密室のサクリファイス

【みっしつのさくりふぁいす】

ジャンル トラップアドベンチャー
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 D3パブリッシャー
開発元 インテンス
発売日 UMD版:2010年2月4日
DL版:2010年3月4日
定価 UMD版:5,040円(税込)
DL版:3,990円
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 ゲームバランスが不安定
スルメゲー
ポイント 可愛らしい絵とシビアなシナリオ
難易度は非常に高い


概要

SIMPLEシリーズの『THE 密室からの脱出』シリーズなどを中心に、多くの脱出ゲームを製作しているインテンスが製作した脱出ADV。
同シリーズで得た脱出ゲームのノウハウをベースに、脱出ゲームにおいて希薄であることが多いキャラクターやストーリーといった面も深く作りこんだ作品。
公式では「脱出ゲームとサスペンスが融合したトラップアドベンチャー」とされている。

ストーリー

その先にあるのは希望か? 絶望か?

地底奥深くに建造された巨大な地下生活施設"ファウンデーション"。
いつ、何の目的で作られ、誰が、そこへ人々を導いたのか——
真実は長い年月の中に風化し、その歴史ははるか昔に消え去ってしまった。
そして、ファウンデーションだけが人々の唯一の「世界」となっていた。
しかし、その「世界」を突如異変が襲う。
人々は消え、無人と化したファウンデーションは時折来る大振動とともに崩落し始める。
そんな中に取り残された、ミキ、アスナ、オルガ、クロエ、イトカの5人の少女。
それぞれ過去に闇を負った彼女らが出会った先に訪れる、友情、疑念、裏切り、殺意、葛藤、サクリファイス(犠牲)。
少女たちに最後の、そして長い試練が、今訪れる——。

特徴

システム

  • ゲームは、テキストを読み進めていくADVパートと、アイテムを見つけ使用したり暗号を解くなどして、その際陥っている状況を乗り越える探索パートとに分かれている。
  • キャラクター5人は全員が主人公であり、各シナリオはそれぞれのキャラクターをメインに設定されたシナリオがほぼ均等の数に割り振られている。
    • エンディングも各キャラクターごとに用意されており、ステージを選ぶ順番によりルートが変わるマルチエンディングとなっている。
  • 一度クリアした後は「やりなおしプレイ」として、一度クリアしたステージを何度もプレイできるようになる。

探索パート

  • 全36ステージ中探索パートが2~3回あるステージもあり、かなり簡単なものからとても難しいものまで総数はおよそ4~50にのぼる。
  • 本作を象徴するのがこの探索パートである。難易度は高めで、全体的に脱出ゲームに慣れた人向けの難易度となっている。
    • 基本的にノーヒントで進む。キャラクターが明確なヒントを言ってくれたりはしないため、ほぼ全てを手探りで進めていかなくてはならない。
    • 謎解き上ヒントが必要なものにはもちろんヒントはあるが、それ自体がものによってはかなり複雑な暗号になっている。

キャラクター

  • 「まはん。」氏によるキャラクターは間違いなく萌え絵の範疇に入るデザインであり、メインキャラが全員学生年齢の女の子であることもあって一見ギャルゲー的。
    • 若干ながらサービスシーンもあるなどそういった面が全くないことはないのだが、シナリオ自体は基本的にシリアスかつシビアである。
  • 主人公である5人の少女は皆大なり小なり過去に闇を負っており、またそのために各々が独自の信念や目的の元に動いている。
    • 冷淡なミキ、我儘なアスナ、他の4人を利用しようとしているクロエと、友好的とは言いがたい人物も多い。共に行動してはいるが、想いは人それぞれである。
    • そのため、協力したり仲良くしたりといったシーンもあるが、ギスギスした険悪なシーンも少なからず描かれている。
    • これと危機的な世界背景も相まって、緊迫したこのゲームの独特の空気を作り上げている。
  • フルボイス。声優陣の演技も、緊迫した状況や和やかな状況など、シーンにより違うキャラクターや雰囲気をより引き立てるのに貢献している。
  • 登場はほぼ回想の中だが、主人公たち以外にも話に深く関わる登場人物が3人いる。表立った登場人物は主人公を含めたこの8人のみで、そのうち7人が女性であり、男性は1人のみである。

