バトルコマンダー 八武衆、修羅の兵法

【ばとるこまんだー はちぶしゅう しゅらのひょうほう】

ジャンル シミュレーション
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売元 バンプレスト
開発元 アークシステムワークス
発売日 1991年12月29日
定価 9,800円
判定 なし
ポイント 当時のコンシューマでは珍しいリアルタイムストラテジー
バグの多さや設定ミスに目をつぶれば基本システムは秀逸
キャラゲーにしては複雑すぎるが中毒性はある
コンパチヒーローシリーズリンク


概要

当時バンプレストが展開していた「コンパチヒーローシリーズ」の1作で、『第2次スーパーロボット大戦』と同時に発売された。
スパロボがターン制であるのに対し、当時日本では『半熟英雄』ぐらいでしか馴染みがなかったマイナージャンル「リアルタイムストラテジー(以下、RTS)」を採用している。
ある意味こういったジャンルに早いうちから目を付けた、稀有な作品でもある。

ゲーム内容

  • 「3種族が見えない壁に仕切られた世界で共存していた世界が舞台で、壁の消滅により覇権をめぐって争いあうようになった」というオリジナルの世界観とストーリーで展開される。
    • ロボットアニメのメカ達が擬人化されて登場する。また、外見や名前がアレンジされている者もいる*1。ガンダムシリーズは機動族、マジンガーシリーズ(とゲッターロボやグレンダイザーも少々)は魔神族、重戦機エルガイムと機甲戦記ドラグナーは日の出族。
    • 敵メカ由来キャラの割合が多め。機動族ならジオン、魔神族なら機械獣が半数を占める。
    • スパロボのような原作のストーリーに基づいたクロスオーバー的シナリオは一切ない。どちらかと言えば方向性はグレイトバトルシリーズに近い。敵幹部もザ・グレイトバトルに登場したキャラ達。
  • 難易度は機動族(ガンダム)が初級者向け、日の出族(エルガイム、ドラグナー)が中級者向け、魔神族(ダイナミックプロ)が上級者向けとなっている。
    • 機動族はHPが低いという傾向があるものの、武器の射程が長く攻撃力も高め。そのアドバンテージは絶大で、相手が射程圏内に入る前に集中砲火を浴びせれば倒せる。おまけにバグで射程が無限なキャラが存在するのでかなりぬるい。
    • 日の出族はいわゆるマップ兵器が豊富。しかし通常兵器は機動族と比べると射程に劣るので通常戦闘では苦労する。敵の本拠地を落とせという勝利条件のステージもちらほらありやりごたえはあるが……。
    • 魔神族はHP及び攻撃力が高いという設定だが、射程が短すぎる。マップ兵器持ちもあまりおらず、最高指揮官マジンガーの性能が3種族中最低など、上級者向けというより単に調整不足のせいで厳しい難易度になっている。
  • RTSであるため、スーパーロボット大戦のように移動指示から即時到着するわけではなく、目的地までの移動時間が存在する。
    • 移動には通常移動・戦闘移動・戦闘待機・通常待機の4つのコマンドがある。戦闘移動および戦闘待機とは、敵を発見次第攻撃するコマンドだが、移動力は下がる。
    • 移動は4箇所まで指定することが可能で、指示によっては指定箇所を行ったり来たりという歩哨のようなことをさせることも可能。
    • 海など一部の地形は、専門の兵種でないと移動に制限を受ける。ただし「そらセット」「うみセット」などを持たせることでも、本来の移動力を維持したままで、特殊な地形を移動することが出来る。
    • 敵部隊とは出撃中の部隊に索敵をさせないと交戦できない。視界はそれぞれの職業で異なる。
