SAMURAI SPIRITS

【さむらいすぴりっつ】

ジャンル 対戦格闘アクション
対応機種 アーケード(MVS)
ネオジオ・ネオジオCD
発売・開発元 SNK
稼働開始日 1993年7月7日
発売日 【NG】1993年8月11日
【NGCD】1994年9月9日
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2007年10月16日/900Wiiポイント(税5%込)
アーケードアーカイブス
【PS4】2016年12月8日/823円
【Switch】2017年7月20日/823円(共に税8%込)
判定 良作
サムライスピリッツシリーズ


概要

SNKを代表する対戦格闘ゲームのひとつ。「武器」を主軸とする斬新なゲームデザインや個性的なキャラクターが話題を呼び、一時代を築く大ヒット作となった。
シンプルな操作と複雑な読み合いを絶妙なバランスで両立しており、初心者から熟練者まで幅広い支持を得ている。
稼動前は極めて注目度が低い作品だったが、中身ひとつで圧倒的な支持を得た稀有な例である。

登場キャラクターの顔触れは、タイトルを裏切って侍という枠に留まらず多彩(むしろ侍であるキャラが希少)。金髪碧眼が二人いるなど、出身国も日本に留まらない。

+ 登場キャラクター一覧
  • 覇王丸
    • 武者修行の旅を続ける武芸者。本作主人公。荒っぽく束ねられて凄いことになっている長髪が特徴。
    • 身を乗り出して叩き付けるように繰り出す立ち強斬り「斬鉄閃」が代名詞。一閃と呼ぶに相応しい速さに、目を見張る長さと威力を併せ持つこの技の豪快さで、多くのプレイヤーを魅了した。一方で屈み小・中斬りや、各種蹴りといった地味な技もなかなか優秀。
    • スタッフ談話によれば宮本武蔵がモデルとされ、開発初期は「ムサシ」と呼ばれていたとのこと。
  • 橘右京
    • 想い人に捧げるための「究極の花」を求める居合の達人。肺病を患う優男で、女衆からの人気が高い。敵に背を向けて対峙する特異な構えで戦う。
    • 広範囲をなぎ払いつつ飛び道具も繰り出す空中必殺技「つばめ返し」が強力。「つばめ返し」は特殊入力によってジャンプ直後や飛び退き(バックステップ)から超低空で出すこともでき、不意打ちの中段技としても凶悪な性能を誇った。地上技は、通常技に移動を伴う(=防御されると相手にめり込んでしまう)ものが複数あり、ややクセが強いが、ほぼ万能の対空技である屈み強蹴りなど強力な技もある。
    • 「つばめ返し」にも示されているが、スタッフ談話によればモデルは佐々木小次郎。開発初期は「コジロウ」と呼ばれていたとのこと。なお、キャラ設定は覇王丸よりも先に固まっていたようで、覇王丸=武蔵というのは右京=小次郎に対しての設定とか。
  • ナコルル
    • アイヌの巫女である可憐な少女。鷹ママハハを連れて戦う。後続作では淑やかな性格に変更されるが、本作では溌剌としており発言も勝気。勝ち台詞「大自然のお仕置きよ」は人気となった。
    • 得物が短刀であり本人も小柄なためリーチが短いが、動作は機敏。ママハハに掴まって空中に待機し、そこから軽い択攻めを仕掛けられるなど、トリッキーな面も持つ。
    • プレイヤーの絶大な支持を受けたキャラで、SNKの看板キャラの一人ともなった。同キャラ対戦の2P側・通称「紫ナコルル」は勝利画面の顔が違う(やや挑発的な表情)といったスタッフの遊び心も見ることができる。
  • シャルロット