評価点

探索パートの評価点

  • 脱出ゲームの基礎部分は良好
    • 探索パートがいわゆる脱出ゲームのパートとなるが、単に脱出するだけでなく、「何かを探す」「目的地への扉を開ける」など目的は様々。
    • 持っているアイテムを調べる、アイテム同士を組み合わせて別のアイテムに変化させるといった、脱出ゲーム定番の要素もある。
    • クリア済みのステージはADVパートも探索パートもスキップすることが可能となり、他のルートのためのやり直しがあまり苦にならなくなっている。
  • 探索の舞台となる場所も、近未来的な現実空間の他に、ストーリー設定を活かして夢の中やサイバー空間で謎を解くステージもある。
    • それらの一部ステージではギミックにある程度現実性を持たせるという「縛り」に囚われない構成がなされていて、脱出ゲームというジャンルと世界設定がうまくマッチしている。
    • 一種のパズルを解くステージや、カードゲームの詰めゲームのようなことをやるステージなどもある。
  • 多くのステージがあるが探索パートにおける描画の使い回しはほとんどなく、ゲーム全体では相当数のグラフィックが使われている。
    • 探索パートのギミック自体もバリエーション豊かで、多くのステージがあるが「似たようなの前にやったなあ」という既視感に囚われるようなことは少ない。
    • ネジ回しや鍵の付いた扉など、一般的な「脱出ゲーム」でイメージしがちなありきたりなギミックにはあまり頼っていない。
  • 操作に関しては、カーソルを動かし対象に合わせて調べる方法。対象が調べられる場合、分かりやすいようにカーソルにサークルが出るようになっている。
    • アイテムをはじめ調査可能なものが、良くも悪くも違和感なく背景に溶け込むように置かれているため非常に役に立つ。

シナリオ

  • ストーリーはよく作り込まれており、ADVパートのみでもかなりのボリュームがある。
    • SF的な要素がいくつか登場する、近未来的な世界観も本作の特徴のひとつであり、雰囲気作りを助けている。
  • 雰囲気は全体的に重め。序盤はそこまでではないが、それでも各々のキャラが抱えているものが感じ取れる。
    • 後半になると、ルートにより違いはあるものの、殺人や事故などによりキャラクターが死ぬことが珍しくなくなる。
  • だが、小出しに少しずつ明かされていく各キャラが抱える重い過去やキャラ同士の繋がり、現在襲い来る異変に関する謎、そして衝撃的な展開など、早く続きを読みたいと思わせる内容・構成になっている。
    • 世界設定やキャラの背景はルートにより判明する内容が違うため(キャラが違うので当たり前だが)、全てのシナリオをプレイしてようやく完全に把握できるようになっている。
+  エンディングについて ※ネタバレ注意

賛否両論点

  • 探索パートの難易度
    • 全体的にヒントが少なく、プレイヤーが自分で考えなければならない事が非常に多い。特に後半は謎解きの難易度も上がっていく。
      • 何も分からない状態から、「必要なモノを自分で集めて仮説を立て、それを試し、ダメならもう一度」という幾度もの試行錯誤を行うことが醍醐味であり、そのやりごたえは十分すぎるほど。自力で解決させたときの達成感と爽快感には凄まじいものがある。
    • 反面、ヒントの少なさは詰まってしまう要因にもなっている。
      • ただ、意図的なものかどうかは不明だが、代わりにこの手の作品にありがちな「作品の雰囲気を削ぐ、妙に説明的な台詞」というものがあまりないため、脱出ゲーム部分になってもシリアスさを損なわずに進められているという部分があることは付記しておく。
  • ギャルゲーライクな絵柄
    • パッケージだけ見てギャルゲーだと思って買うと、ガチサスペンスなシナリオや超難度の探索パートなど色々と痛い目にあうことになる。
    • 一方でそのギャップに魅きつけられたプレイヤーも多く、よりストーリーに引き込まれる要因にもなっている。

