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蛇人間と少女 微エロ

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蛇人間と少女 6-459様

「ベラドンナにー、サラマンダーの粘液、あとカンタリスっと」
 ふつふつと煮立つ小鍋の前で、一人の少女が鼻歌を歌いながら金属光沢を放つ青い昆虫を薬研にかけている。手足は長いが細く、胸の膨らみもつつましやかで、体が成長の余地を残していることを示していた。
「ところで師匠、コレ何作ってんスか」
「材料を見れば自明ではないか。君は自ら考えるという事を知らぬのかね?」
 呼びかけられた相手は長くしなやかな頸を巡らせ、ジロリと少女を睨みつける。その言葉は流暢ではあったが、所々歯擦音が強調されて響く。キールのある鱗に縦に割れた瞳孔、胴体は長大にして後ろ足はない。その姿はまさしく蛇そのもの、ただ瞳に宿る知性の光と、委縮したように短い二本の腕が、その生物の超常を示していた。
「や、自明じゃないス。ジブンの想像通りだったら師匠を警察に突き出さにゃならんとこです」
「私が取ったのは『弟子』で、自分の為すところも知らぬ赤ん坊ではなかったと思うのだがねえ」
「どうも不肖の弟子で申し訳ないス」
 蛇人間は苛立ち尾を激しく震わせたが、少女は悪びれもせずでへへと笑い、鍋の中に薬研の中身を思い切り良くぶちまけた。
しゅっと煙が上がり、異臭が立ち込める。
「君も劣等種族とは云え錬金術師の端くれ、材料から推測も出来ぬとは。アカデミーでは何を教えているのか」
「や、まァジブンなりに考えてはみたんですけどネ。最初強心剤かなっと思ったんスけど、強心も行き過ぎて心臓止まるし、麻酔剤にしたらその場で永眠だしー、媚薬にしちゃあ内容がちと不穏じゃないかと」
「完全に無知ではないのだね。そう媚薬だよ」
 蛇人間はわずかに顎を開き、鋭い歯の間からちらりと舌を覗かせた。

「ビヤクっ。モテない男オヨビ女の最終兵器ですね。お目にかかるの初めてっス、やっぱ店には頼みづらいんですかね負けたみたいでッ。
あ、でもこれ内服できないじゃないスかダメじゃないですか。飲んだら一発でオダブツで」
「ちと口を閉じたまえ。沈黙は金と云う言葉を知らんのかね?」
 猫のような丸い目が金色にひらめき、歯はかちりと鳴る。少女は言われた通りぱくんと口を閉じた。
「さてこれはさる貴婦人の依頼品でね。あらゆる男に愛されたいとの事だったのだが」
「そりゃまた淫乱なこって」
「黙りたまえ。それでこれを作ってみたわけだ」
 鉤爪のある指が未だ湯気を立てる鍋を掴み、慎重に傾けて、漏斗の上に内容物を流し出した。なんとも形容しがたい色の液体がフラスコに溜まっていく。
「この香気は霊長類の雌雄両方に対して性フェロモンとして作用する。君たちの退化した嗅覚でも感じ取れるように工夫したつもりだ」
「要は香水ですか。えっらい臭いスけど。つまりこれを付ければ男女構わずごっつモテモテたまらんわウッヒッヒっと」
「君の言動は猥雑に過ぎて、何を言っているのか分からないことがしばしばだよ。知的レベルに差がありすぎるというのも困りものだね・・・とにかく!
話はそう単純ではない。そも殆どの場合、雄にとって発情とは雌の性的成熟に引きずられる形で発現する現象なのだ」
「はあ」
「というわけでこれは雄に劣情を引き起こすと同時に、雌には催淫剤として作用するように調合した」
「師匠ジブン用事を思い出しました」
 それまで蛇人間の熱弁をぼんやりと聞いていた少女は、催淫、という言葉が出た瞬間に立ち上がり、今までの無気力さが嘘のように素早く扉へ向けて突進し・・・ようとして長い胴体に行く手を阻まれた。

「と言っても作用には若干未知の部分があり、加えて君が言っていた通り、原料は劇物であり危険性が否定できない。ついては試験をば頼みたいと」
「イヤですっ。その辺で適当に女でも男でもリットルいくらで買ってくるといいっス!」
「私の時代はもったいないからあるものを使えと教わったのでね。たまには師に孝行したまえ」
「ジブンは教わってないです!いやー!そんな孝行はいやあー!!!」
 太い蛇の胴体にみっちりと締め上げられた少女は、じたばたと必死に暴れたが、そこは種族の悲しさ。一度蛇の抱擁を受ければ、非力な霊長類に抵抗の術はない。はたしてそのもがきは功を奏さず、蛇人間は少女を軽々と抑えこんだままに仕上げの準備を始めた。
「さて、器具は揃ったが完成までにはかなり時間がかかるな」
「じ、じゃあその間にトイレ行ってくるんで一回放してください」
「だが幸い有効成分は変わらないから、試験は抽出中に済ませてしまおうか。吸入したまえ」
「いやー!くさいー!ケモノの臭気がするー!」

「ふむ、効力は上々」
「師匠最低っスドン引きです」
 体をみっしりと拘束されたまま、少女は息も絶え絶えに言葉を吐きだした。目はとろんと淀み、頬が赤く染まっている。鱗に包まれた胴が後ろから股の間をくぐり、余りの尾の部分は白い腹に巻きついていた。
「普段からこれくらい大人しければ君も可愛げがあるんだがねえ。どうも猿の如くうるさいばかりで」
「や、猿でいいんでこういうのホントやめ・・・て!ちょ・・・やっ」
 ゆるゆると巻き締める胴体の動きに合わせて、少女の声が高くなる。なんとか自由になろうと腕に力が込められるが、その指先は虚しく鱗を掻くばかりで何の抵抗にもならないようだった。

「しかし男性の被検体がおらぬのが問題だね。肝心の『愛される』かどうかの部分がわからない」
「師匠っ、まさか、まさかそんな・・・」
「愛弟子を飢えた獣に捧げるようなむごい真似をどうして私がするものか」
 蛇人間は首を下げるとつとうなじに顔を寄せ、炎のような舌を白い肌に這わせた。
「あの師匠、説得力に欠けてないスか?」
「なに一貫しているとも。昔からよく言うじゃないかね、出来の悪い子ほど可愛いと」
「愛しているにしては言動も行動も外道では」
「愛の鞭と受け止めてくれたまえ」
「やんっ!」
 少女の股ぐらに食い込んでいる胴が押し上げられ、強く股間を圧迫した。少女の細い背が反り返る。
「そも愛なくして交尾が成立しようはずもない。通い合うものもなく生殖の意思が生ずるなど野蛮に過ぎる」
「師匠その発想、乙女みたいでキモい・・・あっ!やめてっ!あぁあぁ」
 上半身は考えるようなポーズを取っているが、下半身は元気に生殖行為を続けている。
「さて午後は来客の予定もない、抽出は明日の朝まではかかる。今日は差し迫った用事が何もない」
 まったく蛇そのものという動きで鎌首がもたげられた。ビーズのような目がひたと少女に据えられ、白い顎に鱗に覆われた指先が添えられる。
「古来ハイパーボリアより伝わるヴァルーシア仕込みの房中術をば教授したいのだがね。君さえ良ければ」
「・・・ノリノリっスね、師匠・・・」





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