ファイナルファンタジーXII

【ふぁいなるふぁんたじーとぅえるぶ】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション2
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2006年3月16日
定価 8,990円
レーティング CERO:全年齢対象
廉価版 アルティメットヒッツ:2008年6月26日/2,940円
判定 スルメゲー
ポイント オフライン版シームレスバトルの先駆け的作品
高い完成度と自由度だが複雑なシステム
世界観重視のシナリオ
脱・JRPGの嚆矢的存在として国内より海外で人気
長年のシステム解析・やり込みによる大きな変遷
オイヨイヨ!
ファイナルファンタジーシリーズ関連作品リンク

概要

ファイナルファンタジータクティクス』『ベイグラントストーリー』の制作スタッフがイヴァリースの続編として制作した。『FFTA』のようなパラレル設定ではなく、FFTから約1200年前の古代文明時代を舞台とした正史である。

当初の発表より約2年の延期を経て発売されたが、システム・シナリオ含め従来のナンバリングタイトルとは全く異なる方向性で成り立つ要素が多い。


あらすじ

戦乱渦巻くイヴァリースの一小国ダルマスカは、急速に勢力を広げるアルケイディア帝国と戦争状態に陥っていた。
先日アーシェ王女と祝言を挙げたばかりのラスラ王子は自ら剣を取り前線に立つが、あえなく戦死する。
敗色濃厚のダルマスカはアルケイディアとの和平を結ぼうとするが、和平調印式にダルマスカのバッシュ将軍は、
ダルマスカ国王を売国奴と呼んで暗殺する。
かくしてダルマスカは和平の道も絶たれ、アルケイディアに降伏した。

2年後、ダルマスカの首都ラバナスタに住む、空賊に憧れる孤児の少年ヴァンは、
帝国に征服された祖国とその状態を受け入れつつある民たちに苛立ち、帝国兵からスリをするなどして抑圧された日々を送っていた。
彼の兄は、調印式を襲撃したバッシュ将軍との関係を疑われ、厳しい尋問の末廃人となり世を去っていたのだ。

そんな折、ラバナスタに新しい執政官が赴任することになり、それを記念したパレードが行われた。
新たな執政官ヴェインは「私が憎いか。帝国が憎いか」から始まる巧みな演説によって民衆の反帝国感情を見事に払拭してしまった。
ダルマスカに深い傷を与えたアルケイディアを許してしまっていいのか。憎しみを抑えられないヴァンは、
帝国が抑えているラバナスタ王宮の宝物庫に忍び込んだ。
そこでダルマスカ解放軍として活動するかつての王女アーシェ、そして空賊バルフレアと出会う。


特徴

ゲームシステム

  • アクティブディメンションバトル(ADB)
    • 敵がフィールド上を徘徊するシームレスバトル。接近すると抜刀して画面の切り替えなく戦闘に移行する。戦闘の流れは従来の「アクティブタイムバトル(ATB)」に以下のような空間の概念が加えられたもので、戦闘中もフィールド上を自由に動き回ることが出来る。
      • 射程や効果範囲が存在し、マラソンや散開戦術といった防御的戦術で重要な要素になっている。
      • 通常のRPGでは強敵相手では素早さが負けていて逃げることが100%無理だとか逃走成功確率が1%しかないとかそういったこともあるが、逃げに徹すればとりあえず町まで行くことで撒くこともできる。
      • 天候と地形により、属性魔法の威力、遠隔武器の命中率、一部モンスターの出現条件などが変化する。また特定の地形の上ではパワーアップするような敵もいる。
      • フィールド上に多種多様なトラップが仕掛けられている。有害なものがほとんどだが、中にはHPやMPが回復するものもある。これらはライブラをすると目視でき、レビテトで無効化できる。
      • 戦闘とフィールドの境が無いため、戦闘前から敵の能力を調べる事も可能。
    • 当時の日本人ゲーマー(特にMMO未経験者)にとって見慣れない概念が多く、プレイヤーの戸惑いは大きかった。アクションRPGと勘違いされ、「アクションなのに行動がコマンド」といった批判をされることも多かった。
      • 一応、前作(11)が圧倒的な人気・知名度を誇ったMMORPGであるので、「正当な進化」とも言えるかもしれない。実際に、本作にもアクティブ・ノンアクティブ*1や視覚・聴覚・魔法感知*2などの要素がある。こちらのレベルに応じて対応を変えてくる敵もいる(弱いと見るや襲ってくるものや逆に雑魚には興味がないものなど)。
  • ガンビット
    • 各キャラクターを制御するAIをカスタマイズできるシステム。従来作品のように、戦闘の都度「たたかう」「まほう」を選択していたことを自動化でき、レベルが上がるとさまざまな条件をつけることができる。また、ガンビットを使わず従来作品と同様に戦闘することも可能。
    • 「条件文」と「コマンド」を組み合わせ、それぞれの優先順位を指定することでAIを構築する。
      • 例えば、(数字は優先順位)1.HPが半分以下なら-回復アイテムを使う2.状態異常なら-治療アイテムを使う3.戦闘不能の味方がいたら-復活させる4.魔法に弱い敵がいたら-魔法で攻撃5.敵がいたら-物理攻撃…などというコマンドを設定できる。この場合は、「味方が1人戦闘不能、1人毒、1人が全回復ではないが元気」という状態だと、自分を回復するまで毒のキャラに回復を延々としてしまうので、手動で毒を治療するか、自分を回復するか、1と2を入れ替えることで自動化すれば解決できる。
        このように、組み立て次第で何もしなくてもレベル上げができるような優秀も組めるので、AIを組む楽しみもある。難しく感じるかもしれないが、雑魚モンスター相手にいくらでも試せるので誰でも楽しめる(もちろん、あえて使わないという選択肢もある)。
      • ガンビット起動中でも手動入力で直接コマンドを指示できる。この場合は手動入力のコマンドが優先される。
  • ライセンス
    • 敵を倒すと得られるLP(ライセンスポイント)を消費して「ライセンス」を習得。ステータスの底上げなど様々なライセンスを習得する。
      • 装備品や魔法はここでライセンスを習得する事で初めて装備や使用が可能となる。
      • 下記のミストナックや召喚獣もここで習得する。
    • 習得にはライセンスマップを用いて、隣接するマス目には上下左右自由に進むことができ、育成の自由度が高い。
  • ミストカートリッジ
    • MP(ミストカートリッジ)を一定量消費することで大技を出せる。
      • 「ミストナック」は戦闘メンバー全員の全MPを消費する必殺技。使用すると演出画面に映り、連携を繋げると威力が増す。ミストナックを2個/3個習得すると、最大MPが2倍/3倍となる。
      • 「召喚獣」は召喚獣とのバトルに勝利後、ライセンス習得で召喚可能になる。召喚すると一定時間召喚獣を引き連れ、召喚者との2人PTで戦うことになる。召喚獣の攻撃には通常技と発動後に召喚終了となる大技がある。大技には各召喚獣で異なる発動条件がある。
  • フィールド
    • 全てのフィールドは繋がっており、ワールドマップはない。また各ロケーションはいくつかのエリアに区切られて構成されている。
      • 序盤から行動可能範囲が広く、敵レベルの高いロケーションに早期に入ることも可能。中盤からは行動可能範囲がほぼ無制限になる。
      • これに対応してモブ・隠し召喚獣・ハントループなどの強力モンスターが各地に配置されている。強力装備を早期に入手することも可能。
    • 序盤のロケーションから強力モンスターが配置されていることもある。ゲームを先に進め、レベルが上がった後でもそのロケーションに訪れる価値を持たせるMMORPGのような工夫である。
  • ギルの入手手段
    • 敵はギルを持っておらず、倒した際の戦利品として入手したり、アビリティ「盗む」で奪ったりする様々な「おたから」が主な収入源になる。
      • 特定の種類、特定の数のおたからを売ると、各ショップで「交易品」が売り出される。交易品の内容は通常より割安な店売り装備のセットや消耗品のセット、敵からは入手困難なレアアイテムなど様々。このため「盗む」の重要度が他の作品以上に高い。
    • 同種族の敵を倒し続けると「チェイン」が繋がる。チェインレベルが上がると様々な恩恵があるが、敵がアイテムを落とす確率も上がるため、金策のためにも重要になっている。
  • ハントループレアモンスター
    • 前者はメタルマックスメタルサーガシリーズのような賞金首システム、後半は、条件を満たすことで出現する。条件も、「該当するフロアの敵を全滅させたら一旦移動し戻って来ると居る」というものから、逆に「1匹だけ残し戻って来ると居る」、「エリアで一定数敵を倒すと出現するモンスターを全滅させる」、「移動するときに転送装置を使わずに徒歩で移動する」、「5分間同じ場所にいる」、「プレイ時間の数字が特定の状態*3」など、多岐に渡る。