    • 敵戦力を目視などで発見し、そのうえで相手が射程範囲内であれば攻撃を仕掛けることが出来る。
  • 各施設などはマニュアルで指定し、攻撃してHPを減らすことが出来る。
    • 本拠点となるGHQはHPが0になった方の軍勢が敗北する。
    • 街や村はHPを0にした後で駐留コマンドを選択することで占領することが出来る。人口が0になるまで攻撃し続けると廃墟となり、どちらの軍のものにもならなくなる。
    • あるステージに登場する民家などの建物は人口が少ないため攻撃してもHPを0にする前に壊滅してしまい、占領することはできない。よって攻撃しても弾薬の無駄にしかならない上、エミィからも怒られてしまう。
  • キャラクターにはそれぞれ階級が存在し、それぞれ32人まで登録することが出来る。
    • 給与をそれぞれの階級に設定しなければならない。支払い金額は階級ごとに一律となっている。
    • 指揮官:部隊を形成するのに絶対必要な階級。初期配備以外では、それぞれのキャラに設定された規定レベルで、兵士から昇格することにより増員される。
    • 兵士:ここから戦闘に参加することが出来る階級。部隊員としても単独行動兵としても利用が可能。特訓コマンドによって未出撃のキャラを強化することも出来る。
    • 新兵:一定時間ごとに補充される、戦闘に参加出来ない階級。訓練によって7つの職業に就くことが可能。登録した時点で兵士へと昇格する(無訓練ではファイター)。
  • 各キャラクターには、アイテムを4つまで持たせることが出来る。
  • 八武衆とは要するに職業であり、初期メンバーを除いてプレイヤーが新兵に訓練を施すことでそれぞれの性能に見合った能力に補正が付く。
    • ファイター / 闘武衆【Figh】:視界を除けば全能力はほぼ最低。ただし訓練なしで即戦力として登録することが出来るという利点はある職業。
    • ナイト / 騎武衆【Knig】:戦闘向けの職業。攻防ともに高く、視界も悪くなく、移動力も申し分ない。
    • ガンナー / 砲武衆【Gun】:移動力は大幅に下がるうえ、視界も低いので索敵は苦手。しかし攻防ともにかなり優秀で、拠点防衛向けの職業。
    • マリナー / 海武衆【Mari】:海戦移動に長けた職業。移動力もそこそこだが戦闘力は高くない。
    • フライヤー / 空武衆【Fly】:移動力や視界に長けた職業。単独行動や索敵行動に対し非常に優秀で、戦闘力も悪くない。
    • ステルサー / 隠武衆【Stel】:工作活動に長けた職業。この職業を持つキャラがいれば工作コマンドが使用可能になる。戦闘力・視界・移動力は秀でてはいないが平均以上。
    • ウィザーディ / 魔武衆【Wiz】:特殊コマンド「魔法」を使う職業。指揮官ならカリスマ、兵士なら努力の能力値を消費する。他の能力は最低級だが、他の職業にない効果を部隊にもたらす。
    • ナース / 護武衆【Nur】:戦闘力などの補正は低いが、回復アイテム「きゅうきゅうセット」を使用すると部隊員全員を回復させることが出来る能力を持つ職業。
  • 開発コマンドによって、資金・時間に応じて新兵器を投入することが出来る。新兵器は主に特殊ピースとして部隊員1名扱いで組み込まれる。
    • これら開発成功した新兵器を含め、弾薬や回復アイテムなどはプレイヤー自身で生産しなくてはならない。
    • アイテム運搬用の特殊ピース・補給ピースというものも存在する。補給コマンドで即弾薬を補充出来るなど便利だが、移動力は低く、そして脆い。

