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体は自然

養生生活の基本


はじめに

 私が、この頃、養生生活の基本と思うことを書いてみます。

 基本的には、「体に起こる自然現象を把握し利用する」こと
と思います。

術伝流「養生生活の基本」

 「自分の体に起こっている自然現象を、昔の養生の達人達も
利用し書き残したことも参考に、十分に把握し、適切に利用す
る」 ことが養生生活の基本です。

(0)体の勘を磨き育む

 養生生活は、知識や技術を知っているだけでは十分では無い。
それが無意識で実践できるレベルに身に付いていることが必要。

 「頭で考えている」レベルや「心で思っている」レベルでは
不十分で、無意識に判断し行動することが可能な、動物的(野
性的)勘のレベル。そう言う風に成れるように、勘を磨き育ん
でいくことが大切。

 そして、養生は相性でもある。様々な養生法の中で自分の体
に合った養生法を選んでいく必要がある。そういう自分の体に
合うか合わないかについての勘の良さも必要。少しずつ試しな
がらイイ感じのものを選んでいく。そういう勘も育んでいく。

 鍼灸や操体を人にする時も、その人のその時の体の状態を診
て、ぴったり合うように鍼灸操体できると効果が出やすい。刻
一刻と変化していくことが多いので、それに即時即応できるよ
うに、そういう勘も磨いていく。

(1)体内余剰電気を抜く

 ピリピリビリビリした鋭い感じの痛み辛さは、江戸時代の鍼
灸書に書かれた邪気に因ることが多い。邪気を体の外に抜き出
せば、痛み辛さは軽くなる。

 邪気は、現在の言葉で言えば、体内に溜まった余分な雑電気
だろう。

 言い換えれば、機能性疾患の範囲なら、急性症状の痛み辛さ
は、邪気(体内余剰雑電気)を抜き出せば、ほとんど改善する。

 手足末端に鍼灸などで強刺激を与えることが効果的。爪にナ
イフで☓印を描いたり、指をピリピリビリビリする位に反らす
のも良い。

 コンセントに付いているアースに触る。コンセントにアース
が無い場合は、土に触ることで代替可能、というか、アースに
触るのは、土の触ることの代替。

 表層の皮膚内体内静電気はアースで抜けるが、深層の筋肉
(特に姿勢維持筋)内の雑電気はアースでは抜けにくく、深層
筋肉まで刺鍼した方が抜けやすい。

 定期的な深鍼治療がお勧め。また、深層の筋肉を弛める操体
按摩指圧なども効果的。

追記:2017.02.09ーーー
 ただ、静電気は逃げやすいので、邪気の全てを静電気と考え
にくいと思います。そういう意味で、邪気は、静電気を含む生
体内の余剰な雑電気と考えるのが妥当と思います。

 深層の姿勢維持筋に溜まった邪気は静電気だけとは考えにく
く、アースだけでは抜け切らないように思います。
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(2)筋肉の凝りを弛め、立位で体の中心軸を整える

 筋肉の凝りを弛めて歪みを少なくし、立位で体の中心軸を整
える。

 イイ感じの動き、体が感じる気持ち良い動きをしていくと、
筋肉は弛む。筋肉を弛めると、たいていの不快な症状は取れて
いく。下半身、特に脹脛を弛めると長持ちする。

 (左右両足の中央付近に有る)足心の中点の真上に、丹田
(体の重心)や百会(頭の中心の象徴)が来るようにして、重
心軸(体の中心軸)を整える。具体的には、立位や座位の重さ
の操体がお勧め。イイ感じを探しながら体丸事の気持ち良さを
深めていく。

 立位で中心軸が整っていないと、バランスが崩れやすく、疲
れやすくなる。すると、余分で無理な負荷が筋肉に掛かるので、
筋肉に機能性病変が出て来て、体が歪んでいく。

 鍼灸で邪気を抜くと、筋肉は弛みやすい。

 立位での重さ操体をすると、中心軸が整いやすい。

「立位などから重さの操体」
http://www26.atwiki.jp/jutsuden/pages/26.html

(3)精製物・化学合成物を減らし、丸事食・発酵食を増やす

 白砂糖、精製塩(NaCl)、白米、精白小麦粉などの高度精
製物や、「味の素」(化学調味料)や食品添加物などの化学合
成物を減らしていく。遺伝子組換え(GMO)も減らす。

 味噌や醤油なども自然海塩を使ったものにしていく。

ーーー 追記:2020.10.19 ーーー
 外食や中食で精製塩(NaCl)を摂取してしまう場合は、
「海の調べ(濃厚にがり液@海の精)」などを水などに入れ
ニガリを意識的に摂取すると良いです。
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 マーガリンなどのトランス脂肪酸はじめ精製油脂も減らす。

 丸事食は、生きていた生物を丸事食べること。具体的には、
白米など精製されたものでは無く、玄米、全粒小麦粉、雑穀、
豆類、ナッツ類、チリメンジャコ、桜エビ、アミエビ、イカ、
タコ、貝、小魚など、生きている(あるいは、生きていく可能
性のある)生物のまま丸事食べることを指す。

