John Romero's DAIKATANA

【じょんろめろずだいかたな】

ジャンル ファーストパーソンSTG

対応機種 ニンテンドウ64
Windows 98/2000/Me
発売元 【N64】ケムコ(コトブキシステム)
【Win】アイドス・インタラクティブ
開発元 【N64】不明
【Win】Ion Storm
発売日 【N64】2000年4月7日
【Win】2000年5月22日
【Win(日本版)】2000年6月30日
定価 【N64】6,980円(税別)
配信 【Win】gog.com:$5.99*1
判定 クソゲー
ポイント 海外では「ゲームにおける失敗」の代名詞
ずさんな計画で開発難航
気が付けば既に時代遅れ
役立たずでお荷物の味方
頻発する多彩なバグも満載
北米版クソゲーワースト4位(参考)
非公式修正パッチである程度だが改善


概要

DOOM』『QUAKE』という傑作でFPSの基礎を築いたジョン・ロメロ氏が指揮をとった大作(?)FPS。
彼が『Hexen』発売の後にid Softwareを離れ、ION Stormとして独立後、初めて企画したソフトの1つであり、ロメロのネームバリューもあって、初期から大々的に宣伝されていた。
だが、こんな結果になるとは、だれが予想しただろうか…。
なお、正式なタイトルは「John Romero's DAIKATANA」だが、一般的には「DAIKATANA」の呼称が広く使われている。


あらすじ

+ 長くなるので格納

西暦2455年。京都で道場を開いているヒロ・ミヤモトのもとにトシロウ・エビハラと名乗る年老いた男が訪ねてきた。彼は病魔に侵され余命幾ばくも無い体である旨を告げ、ヒロに神秘の魔剣「大刀」の話をする。
16世紀の戦国時代、日本を支配していた強大な勢力を持つ武将オオサカ・ミシマは、唯一自分に反抗する武将のインシロウ・エビハラとその一族を滅ぼすため、日本一の刀鍛冶であるウサギ・ミヤモトに究極の武器を作ることを命じた。ミヤモトは命令に従い数年の月日を掛け、最高傑作と言える刀、「大刀」を作り出す。だが、この刀は強大な威力だけではなく「その力を利用する事によって時空を超えることができる」という想像を絶する力を秘めていた。この刀によってミシマの独裁がより強大化することを嫌ったミヤモトは完成した大刀をエビハラに託し、ミシマを倒すよう懇願した。そして、勢力の劣るエビハラはこの刀が持つ脅威なる力によって見事ミシマを滅ぼした。だが、後にエビハラが大刀の力を悪用し、ミシマのようになることを危惧したミヤモトは彼から大刀を奪い、未来に渡って悪用されぬよう火口へと投げ捨てた。
時は流れ、現代。20世紀末にエビハラの子孫は全世界の2/3の人間を死亡させたMMPウイルスの治療用ワクチン開発者として称賛され、それによって更なる名声を得ていた。また、一族が長年に渡って探し続けていた大刀の発掘にも成功した。だが、その大刀をエビハラの下で信頼を得ながら身分を隠して復讐のチャンスを狙っていたオオサカ・ミシマの子孫であるカゲ・ミシマによって強奪されてしまう。カゲ・ミシマは大刀の持つ「時空を超越する能力」で過去にさかのぼり、「ワクチンの開発者は自分である」と歴史を改ざんし、偽りの英雄となって再び世界を手中に収めてしまった。
トシロウは「今の世界はカゲ・ミシマによって歪められた歴史の延長線上にあり、元の歴史に戻すことが我がエビハラ一族の名誉回復であるとともに、あなたの先祖であるウサギ・ミヤモトの遺志を継ぐことでもある」と、ヒロに説いた。だが、その直後にヒロの目の前でトシロウはミシマの手の者に斬られ、死の間際に既にトシロウの娘であるミキコがミシマ討伐のため、彼のいる要塞に向かって行ったがその後連絡が途絶え行方知れずとなっていることを伝え、娘を救出して共に戦い、ミシマの野望を撃ち砕くことと大刀を奪還し歴史を元の状態に修正することを改めてヒロに懇願し、息絶えた。ヒロは彼の願いを受け入れ、単身ミシマの居場所へと向かった。