      また、このゲームは、各モンスター(通常モンスターも)ごとにそれなりに読み応えがある量(2,3行ではない。各ページドラクエ8の図鑑の1.5~2倍程度)なので、新しいモンスターを登録するごとに読む楽しみがあり、またFFはその性質上、ドラクエやマリオのゲーム等、ほとんどのモンスターのデザインが基本的に流用される一般的なRPGよりもさらに楽しめる内容となっている*4

評価点

  • 高い戦術性
    • 本作の戦術性はFFVにも並ぶとまで言われる。
      • 装備やライセンスの性能、敵の行動、リスクリターンのバランスなどのゲームバランスが絶妙。極めて理論的でありながら偶発的な運要素も適度に混ざっており、一つのほころびから一気に崩れるスリルと、戦線維持のジリジリとした緊張感を併せ持つ。
    • 複数キャラクター+リアルタイムバトルは、操作の忙しさやAIの問題などから、プレイヤーの戦術を各PCに反映させづらいことが欠点と言われる。ガンビットはこれを解決する手段として高い評価を受けている。
  • やりこみ要素が豊富
    • モブ、隠し召喚獣、レアアイテム、ハントループ、クランレポートなど。
      • ハントカタログというモンスター図鑑には本作の設定が詰めこまれている。読み物として面白いだけでなく、イヴァリース作品全体を通して重要な設定資料となっている。
      • モブ関連については、報酬は得られるものの、後半になるにしたがって膨大な量の労力とアイテムの消費なしではクリアできないケースが増えるため、ストーリー重視派のプレーヤーにとってはスルーしがちな要素である。が、実はモブ退治も後半戦になってくると、モブを退治することにより依頼人にまつわる様々な人間ドラマを垣間見ることができたりするため、ストーリー重視派のプレーヤーにとっても楽しめるものとなっている(例としては、モブ退治をしたことで、それまでの依頼人の悩みが解決し、依頼人が新たな一歩を踏み出せるなど)。
  • グラフィック・世界観
    • 足元や植物から遠くの背景まで作りこまれたグラフィックによるその世界観は非常に美しい。アナログスティックで360度カメラを回すことが可能になった。
    • SFチックな飛空艇内部からミストの漂う幻想的な森林、綺麗な砂浜、広大な都市、エキゾチックな雰囲気漂う遺跡まで冒険できるロケーションのバリエーションは幅広い。
    • 松野氏の作品の特徴である世界観の細かい作りこみは健在。本筋とはあまり関係ない設定類まで非常に細かく作られており、NPCの話に耳を傾けたり上述のメモを集めていくことで、よりFFXIIの世界に世界に浸って楽しむことが出来る。
  • 崎元仁氏による音楽
    • 特にオーケストラアレンジの「ファイナルファンタジー」「帝国のテーマ」、ラスボス戦の「自由への闘い」は名曲として評判が高い。
  • 旧態依然としたRPGからの脱却を初めて志向した
    • シナリオや世界観、バトルシステムなどの点では先進的な要素を搭載しつつも、根本的な点では「ランダムエンカウント」「モンスターを倒して金銭入手」などの旧態依然としたシステムを踏襲していた過去のシリーズ作品に対し、本作ではそうした要素をほぼ全廃した内容となった。
  • イヴァリース資料集としての価値
    • ルカヴィ関連の設定や神々の設定、イヴァリースの地理・気候・宗教・神話など多岐にわたる設定がテキストで読める。中には伝説の大崩壊やアジョラの時代に関連すると思われるものが含まれており、イヴァリースシリーズのファンにとってはコレを読んでないとイヴァリースを語れないというほどの内容となっている。
  • ライセンスシステムの導入
    • モンスターを倒すことで得られるライセンスポイントを使って、装備や能力を自由に決められる。
    • 多くのRPGのように、「キャラクターAは銃火器しか装備できない」「キャラクターBはローブ類しか装備できない」といった制約をこのライセンスシステムを導入することで取っ払うことで、戦士タイプに見えるバッシュでも杖やメイスといった魔法使い系統の武器を装備し、魔法を使うことも可能になる。
      • 『FF8』のジャンクションシステムや、『FF10』のスフィア盤システムにおいても、同じような物はみられるが、両作品ともに装備品についてはキャラクターごとに決められていて変更の余地はなく、前者はドローやジャンクションや魔法精製といった煩雑な方法が必要となり、後者はかなりキャラを育成しないと無理であったが、本作はそこそこキャラを育成すれば、戦士タイプのバッシュでもすぐに魔法が使えて杖やメイスといった武器も使えるようになる。*5
    • 本作においては、防具においても様々な能力にまつわる特性があるため、これを駆使すれば、十人十色のキャラ育成が容易にできるのである。
  • 多彩な武器種類
    • 前述のライセンスシステムによって装備できるようになる武器の種類は計17種類に分けられ、種類によって射程やダメージ計算に適用されるパラメータなどが異なる。
      + 武器種類について
      • 片手用・近接武器
        • 「剣」…片手武器で最もスタンダードな性能だが、攻撃間隔は遅め。
        • 「ダガー」…攻撃力は低いが、剣に比べて攻撃間隔は速い。何かしらの特殊効果がついていることが多い。
        • 「斧/ハンマー」…ダメージのランダム幅が広く、大きなダメージを出すこともあるが不安定。
        • 「メイス」…ダメージ計算式が魔力依存のため、魔装備と相性が良い。
        • 「計算尺」…攻撃した相手にバフ効果を与えるという非常に特殊な武器。
        • 「盾」…片手武器は、合わせて盾を装備できる。回避率を上げる効果がある。
      • 両手用・近接武器
        • 「槍」…一部除き片手武器と大差ない攻撃力だが、攻撃間隔が短い。両手武器のスタンダード。
        • 「刀」…槍よりも攻撃力がやや低いが、連撃の発生率が高い。攻撃力が力と魔力に依存する。
        • 「棒」…連撃発生率に加え回避率も高く、攻撃に巻き込まれても生存率が高くなる。敵防御力が魔法防御で判定される。
        • 「杖」…攻撃力は低いが、魔力を大幅に上げる効果がある。魔法使い向け。
        • 「ロッド」…攻撃力は低いが、最大MPと魔力の両方を上げる効果がある。魔法使い向け。
        • 「忍刀」…中盤頃から登場する。攻撃力は低いが、攻撃間隔が短く、回避率・連撃の発生率ともに高い。また、全ての忍刀が闇属性である。
        • 「両手剣」…終盤頃から入手できる。攻撃力が高く、特殊な性能を持つものが多い。
      • 両手用・遠隔武器
        • 「弓」…敵から離れて攻撃できる遠隔武器のスタンダード。
        • 「銃」…攻撃間隔は遅いが、ダメージは相手の防御力を無視することができる(ただし、これに耐性を持つ敵も存在する)。
        • 「ボウガン」…遠隔武器の中では攻撃間隔が最も短く敵のパリィを無視する効果もあるが、弓以上に強風で命中率が減少するという弱点がある。
        • 「ハンディボム」…斧・ハンマー同様ダメージのばらつきが大きい遠隔武器。
        • 「矢/弾」…遠隔武器を使用する際には合わせて装備する。攻撃に属性や状態異常の追加効果を付けることができる。
  • それぞれに「最強武器」があり、また歴代のファイナルファンタジーシリーズで登場した名品*6もあるが、そのどれもが入手困難である。