    • フランスの貴族令嬢で、フェンシングの原型であるレイピア剣術の達人。顔は露出しているが、胸部や四肢は鋼鉄の防具で固めている。
    • どこの対戦ダイヤグラムでも頂点に輝く本作の女帝。長さと速さに優れた立ち弱・中斬り(突き)、非常に判定の強いジャンプ強斬り、大半のジャンプ攻撃を叩き落とす立ち蹴りなど、通常技の性能が抜群に高い。牽制戦に持ち込めばほとんどの相手を寄せ付けず、さらにジャンプが低くて速いため、一瞬の隙に攻め込むことも可能。必殺技は2つとも使いづらいが、使わなくても充分強い*1
    • 性能の高さから初心者プレイヤーにも好まれ、一時期には駆け引きも何もなくジャンプ強斬りで飛び回るだけの通称「サルロット」が氾濫した。単調ながら対処を知らなければ厄介なサルロットの横行に加えて、勝利時の台詞「アハーン?」や高笑いといった要素もヘイトを集め、ナコルルとは対照的に憎まれ役となった。ちなみに声優はナコルルと同じ生駒治美氏。
  • 柳生十兵衛
    • 二刀を操る隻眼の剣士。実在した剣豪の柳生十兵衛三厳がモデル*2で、流派は柳生新陰流・改。
    • 地上・空中を問わず通常技に優秀なものが多い。速いジャンプも手伝って軽快に攻められ、牽制戦にも地対地、空対地で対応できる。ただし地対空に使える技がなく、飛び込みの強いキャラに押されると少々厳しい。全体には弱みが少なく扱いやすい部類。
  • 服部半蔵
    • 伊賀忍者の頭領。黒装束と覆面に身を包んだ誰の目にも明らかな忍者。その名の通り、家康に仕えた服部半蔵正成(の一般的な忍者としてのイメージ)がモデル*3
    • 足が速く、威力の高い必殺投げ「モズ落とし」を持つ。恐ろしい威力を叩き出す怒り状態での強モズ落としが切り札だが、斬り技に突出したものがないため、差し合いを凌ぐには速い足と蹴り技も最大限に駆使する必要がある。飛び道具技を2つ持つが、そのうち「爆炎龍」は溜めを必要とするものの、硬直が短い上飛び道具の判定が大きく使いやすい。
  • ガルフォード
    • 甲賀忍術を学んだ金髪碧眼のアメリカ人忍者。忍犬として仕込んだ愛犬パピィと共に、悪を討つために戦う熱い性格の持ち主。
    • 半蔵と同じ通常技を持つ、いわゆるコンパチキャラ。しかし必殺技の性能で劣り、特に必殺投げ「ストライクヘッズ」の威力が「モズ落とし」より大幅に低いのが痛い。パピィを突進させる飛び道具技も、本人の硬直が非常に大きく、使いどころがほぼない。いわば半蔵の下位互換。
  • 千両狂死郎
    • 江戸で絶大な人気を博す歌舞伎役者。「舞闘流歌舞伎」を掲げ、薙刀を振るって戦う。歌舞伎の獅子の装いだが、自慢の赤い長髪は地毛らしい。
    • 薙刀の長さを活かした牽制が強く、「待ち」の強さはシャルロットに次ぐ。置き、カウンター、削り等に幅広く使える必殺技「跳尾獅子」も強い。ジャンプは高く遅いため飛び込みには向かないが、空中必殺技「血煙曲輪」は空対空で強力。しゃがみ弱蹴りが発生1フレームだったり、垂直ジャンプ強蹴りが何故か下段判定(立ちガード不可)になっているなど蹴り技が地味に強い。
  • 王虎(ワンフー)
    • 青竜刀*4を携え弁髪を結った中国の武人。でっぷりとした体格が示す通り腕力に優れ、一撃必殺の強斬りを持つ。
    • 前方へ投げ出すように放つ立ち強斬りの豪快さは、覇王丸に勝るとも劣らない。地面を擦るように引き戻すため戻りは遅いが、非常に長いため先端を当てれば防御されても手痛い反撃は受けづらい。また、素手時の強斬り投げの威力が異常に高く、それを活かすためか、空中から武器を投げ付け、自ら素手になる必殺技を持つ。
