注意:このページでは、『WHITE ALBUM2 ~introductory chapter~』と『WHITE ALBUM2 ~closing chapter~』及びコンシューマ移植版『WHITE ALBUM2 幸せの向こう側』、公式サイト配布キャンペーンのゲーム『WHITE ALBUM2 ミニアフターストーリー』を扱っています。


WHITE ALBUM2 ~introductory chapter~ / WHITE ALBUM2 ~closing chapter~

【ほわいと あるばむつー いんとろだくとりー ちゃぷたー / ほわいと あるばむつー くろーじんぐ ちゃぷたー】

ジャンル 恋愛アドベンチャーゲーム
対応機種 Windows XP/Vista/7 日本語版(通常版) Windows 7/8.1/10 日本語版(EXTENDED EDITION)
発売・開発元 Leaf
発売日
introductory chapter:2010年3月26日
closing chapter:2011年12月22日
introductory chapter・closing chapterセット版:2011年12月22日
EXTENDED EDITION:2018年2月14日
定価 introductory chapter:4,800円
closing chapter:7,800円
introductory chapter・closing chapterセット版:9,800円
EXTENDED EDITION:6,800円
※全て税別・通常版の値段。「closing chapter」のみ通常版が存在しないため、初回限定版の値段。
レーティング アダルトゲーム
判定 良作
ポイント 徹底したシナリオへの拘り
かなりプレイヤーを選ぶ作品
Leaf/AQUAPLUS作品リンク

概要

『雫』や『To Heart』等、数々の名作を手掛けたLeafブランドが2010年から発売した作品。
一応同ブランドの『WHITE ALBUM』の続編とされているが、シナリオ上の繋がりは薄いため未プレイでも問題無い内容である。
シナリオライターは他社スタッフの丸戸史明氏であり、今作は『WHITE ALBUM』に思い入れのある氏の持ち込み企画でもある。

導入部である『introductory chapter』(以下、「序章」)とその後の『closing chapter』(以下、「終章」)とに分割して発売されたが、両方をセットにしたバージョンも後者の発売日と同じくして販売されている。


システム

マップ移動や会話システム等が存在していた前作『WHITE ALBUM』と異なり、今作は画面下部に表示されるテキストウインドウの文章を読み進めるオーソドックスなアドベンチャーゲームである。
中でも「序章」は選択肢が存在しないため、実質ゲームではなくデジタルノベルと言える。
「終章」から初めて選択肢が登場し、ルート・エンディングが分岐する。ただし、選択肢の中には特定の条件を満たさなければ選べないものもあり、
中にはいかなる手段を用いても選択できないものもある(演出の一環であり、仕様)。
周回数等の条件で追加シーンが発生する箇所が随所に存在するが、これそのものが特定のルートのノルマとなっている訳ではなく、追加シーンの存在に気付かないままに全エンディングに辿り着く可能性もある。

特徴

「三角関係」を主題にした恋愛の物語だが、
下記のあらすじの通り、当の3人は序盤に"ヒロイン同士も含めて"固い絆で結ばれる。
テーマとは裏腹に作中の人物は揃って善良かつ優しく、修羅場・暴力・敵意・憎悪といった要素は極めて少ない。
にも関わらず彼らの状況はさまざまな要因によって気の毒なほど泥沼化し、やるせなく、切なく、美しい物語が展開される。

本作には超展開もファンタジー要素も無く、ひたすらリアルな人間ドラマが繰り広げられるのみである。
ゲームシステム的にも異質な部分は特に無く、難易度という点でもごく一部のルートを除いて低い。徹底して一般的な美少女ゲームの枠に収まった作品である。

しかし、ゲームを構成するあらゆる要素が「シンプルに恋愛ドラマを楽しませる」ことに念頭を置いており、その純度に関しては近年稀に見るレベルのものである。

あらすじ

舞台は2007年秋の東京都。峰城大付属3年生の北原春希は学園生時代の思い出を作るため、軽音楽同好会へ加入し、学園祭でステージに立とうと思うが、本番を待たずしてバンド自体がメンバー間の痴情のもつれから崩壊してしまった。
学園祭に参加することを諦められない春希はメンバー集めを開始、屋上で歌っていた学園のアイドル小木曽雪菜を勧誘することに成功する。
更に、クラスの問題児冬馬かずさがピアノの天才であることをつきとめ、紆余曲折の末に彼女をメンバーに迎えることに成功する。
バンド再結成から本番まで時間も無くバラバラだった3人だが、練習などを通じて結束を深め、結果として学園祭のステージは大成功を収めた。しかし、3人の想いはステージ終了後から少しずつすれ違いを始め、悲劇的な結末へと走り出すこととなる。

