月に寄りそう乙女の作法

【つきによりそうおとめのさほう】

ジャンル 恋愛アドベンチャーゲーム
LimitedEdition

Standard Edition
対応機種 Windows XP/Vista/7
発売元 Navel
発売日 Limited Edition:2012年10月26日
Standard Edition:2012年12月21日
レーティング アダルトゲーム
配信 FANZA:2014年6月26日/7,800円
判定 良作
Navel作品


ストーリー

主人公「大蔵遊星」は、日本の財界を代表する“華麗なる一族”大蔵家の末端に、望まれぬ子として生を受けた。
優秀な親族や家庭教師のもとで厳しく育てられた遊星は、多芸に秀でた万能家であったが、
いうなれば籠の中の鳥であり、およそ人並みの夢や希望などとは無縁の生涯だった。

そんな遊星が、初めて一族の監視下を離れ、ひとりで外の世界へ出る機会を得た。
名もなき庶民の娘「小倉朝日」となって素性を伏せ、
上流階級の子女が集う服飾専修機関「フィリア女学院」へ潜入することになったのだ。

その一環として遊星(=朝日)は、
学院一のスーパー同級生「桜小路ルナ」に仕えるメイドとして、彼女の住まう「桜屋敷」で働くことに。

そしてそこには、ルナと縁のある学院生らが同居するという。
1人はスイスから来た誇り高き留学生「ユルシュール」
1人は旧華族の流れを汲む家柄の大和撫子「花之宮瑞穂」
そしてもう一人が、少年時代の主人公に恋していた庶民派の社長令嬢「柳ヶ瀬湊」

いずれも個性的なお嬢様方に加えて、それぞれに付き添う超個性的な従者たちが遊星(=朝日)の生活を引っかきまわす。
果たして遊星は、素性(おもに性別)を偽ったまま、屋敷と学園の二重生活を無事に過ごすことが出来るのか?

桜小路を陽が照らす

(公式ホームページより)


概要

SHUFFLE!』で有名なNavelの10周年記念作品で、Navel作品としては15作目。
Navel作品では初の女装ものとなる。略称は『つり乙』

本作はシリーズ第1作となり、翌年にはパリに舞台を移してりそながメインヒロインとなったシリーズ第2作『乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris-』(略称は『乙りろ』)が発売。
さらに翌年にはルナシナリオをベースにしたことを匂わせつつ、世代交代したシリーズ第3作『月に寄りそう乙女の作法2』が発売された。
なお、『つり乙2』内の設定は別にして、どのルートが正史かということには拘っておらず、『乙りろ』の後日談となる作品も発売された。


