北斗の拳5 天魔流星伝 哀★絶章

【ほくとのけんふぁいぶ てんまりゅうせいでん あいぜっしょう】

ジャンル ロールプレイング
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売元 東映動画
開発元 ショウエイシステム
発売日 1992年7月10日
価格 8,900円(税抜)
判定 シリーズファンから不評
備考 タイトルの『★』は小さい「★」フォント
ポイント 「北斗神拳伝承者 ケンシロウは しんだ。」
原作ファンぶち切れの混沌パラレルストーリー
「いのちがしくば どけ!」「どけぬ!」
北斗の拳シリーズリンク


概要

東映(とショウエイシステム)の『北斗の拳』シリーズ第5弾にして、北斗の拳RPG第3弾。
脚本は前作『4』に引き続き戸田博史氏。
この人物は、アニメ版『北斗の拳』及び『北斗の拳2』合わせて全152話中97話の脚本を書いたメインライターである。

つまり『北斗』という作品のことを知り尽くした人物であるのだが…出来上がったのは、そうとは思えない程の原作無視が飛び交う代物だった。


特徴

  • 原作無視のパラレルシナリオ
    • キャラ設定や時系列も大きく変えられており、原作のキャラは登場するものの、原作の面影はまったくといっていいほどないシナリオとなっている。
    • 一例をあげると、ストーリー開始時点が199X年ではなく2001年。ユリアが生存しサザンクロスに捕らえられている状態(つまり原作開始前)で、リンが成長した状態だったりアスカやアイン(かなり年月の経過した2部キャラ)がいるようなシナリオである。
    • 敵はオリジナルの『魔皇帝』
      • ゲーム開始直後から登場し、大音量のボイス付きで笑う。しかもこの魔皇帝、何と魔族である。
+ 重要ネタバレ注意
  • ちなみに魔皇帝の封印を解いたのはユリア
    • ただまぁ優しすぎたが故のあやまちなので、ユリアらしいと言えばユリアらしい。
  • キャラクターの設定・性格・言動も原作から変えられている。
    • レイは序盤で仮面舞踏会のようなささやかな仮面を着けて「赤いイナズマ」というレジスタンス部隊のリーダー・イナズマとして登場する。
      • なお、何が「赤い」なのかは不明。レイ自身はむしろ青い
    • サウザーは原作の体質や構えが再現されていない。(空手の様な構えで天翔十字鳳ではない)
    • シンはユリアが死んだショックで酒に溺れ、サザンクロスをハートに乗っ取られている
    • ハートは「血さえ見なければ人格者」という設定はなく、最初からバーサク仕様になっている。
      • 主人公たちは一言も話していないのに「今私のことをデブと言ったな!殺してやる!」と発言する*1
    • ジュウザは美女を侍らせるただのスケベな男になっている。
      • 原作でも女性を追い回すシーンはあったものの、そちらは自暴自棄による現実逃避である*2
  • 他にもツッコミどころのある展開が多い
    • リハクシチーで川を越えた先に向かう際、橋がなくて困った状況でリハクが提示した方法は人間が橋になって主人公一行はそれに乗って渡るという爆笑モノの方法。それはどちらかと言うと『魁!!男塾』のノリではないだろうか*3このリハクの目をもってしても
      • しかも断崖絶壁等ではなく、川の中に入り整列した人間の頭の上を通っていく。歩いて渡れるだろとか言ってはいけないのだろう。ついでにしばらくすると橋が架かっており、町の人に言わせると「あっという間に橋を架けてしまった」らしい。
    • 挙句の果てに「橋を爆破したのはお前だな! お前が橋になっていろ!」という台詞もある。
    • ガルダックという塔の扉を開ける呪文が「ペペロペロ」。本作でも突っ込みどころとして名高い。
      • おそらくこれは、東映動画のシンボルキャラである長靴ネコ「ペロ」の事を指していると思われる。その証拠に塔の前に意味も無くネコがウロウロしている。このネタも前作からの流用なのだが、そんな小ネタより先に(ry 。
  • マップ上の移動では、主人公一行は一列に並んで歩くのではなく、四方に分かれて歩く。
    • 狭い場所だと引っ込んだりとドラクエの馬車移動時のフォーメーションに近いが、歩きモーションがちょこまかしてるのも手伝って妙にシュール。

