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体は自然、ツボと筋肉、経絡と重力

ツボと経絡の観方


はじめに

 「ツボと経絡の観方」、言い換えれば、術伝では、ツボ
や経絡をどう観ているかを説明します。

 基本的には、「人は動物、体は自然」で、「ツボは、筋
肉の機能性病変」、「経絡は、重力負荷の分担」と思いま
す。

 「ツボは、筋肉の機能性病変(機能性疾患:機能異常の
状態)」です。が、恒久的なものではなく、一時的なもの
(一時的な機能異常の状態)です。一時的なものだから、
鍼灸で改善できるわけです。

 「経絡は、重力負荷の分担」、特に「正経十二経は、立
位での重力負荷の分担」と考えると、基本的には、経絡が
立位で縦方向に走っているのが理解しやすいと思います。

 「正経十二経は、立位での重力負荷の分担」ということ
は、操体の橋本敬三先生が昭和13年に発表された「力学的
医学の構想」に出てきます。

「経絡…は相関連している体の内外を走る作用力線の通路…」
「運動力線に対して重力線は重大な役割をするのであるか
 ら、…縦の線である経が主となるものと思われる。」
(『生体の歪みを正す』橋本敬三論想集,創元社p46)

ツボは、筋肉の一時的機能性病変

 私は、経験上、ツボを以下のようにイメージしています。

 筋肉というのは、自在に伸縮できることが特徴ですね。
生理学的には、自在に緊張と弛緩できるという表現の方が
良いのかもしれません。ヒトは動物で、動く時には、筋肉
を緊張させる(拮抗筋は弛緩させる)ことによって、動作
していますね。

 筋肉を使い過ぎると、疲れて過緊張したままに弛緩でき
ない部分ができます。これがいわゆる痼りです。そして、
それ以上使い過ぎると、もっと疲れて、過弛緩したまま緊
張できない部分ができます。これがいわゆる虚の凝りです。

 ツボというのは、皮膚に近い部分の筋肉が過弛緩、奥の
底の方の筋肉が過緊張というのが、基本的な形のように思
います。もちろん、痼りが2,3ある場合や、痼り代わりに
筋張りがある場合などの変化形もありますが。

 ですから、皮膚に近い方は、フニャフニャしていて、押
すと凹み、皮膚の下に穴が空いているような感じがします。
昔の人が、「穴」とか「ツボ」とか呼んだわけだなぁと思
います。

 そして、古いツボほど過弛緩の部分が長いというか、深
い所まで過弛緩で、底の痼りは非常に硬くなるように思い
ます。病を改善するには、古い虚したツボを見付けること
がポイントの1つと思います。

 それに対し、「スポーツマッサージなどで、その日の疲
れを取る」には、実のツボ(表層筋の痼り)を目標にする
方が向いています。鍼灸などで病を改善することと、その
日の疲れを取ることとの違いに注意してください。

 この辺り、詳しくは以下に書きました。
歪みは筋肉に記憶される

 明治鍼灸大学時代の伊藤和憲先生のTPの異常活動電位の
研究で「トリガーポイントに成った筋肉は常時活動電位を
発生している」というのがありますね。

 …TPに成った筋肉は常時活動電位を発生…つまり緊張し
続けている…これが過緊張ということの実態なんでしょう
ね。ツボの底のカチカチの部分は、必要も無い時も常時活
動電位を出し続けている(緊張し続けている=過緊張)で
すね。


ーーー 追記:2018.6.26 ーーーーーーーーーーーーー
 ツボに成った筋肉を改善するというのは、筋肉の一時的
機能性病変(機能性疾患:一時的機能異常の状態)を改善
するということです。消化器(呼吸器、神経)の一時的機
能異常(機能性疾患)を改善するのが消化器(呼吸器、神
経)内科と呼ぶ現代(西洋)医学に倣えば、鍼灸操体指圧
などの東洋的物療は、「筋肉内科」と言うことに成りそう
だなと思います。
ーーー 追記:2018.6.26 終 ーーーーーーーーーーー


経絡は、筋肉の負荷分担システム

 ツボは「筋肉の一時的機能性病変」と考えると分かりや
すいと書いてきました。それを踏まえて上で、「ツボとツ
ボの相関関係」の1つである経絡などは、基本的には、筋
肉同士の負荷分担システム(かばい合い)と考えると分か
りやすいように思っています。

 つまり、ヒトという動物の体に掛かる負荷をかばい合う
仕組みという視点で観ると、経絡などの「ツボとツボとの
相関関係」が理解しやすいと思います。

 そして、負荷の主なものは、2つかなと考えています。
1つ目は重力、2つ目は症状。詳しく言うと、2つ目は、
症状を緩和する時の姿勢に由来するように思います。

正経十二経は、立位での重力負荷分担、縦方向が基本


 ヒトは、動物学的には「直立2足歩行するサル」です。
ですから、「重力が、基本的な負荷」になります。私は、
そのため「経絡は、立位で縦方向が主」、つまり、「正経
十二経は、立位で縦方向が基本」と観ています。

