THE KING OF FIGHTERS XIV

【ざ きんぐ おぶ ふぁいたーず ふぉーてぃーん】

ジャンル 対戦格闘アクション
対応機種 プレイステーション4
Windows(Steam)
アーケード(NESICAxLive2)
発売元 SNK
開発元 SNK
【Win】Abstraction Games
発売日 【PS4】2016年8月25日
【Win】2017年6月16日
【AC】2017年6月29日
レーティング CERO:C(15才以上対象)
判定 良作
THE KING OF FIGHTERSシリーズ


概要

前作(『KOF XIII』)から実に6年ぶりの『KOF』シリーズ第14作。
前作までと異なり、業務用ではなく家庭用が初出ということや、キャラクターモデルが『KOF MAXIMUM IMPACT』シリーズ以来のフル3D化となり、且つ奥行移動などがない所謂「2.5D格闘」となった点が大きく異なっている。
後発となったAC版は現在タイトーがACで展開しているダウンロードコンテンツシステムである「NESICAxLive2*1」のサービス開始と同日に稼働が開始された。

ストーリーは新局面を迎え、中国チームの新キャラクターである「シュンエイ」を中心とした物語が展開されるものの、現時点ではこれまでのような「〇〇編」という名称は決まっていない。


ゲームシステム

  • 基本システムは従来と同様。『XIII』までに培ってきた「弱強のパンチ・キック攻撃」「ふっとばし攻撃」「三種類の特殊ジャンプ」「走るタイプのダッシュ・緊急回避により接近がしやすくスピーディーな攻防」が核となる面白さは本作にも引き継がれている。
  • ゲージシステムも過去作品のものに近いが、以下のような変更点がある。
    • 『'98』『2002』等と同様にパワーゲージ1本を消費して一定時間パワーアップする「MAXモード」が発動可能。
      ただし効果内容が従来のような攻撃力アップではなく、「残り時間を消費してEX必殺技が使用可能」になるというものになっている。
      • 『XIII』から登場した、必殺技の強化版である「EX必殺技」だが、本作では通常状態からEX必殺技を出すことはできず、このモードの専用ゲージ(制限時間)の約25%を消費することで初めて発動できるようになる。
      • EX必殺技は今作からはスーパーキャンセルは不可になったが(ただし一部は除く)全体的に当てた後に追撃可能なものが多く、本作における連続技の主なコンボパーツとなる。
      • 通常技・特殊技をキャンセルしてパワーMAXを発動する「クイックMAXモード」も存在。クイック発動した場合は通常より効果時間が半減する。
    • 「超必殺技」はゲージ1本を消費する通常のものに加え、ボタン同時押しで2本を消費することで超必殺技が強化される「MAX超必殺技」と、ゲージ3本を消費してより高威力かつ派手な演出となる「CLIMAX超必殺技」が存在する。
      • なお、MAXモード中はボタンを同時押ししなくてもゲージ1本で「MAX超必殺技」が、そしてゲージ2本で「CLIMAX超必殺技」が使用できるようになるが、いずれも使った時点でMAXモードが終了する。
      • 必殺技から超必殺技に繋げる「スーパーキャンセル」や、超必殺技からMAX超必殺技に繋げる「アドバンスキャンセル」に加え、さらに超必殺技からCLIMAX超必殺技に繋げる「クライマックスキャンセル」が存在。同じ超必殺技でキャンセルすることはできない。
  • 2010年代の格闘ゲームの風潮に沿って、近距離で立ち状態からの弱パンチボタン連打で自動的に必殺技・超必殺技まで繋げる「 ラッシュ 」というシステムも用意されている。
  • 地上ふっとばし攻撃を当てた時の吹き飛びが変化しており、地上の相手に当てると相手を相手側の画面端まで吹き飛ばし、端に到達すると膝から崩れ落ちるようにダウンさせるようになった。
    • 膝崩れダウン時には追撃可能になっており、画面端近くで当てた時のリターンが上がっている。
  • 細かい所では「立ちしゃがみガード切り替えでガードポーズをとり続ける」仕様、通称屈伸が削除され、投げが決まりやすくなった。

登場キャラクター

+ ...