問題点

  • パラレルとはいえやりすぎた点が多い
    • 原作にもデビルリバースのような化物と言いたくなるような登場人物も出ているとはいえ、生物学的には普通の人間しかおらず、いきなり魔族が出てくる世界観には面食らった原作ファンも多い。
      • 一応、原作に「魔界」という用語はあるが、「北斗琉拳の憎しみの境地」という意味であり、「人外の種族が住み着いている世界」などという設定は存在しない。
    • 前述・後述の通りぞんざいな扱いを受けているキャラも多く、当然原作ファンの抵抗は強い。いくら世紀末・パラレル展開とはいえ、もっとマシな方法があるだろう。
  • 原作の主要キャラが情けない展開で犬死にする
    • 原作主人公のケンシロウはいきなり冒頭で岩に潰されてしまい、「北斗神拳伝承者 ケンシロウは しんだ。」と死亡扱いされる。
      • 実際は死んでおらず、物語中盤で復活する。ただ魔皇帝によって封印されたりしていたため、危うく死にかけたのはガチなようだ。
      • 「ゲーム主人公(後述)を目立たせる為に原作主人公を途中まで出さない」というのは原作ありきのゲームでは常套手段だが、原作で岩壁や石柱を拳でたやすく叩き壊し、大岩程度なら軽く持ち上げられる*4キャラを岩で押しつぶす展開は流石に無理がある。
        前作でもケンシロウが終盤まで登場しなかったものの、ありえないとは言い切れない展開となっていたために落差が大きい。
      • ただ、原作開始前(ケンシロウがシンに敗れてユリアが攫われた直後)と思える状況を考慮すると、シンにやられた心身の傷が治りきっていない状態であった可能性もあるが…。
    • 原作ではリンやルイ等を助ける為に命がけで岩盤を砕いたアインは、序盤の洞窟で道を塞ぐ岩を壊した後、砕いた岩が主人公たちに当たりそうになったのをかばって死ぬ。雑にも程がある。
    • ケンシロウを聖帝軍の追っ手から逃がすため、ダイナマイトを握ってケンシロウに微笑みかけながら自爆する…という壮絶な最後を遂げたシュウの息子・シバは、主人公たちに地雷原を突破させる為に突っ込んで死ぬ(しかもシュウの目の前で)。
      こちらはある意味原作をなぞっていると言えなくもないのだが、原作での綿密な描写を持ったシバの壮絶な最後とは比べるべくもない。
    • 原作の強敵でもある人気キャラ・サウザーは「既に余命いくばくもない」という余計な設定が付加された為に、ケンシロウ復活への際にエネルギーを使い果たして死ぬ
      同じ敵キャラでもシンやユダ、ラオウなどの宿敵達が生存し最後までともに戦ってくれて、カイオウにしても途中で助太刀してくれる中でこの扱いの差は…。
      • 一応、トキも封印を解いた後でケンシロウを目覚めさせる為に死んでしまうのだが、彼はプレイヤーキャラとして使用可能。だがサウザーは使うこともできない。
    • 原作ではケンシロウに並ぶ「もう一人の主人公」であるバットに至っては、登場したと思ったら障害に特攻して死んでしまう。
      しかも死ぬ間際のセリフは原作最終巻を意識したものとなっている。思い出ブレイクにもほどがある…。
      • ちなみに、バットはリンに想いを寄せているらしいが、肝心のリンの口からはバットの「バ」の字も出ない。
    • 本編ならばまず味方につかないと思われるカイオウも、魔皇帝との戦いで助太刀してくれて命と引き換えに撃破してくれる。
      …のだが実はこの魔皇帝は影武者。つまり完全な無駄死にであり、本人も「こんな形で死ぬとは」と言っているのが更に涙を誘う。
      • 一応この魔皇帝の影武者は主人公パーティを一蹴出来る程の力を持つので、今作のカイオウがヘタレているという訳ではないが。
  • 主人公をPTから外すことが出来ない。
    • 天帝の血を引く主人公が北斗キャラ達と一緒に戦っていくというコンセプトである以上、仕方が無い一面はあるが、それでも「これだけキャラがいるんだから、原作キャラ4人でPTを組みたい」というプレイヤーは多かった。
  • 作中の時系列がおかしい
+ ネタバレ注意
  • ゲーム開始時の主人公はなんと物語の中盤で戦死し、主人公の息子が新主人公となるという『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』のようなシナリオ展開を見せる。
    • それ自体はともかく、「冒頭シーンではお腹に子供がいる状態のヒロインとの結婚式」、「中盤で捕まっていた息子を救出」(既に小学生程度のような描写)、「主人公が死亡し、その力を受け継ぎ息子が旅立つ」(戦闘グラフィックはどう見ても青年)と、作中かなりの年月が経っていると思われるのに対し、作中で時間経過の描写がない
      • せめてボス撃破タイミング等で年月の経過を表示していればまだ分かりやすいが、そういった描写がない為、主人公の息子(及び、一緒に捕まっていた同世代の子)だけが異様に急成長しているようにしか見えない。
      • 加えて、そういった時間の流れが主人公周り以外では一切考慮されておらず、初期の村人等はイベント終了段階で放置されている為、アインの娘アスカ等はどの段階でも子供のまま。その為、余計に時間経過していないように見える。
  • ヒロインについても年齢設定がおかしい。
    • 息子の救出時(前述のとおり少なくとも4~5年は経っている)に語られるヒロインの過去話として、「母(ヒロイン)は十数年前に生まれた魔皇帝の娘」という事実が明らかになる。
      • 息子の年齢を少なく見積もり、十数年というのを大雑把に言ったとみて多めに見積もっても、産んだのは十代前半、下手をすると一桁になってしまう。いくら世紀末だからってそれは駄目だろう。詳細を書くと任天堂からストップをかけられかねない。
      • 二十数年前のミス(これなら違和感はない)の可能性もあるが、戸田博史氏は他のゲームでも時系列という物を分かっていないシナリオを書いているので、時系列を考えずにシナリオを書き、初期の結婚時点の年齢しか考えていなかった可能性も高い。
    • また、ヒロインの年齢からして、魔皇帝は少なくともゲーム本編が始まる10数年以上前には封印を解かれていたことになる。何故それまで何もせずにいたのか、説明は一切なし。
  • 一部グラフィックの問題
    • 荒野などは問題ないのだが、一部におかしな背景が存在する。
      • 例として、サウザーとの戦闘では、玉座から延びる絨毯が、遠近法が考えられておらず画面真下まで長方形の形で続いている等。
    • 一部操作キャラの服の色が、移動画面と戦闘画面で異なる。着替えてんのか?
  • アイテムが1人につき7つまでしか持てない
    • そのうち4つは装備品で埋まってしまうのでしっかり装備を整えると実質3つ分しかない。さらにキーアイテムも加わってくるのですぐに満杯になってしまう
    • 街にアイテム預り所があるのでそこに預けることができるが、元々持てる数が少ないため頻繁に行き来する事になるので、やはり不便。
  • 誤字も多い
    • たとえば「百裂拳」→「百拳」、「いのちがおしくば」→「いのちがしくば」、「川を渡るには水蜘蛛が必要だ」→「川を渡るには水雲*5が必要だ」、「ジュウザ」→「ジュザ」、「天にましますわれらの神よ」→「天にしますわれらの神よ」、「シティ」→「シチー」、「道づれ」→「道れ」、「馬のひづめ」→「馬のひめ」などなど。
      • 基本的に名称の間違いはそれで統一されているのだが、ジュウザは何故か加入すると正しく「ジュザ」になる。開発者の間で連携も取れていなかったようだ。
    • 西の橋を渡った先で待ってる」と情報を渡されたのに、橋があるのは東
      • 敵の罠(嫌がらせ)の可能性もなくはないが、シナリオの雑さからして単純なミスだろう。
  • 「リセットぼたんを押しながら電源を切ってください」
    • ゲーム中断時のメッセージで他のゲームでもよく見かけるが、これはファミコンソフトの場合の方法でスーパーファミコンの今作では逆効果である
      • FCはバッテリーバックアップによるセーブを考慮しておらず、電源を落とした時の電圧変化によるノイズでセーブデータ破損を防ぐため「リセットボタンでCPUを止め」「物理的にノイズを出せないようにして電源を切る」という手間が必要だった。SFCは最初から保護回路が付いており、逆にリセットボタンを押すとこれが働かないことがあるのでそのまま切った方がよい*6
      • 余談だが『摩訶摩訶』でもゲーム中断時に同じメッセージが表示される。