問題点

  • 探索パートの判定が非常にシビア
    • 調べられる場所の近くに小さなアイテムがある場合、直接の視認がしにくい上サークルの有無による判別ができないためかなり見落としやすい。
    • 恐らくは画面の総当たりによるクリアを防ぐ為だと思われるが、何かを見つけても反応せず、拾えるアイテムでないと誤認も起きやすい。
  • 詰まってしまうとどうしようもない
    • どれだけ失敗してもヒントが増えたりといった事がない為、クリアできないとゲームが止まってしまう。ゲームの難易度が非常に高いため、フォローがないのが非常につらい。
      • ストーリーの先が気になるのに進むことができなくなってしまうことも多く、批判点として挙げられることも多い。シナリオの為に攻略サイトに頼ってしまったプレイヤーも多い。
    • 4桁の数字を解くギミックでは、総当り(10,000パターン)で無理押しするプレイヤーもいた。
  • 不便なスキップ機能
    • 既読テキストや解決済みの探索パートのスキップ機能だが、そこに至るまでのルートが変わってストーリー内容に差が生じた場合、探索パートは全く同じでもスキップ不可能となる。
      • 変更点が現れるのは専らADVパートなのに、ただでさえ高難易度で面倒な探索パートを何度も解かされるのは非常に面倒。
      • 特に本作は解決方法が分かっていても判定が小さくてクリックに手間取ったり、きちんとメモを残しておかないと解くのが大変な暗号なども多い為、一度解決した探索パートのスキップ機能自体は非常にありがたい。だからこそ、飛ばせないのが非常に不便である。
    • また、最終ステージはクリア後そのままタイトルに戻るため、クリアデータのセーブができない。
      • そのため、最終ステージはスキップできない。
  • 一部のシナリオの問題
    • よく練られ綺麗にまとまっているシナリオではあるが、一部若干無理やりっぽいところや放置されたままになる謎などもあり、全体的に良いだけに多少気になる。
  • その他UIの不満点
    • バックログの文章量が少ない。
      • 読み返せる量が文字送り20~25回分程度と少なめ。
      • シナリオ重視のADVとしてはやはり短く感じる事もあるし、脱出ゲームの情報を読み返すという意味でもっと保存してほしいというケースがしばしば出てくる。
    • 作中には一枚絵のCGイラストが多く登場するが、それらを自由に見返すことのできるギャラリーモードがない。
    • イラストと同様にBGMも鑑賞モードがない。曲数は多くないが、どれも質の良いものなので残念。
  • テキストの細かい誤字脱字が目立つ。
    • 文字では「やっちゃった」なのにボイスでは「やっちゃってた」というような、微妙な文字とボイスのズレも散見される。
  • 特定の場所でセーブするとPSPの電源が落ちるなどのバグが存在する。

総評

昔の脱出ゲームを彷彿とさせる高難易度により、大きなやりごたえを得られる一作。
ただし難易度の高さにより、シナリオの先が読みたいのに脱出パートがクリアできないプレイヤーも多く見られる。
露骨な誘導やヒントの少ない硬派な作りを受け入れられれば、高難易度とシビアなシナリオを堪能できるだろう。

魅力あるキャラクターや重苦しいながらも壮大でよく作り込まれたシナリオはプレイヤーを世界観に引き込み、メインであろう脱出ゲーム部分を食ってしまうほどの出来である。
脱出ゲーム要素を本格的なストーリーの中にうまく取り入れている点は、ブラウザゲームなどで遊ぶ脱出ゲームではまず真似できない部分だろう。


体験版・関連作など

  • WEB限定の体験版が、本編の公式サイトで2つ、下記のイトカDLCの公式サイトで1つ公開されている。
    • 製品には存在しない構成の脱出ゲームをプレイすることが出来る。難易度もそこそこあるので、興味のある人はまずこれをやってみるといいかもしれない。
  • PSNでは、ヒロイン単体をフィーチャーしたスピンオフ作品が配信されている。
    • 現在発売されているのは下記の2本。
      タイトル 発売日
      密室のサクリファイス~イトカ:ある閉鎖施設からの脱出~ 2010年10月21日
      密室のサクリファイス~ミキ:ハイテンションナイト~ 2011年4月21日
    • 共にジャンルは脱出ゲームで、定価は600円。レーティングも本編同様CERO:C。
    • これらスピンオフはガチガチな本編と比べ、コスチュームチェンジや乳揺れなど、ギャルゲー色を多く盛り込み前面に押し出した内容になっている。
      • そのため露骨なエロ要素が多く、本編とはまた違う方向で人を選ぶ事は否定できない。
    • しかしながら謎解きは本編と違わぬ難易度であり、やりごたえは十分である。
    • ちなみに、本編ではなかったイラストギャラリーだが、スピンオフでは搭載されている。
  • 本作のヒロインの1人であるイトカは、PS3の『SIMPLE500シリーズ Vol.1 THE 麻雀』のDLCコンテンツとして客演している。

余談

  • 本作発売前の2009年12月にスパイクから「脱出ゲーム×サスペンス」という同様のコンセプトのニンテンドーDS用ソフト『極限脱出 9時間9人9の扉』が発売されている。
    • こちらもインテンスが脱出ゲームパートを製作しているのだが、脱出ゲーム向きのDS用ソフトであることや、『infinity』シリーズの打越鋼太郎氏がシナリオを作成し、サウンドノベルで有名なチュンソフトがストーリー部分を製作していることなどから、本作はその影に隠れてしまったところもある。
  • スピンオフ作品『密室のサクリファイス~ミキ:ハイテンションナイト~』は略称が『ミキ:ハイテナイ』(履いてない)になることが一部でネタにされた。
    • ちなみに本編のCGでも履いてない疑惑があった。