キャラクター

Navelの作品ではキャラ名の元ネタの種類が統一されていることがよくあり、本作は実在の金融機関が名前の元ネタとなっている。

+ 主人公及びヒロイン
  • 大蔵遊星/小倉朝日
    • 本作の主人公。母がアイルライド人のハーフ。
    • 妾の子であるため、大蔵の一族とは認められておらず、家族の中で味方と言えるのは母と、たまたま出会った異母兄妹のりそな程度。
      • その母とも、父の本妻であるりそなの母により引き離され、そのまま死に別れとなってしまった。
    • 上記のような悲しい生い立ちではあるが、ジャンとの出会いの影響があり、非常に前向きな性格をしている。大蔵家の使用人となるべく厳しい教育を受けていたため、様々な分野でハイスペック。
      • 過去の経歴から「誰かの為になるのは立派なこと」という信念と素直に人を信じる優しさと強さを持ち合わせている。
    • 母親譲りの容姿と体つきなどから女装に全く違和感がないどころか美人扱いされているが、やむを得ずしていることで女装自体を楽しんでいるわけでもなければ騙していることに罪悪感も感じてはいる。
      • その一方で環境にすぐに適応する才能も有り、前述の前向きな性格と信念も相まって桜小路家でのメイドや学生としての生活を大いに満喫している。
  • 桜小路ルナ
    • 本作のメインヒロイン。タイトルの月を名前に冠している。
    • 作中では言及されていないが、アルビノと思われる容姿が特徴的。その容姿故に一族の多くから疎まれるなど、主人公に近い境遇を持つ。
    • 偉そうな振る舞いにトゲのある喋り方など、一見してかなり人を選びそうなキャラであるが、それは桜小路家の教育や彼女の生い立ちによるものであり、心根は非常に優しい。その内面は作中でも度々見られる。
      • ただ、同時にドSな部分も素であり、度々朝日やユーシェを虐めたりして楽しんでいる。特にじゃれつく程度に敵対した時のドSっぷりは相当なもので、後述の衣遠ですら引く程の言動や、何とも言えない微妙な嫌がらせを続けたりもする。
    • 実は株で得た資金を元に起業し大成功を得た実業家であり、自身の総資産は桜小路家の本家を遥かに上回っている。
    • 家柄や体質に影響しなければ興味のあることはほとんど習得*1し、本命の服飾デザイナーについての才能もずば抜けていると随所で言われている天才である一方で、自身が興味を持てない分野については服飾に関するものでも芳しくないと出来不出来が激しい傾向にある。
  • 柳ヶ瀬湊
    • 小学生時代に大蔵家にホームステイしていた少女で、遊星・りそなとはその時に出会った幼馴染。遊星のことは「ゆうちょ」と呼び、りそなからは「ミナトン」と呼ばれている。
    • 幼少の頃は男勝りだったが、木から落ちたところを遊星に助けられた事で恋心を抱き、以降は女性らしくなるように努力してきた*2
    • 滋賀にある実家は一代で急成長を遂げた運送会社を経営。成り上がりであるため、考え方などは庶民的であり、ルナ達以外のクラスメイトからは馬鹿にされがち。
    • 服飾の道を目指すのは初恋の相手である遊星が同じ道を目指しているため。服飾の才能に関してはメインキャラの中ではイマイチだが、努力家なところがあり、授業には遅れないようにしている。
    • 比較的早い段階で朝日が遊星だと知る事になり、以降は女装生活の協力者となるがそのせいでたびたび嫉妬してしまうことにもなる。
  • ユルシュール=フルール=ジャンメール
    • スイスのジュネーブからやって来た留学生。愛称は「ユーシェ」
    • ヨーロッパ屈指の旧貴族・ジャンメール家の末妹。桜小路家とジャンメール家は古くから交流があり、ルナとは幼少時からの友人。
    • 強い自尊心、わがままな上に負けず嫌いなど、人を選びそうなキャラをしているが、根は熱血的且つ素直で、アホの子的な一面も持つ。
    • ルナのライバルを自称し、何かにつけて張り合っているのだが、大抵は負けている。また、日本に疎い故にルナの嘘をあっさり信じて酷い目にあったりなど、やや不憫。
      • ある程度余裕の無い時でも日本語が出る程に日本語を学習し実践もしているが、ルナ(とサーシャ)に嘘を教えられているので所々で酷い日本語が飛び出したり、聞いた言葉を勘違いしたりする。
      • ルナと同じく服飾デザイナーを志している。
  • 花之宮瑞穂
    • 数百年の長い歴史を持つ旧華族・花之宮の分家の一人娘。桜小路家とは旧華族の縁があり、ルナとは幼少時からの友人。ルナを介してか、ユーシェとも旧知の仲。
    • 着物のコンクールで受賞経験があり、和裁の面では将来有望なデザイナー。一方で洋裁は湊共々苦心している。
    • 幼少時に周囲の男子から(気を引く目的で)悪戯されて来た事がきっかけで男嫌いとなる。箱入り娘で、ルナ曰く友情に飢えているらしく、友情ドラマ的なものに憧れている一面が窺える。
