機動戦艦ナデシコ The blank of 3 years

【きどうせんかんなでしこ ざ ぶらんく おぶ すりーいやーず】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 セガサターン
発売元 セガ・エンタープライゼス
発売日 1998年9月23日
定価 6,800円
判定 良作


概要

1996年10月1日から1997年3月25日までの半年間、テレビ東京系で放送されたアニメ「機動戦艦ナデシコ」。
1998年8月1日に劇場版アニメ『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』が公開されたが、劇場版はTVシリーズの三年後を舞台としている。
「TVシリーズ終了から劇場版までの三年間、一体何があったのか?」について当時は全く描かれておらず、その空白の三年間を埋めるのが本作となっている(それがサブタイトルの「空白の三年間」の由来である)


シナリオ

  • TVアニメ最終話にて、ナデシコは火星の外へワープし艦の下半分を切り離したところで終わるのだが、本作はその最終話のラストシーンから始まる。
    • 火星の外へワープアウトしたナデシコ艦内に、木連(敵軍)の軍服を着た記憶喪失の主人公が突如として現れる。
      その後、選択肢への答え方に応じて4つのシナリオに分岐する。
      • 各シナリオでそれぞれヒロインも異なっており、ナデシコ本編に登場していたほとんどの女性キャラクターが恋愛対象のヒロインとなっている。
      • さすがに本編でアキトと結ばれたユリカをアキトから奪うような展開はないが、ユリカシナリオも存在する。
      • ヒロインといっても明確に恋愛関係で描写されるヒロインは半数以下で、多くはやや好意の混ざった友好関係といったところ。
        ヒロインに振られてしまうエンド*1やアキトとの友情エンドなども存在する。
  • 各シナリオはパラレルワールドの関係にあり、それぞれが「ありえたかもしれないテレビシリーズの続編」を描いている。
  • 全てのヒロインはどれか一つのシナリオでヒロインとして登場するが、ルリだけは例外的に二つのシナリオでヒロインになっている。
+ 各シナリオ
  • シナリオ1:うずもれた「恋のあかし」
    • 「正史」にもっとも近いシナリオ。
      • ナデシコを降りてラーメン屋を始めたアキト、看板娘として手伝うユリカ、チャルメラを吹くルリの三人と主人公が一緒に暮らす物語。
      • アキトとユリカの結婚式をナデシコクルーの面々と共に祝福する場面で終わる。
  • シナリオ2:虚空の「遺産」
    • テレビアニメの終盤で語られるはずだったが、結局削られてしまった「古代火星人文明」の正体が明かされる。
      • シナリオを書いたのはテレビシリーズでSF考証を担当していた堺三保本人。SF色が一番濃いシナリオで、それゆえにイネスさんの「なぜなにナデシコ」や「説明」が存分に楽しめる。
  • シナリオ3:「思いで」は刻のかなたに
    • 連合軍のパイロットとして戦後を生きる事を決めた主人公。彼の正体はここで明らかになる。
  • シナリオ4:キミが目指す「遠い星」
    • 「遠い星」と書いてアイドルスターと読む。メグミと共に芸能界に入る主人公。といってもマネージャーとして。まさかのホウメイガールズがヒロインだったり、死んだと思われていたイツキ・カザマの人生が語られたり、アニメのコメディ回を延長したようなシナリオ。
+ 4つのシナリオを一通りクリアすると…
  • おまけであるゲキガンシナリオに入れるようになる。
    • 他のシナリオでは物語開始時に主人公の所持品として「イツキ・カザマ」の写真があるのだが、そこに劇中アニメ「ゲキガンガー3」のヒロインの写真が混ざる。
  • 本作はあくまでもゲームオリジナルの物語。
    • 原作での「空白の三年間」に非常に近いシナリオもあるものの、ナデシコ世界の正史として「TVアニメ」→本作→「劇場版アニメ」、という流れになっている訳ではない。それどころか、「絶対に劇場版に繋がらないシナリオ」も存在する。
    • ただし、シナリオ1のイツキエンドはそのまま正史としてあてはめてもまったく支障のない話ではある。
  • 本作オリジナル機体が登場。
    • トレーラーから変形するトレーラーバリス。こんなこともあろうかと作っていた海戦フレーム。
    • 劇中アニメのゲキガンガーVの姿そのもので能力まで再現した、技名を叫んで必殺技を使うゲキガンフレーム