 ついでに「なぜ正経は12か」と言うと、「前・横・後
ろで3」、「手足で2」、「陰陽で2」なので、3×2×2
=12ですね。

 ここで注意したいのは、「前・横・後ろ」の位置関係が、
下腿の陰経では異なっている点です。これにも、ヒトの直
立2足歩行が関係していると思います。詳しくは、
経絡の交差と2足歩行」を読んでみてください。

 ツボ同士の相関関係という視点で見ると、立位での重力
負荷分担に由来する「縦切り相関」と思います。

兪募穴は、「臥位での重力負荷分担」「症状時の姿勢」

兪募穴は、「臥位での重力負荷分担」が関係する?

 これに対して、兪穴、募穴などは、寝た姿勢での重力負
荷の分担と考えると分かりやすかったです。


兪募穴は、「症状時の姿勢」と関係する?

 また、別の視点からは、基本的には、症状が出た時に取
る姿勢との関連も深いように思います。症状が出た時の姿
勢で、最も緊張(縮む)する部分と、最も弛緩する(伸び
る)部分に、ツボが出やすいように思います。

 例えば、咳の時の姿勢で、最も縮むのは、「胸の最も腕
より(中府あたり)」と「胸骨の中央付近(膻中)」です
ね。最も伸びるのは、「肩甲間部上半分(肺兪など)」と
「肩甲骨外端上部(肩貞)」ですね。

 そして、喘息発作の時の姿勢は、場所は咳の場合と同じ
ですが、伸縮は逆になっているように思います。

 腹痛の時は、どうでしょう。消化器系が痛む時に取る姿
勢では、縮むのは「痛む臓器の腹側筋肉」、伸びるのは
「痛む臓器の背側筋肉(胃の六つ灸)」ですね。

 生理痛など生殖器系に由来する痛みの時に取る姿勢では、
原因の臓器が足寄りにあるので、腹側も背側も消化器系よ
り少し足寄りになりますね。

いずれにしても、横輪切り相関

 寝た姿勢での重力負荷分担、症状時の姿勢の2つの視点
を説明しました。いずれにしても、ツボの相関関係という
視点から大雑把に言えば、立位座位での「横輪切り相関」
と言えると思います。

 そして、咳をする時の姿勢にも重力不可は関係している
ように思います。立位座位などで倒れないで咳を上手にす
るために姿勢が決まってくるように思います。

 ですから、腹が痛くて寝る時には、横向き寝が多いです
ね。「痛い部分を縮める姿勢」と「寝ること」を両立させ
るためだと思います。

その他、色々な相関関係

 ツボ同士の相関関係の主な2つについて書いてきました。
立位での重力負荷分担に由来する「縦切り相関」、寝た姿
勢での重力負荷分担や症状時の姿勢に由来する「横輪切り
相関」の2つです。この2つ他にも、色々な相関関係があ
ります。

 詳しくは、「体は自然、臨床は対話」の「動作負荷の分
担原則」の以下の項目を読んでみてください。
横輪切りの原則
縦切りの原則:十四経
足の経絡は全身に関係
背中と脚裏の負荷分担
経絡の交差と2足歩行
左右・前後・上下・対角の相関関係
動作時に連動する筋肉内


ツボの出方の12の自然則

 また、「鍼術覚書」の「ツボ」には、「ツボの
出方の12の自然則」を書きました。

1.ツボは、歪んだ体の負荷分担システム
2.主な負荷は、重力
3.立位での重力負荷分担が十四経
4.臥位での重力負荷分担が愈募穴
5.動作時連動筋肉内にツボが出やすい
6.大きなツボは筋肉の厚い所に
7.ツボの上の皮膚表面は、凹んでいる
8.ツボ末梢側の血行、神経伝達の阻害
9.動作制限の直前で伸びる筋にツボ
10.内蔵の機能的関係からツボを予測
11.ツボは古くなると横にズレる
12.古い病のツボは体の境目に出やすい
(詳しくは>>>ツボツボの出方の自然則

 この12個の自然則をよく理解すると、患者さんの訴え
を聞いたり、体を目で見て手で触って確かめたりしたこ
とと、この12の自然則を照らし合わせると、ツボの出て
いる辺りを予測できます。しっかり理解してください。


鍼灸操体、ツボ、経絡とは、要するに

  要するに、以下と思います。

1.ツボは、筋肉の機能性病変

2.鍼灸操体は、経絡などツボ同士の相関関係を利用して、
  「筋肉の機能性病変を改善」することを手始めに、
  「体の歪み、血流、神経伝達などを改善」することに
  因り、痛み辛さ症状を改善している