問題点

本作はキャラゲーとは思えないほどに本格的なRTSを構築しており、必要な要素はほぼ一通り取り揃えられている。
しかし現在でも凡そ成熟しているとは言い難いジャンルの、しかも初期作品ということもあり、中身は粗だらけでプレイに支障を来たす問題点が多数存在する。

  • 説明書には「非常に高度なシミュレーション」とあるが、その謳い文句に違わず複雑極まるシステムである。説明書だけで数十ページもあるうえ、その内容も非常に難解。
    • スーパーファミコン初期の作品ということもあり、チュートリアルモードなどは存在しない。時代を考慮すれば致し方無いところもあるが、ただでさえ説明書をもってしても難解な内容であるだけに、ゲーム内で一切説明がないというのは非常に厳しい。
    • Bボタンが決定、Aボタンがキャンセルという仕様も、プレイし辛さに拍車を掛けている。
  • 給与は役職ごとに一律に設定しなくてはいけない。レベルが低かろうが高かろうが一律。そして、出撃していようがいなかろうが登録しているだけ支払われる。
    • 給与の影響が最も大きい指揮官は、一番レベルの高い指揮官に合わせないといけない。合わせないと高いレベルの指揮官のカリスマが下がり、配下の部隊員が逃げ出したり、最悪指揮官本人が逃亡する。
    • 敗北条件の1人である最高指揮官キャラであるF91、エルガイムMk-II、マジンガーは薄給でもそう簡単に逃亡しないが、薄給のままレベルをあげすぎると当然カリスマなどは下がるので、部隊などとても編成出来ない。
      • なお、最高指揮官が逃亡してもシナリオには影響がなくシナリオ中のメッセージでは登場する。
    • 指揮官も32名まで登録できるが、そんなに多く雇用していては金がいくらあっても足りなくなる。常に最低限数の維持を余儀なくされ、他は解雇して削らないといけない。
  • 八武衆の能力差があまりにも激しすぎる。
    • ファイター(闘武衆)はプレイヤーにすらその存在を忘れられるほど影が薄く、部隊員の数が逼迫していなければまず選択肢にあがらない職業。
      ただし一応、登録した時点で即戦力に出来るという利点はある。
    • 最大の問題はマリナー(海武衆)で、水中戦に優れるという能力を持ちながら、水中で戦う機会自体があまりないため実質使い道が無い。
      そもそも「そらセット」があれば水中で行動する必要はなくなるので、他職を水中戦に対応させる「うみセット」も含め無用の長物。
      訓練時間は短いが、早く出撃させたいだけなら訓練期間ゼロで出られるファイターでいい。
  • 箱にはスパロボ風の戦闘画面が書かれているが、実際には半ば隠し要素のような物で、期待して購入すると肩透かしを食う。
    • これを利用すれば一方的に敵を攻撃出来るバグ技もあり、特定の場面にこれを濫用することで異常にヌルくなる。
  • ゲーム進行に影響を及ぼすバグが多い。
    • ステージをクリアすると、何面も前のステージに戻される事がある。
    • ステータスを上げすぎると1に戻る事がある。
  • バウが「バウー」、ズゴックが「ズッゴク」など、全般的に誤植が多すぎる。
    • 何故か誤字は機動族に集中しており、しかも基本的にはマップにおける報告画面のみ。
    • ズゴックの色違い(シャア専用カラー)の「ズゴックB」に至っては他の画面でも「ズコッグB」と誤記されており、まともに表記されている場面がない。
  • 敵をたった一体でも見つけると、見つけたキャラ全員がこぞって逐一報告してくる。大変に紛らわしく、カットも不可能なのでうざったい。
    • 手柄を立てようとそれぞれ必死なのかもしれないが…。
  • 面数がそれほど多くないにもかかわらず、勝利条件が代わり映えしないものが多い。ほとんどのシナリオにおいて、町を幾つか占領したら敵が攻めてくるのを待って叩き潰す戦法で勝てる。説明書でもこの戦法はおススメされている有様。
+ エンディングについて(ネタバレ注意)
  • エンディングの最後はゲームオーバー時と同じ「墓が並んでいる絵」で終わる。せっかくクリアしたのにこれでは興ざめである。
    • 一応、「長い戦いが遂に終わって平和が訪れた」というやり取りが描かれた後でこの場面になるので、同じ墓場の絵でも、「無念の敗北」ではなく「散っていった兵士達が平和の礎となったのだ」という、ゲームオーバー時とは違った捉え方をさせたかったのだと思われるが、絵自体の陰気な雰囲気がそのままなので伝わりにくい。
    • スタッフロールの類も一切表示されない。
  • 箱絵に描かれているのは三種族の族長だが、これらのキャラクターはイベントのみの登場でプレイヤーが使用することはできない*2
    • さらに「ゲーム中で一度も姿を現さないまま人知れず暗殺される」「開始時点で暗殺されて偽者と入れ替わっている」などその扱いも悪い。
      また設定ミスなのか魔神族のみ族長ではなく最高指揮官のマジンガーZが描かれており*3、族長の「チーフマジンガー」は他種族の最高指揮官とともに箱の側面に描かれているのみ。
    • 上記の「ゲーム中で一度も姿を現さない」キャラクターである「チーフガンダム」は味方側で唯一の完全オリジナルキャラクターであるにもかかわらずこの扱い。以後の作品でも一切日の目を見ていない。