  • アースクェイク
    • 甲賀忍術を(適当に)学び巨大鎖鎌を扱う、アメリカ人の巨漢忍者。ただし、スキンヘッドにピンクのパンクファッションで技も忍者要素は三角跳び以外ほぼ皆無。設定上でもゲーム画面上でも本作最大のキャラ*5
    • 本国では野盗の頭であり、強欲かつ残忍な性格で、忍術修行も「仕事」に活かすため。ガルフォードとは同じ師匠に学んだ一応の同門だが、得物も技も全くの別物。
    • 「重すぎて投げられない」という強力な特長を持つが、巨体ゆえ屈み状態に大半のキャラの昇りジャンプ攻撃がヒットする。投げ無効に頼ったガン待ちよりも、固められない程度に牽制し、焦れて飛び込んできた相手を対空や防御投げで喰っていく方が戦いやすい。
  • タムタム
    • 大刀を持ち仮面で顔を隠した秘境の戦士。装束はマヤやインカといった中南米文明のものがモデル*6。容貌も技も奇怪なキャラで、立ち状態でも膝を深く曲げており、その姿勢のまま爪先立ってシャカシャカと移動する。
    • 斜め下に対して非常に長いジャンプ強斬りが特長。ジャンプ直後に出すことで「見えない中段」として機能する。立ち・屈み強蹴りがどちらも長く転倒効果があるので、近距離ではこれらとジャンプ強斬りで二択を迫ることができる。ジャンプして着弾点から垂直に跳ね上がる弾を吐く「アハウ・ガブル」、地面に突いた指で身体を支え、開脚して回転斬りを見舞う「パグナ・ディオス」など、必殺技も奇怪だが、それぞれ使いどころがある。
      • なお、剣を回転させつつ低速で前後に移動できる「パグナ・パグナ」は、「防御させてレバーを前後に高速で振ると、異常な回数の攻撃判定が発生して フリーズする 」という基板に対する必殺技になっている。まず相手に当てることが難しい技なので、大きな問題にはならなかったが。
  • 不知火幻庵
    • 緑の肌に尖った耳を持つ異形の者。金属の爪を付けた篭手で戦う。地上移動が四つん這いである、毒霧を吐く必殺技を持つなど、あちこちが人外。人間離れはしていても分類としては間違いなく人間であるアースクェイク、あくまで異文明・個人差の範疇で異形なタムタムとは異なり、「人間とは種族が異なる」「ヒトとは血液構造が違う」という公式設定がある。
    • 地上での弱・中斬りが性能のいい突きであり、牽制戦に強い。また、一部キャラを除き「屈んでいると投げられない」という特長も持つ*7。ジャンプが高いうえ飛び込みが弱く、攻め手にあまり光るものはないが、差し合いで勝てる相手には有利に戦える。
  • 天草四郎時貞
    • 本作ラスボスでCPU専用キャラ。若くして島原の乱を主導し、幕府に敗れて死亡した史実のキリシタンがモデル。本作の天草は、死亡後に幕府への恨みから死霊として彷徨っていたが、暗黒神アンブロジアによってその使徒となり復活した。華美な着物に身を包んだ派手な風貌*8で、肉体は服部半蔵の息子・真蔵のものを乗っ取っている。武器として操る宝珠は、タムタムの故郷の宝であるパレンケストーン。
    • ラスボスだけに超反応、さらに優秀な技と反則的な攻撃力を持ち、動作中無敵の高速移動技も駆使して翻弄してくる。まともに戦うと非常に強いが、実は大半のキャラで「手を出さずに接近を待ち、歩いてきたらこちらも歩いて投げ」という戦法が通じる。さらに端に追い込んで一定距離を保つと、届かない斬りを連発するだけになり、時間切れ勝利が狙える。