評価点

  • パラレル設定を活かした点もある
    • ラオウやカイオウ、ユダなど、原作では仲間になり得ないキャラクターが仲間になる。
    • また殆どのキャラが情けない姿を晒す中、シュウやユダに関しては原作以上の活躍をしている。
      • 特にユダは死神三兄弟に捕えられたレイを取り戻すため、裏切りに裏切りを重ねて主人公達に加勢するという、なかなかおいしい役を買っている。
    • ラストではパーティを自由に組み替えることができる(正確には奥義で仲間の闘気を引き連れているという設定)。
  • BGM
    • 『北斗』シリーズの例に漏れず、音楽もなかなかの名曲ぞろい。
      • 作曲担当者は一連の北斗シリーズと同じくJAYWALKの知久光康氏。
  • 演出面
    • RPGとしての演出面は頑張っている点もある。技などは非常に豊富。
    • 前述した魔皇帝の笑い声を初めとして、技を撃つと「あーたたたたた!」といった掛け声とモーションが入り、敵を倒すと「あーべっし!」など断末魔の叫びを上げながら爆発する等、ボイスや演出にもこだわりが見える。
      • もちろん複数の敵を一気に倒すと、倒した敵の数だけ叫びまくってくれるため爽快感を味わうことができる。この時期のSFCソフト、それもRPGでボイス入りはなかなか珍しい。