○は本編シリーズ初登場キャラ(うち太字は完全新キャラ)、●はXI以前からの復活キャラ(外伝作品は除外)

中国チーム シュンエイ、●タン・フー・ルー*2、○明天君
日本チーム 草薙京、二階堂紅丸、大門五郎
八神チーム 八神庵、マチュア、バイス
K'チーム K'、クーラ・ダイアモンド、マキシマ
餓狼伝説チーム テリー・ボガード、アンディ・ボガード、ジョー・ヒガシ
龍虎の拳チーム リョウ・サカザキ、ロバート・ガルシア、ユリ・サカザキ
怒チーム ラルフ、クラーク、レオナ
サイコソルジャーチーム 麻宮アテナ、椎拳崇、鎮元斎
女性格闘家チーム 不知火舞、キング、○アリス
異世界チーム ○ナコルル*3、○ムイムイ、○ラブハート
キムチーム キム、○ガンイル、○ルオン
悪人チーム ザナドゥ、●チャン・コーハン、●チョイ・ボンゲ
オフィシャル招待チーム シルヴィ・ポーラ・ポーラ、○ククリ、○ミアン
南米チーム ネルソン、○サリナ、○バンデラス・ハットリ
メキシコチーム ●ラモン、●アンヘル、●キング・オブ・ダイナソー*4
サウスタウンチーム ●ギース・ハワード、ビリー・カーン、○ハイン
ボスキャラ アントノフ、○バース
Ver2.00追加キャラ ●ウィップ、●山崎竜二、●ヴァネッサ、○ロック・ハワード*5
Ver3.00追加キャラ ●ハイデルン、●オズワルド、○ナジュド、●ブルー・マリー

評価点

  • 操作性などは従来のKOFほぼそのまま
    • 2.5Dグラフィックの格闘ゲームがスタンダードになってきた中、本作も3Dグラフィックでありながら2D時代の操作感や駆け引きを損なっておらず、ラッシュなど初心者向けのシステムが備わっている点を除けば従来通りのKOFを楽しむことができる。
    • パワーMAXとEX必殺技によるコンボは旧作の「どこでもキャンセル」「ドライブキャンセル」に相当する連続技システムだが、必殺技コマンド入力を連続でしなければならなかった従来のものに比べると操作に比較的ゆとりがあり、負担がかかりにくくなっている。
  • 3Dグラフィックによる演出強化
    • 一部の必殺技ヒット時、またはMAX超必殺技やCLIMAX超必殺のカットインやヒット時の演出などでアングルが変わったりと、ドット時代では不可能だった演出が3Dの利点により施されるようになった。
      • 試合部分以外でも中間デモムービーなども高画質でクオリティの高いCGで演出されるようになった。
    • ver2.0からKO時のスロー演出を廃止し、若干アングルが変化するストップ演出に変更されるようになり、メリハリが強化。
  • 『KOF』の売りである多くの登場キャラクター
    • 発売時点での登場キャラは16チーム×3人とボスキャラ2人で50人。これに加えて発売後に4人のキャラの追加が2回行われ、合計58人。
      • 『KOF』の特徴である「使用可能キャラの多さ」を新生一作目にしてここまでの規模で実現したことは驚異的である。
    • 新キャラも、KOFシリーズ当初にあった「各国代表戦」や「SNKキャラのオールスター」というコンセプトに沿っており、南米チームのような従来作になかった国際色豊かな新キャラや、KOF派生作である『デイズ オブ メモリーズ』初登場のキャラ、2000年代から参入していたパチスロ機からの登場キャラ(アリス、ムイムイ、ラブハート)も見られる。
    • 既存キャラにおいても、まさかのチョイスや大胆なチーム再編成を施して参戦させているものもおり、新チーム内でこれまでとは違う新たな一面を見せてくれるキャラもいる。
    • 特に今まで派生作品での参戦にとどまっていた『サムライスピリッツ』シリーズから「ナコルル」が参戦したことは大きな話題にもなった。
    • DLCによる追加キャラも人気どころを抑えており、シリーズファンからすれば「分かっている」と十分に納得いく選出である。 特に『XI』のみの登場ながら根強い人気のあったオズワルドの参戦は賞賛を得ている。
    • キャラ同士の掛け合いも多く、因縁の闘いを演出するものもあればおどけた会話も豊富であり、またシリーズファンであればニヤリとするものも。
  • 継続的なアップデート
    • 2016年夏の発売以降、2年以上にわたってキャラの追加やバランス調整、各種不具合の改善が継続的に行われている。
      • 発売当初はオンライン対戦の快適性にやや難があったが、これもアップデートで若干は改善している。
    • 後発であるWin版やAC版も、PS4版に合わせる形でほぼ並行してアップデートが行われている。
  • BGM
    • OP曲の「Follow Me」とスタッフロール曲の「Burning On」がスティーブン・マクネア氏*6によるヴォーカル入りという、KOFシリーズとしては新たな試みを行っており、新シリーズを飾るにふさわしいという評価を得ている。
    • 本作から、特定キャラの組合わせでの対戦になった場合、「専用の因縁対決BGMに切り替わる」という仕様が導入され、その曲もそのキャラクターたちにちなんだ過去作品の曲のアレンジという「(原曲を)知っている人にはピンとくる」ものになっている*7
      • 一例を挙げると、京対庵戦は「New Order」*8の、テリー対ギース戦は「ギースにしょうゆ」の、リョウ対ギース戦は「ギースにキッス -Cyber Edit-」の、リョウ対キング戦なら「みちゃいやっ」のアレンジ…といった内容。
      • 他にもラルフ対クラーク戦の場合は『怒』のメインBGMのアレンジ、変わったところではアンディ対タン・フー・ルー戦が『餓狼伝説2』及び『餓狼伝説スペシャル』のイタリアステージの曲「パスタ」のアレンジだったりする*9