      • 大人しそうに見えるが趣味で流鏑馬をやっていたり*3、他ヒロインと異なり和裁デザイナーとしては既に結果を出している等、他キャラ以上にハイスペックでもある。
    • 東京に来て初めての友人となった朝日を気に入っており、本人は身分を超えた友人となれることを願っている。
    • 花之宮家はNavel作品の『世界征服彼女』に出て来た名家と同じことを匂わせており、彼女はその分家筋に当たる。同時にメイドの北斗も同作品の登場人物と関係性がある。
+ サブキャラ
  • 山吹八千代
    • 桜屋敷のメイド長で、ルナが桜小路本家にいた頃から仕えている。
    • 世界的に有名なデザイナーであるジャンや衣遠とはベルギーの留学時代の同級生。その縁からフィリア女学院の臨時講師として招かれた。
    • 服飾の才能は衣遠も認めるほどのようで、ルナにデザインを教えた人物。ルナのことは妹のようにも思っており、ルナからの信頼も厚い*4
  • 名波七愛
    • 湊のメイドだが、元は湊の同級生。一家が離散した際、湊の計らいで柳ヶ瀬の家にメイドとして引き取られた。
      • このため湊に心酔しており、行き過ぎた愛情を抱くまでに至っている。
    • 暗い性格をしている上に湊への心酔故の言動が目立つなど、曲者揃いの本作のメイド達の中でも一際アクが強い。
    • 本好きで三島由紀夫の作品を好んでいる。それが高じてよく作品の一文を引用する。
    • ちなみにトランジスタグラマーな体型で、数少ないCG(特にアペンドやPSV版追加CG)でその威力を遺憾なく発揮している。
  • サーシャ=ビュケ=ジャヌカン
    • ユーシェのメイドだが、実は男。ただし、戸籍上は女性。
    • かなりのナルシシストであり、自らが最も美しいと思っている。女装の理由も単に女性服が美しいと思うが故。
      • 普段はユーシェのことをぞんざいに扱っているが忠誠心も強く、気難しい彼女をしっかり支えている。
    • 元デザイナーであり、ジャンの開業当初の会社を支えた『伝説の7人』の1人。ジャンとは幼馴染。
  • 杉村北斗
    • 瑞穂のメイドで、執事服を着ているがれっきとした女性。
    • 実家は代々花之宮家に従事しており、北斗自身も瑞穂に絶対的な忠誠心を持つ。故に瑞穂の命令は絶対で、瑞穂を傷つけるような者には容赦しない。
    • サーシャとは犬猿の仲で、事あるごとに武器を用いてバトルをしているが、周囲の人間はいつもの事として気にしていない。
      • アメリカのブラックホーク族という部族の影響を多大に受けており、感情が昂ぶると周囲のことを考えず叫んだりためになりそうでならない意味不明な名言を述べる癖がある。
  • 大蔵里想奈
    • 遊星の一つ下の異母兄妹の妹。作中ではほとんど「りそな」と表記され、漢字表記は稀。
    • 一見するとお淑やかなお嬢様といった感じだが、猫を被っているだけであり、実際は面倒くさがりな性格。
    • 幼少時、互いに兄妹だと知る以前に遊星に助けられた事で恋心を抱いており、兄妹である事を知って以降もそれは変わっていない。
      • 逆に兄の衣遠からは酷い扱いを受けることが多く、そのことから非常に恐れている。
      • 母がいなくなった遊星にとって、家族内で唯一の味方かつ理解者。多少強引ながら遊星にフィリア女学院への入学を決意させて協力も惜しまない。
    • ルナとはオンラインゲームで知り合い、互いに人付き合いが苦手なところなどがあって友人となる。ルナの事は「ルナちょむ」と呼ぶ。
    • 遊星にとっても大切な存在なのだが、忙しいとは言え遊星からずっと放置される挙句、とばっちりを受けたりもする作中屈指の不遇なキャラでもある。
  • 大蔵衣遠
    • 遊星より十歳上の異母兄弟の兄。大蔵家の次期当主候補の一人かつ世界的に有名なデザイナー。
      • 妥協は一切見逃さず厳しく追求するスタイルとその立場からデザインや成果物を見る目は確かで、ダメな作品に対する扱いは非常に酷いがえこひいきは決してしない。これは遊星の服飾に取り組む姿勢に良くも悪くも大きな影響を与えている。
    • 冷酷で苛烈な性格をしており、才能を至上とする才能主義者。当初は遊星の才能に期待していたが、数年育て続けても一度も自分の求める以上の結果を出せなかったため、現在は見放している。
    • ジャンとは友人であり、フィリア女学院の出資者の一人かつ学院長代理。
    • 本編ではさらっと流れるだけだが帝王学を受けている様子で、少なくとも学生の頃から最低でも会社経営・服飾勉強・遊星の処遇を含めた家のことを取り仕切っている。ハイスペックな遊星以上に化け物じみた仕事っぷりが窺える。
  • ジャン・ピエール・スタンレー
    • 世界的に有名なデザイナー。遊星にとっては憧れの存在であり、友人であり恩人でもある。
      • 遊星が女装をしてでもフィリア女学院に入学したいと思った理由も、ジャンが創立者である為である。
    • デザイナーとしての腕は折り紙つきだが、大雑把すぎる性格。

