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Strawberry Panic!

【すとろべりー ぱにっく】

ジャンル 百合アドベンチャー

対応機種 プレイステーション2
発売元 メディアワークス
開発元 ゼロワン
発売日 2006年8月24日
定価 通常版:6,800円
限定版:8,800円(共に税別)
備考 初回限定版にはドラマCDと学生証が付属
判定 クソゲー
ポイント 原作と全く似てないキャラデザ
不評な『G's』ベースのシナリオ
形だけの自称「独自システム」
電撃G's magazineシリーズ・関連作品リンク


概要

『電撃G's magazine』(以下『G's』)で連載されていた同名企画のゲーム化。
内容は3つの女子校が三角状に隣接しており、そこに通う生徒達がキャッキャウフフする、所謂「百合」を題材にしたものである。

プレイヤーは聖ミアトル女学園に通う渚砂、聖スピカ女学院に通う光莉、聖ル・リム女学校に通う絆奈の3人のうち1人を選択する。


本作の元となった『G's』企画版について

  • 『G's』2003年10月号から、それまで同誌の主力であった『シスター・プリンセス』(以下『シスプリ』)の連載終了を受けて、その穴を埋めるべく連載されたのが本作の読者参加企画版である。
    • 本作発売前後に放映されていたアニメ版と小説版は概ね好評であったが、それ以前に『G's』で連載されていた読者企画版はその開始時から不人気に苦しみ、フリーカップリング66通りやエトワール編→寄宿舎編への強引な方向転換など不可解なテコ入れが繰り返されて迷走を続け、終いには「ストパニのパニックは編集部のパニック」と揶揄されるに至ってしまった。
+ 詳細
  • テキストには『シスプリ』で実績のある公野櫻子氏*1、イラストには真木ちとせ氏を起用。
  • 読者参加企画としての最初のコンセプトはゲーム版同様、聖ミアトル女学園に通う渚砂、聖スピカ女学院に通う光莉、聖ル・リム女学校に通う絆奈の3人の(プレイヤー=読者)の妹と、各校ごとの相手役として上級生・同級生・下級生を1人ずつ配置し、妹と相手役をカップリングするというものであった。
    • プレイヤー=読者は3人の兄という立場から、妹達にアドバイスを出して百合カップル成立に導くという立場が与えられていた。
    • 渚砂・光莉・絆奈の3人に苗字が設定されていなかったのも『シスプリ』と同じ理由で、「読者の妹」という前提があったためである。
  • しかし、誌上ゲーム第1回は総投票数が2,000票にも達しない結果となってしまった。これは『双恋』ですら開始時は総投票数5,700票、『シスプリ』では全盛期で総投票数10,000票弱、あまつさえ登場ヒロインの咲耶1人(人気一位)だけでも2,000票弱を稼いでいたことを考えると明らかに惨敗であった。
    • 理由としては、キャラクター像がまだ具体的に見えていないのにいきなり「さあカップリングしてください」などと言われても読者はただ戸惑うだけだったということがある。
    • その他にも百合作品であるのに、男性である「プレイヤー=3人の兄」が介入することにも問題があった。おそらく『G's』側としては『シスプリ』で入った層を繋ぎとめておきたかったのだろうが、百合物語でそれをやってしまうのは自殺行為に他ならなかった。妹に同性愛を推奨する兄というのも不自然である。
      • つまり、『G's』の読者参加企画としての本作は根本的に間違っていたといえる。しかし当時の編集部はそれに気づかず*2、惨敗という結果に焦って無茶なテコ入れに乗り出してしまうのであった。
  • そのテコ入れというのは、3人の主人公とその相手役という役割はおろか、3つの女子校という垣根すら外し、総勢12人でカップリングを自由にするという「フリーカップリング」の導入であった。この結果カップリング総数は66通りという途方も無いものとなってしまった