賛否両論点

  • 声優の変更
    • 紅丸/チョイやアテナ、ギースなど旧作から変更のないキャラクターもいる一方で、京・庵・テリーなどをはじめとした多くのキャラクターは声優が変更されている。
    • イメージを損なうような演技はないが、やはり今までの声優で確立されたキャラクターのイメージとの違いが生じるのは避けられない。特に京は声優に加えて衣装と髪型も変更と、グラフィックも含めた急激な変化が一気に起こったため、初期は困惑の声が大きかった。
    • サウンドディレクターの麻中秀樹氏によれば「今作での大幅なキャスト変更については様々な事情もあるが、キャラの人数が多いことに加え、各キャラ1人あたりの台詞の量も大幅に増えているため、1人で複数のキャラを演じることは(演者の負担も大きいので)原則避ける方針でのキャスティングになった」とのこと*10
      • また、プロデューサーの小田泰之氏は「変更のあったキャラについてもゲームありきでそのイメージに近く、(基本的に)旧作のキャラのボイスに似ている人を選んだ」と述べている。
      • 本作では対戦前の掛け合いや勝利メッセージ等がフルボイス化されているが、同様の仕様であった『KOF MAXIMUM IMPACT 2』では、舞台俳優やナレーターなど声優としての活動がメインではない人物が多かった従来のキャストについて「フルボイス化によって棒読み気味に聞こえたりと演技に違和感を覚える」という声もあったため、その点でも本作で専業声優メインのキャストに変更されたことには賛否の声がある。
  • 少ないゲームモード
    • アーケードゲーム同様、勝ち抜きで進む中間デモ付きのストーリーモード、オンライン対戦モード、トレーニングモードなど、遊べるのは格闘ゲームとしてはほぼ最低限のゲームモードのみとなっている。
    • 前作にもあった、全キャラクターのコンボが学べるミッションモードの「トライアル」は全体的に難易度が低くなり、トライアル数も少なくなっている。
      • ただ、前作のトライアルの場合実用的なコンボが少なく、システムも相まって難易度が高すぎた面もあったので、最低限の基礎コンボを学ぶだけの初心者には大して問題ではなく、そもそもやりこみ勢であれば複雑なコンボはどうせトレーニングモードで研究する事が多いため、丁度いい配慮とも言える。
    • これをシングルプレイのボリューム不足と捉えるか、「そもそも使用キャラがここまで多いのだから全てのキャラを使おうとするだけで相当なボリュームである」と捉えるかは人それぞれと思われる。
  • DLCキャラクターに専用エンディングが無い
    • 『'97』以降の過去作はエディット専用キャラクターがいる時は条件を満たせば専用のエンディングが見ることができたかつ今作のDLCキャラクターの一部は専用ステージ*11が用意されているのに、DLCキャラクターのエンディングが存在しないのは片手落ちとしか言いようがない。
      • まあ今作の既存チームのエンディングに姿を見せているウィップとヴァネッサとハイデルンとマリー、過去作で登場した山崎とオズワルドはある程度仕方ないが、今作が本編初参戦のロックと新規登場のナジュドに関しては非常に残念である。
      • なお次作である『XV』(後述)では、2023年9月時点でオズワルド以外はデフォルトチームのメンバーなどで再登場して正規にエンディングが用意されている。