賛否両論点

ゲームシステム・ゲームバランス(賛否両論点)

  • ただ遊んでいるだけでは戦術性を感じにくいゲームバランス。
    • 先の評価点の裏返しとなるが、戦術の核となる要素はゲーム内で明示されていない仕様を活かしたものが多く、またそうした要素のゲーム内での説明も少ないため、奥の深さに気づかれにくかった。
+ 本作の戦術的要素について
  • 成長システム(ライセンス)
    • 自由度の高さが特徴だが、その一方でパネルを開放するためのライセンスポイントが溜まりやすく、特別やり込まなくても全てのライセンスを習得することが可能となっている。
    • この事はDQ6に準えて「全キャラ同じ」「全員勇者」とされ批判の的になり、ライセンス全習得後は「全員で物理攻撃・全員で回復魔法を行う」というパーティを組むパターンになりやすい。
      • ある意味、過去のFFの要素の復活である(1,3)。
    • 実際は後述するように「ライセンスを習得すること」ではなく「何を装備するか」により性能が大きく変わるシステムになっており、ライセンスを全て習得しても戦闘においてキャラクターが無個性になることはなく、そして研究が進んだ現在では「パーティの役割分担」を行うことで戦術的に、かつ楽に進めることができる。
  • 敵対心システム*7
    • 敵がこちらのメンバーをランダムに攻撃するのではなく、「敵対心(ヘイト)を最も多く集めているキャラ」を集中攻撃するシステム。MMORPGなどでは一般的なものだが、当時のコンシューマ機のRPGとしては例がなかった。
    • 本作では武器防具の特性差が大きく、火力重視の装備を行うと防御が脆くなり、逆に防御重視の装備は火力不足となりやすい。
      • しかし上位魔法といった強力な攻撃手段は敵対心を高めてしまうため、ヘイトを集めやすくなる。逆に防御重視の装備を行ったり敵対心を意識して下位魔法を使った場合、敵側の防御力が全体的に防御スキルが多くHPも高く非常に固いために大きな壁となる。
      • この問題は、アビリティ等を駆使して敵対心の制御(いわゆるヘイトコントロール)を行うことにより、防御重視のキャラに攻撃を受けさせ、火力重視のキャラを攻撃に専念させることである程度は解決できる。また、敵が繰り出す範囲攻撃の攻撃範囲は味方の遠隔攻撃の射程よりも短いように調整されており、立ち位置をしっかり管理すればPT全体の被害を少なくできるように調整されている。
    • このように攻略に大いに役立つシステムであるにも関わらず、ゲーム内では敵対心についての明確な説明はない。ヘイト稼ぎ専用のアビリティも用意されていないため*8、「魔法を使ったキャラに敵が群がる」といった現象に気付いたプレイヤーから敵対心の存在が広まることとなった。
      • なお、この点を補助するためか本作には敵の攻撃を集中させる状態異常「おとり」を付与する魔法「デコイ」が用意されている。ただしこれは敵対心増加とは別の処理をしており、効果が切れた途端に敵の矛先が変わりやすいほか、持続時間が短い、必中ではないといった欠点もあり、少々信頼性に欠ける。
  • 処理落ち対策用の「順番待ち」
    • 各行動には通称「エフェクト量」というエフェクトの重さの概念がある。これが限界値以上になると「順番待ち」が起こり、後の行動はエフェクト空きができるまで発動を待たされる。ただし通常攻撃などは順番待ちの影響を受けずに行動できる。
      • とくに顕著に現れる点として、HPが減っても回復が順番待ちになって回復できない場面が目立つ。
      • 正式なシステムではなく、あくまで裏の処理なので、当初はこうした仕様の存在が分からなかった。そのためストレス要因になり、不評の一因となった。特に全員で攻撃・回復を行う編成で頻出する。
    • 魔法を使うキャラを少なくする・上級魔法を用いずに装備・ライセンス補正で強化する事により改善される。これは先述した「役割特化」「ヘイトコントロール」とも噛み合った仕様となっている。
      • 逆にホーリー、フレアーといった最上級魔法は「ヘイト量が非常に高い」「一発で順番待ちを起こし味方の邪魔をする」「強化してもダメージは9999止まり」と、本作では非常に使い勝手の悪いものとなっている。
      • 敵の行動も順番待ちに影響するため、逆にこちらでわざと順番待ちを起こし、敵の行動を妨害し封じるという戦術も考案されるように。
  • プレイヤーの思考能力に大きく左右されるガンビット
    • 各キャラのコマンドを自分の戦術に合わせて1から設定するために設定力の差がモロに出る。状況に必要な戦術を具体化しなければならないので、理解と知識が無いとつまづきやすい。
      • 条件文の少ない序盤ですら基本から高度なものまで戦術をガンビット化できる。分かってないと単純なタコ殴りAIぐらいしか組めない一方、システムを熟知するとゲーム内最強の敵すらも、ただ画面を眺めているだけで(たとえ眠っていても)勝手に倒してくれるという事すら可能。
    • どれだけ設定するかのさじ加減も自由自在。例えガチガチに設定していても手動入力すればそっちを優先するので、プレイスタイルを選ばないのも長所。
  • ギル収入のランダム性
    • 主なギル収入源は、敵から入手するおたから、トレジャー(宝箱)の二つ。しかしこれらは非常にランダム性が強く、収入が安定しない。
    • 「盗む」のアビリティを使えば高確率でおたからが入手できる。
      • 売却用のおたからのドロップ率はだいたい5割前後。
      • トレジャーは出現するか否か、中身がギルかアイテムかもランダム。中身がギルなら金額はランダム(最低額は1ギルで共通)、アイテムでも2種の内からランダムで選択される。
    • 特に稼ぎを行わず、店に新しい品があれば買う、というプレイをしていると、たちまち金欠に陥る。そのためどう稼ぐか、もしくはどう節約するかを考えなければならない。
    • 一方、それらを解消するためにほどよく「稼ぎ」を行うことでスムーズにゲームを進めるようになるため、本作はクリアまでの難易度自体はそこまで高くない。
      • バトルチェインを生かした絶好の狩り場と言えるロケーションも用意されており、それさえ把握しておけば稼ぎ自体も容易に行え楽しいものになっている。
  • ミストナック
    • ミストナックは一気に大ダメージを与えられるため、ボスの発狂前にトドメを刺すのに有効。しかしダメージにランダム性が高いうえに連携が続くと反射神経が要求される(発動可能なミストナックの入れ替えなど)ことに加え、「戦闘メンバー全員のMPを全て消費する」という甚大なコストのため連携を失敗すると一転して全滅の危険にさらされる。
    • 運が絡む仕様ではあるものの、序盤のボスならほとんど何もさせずに倒せてしまう。しかし中盤からボスのHPが急激に増加するためミストナックだけで倒し切るのが困難になる。序盤をミストナックでゴリ押ししようとすれば育成もミストナックの習得に偏るため、中盤で行き詰った後の育成面のリカバリーが大変になる。