  • そしてイースター・体育祭・文化祭・クリスマスバザーと4つの学校行事を設定して各行事ごとにベストカップルを選出し、かつ4回の総合成績で1位になったカップルに「エトワール」の称号を与えるという「エトワール編」が展開されることになった。
    • それに伴い読者の「兄」という役割も破棄され、単なるカップリングの人気投票がゲームの趣旨となった。これに合わせて主人公達も妹ではなくなり、後に苗字が設定されることではっきりと描写された。
      • しかし、前述のようにまだキャラが具体的に見えていないのに選択肢だけを増やされても読者はますます戸惑うだけであり、3校の垣根を取り払ったことにより誰がどんな役割を作中で担っているのかも読者には掴みにくくなってしまった。
      • さらにそのキャラを掘り下げるためのイラストストーリーですら致命的にキャラ立ちが弱く、似たようなキャラ達が似たような行動をしているだけということが浮き彫りにされてしまった
    • そして誌上ゲーム第2回の結果は当然投票数は伸びず、ただでさえ少ない票がさらに細かく分散しただけという結果に終わった。
  • 誌上ゲーム第3回では、『G's』読者参加企画では初となるネット投票も開始された*3
    • また「おまじない」という、選んだカップリングのそれぞれにキーワードを選択して付与し、片方のキーワードが一致するとハガキ1枚で3票分、両方が一致すると9票分の効果となる新ルールが追加された。ぶっちゃけ票の水増し以外の何物でもないが
  • しかし、実はエトワール編には致命的なミスが存在していた。それは第3回誌上ゲーム結果発表(2004年7月号・同年5月30日発売)と同時に「秋の文化祭」募集開始を行うことは季節的に矛盾が生じるということであった。
    • 「それくらいの事はエトワール編を始める段階で気づけよ」と思わず突っ込みを入れたくなるほどの情けない失敗である。このようなグダグダさが本作の迷走振りをよく物語っているといえる。
    • そもそも設定上の1年で4回しかイベントがないというのがまずい。作中での時間経過をどう設定するか非常に困難。行事間に多大な空白時間ができるはず。時間経過をじっくり進めるなら当然上記の問題になる。
    • その場つなぎとして「寄宿舎パニック!編」が毎月連載で3回行われることとなったが、どういうわけか場つなぎのはずだった寄宿舎編が誌上で続投されることとなり、エトワール編の残り2回はネット投票のみとなってしまった。編集部の一貫性の無さが改めて暴露されたといえよう
      • なお、エトワール編総合ランキング(2005年2月号発表)を制したのは渚砂・玉青ペア(1,653票)であり、総得票数は8,605票であった。
  • 寄宿舎編の趣旨は主人公である渚砂・光莉・絆奈の3人の中から1人をピックアップして様々なシチュエーションを掲示、その中で他の11人とカップリングを行うものであった。
    • 誌上ゲームの投票数は、隔月だったエトワール編から毎月連載に変わったこともあり1,000票前後となったが、イラストストーリーのページ数は2Pから4Pに増やされ、読み物としての人気はエトワール編を上回った。
    • なお、2004年11月号からは3校の垣根を越えたストーリーとなり、渚砂・光莉・絆奈が互いを姉妹と認識していない描写がされている。
  • 寄宿舎編の終了、エトワール編の結果発表(2005年2月号)を以て誌上ゲーム及びインターネット投票は終了した。
  • 2005年3月号の休載を挟んで、4月号から外伝ノベルが同年9月号まで全5回連載された。
    • そのストーリーは、ミアトルとスピカの裏に位置し悲恋伝説が存在する「背徳の庭」での玉青と蕾の出会いをきっかけに始まる、ミアトルとスピカのバスケットボール対抗戦を巡る顛末を中心に描かれていた*4
  • 外伝ノベルの連載終了と共に、『G's』企画版の連載は終了。
    • 過去の『シスプリ』『双恋』とは異なり、『G's』企画版の内容(イラスト、ノベル)を収録した出版物(単行本)は発売されていない*5