特徴:武士道トハ 死ヌコトト見ツケタリ

  • 操作は1レバー+4ボタン。ボタンは弱斬り・中斬り・弱蹴り・中蹴りに割り振られており、弱中同時押しで強斬り・強蹴りとなる。
    • 特筆すべきは 強斬りのダメージと爽快感 。本作は全体的にレバー操作を必要とする必殺技の使い勝手が悪い傾向にあり、初心者にも簡単に出せる強斬りが実質的な「必殺技」と言える位置付けになっている。
      • 特に主人公・覇王丸の遠距離立ち強斬り(斬鉄閃)の破壊力とインパクトは見る者を圧倒し、多くの強斬り中毒者を生んだ。
      • 後述のように一部のゲームセンターでは配線をつなぎ直してわざわざ6ボタン式にした筐体があったほど、このゲームの強切りは重要要素。
  • 画面下に表示される 「怒りゲージ」
    • ダメージを受けるごとに溜まり、徐々にキャラの肌の色が赤くなっていく。MAXになると「怒り状態」となり、攻撃力が上昇する。
    • 残り体力が少なくなると攻撃力が上昇する要素もあり、瀕死+怒りの条件が重なったときの強斬りは 一撃で5割近い威力 を叩き出すこともある。
      • 常に一発逆転の可能性があるため、体力でリードしていても最後まで気の抜けない展開が続く。
  • 「鍔競り合い」。両者の攻撃がタイミング良くぶつかったとき、両者が同時にダッシュで接近したとき、および開幕時にランダムで発生。
    • 時代劇で見られるような押し合い勝負となり、負けると武器を弾き飛ばされて素手になる(どちらの武器も飛ばない場合や、両者の武器が飛ぶ場合もある)。
      • ボタン連打の表示が出るが実際はほぼランダム。「鍔迫り合い能力」がキャラ別に設定されており、半蔵、王虎、十兵衛は高く、狂死郎は低い。
    • 素手状態では基本的に弱体化する(技の武器分の威力やリーチが減少したり、敵の通常技含む武器攻撃で体力が削られる、武器を使った必殺技が出せなくなる等)。
      • 逆に一部性能が変化する技もある。特に王虎の素手強斬り投げは、通常投げでありながら相手の体力の1/3強を減らす超威力。ほぼ運次第だが 「真剣白刃取り」 が発生して不利を覆せることもある。
  • 背景を横切り、肉や爆弾などのアイテムをランダムで投げ込む 飛脚
    • 膠着していた状況がアイテムによって一変することもあるため運の要素が絡むが、睨み合いになることが多いこのゲームでは良いアクセントになっている。
    • ステージによってアイテムの出現率も異なっており、例えば千両狂死郎ステージでは肉、王虎ステージでは爆弾の出現率が高く設定されている。
  • 両者の距離に応じて画面が二段階にズームされる。
  • 超必殺技の類は続編『真サムライスピリッツ』からの登場となるが、逆にこのシンプルさが良いという声も多い。
  • シリーズ中でも本作だけの特徴として、武器に「耐久値」が設定されている。これはキャラ毎により異なり、武器同士をぶつけ合いゼロになると壊れる。次回作と違い、壊れた武器はそのラウンド中二度と戻ってこない。
    • ただし、普通に地上で武器をぶつけ合うと前述の鍔迫り合いが発生し、鍔迫り合いになると武器の耐久値は減らないので、「ジャンプ攻撃対地上攻撃」など鍔迫り合いが発生しない状況で武器(だけ)をぶつけ合う必要がある。そのため実戦ではまず武器が壊れるところは見られない。
    • ちなみに最も耐久値に優れる武器は王虎の持つ青龍刀「斬肉大包丁」である。ただ上記の理由で「だから王虎は強い」というわけでもない。
  • CPU戦の3人目、6人目、12人目の後に演舞(ボーナスステージ)が合計3回存在する。ワラビトを斬り攻撃で斬り落とすというもの。
    • ワラビトは最初は下3ヶ所のみ出現するが、2回目は上にも出現し計4ヶ所、3回目は上2ヶ所に増えて計5ヶ所となる。
    • 一部のキャラ(十兵衛、タムタム等)はジャンプ斬りの判定が武器の先端にしかないため、上のワラビトが斬りにくい。アースクェイクに至っては図体のデカさから最初から最後までひたすら辛い。