Wikipediaから引用。

キャラクター

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※以下5人は「序章」から登場。年齢はレーティングの関係で明言されないが、初登場時点で全員高校3年生相当。

  • 北原 春希
    • 主人公。真面目かつ成績優秀であり、年代問わず周囲の人間からよく信頼されている。
    • 典型的な委員長タイプかつ常軌を逸したレベルのお節介焼きだが、その真剣な態度は相手の性別や年齢・状況を問わず一貫しており、最終的には相手の信用を勝ち得ていく。
      • そして上記二点に共通し、あくまでも本人としては「当たり前の事を行っているだけ」に過ぎない。
    • 頭脳明晰かつ大人も舌を巻く程弁が立つ一方で色恋沙汰の経験は無く、倫理と感情を割り切れないこともしばしば。
      • 作中の行動の不誠実さは彼自身も理解しすぎるほど理解しているため、打開出来ない状況と自責の念の板挟みで幾度も苦しむことになる。
    • 普段は優柔不断であるが、一念発起した際の行動力はプレイヤーの鬱積した感情を晴らすかのごとく大胆かつ的確である。
    • 物語は彼の視点で進むためビジュアルが見られるシーンは限られるが、作中の評価を統合すると容姿は「中の上」程度である。
    • 全編フルボイスで存在感は非常に大きい。担当声優の演技力も高く、少年らしからぬ理知的な面と少年らしい感情的な面のギャップが上手く表現されている。
    • 一昔前の声無し個性無しの主人公とは良くも悪くも対極にあると言える。
  • 小木曽 雪菜
    • メインヒロイン。アイドル然とした飛び抜けた容姿を持ち、校内ミスコン2連覇中。学校をはじめ所属するコミュニティの人間全員に一瞬で認知される程目立つ。成績も春希を部分的に上回る等平均以上であることが読み取れる。
      • さらに人当たりの良い性格と柔らかい物腰で、同性からの嫉妬も(本人のスペックを考慮すると)控えめである。
    • 趣味兼特技はカラオケ。シナリオ的にも彼女の歌は高い重要性を持つ。
      • この手のヒロインに付随する問題として、実際に担当声優が歌うor歌わないといったものがあるが、彼女は前者。今作の決して少なくない曲のレパートリーの中、設定負けしていない歌唱力を発揮している点は見事である。
    • 人付き合いは良くないが、それが周囲の勝手に作ったアイドル像を補強する結果になっている。
      • 実際は門限とアルバイトで時間が無いだけ。本来は家事全般、特に料理を得意とするような庶民的な性格であるが、ごく親しい人間以外の前ではそうした素振りは見せない。
    • 単純なようで複雑な性格。プレイヤーの彼女に対する印象は幾度も変わるだろうが、共通して普通ではない人物と言え(決して悪い意味ではない)作中でも「バランスがおかしい」と評される。春希と違ってテキストでの独白が無い分もあり、彼女の複雑な人間性を理解できるのは終盤になるだろう。
    • 作中で最も多く精神的に叩きのめされるキャラクタ-。この作品をオールコンプリートする過程で、プレイヤーは幾度と無く彼女の涙を見ることになる。
  • 冬馬 かずさ
    • メインヒロイン。モデルのごとき美貌を持つ孤高の少女。元は春希達と異なり音楽科の生徒だったが、その中でも音楽に対しての才能・努力・プライド・実績が総じて別次元であった。親の関係もあって学校側は彼女を特別扱いせざるを得なかったが、最終学年進級時にとうとう普通科に移籍することとなり、一層微妙な扱いになる。
    • 素行は非常に悪い。自衛以上の暴力や暴言は無いものの授業はほぼ寝ており、学業成績は最低クラス。周囲の人間への態度もキツイものがあり、話し掛ける者はごく少数。
      • ただし作中では言及されないが、理論武装を得意とするはずの春希と互角に口論をする等、地頭はむしろ良い。ちなみに理屈と屁理屈が混ざったそのユーモアな掛け合いは秀逸。
    • 趣味兼特技はピアノで、彼女自らも「自分にはピアノしかない」と発言している。幼少よりピアニストの卵としての英才教育を受けており、その一般人離れした来歴(とそこから定まる進路)はシナリオ的にも大きな影響を持つことになる。
    • 実は天性のセンスにより、ほとんどの事は短時間で熟練者並みに出来るようになる。それは車の運転やゲームセンターのゲームなど、音楽的な範囲から外れたものも同様である。
    • これといった友人もおらず、家にも時たま家事手伝いの人間が来るのみで基本的には1人。本人もそれが自然かつ望ましい状況であるように振る舞う。
      • 実際は周囲の状況に追い立てられて孤立した向きが強く、本人が心の底から望んだ状態ではない。不器用さ故、作中通しても交遊関係の広さは終始人並み以下だが、その限られた人間関係は人並み以上に大切にする。
    • 複雑なようで単純な性格。総じて一般人離れした要素を多数持つ一方、その行動原理は打算も裏もない寂しがりやの年相応の少女のそれでしかない。関連小説においては雪菜同様に「あり得ないバランスの女の子」と評されるシーンがある。
  • 飯塚 武也
    • 春希の親友。要領が良く軽薄で女たらしだが、その分色恋沙汰に関しては勘は鋭く、春希に対するアドバイスはことごとく的を射ている。
    • 態度とは裏腹に一本芯の通った男である。春希に対する信頼は厚く、何気に上のヒロイン2人と同等かそれ以上の入れ込み具合である。
  • 水沢 依緒
    • 春希・雪菜・武也の親友。女性のメインキャラだがヒロインではなく、作中の立ち位置としては武也と同じ。
    • 元女子バスケットボール主将で今作には珍しいさっぱりとした性格。主要な登場人物の中では最も一般人に近い感覚を持っていると言ってよく、発言も公平かつ妥当。