変更された各種システム仕様

  • ジャンプの仕様
    • 今作では初心者配慮またはオンラインのラグ対策のためか従来よりジャンプがふんわりしており、全体的にジャンプ攻撃が確認しやすくなった。
      • 反面ジャンプの全体時間が間延びし、旧作と比べやや操作感に変化がある*12
      • ステージの広さが『XIII』同様16:9であり、それに加えバックステップや緊急回避による逃げが行いやすくなっている。
      • ジャンプ攻撃自体もめくり性能が低下していたり、そもそもめくり性能の削除が多かったり、低い姿勢の攻撃で回避されやすくなっている。
    • アップデートでのキャラバランス調整によりある程度変化があるものの、今作ではダッシュしてすぐにガードが行えるようになり、なおかつ(キャラクターにもよるが)根本的にジャンプ性能が抑えられ、攻めの基点である飛び込みの脅威が減っていると言える。
      • そのため今作では(下記のクイック発動も付け加えると)良くも悪くもジリジリとした間合い調整が重要になり、従来に比べ地味な試合展開が発生する場合がある。
  • パワーゲージ関連の仕様
    • 前作ではゲージ1本消費で発動する仕様だった「EX必殺技」だが、今作では「MAXモードの専用ゲージ(残り時間)を約25%消費」という仕様に変更。つまりゲージ1本で何度も発動できるようになったため、使用するには発動こそ介さなければならないがコストが軽くなり、手軽に連発がしやすくなった。
      • 特にクイックでない直接発動を行った場合、すぐEX必殺技を行えば1回の発動で最大で約6連続も行えてしまう。発動に消費するパワーゲージ量は1本のため、最大の5本ストック状態であれば約30連続行えなくもない。
      • 1番手であればゲージの最大数が減少するが、その場合でも直接発動から即使用した場合約4連続行うことが可能。
      • こうした連発は実戦でも籠城や押し付けなどの戦術として組み込めないこともなく、言ってしまえば見映えの悪い戦い方が行えてしまう。初期バージョンのマチュアはまさにこの戦法が非常に強力なキャラクターだった。
      • ただし現在は下方修正済みで、そもそも「一度発動を介さないとEX必殺技が使用できない」という点や、また今回のEX必殺技は前作ほど強力なものが少ない事もあり、現在は「パワーゲージの多くを直接発動~EX必殺技に回す」という戦い方はほぼ無くなっている。
    • 反面EX必殺技がMAXモード時限定となったため、単に前作と比べ窮屈だという指摘もある。EX必殺技を使用するには必ず発動を行なければならないため、EX必殺技での意表をついた崩しなどが発動のワンクッションのせいで成立しづらかったり、MAXモードを発動した側は性能の良いEX必殺技を所持している場合連発したり、またその逆に発動された側はMAXゲージが尽きるまでは下手に手を出さず逃げ回ったりなどどちらも動き方が強制されてしまう部分が生じる。