評価点:修羅道トハ 倒スコトト見ツケタリ

  • 非常にシンプルな操作。
    • 全体的に必殺技よりも強斬りの方が強く、同時押しにさえ慣れればレバー操作に不慣れな初心者でも簡単に必殺の一撃を繰り出すことができる。
    • この頃の格闘ゲームは徐々に連続技が重要視され操作の複雑化が進んでいたが、このゲームの連続技は基本的にジャンプ攻撃→地上攻撃の目押し程度しか存在しない。その分決まれば凄まじい威力となる。
      • ただし安定して繋げるにはしっかりタイミング調整する必要があるため一概に簡単とも言えず、そもそもジャンプ攻撃を当てることが難しいのが上級者にも納得のバランスとなっている。
      • キャンセルがかかる技自体は非常に多いが、ほとんどは繋がらないため主に隙消しに使う。
  • 本物の斬り合いのような 「差し合い」の緊迫感
    • 強斬りは威力が高いが隙も大きいため、突き詰めると弱中斬りや投げを絡めた牽制を振りながら相手の隙を作るという立ち回りが求められる。
      • また、蹴りはダメージは低いが判定が強く、同時に出し合うと斬りに勝てる場合が多い。このためひたすら斬るだけでは勝てないというバランスが成立している。
    • 地上からの対空迎撃が弱い傾向にある代わりに、横に強い空中技が多い。自然と相手のジャンプには空対空で応戦するのが基本になり、空中で交錯しながら一閃!という、白戸三平作品などの伝奇活劇さながらの構図になるのが面白い。
      • 本作のジャンプにはこれ以外にも着地硬直を投げられる、裏を取られるなどのリスクがあり、メインはあくまで地上での牽制戦になる。
  • バラエティに富んだキャラクター群。
    • 必殺技が弱く強斬りが強いというのはあくまで全体的な傾向で、手数で勝負をかける忍者キャラ、空中からトリッキーな動きで翻弄するキャラなど、キャラごとに多種多様な戦略を取ることができる。
      • 特に鷹のオプションを使った立ち回りが面白く、キャラ設定でもファンの心を掴んだアイヌ少女 ナコルル が一世を風靡する人気を得た。
        非常に露出の少ない服装を含め「可憐な少女(が戦いの場に立つ)」というキャラクタ性を前面に押し出したその造形は、ストリートファイターシリーズの春麗を筆頭とした「強い女」が主流であった格闘ゲームのヒロインの系譜(無論それまでも例外はあるだろうが)からは際立って輝き*9、今なお熱狂的なファンを多数持つ。一部では 「萌え」 という概念を確立させたキャラであるとも言われる。
      • 画面の半分を埋めようかという巨体を持ち、 あまりに重いので投げられない という格闘ゲームの常識を打ち破る特徴を備えていたアースクェイクも特徴的*10
    • バグか仕様かよく分からない現象がたくさんあるが、これらが結果的にバランスを崩壊させることなく、ゲームを面白くする方向に転ぶ幸運にも恵まれた。
      • 中でも、服部半蔵とガルフォードという二人の忍者キャラは「モズキャンセル」と呼ばれる特殊なキャンセル*11を活用することで、いかにも忍者らしいテクニカルな連係が可能になる。
        この2名は普通に戦うと弱キャラだったこともあり、モズキャンが発見されたことで、多少は戦力が改善されることとなった。
      • 他に前述のアースクェイクもジャンプ攻撃が決まりやすいことに加え、空中弱キック後に無敵がつくので、しゃがんで待つより積極的に跳んだり*12、投げ無効を生かして当て投げ狙いをしたりした方がいいなど、いろいろうまくかみ合っている。
  • 読み合いの奥の深さ。
    • 操作がシンプルな分、一撃が非常に重い意味を持ち、極めるとドット単位での間合の取り方が勝負を分けるようなシビアな展開になる。
      • このため手先の器用さだけでなく、心理戦の上手さと技の把握が初心者と上級者の大きな分かれ目になっている。
  • とことんまで 「時代劇」感 を演出するフィーチャー。
    • 武器攻撃がヒットすると豪快に血飛沫が舞い、本作特有のバッサリ感を生み出している。
      • 特に「ズバッ」と鳴るSEのリアルさに定評があり、 「社内で実際に人を斬って収録されている」 という噂すら飛び交ったほど。実際には濡れた手拭いを壁に叩き付けた音を加工してああなったとの事。
    • 世界観は明るめに描かれているが、2本目以降に画面上に「死」の文字が浮かぶ、KOされた時に血飛沫を吹いて倒れたり人体が真っ二つになったり*13することがある、勝利画面では黒子達が藁を被せた担架を運んでいるのが描かれるなど、かなり直接的に「負け=死」という真剣勝負のシビアさを表現している。ただしやや過激な演出なため、一部で(特に続編では)批判を買った部分でもある。
      • なお真っ二つ描写や血飛沫については筐体設定でなくしたり白色に変えることができる。白い血飛沫が舞う光景はシュールとも言える。
    • 細かく描き込まれたステージ背景、和楽や自然音を多用するBGMが秀逸。
    • 審判を務める「黒子」が両者の間をうろうろする。特に勝負には影響しないが、攻撃が決まると手旗を揚げたり、決着時に礼をするなど雰囲気作りに一役買っている。
    • 背景にある竹や樽などの障害物を意図的に斬ることができる。斬り合いの雰囲気を感じられる他、勝負に影響を与えることもある。