※以下3人は「終章」から登場。上の5人も続投しており、大学3年相当の年齢になっている。

  • 杉浦 小春
    • ヒロイン。春希の後輩だが、3年下なので面識は無い。
    • 性格は「序章の」春希に酷似しており、真面目でお節介焼き。この点は「終章の」春希との対比の関係で重要なファクターとなる。
      • 一方で元来直線的な性根かつ(聡明ながら)感情的な面もあり、この部分のみ理屈と計算に長けている春希とは対照的である。
  • 和泉 千晶
    • ヒロイン。大学3年で春希と同じゼミの女性。
    • 容姿端麗ながらその言動はズボラであり、色っぽさを一切感じさせない。
    • その割に勘の良さと人間の観察力は作中随一である。人を食ったような態度の上に言動にも不信な点が散見される、底の知れない人物。
  • 風岡 麻里
    • ヒロイン。春希のアルバイト先の出版社の上司で、年齢は5つ上。
      • 驚異的なバイタリティと明晰な頭脳を持ち、春希曰く「仕事魔人」。しかし態度こそ厳しいものの基本的に裏表の無い人格者である。
    • 春希と同じく恋愛経験には疎いはずだが、洞察力等の地力がそもそも桁違いであるために的確な助言を行えている。
    • 例によって美人。彼女を前にしての感想ではないが、春希は「俺の周りは桁違いばかり」と評していた。

評価点

シナリオ

  • 主人公とヒロインが出会い、近づき、すれ違い、苦悩する過程は極めて丁寧に段階を踏んで描かれている。喜ばしい結末も陰鬱な状況も、その必然性が説得力を持って読み手に突き付けられるため、作中の出来事には強い臨場感が付随することになる。
    • プレイ中の没入感は尋常でなく、プレイヤーは作中の登場人物の出来事を我が事のように喜び、悲しみ、時には憤ることが可能となる。
  • 伏線に関しては気付かなくても支障なく読み進められるものでありつつ、気付いた場合の驚きもきちんと大きいものとなっている。特定条件の追加シーンで明確になるものもあり、周回プレイの楽しみの一つでもある。
  • 本作のテーマは前述の通り、「三角関係」という昨今ではそこそこ使い古されたものであるが、同じ主題を持った他作品にありがちな「奪い合い」の展開は存在せず、むしろ作中の登場人物の行動は「譲り合い」との表現が正しい。
    • 今作のヒロイン同士は恋敵というよりも、お互いに親友あるいは尊重するべき相手という関係である。主人公も各ヒロインも、意中の相手と恋仲になった=即ハッピーエンドとは考えず、その裏に存在する恋破れた人の気持ちを背負い、迷い、苦悩することになるのである。
  • 恋愛アドベンチャーゲームにはしばしば、「攻略ルートではないヒロインはフェードアウトする」というお約束があるのだが、今作のシナリオは全くの真逆である。すなわち「負けた」ヒロインのその後の顛末も偏執的な程詳細に描写されるため、失恋する前よりもむしろ存在感が増す。また、主人公もそうしたヒロインを(いけないと思いながらも)無視できない性格であるため…その後は胃が痛くなること請け合いの展開が待ち構えている。
    • もちろんこうしたシナリオはただ暗いだけでなく、特に結末部分の各人物ごとの成長、けじめ、決別の部分は大変読みごたえがあり、類を見ない後読感を与えてくれることは間違いない。

