ARMORED CORE MASTER OF ARENA

【あーまーどこあ ますたーおぶありーな】

ジャンル カスタマイズメカアクション(TPS)
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対応機種 プレイステーション
発売・開発元 フロム・ソフトウェア
発売日 1999年2月4日
定価 6,090円(税込)
廉価版・配信 PlayStation the Best:1999年2月4日
PS one Books:2002年1月1日/1,890円(税込)
ゲームアーカイブス(PS3専用):2007年11月28日/600円
判定 良作
アーマード・コアシリーズ


≪Wanna Be The Raven?≫――レイヴンになりたいのか?

『大破壊』と呼ばれる最終戦争によって、人類が地上を追われ、その居住を大地の底に移して半世紀。
「国家」という概念は既に無かったが、それに代わって台頭した「企業」同士の争いは終わる事はなかった。
総てが「企業」に管理される世界で、唯一、それに含まれない存在があった。
報酬によって依頼を遂行し、何にも組みしない傭兵。彼らは「レイヴン」と呼ばれていた。

地下世界有数の規模を誇る複合都市『アイザック・シティ』において、2つの巨大企業が市の支配権を巡る争いを繰り返していた頃、テロリストによる大規模な事件が発生。
一般の住民を巻き添えにし、事態は最悪の状況を迎えることとなった。
飛び交う銃弾の中を逃げまどった一人の青年が騒乱の後に見たものは、いつの間にかはぐれてしまった家族の無残な亡骸であった。

『レイヴン』 『赤と黒の機体』 『数字の9を模ったエンブレム』
テロリストもろとも彼の家族を殺害したという憎むべき相手に関して、彼が知り得た情報はそれだけしかなかった。
数ヵ月後、青年はネットワーク上である人物の存在を知る。その女性『ラナ・ニールセン』は、レイヴンを志す者へのマネージメントを行っていた。
家族を殺したレイヴンを探し出し殺す。青年は自らもまたレイヴンとなることを決意する。
ここにまた、数奇な運命のもとに一人のレイヴンが登場したのであった。


概要

1997年に発売され、当時類の無かった「パーツを組み替えて自分だけのロボット(AC)を作り、レイヴンと呼ばれる傭兵となって薄汚い依頼を遂行する」斬新な内容でヒットを飛ばした『ARMORED CORE』(以下、初代)。
ストーリー面の演出を強化、多様なNPCが駆るACと対戦できる「アリーナ」という新要素を加えて半年後にリリースされた『プロジェクトファンタズマ』(以下、PP)もおおむね好評を博し、発売元のフロム・ソフトウェア主宰の全国大会も開かれ、ユーザー独自の対戦会も盛り上がりを見せていた。

そして、『PP』発売から一年の間をあけてリリースされた本作『マスターオブアリーナ』(以下MoA)は、『初代』と『PP』で培われた技術をフルに生かした『アーマード・コア』の集大成と呼べる作品であった。
『初代』のストーリー補完と謎への解答・全国大会上位入賞者のデータを含む圧倒的な数のアリーナ参戦機体・多彩な追加パーツ・簡易AIによるオリジナルアリーナ作成機能・通信対戦を念頭に置いたディスク二枚組仕様…。
現在でもなおシリーズトップクラスのボリュームを誇る本作は、後に『PS三部作』『初代三部作』と呼ばれるプレイステーション作品の集大成として愛され続けている。


評価点

基本的なゲームシステムは『初代』と変わりない。ここでは本作の追加・新要素を中心に述べる。

パーツ関連

  • パーツのバランス調整
    • 前作『PP』で不評だったパーツパラメータに修正が入った。これによって極端に強すぎた・弱すぎた武器パーツがまともな性能となり、一部は対戦でも使用されるようになった。
    • この作品から、カタログスペックでは真の性能を把握できない「おもしろパーツ」が増えてくることになる。
  • 多彩な追加パーツ
    • 続編でパーツが追加されるのはシリーズの通例であるが、今作の追加パーツは『PP』のそれと比べ、一風変わったものが多かった。
      • マシンガンやスナイパーライフルのエネルギー武器版、着弾時に燃焼し連続ダメージを与える「焼夷弾」、着弾時に敵機のロックオンを妨害する「特殊ロケット」、刀身ではなくエネルギー波を発生させる「光波射出型ブレード」など。
    • これらのパーツも後作に引き継がれていく。変わり種が多いのは、ゲーム性が煮詰まっていた当時の状況を象徴していたのかもしれない。
  • 前作隠しパーツの販売解禁
    • 『初代』の隠しパーツは『PP』単体では入手できず、入手したデータをコンバート(引き継ぎ)しなければならなかった。今作では『初代』と『PP』それぞれの隠しパーツは最初からショップに陳列されており、新規ユーザーを考慮した仕様となっている。

