ライフスケイプ 生命40億年はるかな旅

【らいふすけいぷ せいめいよんじゅうおくねんはるかなたび】

ジャンル 知育?

対応機種 セガサターン
プレイステーション
発売元 メディアクエスト
開発元 サイトロン・アンド・アート
発売日 1996年5月24日
定価 6,800円
判定 クソゲー
ポイント あまりにも不出来なゲーム部分
最悪なテンポ
1回プレイすれば十分
NHK関連作品リンク



ゲーム内容の前に・原作について

「生命 40億年はるかな旅」というNHKのドキュメンタリー番組をご存じだろうか。
このドキュメンタリーは1994年から1995年にかけて、NHKのシリーズ物のドキュメンタリーとして放送され、視聴者から大きな人気を博した、いわゆる「NHKの本気」を見ることのできる名作ドキュメンタリーのひとつである。
内容としては、生命の起源から始まった地球の生命の歴史、そして未来を、その分野に携わる研究者や専門家の考察や資料、そしてCGムービーなどを交えつつ追って行くものとなっており、毛利衛が進行役を務めている。
内容の科学的な正確さという点に関しては一部に批判の多い回もあるが*1、生命の誕生からカンブリア紀、恐竜時代、人の祖先の誕生そして現代と順を追いつつ、海から陸へと生活場所を開拓していく生物たちの過程や、大空を飛ぶ生き物に関する考察、昆虫たちの生態などにも細かくメスを入れており、退屈すること無く生命の歴史を学べる。
大島ミチルの奏でる数々のBGMや当時最先端のCGなども評価が高く、今でも多くの図書館のAVコーナーの常連を務めているほどの人気がある。
上記のように一部に問題点がある上、1994年当時の知識・学説に基づいた内容なので現在の説とはいささか異なる部分もあるが、大筋に関しては概ね間違いはないので、興味がある方は近くにあるNHKの番組公開ライブラリーや図書館などで探してみるのもいいかもしれない。

…ここから本題に入る。その名作ドキュメンタリーは、かつてゲーム化されたことがあることをご存知だろうか。
ドキュメンタリー原作のゲームという類を見ない作品になった本作品…この記事では、その前例のない試みに挑戦したゲームの内容を取り上げていく。


概要

  • DISCは2枚組で、それぞれのディスクは「海」「陸」をテーマにしている。
    • プレイヤーは架空のテーマパークをめぐり、その各アトラクションで、地球の生命の歴史をたどっていく。
    • 各アトラクションでは、原作の一部内容を視聴できるモードとアトラクションの取り扱う時代・生命にまつわるミニゲームを遊べる。

問題点

原作映像が中途半端

  • 原作の映像を収録しているのだが収録内容が中途半端で、大幅に内容が削れている。肖像権の問題か、各ジャンルの専門家たちの解説などは大幅にカットされている。

面白みに欠けるミニゲーム

  • 全体的に初見のインパクトに極振りした構成となっており、大半のゲームは1度見たらもう面白くなくなる。継続的に遊ばせるための要素も考えられておらず、放っておけばミニゲームは永遠に続く
    • 「DNAジェネレーター」はランダムで4個のDNAが出現し、配列によって違うカンブリア紀の生物(のポリゴンモデル)が水槽の内部に現れるというもの。水槽に現れた生物は観察して楽しめる…それなら最初からリストアップした中から見たい生物を選ばせてください。
    • 「オペラ・ド・バクテリア」では、バクテリアによる『酸素生産→軟体バクテリアの合体→硬体・軟体バクテリアの融合』という細胞誕生のプロセスを体験できる。初見はなかなかインパクトがあるが、それ以上のゲーム性は何も存在しない。
    • 「カンブリアン・サバイバル」は、ネクトカリス(カンブリア紀の生物の一種)となって、襲い来るアノマロカリスから逃げ延びるだけ。アノマロカリスが襲ってきたら逃げるだけの作業で、面白さのかけらもない。
    • 「プテラノドン・シミュレーター」では文字通り、プテラノドンとなって空を縦横無尽に飛び回れる。島に着陸したり、他の仲間と編隊を組むことができるのだが、言い換えれば目的もなくふらふらと飛び回るだけのミニゲームであるためすぐに飽きる。
    • 「マウス・イン・ザ・フォレスト」は食物連鎖を表したゲームで、プレイヤーはねずみとなり、木の実を食べて糞を排泄し、その糞が樹木となって成長していく様を見られる。とどのつまりは、「木の実を食べてフンをして、新しい木が生えて実がなって、その実を食べてフンをして、新しい木が生えて実がなって、その実を食(ry…」を繰り返す作業ゲーである。もちろん終わりなど無い。
      • 時折プレイヤーはフクロウに食われることがある。
    • 最後を飾る「モンキー・エヴォリューション」では、プレイヤーはサルとなり、木の実や箱といった道具を駆使して頭上にあるバナナを手に入れることで「サルの進化の過程」を味わえる。それは「進化」じゃなくて「学習」では?
      • 獲得形質や獲得知識は基本的に遺伝しない、という進化学の初歩知識も反映されていない。
      • 唯一ゲームらしいといえばゲームらしいミニゲームではあるもののステージが片手で数えられる程度しかなく、全ステージが終わったらループする