問題点

原作とあまりにも違い過ぎるキャラクターデザイン

  • 原作も『G's』企画版と小説・コミック版でイラストレーターが変更されたのだが、そのいずれと比較しても劣化しているとしかいえない。
    • 肝心の絵がこれではせっかくのメディアミックスも台無しであるといえよう。
    • パッケージには小説・コミック版のイラストレーターを起用しており、これで騙された人もいただろう。

不評な『G's企画版』ベースのシナリオ

  • 好評な小説・アニメ版ではなく迷走を続けた『G's』企画版がベースになっている。
    • それ故に各キャラクターの主人公に対する呼び方が、アニメ版から変更になっているキャラが何人かいる。また渚砂・光莉・絆奈の3人に苗字が設定されていないのも『G's』企画版に準拠しているためである。
      • 例えば夜々は光莉の事を、アニメ版「光莉」→ゲーム版「光莉ちゃん」。蕾はアニメ版「光莉先輩」→ゲーム版「光莉お姉様」…など。
      • しかも限定版付属のドラマCDでもゲーム版準拠の呼び方になっている。
      • カップルが固定化されたアニメと違いゲームは様々な可能性があるため、より親密な表現にされていることは評価したい。
    • 小説・アニメ版はキャラが立った良作*6であったが、『G's』企画版はあまりにもキャラ立ちが弱く*7、似たようなキャラ達が似たような行動をしているという欠点があった。
    • 『G's』発祥作品の伝統として、本作もストーリー性は皆無である。従って魅力的なキャラクター性が必要になるわけだが、先述の通りキャラ立ちの弱い『G's』企画版がベースのため本作も当然キャラ立ちが弱い。一応各キャラごとに色分けはされているものの、あまりにも平凡すぎるのである。
      • アニメ版や小説版は、各キャラクターの心の葛藤や心理描写が非常に巧く繊細に描かれていたのだが、本作ではそんな物は一切無い
      • ただ主人公の前に次々と現れて主人公を誘惑するだけ。夜々に至ってはアニメ版と性格さえも変わっており、単に光莉にデレデレするだけの痛キャラに成り下がってしまっている。当然ながら天音に想いを抱く光莉に好意を抱いてしまった事に葛藤するような場面も無く、目の前に天音がいようとも知らん振りである*8
    • アドベンチャーゲームでありながらキャラの魅力に乏しく、しかもストーリー性が存在しないとなれば、つまるところこれ以上ない駄作ということである。
    • 変わる変わるやってきては主人公を誘惑する相手役の姿を見ながら欠伸をかくというのが本作のプレイ風景であった。要するにただの作業ゲー
    • しかも主人公3人は何故かフルボイスではなく、回想モードでしか音声が流れないという謎の仕様。容量的には余裕でフルボイスで入るはずなのだが……

看板倒れの様々な「独自」システム

  • 様々な独自システムをアピールし、わざわざチュートリアルまで作って説明していたのだが……
    • モードセレクトシステム。本作では「男の子モード」「女の子モード」の2つのモードを選択してプレイできる。
      • しかし、その実態は1日の最後に書くものが「女の子モード」では日記、「男の子モード」では主人公キャラの兄という設定のプレイヤーへのメールになるというだけのものであった。一応「男の子モード」時のみ見られる「お兄ちゃんエンド」というエンディングもあるにはあるのだが、そもそもが百合物語であるため物議を醸したのはいうまでもない。
    • 天使と悪魔システム。「人は選択を迫られるときに、心に葛藤が起こります。『人に迷惑をかけてはいけない』という思い、そして『相手に甘えたい』思い。そんな葛藤をシステム化したものです」と謳っているが……
      • 要するに選択肢を選ぶだけである
    • ぱにっくシステム。「胸のドキドキが極限に達して、相手以外何も見えない状態。気になる人の顔が目の前に迫ったら? 相手に大胆な告白をされたら? そんなとき、あなたはきっとその相手以外のすべてが見えなくなることでしょう。このシステムは、そんなあなたの心の内側を描いたシステムです」と謳っているが……
      • これも要するに選択肢を選ぶだけである
    • ストロベリーチャンスシステム。これは先述のシステムに比べればまだマシな方であった。
      • 「時折ゲーム中に画面右上に表示される『チャンス?』マーク。これが表示されたときが 『ストロベリーチャンス』システム発動のときです。『チャンス?』マークが表示された後に、R3(L3)ボタンを押すと、ストロベリーチャンスは成功します。ただし、ボタンを押すタイミングが遅かったり、そのチャンス自体がダミーだった場合は失敗となります。このストロベリーチャンスに成功すると、追加ルートをプレイすることができます。ただし、失敗した場合はその回数がカウントされ、一定回数失敗するとそれ以降『ストロベリーチャンス』システムは発動しなくなりますので、慎重に、しかし大胆なプレイが必要となります」
      • ゲームにメリハリをつけるという意味ではこういうのはありだろう。しかし、このシステムはダミーが非常に多く、しかもダミーだったかそうでないかを確かめる術は実際失敗して確かめるしかない
      • しかもこれに失敗すると攻略不可能なルートもある。
      • なので、「事前にセーブ→ストロベリーチャンス失敗→ロード→リトライ」という行為を繰り返して、それでダミーだったかそうでないかを判断するしかない。テンポ良くゲームを進めるには、このシステムは邪魔以外の何者でもない。

ほとんど無意味なキャラ選択

  • 主人公が3人いるのに、誰を選んでも相手キャラの接する態度は殆ど変わらない。
    • 例えば攻略キャラの1人・夜々は渚砂から見れば後輩、光莉から見れば同級生、絆奈から見れば先輩という立ち位置なので、これを生かせばキャラを色々な視点から立たせることができたはずである。
    • むしろ、相手役の態度が「可愛い女の子なら誰でもいい」とも見て取れて、マイナス要因になっているともいえよう。