評価点

  • シナリオは総じて質が高い。
    • 主人公の過去から始まる序盤はかなりシリアスだが、そこからは全体的に明るく出来ている。
      • 湊シナリオ以外では、いずれも兄・衣遠との対立が描かれている。瑞穂シナリオでは単に鼻を明かす程度だが、他2人のシナリオでは最終的にかつて見放された衣遠に才能を認められる事となる。
      • 特にルナシナリオではヒロイン達と決定的に敵対関係になり和解することもなくなるが、遊星自身とは完全に和解し、自身の性別に関することも解決してまさに大団円といった感じである。
      • 一方の湊シナリオでは2人の恋愛を強く描いている。遊星は湊のために自身の夢から一時的に離れ、さらに桜屋敷から出る事を決め、屋敷の主なメンバーに自身の正体を自ら明かすなど、いざと言う時の意思の強さが窺える。
    • この手のゲームでは醍醐味の一つと言える性別バレも上手く描いている。
      • ユーシェシナリオではユーシェのみだが、他のシナリオでは屋敷の主なメンバー全員に正体が知れるなど、規模が大きい。そこからの流れはシナリオによってまちまち。
    • 服飾も作品のテーマとして大きく関わっており、やむを得ない事情で学べなくなった湊シナリオ以外では真摯に服飾に取り組み、それが遊星の性格やヒロインとの絆が深まる要素として非常に上手くマッチしている。
  • 遊星とルナの主従を越えた信頼関係
    • タイトルの通り主従関係が重視されている作品で、特にルナシナリオ中盤辺りの2人の会話は特にそれが強く表れている。このルナと遊星のキャラクター性や関係性を非常に魅力的に描けていることが最も大きな評価点である。
    • 他のシナリオにおいてもルナは遊星の正体を知って怒ることはあっても特に咎めなかったりするなどしっかり主従関係を確立している。いきすぎてヒロインが少々置いてけぼりを喰らっている場合もあるが。
      • ユーシェシナリオだけはある理由からルナも遊星とユーシェに非常に厳しい態度を取り、ルナとの主従関係も曖昧なものになる。ただし、これは完全に遊星達に非があることと、そんなことをされた側にもかかわらずルナが遊星達を思いやったが故の行動である。遊星もそのことを理解して感謝するなど信頼関係は構築出来ている。
  • 個性的なキャラクター達。
    • 共通シナリオはもちろん、個別シナリオでも複数人での会話は多く、好みの問題はあるにせよ、なかなか軽快なやり取りを楽しめる。
      • ユーシェは個別シナリオ内で、他のシナリオでは分からない意外な一面が分かり、さらに日本語の間違いを遊星に指摘されて以降は喋り方が変化するなど、印象が変わって見える。
      • キャラは概ね魅力的だが、中でもルナはそのカリスマ性や内面の優しさとシナリオの出来の良さ等から、群を抜いて人気が高い。
      • 各キャラに様々な設定付けが成されており感情移入しやすくなっている。遊星のある意味で異常な性格やルナのきつい言動を始めとする特異に見える言動や行動の多くにしっかりとした理由があってただのおかしな人にならないようになっている。
  • 服飾に関連する語句などの解説。
    • 服飾に精通していない人でも最低限は分かるようにいくつか説明している。地味ながら親切。
    • オプション内でもいくつかの語句の説明がある。
  • 使い勝手の良いシステム
    • 必要な機能は一通り揃っていて使い勝手で困ることはほとんどない。
    • Navel作品では前々からだが、オプション設定により既読のシーンは1クリックで丸ごとスキップ可能で、複数回プレイする時もさくさく進められる。
      • 本作から右クリック一つでスキップせずに読み進めることが可能になっていて、使い勝手が増している。
  • 本作とそのアペンドディスクではNavel過去作に関するネタがそこらかしこに散らばっていて知っていると少し楽しい。
    • 露骨なネタはほとんどなく流れを無視して出してもいない。知らないなら知らないで素直に流してしまうものばかりなのでパロディーネタを嫌う人も問題なく読める。