 野菜なども、季節に応じて、葉、茎、実、根など、色々な部
分を食べる。春は芽葉(菜の花,葉玉葱,新若芽,春の七草,ヨモギ,
山菜,葉物)、夏は果菜(キュウリ,ナス,トマト,ナーベラなど)
の漬物、秋は果実・堅果(ナッツ)、冬は根菜を多くする。

 味噌、醤油、味醂、酒粕、納豆、漬物、醤油麹・塩麹などに
含まれる麹菌、乳酸菌はじめ菌類、全体で栄養素に変化の少な
い海藻類、キノコ類を食べることも含む。腸内はじめ体の内外
の細菌類との共生を大切に(細菌も丸事生物)。

 生きている全体を食べることで、質的栄養不足や特定栄養素
過剰を防げる。

 イヌイット(エスキモー)は肉食中心だが、生で(腸内容物
を含め)内蔵を食べることを始め、食べられる所は全て食べる。
沖縄や欧米なども、内蔵、顔、尻尾、足、骨髄、脳など全身食
が普通。

 飲み物に自然海水塩(雪塩、ヌチマース、海の精など)を少
量(吸い物や味噌汁程度の濃さ)入れて、飲む。ヒトの体液は、
祖先の魚が陸に上がった頃の太古の海の水に由来する。その頃
の海水と同じ物を入れると、古い水毒が排出されやすく成る。

 油脂も同じ。油脂として製品化されたサラダ油、マーガリン、
バターなどは高度精製物の一つなので減らす。丸事食の観点か
らは、胡麻、荏胡麻、ピーナツ、胡桃、松の実など油分の多い
種実を、和物(胡麻和え等)や薬味や間食に。また、油の乗っ
た魚(イワシ、アジ、サバ、サンマ、ブリなど)や皮付き鶏肉
などで摂る。

追記:190615 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 基本的に、工業化以前に日本人が食べていた物のみ食べた方
が良いということだと思います。高度精製物や化学合成物など
は全て工業製品ですね。そういう物を代謝できるほどヒトの体
は進化していないということのようです。

 高速道路やスーパー・コンビニ・ファーストフードが出来る
以前の1965年以前位の食生活が基本です。当時も、白米、白砂
糖や味の素は有りましたが、それ以外の高度生成物や化学合成
は少なかったです。
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 できれば、洗剤(シャンプー、洗濯など)や化粧品なども、
精製物や化学合成物を減らす。

 食養について詳しくは、以下を読んで下さい。
術伝流操体no.81 食の自然則:基本は和食
術伝流操体no.82 自炊は無理なく
術伝流操体no.83 18時間断食、カゼの食養など

追記:180302ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 近頃の流行りの言葉で言えば、「腸内フローラ」の健全性を
考えても、「精製物・化学合成物を減らし、丸事食・発酵食を
増やす」ことが必要ですね。精製物・化学合成物は腸内フロー
ラを混乱させることが多く、丸事食・発酵食は腸内フローラを
改善することが多いようですから。
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追記:181221ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 「精製物・化学合成物を減らす」ことに関しては、以下も参
考にしてください。

「超加工食品」がメタボ・糖尿病・がんのリスクを高める
http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2018/009633.php
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(4)水毒や瘀血を減らす

 食事や洗剤などで入る量を減らす。

 水毒や瘀血は、現代科学的には、「流れにくくなった体液や
血液に、排泄しきれなかった高度精製物・化学合成物の残滓が
溜まり、細菌ウイルスが繁殖したもの」。流れにくくなった水
にゴミが溜まりやすく腐りやすのと似た感じ。

 高度精製物や化学合成物は、血中濃度が直ぐ上がり直ぐ下が
ることが特徴だが、血中濃度が下がったからと言って、全てが
排泄されるわけではなく、皮下や筋肉などの組織の間に溜まる。

 そのため、鍼を刺していくと、皮下や筋肉が粘り、鍼が動か
し辛い状態に成っている。また、そのため、筋肉内の痼りなど
が弛みにくく、弛んでも復活しやすい。

 外食や中食、そして、合成洗剤などが発達した現在では、食
事や洗剤などで、体内に、高度精製物や化学合成物が入る量が
昔に比べ、非常に多い。意識的に減らす必要がある。

 そして、家事はじめ軽い運動や風呂や灸などで温めて、汗を
かいて水毒を出す。

 枇杷葉(エキス)を入れた風呂は微温くても温まりやすく汗
が出やすい。剪定した枇杷葉をアルコールやウォッカ(飲用を
兼ねる場合)に3ヶ月ほど漬ける。枇杷葉茶の出殻でも良い。