      • とは言えそういった仕様込みでバランス調整が行われている面もあり通常モード時では厳しいキャラにとってはキャラ差を埋められたり、キャラ相性を解消する役割もあり、実際にこの仕様が有利に働いているキャラもおり、一概に良し悪しを決められないところでもある。
    • 今作のクイック発動にあたる「クイックMAXモード」は、通常攻撃や特殊技をキャンセルし、隙消しや更にコンボを伸ばす…という使い道こそ以前と同じだが、今作もXIII同様に、キャンセル発動時は自動でダッシュを行ってくれるため、キャンセル時の複雑な操作が必要なく、コマンドの暴発も起こりにくくなり、初心者でも簡単に発動コンボを行いやすくなった。
      2002の仕込みダッシュ*13やずらし発動*14、XIIIのディレイオーバードライブ発動近C漏れ*15等、今までネックだった部分が解消されたため更に初心者にも優しくなっているし、もちろん熟練者でも頻繁にコマンドミスが起こりうる場面だったので、喜びの声もある。
      • 一方で、ヒットストップというかゲームテンポ自体がXIII以前より遅くなった事から、小攻撃ヒット確認からMAX発動コンボまでを繋ぎやすくなり、簡単になりすぎてテクニックを磨く楽しみが減っているといった指摘や、少々便利すぎるため「スーパーキャンセルのみ可能な通常攻撃」や「特殊技のスーパーキャンセル」といったゲージ行動が単にMAXキャンセルコンボで済ませられてしまい形骸化してしまったという意見も見られる。このあたりはシステムの簡略化により生じる表裏一体の面と言える。
    • 攻守どちらにも逆転性があるものの、前作同様ガードなどで溜まるパワーゲージ増加量が多めなため攻撃よりもガードでゲージを溜めたり、「ゲージに余裕があれば攻めずに安全圏で待って相手の隙を窺い、牽制だけ振って引っかかったらクイック発動狙い」と消極的な戦い方に発展もしやすい。
    • また旧作ではスーパーキャンセルで超必殺技を発動する場合はゲージを余分に消費させられていたが、今作ではそれが無くなっているためゲージを消費する行動が行いやすい。パワーゲージさえあれば逆転のチャンスが増えているが、各種パワーゲージ消費量の低コスト化により上記のクイック発動が頻発しやすくなり超必殺技キャンセルコンボが大味化、事故率も高まっているとも言える。
  • 変わり映えがしないシステム群
    • 新章になるとシステム自体も様変わりしてた『KOF』シリーズだったが、前作『XIII』のシステムを再構成し調整されたものがほとんどで、目新しいシステムはほぼないに等しい。グラフィックが3Dになった以外は良くも悪くもいつも通り。
      • 新鮮味が薄いとも言われているが、今まで通りの『KOF』という事で旧作ファンが復帰しやすかったり、長年使われた基本システムだけに遊びやすく考慮されているので、これはこれで正解だろう。かつてマンネリ打破の為に新システムとして「99」においてストライカーシステムを導入したものの、非常に賛否両論の雨嵐であり、『2003』『XI』のマルチシフトシステムも長続きしなかった事を考えると、余計なものを入れなかった判断は正しかったといえるか。