評価点

  • キャラゲーとして出来が良く、多彩なシナリオ
    • 空白の3年間に何があったのかや、本編で残った伏線の意味等、アニメで消化不良だった点の多くが本作で解消されている。
    • 加えて、いわゆるギャルゲーとして見ても十分な出来。
      • ナデシコヒロイン達との数々の交流が描かれている。
  • セリフは全てフルボイス。アニメ本編で演じていた声優が全てそのまま出演している。
    • 現在の人気声優がズラリと並んでおり、今ではとても実現できないような超豪華ラインナップである。
  • 通常画面は一般的なノベルゲーに準じ、テキスト+背景+キャラクターの立ち絵、となっているが、シナリオの要所要所で一枚絵CGが入る。
    • これもまた、アニメ本編に何ら見劣りしないハイレベルなCGである。
  • ノベルゲーに要求されるシステムも完備。
    • 既読スキップ・過去ログ読み返しなど、繰り返しプレイを前提としたゲームとして不足の無いシステムである。
    • グラフィックギャラリー(いわゆるCGモード)もあるものの、サムネイルではなく各シナリオを統合した通し番号表示である。
      • スクロールするほどの大きいサイズのCGは個人ごとに分かれており、矢印などはないが左右でキャラクターを変えられる。

賛否両論点

  • 一部の鬱要素
    • 本作の目玉の一つに、原作アニメであっさり死んでしまった*2「イツキ・カザマ」が再登場する! というものがあったのだが、彼女も流れ次第では悲劇的な運命を辿ってしまう。
    • 本作の後に劇場版が存在する為、劇場版を知っているとアキトとユリカのハネムーンへ向かう姿で締められるシナリオ1が非常に後味が悪い。*3
      • あくまで本作はパラレルである為そうなるのが確定するわけではないが、一番劇場版に繋げるのが自然なシナリオであり、二人の幸せな姿が描かれているだけに、余計に劇場版を意識してしまう。
      • 対照的に主人公とイツキに関してはボソンジャンプ適正者でありながら火星の後継者に浚われることが無いと言うふりがなされている。

問題点

  • シナリオの出来にかなり落差がある
    • 多彩なシナリオがあるのは評価点にある通りだが、上手く原作の穴埋めをしつつ評価の高いシナリオもあれば、どうやっても劇場版には繋がらず雑な展開で締められているものもある。
      • 評価点にある通り、総合的には十分いい出来のファン向けゲームではあるのだが、出来が良いだけに一部のシナリオはやり玉にあがりやすい。
  • ゲームオリジナルヒロインの「ラビオ・パトレッタ」のみ絵柄が浮いている。
    • コミック版である『遊撃宇宙戦艦ナデシコ』を描いた麻宮騎亜氏のデザインなのだが、一人だけ独特の絵柄が再現されているせいで既存のキャラクターとの絵柄の差が激しい。*4

総評

キャラ萌えあり、SFあり、ギャグ・シリアスなんでもありのアニメ本編の雰囲気を損なうことなく、様々な方向に話を広げた良作。
女性キャラクター、特に「ホシノ・ルリ」が絶大な人気を集めたアニメだけに、それらのキャラクターを恋愛対象としつつ、シナリオ面でもしっかり楽しめる本作は高く評価された
シナリオ毎に出来の落差が目立つのが欠点であるが、ファンならば触れてみても悪くない内容になっている。


余談

  • 翌年の1999年2月25日に、本作同様空白の3年間を描いた小説『機動戦艦ナデシコ ルリ AからBへの物語』が発売された。

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最終更新:2023年05月02日 20:48

*1 いわゆるバッドエンドではなく、このキャラには振られる展開しか用意されていない。とはいえ原作を知っている者なら納得できる扱いだろう

*2 ボソンジャンプに巻き込まれロスト、ボソンジャンプは適性がない人間は耐えられないとされていることから死亡とされた。

*3 劇場版ではこの飛行機が火星の後継者によって墜落させられ、二人とも拉致された上、過酷な人体実験の材料とされてしまう。

*4 一応、麻宮騎亜氏は本名の菊池通隆名義でアニメーターとしてもナデシコに関っている。