ストーリー(賛否両論点)

  • 争乱の時代を舞台にしているが、ヴァンたちの行動が直接的に歴史を動かすという物語ではない。
    • ヴァン一行は帝国との関係がそれぞれ異なる少人数の集団であり、特定の勢力に仕えているわけでもない。物語の大筋では政治や戦争などの世界情勢を描いているが、ヴァンたちは表舞台にはあまり関わらず、冒険を通じて争乱の裏に潜む存在に迫ってゆくことになる。
    • 歴史の動きは、主に帝国内部の権力闘争や、帝国と解放軍との戦いによって描かれる。こうした動きにはヴァン一行が関わらないため、主人公が歴史を動かすダイナミックな史劇を期待した層からは「物足りない」という評価が付いた。
      • ヴァンたちは、表舞台に関わりたくても関われない事情がある。アーシェとバッシュが世間では死亡したことになっており、それを誤って公表したのが解放軍の長であるオンドール侯爵。もし表舞台に立って解放軍に協力すると、二人の死亡が嘘だと世間に知れわたり、侯爵が信用を失って解放軍の団結に支障をきたしてしまうため出来ないのである。そして侯爵に偽の情報を伝えて公表させたのが、帝国の司令官であるヴェインである。
  • 政治的な利害や思想の衝突など、単純な勧善懲悪ではない内容が中心になっている。
    • ダルマスカを滅ぼした帝国は、新たな領土の民を圧政で苦しめる非道な支配者になるのではなく、それなりの善政を布き安定をもたらす統治者となる。単純な「悪の帝国を倒す」物語にはなり得ないこうした多面的な描写も、ゲームの物語に何を求めるかで評価は分かれた。
    • スタッフ曰く「強大な敵国が悪なのはおかしい。国民が苦しみ自分たちの国に誇りを持てないなら強大にはなれない。敵には敵なりの正義がある」。
      • なお、帝国首都の市民社会は、一夜にして上流階級から転落することもあるが、使い走りの仕事からでも立身出世が叶う、競争こそ激しくも活気のある実力主義社会として描かれている。
  • 発売前にもいくらか言及されていたアーシェの恋愛関連などの描写はかなり少ない。
    • 描写においても言い回しが難しい部分が少なからずあり、「子供に理解できるのか?」という疑問が国内のみならず海外プレイヤーからも投げかけられた。
      一方で、そういう言い回しや地味な演出を渋いと好む人や、恋愛展開が前面に出てこず、バタついた展開がない点が良いと言う人もいる。ここはやはり好みの問題になるだろう。
      • 旧監督の松野氏は「恋愛シナリオは不得意」「主人公とヒロインでは何かの関係がなければおかしいが、単純な愛ではなく他の愛」と答えていた。
      • 実際には同じ境遇にある理解者同士という関係となっている。
  • 群像劇形式のストーリー。
    • 制作スタッフは本作のストーリーについて
      「FF10ではティーダの物語が先にあって、それを描くために設定を広げていった。今回はそうではなく、まずイヴァリースという世界があって、そこで生きているキャラを描くという逆の作り方。そういう意味では『主人公』というものの考え方はFF6に近い。」と述べている。
    • ヴァン一行からして、同一の信念のもとに団結しているわけではない。亡国の王女であるアーシェと将軍であるバッシュは祖国再興と帝国打倒を悲願とするが、ヴァンの帝国への感情は、戦争で兄を失った怒りや懐柔された同郷人への苛立ちから来る反感といった色合いが強い。バルフレアはその出自によって帝国に複雑な感情を持ち、明確な反帝国ではない。パンネロはヴァンの身を案じて同行している部分が強く、フランに到ってはそもそも帝国と戦う動機がない。このように、帝国への感情一つを取っても、人物ごとにその濃淡は様々。
    • こうした多様な人物設定に基づき、「似た境遇のキャラについて異なる考えを持たせて対比させ、複数の視点から掘り下げる」という手法が取られている。例えば「過去から逃げるのはやめる」と決意したヴァンに対して「どうせ逃げるなら逃げ切ってみせろ」とシドに諭されたバルフレア、復讐にとらわれなくなったヴァンに対して復讐にとらわれ続けるアーシェやガブラス、「盾」の役目を担うバッシュと「盾」の役目を担いながらも自分を見失うガブラス、等々。
    • 主人公側にも敵側にも様々な価値観を持つキャラクターを配置することで、世界観は厚みを増すが、視点は散漫になる。これらは表裏の関係にあり、前述のような「善悪を割り切れないストーリー」にも繋がるため、賛否の特に分かれる点となった。
  • 消化不良な結末
    + ネタバレのため格納
    • イヴァリースの神に近い種族「オキューリア」が登場するが、いかにも倒すべき黒幕然とした傲慢な態度で、プレイヤーとしては鬱憤が溜まる相手。ところが彼らとの戦闘はないため肩透かしな展開で、多くの不満の声が上がった。
      • 彼らはギルヴェガンという名の人里離れた土地に籠り、自分たちが認めた人間に「破魔石」という強力な力を持つ魔石を与えることで、イヴァリースを管理してきた種族。その一体であるヴェーネスが仲間に背いてヴェイン、シドと共にあったという筋書き。