総評

物語は漫画の本筋とはほぼ関係ないパラレルなオリジナル話であるが、それをさしおいても、かの有名な「ケンシロウはしんだ」から始まるストーリーは原作ファンからすればツッコミどころ満載である。また、キャラゲーらしく原作やキャラを知っている事が前提でシナリオが展開されていくので、北斗の拳を知らない人からしても、何がなんだか分からなくなる可能性は高い。
原作への愛が深いファンほど受けたショックは大きく、シナリオ面においてはクソゲーであると言われても反論できないレベルで酷い代物といっても過言ではないだろう。

一方で上述した通り、敵の断末魔など光る部分も確かにあり、RPGとしての出来としてはやや単調ではあるものの、目立ったバグや不具合があるわけではなく戦闘バランスが崩れているわけでもないので、それほどひどいゲームではない。
あくまで『北斗の拳』を題材にした全く別のゲームとして見るべきだろう。


その後の展開

  • この後格闘ゲームの『6』と『7』が存在する。RPGとしては『5』が最終作品。

余談

  • 戸田博史氏が脚本を書いたバンプレスト版『北斗』では、原作終了後のストーリーにもかかわらずトキやリュウケンや黒夜叉が生きていたりする。また、黒夜叉は同じく原作終了後のストーリーである『4』でも生きていた。そして今作『5』でも、当然のように仲間キャラの一員として登場している。
    • 戸田氏は黒夜叉が死ぬ回の脚本担当ではないことから、「脚本を書けなかったのが心残りだったのか」と一部でネタにされている。ちなみにRPGではないが『6』の使用キャラにもなぜか黒夜叉がいるため、戸田氏というより東映上層部の趣味なのかもしれない。
    • 本作で扱いの悪いアインに対しても、アインが死ぬ回の脚本の担当でもなかったため、「そちらは別に心残りではなかったのだろう」と邪推されている。
  • ドアを開ける時の効果音が 「ドガァ!!」 と、まるで殴るか蹴るかしてぶち破ったのかと思うほど低く重いため、つっこみどころのひとつとして挙げられることがある。
  • 戦闘シーン、キャラクターの立ちポーズや動きが『摩訶摩訶』にそっくり。
    • 同じショウエイシステムが関わっているためと思われる(ちなみにシナリオ・BGM担当者も同じ)。
+ プレイ動画(part1のみ)。魔皇帝の笑い声や場違いな効果音などが確認できる。

添付ファイル

*1 原作だと登場前にケンシロウに「ブタを飼っているのか」と言われて、「ブヒ、ブヒヒ」とブタの鳴き真似をしながら現れるというノリの良い人物であった。ちなみに修羅の国編にはデブ・ブタ扱いを嫌い、相手に言いがかりをつけて殺そうとするギョウコという別のデブキャラが存在する為、ギョウコと混同した可能性がある。

*2 むしろ本当のジュウザはユリアのためならば命を賭してラオウの足止めを引き受ける(しかもこの時点でのユリアの目的はケンシロウに会うことだった)ように、愛する女性に対しての一途な思いはとても深い人物である。

*3 因みに戸田氏はアニメ版『魁!!男塾』の脚本も担当していた。

*4 公式ファンブックでは「ケンシロウは100tの岩をも持ち上げられる」と記述されている。実際、原作漫画作中でもユダのダム決壊による水流を止めるべくケンシロウの身長のおよそ3倍近い大きさの大岩を持ち上げていたシーンがあり、形状にもよるが実際に100tくらいある可能性が高い。

*5 ちなみにこの漢字だと『みずぐも』ではなく『もずく』という読み方になってしまう。

*6 他作品だがドラゴンクエストシリーズの取扱説明書では電源を切る際、FCハードの3と4では「リセットボタンを押す」説明があるのに対し、SFCハードの5・6では「絶対にリセットボタンを押すな」とわざわざ説明があるほど。