構成

  • 「序章」+「終章」+α(後述)という構成は、単に高品質なシナリオが二つ並列しているにとどまらない。物語が進むに従い、作中のキャラクターのアクションは「それまでの出来事や自身の行動」を背負って考え、選択していくものになる。結果、終盤に近付く程登場人物の言葉や行動の一つ一つが非常に「重い」ものとなるのである。プレイヤーも上記「それまでの出来事や自身の行動」たる経緯の部分は事細かな描写によって把握して来ているため、変遷する状況に対する葛藤は相当なものとなる。
    • あまりに時間の経る感覚がリアルであるため、本作を数日で集中的に完走したプレイヤーの中には「三日前にプレイしたはずのゲーム中の序盤の話が、あたかも数年前にプレイしたもののように感じられる」と述べる者もいるほどである。
  • こうした「物語の積み重ね」による効果は本作の特徴を語る上で欠かせない部分であり、AQUAPLUS(Leafブランドを所有する会社)代表の下川氏も雑誌のインタビューにて、「高校(=序章)だけでなく、その後の長い時間をかけてキャラクターの成長を描いていく作品は、ほかにはあまりないと思います」と述べている。

リアリティ

  • 本作は恋愛ゲームとしてはかなりシビアなレベルで、登場人物の社会的立場や将来設計がシナリオに絡む流れとなる。「恋愛は主人公らの感情のみで成立し得るものでなく、お互いの家族やそれぞれの人生そのものにも影響を与え、与えられる」という部分が誤魔化されることなく突き詰められている。
    • これらはシナリオライターの丸戸氏の、「どんな大恋愛だとしても、結局は社会から逃げることはできない」との考えによるものである。本作の主人公の春希についても、「真面目に社会と向き合うような人物でなければけれならない」との要請を満たすように個性付けされている。
      + 「終章」の+α部分について(ネタバレのため要注意!!)
    • 「終章」内、内容的にも分量的にも長い長いシナリオがようやく終わり、大団円たる特定のルートのエンディングに辿り着くと、何とまた新しいオープニングが始まり、「序章」・「終章」の続きの物語、「最終章」(ゲーム中表記「coda」)が開始される。これはデータ的には「終章」のディスクに含まれるため、『closing chapter』は「終章」・「最終章」の2本のゲームを収録した商品と言えるが、その存在は公式サイトにおいても情報を非公開とする等、複数の手段で隠されていた。本作は「終章」まででも十分に名作レベルの質と量を誇っているが、この「最終章」の存在によって作品の完成度はさらに非凡な水準に達している。
      • 「最終章」は社会人となった主人公らの物語で、上で述べた「リアリティ」や「物語の積み重ね」といった要素が「終章」にも増して強く作用している。
      • 終始内容がとんでもなく濃いながら、これまで同様選択肢でシナリオが分岐する。一応本作にもグランドエンディング的な結末を迎えるルートはある(ロックはかかっていないため、初回でも到達可能)が、どのルートも同水準で高クオリティであることも特筆に値する。
      • 「終章」・「最終章」は単独でも一般的な恋愛アドベンチャーゲーム1本分程度の長さがあるため、本作はひとつながりの物語としては膨大なボリュームを有していると言える。
    • キャラクター描写
  • 各登場人物の個性が存分に出ている。特にメインヒロイン2人は容姿や特技等、いかにも二次元キャラクター的な個性がある一方、場面ごとに多種多様な感情・行動を見せる。結果として実に深い、かつ人間臭いパーソナリティとなっているため、簡潔に紹介することそのものが難しいほどである。
    • 彼女らは物語の中でそれなりに醜態を晒すシーンがあるものの、それすらも魅力の一つとして捉えるプレイヤーが大半である。2人はほぼ同水準で作中トップの人気を持っているが、これは今作のテーマ上非常に見事な結果という他はない。
  • 「終章」から登場するヒロイン3人に関してもキャラが立っており、個別ルートのシナリオでは主人公はそれぞれ全く異なる葛藤を抱えることになる。また、彼女らは共通ルートでもそれぞれ重要な役割があり、主人公の行動に大きな影響を与えることになる。
  • 友人ポジションの2人、特に「悪友の男友達」ポジションの武也はこの手のゲームでは異例な程見せ場があるが、「必要以上に出しゃばらず、かつ山場でのサポート欠かさない」という絶妙な立ち位置。妙な表現になるが、彼らの存在はプレイヤーにとっても心強く、ヒロインと並んで今作に不可欠な存在である。
  • 主人公の春希はメインヒロイン2人とは違い、様々な人間性をあまり見せず、作中の大半で行動理念が一貫している。ごく一部では彼が彼らしくなくなる場面もあるが、それはそれで物語の一環として有効に作用している。