ゲーム内容

  • 日本人の主人公ヒロ・ミヤモトは、時を超える能力を持つ魔剣・大刀(ダイカタナ)の力で時空改編と世界支配を狙うミシマ一族と戦う。
    • ちなみに、ヒロ・ミヤモトの元ネタは 任天堂の宮本茂 。尊敬しているからとのこと。ゲームデザインでも影響を受けたという*2
    • クロノ・トリガー』や『FF7』といったJRPGの影響も受けたという。
    • そのせいか、ものすごく怪しい日本語の書かれた看板があちこちにある。「格安チケッケ」「サイーコ」etc
  • ゲーム内容は、4つの時代(マップ)を旅しながら、時代ごとに異なる数種類の武器を駆使して戦うFPSである。
    • RPG的要素も導入されており、主人公は戦闘によって経験値を取得し、能力が増える。
    • 武器のうち、題名にもなっている「大刀(DAIKATANA)」もまた、戦闘により経験値を取得し、成長していく要素がある。
      • ただし、大刀を使うと経験値はカタナにのみ入って、主人公には入らないという難点もあるが。
    • また、ゲームの途中で以下2人のキャラクターを救出することができ、プレイヤーを補助するサイドキック(仲間)としてともに行動してくれる。
      • ミシマの要塞に向かったまま行方知れずとなっている、トシロウ・エビハラの娘である「ミキコ」
      • カゲ・ミシマの要塞の警備員だがミシマに対しクーデターを起こして拘束された「スーパーフライ・ジョンソン」