アリーナ関連

  • 総数200以上のランカーACと、10+1種類のアリーナ
    • 『PP』の49機を大幅に上回る機体数。現在をもってシリーズNo.1の収録数である。
    • シナリオにかかわってくる「アリーナ」「サブアリーナ」、脚部制限がかかる四つのアリーナ、ゲスト参戦者の3つのアリーナ、上級者向けの「マスターアリーナ」と数も多い。
      • マスターアリーナはシリーズ中屈指の強敵と評されることもあるレイヴン「EX300」を始め強敵揃い。
  • 多彩な参戦者
    • 全国大会での上位入賞者15名、ゲーム雑誌出版社5社30名、代表取締役の神直利氏を含むフロム・ソフトウェア社員9名の機体データを収録。
      • 大会入賞者のエンブレムはどれもクオリティが高い。エースとは美にもこだわるものなのか。
      • 俺設定丸出しのプロフィール文も一度は見ておきたい。全体的に入賞者はシリアス、雑誌社はギャグ全開という方向性を持つ。
      • 入賞者の中で唯一ネタに走った「ビッグ・ザ・将軍」、キワモノ揃いのPSmag系の中でも一際輝く"新木場の木製AC"、なにやら哀愁を誘うファミ通PSの"コゲタ兄弟"は爆笑必至。
    • なお、このゲスト参戦が実現しているシリーズは『フォーミュラフロント』とポータブルシリーズのみ。
  • ランカーACのAI調整
    • 『PP』では開発期間の短さもあり、強化人間補正と強力な武器にものを言わせただけのお粗末な動きのランカーが多数を占めていた。本作ではその点が若干改善され、歯ごたえのある戦闘が楽しめる。
  • ランカーメイキング
    • 本作のみに実装されているモード。自作の機体に簡易AIを設定し、ユーザーオリジナルのアリーナを作成できる。
      • 本モードは設定の自由さ、お手軽さが高く評価されており、今なお続編での実装を求める声は多い。

対戦関連

  • 本作はディスク二枚組であり、ソフトを二つ用意しなくても通信対戦が行える。

BGM・グラフィック

BGM

  • BGMは前二作からの引き継ぎと、数曲の新曲で構成されている。いずれも評価は高いが、とりわけナインボールのテーマ曲ともいえる「9」が絶大な人気を誇っている。惜しむらくはその新曲の一部がサウンドトラックに収録されていないこと。
    • 2018年11月1日発売の『ARMORED CORE ORIGINAL SOUNDTRACK 20th ANNIVERSARY BOX』にて、遂に全曲収録と相成った。

グラフィック

  • ゲーム中のグラフィックは前二作から変化はない(元々高い水準ではある)。だが…
    • オープニング・エンディングムービーのクオリティは前二作を完全に凌駕、PS2初期レベルの水準に達している。前二作と比べると「何が起こったのか」とでも言いたくなる域。
    • 演出力も格段に上昇しており、オープニングの戦闘シーンには幾多のユーザーが魅了された。
    • このムービーが後々、「変態企業フロム」という"賞賛"をユーザーから贈られるきっかけになった…のかもしれない。
+ MoAオープニング参考動画