演出

  • 本作のあらゆる演出は、様々と角度で上記のシナリオの強みと調和し、盛り上げるように随所に工夫が凝らされている。「同じ音楽を近い状況の二つの場面で使い、お互いの出来事を対比させる」といったオーソドックスな手法から、「メッセージ送りを強制オートモードにし、CGと文章と音楽のタイミングを完全に合致させる」といった手の込んだ仕掛けまで、例を挙げるとキリがないほど。 音楽
  • まず作中での「音楽」の扱いが大きく、主題である「恋愛」の次に大きく取り扱われているテーマと言える。序盤の目標(バンドを組む)・所属高校の伝統・かずさの来歴・雪菜のパーソナリティ等、設定面で関連している部分は枚挙にいとまがない。本作の楽曲はシナリオを盛り上げる手段であると同時に、時にはそれが主役として物語を押し進める役目を担うのである。
    • ボーカル曲の収録数は十数曲を越え、劇中で重要な役目を担う「届かない恋」や、雪菜が歌うシーンで流れる曲の数々(シーンごとにたびたび違う)の他、狙い済ましたタイミングで流れる「After All ~綴る想い~」等も抜きん出てプレイヤーに支持されている。各エンディングテーマも登場人物の内面を的確に描写し、読了後の心によく刺さるものとなっている。これらの楽曲で本作のライブコンサートが(後述のアニメ版放映期間中に)開催されたことからも、作り手の音楽面での注力ぶりを窺い知ることができる。
  • 各BGMは前作『WHITE ALBUM』から続投しているものも多用されている。元々音楽面の評価が極めて高かった作品であり、引き継がれた名曲の数々は本作にとって大きな財産となっている。新規の曲と共々落ち着いたクラシカルな曲調で、作中の静かな冬の空気感がうまく表現されている。
  • 主にかずさの演奏シーンにて使用されるピアノ曲は、わざわざ場面ごとの彼女の心情に合わせた選曲をする徹底ぶり。これはAQUAPLUSのサウンドチームが綿密にシナリオを読み込んだ上での判断であり、シナリオライターの指示はなかったとのこと。
  • 総じて本作の良いシーンには良い音楽が付き物であり、「音楽を聴いただけで名場面が浮かぶ」というプレイヤーも多い。

テキスト

  • 読みやすさは徹底追求されている。文中の難解な表現を避け、例えば上で触れた音楽に関しても、テーマとしては大きく扱いながらも専門的な用語は全く出てこない。
    • かといって情報量が少ない訳でもない。基本的に本作は主人公の一人称視点で進むが、独白を中心に場面ごとの描写はむしろ詳しい。主人公の思考と彼が見ている人の細かい仕草や表情等、見た目や声からは判別できないような情報をプレイヤーにもたらし、独特の臨場感と生々しさを与えてくれる。
  • 各キャラのセリフに関しても拘りが見られ、特にシリアスパートにおける言い回しは舞台演劇を彷彿とさせる程に詩的で美しいものがある。それでいて声優諸氏の力量もあってか台本っぽさがなく感情がダイレクトに伝わり、プレイ中の違和感は全く無い。また、日常パートでは主人公の過剰なまでに理屈っぽく整った台詞が特徴的だが、これも彼の個性がよく出た味のある仕上がりとなっている。