問題点:我、悪鬼羅刹トナリテ

  • ゲームの特徴上、 「待ち」が強い
    • 一撃の重みが大きいため迂闊に大技を振ることができないことに加え、現在の格闘ゲームでは当たり前のように常備されている中段技*14を持たないキャラが多い、ダッシュから投げを出すのが難しい*15、さらにアースクェイクには投げそのものが無効*16
      こうなると、一定の距離を挟んでの睨み合いという局面になることが非常に多い。一瞬の隙からひっくり返ることもあるため読み合いの範疇ではあるが、ガンガン攻めることを好むプレイヤーにはあまり向かない。
      また、対処法を知らないと抜け出せないような「ハメ」に近い戦法も多少なり存在する。
    • このため、牽制技が強いシャルロットが不動の最強と言われており、本作では異例の強さを持つジャンプ強斬りの単調な攻めを繰り返す サルロット 戦法が猛威を振るった。
      • ただしシャルロットの真の強さは地上戦にこそあり、ただ飛び回るだけのサルロットはこのゲームにある程度慣れたプレイヤーならむしろ対処しやすい相手である。
    • 個性が強いキャラが多いため、相性による有利・不利が比較的顕著。
      • 特にナコルルとタムタムは防御力が低く、気絶状態のまま再度気絶させられることがあり、覇王丸のしゃがみ強斬りや半蔵の強モズ落としなど気絶値の高い技を使われた場合、これを延々と繰り返されるだけで詰んでしまうことがある。
      • ただし格闘ゲームとしての全体的なバランスはかなり良い部類で、現在では研究の結果「最強のシャルロットと最弱のタムタムを除けば、全キャラ対等に近い」と言われている。
  • 同時期のNEOGEO格ゲー同様、CPU戦の難易度は高め。
    • 強斬りを当てる事がこのゲームの大きなポイントではあるが、裏を返せば自分もそれを喰らわないように適確なガードが求められる。隙を見せればどんどん攻撃を放ってくるため、慣れない内はとにかく厳しい。
    • ボスキャラ天草四郎はまともに斬りあいを挑むと 全く隙の無いと思われるワープ まるで勝ち目のない強い判定の必殺技 をガンガン使ってくる。こうなるとシャルロット(のサルロット戦法)以外の 大抵のキャラは止めを刺す前に時間切れとなる ので判定勝ちしか望めない。
    • ただしアースクェイクは相手に投げられないため、ジャンプ強蹴り(ケツ)をガードさせてからの投げハメと待ち戦法で比較的楽に勝ち進める。ラスボスの天草でさえ、1回投げた後ずっとガードしているだけで時間切れ勝利を狙える。
    • また、「起き上がり時にはどちらも投げを決められない」という仕様を利用して、CPUを一度転ばせた後に起き上がりに密着し、投げの失敗で強斬りなどを出させて隙を作り再び転ばせるというパターンにハメられるキャラもいる。CPUのシャルロット、十兵衛、狂死郎、アースクェイクに有効。
  • 強斬り、強蹴りが出にくい。
    • 基板の関係上、4ボタン+同時押しで擬似的に6ボタン制を採用していることに加え、同時押しの認識がやや厳しいため、重要な場面で強斬りが弱中斬りに化けることが少なくない。
      • なお、この「同時押しで強入力」は必殺技にも当然適用されるので、必殺技が連打コマンドのアースクエイクなどは非常に強攻撃が出しづらい。
      • 配線をいじってカプコン格闘風の純6ボタン設定(もしくは切り替えが可能)にしてこの問題を解決しているゲームセンターもある。
  • 勝手にやらされる鍔競り合い。
    • 開幕時に一定確率で自動的に鍔競り合いが発生し、しかも連打数に関係なく ほぼ選んだキャラの時点で勝率が決まってしまう
      • 場合によってはいきなり不利な素手状態からスタートさせられるという理不尽な状況に立たされ、武器が落ちた位置次第ではプレイヤーの腕ではどうしようもなくなることがある。

総評:目ノ前ノ 敵スベテヲ… 斬ル!!

世に無数の新作・続編格ゲーが乱れ飛ぶ中、「時代劇」テイストを全面に押し出して大ヒットをかっさらった、格闘ゲームブーム絶頂期のモンスタータイトル。
他の格闘ゲームに類を見ない独特のゲームデザイン、個性と魅力に溢れるキャラクターたち、細部までこだわった演出もさることながら、一撃で相手をかっさばき大ダメージを奪う大斬りの快感とインパクトは多くのサムスピ野郎を生み出し、連日ゲーセンに長蛇の列を作るに至った。
また、格闘ゲーム全体の流れとして徐々に連続技が重視されるようになり、システムや操作の複雑化・高難度化が目立ち始めていた中、
複雑な操作を必要とせずにジリジリと間合を取り合うような緊迫感に溢れた駆け引きを味わえることも、本作が幅広いプレイヤーに受け入れられた大きな要因と言える。
サムスピシリーズは以降も多くの続編や関連作品がリリースされることになるが、現在も初代である本作がシリーズ最高傑作とする声は根強く、熱心なファンによる対戦や研究が行われ続けていることが、本作の完成度の高さをよく表していると言えよう。
「天とともに生き 天とともに死ぬ定め 信じるものは 己が刃のみ…斬る!」