問題点

Ver1.0(発売当初)におけるもの。パッチ修正は後述。

  • 旧態依然としたグラフィック
    • 1997年に製作が発表された本作は、同時期に発表された『QUAKE II』のグラフィックエンジン(Id tech 2.5)を使用している。
    • 当時の水準としては、酷いというほどではなく「まあまあ」な出来ではあったのだが、初期バージョンはクオリティのわりに動作が重い、ロード時間も異様に長いと、競合作と比肩しうるものではなかった。
      • そして発売時点(2000年)においては、すでに『QUAKE3』が世に出ており、グラフィックスも飛躍的に向上していたため、本作は時代遅れ感が否めず、評判はすこぶる悪かった。詳細は余談にて。
    • そして、グラフィック面の旧さをフォローするであろうアメコミ風のテクスチャは、グラフィックをより粗く見せただけに終わり、そのほかにフォローするであろう部分もなかった。
      • 同時期に発売されたミリタリーFPSである『Soldier of Fortune』は、本作同様『QUAKE II』のエンジンを使用した作品*3ではあるが、残虐描写がリアリティの面でも非常に強烈だったことから、グラフィックの旧さをカバーできていた。
  • クセのありすぎる武器群
    • 当時としては武器のラインナップがかなり多彩。4つの時代でそれぞれ6種類ずつの武器に加えて、タイトルになっているDAIKATANA(京都マップの終盤で取得する)を使用可能。
    • だが、武器の個性を出そうとしたのか、連射しかできないショットガン「Shotcycler-6」や、溜めが必要で自爆ダメージが入る近距離用武器「Hades Hummer」など扱いづらいものが多く、爆風や反射などで自爆ダメージを受ける武器も多い。
      さらに仲間(サイドキック)にもダメージが通ってしまい、仲間が死亡すると即ゲームオーバーになるため、『DOOM』や『QUAKE』のように撃ちまくりとはいかず、かといって戦略的ともいいがたい微妙なプレイ感覚になってしまった。
    • DAIKATANAはレベルさえ上げれば、かなり強力で扱いやすい武器であったものの、前述のとおり、DAIKATANAで敵を倒すと主人公には経験値が入らない。さらにレベルが低い状態のDAIKATANAは非常に振りが遅く、扱いづらい。
      プレイスタイルが制限され、扱いにくい武器を無理に鍛えなければならないDAIKATANAのシステムは、とても成功しているとは言い難かった。
  • チャチな仲間のAI
    • 仲間(サイドキック)はすぐ何かに引っかかって動けなくなる。斜面などで頻発する。
    • さらに体力どころか、武器の弾薬まで有限。ほったらかしているとすぐ体力を削られ、無駄撃ちで弾切れしてしまう。唯一褒められるのが「飛んでいる敵等の当てにくい相手を正確に狙う」くらいである。
      • それなのに、パズルを解いたり先に進むためには仲間が必須。マップのゴール地点に全員移動させなければ先に進めない。
    • 5種類の指示が出せるが、視界の範囲内にいないと指示が出せない。
      • ヤバそうなときに「後退」の指示を出すと、プレーヤーの向きを基準にその後ろに移動しようとするため、逆に敵がいる方向へ突入していくこともしばしば。
    • 仲間は接近戦を好んで、敵にガンガン近づいていく。プレイヤーが攻撃する際は邪魔になるだけでなく、それによってダメージも食らうため、すぐ死ぬ。
      • しかも、仲間が死ぬとゲームオーバー。命令するまでただ撃つしか能がなく、はっきりいってお荷物以外のなにものでもない。
      • クリアを目指す場合は、実質的に「スタート地点にサイドキックを待機させ、敵をすべてかたづけてゴールまで進んでから回収しにいく」という、サイドキックの存在を否定するプレイを要求される。
      • ファンの製作したVer1.3パッチではサイドキックを無敵化したり消すオプションが追加される有様。
  • いちばん最初のマップ、「京都」(近未来)が異様に難しい
    • 混沌とした未来の雰囲気を表現するグラフィックが粗く、敵も視認しづらい。
    • ロボット昆虫やロボカエルといった、小さく動きの素早い敵が多い。
    • なのに初期装備は拳ひとつ。手に入る銃弾も少ない。また前述の通りDAIKATANAはこのマップの終盤で入手するため、それまでは使えず、ジリ貧の状態で敵と渡り合わなければならない。
    • 最初のマップ以外は美しく、難易度も低いのだが、最初の面が不評なため、大きく評価を下げた。
      • 京都編の後は、舞台がギリシャ、ノルウェー、サンフランシスコと続くのだが、ギリシャとノルウェーは難易度が低く、FPSではあまり見ることのない景色が描かれ、観光気分も味わえる。
      • 最後のサンフランシスコ編も見栄えの悪いエリアが多いが、敵の本拠地の日本風建築や小綺麗なビルなどは出来がよく、京都編の不快さと比べれば天地の出来。
      • 京都編がなければ、あるいは京都編が最後のレベルであれば、本作の評判は大きく異なっていたはずである*4
    • 当時の各メディアのレビューで酷評されたのも、ほとんどこのマップに関することであった。
  • セーブ回数に制限がある
  • セーブするには、セーブジェムという消費性アイテムが必要(『バイオハザード』のインクリボンに相当)。
    しかもシークレットアイテム扱いであり、探索を必要とする。
    • ただでさえストレスがたまるゲームにもかかわらず、セーブすら自由にできないということで、プレイヤーの不満は最高潮に。
    • 不評が集中したポイントだったのか、最初のパッチであるVer1.1では無制限にセーブができるように変更された。
      • 実際はメニューから「セーブを任意かつ無制限にする」か元々の「セーブジェムによる回数制限」にするかの選択式だが、この不評で後者を選択するものはまずいない。
  • お約束のフリーズ、強制終了といったバグも多発
    • セーブデータをロードすると、仲間がひとりもいない、というバグがよく発生する。皮肉なことにクリアは楽になるが、仲間がいないので先に進めない「詰み」状態になってしまう。
    • プレーヤー・仲間ともに「一度入ると抜け出せない」という、3Dゲームとしては致命的なハマりすらある。
      • 普通なら、そういう場所はマリオの穴のように即死穴にするなり、自滅用のコマンド(1機消滅コマンド)を用意するなどしておくべきところだろう。*5
  • ストーリーも非常にチープ。そのわりに会話ばかりのやたら長いムービーが何度も流れる。

修正パッチ

公式パッチ「Ver1.1」

  • 酷評を受け、まず2000年の7月15日に「Ver1.1」のパッチが公式から配布された。 具体的には
    ・セーブジェムのセーブを任意無制限セーブに変更(従来のセーブジェム方式も選択可能)
    ・ビデオカードの選択機能
    ・ロードした時にサイドキックが消えるバグを修正(不完全)
    ・マルチプレイに新モード追加
    • …これだけである。「復帰時のストレスが減った」「少なくとも詰むことが殆ど少なくなった」レベルの修正であり、根本的な問題は全く改善されていない。