賛否両論点

  • 七愛について。
    • キャラクターの項にあるように、湊に心酔しているため、湊の初恋相手である遊星及び湊が気に入っている朝日に対しては強い敵意を抱いている。
    • 故に遊星(=朝日)に対する言動はかなり辛辣で暴言と言っても過言ではないレベル。遊星に非が無い時も多いが、湊が遊星と朝日を慕っているのは事実なので的外れな敵意という訳ではない。また、朝日はあくまでルナのメイドなので湊のメイドであることに誇りを持っている彼女に文句を言われても仕方ない場面もある。
      • 遊星も周囲に性別を偽っている身なので七愛の思惑とは別にそういうことをされても仕方ない面がある。また、暴言は吐くが彼女が暴力を振るうことはほとんどない。
    • 四六時中がそんな有様ではなく、時には遊星の手助けをすることもあるが、口の悪さはそのままなのでキャラはブレない。個性的で好きな人も多いが嫌いな人も居て賛否は分かれるところ。
  • 濃いキャラ揃いなので特別おかしくはないのだが、瑞穂は色々と行動が極端なキャラになっていて、特に自身のルートでの評価が否寄りの賛否両論になっている。
    • 設定通りの描写且つ基本的に遊星が悪いのでおかしくはないのだが、ルナやユーシェシナリオと比べると服飾のこだわりなど一風変わった要素が薄い。
      • 話の顛末や流れ自体は問題無く描写されていることと、瑞穂ルートがあるからこそ女装の意味が大きかったり、本作内での女装に関する問題提起にもなっているので、全体的にはむしろ瑞穂ルートでバランスが取れているとも言える。

問題点

  • 一部キャラのボイスが小さめ。
    • BGMによってはボソボソとした感じで聞き取りにくくなっている。
  • ルートによって変わる主人公のある設定。
    • 遊星の性欲及び性知識はその生い立ちや本人の独白などから、乏しい方が設定としては妥当であるが、シナリオによって人並みにあるなど、設定が二分されている。
      • 開発当初、遊星は性欲旺盛と言う設定があったらしいが、その名残だろうか。
    • 瑞穂シナリオで顕著であり、遊星以外の人物も「性格が他のルートと違う」と言われることがある。
  • 湊シナリオの問題点
    • ライターの違いによるものだと思われることと、パッと見では違和感を覚えにくいのだが、湊との過去の思い出部分は遊星とりそな達の過去設定(開幕の部分)と致命的な矛盾*5が生じている。
      • 細かいことを気にしない方が楽しめるのだが、よりにもよって遊星とりそな達の根幹をなす重要な設定と湊にとって根幹をなす重要な出来事が矛盾しているので気になり始めると非常にもやもやする。
      • こうした面もあるためか、後作では遊星の過去に触れる際に湊が登場することは一切なく、幼馴染であるはずの湊と過ごした思い出そのものが存在しないかのようになっている。
    • 更に一人だけ毛色の異なるシナリオな上に、最後の方の過程がそれまでの流れや他キャラと違ってかなり省略された描写になっているので、他ヒロインと比べて評価が悪い傾向にある。
      • あくまで一般的な相対的評価であって湊シナリオが好きという人も居る。また、毛色が異なるだけでこのシナリオのキャラクター達が設定崩壊している訳ではない。
  • 主人公の兄・衣遠は描写が全体的に不足しており、本作単体では各シナリオ、酷い時は同じシナリオ内でも行動の一貫性のなさが目立つ。
    • ほぼ敵役の様な扱いで他のゲームを含めても中々類を見ない辛辣っぷりを見せるが、同時に確固たる信念に基づいて動いているという設定や、芝居がかった口調や独特過ぎる笑い方などファンも多い。
      が、本作のみでは彼の遊星への執着など核の部分はバッドエンドなど限られた描写からしか推測するしかなく、遊星たちへの悪辣な行為は後作*6で説明付けやフォローされた部分が非常に多い。
    • ルナシナリオ、ユーシェシナリオでは最終的に遊星と和解するものの、急激な態度の軟化には才能を示した遊星への(今までの行為を棚に上げた)手のひら返しと引っかかる人も。
      • 元々賛否の割れる過激なキャラ付けの人物ではあるものの、「遊星への対応がシナリオにより変わる理由が分からない*7」「作品全体では遊星を連れ戻したいのか、このまま学院に通わせたいのか態度がコロコロ変わりすぎて何がしたかったのか全く分からない*8」という意見は多い。
    • 湊シナリオでは学院を去る遊星をあっさりと取り逃がしており、一切出ないままフェードアウトする。
    • ルナルートではあろうことか、ルナたちの製作中の衣装を自身の作品として発表するという盗作行為をしている。
      • この点は後作でもフォローしきれているとは言い難く、「服飾に対してのプライドを感じられない*9」「サーシャに「ジャンを自身の嫉妬で失望させる前に離れろ」など偉そうなことを言えない」という辛辣な意見もある。
    • 本人の性格に関わる部分ではないが、ルナシナリオと瑞穂シナリオで遊星の存在に気付いたタイミングの発言が矛盾しているという妙な面もある*10