問題点

  • 質に難のあるグラフィック
    • リアル調のキャラクターグラフィックだが、全体的にモデリングがやや簡素であり、一世代前のグラフィックと酷評されていた。キャラの多さと表裏一体の問題とも言える。
    • 後にアップデートでライティングなどが改善され、全体的に当初より良くなっている。
    • ゲームエンジンは開発当初の段階でUnreal Engineを使うことも検討していたが、開発力とコストの兼ね合い、そして3Dグラフィックのノウハウを蓄積する必要があるという理由により見送りとなり、自社製のエンジンを使うことになった*16
      • ライティングやシェーダーが弱いことは開発側も認めているため、発売後のアップデートで改善はしているものの、まだ発展途上にあると言えよう。
      • 本作(と派生作品である『SNKヒロインズ』)の開発である程度のノウハウが蓄積されたのか2019年6月に発売された『SAMURAI SPIRITS』ではUnreal Engine 4を採用している。
    • グラフィック自体はやや簡素なものの、モーション自体はどのキャラもかなり滑らかではある。
      • が、レギュラーキャラの攻撃モーションに関してはやや不自然に感じやすい部分も見受けられたり、滑らかな反面動作がやや冗長気味になり判定がわかりづらくなったりする部分も生じる。
  • 家庭用オンラインモードの仕様
    • ランクマッチの仕様
      • 「検索」と「待ち受け」の2種類が存在するが前作『XIII』のランクマッチの仕様から変わっておらず、前者が1P・後者が2Pと固定されている仕様のためか、「検索」では「待ち受け」の相手しかヒットしない。逆のパターンも同様で、純粋に不便。
      • 「待ち受け」もトレーニングモードで待ち受けが可能なものの、オンラインモード時でのトレーニングモードでのみでしか待ち受けが行えず、通常メニューのトレーニングモードからはオンライン待ち受けは行えない。
    • フリーマッチの連戦の仕様
      • フリーマッチはいわゆるプレイヤーマッチ。多人数対戦部屋に当たるもので、対戦方式に「勝ち抜き」「勝ち抜け」「連戦」の3つの方式が存在する。
      • 「連戦」方式の場合、その名のとおり試合が終了しても同じ対戦相手と間を置かず即座に再戦可能だが、部屋を建てたホストが部屋を解散しない限り両者が合意すれば無限に再戦可能となっているため、下手をすれば2人だけで永遠に部屋を占有する事態が発生してしまう。この方式に限り観戦機能も無いため、こうなってしまうと部屋で待機しているメンバーはどうしようもない。なおかつトレーニング待ち受けがフリーマッチには存在しないため待機中は待ちぼうけ状態になり、対戦相手が来るまで時間つぶしなどもできない。
      • 本当に即座に再戦が始まるため部屋の状況も見られず、試合中のプレイヤーに周りの様子を伝えるチャット機能なども無いため、連戦中のプレイヤーにとっても不便なところである。
      • この辺りの問題も含め、「10戦で終了」や「10本先取で終了」など細かく対戦数が設定できる機能、または『SAMURAI SPIRITS』に搭載されている、待機しているプレイヤーがいた場合、試合終了後ロビー画面に戻され連戦が一旦止まる同様の仕様が欲しかったと言う意見もある。
      • なお先述にあるようにホストが部屋を解散すると消滅してしまうので他のプレイヤーは試合終了後に強制的に追い出される、また最悪の場合試合途中で突然終了してしまうことも起こり、残っている他のプレイヤーにホストを引き継がせるシステム又はホストがロビーチャットの定型文以外で部屋解散の予告を全員に知らせるシステムがほしいという意見もある。
    • パーティーマッチの仕様
      • KOFは通常一人のプレイヤーが3キャラをまとめて操作するが、このモードに限り1プレイヤーが1キャラずつ担当する。今作独自のオンライン対戦方式である。
      • KOFは3キャラ1チーム同士での対戦なので計6キャラ登場し、パーティーモードの対戦を行うには計6人が集まる必要がある。そのため始めるまでのハードルが高い。
      • それだけならまだしも、パーティーモードでのトロフィー(or実績)が存在し、1回だけならともかく最大100回対戦を行わないと取得できないものまで。
      • フレンドで確保できるプレイヤーであれば比較的容易だが、そうでないプレイヤーが解除するにはハードルが高すぎるため、部屋名に「トロフィー(実績)取得部屋」と表記するなどの工夫が強いられる。それにしても多すぎると言える。
  • チームストーリーがゲーム内に未搭載
    • 各チームのストーリーは公式サイトに掲載されており、ゲーム中では確認できない。その為、ゲームだけをプレイしていると、バックボーンがわからずに中間デモとEDだけシナリオが流れる事になってしまい、シナリオが良くわからない事態に陥ってしまう。
      • その中間デモも今回の物語の垣根に関わってる一部のチームにだけ専用デモがあるだけで、それ以外のチームはエディットチームと同じというなんとも寂しい状態になっている。
      • 詳細なバックストーリーを確認できるのがゲーム誌や公式サイトといった外部媒体のみであるという点は、SNK作品(特にKOFシリーズ)ではいつもの事ではあるが、今となっては時代遅れとしか言えない。