公式パッチ「Ver1.2」

  • 続く2000年の10月には「Ver1.2」のパッチが公式から配布された。導入するとセーブデータが破損する可能性があり、そうなった場合は初めからプレイし直さなければいけないというオマケ付き。 具体的には
    ・マルチプレイヤーモードのバグ修正
    ・プレイ内容をデモとして録画・再生できるように
    ・中ボス「ウインドトラックス」との戦闘後に進めなくなるバグが修正
    • …これだけである。グラフィックや厄介なサイドキック、不便な育成要素などの上述の問題点の多くは結局解消されておらず、最低限遊べるだけの駄作から抜けきれていない。結局公式のサポートはこれに微妙なデスマッチ修正を加えたVer1.2.2で打ち切られ、根本的な問題の多くは結局公式パッチでは改善されなかった。

非公式パッチ「Ver1.3」

  • これらの公式対応が打ち切られた後、公式に見切りをつけたファンコミュニティは独自に非公式パッチの製作を開始。2016年4月10日には「Ver1.3」のパッチが非公式の「DAIKATANA」コミュニティから配布された。 具体的には
    ・マルチプレイヤーのサポート強化
    ・ワイドスクリーン対応
    ・高解像度追加
    ・ロード時間の大幅な短縮
    ・AIの挙動を大幅に改善
    ・サイドキックなしでプレイ可能なオプション
    ・サイドキックを無敵にするオプション
    ・テクスチャのHD化
    ・グローマップのサポート
    ・Linux・Macの対応
    ・マウスボタン対応
    ・その他、細かいバグ修正など
    • この非公式の「Ver1.3」パッチを以ってようやくサイドキック問題やグラフィックが改善され、まともなFPSとして遊べるレベルにまで改善された。前述の通りあくまでファンメイドのMODを適用すれば改善する、という話であり、公式から出た純正パッチのみではクソゲーの域を出ていない。

評価点

  • 前述のようにギリシャとノルウェー、サンフランシスコマップはバリエーションもあり見栄えはする、とはいえ、当時の平均点程度のグラフィックスだが…
  • マルチプレイモードが(当時としては)充実している。
    • 友人とストーリーを遊べるCOOPモードや、QUAKEのようなアリーナ対戦モードもある。
    • 現在ではサーバー提供会社が閉鎖したため、そのままでは利用できないが、上述した非公式Ver1.3パッチの導入では別のサーバーに対応、プレイできるようになる。

総評

「長い間待たされたあげく完成度も低い」ということで、評価は散々なものになった。

海外では、『E.T. The Extra-Terrestrial』、アタリショックなどと並び、ゲームマーケティングにおける大失敗例のひとつとして記憶されている。

本来なら、1997年のマーケットは「『DAIKATANA』 VS 『QUAKE II』」となっていたのだろうが、本作は北米版クソゲーワースト4位になってしまった。

埋め合わせのために大量出荷され、とりあえず開発費分ぐらいの収益は出せたようだが、EidosとIon Stormの評判はガタ落ちとなった。発売からしばらくは、アメリカ中のゲーム販売店で「ワゴンの主」だったという。

一方で当時の日本国内における評判は、日本語版の発売は海外から若干遅れ、すでに海外で悪評が轟いているなか、不具合が修正されたVer1.1が適用された状態でのリリースとなったせいか、「たしかに面白くないけど、どうしようもないクソゲーというほどでもないのでは?」といった程度であった。

ゆえに現在まで伝えられる悪評は、当時のジョン・ロメロ氏は相当なビッグネームであり、そんな大御所が独立して新会社を設立し、プレイヤー達の期待を煽りに煽って発売されたタイトルであるという点で、期待させられたぶん、がっかりしたプレイヤーが多いのが原因であろう。

よって本作の評判は、開発経緯をはじめとするさまざまな要因が重なって「有名なクソゲー」として伝説化したものであり、ゲームプレイそのものはせいぜい「無難に出来の悪いタイトル」というあたりが妥当ではないだろうか。事実、古いPCゲームを現在のPCで遊べる形でDL販売している「gog.com」でも「言われているほど酷くはないんじゃない?」といった評価が大半を占めている。