      • ヴェーネスは、ギルヴェガンにこもるオキューリアには歴史を導く資格などないと語り、帝国のヴェインとシドに破魔石の秘密を教えた。一方ギルヴェガンに籠るオキューリアたちは、離反したヴェーネスと、帝国を滅ぼすために、アーシェに破魔石を授けようとする。
      • シドの初登場シーン、覇王レイスウォールやガリフ族の伝承、ミュリンのそばに現れたヴェーネス等々…、オキューリアの存在自体は序盤から示唆されており、伏線が積みかさねられていた。そしてヴェイン達がアーシェの祖国を滅ぼした理由が、覇王レイスウォールに与えられた破魔石を奪い人造破魔石を作るためだということが明かされ、オキューリアとヴェーネス達との確執が戦乱の原因になっていることも判明する。このように物語の核に関わる存在であることが示されていただけに、結末の肩透かし感が強くなっている。
    • 異論として、そもそも実はアーシェとオキューリアにはお互いに争い合う理由がない、というものがある。
      • アーシェは祖国の再興が目的。オキューリアは離反したヴェーネス達を始末するのが目的。EDの時点で、両者の目的は果たされている。
      • 実のところ、オキューリアの態度があまりにも傲慢でプレイヤーのヘイトを買うキャラクターなので、一発殴りたいのに殴らせてくれないという、鬱憤が晴れない結末によって不満が出ている面もある。
    • 内容を補完するゲーム内テキストが充実しており、オキューリアの足跡や目的などを考察する議論が活発に行われた。
      • 特にイヴァリース作品のファンは、同じイヴァリースを舞台とした作品であるファイナルファンタジータクティクスと絡めた考察を行っている。
      • イヴァリースの歴史は、FF12の後に文明が滅びる謎の天変地異が起こり、中世世界観のタクティクスへと繋がる設定なのだが、FF12のゲーム内テキストはその文明崩壊にオキューリアが関わっていると解釈できるような内容が豊富にある。イヴァリースファンにとっては、消化不良な結末であることが逆に考察意欲を駆り立てられ、プラス面に働いている。
      • 当然ながら、その文明崩壊の時代を描いたイヴァリースシリーズの続編が出ない限り、単なる想像で終わってしまう。今の所その時代を描いた続編が出ていないため、不満が出ている。
  • 大人向けのストーリー
    • リマスター版の発売により大人になって改めて遊んでみた所、ストーリーが理解できたとか色々と気付くようになったというプレイヤーが少なからずおり、ストーリー面でも評価の見直しがされている。
    • 政治劇なので元々子供には難しい内容とされていたが、キャラクターの心情についても、大人になって初めて気づくものがあるとして見直されている。
      • 本作のテーマは「自由」と「義務」であるが、このうち「義務」については、大人になり社会に出て、責任が求められる立場になって初めて分かることも多い。ウォースラ、ガブラス、ヴェインといった「義務」側のキャラクターに共感する気持ちも、子供にはなかなか理解が難しい。

問題点

ゲームシステム・ゲームバランス

  • 召喚獣の扱いの難しさ
    • 召喚獣を召喚すると単純に戦闘人数が減るためリスクが高い。何も考えずに使うと大抵どちらかのHPがすぐに尽きて召喚終了ということになりがち。
      • 召喚獣の攻撃には、通常技と、発動後は召喚終了になる大技がある。しかしどちらも特徴的な特性のものが多い。上手く活かせば数万ダメージを連発できるような者もいるが、それぞれの召喚獣の行動パターンを把握しないと難しい。
      • 扱いは難しいものの、行動パターンの把握に加え召喚者がしっかりヘイトコントロール等を行ない敵の攻撃を捌いていくことが出来れば召喚獣を思う存分暴れさせることもできるため、ミストナックよりは今作らしいゲーム性を保つことが出来る。
  • ゲストメンバーの仕様
    • ゲストメンバーは加入時のレベルが高かったり、回復アイテム無限に使用してくれたりなど頼もしい部分もあるが、こちらが指示を出したりガンビットを組むことが出来ないため、戦術によってはそれを妨害するような行動も起こすため非常に扱いづらい。
    • 勝手に敵へ向かって走っていき途中でトラップを踏んづけて断末魔を上げながら戦闘不能に陥るような場面もありネタにされている。
    • 邪魔なため戦闘不能状態にして攻略を進めるプレイヤーも多いが、その場合戦闘不能回復用のガンビットに一工夫必要な他、セーブクリスタルに触れるたびに復活するため煩わしい。
    • インター版では上記の召喚獣やゲストメンバーの問題点は解消されている。
  • 「最強の矛」入手に関して
    • 名前通りの強さであり、所定の宝箱に入っているのだが、それ以前にマップに存在する別の特定の宝箱4つのうち一つでも開けてしまうと、その所定の宝箱からは取ることができなくなる。しかも対象の大半がかなり目立つところにある。この仕様の存在意義は何だろうか…。探索を推奨するゲーム性と反している。
      • この条件を満たしてしまったり二個目以降が欲しい場合は、敵が落とすトレジャーから探す必要がある。入手できる確率は0.1%。こちらは納得がいく条件だが。