移植

  • SFC、MD、PSなど数多くの機種に移植されたが、いずれも多少の劣化を含むため、オリジナルのクオリティで遊べるのは長らくNEOGEOのみであった。
    但し、代わりに一部の家庭用機種ではボスの天草四郎時貞が使用可能になっているという特典があった。
    • ゲームボーイ版(1994年6月30日):『熱闘サムライスピリッツ』として発売された。詳細は該当記事を参照。何気にネオジオROM版以外では最も早い移植である。移植度はあまりよくないが、飛脚・黒子という独自の追加キャラが居る。
    • ネオジオCD版(1994年9月9日):裏技で天草が使用可能。
    • スーパーファミコン版(1994年9月22日):拡大縮小がカットされメガドライブ版とは逆にキャラサイズが縮小時で再現されているため見た目はかなりしょぼくなっているが削除された要素などはなく移植度は悪くない。
    • メガドライブ版(1994年11月19日):アースクェイクのリストラを始め、覇王丸の斬鉄閃など削除された演出や技が多い。詳細は該当記事を参照。
    • ゲームギア版(1994年12月16日):MD版のアースクェイクだけでなく王虎・タムタムも削除。代わりに操作は良好。
    • 3DO版(1995年2月10日):何故か日本版も海外版タイトルの『SAMURAI SHODOWN(サムライショーダウン)』の名前で発売された。タイトルロゴ以外は、テキストも含め日本版の仕様となっている(但し、怒りゲージや画面上部中央のステータス表示など一部UIの表示は海外版のまま、タイトルデモのテキストも「修羅道」が「修羅倒」になってたりとどこかちぐはぐしている。)。オプションで武器のオン/オフがあり初めから素手での対戦も可能。しかも、移植を担当したのは『Gex』や『TOMB RAIDER』シリーズ*17などで知られるアメリカのデベロッパー、クリスタル・ダイナミクスであり、セガCD版に次ぐ海外外注移植でもあった。BGMが一部無音になっているシーンや一部音声が端折られるかのような再生、そして1本目開始手前で入るローディング*18など所々細かい問題点もある。
    • セガCD版(1995年):MD版ベースだが多少改善されている。移植はMCD版『餓狼伝説スペシャル』の移植を手掛けたノルウェーのFuncom。日本でもメガCD版の発売が予定されていたがキャンセルされた。
    • FM TOWNS版(1995年4月26日):パソコンへの移植という事もあり発売当時はネオジオに次ぐ移植度だった。オプションで拡大縮小をオフにできメガドライブ版のように常時拡大状態でプレイする事も可能。
    • プレイステーション版(1998年3月26日):続編『真』とのカップリングで『サムライスピリッツ 剣客指南パック』として発売。覇王丸に対戦限定で新たな乱舞奥義が追加されている。移植度は非常に高い。
  • 現在はPS2・Wiiの『サムライスピリッツ六番勝負』にネオジオ版ベースで収録されている他、Wiiのバーチャルコンソールでもネオジオ版が単独配信されている。
  • PS4/XboxOne/Switch/Windows10のアーケードアーカイブスではMVS版が配信されている。そちらではスコアアタックにあたるキャラバンモードの他、海外版も収録されている。

その後の展開

  • SNKの倒産以降は版権がSNKプレイモアに引き継がれ、悠紀エンタープライズ開発で『サムライスピリッツ零』、『サムライスピリッツ零SPECIAL』、『サムライスピリッツ 天下一剣客伝』が稼動。
    • 『零SPECIAL』は極めて優秀なバランスを誇り、初代に並ぶ名作と言われるが、残虐表現に関係するトラブルでかつては作品自体が無かったこと等しい扱いを受けてしまっていた。
      • この煽りを受けて続編の『天下一剣客伝』では残虐表現が過剰なまでにカットされ、ゲーム性も従来から大きく変わってしまった。作品自体の出来は良いが、旧来のファンから批判を受けることが少なくない。
      • SNKプレイモアが社号をSNKに改めた(戻した)再起後には、PS4とPSVita向けにDL版が配信開始となった。かつて家庭用版移植でカットされてしまっていた残虐表現もしっかりと移植されている。
  • K2スタジオ開発で再び3D格闘ゲームになった『閃』が稼動したが、人気は芳しくない。NESiCA配信タイトルに選ばれたため遊べるハードルは低め。
  • 2019年6月27日には『閃』から11年ぶりの新作となる『SAMURAI SPIRITS (2019)』が発売された。正式なタイトル名は本作と同じだが、混同を防ぐ為、令和時代最初のサムスピという事から「令サム」「2019年版」などと呼ばれている(海外でも『SAMURAI SHODOWN(2019)』という表記で紹介される場合が多い)。詳細は該当記事を参照。