総評

好みの問題はあるものの、シナリオ・グラフィック・BGMなどいずれも高評価の作品。
特にシナリオは各ルート毎に人気の落差が激しいとは言え高く評価されており、Navelの代表作となった。
また、女装主人公もののADVとしての評価も高く、そちら関係での名作としてお勧めされる作品でもある。


その後の展開

  • その人気から2015年11月26日、PSVに移植された。『月に寄りそう乙女の作法 ~ひだまりの日々~』とサブタイトルが加えられている。

余談

  • 萌えゲーアワード2013大賞、Getchu.comの美少女ゲーム大賞2012で「総合部門5位・シナリオ部門2位・グラフィック部門4位・ミュージック部門2位」を受賞した。
  • メインヒロインのルナは上記の美少女ゲーム大賞2012でキャラクター部門の1位に選ばれているが、シリーズ第2作『乙りろ』ではサブキャラにもかかわらず、2013でもキャラクター部門の1位に選ばれ、史上初の2年連続首位となった。
    • さらにシリーズ第3作『つり乙2』では初回限定特典のアペンドでしか登場しないにもかかわらず、2014でもキャラクター部門の1位に選ばれ、史上初の殿堂入りとなった。
+ ユーシェルートのとあるワンシーンに関して
  • ユーシェルートの終盤ではユーシェがとある勝負に負けた場合、遊星との関係を衣遠によって終わらせられることになる。
    このことに関して遊星は「駄目だった場合は逃げればいい。さすがのお兄様も追っては来ない」と前向きな事を述べているのだが、後に明かされた大蔵家の後継者争いに関する設定から考えれば衣遠は間違いなく追って来るため、遊星の考えは甘かったことになる。
    • もっとも、遊星からすれば大蔵家の内情など知る由もなく、大蔵の人間から必要とされていない事実も鑑みると、遊星の考え方に間違いがあったとは言い切れない。
  • 『乙りろ』の初回特典に本作のアフターストーリーとエイプリルフール企画(エイプリルフールの為に製作されたネタ要素の多いゲームプレイ動画)と朝日フルボイス化をまとめたアペンドディスクがついている。後日(2014年8月29日)単独で発売されているが、本作がインストールされていないとプレイ不可能なので注意。
    • アフターストーリーでは各ヒロインの後日談というだけではなく、湊と瑞穂のシナリオではそれぞれのやり方で衣遠と向き合う様子が描かれている。シナリオ中では和解にまで至っている様子はないが、少なくとも認められたであろうことは窺える。
    • ルナとユーシェのシナリオでは衣遠と心から仲良くなっている様子が窺え、遊星の衣遠に対する深刻な劣等感が全ヒロインのシナリオで解消される話にもなっている。
      • ルナアフターでは『乙りろ』と関係ある部分も多めに描かれており、『乙りろ』プレイ後だとルナシナリオにおける衣遠の過激な行動の理由が本格的に分かる。
    • 湊アフターは駆け足だった湊シナリオ終盤の展開と違い、どんな感じに行動していたのかが詳細に描かれており、他ヒロインと毛色が違ったままではあるがその違う展開を楽しみやすいものになっている。
    • 今から入手しようとすると有料な上にボリューム的に若干割高なのがネックだが、アペンドディスクとしては出来がかなり良いので購入するかどうか迷うようならこちらもプレイしてみることもお勧めする。
  • 上記アペンドディスクの内容を最初から含んでいるWindows 10対応版、『月に寄りそう乙女の作法 -FullVoice Edition-』が2016年9月30日に発売されている。
  • 『つり乙2』の初回特典にも2014年度のエイプリルフール企画とルナアフターアフターのアペンドディスクがついており、ルナアフターストーリーの後日談とその場合におけるりそな等の話(『乙りろ』相当の部分)を補足する内容になっている。こちらは『つり乙2』単独でプレイ可能。
    • これによって途中駆け足ではあるがルナのフィリア女学院入学から卒業までを描ききっており、ルナシナリオに関して重要な場面はほぼ全て描ききったと言える。
  • 移植版ではいくつかシーンが追加されており、当然18禁シーンの代替として追加されたシーンもある。時系列的に離れているシーンや丸々カットしている部分は割と違和感が無いのだが、該当シーンを差し替えている部分はかなりおかしな流れになっている場合が割とある。
    • なお、とある追加シーンでは『乙りろ』のキャラが登場する。CGでのみの登場かつ遊星視点なので謎の人物扱いだが、しっかりとボイスも用意されている。