ストーリー(問題点)

  • 序盤以降のストーリーでは主人公のヴァンではなく仲間のバルフレアとアーシェの活躍が目立っている。
    • 序盤以降物語の展開や設定的な意味でも一番重要なキャラはアーシェ。主人公のヴァンは「自由」というテーマの牽引役となっている。こうした扱い上、表立って活躍するバルフレア、本筋の重要人物のアーシェと比べて、抽象的なテーマを牽引する役目のヴァンの影が薄くなっている。
      • さらにテーマには「自由」の対比として「義務」があり、法を司るジャッジであるガブラスや敵の司令官のヴェインが「義務」の牽引役となっている。
    • 要するにヴァンを中心に話が動いているという感じが微塵もなく、空気主人公と揶揄される原因となっているのである。
      • 劇中でのバルフレアのセリフ「この物語の主人公さ」は、裏に意図があるわけでもなく(特に深い意味は無い言葉だったのだろうが)本当に言葉通りの意味となってしまった。
      • ヴァンが活躍している評価の高いシーンもあるにはあるのだが、どのシーンも悉く渋い。さらに見せ場が前半に集中してしまっており、後半は単独の見せ場がほとんど無い。
      • バルフレアが自身の秘められた過去を初めて詳細に打ち明けるシーンがストーリーもいよいよ後半になるあたりで発生するが、あろうことか公式の主人公であるヴァンではなく、アーシェに打ち明けている。このシーンだけを見ると、まるで主人公がバルフレアでメインヒロインはアーシェで、ヴァンはそれ以外のただの主要メンバーとしか思えないほど。
    • 「自由」というテーマの牽引役ゆえに、アーシェやバルフレアやバッシュのような確固たる信念や行動理念がヴァンには見えないため、ユーザーによっては「ヴァンはどういう人間なのかわからない」「ヴァンが何をしたいのか分からない」ということになる。
      • 彼には「空賊になる」という夢が存在するものの、前半で単なる現実逃避だったと明かされたかと思えば後半は技術を教えられたり「空賊に向いてる」と評価されるなど作中での扱いがブレている。最後に夢を叶える結末も唐突感が強い。
  • 主人公のヴァンより仲間のアーシェやバッシュの方が過去や敵との因縁をより深く描写されている。
    • 予め言っておくと設定や脚本上、ヴァン自体は決して敵キャラクターとの関係性が薄い訳では無い。しかしいざ敵の重要人物と対峙すると主人公のヴァンよりも他の仲間が優先的に敵と舌戦する様子がやや見られる。
      • 因縁の深さに差はあれど、主人公が宿敵であるはずのヴェインやガブラスと表立って激突する描写が無いのは残念。敵もヴァンを特に意識しないままシナリオが進んでいってしまう。
    • 過去についてもヒロインであるアーシェはOPから終盤にかけて詳細に描かれるが、主人公であるヴァンの過去は軽くテキストで語られるだけで終わる。
      • 過去を匂わせるようなイベントはあるがあくまで白昼夢。ヴァンにどういう過去があったのかは彼らの会話から想像を膨らませるしか無い。
      • ストーリーも後半に突入すると、もはや「アーシェの成長物語」というのがメインテーマのようになってしまっている。
  • エンディングの超展開
    + ネタバレのため格納
    • 人間関係で本作は渋い作風を一貫していたと思いきや、ラスボスを倒した後にとあるキャラの恋愛感情が唐突に描かれる。
    • 超展開に感じられることを回避するために必要な伏線も、このラスボス後のイベントの存在を意識しながら注視しないと分からないレベルで微細。
    • 戦争中の出来事なので、登場人物の立ち位置や交戦する人物の人間関係を考えると将来の雲行きを不穏にする可能性も十分に考えられる。
    • 結局、そのあとどうなったかはプレイヤーのご想像に殆ど丸投げ状態。

その他の問題点

  • ヴァン役のモーションキャプチャ俳優であり、声優である武田航平氏の「声の演技力」の拙さ。
    • 滑舌が悪いために、「『飛び降りろ』が『オイヨイヨ』に聞こえる」という序盤のシーンがネット上で有名になった。参考動画
    • オイヨイヨイベントだけではなく、全てにおいて滑舌がおかしく、字幕が無ければ何を言っているのか聞き取りづらい。
      • こうした滑舌の悪さから、ヴァン自体を「オイヨイヨ」と揶揄する動きも多く、もしくは滑舌ネタ繋がりでオンドゥルなどと呼ばれることもあった。
      • 「声がまともなら」という意見が極端に多く、インター版で英語音声だと違和感がなくなるとまで言われている。
    • そして演技力に関しては、終盤に近付くにつれて台詞の重みが増すほどに、声と場面の緊張感に乖離が生じる。ラストシーンで第一人称を間違えて「てへぺろ」的な表現は衝撃的だった。
    • 武田氏は声の仕事を本業としない俳優で、当時20歳で俳優歴も4年程度。スクエニの看板であるFFシリーズの主人公役には荷が重すぎた面もあると言える。*9
    • なお、主人公に若手俳優を起用するのは今作が初めてではなく、『FFX』の主人公・ティーダ役の森田成一氏も俳優であり、経験も少なかった(後に声優に転向)。同作での成功という経緯があって、本作でも俳優が起用された可能性も大きいだろう。
      • もっとも、悪い方には響かなかったとは言え、同作でも演技指導などのフォローがありながら演技が素人くさいという意見は散見された。
    • 他にも声優未経験の俳優を起用したキャラはいたが、ヴァンの場合主人公なので(影は薄いが)台詞は当然多く、演技自体も相対的に拙い部分が非常に目立っていた。
      • 例を挙げるとパンネロ役の声優も声優としては素人であったが、ヴァンほど酷くなくいたって普通の演技である。
  • ヒントメッセージの難解さ
    • ダンジョンの石碑などに記されている進行のヒントが分かりづらい。持って回った古文風の表現が多く、滅多に使われないような漢語が混じったものもある。悪い意味で凝りすぎている。
    • 特定の年代の正しい古文の文法に沿っているわけでもなく、あくまで古文「風」。漢字を使った造語も混じり、かなりおかしな文章もある。
    • 人物のセリフにも大仰で大時代な表現が散見されるため、演出として浮いている訳ではないが、謎としてではなく文章として解読が必要なのはどうか。

総評

満を持して発売された本作であったが、ほどなくして「これはFFではない」と激しい批判に晒されることとなった。
シナリオを求める人からは、キャラクターや展開の魅力の薄さ、イベント間のテンポを損なう広大なゲーム構成が批判され、システムを求める人からは、ガンビットなどのとっつきにくい独自のシステムが反発を招いた。

