係者は当惑を隠せていない。
唯一の生存者(現在意識不明の重体)の回復が待たれる。
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あれから(重要参考人→容疑者→証拠不十分で不起訴)、拘置所から釈放されて、これからどうしようかと途方に暮れて、
自然と足が村の方に向かっていたんです。
誰もいないはずなのに。
村にたどり着いてふと見たら、
みんなが待っていたんです。
ミセス・ジョンソン、引っ込み思案のマリー、ガキ大将のベック、
ガリ勉のマイク、食いしん坊のボビー、皮肉屋のミリンダ、
パン屋のブラウンさん、保安官のジェフさん、花屋のエミリー、
中古車屋のフレッドさん、鍛冶屋のモリソンさん、それに、それに…
”死んだはずの”村のみんなが!
前と同じように笑っていて、でも駆け寄ってみようとするんですが何故か近づけないんです。
すると、みんなから少し離れた所に墓守のレグがいて、西の方を指さしたんです。
”あっちに向かえ”って。
何日も歩いて、えぇ時には山の中で野宿したり、
でも普段は見守っているだけのみんなが、たまに”助けて”くれたりして。
そしてシアトルの近くまでたどり着いたんです。
そうしたら、またレグが近づいてきて
「ここで……見つけろ。」
って
え、何をって?
レグはたまに同じことを言うんですが、何故かいつもそこだけ聞き取れないんです。
だから、とりあえず、今僕は探すべきものを探してるんです。
A5:ば、ばあさん家の裏小屋、少しだけ大きくないだけ
お、オレどこでも寝れる。
だ、大丈夫。
A6:こ、これ(と言って首か下げている十字架を差し出して)
父ちゃんからもらった。
とても大事。
で、でも(体中にぶら下げている小さなマスコット人形を見せて)
これもっと大事。
こ、これ、村のみんな。
A7:お、おれ、いつも喋る遅い
ばあさんにいつも怒られる。
A8:あ、アズテク(ユカタンの)村燃やしてた、よくない。
アレス、(壊滅した)村、連れてってくれた、好き。
あと、少し知らない。
A9:《回想シーン》
‐シアトルの郊外
ぼろぼろの格好で疲れ切って
廃材に腰を掛けているラメックス
そこへ、杖をついた老婆が現れる
ラメックスをじろじろ見て
老婆:「こんなところで何をしてるんだい?」
ラメックス:「れ、レグにここに行けって、い、いわれた。」
老婆、ラメックスの後ろをじーっ見る
老婆:「精霊が騒ぐもんだから、ちょっと遠出してみたら、これまた、ずいぶんにぎやかな奴がやってきたもんだ。」
ラメックス:「えっ?」
老婆:「ついてきな。腹減ってんだろ?この辺は、あんたみたいのを見つけたら鉛玉ぶち込みたくてしょうがないって連中がうようよしてんだから。」
ラメックス:「い、いいのか?」
老婆:「飯は一人前しか出さないよ!」
ラメックス:「だ、大丈夫、オレなんでも食える」
老婆、振り返りもせず来た道を戻っていく
ラメックス、慌てて立ち上がりそのあとをついてゆく…
タリスモンガー
ばあさん:みんな『ばあさん』としか呼ばないため、本名は不明。
ダウンタウンで雑貨屋、及び数件のアパートを経営している。
さみあどの初セッションででてきた、エルフメイジの大家もこの人。
御年87歳。
裏の顔はインディアンのシャーマンの呪術屋。
常連のランナーたちの間では、
実は昔、凄腕のランナーだったとか、
ハウリングコヨーテのオシメを替えてやったことがあるとか、
素手でウェンディゴを倒したことがあるとか、
ダンケルザーンと知り合いだったとか、
さらにはそのダンケルザーンに説教したことがあるとか、
はたまた、サンフランシスコの水没の原因は、
実はばあさんを怒らせたからだとか、
様々なうわさがあるが、本人はすべて否定している。
フィクサー
ジェシカ・ノーラン:駆け出しのオークの何でも屋。
実は『村』の出身者でミセス・ジョンソンの養子の一人。
ラメックスの義理の姉に当たる。
本名はエリザベス・ジョンソン。
ラメがやって来る前に『村』を飛び出したため、ラメはそのことを知らない。
ラメが事件の真犯人だと疑っていて、かなり恨んでいる。