+ タグ編集
  • タグ:
  • アダルトゲーム
  • Navel

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年10月16日 09:51

*1 家柄から料理やお茶を淹れるなどの家事はメイド任せで自身がすることはほとんどなく、体質から運動などは不得手。

*2 このため、遊星は再会してすぐには湊である事に気づかず、湊も女装している遊星とりそなには気づかなかった。りそなはすぐに湊であると気づいたので遊星はスムーズに思い出すことが出来た。

*3 他にも様々なことを学んでいる模様。

*4 なお、本編内では特に語られないが、八千代には実の妹がいる。

*5 開幕の部分で遊星とりそなが何故この様なキャラクターになったのかと関係性の理由が詳細に描かれているのだが、その話と湊やりそなと一時期一緒に生活していたという話が食い違っている(りそなとは初めて出会った後に再開することなくボーヌ送り)。小さいころの遊星の性格とも明らかに異なる。4年以内の話と仮定しても、その場合は低く見積もっても小学高学年相当ということになるのに両者の精神年齢が低いことや、一歳年下でしかないりそなが自身の名前を漢字を書けないことなど細部がおかしな過去話になる為、どう贔屓目に見ても無理がある。

*6 エイプリールフール企画『衣遠兄様の華麗なる一日』や、次作『乙女理論とその周辺』及び同作に付属する本作各ルートのアフターシナリオなど。

*7 基本的にはヒロインに対し遊星の性別をバラしたり、問答無用で引き離したしてフィリコレの参加自体ができないように妨害をする中で、ユーシェシナリオでは「フィリコレの優勝で全て黙秘する(失敗すれば自分の元へ連れていく)」という条件を提示したうえでそれ以上の干渉はしないと対応がやけに甘い。

*8 詳細は控えるが『乙女理論とその周辺』を踏まえた設定では遊星が身分を偽って女子校に通っていたことは衣遠にとっても都合が良いことになっており、同作では「フィリコレで結果を出せば黙認していた」旨の発言を行っている。…が本作のルナ・瑞穂シナリオは明らかにフィリコレに出場すらできないように妨害をしている。

*9 本作からそうだが、後作での描写が増えるほど衣遠は「服飾に対しては真摯であり、特別な思い入れがある」という面が強調されている。

*10 シナリオルートが違うが、ルナシナリオでは共通シナリオ内の選択肢に関わらない出来事で気づいたと発言しているため、瑞穂シナリオ内で気づいたというそちらの発言がおかしなことになっている。