しかしこれらの評価は発売直後になされた節もあり、現在は練り込まれた世界観、自由度とやりこみ要素、完成度の高いシステムを評価する傾向も増えてきている。
製作期間を長くかけただけあって大きな欠陥やゲームとして破綻している箇所もほとんど無く、ゲームそのものの完成度は高い。
システム面においては、まだ日本で馴染みの薄いMMORPGをコンシューマの土壌へと持ち込んでしまった事が仇となってしまったことからして、時代が追いついていなかったという側面もある。

仕様への理解を要するシステムで批判された、『II』や『VIII』の轍を踏んでしまった作品と言えるかもしれない。


海外評価

  • まず最初に、海外では日本のRPGは古典的という見かたが多い。日本のプレイヤーも保守派が多いと見られていて、先進的なRPGが生まれる土壌すらないとまで考える人も少なくない。
    こうした考え方が根強かったこともあってか、先進的なシステムを取り入れた本作は、海外では驚きをもって歓迎された。
    • 本作の開発チームは元クエスト所属のスタッフが多い言わば外様のチームであり、ナンバリングタイトルを制作した経験がないスタッフが多い。
    • またFFの生みの親である坂口博信も「他がやってることをやってもしょうがない。好きなものを作ればいい。」と彼らを後押ししていたという。
    • FF12のやり込みは海外のほうが進んでいると言われている*10。国内評価の低さ、海外評価の高さがこうした所にも表れている。
    • 後年にIGNが歴代FFのランキング付けをしたこともあったが、FF6に次ぎ本作が2位にランクインしている。
    • 本作のメタスコアは92と非常に高い(これもFFシリーズでは2番目の高さ)。国内の評価とは裏腹に海外での評価の高さが改めて伺える。
    • 「海外版はインターナショナル版準拠だから好評なんじゃないの?」という主張も見受けられるが、実際に発売された海外版FF12はほぼ国内版と同一仕様でありこの主張は誤りである

続編・インターナショナル・リマスター

  • 2007年に派生作品『ファイナルファンタジーXII レヴァナント・ウイング』が発売された。
    • 本作最大の問題点とも言えるヴァンの扱いが大幅に改善され、ちゃんと主人公をしているとして評価が高い。
      • 開発経緯が少々特殊であり、本作のスタッフは『FFXIIRW』にはほとんど関わっていない。設定もTやXIIとの矛盾が多く、一部で混乱を招いた。
      • 一応公式には続編ではなく「オリジナルの新作」という見解。ただし、ストーリーは本作の続きとなっている。
  • 正史続編の『ファイナルファンタジータクティクスA2 封穴のグリモア』も2007年に発売。こちらにもXIIの一部キャラクターが登場している。
    • XIIのシナリオ担当の渡辺大祐は、Xの「ティーダの物語を描くためにスピラや『シン』の設定を広げた」という制作秘話を比較に出して、XIIではXとは逆に「まずイヴァリースという世界が存在していて、そのなかで生きているキャラを描く作りかたをした」と話している。
      • XIIまでは世界観中心だったが、後継作品ではキャラクター中心の考え方がスタッフ内に出てきたものと推測される。
  • 『Fortress』というFFXIIの続編が作られていた。
    • プラットフォームはPS3/Xbox360/PC(Windows)と、本格的な続編だった様子。
    • 2010年1月に外注先の開発会社が経営難で閉鎖し、開発中の技術デモ動画や大量のアートワークが流出したため判明。しかし現在は開発中かどうかは一切不明となっている。
  • HD版『FFX/X-2』の発売インタビューにて、北瀬佳範氏によるXIIのHDリマスターに向けて意欲的なコメントがあった。
    • 2017年7月13日にPS4用ソフトとしてインターナショナルをベースに改良を施したHDリマスター版『ファイナルファンタジーXII ザ・ゾディアックエイジ』が発売された。
      2018年2月2日にはSteamにてPC版の配信が開始。おま国されることなく無事に国内ストアで購入することができる。ただし、限定パッケージ(コレクターズエディション)は北米スクエニeストア専売となる。
      PC版では60fpsに対応するほか、ウルトラワイドモニタ(21:9)にも対応。更に3画面マルチモニタ(48:9)にまで対応している。
      また、「強くてニューゲーム(Lv90でスタート)」「弱くてニューゲーム(経験値獲得不可)」「ギル・LPブースト機能」も付加され、思い思いの難易度で楽しむことができる。
    • 東京ゲームショウでの発表の際には武田航平氏が現れ「オイヨイヨでーす!」と自らネタにするという場面もあった。