おわりに

 ご理解いただけましたか。私は、こんなふうにツボと経
絡を観ています。こういうふうに観ると、ツボや経絡は、
現代医学と余り矛盾しないように思うのですが、いかがで
しょう。

 伊藤和憲先生は、明治鍼灸大学時代に、ツボの底の硬く
痼りになった部分の筋肉が常時活動電位を発している状態
にあることを研究発表されていますし。

腹診のためにも、「筋の一時的機能性病変」の研究が必要

 ただし、「筋肉の一時的機能性病変」という考え方自体
は、現代医学の世界では、未だ一般的でないように思いま
す。その考え方が一般化するかどうかで、鍼灸操体按摩指
圧などの研究が進むかどうかが決まってくるように思いま
す。

 また、「筋肉の一時的機能性病変」ということを前提に
すると、漢方の腹診における「心下痞硬」の「痞硬」、
「臍下不仁」の「不仁」の現代医学的定義も、明確になる
ように思います。

 「痞硬」は「筋肉の過緊張型一時的機能性病変」、
「不仁」は「筋肉の過弛緩型一時的機能性病変」
と思いますので。

 そういう意味で、鍼灸だけでなく漢方の研究の発展のた
めにも、「筋肉の一時的機能性病変」についての研究が進
むと良いなと思っています。

 研究者の皆さん、よろしくおねがいします。

操体を学ぶと、経絡を実感しやすい

 また、操体を学ぶと、経絡を実感しやすいと思います。
知識として経絡を知っている人でも、経絡を実感している
人は案外少ないように思います。手足への鍼灸で頭首胴
(体幹部)の治療経験を沢山することでも、だんだん実感
できます。が、操体を学ぶと違う視点で、経絡を実感する
ことができます。

 例えば、経絡が重力不可分担と関係していることは、立
ち姿勢での「重さの操体」を身に付けると実感しやすいで
す。

 また、頭首胴(体幹部)の症状と手足のツボとの関係は、
患部と関連する手足に出ているツボの両方に手指を置くと
分かりやすいです。

 つまり、頭首胴(体幹部)の症状の出ている辺りに片方
の手指を置きながら、もう片方の手指で手足に出ているツ
ボに皮膚操体や指圧をしていると、手足のツボの変化に応
じて、頭首胴体の手指を置いている場所の状態も変化して
いることが観察できます。

 逆に言うと、皮膚操体などをする時には、患部の近くの
皮膚表面に手指を当て、もう片方の手指で関連する経絡に
出ているツボを順に試しに皮膚操体や指圧してみて、患部
の反応が良い所を見付けてから、本格的な操体や指圧をし
ていくと、効果が出やすいです。

 また、鍼灸をする場合も、同じように、初めに、患部の
近くと、関連する経絡上のツボの候補の両方に、手指を置
き、患部近くの反応が良いツボを選ぶと、鍼灸の効果も出
やすいです。

−−−−−−

間中喜雄先生や増永静人先生と操体

追記:20160105ーーーーーーーーーー

 鍼灸や経絡に詳しく『医家のため鍼術入門講座』など鍼
灸の実践書も出している間中喜雄先生が操体のことを「橋
本式経筋療法」と呼んでいたことをご存知ですか? 経絡
には経筋以外の要素もあるとは思いますが、経絡を実感す
るには操体を学ぶことが近道と思います。

 また、経絡指圧の増永静人先生は、操体を橋本敬三先生
から学んだ後に、経絡伸展法や経絡体操を考案されていま
す。これも、「操体を学ぶと、経絡を実感しやすい」とい
うことに繋がるように思います。もちろん、操体を学ぶ以
前から構想はあったと思いますが。
ーーーーー

NHKスペシャル 腰痛・治療革命〜見えてきた痛みのメカニズム

追記:2017.1.2
NHKスペシャル 腰痛・治療革命〜見えてきた痛みのメカニズム
http://www.nhk.or.jp/kenko/nspyotsu/a01.html

 ようやく、ここまで来たか〜と言う感じです。
ただ、まぁ、操体の橋本敬三先生のレベルまでは、あと何
年かかりますかね。

1.腰痛など運動器系の痛みは、筋肉の機能性病変が原因

2.痛む方向と逆の逆モーションバック運動を基本に、イ
イ感じの方向に動くと改善する

2.については、詳しくは、以下を見てください。
「腰の動作制限を改善する」→術伝流操体no.3

 筋肉の機能性病変は、鍼灸など伝統医学の世界では、ツ
ボや経絡として昔から利用されてきました。
ーーーーー


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