総評

中国資本による新生SNKの始まりを象徴する新生『KOF』シリーズ、その初代作。
キャラとシステム両面におけるKOFの特徴を活かしつつ、シリーズ初期に立ち返ったような要素も多く見られる。 現状ではそれらの特徴との表裏一体の問題点も多いが、対戦格闘ゲームとしての出来は及第点以上。
発売後のサポートの手厚さも含め、SNKブランドを現在に売り出していく気合は確実に感じられる一本である。


余談

  • 声優話いろいろ
    • 本作以前よりKOF好きを公言して憚らなかった声優界屈指のガチ格闘ゲーマーにしてKOFのガチ勢である市来光弘氏は、アーケード版のシステムボイス担当として本作に参加している。
    • 明天君の声優である劉セイラ氏は、中国人ながら日本で声優として活動している変わり種。本作のイベントへも積極的に参加している。
  • 今作から3Dグラフィックになった理由は「『KOF XIII』での2Dグラフィックに高い評価をいただく機会は多いが、今後5年10年先を考えると今のままでは先はないだろうということと、現在の事情から見ても3Dグラフィックの表現方法や技術・ライブラリといったノウハウを蓄積していく方が未来はあるのではないかと開発スタッフが総意として決めたもの」とのこと*17
    • 旧SNK自身も3Dゲームに悪戦苦闘していた*18歴史があるため、非常に重みがある。また、2Dグラフィックのクオリティに拘りすぎて中身のクオリティがおざなりになってしまった『XII』での失敗を考えれば、英断だったといえよう。
  • 本作のキャラクターデザインはSNKプレイモア時代から同シリーズのパッケージや広報イラストなどを何度か手がけてきた、おぐらえいすけ氏が初のメインデザイナーを務めている*19
  • DLCキャラクターのナジュドと彼女の専用ステージは、2017年9月よりSNKとサウジアラビアの「マンガ・プロダクションズ」が共同で中東地域の若者向けにSNSを通じて行った『KOF XIV』のデザインコンペで受賞し採用されたものとなっている。
  • 本作の発売から約1年後、バンダイナムコの『鉄拳』家庭用作品『鉄拳7』へギース・ハワードがゲスト参戦している。
    • 出身元である『餓狼伝説』シリーズからの参戦扱いだが、パワーゲージの概念やパワーMAX周りのシステムなど、本作の要素が盛り込まれたキャラクター性能となっている。
    • AC版では2019年2月13日稼働の『鉄拳7 FATED RETRIBUTION ROUND 2』で追加された。
  • 後に本作に出演した女性キャラクターの後日談を描いた派生作品『SNKヒロインズ -TagTeamFrenzy-』が発売されている。
  • シリーズ久々のコミカライズが2018年1月から月刊少年シリウスとマガジンポケットにて連載されていた*20。タイトルは「THE KING OF FIGHTERS -A New Beginning-」(あずま京太郎:著)。2020年8月10日の配信を以て完結している*21
    • また、上記とは別にコミッククリアにて「THE KING OF FIGHTERS XIV ORIGINAL COMIC」(華小二:著)がWeb連載されていたが3ヶ月ほどで連載終了。尚、単行本化はされていない。こちらは本作の中国チームとサイコソルジャーチームの対戦が主軸の話となっている。
  • PC版とAC版リリース後の2017年8月3日~2018年1月8日にかけて、中国のiDragons StudioとマレーシアのAnimonsta Studios製作によるCGアニメ「The King Of Fighters:Destiny」が主要動画サイトにて配信された*22
    • 全24話構成。ストーリーは『'94』~『'96』を元に構築されており、特定キャラのサイドストーリーを挟むなどオリジナル要素もある。
    • 英語字幕だが音声は日本語で、各キャラの声優は一部を除き本作のキャストが中心となっている*23
  • DLCにて復活したキャラクターは、かつてのテーマソングのアレンジ版が使われているが、ロックのみ完全新曲が投入された。
    • というのもかつてのテーマソングには盗作の疑惑が指摘されている為致し方なしか*24
  • ナコルルを始めとしたサムスピ勢に関して、今までは「世界観が違うから出さない」という話となっていたが、本作のインタビューの中で「そういう事にしていた」という事が発覚。
    • 今までの『KOF』シリーズは代々『'94』で作られたゲームエンジンをベースにしていたのだが、これがサムスピ特有の武器やママハハといった大きなスプライトに対応していなかったため、技術的にも出せなかった…とのこと*25