賛否両論点

  • 玉青の声優がアニメ版の清水愛氏から沢城みゆき氏に変わっている。アニメ版のファンの間では清水氏が演じる玉青が非常に好評だったため残念がられた。
    • 実はキャスティングはゲーム版の方が先に決まっていたのだが*9、沢城氏がスケジュールの都合によりアニメ版には参加できず、清水氏が代役に抜擢されたという止むに止まれぬ事情があったことが、『G's』の2006年6月号で語られている。つまり、本作においての玉青の声優交代は製作側にとって、「本来の担当だった声優に戻した」という事なのである。

評価点

  • アニメでは有り得ないような珍しいカップリングが見られる。
    • 主人公が3人、ヒロインが9人いる事もあり、計27通りもエンディングが用意されている。
      • さらにノーマルエンドとトゥルーエンドがあるので、EDパターンは非常に豊富。
    • ただしシステム上、主人公同士、また主人公以外のキャラ同士のカップリングは不可能だという問題がある。

総評

せっかく同時期のアニメがそれなりに成功していたにもかかわらず、迷走続きの『G's』企画版をベースにした事がまず失敗だったと言える。
加えて、原作とかけ離れたキャラデザ・印象に乏しいキャラ・意味の無いシステムと合わさりどうしようもない出来となってしまった。


アニメ版について

  • 2006年4月から9月までの放送。全26話。
+ 詳細
  • アニメ放送中に本ゲームの宣伝CMが流れた。
  • 上に書かれている通り、清水愛氏が演じた玉青が非常に好評かつ、特に彼女の口癖「○○ですわ」は、えらく受けてAA化されしばしば掲示板サイトで見かけることも有る。
  • また、序盤はそうではないが、中盤から終盤にかけてのジェットコースターのような怒涛の展開は印象の残っている人も多いはず。
    • 「渚砂~~~~~!! 愛してるのぉ~~~~~~!!」
    • 上のセリフを言った静馬は中盤以降、かなりキャラが崩壊しがちになる。声を充てたのは生天目仁美氏である。
  • と言う訳で、中盤以降の彼女の迫真の演技のお陰で、強烈にキャラを記憶している人もいるだろう。
    • 最終話は玉青ファンなら、涙無しに見られない展開が有る……あまり好ましくない理由で泣けるのだが。
    • 因みにEDは実写であり歌っているのは中原麻衣氏と清水愛氏である。当時販売されていたCDのPV、DVD第1巻の初回限定版の特典映像には、両氏のキスシーンが収録されていたりする。しかもほっぺにチューではなく唇同士の、しかもかなり濃厚なキス。この2人は所属事務所が違うにもかかわらず非常に仲がいいらしいのだが、だからと言って幾ら何でもやり過ぎである。
    • ちなみにこの2人、キスシーンを収録する事をスタッフに告げられた際に、嫌がるどころか無茶苦茶嬉しそうにはしゃいでいた様子が、DVD第1巻の初回限定版の特典映像に収録されている。
    • 流石にこれを地上波で流すのはまずいと思ったのか、実際に放映されたアニメのEDでは、2人のキスは寸止めに終わっている。
    • 小説版も有るのだが、アニメ版とは異なった終わり方となっている。
    • 『G's』では小説版準拠のコミック版が読者参加企画版終了直後から連載されたが、休載名目で途中で打ち切られてしまった。
+ タグ編集
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  • 2006年
  • PS2
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  • ゼロワン
  • 電撃G's magazine

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最終更新:2022年11月05日 00:55

*1 2009年からは今や説明不要のヒット作となった『ラブライブ!』のテキストも担当している。

*2 というよりもここで気づくくらいなら企画段階のうちに気づいて、こんな企画を始めなかったはずだが……

*3 少ない投票数を伸ばすための苦肉の策であることはバレバレであったが。

*4 『G's』オリジナル企画としては珍しく、1話読み切り形式ではなくストーリーが連続した形式を採用していた。

*5 誌上ゲームの景品として、霧賀ユキ氏が担当したミニコミックを収録した冊子は存在している。

*6 アニメで問題となる性格の悪いお邪魔キャラは、全てアニメ独自キャラとなっている。

*7 『シスター・プリンセス』などのように、キャラ本人が読者にアピールする狙いでないためか、キャラの紹介文もかなり控えめ。設定そのものの欠点として、隣とはいえ3校に分かれており、特別なイベントでもない限り別校キャラ同士の接触が自然に行えない。

*8 元々『G's』企画版ではそのような描写しかされていなかったわけだが。

*9 清水氏は本来は絆奈役として決定していた。つまりアニメ版では一人二役ということである。