ビジュアル

  • 一枚絵や背景単体のクオリティもさることながら、切なく美しい冬を感じさせるタッチと色使いはシナリオのイメージにマッチしている。ただし一部のCGはとある問題がある(後述)。
  • 場面によってはテキストを控えめに、CGの切り替えに比重を置いて情景描写が行われるシーンもある。特にとあるルートの最終盤のCGは、本作屈指のプレイヤーの印象に強く残る演出となっている。
  • やや細かい点だが、サブキャラクターの大半にも立ち絵と表情差分があるのもポイント。本作の演出への拘りが端的に現れている。

問題点

プレイ時間の長さ

  • 内容的には上手く起伏が設けてあるため冗長に感じることはないが、単純に時間が無い人には向かない。個人差はあるが、「序章」・「終章」を跨いで最初から最後まで最も長いルートで通した場合に25時間程度、「終章」の各ルートがそれぞれ6~8時間程度、全ルートを読むと共通部分をスキップしても60時間を越え得る。一般的な30分アニメ(CM等除き本編は約23分)で換算すれば150話分以上といえば分かりやすいだろうか。人によっては展開のシビアさに度々手が止まるのでさらに時間がかかることになる。
  • 本筋と関わらないモブとの雑談や、地の文数行で済ませられるような部分まできっちりと描写されている。ボリュームがある、と言えば聞こえはいいが逆に言えばストーリーを追うだけなら無駄な部分も多い。

スキップ周りの仕様

  • メッセージスキップの速度そのものは標準的だが、上述の通り本作が長丁場な物語であるために相対的に遅く感じる。また数は多くないものの、強制オートモード進行のパートはどう設定してもスキップ不可能であるため、これまた周回プレイに時間がかかる。
  • 後述のPS3・PSVITA版では強制オートモード部分もスキップが可能となっている他、次の選択肢に直接飛ぶ機能も実装されている。

一部CG

  • 最初に販売された単品版の「序章」に限るが、一部のイベントCGが作画が露骨におかしい。誰が見ても違和感があるレベルなので気が散る上、該当のシーンがよりにもよって重要な場面ばかりである。「終章」と同時発売のセット版以降に収録されているバージョンでは全て修正済みであるため、律儀に発売日順に買ったプレイヤーが泣きを見る結果となっていた。

販売形態

  • セット版が発売済みの現在では問題はないが、発売当時は「序章」と「終章」で間を開けて分割販売する必要があったかはかなり賛否が分かれていた。「脚本の面白さをより引き出せる」との意図があったようだが、一度に通してプレイできないことへの不満の声も当然生じていた。
    • 発表当初は「序章」から「終章」発売の間隔は約9ヶ月程度であったが、延期によって最終的には一年半以上になってしまった。確かにゲームの内容的には引きの演出も優れていて続きが気になるのだが、一年以上もの間作品に対する熱を維持し続けられるプレイヤーがどれだけいたかは疑問である。
  • 価格に関しても分割版を合計すると12,600円(税抜き)となってしまう。これでも本作の質と量を鑑みると安いぐらいであるが、内容を知らない人からすれば高価な印象は否めないだろう。

賛否両論点

主人公

  • 本作を途中で投げ出す場合の最大の要因。残念ながら「主人公が合わない」…どころか「主人公を見ているだけでプレイが苦痛」という人も多い。当たり前だが、彼の恋愛関係の優柔不断な行動は到底万人受けするものではない。本人としては「誠実に」という理念があるものの、大概客観性を欠いた一人よがりなものである。全く理解不能な行動を取る場面は少ないが、納得出来るかはまた別問題である。後半になると自身の最低っぷりを自覚する場面もあるが、反省しても相変わらず問題行動を起こしたりするため、むしろタチが悪いという意見すらある。
    • もちろん行動力があることそのものは評価点として疑いようがなく、ヒロイックな見せ場も相応に存在する。問題行動も概ね悪意からによるものではなく基本的には他人に献身的で、各ヒロインが惹かれる理由や劇中の周囲の人間が彼を信頼する根拠は十分に描写されている。
      • ただこれらの長所もそれを覆して余りある問題から、最後の方まで彼を信頼し続ける仲間達がかわいそう過ぎる……という意見や、彼の苦労などもいわゆる寝てないアピールをする人の様にしか見えなくなった……などの意見もある。
    • メタ的な話になってしまうが、テーマ上「主人公が快活で一途な好青年ではそもそも話が成立しない」といった事情もある。上記の通りそれでも納得できないプレイヤーと、この条件下でなら人間が出来ている方だと見るプレイヤーの両方が存在する。
  • 真っ先に春希が嫌悪されがちなのでやや目立たないが、メインヒロインである雪菜を苦手とするプレイヤーも結構多い。彼女は作中で最も難解な性格付けをされているが、雑にまとめると「善人かつ頑固で欲張り」であり、主人公の春希と同じく「真に相手の都合を考えているとは言い切れない」と読める場面が多い。春希以外への対応など、実はそれ以外にもどうかしている行動も。
  • これらの一方でかずさを苦手とするプレイヤーも居る。大体春希に引っ張られる形とも言えるので雪名に比べれば地味だが。