参考動画(youtube)。少々実機より滑らかではなくなってしまっている。


参考動画(ニコニコ動画)。ニコニコ動画アカウントをお持ちの方にはこちらの動画をお勧めする。


シナリオ・ミッション

  • 今作のシナリオは先述したストーリーの通り、「一人の青年の復讐劇」を軸にしながら、『初代』で提示された疑問である「レイヴンズ・ネスト」と「ナインボール」の謎が明かされるという構成となっている。『初代』のストイックな雰囲気と『PP』のヒロイックなストーリーを融合させた、シリーズファンのツボをついたものだった。
    • シリーズの通例通り、キャラクターの風体等は全く描写されず、その人物を表現する要素は声・メールの文面・機体の動きのみ。しかしそれ故に各キャラクターの印象は強烈にプレイヤーの心に残りやすい。ミッションでさりげなく登場する他のレイヴンにもファンがいるというありさま。
      • ナインボールを駆る最強のレイヴンであり、主人公の仇でもある「ハスラーワン」と、復讐に燃える主人公をサポートする「ラナ・ニールセン」の人気は非常に高い。
      • なお、やはりシリーズの例にもれず声優は豪華。ハスラーワンは檜山修之氏、ラナは渡辺久美子氏。お二人とも他作品ではなかなか見ることのできない性質のキャラクターを演じている。
  • 今作ではシリーズでも異例の、ミッションとアリーナがリンクしたシナリオ進行の方式をとっている。依頼が無いためアリーナを勝ち進むことに専念したり、逆にアリーナ出場を強制的に禁止され緊急の依頼を受諾したりなど。
    • これは主人公の目的が「アリーナランク1であるハスラー・ワンへの復讐」であるため。他にも「アリーナ参戦のためのスポンサー企業」など、本作独自の要素が多い。
  • ミッションの難度は高め。対AC戦闘が多いのと、変わった構成のマップが多いため。
    • 中でもシリーズ初の海上戦闘となる「潜水艦護衛」、巨大兵器と対峙する「地上戦艦撃破」、放棄された宇宙船内を探索する「廃棄宇宙船探索」は幾多のレイヴンを苦しめた。
    • 最終ミッションは難易度 ・ 演出合わせて今でもファンの間で語り草となっている。過酷な道中、明かされる真実、そして最後に待ち受ける、常軌を逸した火力と機動性を持つPS三部作最強の敵「ナインボール=セラフ」……。トリを飾るミッションとしてはこれ以上ないほどの完成度であった。



問題点

  • ミッションの少なさ
    • ミッション個々の内容は濃く、アリーナと連動するシステムのおかげでボリュームが薄いとは感じないのだが、総数19という数字自体は『PP』と大差ない。また「ミッションとアリーナを往復させられるのが面倒」という指摘も。
    • 『PP』同様、頭部パーツの「ノイズキャンセラー」「バイオセンサー」を要求するミッションが存在せず、ほぼダミーパラメータと化している。
      • ノイズキャンセラーについては、新登場の特殊ロケットによるロックオン障害時間を短縮できるため、まったくの無意味というわけではない。
  • 対戦バランスの悪化
    • タンク型脚部の防御力下方修正 ・ 被弾時反動の仕様変更 ・ 反動対策として有効だったバグ「風」の廃止等、被弾率の高い重量級機体が不利なゲームバランスになっている。
      • この変更により、もともと強力な反動を与えられたハンドガンが凶悪化。当時の大会参加機体の半数はほとんどの機体から硬直をとれる「WG-HG1」を装備していた。
    • マップ数の減少。しかも面白いと評判だったマップばかりが削られてしまっている。
    • こうしたことから、皮肉なことにもコアな対戦派は、第一作にしてシリーズでも随一の対戦バランスを誇る『初代』を対戦ツールとして用いる傾向にある*1
  • 強化人間能力獲得の方法
    • 公式チートとでもいうべきシリーズ恒例の「強化人間」だが、『PP』と同様に本作単品ではその能力を得ることは出来ず、『初代』からデータを引き継いでくる必要がある。
  • 他、初代の難点の幾つかを引き継いでいる。
    • パラメータ表記が英語と数字で少々とっつきづらく、一部のダミーパラメータもそのまま。
  • ミッション中に入手できる隠しパーツの凶悪な隠し場所
    • 三種類いずれも隠し場所が凝り過ぎ。「くまなく探す」だけではなく「頭を使う」必要がある。
  • 前二作から全く進歩の無いゲーム中グラフィック
    • ただ、そもそも『初代』の時点で「このボリュームとしては十分すぎるクオリティ」の品質であり、収録機体やステージが更に増えた本作でグラフィックの向上を求めるのは酷だとする意見が大半である。
  • ミッション中に登場するランカーACの仕様
    • 『初代』から続く仕様として、ランカーACはアリーナでは本来のパーツの組み合わせ通りの戦闘力を発揮するが、ミッション中で登場する場合には無条件で防御力が0とされ、実際よりもかなり脆くなってしまっている。
      • 代わりに弾数&EN無限、『初代』のヴァルキュリアCのスラッグガン等に見られる一部武器の超強化等の措置が取られているのだが、今作では殆ど目立たない。
      • 尤も、道中戦で消耗していたり他にも敵が大勢いたりする状況で通常通りの強さのACと戦わされても困るのだが。
  • ランカーACの基準違反
    • DISC2のアリーナには重量過多となっている機体が多く見られる。
      • 特に四脚アリーナは「グレネード等の強力な肩武器を足を止めずに撃てるが積載に余裕がなく、防御力が落ちやすい」という四脚の弱点を重量級パーツを使うことでカバーしようとしており、基準違反のオンパレード。
      • 本編をプレイしてパーツを揃え、成熟したプレイヤーと同等の条件を与えると実力差によって容易く蹴散らされ強敵となり得ない為致し方ないが、基準違反ゆえの強さを持つACが卑怯に思えることも。