余談

  • SFC版の発売記念…かどうかは不明だが、それと同時期に、講談社の児童誌『コミックボンボン』に連載されていた『餓狼伝説2』のコミカライズ版(通称「ボンガロ」)にサムスピキャラ(の子孫)が出演する話が描かれた。内容は例によって突っ込みどころだらけだが、覇王丸とテリーが必殺技を撃ち合ったり、戦闘後に握手をしたりと、共演ものとしてのツボは押さえている。
    • しかしこの回は当時の担当編集がSNKに無許可だったために単行本未収録であるソース)。故に次の回のビリー・カーンの台詞が単行本では修正されている。
      「日本でテリーに痛い目に遭わされたんだろうが」→「テリーが復活したと聞いて慌てふためいてるんだろうが」
      • 同連載は、読まなくても大筋に影響がないサイドストーリーは増刊号に載せるのが定番だったのだが、この話は本誌に載っており、内容的に本筋とも繋がっている。つまり扱いとしては「番外編」ではなかったのだが…。
  • タイトルに反して、本作ならびにシリーズ作品における厳密な意味での侍(官人・仕官者)は非常に数が少ない。本作で侍であることが設定上明らかなのは、公儀隠密の柳生十兵衛ただ一人である(ただし旗本の出である覇王丸、地侍ではあるが武士階級の橘右京を含めると3人となる)。
    • 半蔵・狂死郎・ナコルルなどは時代劇っぽいノリに彩をそえていると分かるし、シャルロット・王虎・タムタムも「異国の侍(戦士階級)」というイメージなのかもしれないが、一般的な忍者イメージとも異なるアースクェイクや元ネタ不詳の不知火幻庵などはどういう意図で入れられたのか謎。
      • 本作は企画段階では狼男やゾンビなどのモンスターを操作する、いわゆるベルトスクロールアクションゲームであり、幻庵などはそのころの名残だという話がある。
  • ナムコのシューティングゲーム『ドラゴンスピリット』を「ドラゴンスピリッ」と間違える記述が爆発的に増えたのは本作のヒットした頃であった。
  • 一方、サムライスピリッツの方はと言うと・・・前述のゲーメスト大賞受賞時の記事で「サムライスリッツ」と書かれたり、ゲーメスト掲載の広告では「サムライスピリッ」と書かれたりと「やっぱりいつものゲーメスト」であった。
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最終更新:2023年12月29日 18:27

*1 開発スタッフ曰く「女性は強くなくてはならないから」「最初は必殺技も強かったが、せめてアレくらいは弱くしてほしいという意見があった」とのこと。

*2 三厳が生きていたのはサムスピの時代から100年以上前で、名前を継いだ同名の別人という設定。

*3 こちらも正成が活躍していた時代から200年後ほどの開きがあり、十兵衛と同様に「服部半蔵」の名前を継いだ後世の別人という設定である。史実においても「服部半蔵」の名乗りは子孫代々引き継がれ少なくとも12代目まで続いたが、後世で忍者の代名詞のイメージが広まったものの実際に忍者だったのは初代の服部半蔵保長のみで、二代目の正成以降は実際には忍者ではなく武士だったとされている。

*4 企画当初は仁王像の首を武器にするつもりだったが、「仁王の首はマズい」ということで青竜刀に落ち着いた。ただし続編では石柱や鉄球などに武器を持ち替えている。

*5 ちなみに開発当初はスマートな男前だったそうだが、徐々に太り出し最終的に「洒落にならんよ~」というくらいに巨大化したとのこと。

*6 開発当初は「アステカ」という名前だった。

*7 アースクェイクとは異なり、こちらはキャラの横幅に起因する不具合。

*8 風貌については、1981年の映画『魔界転生』で沢田研二が演じた天草がモデルと見る意見が多い。

*9 あまりのナコルル人気に、数多くの逸話が残っている。彼女が東京都三鷹市水道局のイメージポスターに採用され、街中に貼られた際にあっというまに持ち去られてほとんど街中に残らなかった、という実話はその最たるものだろう。

*10 ただし、その巨体故に様々な昇りジャンプ攻撃がしゃがみ状態に入ってしまうため、対戦バランスは大きく崩してはいない。

*11 通常技に投げ必殺技(半蔵の場合は「モズ落とし」、ガルフォードの場合は「ストライクヘッズ」など)でキャンセルをかけると何も技が出ずに通常技のモーションのみが省略される。これを利用して隙を消したり普通は繋がらない連続技を成立させるテクニック。サムスピシリーズでは『真サム』まで使用できた。

*12 技が出きる前は普通の弱キックなので潰されないためには判定の強い強キックと使い分ける必要もある

*13 狂死郎・タムタム・幻庵の3人は何故かKOされても絶対に真っ二つにはならない。

*14 中段技とはしゃがみガードができない攻撃のこと。ジャンプ攻撃などもこれに当たるが、狭義では地上もしくはジャンプ直後から出せるものを指す。立ちガードができない下段技との組み合わせで、相手のガードを崩す有効な手段となる。本作でほとんどのキャラに決められる中段技は右京の昇り「ツバメ返し」とタムタムのジャンプ強斬りくらいしかない。

*15 本作では投げを決めれる条件が厳しく、自分や相手が起き上がる時や、必殺技のモーション中には投げを決めることが出来ない。これは半蔵やガルフォードのコマンド投げにも共通している。

*16 ただし前述のように、ほぼすべてのキャラの逃げジャンプ攻撃が中段攻撃として入ってしまうので、待つとむしろ不利になってしまう。

*17 Core Design倒産後にシリーズ開発を引き継いでいる

*18 「いざ尋常に」と「一本目」の音声の間にローディングが入る。