その他

  • アトラクション間を移動するためにはジェットコースターのような謎の乗り物を使用して移動するのだが、いちいち安いCGムービーと読み込みが挿入され、非常にテンポが悪い。
    • アトラクションに入ったら入ったでフルCGのマップを自力で移動してモードを選択するための部屋までたどり着かねばならない。
    • ディスクをチェンジする際にもムービーが入るのだが、そのジェットコースターもどきは何故かレールを飛び出して宇宙に飛んでいく

評価点

  • 先述したとおり初見の面白さは大きく、自分で操作しながら古代の地球を鑑賞できるゲーム構成はなかなか楽しい。
    • 「アイル・オブ・バロサウルス」では孤島に住む生物たち(バロサウルス・亀・鳥)を観察できる。おもしろいのはこの時「視点を選べる」という点で、基本は神様の視点とでもいうべき第三者視点だが、各動物の目線に切り替えることで「鳥から見たバロサウルス」「亀から見た鳥」など、様々なアングルを選べる。
      • だが、バロサウルスと鳥類が同じ場所に生息していたことは無い。

総評

総括するならば「博物館の体験展示」に近い作品。自分の操作で古代生物を観察・操作していくことで当時の地球のありようが直感的に分かるというゲーム構成は、当時はなかなか珍しいものだった。原作の映像もわずかながら入っているので、知識の理解につなげるという面では概ね成功しているといえる。
しかしながらこの作品は継続してプレイされることを前提としておらず、せっかくの分かりやすいミニゲームにもゲーム性が大きく欠けてしまうことに。かといってデータベースソフトのような手軽さやノベルゲームのような作品性もないため、「1回やればもういいや」という結論になってしまいやすい。ゲーム部分がもう少し練られていれば良かったのだが…


余談

  • 本作品で解説されている生物史の知識のかなりの部分は、現在から見ると過去の学説になってしまっている*2。まあ古生物学は年単位で定説が変わる分野なので仕方ないのだが。
  • なんとこのゲーム、『ライフスケイプ2 ボディバイオニクス』という続編がある。こちらのモチーフは同じくNHKスペシャルの「驚異の小宇宙 人体」。ゲーム部分以外にCGを使った臓器の解説映像があるのも一緒*3だが、ゲーム部分は本作とはうって変わって「ナノマシンを操縦して体内に侵入したウイルスを撃破する」というシューティングゲームとなった。NHKつながりで「救命戦士ナノセイバー」を思い出す人もいるだろう。
    • なお臓器についての定説はそう簡単には変わらないため、臓器の解説については、概ね現在でも十分通用する知識を得られる。

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最終更新:2021年11月07日 21:25

*1 特に第四集「花に追われた恐竜」の内容の荒唐無稽っぷりは今でも恐竜マニアの間では語り草。

*2 ネクトカリスのように、復元図が完全に別物になってしまったものもいる。

*3 ちなみに解説映像のナレーションは井上喜久子。