ベースが『QUAKE』なためか、対戦は最近になって評価され、現在はマルチプレイ部分のみ無料化されている。


その後の展開

  • 『DAIKATANA』発売から約1ヵ月後、ION Stormから『Deus Ex』という、同じくFPSを題材にした作品が発売された。
    • こちらは膨大なシナリオや、『DAIKATANA』よりもさらに発展したRPG要素から人気を博し、後にシリーズ化もされた今日でも名作と名高い作品である。
    • そのため、レビューサイトでは「同じ会社から、史上最高の作品と史上最低の作品が同時期に発売された」とかなり比較された*6
  • N64に移植された。
    • PC版で不評だった部分が削除されているが、マップなどは短くなり、ポリゴンも拡張パックなしでは非常に粗く、評判はPC版Ver1.0と同様に低い。
  • GBCでも、専用ソフトとして発売(ケムコ発売、ウィル開発)された。
    • こちらはFPSではなく完全な2D-RPGで、ほぼ別モノとなっている。もしや、最初からそうしておけばよかったのでは…?
      • 実際、海外での評価はGBC版がもっとも高い。皮肉な話である。

日本語版

  • 日本ではN64版(2000年4月7日)とWindows版(2000年6月30日)が発売されている。
    • 日本版は大幅にテコ入れされた1.1がベースなので、不評部分の一部が緩和されている
    • ただし、バージョンが特殊なために1.2パッチは当てられず、他言語版との対戦もできない。
    • 実際には1.0と1.1の中間である1.05*7であり、Ver1.1の無制限セーブが使えなかったりする。
    • 日本でもGBC版は発売される予定はあったものの、発売自体がお蔵入りとなり、その後ニンテンドウパワー書き換え専用ソフトとして供給された*8

余談

  • 本作の宣伝は、売り文句があまりに下品で顰蹙を買ったという(例:「ジョン・ロメロが君をメス犬にするぞ」etc)*9
  • 発売前の状況
    • 本作のスタッフは、それまでRTS(リアルタイムストラテジー。要はシミュレーション)を製作していた人間ばかりで、3Dエンジンに慣れていなかった。
      • それを把握せず、ロメロが期間(当初の予定はわずか7か月)まで含めた大計画をぶちあげてしまったため、開発が難航したという*10
      • ちなみに、元同僚のジョン・カーマック氏はこのニュースを聞いた際「冗談にもほどがある。プログラマーの立場から言わせてもらえば、彼の考えているようなシステムを、それだけの短期間で実現するのはまず不可能だろう」とバッサリ切り捨てている。
      • せめてカーマック氏のような、凄腕のプログラマーが一人でもいたら、また違う話だったかもしれないが…会社を去った経緯からカーマック氏の協力はまず望めなかったし、当時のIon Stormはそこまでできる人材を全く抱えていなかったのである。
    • 最初は自らも開発に関わったQUAKE1ベースだったが、途中で続編のQUAKE IIエンジン*11が発表される。そのままでは旧くなると考え、開発環境を変更したため、さらに開発は長引いた*12
    • 当初、パブリッシャー兼スポンサー契約を結んでいたEidosから開発資金の提供を受けていたが、開発の遅延やIon Stormの経営状況の悪化も重なり、両者は大揉めとなり、最終的にはIon StormをEidosが買収して傘下とすることで決着がついた*13。当時のEidosは「Tomb Raider」シリーズのヒットもあって、かなりの利益をあげていたのだが、その利益を本作の開発で溶かされる*14というありさまで、Tomb Raiderと本作を2大看板と考えていたEidosの目論見は大きく崩れ去った。
      • 結局、発売できたのは開発発表から3年後の2000年の5月。7か月で完成する、なんて話はどこへやら。
        にもかかわらず、レベルの修正やサイドキックのAI調整やデバッグなどが完全に終わっていない段階で見切り発車された。Eidos側の圧力かロメロの意思かはさだかでないが、いずれにしろゲーム自体はなんとか発売され、ゲーマーや各種メディアの厳しい評価に曝されることとなった。
    • かれこれ3年もたっている間に、時代は『Half-Life』などの優秀なAI・美麗なグラフィックス(当時基準)などを実現したFPSが主流となっていた。
      • 『QUAKE』シリーズにいたっては、『QUAKE III Arena』が発売され、『Unreal Tournament』などの対戦もヒートアップしていたころでもあった。
  • 延期ばかりしていた一方で、ロメロは高層ビル上層のオフィスで豪遊生活をしていた。彼は車道楽*15を含めた多数の趣味人でも有名であり、多数の出費をしていた。
    • ついには内部告発の怪文書が出回ったり、女性の出入りが暴露されてしまうなど、グダグダ。
    • あまりに延期が多いので、「このままベーパーウェア(お蔵入り)になるかも」とまでいわれた。
    • ロメロが追放された翌年、Ion Stormのダラス本社は閉鎖され*16、もう表には出てこないだろうといわれた*17
    • その後、小規模なデベロッパーを立ち上げつつ、いくつかのプロジェクトに関わりながらも低迷が続いていたロメロであったが、現在は、2015年に妻(ブレンダ・ロメロ)と共同で立ち上げたRomero Games*18から同年にiOSで1990年のMS-DOSゲームのリメイクである「Dangerous Dave in the Deserted Pirate's Hideout」を、2017年に「Gunman Taco Truck」(Win/Mac/Android/iOS)をリリース。小規模作品が多いものの好評で一定の成功を収めている。2019年には『DOOM』のエピソード追加MODである『SIGIL』を公開、2020年12月にはParadoxとパブリッシング契約を結び、久々の大型作品となる禁酒法時代のアメリカを舞台にしたターンベースのタクティカルRPG、『Empire Of Sin』(Win/Mac/PS4/One/Switch)を発売している*19
  • 上記のように熱心なファンがいるのか、有志制作の1.3パッチがリリースされている。ワイドスクリーン対応からGameSpy閉鎖に伴うマルチプレイ部分の改変、
    バグフィックスにAIの修正や仲間の強化、さらにLinux対応など非常に多岐にわたる改善などがなされている。現在、このゲームを楽しむのであれば導入が推奨される。