その後の展開

  • 2022年2月17日に本作の流れを汲んだシリーズナンバリングタイトル『THE KING OF FIGHTERS XV』がPS5/XSX/PS4/Winで発売された。
    • オロチ四天王*26やアッシュの再登場、『餓狼』シリーズのキャラクターやルガールの復活、『サムスピ』チームの初登場など新旧『SNK』シリーズ集大成を思わせる内容となっている。
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最終更新:2024年02月17日 17:50

*1 クライアント側の使用基板は同社の「TAITO Type X3」がベース。

*2 既にPS2版XIの追加キャラとして出場していたが、AC版では初

*3 既にGB版熱闘KOF'95に出場していたが、KOF本編では初

*4 恐竜のマスクを被った謎のプロレスラーの新キャラ…なのだが、過去KOFにも登場したあるプロレスラーがヒール転向したという設定。

*5 既にKOFMIシリーズに出場していたが、KOF本編では初

*6 KANDO BANDOという和製ロックバンドのメンバー。両曲の作曲も彼が担当。

*7 ただし、例外として新キャラ同士である「シュンエイ対ククリ」は新規曲。

*8 クラシック京対クラシック庵戦では「嵐のサキソフォン」

*9 ちなみにこれらを含めた因縁対決BGMの数はVer.3.00の時点で全14曲。

*10 https://blog.ja.playstation.com/2016/08/25/20160825-kofxiv/

*11 ウィップとハイデルンのみステージが怒チームと共用。

*12 とは言えあくまで過去シリーズと比較してのことで、ジャンプを使ったスピーディーな攻防自体はそこまで変わりない。

*13 クイックMAX発動からダッシュを入れても間に合わないため、クイックMAX発動前に一度レバー前を挟む必要がある。前Aや前CをクイックMAXの起点にするキャラは簡単だが、他の技を起点にする場合、その技を出してから前→B+C→前を入力する必要が出る。

*14 最速でクイックMAXを入力しない場合、B+CだとBが暴発するが、C→Bの順にずらし押しするとCが出る。

*15 2002同様に、最速オーバードライブ発動を行わないとCが暴発する。

*16 https://www.4gamer.net/games/317/G031749/20160613002/

*17 https://www.4gamer.net/games/317/G031749/20160613002/

*18 旧社時代にSNK初の3Dハードとして『ハイパーネオジオ64』を発売するも、これは元々2D用高性能機として開発していたものを時勢に合わせて急遽3D向けに転換したものであり、さらに3Dグラフィックのノウハウがまだ皆無な状態での開発であったことや経営状況等も重なり、当時の競合他社の3D基板に比べて完成度は低く、どの使用タイトルもヒットには至らなかった。

*19 おぐら氏も元々旧SNKに在籍したていた人物であり、『リアルバウト餓狼伝説 DOMINATED MIND』からグラフィックデザインとして参加している。

*20 ナンバリング作品を除けば『ザ・キング・オブ・ファイターズ 京』以来のコミカライズである

*21 単行本は2020年10月発売の第6巻が最終巻。

*22 ワールドワイドでの公式配信はYouTubeとSteam。中国国内ではYouku、Bilibili、Tencent Video、iQiyi、Mango TVでの配信。日本ではニコニコ動画でも公式配信がされた。

*23 中国国内配信版は中国人声優による吹き替えもある。

*24 『MOW』のテーマソングであった「Spread the wings/永遠の翼」は、曲の後半部分がロバート・マイルスの楽曲「Children」に酷似している。

*25 https://www.4gamer.net/games/317/G031749/20160613002/

*26 社、シェルミー、クリス