展開

  • テキストが秀逸なためにあまり目立たないが、よく考えると物語のあらすじそのものは全編通して同じようなことの繰り返しである。今作は徹底して恋愛感情のみで話を展開させるように構成されているため、この結果もある種必然的なものではあるが。
    • 作中の事態を変遷させる要素が限られているため、特に偶然によるすれ違い・ブッキングによる展開は多用される。人によっては気になるだろう。
  • シナリオの一部ではご都合主義な箇所もある。「作中の問題解決の手段」に関してもそうだが、本作のテーマ上非常に重視される「問題解決後のキャラの心情」にも言える問題であるため、考察が深いプレイヤー程、「このキャラはこの場面の状況に本当に納得しているのか」等の疑念が生じる可能性がある。
  • もっとも当記事の「特徴」の欄で述べた通り、そもそも展開の特異性を重視しているゲームではないため、大多数の人は言及しない問題である。

鬱ゲー要素

  • グロ・スプラッタ要素は無いながら、人によってはそれらの作品より心が抉られるという声が多数。プレイ中のほとんどの時間は元気が無くなる。とにかくパワーがある作品であるため、慣れていない人が気軽に手を出すと後悔する可能性がある。
  • そもそも「お金と時間をかけてまでつらい思いをする作品は見ない」とする層は一定数存在し、そうした人々にとってはオススメしにくい作品であることは否めない。
  • しかし、後ろ暗い展開は本作にとって必要不可欠な部分であるため、こればかりは変えようのない部分でもある。
  • もちろん前述の通り、読了後の感慨はユーザーの多少の好き嫌いを超えるレベルであるので、結末部分までプレイできるのであれば問題にはなりにくい。

総評

オーソドックスなコンセプトを、尋常でない拘りで突き詰めた恋愛アドベンチャーゲーム。
本作はコスト度外視で作成が敢行され、その膨大なエネルギーが全てシナリオ(とそれを生かす各演出)に一点集されている、ある意味で異常な作品である。
テーマ上人を選ぶ要素はあるが、純粋な恋愛アドベンチャーゲームとしてはPCゲームの歴史上でも有数のクオリティを持っていることは疑いようがない。ジャンルを超えた面白さを持った作品であるので、どのような取っ掛かりであれ興味持った全ての人に、是非ともその超高密度なドラマを体験していただきたい。
体験版は「序章」の6割程度をプレイ可能なのでそこから入っても良いだろう。

その後の展開

WHITE ALBUM2 ミニアフタ-ストーリ-

  • 公式サイトの応募者サービスでPC用ソフトが配布された。
    • 内容は題名の通り、メインヒロイン2名の本編終了後のシナリオをのみ収録。
    • 尺は短いが本編と同じスタッフによる制作で、原作ファンからの需要は高かった。
    • 応募にCD5枚またはBlu-ray1枚+CD1枚が必要であったこと、また期間限定であったことから流通量が少なく、オークションでは数万円で取引されていた時期もあった。
    • 下記の『EXTENDED EDITION』に内容は丸々収録されたが、パッケージ効果か未だに1万円前後の値が付いている。

WHITE ALBUM2 EXTENDED EDITION

  • PCゲーム版「序章」及び「終章」に加え、ミニアフターストーリー+2017年度までに制作されたドラマCDや関連小説十数点を別のディスクに一式収録した最新バージョン。収録内容の作品を個別に揃えようとした場合より遥かに低価格で一式プレイできるため、PC版の新規ユーザーはこれ一択の購入となるだろう。新OSにも対応している。
    • 一方で後述のPS3・VITA版の追加シーン及び追加CG、PS3版のモーションポートレート機能は軒並みオミットされているため、これらコンシューマー版は依然としてプレイ価値があると言える。ただし最も大きい要素である追加シナリオのみ、あまりの要望の多さに発売直近に急遽追加収録されている。
    • 本編とそれ以外とでディスクが分割されているため、DVD3枚組の商品となっている。