関連リンク

  • ロメロがIon Stormとして独立してからDaikatanaが世に出るまでの顛末。その1その2

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最終更新:2023年08月12日 10:43

*1 Steam配信版もあるがそちらは日本から購入不可。

*2 海外メディアでのジョン・ロメロの発言では、宮本茂をモデルにしたわけではなく「宮本茂をオマージュした」や「宮本茂にちなんで」というニュアンスで述べていた。

*3 実際にはこれを大幅改造した「GHOULエンジン」と呼ばれるもので、公式でもそれを謳っている。

*4 ただし、その場合「大刀を取得するプロセスの落とし所はどうするのか?」という問題点も出てくるため、京都編のレベルデザインをやり直すべきだったという意見もある。

*5 さいわい、PC版においてはコンソールを開いてコマンドを入れることで自殺できるが。

*6 後述の通り、開発が遅れに遅れたために後発のプロジェクトと同時期の発売になってしまった結果である。

*7 Ver.1.1βとも言われている。

*8 現在はニンテンドウパワーのサービスは終了している。

*9 なお、この売り文句が記載されたペーパーの下には「Suck It Down」(しゃぶれよ)とまで書かれており、ひたすら下品である。

*10 この発言の根拠は「idでは10人足らずのチームで開発をしていたが、ここ(Ion Storm)では数十人の優秀な人間が働いており製作期間はこれまでよりも短縮可能なはず」とロメロは考えており、業界内でもそれを疑う意見すら出ることがなかった。

*11 ちなみに、QUAKE IIを作ったのはロメロの独立により、ライバルとなったid softwareのジョン・カーマック。

*12 しかも、QUAKEⅡエンジンは初代と同じ「id Tech2」でありながらライブラリや構造など『Quake』のそれと比べて、全く新規に作り直したとも言うべきレベルでの改良が多数施されていたのでQUAKEエンジンの時のノウハウは殆ど使えず、半ば開発を1からやり直しにせざるを得ないほどであった。

*13 当然ながら同時にEidosからの直接的な口出しも多くなっていった。

*14 日本円換算で30億円近い費用をつぎ込んでいたとも。

*15 フェラーリがお気に入りで、数台のモデル違いを乗り回していたらしい。全くの余談だが、先述のジョン・カーマックも実は車道楽者で、同じくフェラーリがお気に入り。

*16 一方、『Deus Ex』のウォーレン・スペクターが在籍していたオースチン支社はダラス本社閉鎖後、本社機構を移管。続編の『Deus Ex:Invisible War』やスニークアクションゲーム『Thief』の3作目である『Thief:Deadly Shadows』をリリースしている。だが、2005年に親会社であるEidosの経営難を理由に閉鎖された。

*17 モバイルゲーム開発以外ではMIDWAYと組んで『Gauntlet: Seven Sorrows』(PS2/Xbox)やFPSである『AREA 51』(PS2/Xbox/Windows)といった作品に携わっている。

*18 設立とほぼ同時に拠点をアイルランドに移している。

*19 同作の日本版は2021年2月25日にPS4/Switch版がセガから発売された。