余談

  • 当時は派生作もまだ少なく、FFといえば「近未来的な世界観を舞台に現代的な風貌の美男美女が繰り広げるメカニックファンタジー」というイメージが近年以上に根強かったこともあり、中性ファンタジー的世界観というだけで否定的な印象をもたれやすくもあった。
    • 世界観やシステムは徐々に再評価されて来たが、シナリオ面では未だに批判の方が強い。
  • 2年もの発売延期、開発トップの病気療養による途中降板があったため、この批判はスタッフにまで及んだ。
  • クロスレビューで40点満点を付けたファミ通にも批判が殺到。2chの批判スレはわずか半月間に100スレを突破し、ディスク割り画像も散見された。
  • 本作に登場した「ガンビット」はプロ・アマ問わずゲームプログラマに使われる言葉となった。
  • 漫画版
    • ナンバリング作品としては久々にコミカライズがされていた。当初はガンガンパワードにて連載されていたが、当誌の休刊に伴いガンガンONLINEに移籍し、直後に終了となった。
    • ストーリーは序盤のウォースラ戦までが展開。コミックス1巻はゲームのプロローグ部分を丸々描いている。
  • コラボ商品
    • なんと「ポーション」が商品化してコンビニに陳列された。しかしあまりにも「回復アイテムである」ことを強調しすぎたがゆえに薬臭いマズいものとなってしまった*11。が、それが逆に話題となり、FFVIIAC・DDFFでもポーションが、FFXIIIではエリクサーが発売され、FF・DQコラボ食品の先駆けとなった。味は改良され普通に炭酸飲料らしいものとなっていったが、瓶から缶に代わってしまったことや独特の薬っぽい味が失われたことを嘆く声も一部ではある。
    • ネットではこれをベースにして改良(魔改造?)を施したハイポーションが作られるなど一時期大流行した事も。
  • グランディアIIIへの影響
    • 本作の度重なる延期の穴埋めとして『グランディアIII』が発売される形になった。
      • おそらく、開発中だった『グランディアIII』の発売日を早められ、短期間での開発を迫られたものと思われる。
      • もっとも他にも途中で無茶な納期を迫られたが一応は遊べる形にまとめた例はあり、『グランディアIII』の場合そもそもゲームとしての根本的な問題点が多いため、この評価の原因がFFXIIであるとは言い切れないが…。
  • 自社作品であるドラクエの「ロトの剣」をパロった「トロの剣」が登場する。
    • アイテム説明分にはDQ1で使用可能な復活の呪文が記載されている。このDQ1勇者の名前は「ゔぁん」。
    • DQ11でも使用可能。ちなみにHD版の発売時期が近い。
  • 声優起用の傾向
    • FF12発売以降、スクエニの作品は主役クラスのキャラの声に声優仕事が少ない非声優を起用する作品が極端に減った。
      • それでも脇に起用していた作品はあったが2011年3月発売のDDFFの時のヴァン役変更で権利問題や芸能事務所の移籍問題も絡んだからかDDFF発売以降はこの流れが更に加速し、その後のFFの主要級の起用は声優事務所所属の声優やFF起用前から声優としてのキャリアがあるタレントが主である。このあたりは怪我の功名というべきか*12
      • ただ鹿賀丈史氏や伊藤歩氏はその後も続投しており、DDFF前に決定している声優は非声優でも死去以外では変えない意向のようだ。またオリジナルキャストを重視し芸能界引退したと思われたユウナ役の青木麻由子女史も名義を変更して久々に復帰している。
    • スクエニの別作品だと『ドラッグオンドラグーン3』ではピーターこと池畑慎之介氏が別役とはいえ起用されているし、『ドラゴンクエストヒーローズ~』では松坂桃李氏や桐谷美鈴女史、中川翔子女史に片岡愛之助氏といった比較的メジャーな人々を起用して盛大な宣伝効果を招いている。セガの『龍が如く』シリーズのように芸能人起用が主な作品もあるので作品ごとのスタッフの考え方にもよる。
  • 武田氏のその後
    • 武田氏はその後俳優として着実に経験を積んでおり、特撮『仮面ライダーキバ』『仮面ライダービルド』や朝ドラ『ウェルかめ』などの有名作にもレギュラー出演した。
      • FFシリーズのお祭りゲー、『ディシディア ファイナルファンタジー』に『XII』からはガブラスが登場したが*13、武田氏は公式ブログでDFF発売後に、ヴァンに思い入れがありもう一度演じたいと述べ、ディシディアに出たかった事などを「待ってますよスクエニさん(笑)」と冗談半分で仄めかしている。
      • 続編『ディシディア デュオデシム ファイナルファンタジー』で遂にヴァンが参戦。成長した氏の演技力による新たなヴァンに注目が集まっていたのだが、まさかの前の事務所サーカス側と本人の事情で小野賢章氏へ変更。ファンにとっても残念な結果になってしまった。本人は出演を希望していたのはブログを見れば明白だった。
      • 現在この問題はクリアされたらしく、のちに発売された『仮面ライダー バトライド・ウォーII』では武田氏が声優として出演している。実際に移籍後もちょくちょくヴァンの話題をブログやニコ生で出していて2011年の現在の公式サイト開設当初からFF12の事は書かれている。2015年3月6日の公式ブログではFFの思い入れや変更当時の事などの他にディシディアのアーケード版の事を聞いて再びヴァンとして戻りたいという意思がある事を表明している。
      • しかし、ディシディアアーケードにおいても小野氏がヴァンの声として続投。さらに「ディシディアのヴァン役の小野賢章さんは代役ではなく交代としての起用であり、難しい状況の中受け入れてくれた小野さんと事務所様に対する敬意を含めた意味で今後もヴァンの声優としてはディシディアを含めて小野さんにお願いしたいと考えている」とプロデューサーの間一朗氏から明言までされた。
      • あくまで間氏の考えであり、今後武田氏のヴァン役としての起用がゼロになった訳ではなく、事実スマートフォンアプリゲーム『モンスターストライク』での『FFXII』とのコラボにおいてヴァンの声優は武田氏となっている。繰り返すが、あくまでディシディアシリーズ(及び間Pが携わった作品)でのみヴァンの声は小野氏になるというものだろう。
    • その後、HDリマスターにあたる『ファイナルファンタジーXII ゾディアックエイジ』では武田氏が再びヴァンを演じる事となった。ただし、基本的にはオリジナル版の音声をそのまま使っており、日本語音声が用意されていないインターナショナル版で追加されたシーンのみ再録を行っているとのこと。
      • 公式紹介PVではヴァンとパンネロの掛け合いでゲーム内容を解説していく内容だが、上記のオイヨイヨを意識したのかやたらヴァンの滑舌が良い事をアピールしている


*1 敵を認識したら襲い掛かる/掛からない

*2 視覚は前を横切ると認識される、聴覚は近づくと後ろにいてもバレる、横にいても無反応だが魔法は回復魔法で味方を治療しても反応

*3 偶然かもしれないが、メタルマックスシリーズには同様の要素で町に入ったタイミングにより町中のアイテムが安くなるセールという要素がある

*4 FFの場合同じ名前のモンスターでも作品によってデザイン・設定が大きく違う場合がある。例えば、代表的なキャラクターであるチョコボでさえ、最初(FF2)は10m程度の恐竜のような生物であった

*5 ただし、開発者側であらかじめキャラの個性を用意しておいてほしい(またはそれを大事にしたい)、自身で育成の方向性を決めるのが苦手なプレイヤーにはこういったシステムは不評。

*6 マサムネ、エクスカリバー等

*7 ゲーム中では説明されないため、正式な名称ではない。

*8 ヘイトソースとしては「時間攻撃」「算術」などが適している。

*9 武田氏の名誉のために補足すると、演技面についての問題点は、スタッフの「ヴァンには先入観を持って接して欲しくないため、あえて無名の俳優を使った」という姿勢が裏目に出た格好となってしまったと思われる。「何にも染まってない無名の役者を使って、ゼロから作りあげる」という姿勢はゲームに限らず様々なフィクション作品にも見られ、そういった挑戦的姿勢は評価に値するものの、悪く言えば「未経験者に大作の大黒柱となってもらう」という博打にも等しい賭けにもなるため、そういった意味では残念と言えよう。

*10 タイムアタックなど、分野によっては国内のやり込みのほうが進んでいる。

*11 ちなみに着色料に人工色素である青色1号が使われていたこともカルト的な話題となった。

*12 もっとも本作から後の作品である『ファイナルファンタジー零式』ではPVなどでやたらと有名声優を表記しているため、一部からくどいと言われてもいる。

*13 抜擢された理由は本作のパッケージを飾ったから。そしてそのキャラも正確には人数合わせのゲストのようなものであり、元々DFFにはXII枠がなかったのである。