普段は、そのことをおくびにも出さず、
危険度の高い仕事を、うまくごまかしながら安くラメに斡旋している。
『村』と『村』のみんなについて
『村』とはメタヒューマン人権団体MOMの一部有志によって作られた、半時給自足の共同体。
ノンSIMの孤児たちを積極的に受け入れ、戸籍(なんと本物の!)を与え、社会復帰を目指していた。
ラメの義母であるミセス・ジョンソンことマリア・ジョンソンはその中心人物の一人。
数年前に、謎の水害によって壊滅。
何らかの、魔法的な現象と考えられたため、唯一の生き残りであり、
また覚醒者でもあったラメックスが犯人と疑われたが、
当時はまだ、メイジとしては未熟だったため、
その様な、大規模な魔法現象を引き起すことは出来ないとして、
証拠不十分のため、不起訴となった。
なおラメックスは、ショックのため、事件当時の記憶は一切ない。
導師精霊
墓守のレグ(辻の老人レグバ):この世とあの世の境(辻)の門番。
まだ村にきて間もないころ、ラメがパン屋の主人のブラウンさんに、
村はずれの共同墓地に向かう分かれ道に、見知らぬ老人が立っていたと話したら
「ありゃ、"ベグ"(ベガー=乞食)だ。気になるんなら、なんか残りもんでもやっときゃ悪さもしねぇだろ。」
といったのを、"レグ"と聞き間違い、夕食を少し(といっても常人の一人前はゆうにある)隠し持って、
「おめぇ、レグってゆうのか?」
と聞いたところ、そうだと頷き、
仕事は何かと聞いたところ、ここ(辻=あの世との境目)を守っていると答えたのを、
ここ(共同墓地)を守っている=墓守と勘違いし、
それ以来、墓守のレグと呼んでいる。
もちろん、村人たちにはレグは見えておらず、
ラメはベガーに残り物を与えているのだと思われていた。
実は、ユカタン半島の津波の時点で、すでにラメを見初めて、『村』までついてきた。
A10:ば、ばあさんの仕事手伝う。
あ、あと、こ、これ(体中にぶら下げている人形を見せて)まだ全部ない、作る。
A11:お、オレ見えるもの、み、みんな見えない。
それ言うと父ちゃん怒る。だから見えること内緒。
ま、魔法、レグおしえてくれた。
と、父ちゃんか?
父ちゃんは戦争の話ばっかりで
あとは怒られたことしか覚えてない。
Q12:お、オレ、役に立ちたい。
役に立てば、みんなオレをほめてくれる。
人、殺す、少し好きじゃない。
でも、人すぐ死ぬ。
仕方ない。
A13:お、オレ困ったとき、
は、墓守のレグに頼む。
れ、レグ、みんな連れてくる。
みんな、得意なこと、助けてくれる。
れ、レグ、いろんな事、知ってる。
たまにいろいろ教えてくれる。
呪文も、レグ、教えてくれた。
ば、ばあさんも教えてくれる。
ばあさんの教える呪文、
少し、覚えるの難しい。
A14:体、機械入れる、よくない。
体にごる。
A15:村のみんな、とても優しいだった。
町のみんな、たまに優しい。
優しい人、助ける、オレ好き。
優しくない人、オレ嫌い。
A16:津波、父ちゃん流される、夢よく見る。
とても怖い。
あ、あと、村のみんな、怖い顔で、オレに向かってくる。
たまに見る。
みんな、ほんとは優しい、
なんで怖い顔するか、わからない。
A17:村のみんな、とてもだいじ。
ばあさん、少し怖いけど、優しい、だから好き。
A18:父ちゃん、オレのこと、やくたたず、いつも言ってた。
おれ、役に立ちたい。
ば、ばあさんの仕事、手伝う、
ばあさん、たまに怒る。
オレ、いつか怒られなくなりたい。
Q19:(体中にぶら下がっている、多数のマスコット人形を指さして)
こ、これか?
これは、村のみんなだ。
これが、ミセス・ジョンソン、これはブラウンさんで
これはマリーそれから…
(以後延々と続く)
Q20:な、なまえか?
ここれは、最初、ブラウンさんが付けた。
そ、それをミリンダが真似して、みんなだ呼ぶようになった。
い、いみ?
『デカいやつ』って意味だ。
みんな呼んでた名前だから
お、オレこの名前好き。
おめぇもラメックスって呼んでいいゾ
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