 女性は、瘀血対策として、生理痛生理不順を改善することも
大切。

 打撲捻挫などの後には、灸や灸頭鍼などで温めて瘀血を動か
す。場合によっては、治打撲一方の利用も考える。

 鍼灸で邪気を抜くと、水毒や瘀血の毒性が低減する。毒性が
低減すると、排泄しやすく成る。また、駆瘀血や駆水の漢方薬
も利用。

(5)頭寒足熱

 足首から先を温める。下痢がちなら+下腿。立位座位で下に
なる部分から温める。上衝予防。

 冷暖房は上熱下寒になりやすく、控えめがお勧め。特に、
外断熱でない日本のコンクリート集合住宅では、上熱下寒にな
りやすい。

 寝る時の湯たんぽは、(足元の方の)銀マットと敷布団の間
に置き、ほんのりと温かくなるようにする。

 座位での仕事などの時には、銀マットの上にバスタオルを敷
き、その上に湯たんぽ、膝掛けなどで、頭寒足熱に成るように
する。

(6)長息の時間を増やす、口呼吸は万病の元

 自然に深呼吸になりやすい操体などを定期的に。アクビや、
長息になりやすい歌も良い。

 口呼吸は万病の元。

 「夜に寝る前に、深呼吸」を習慣にする。仰向け膝立の姿勢
で、先ず、下腹に両手のひらを当てて、口から、ゆっくり吐く
(できるだけ長く)。吸うのは、鼻から勢いに任せる感じ。そ
れを数回繰り返す。

(7)無想・無心・無我の時間を増やす

 想の理想は、無想。心の理想は、無心。我の理想は、無我。

 無心に遊ぶ子供のように、夢中に成れる時間を増やす。
子供の頃に夢中で遊んだことを思い出し、似たことを探す。

 ウォールクライミングのように、安全性を確保した上で
身体が危険を感じることをしても、頭真っ白(無想、無心)
に成ることが多い。


(8)季節や一日の自然に合わせる

 一日:早く寝て、朝日を浴びる。昼寝しても良いから。
    1日のリズムの切っ掛けを作る。

 一年:季節の野菜や魚などを食べる。新緑など季節の変
化を楽しむ。

(9)自然科学を理解し、自然への畏敬の念を持つ

 体や養生の自然科学、例えば、生理学、解剖学、病理学、薬
理学、組織学、栄養学などの基本を理解する。

 また、数理論理学はじめ自然科学的合理性や、確率論(「大
数の法則」)はじめ数理統計学の基礎を理解する。特に、並列
関係と因果関係の区別は、必要。

並列関係:或る共通の原因から起きる事同士の関係

因果関係:或る現象が原因で,その結果,別の現象が起きる関係

 特に注意したいのは、統計や実験で相関関係が高かった場合
にも、単なる並列関係で因果関係では無い場合も多いこと。例
えば、以下の本によれば、「ピロリ菌と胃がんの相関関係は有
るが、因果関係が有るとは証明されていない」ようですね。

『薬なしで生きる』
http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20100715

 「椎間板ヘルニアと腰痛」や「ファシア重責と運動器痛」も
私は、並列関係で因果関係では無いように思います。

筋肉の過緊張→必要な時に弛緩できない→腰痛(運動器痛)
      →骨を引き,椎間に左右差→椎間板ヘルニア
      →筋肉が縮む→ファシアが余る→ファシア重責

 それと同時に、自然の営みで人間が科学的に理解できた事は
極々僅かという点への理解も必要です。アニミズムというか、
「自然への畏敬の念」の無い自然科学や思想は暴走しやすいの
で。

 この辺りの詳細は、以下に書きました。
「アニミズムと自然科学」
http://d.hatena.ne.jp/kuhuusa-raiden/20160803/1470179989

 そして、鍼灸操体など伝統医学的養生で自分や患者さんに対
処する際にも、鍼灸操体などで伝えられたり経験したりしてき
た自然法則が、自分や眼の前の患者さんの体で今現在の時点で
成立しているかという点に、常に注意する必要が有ります。

 そして、その時に、人間が未知な部分の方が遥かに多い、体
という自然への畏敬の念が少ないと、自分や眼の前の患者さん
の体で今現在の時点で成立して無い自然法則の無理な利用に成
りやすいです。注意してください。

 ですから、(0)に書いた「体の勘を磨き育む」ことが、と
ても大切なのです。

おわりに

 この辺りは、多くの人に共通と思います。後は、四診など診
察してみないと、お勧めは分かりません。

 繰り返しになりますが、
「自分の体に起こっている自然現象を、昔の養生の達人達も利
用し書き残したことも参考に、十分に把握し、適切に利用する」
ことが養生生活の基本と思います。

追記:20170626ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 その土地の風土に合った本来の天然林を真似た「鎮守の森」
のような、風土と自然に合った体や生活を目指していくのが良
いと思います。人の人工的な手入れを必要としない体(や心)
を目指していくと言うことです。

 「鎮守の森」については、以下の本に詳しいです。
『鎮守の森』宮脇昭著 新潮文庫

 簡単には、以下の「鎮守の森プロジェクト」の説明が分かり
やすいです。
鎮守の森のプロジェクトとは
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 上記は、その点でポイントになりそうなことを、箇条書きに
してみたものです。

 試案です、御意見募集中。

 また、具体的な自己養生法は「自分で養生」にも書いて
います。読んでみてください。


   >>>このページのトップへ ・・・・養生生活の基本

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最終更新:2021年10月18日 18:35