評価点

  • ロボット達に意思があるという設定ならではの世界観。
    • 原作再現要素は皆無であるが、どこか殺伐とした世界観は、ガンダムシリーズなどの戦争をテーマにした原作が多い点にもマッチしている。その一方で、ロボット自身に意思があるというSDシリーズらしく、端々にコミカルな部分も存在する。
      • キャラクターの口調は一部を除いてランダムで設定されるようで、サザビーが関西弁を喋るという面白い光景が見られることもある。
      • セリフの中には「じょうしが アホやと せんそう でけへん!こんなとこ やめたるわい!」などという某プロ野球選手を彷彿とさせるものも。
    • 原作で女性が搭乗していた、もしくは女性がモチーフの機体は女性口調となる。本作の数少ない原作要素?
  • 荒削りだがやりごたえはある。
    • 攻撃や移動がリアルタイムに行われるため、司令官であるプレイヤーは意外とあくせく指示を出していかないといけない。序盤は待ち時間が多いが、その待ち時間でもできることは山ほどあるため、暇な時間は意外と少ない。
    • 暇な時間が発生しても、よほどやり込んで解析しないと敵の進行ルートはわからないため、ユニットが着々と目的地に向かう中、指揮官として接敵を警戒するのはそれなりにハラハラする。
    • 終盤は勝利条件も容易でなくなってくるので、休む暇なくユニットに指示を出していかないといけなくなる。よってヌルゲー感はかなり薄れる。最終面付近は特にそれが顕著。
  • 兵士1体1体が出来ることはかなり多い。
    • ステルサー(隠武衆)なら塹壕設置、地雷設置、時限爆弾セット、仕掛け解除などの指示が行え、それらを仕掛けていく楽しみはある。
    • ウィザーディ(魔武衆)は、魔法を利用することで他の職業にはない能力を発揮させることが出来る。きゅうきゅうセットなしで部隊員全員を回復させる、弾薬を全回復させる、GHQに緊急帰投させる、死者をゾンビとして蘇らせるなど、戦闘力の低さを補って有り余るほど多彩。
      • ただし死者復活はプレイヤーが制御出来るわけではないので実用性が低く、消費MPも高いのでまず用いられない。
    • 普通のユニットにしても、例えば索敵のため部隊員の一人を一旦単独行動させ、視界の広い部隊員だけ先行させて敵を発見させるということが可能で、戦術や作戦の幅がとても広い。
      • ユニットの配置を自分で変えることも可能であり、基本となる1ユニット4人の集合陣形のみならず、制限内において四方向に広がって歩いたりすることも出来る。
    • 戦地で逃亡した者には無理だが、訓練・特訓中に逃げたキャラは捕まえる(捕縛成功・失敗はほぼランダム)ことで折檻することができ、痛めつけたり監禁したりと、けっこう残酷な仕打ちができてしまう。
      • 「こんじょうをたたきなおす」で傷めつけた場合、死ぬ寸前までダメージを与えられるが残りHPがほぼない時にこのコマンドを選択すると「これ以上やると死んでしまいますよ」と制止が入るなど、一線を越えられないようにしている。
  • 敵のターゲッティングはオート設定もマニュアル設定も可能。
    • 一々敵をターゲットしなくてもオートにしておけば自動的に敵と戦ってくれる。戦略的に指揮官から倒すなど考えた場合はプレイヤーの指示が必要。
  • 重戦機エルガイムと機甲戦記ドラグナーの参戦。
    • 両社ともまだスーパーロボット大戦に参戦していない時代であり、ドラグナーに至っては、『スパロボ』初参戦が『スーパーロボット大戦A』とおよそ10年程度後になったことからも、本作のチョイスはある意味先進的だったと言える。

総評

本作は右を見ても左を見ても問題点だらけであり、到底まともな内容と言えるものではない。
RTSというジャンル自体が人を選ぶ事に加え、バグや仕様上の粗が多いせいでさらに癖の強いゲームとなっていることもあり、キャラゲーなのにもかかわらず、ターゲット層がかなり狭いという大きな欠点を抱えている。

反面、ゲームプレイが成り立たない程の破綻を引き起こすような致命的な不具合やバランス崩壊などは少なく、不便な点は多いがゲームとして成立するだけの最低限の質は十分保っている。
バグを逆用した裏技なども多く、難易度の高さも相まってやり込み甲斐も十分にあり、このジャンルが好きな人であれば十分楽しめるクオリティに落ち着いている。

惜しいところが目立つゲームであるが、その内容の濃さから固定ファンも多く存在している作品である。

余談

  • 関連作品内ではこれと同ジャンルのRTSとして、『スーパーロボット大戦Scramble Commander』という作品が後に発売されたが、そちらはタイトルの通り、あくまで『スーパーロボット大戦シリーズ』にカテゴライズされており、世界観やクロスオーバーの方向性はそちらに基づいている他、ゲーム性も本作とは大きく異なっている。
    • しかしタイトルを見て本作を想起したプレイヤーはそれなりに存在した。
  • 特撮番組『特捜エクシードラフト』第14話「遥かなる父の家路」に本作のパッケージの一部が登場している。

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最終更新:2023年05月26日 21:14

*1 ただしゲーム中では原作通りのキャラクターも説明書のイラストでは一部デザインがアレンジされている。

*2 没データのみ存在する

*3 ただしデザインの一部がゲーム内とは異なる