SIMPLE2000シリーズ Vol.32 THE 戦車

【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむさんじゅうに ざ せんしゃ】

ジャンル シューティング
対応機種 プレイステーション2
発売元 D3パブリッシャー
開発元 ヴァンテアン・システムズ
発売日 2003年6月26日
定価 2,000円(税別)
判定 クソゲー
ポイント THEホバークラフト
リアル志向(笑)
戦車戦の重みなし
誰得の魔改造システム
SIMPLE2000シリーズリンク


概要

SIMPLEシリーズの一作。
公式サイトでは「リアル志向なシミュレーター」と謳っている。

本作より前にプレイステーションで『SIMPLE1500シリーズ Vol.90 THE 戦車』が発売されている*1ため、実質的な続編と言える。
こちらは「火星軍VS地球軍」というSF設定の作品であり、光学兵器を主砲に据えた「遠未来の戦車型架空兵器」となっていた。まぁこちらでも「戦車の重量感、動きを完全シミュレート」なんて書いてはいたが…。

問題点

  • ×:THE戦車 → ○:THEホバークラフト
    • キャタピラと地形の関係を無視したスムーズな足運びはまるでホバークラフト。
    • 一部の斜面や建造物で律義に引っかかって進めなくなる。また、斜面では俯角がおかしくなる。
  • 劣悪なUI
    • 視点は砲塔後方の三人称視点(戦車の外側からの視点)で固定。照準画面や双眼鏡視点のようなものはない。戦術マップのようなものもない。
    • 弾速・装填は早すぎで、挙動は軽すぎる。一部の車両は改造しなくても超連射できる*2
    • さらにロックオン機能もある。敵戦車に砲塔を向けてマーカーが表示されれば狙いが適当でも命中する。それはリアルと言えるのか。
    • 上記のPS版では画面内を区分けすることで「後方視点」「照準画面」「マーカー表示」をしっかり描写していた。また、装甲が部位ごとという要素も存在していた。開発会社が違うとはいえ、前世代ハードで普通にできていたことが何故出来ないのか?
      • むしろ前作であればHP制でも、(SF風の設定であるため)バリアを貼っているという設定であればまだよかったかもしれないが。
  • リアルな戦車ゲームなら重要なはずの「貫通判定・弱点」などない。単なるダメージ蓄積制。
    • 機関砲の一掃射程度ではボロボロにならず、貫通しなければいくら食らっても大丈夫といった強固さが戦車の特色のひとつであるはずなのだが、これでは再現すべくもない。
      • しかも、敵もかなりの精度を誇る(必中?)のだが、橋を渡るステージが中盤にあり(敵が待ち伏せているという設定)、全弾当ててもクリアできない(またはほぼ不可能な)戦車が出てしまう。
        ここでは撃破までに自分が倒されないようなHPのある戦車を出現させないと進められない。
        このゲームが仮にリアルな仕様だったとして、新しい戦車じゃないと貫通しなくて倒せないということが起こりそれと結果は一緒かもしれないが、ダメージが通っているのにどうやっても勝つことができないというのは何とも…*3(地形に引っ掛けるような技を使えばもしかするとクリアできるかもしれないが、それはそれでリアルとは言えないためゲームのコンセプトと合わない)。
    • 九七式チハ(大戦中の日本陸軍の戦車)もダメージ蓄積性と連射力のために活躍でき、90式戦車やルクレールといった新世代戦車を一方的に撃破することも可能。スタッフにチハマニアでもいたのだろうか。
  • 友軍は一切登場しない。これではタンクじゃなくて 単騎 ゲーである。
    • リアルを謳うならせめて味方くらいほしいものである。
  • 単調極まりないゲーム内容
    • 似たり寄ったりのミッション、おバカで弱い敵。ほとんどの敵がごり押しで倒せるため壮快感が無い。3~4時間もあればクリアできる。
    • 効果音は似たものばかり。破壊された敵戦車は爆発して消滅する。
    • 中盤以降、時代等を無視して複数種の戦車が出てくるようになるがAIのロジックは全く変わりない。
    • 逆に、例えば中盤のステージで橋の向こうにいる敵は確実に先制攻撃してくるが、この時点では耐久力が足りないので(橋の上なので避けられないから)河を渡れない、といったその前のステージに比べいきなり難易度が上がるステージもある。
    • 小回りのきくチハやSタンクで敵の後ろに回り込みながら一方的に攻撃する「別の楽しみ方」もあり、それはそれで楽しいが、「リアルな戦車戦」では無いだろう。

評価点

  • カスタマイズでネタに走れる
    • 一度クリアすると可能になるカスタマイズでは「九七式チハにM1エイブラムズ(アメリカ陸軍が現在も使用中の戦車)の砲を載せる」といった絶叫物の改造が可能。もちろんその逆も可。
    • 砲塔ではなくあくまで「主砲だけ」を載せ替える形になるため、「超長砲身でアンバランスな軽戦車」や「短砲身すぎて主砲が見えない重戦車」が作れる。
    • ネタとして見れば笑えないこともないため、一応評価点として挙げる。リアルかどうかは別の問題だが。
  • 戦車1台を協力して動かせる
    • 砲塔と車体を分担する2人プレイが可能。それでも、敵が敵なので楽しいかどうかと言われると…。
  • 前作で存在意義が不明な地雷がなくなった
    • 地雷のはずなのに埋まっていないという矛盾に加え、敵は踏まないor踏んでも無効だったうえ、前作は体当たりができないため押し込んだりもできなかった。そんな欠陥の一つが減ったのは素直に評価すべきだろう。

総評

THE 男たちの機銃砲座』や『THE 戦艦』と並んで、純粋にゲームの出来で低評価のSIMPLEシリーズ作品。
そこまでこだわらない人や、戦車に興味がない素人でも一発で分かる欠陥だらけである。
戦車らしい動きがまったくできないわけではないのだが、ミッション数や種類にも不満点が多々あり評価は高くない。

実際の戦車ではなく、ラジコン戦車のゲームとしてみれば問題なかったかもしれない。
特に主砲を乗せ換える遊びなどは当時食玩ブームの火付け役となったワールドタンクミュージアムやドラゴン社の類似品などで砲塔の乗せ換え遊びをやった人も多かったのでは(サイズが合うものが限られたが)。

余談

  • 同日に発売されたのはSIMPLEシリーズの傑作『THE 地球防衛軍』である。
  • 後にPSP版やDS版のSIMPLEシリーズでも『THE 戦車』が発売されている。
    • これらはまだマシな出来という評価に落ち着いているので、もしどうしてもSIMPLE製の戦車ゲームがやりたいならそちらを選ぶべきだろう。
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最終更新:2022年02月12日 20:41

*1 開発はハイウェイスター。

*2 本物の戦車のように分数発になったときに楽しめるかというと…少なくとも、当時はそういったゲームはあまりなかった。また、例えば「JS-2mの装填の際にいちいち主砲を下げないといけない」などの現実の要素は(そんなのが採用されているゲームがあるとは思えないが…)必要ではないだろう。どこまでリアルにするかというのは考え物である。さらに言えば、WW2の時点で数kmを挟んで撃ち合っていたので(接近戦もないわけではないが)、そもそもこういったゲームはどこまで要素を再現しても非現実的ではある。戦車だけの戦争という時点でありえない上(しかも単騎)、戦車しかいなくてもこんな近距離に近づく前に察知されるはずである

*3 例えるなら『サガ フロンティア2』で2周目の開始後いきなりラストバトルに行くとダメージが足りなかったはず。このゲームは分かりやすいだけありがたいかもしれない