総評

新たな方針の新武装、待ち受ける無数のランカーAC、第一作から続く物語の決着、最強の敵等、本作の時点で『アーマード・コア』という作品は、ゲーム性が煮詰まったと言える。
その点からいえば本作は見事に『PS三部作』のトリを飾り、次世代機PS2でのシリーズ展開の夢を託したと言えよう。
シリーズ内では少々難易度が高めであり、初心者がいきなりプレイするには酷なタイトルではあるが、全てのロボットモノ好きに薦められるだけの内容を持った作品である。

シリーズ初プレイなら本作と同じくアーカイブスで配信されている『初代』の後にプレイするのがよいだろう。
両作共にPS one Booksで再版されており、また中古品の出回りもよく、2作(場合によっては『PP』も合わせた3作を)まとめて1,000円未満で調達することもできる。


その後の展開

この作品でアーマード・コアシリーズは一区切りを迎え、次なる舞台『アーマード・コア2』へと飛翔する。
「進化する戦闘メカアクション」の一つの終点を、ぜひ体験してみてほしい。


修正プログラム 最終レベル
全システムチェック終了
戦闘モード起動
ターゲット 確認 排除開始




一部情報出典:RAVENWOOD.jp


余談

  • 本作の主人公はシリーズでは珍しく、レイヴンを志した経歴と生い立ちが詳しく(シリーズの基準で言えばこれでも詳しい)描写されている。後に、彼には(機体名と合わせ、あくまで小説の独自設定であるが)ファミ通文庫からのノベライズ版『マスターオブアリーナ』(著者:篠崎砂美*2)にて「フリッツ・バーン」の名が与えられた。
    • 本作パッケージに描かれ、OPムービーでも登場するACはファンの間で「アナイアレイター(殲滅者)」と呼ばれているが、この呼び名はフリッツの乗機に由来している*3。『初代』の看板機体である「アンファング」を新鋭パーツで再構成した正当進化系のデザインは歴代でも特に評価が高い。
    • 小説という触体ならではのストーリーや、ゲームをよく研究していることが読み取れる描写など、随所に見るべきところが多い作品でもある。現在絶版であり入手困難だが、ファンならば抑えて損はない。
  • OPムービーで主役機が使用するレーザーブレードは、シリーズでは数多いムービーのみの登場武器。ゲームで再現するならば「LS-99-MOONLIGHT」で代用しよう*4
  • PS2使用時のフリーズ
    • 本作はPS2登場以前に発売されたため、ゲーム自体と製作元には何の責任も無いのだが、Best版までのソフトではPS2で遊ぶと高確率でフリーズする。PS one Books版、ゲームアーカイブス版では修正済み。
+ タグ編集
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  • フロム・ソフトウェア
  • アーマード・コア

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最終更新:2023年03月05日 09:54

*1 正確には「『初代』のデータを対戦環境の整った『PP』で読み込んで対戦」する、「イエローアセン」と呼ばれる方法を用いている

*2 フリーソフト『マッチメーカー』の考案者としても知られる。

*3 ちなみに構築・命名者はゲームにも登場する技術者・エラン。小説後半では脚部と武装を換装した「アナイアレイター+」となる。

*4 重量過多になってしまい、コンバート無しでは絶対に出撃できないが…