アニメ

  • コンシューマー移植版の「序章」部分を原作として、2013年10月より放映された。
  • 制作は「マクロスF(フロンティア)」や「戦姫絶唱シンフォギア」等で知られるサテライトが担当。原作のアニメオープニングを担当した団体とは別の会社となる。*1
  • 脚本は原作同様に丸戸史明氏が行った。
  • 全13話。多少の省略はあれど結構な長さのシナリオを無難にまとめることに成功している。作画・キャラクターデザインの面でも原作の雰囲気を損ねていない。
  • 原作は「序章」相当だが、部分的に原作読了後のファンを対象にした工夫がなされており、一部の視聴者に驚きを与えた。
  • Blu-rayの売り上げは各巻3000枚~程度と悪くはない数字であったが、利益次第とされていた続編は2018年現在も音沙汰がない。

移植版

WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

【ほわいと あるばむつー しあわせのむこうがわ】

ジャンル 恋愛アドベンチャーゲーム
対応機種 プレイステーション3
プレイステーション・ヴィータ
発売・開発元 AQUAPULS
発売日
【PS3】2012年12月20日
【PSV】2013年11月28日
定価 【PS3】6,800円
【PSV】4,743円
※全て税別・通常版の値段。
レーティング CERO:D(17才以上対象)
判定 良作

PS3版

  • コンシューマー移植版。「introductory chapter」と「closing chapter」を統合し、タイトルも変更された。
    • モーションポートレートによる立ち絵のアニメーション・「序章」のオープニングの新規アニメへの変更・新規CG追加・関連小説やドラマCDのゲーム内収録・レーティング変更による描写の調整・新規ショートシナリオの追加等が行われた。追加要素のいずれも原作スタッフが手掛けている。
    • モーションポートレートは臨場感を重視する本作と相性が良く、好評である。
    • 新規シナリオはこの手のコンシューマー移植としては極めて評価が高い。むしろ本編に組み入れて然るべきだったという声も多い程。話としては1本だがそこそこボリュームもある。
    • 新規CGは上記の新規シナリオに含まれる分も含め、やはり本編と違わぬクオリティである。数もさることながら使用されるシーンも効果的であり、アダルトシーン関係のCG削除を補って余りある。
    • 関連小説やドラマCDは本編を別視点で見たものが多い。原作で小説だったものは背景と音楽が付いたビジュアルノベル(画面全体に文章が表示)となっている。収録数が多く、本編と併せるとただでさえ膨大なボリュームがさらに充実する。
    • レーティング変更によるシーン削除は新規テキストで補完されており、「そういったシーンがあった」事実は読み取れるようになっている。内容の関係でとある一カ所のみ不明瞭な部分が生じてしまっているが、シナリオそのものの評価に支障が出る程ではない。ただ、話のつじつまの問題とは別に、18禁要素は本作の生々しさの演出という点では重要であったため、その内容を知る層にとっては物足りなく感じる可能性はある。
    • PS3ソフトお馴染みのトロフィー要素が加え、追加シーンの開放等が通知されるようになった。「未読のシーンやルートを求めて攻略サイトを見る→ネタバレ」という危険が減るため、意義は大きい。
    • 総じて表現に制約がありながらも、原作に遜色ない出来の良移植を果たしたと言える。PS3本体ごと今作を購入した原作所持者も少なくない数いたほどである。

PSVITA版

  • タイトルをはじめ、基本的には上記PS3版と同じ。
    • マシンスペックの関係でモーションキャプチャ-は廃止されている。
    • 屋外でのプレイを見越し、立ち絵及びイベントCGのオン/オフに加え、ビジュアルノベル表示にすることも可能。組み合わせることで画面上には背景と文字のみ表示、といったスタイルでプレイを楽しめる。
    • 公式サイトでのアンケート結果を元に、名場面表示マーカー機能を搭載。その名の通り、作中で評価の高いシーンが近づくと専用のマーカーが表示されるシステム。デフォルトではオフに設定されている。