ポポロクロイス 月の掟の冒険

【ぽぽろくろいす つきのおきてのぼうけん】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション2
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 ジーアーティスツ
発売日 2004年3月18日
定価 5,800円(税別)
レーティング CERO:全年齢
判定 ゲームバランスが不安定
シリーズファンから不評
ポイント 極悪な難易度
異常なほどのロードの長さ
2Dピエトロ時代がよかった
ポポロクロイス物語シリーズリンク


概要

プレイステーションで発売し人気を博したRPG『ポポロクロイス物語』シリーズの5作目。
ハードをPS2に移した前作『ポポロクロイス はじまりの冒険』では、3Dグラフィックを採用したことなどからシリーズファンからは不満も出たが、今作でもその仕様を引き継いだ。

しかし、肝心のシステム面での問題が依然として多く、ファンの不評を買った。


問題点

全体的に前作で悪かった部分があまり改善されていないばかりかひどくなったものもあり、新たな問題も出てきている。

輪をかけて長いロード

  • 前作でもロードの長さが問題になったが、今作では更に長くなった。
    • HDDインストールも不可能になってしまった。
    • メニューを開くだけで画面が一時停止し、「フリーズしたの?」というほどのロードが入る。
    • 長いロードを耐えて城を出ると、誰も人物が表示されず、数秒経つとスーッと浮かび上がってくる。
  • ロードが長くなりすぎるために一部のイベントを削ったらしいが、それでも長い。

システム関連

  • システムが相変わらず悪い。よく上げられるものとして、スキルというシステムがある。
    • レベルが1上がるごとにスキルポイントを1入手可能。それを特技に振り分けるか、能力上昇に振り分けるかをメニューで自由に選べる。
      • 特技の数は一人8つほどで技によって最大5~10ポイント程度、能力は全7ステータスにそれぞれ9ポイントずつ割り振れる。
      • 一見すると自由度が高いように見えるのだが、レベルアップによる技の習得が一切ない本作では特に序盤は強力な技を優先的に覚えなければならない。このキャラは打たれ弱いからHPに…、このキャラは足が遅いから素早さに…といきなりステータスに振ってしまうと、強い技が覚えられない→素早く敵を倒せない→金や経験値のボーナスを得られる量が少なくなるためキャラクターの強化が遅くなる、というスパイラルに陥ってしまう。
      • 初プレイではむろんそんなセオリーなど分からない。再振分けができないため一度失敗すると詰みやすい。
    • その他にも、オプションの変更が保存されない(一旦終了してプレイを再開すると初期設定に戻っている)、武器や防具の購入時に装備後の能力値が表示されない、複数のアイテムをまとめて売買することができない、など些細だが難あり。
  • フリックと呼ばれる新要素。
    • アイテムや配置されたブロックを弾き飛ばして宝箱を入手したり、仕掛けを解いて先に進めるようにできる。
    • しかしこの要素も、キャラクターごとに異なる軌道や力加減の難しさといった難易度の高さや煩雑さから、何度やってもクリアできずにあきらめるプレイヤーが続出。
    • ダンジョンでは必ず使うことになるため、出来ないと先に進めない。
    • ギミックによってはマップを出入りしないと復活しないため、やり直しが非常に面倒。
    • 宝箱を開ける際にも使うことがある。あきらめても問題はないが、目の前にある宝箱が入手できないというのはあまり気分のいいものではない。
      また各キャラクターの最強装備は宝箱に入っており、その中にはフリックが必須なものもある(しかもけっこう難しい)。
    • フリックを行うときは、ボタン長押しで力を貯め、離すと弾き飛ばすといった動作が必要なのだが、配置されたブロックを長い距離移動させなくてはならないギミックの場合、いちいち貯めて飛ばすを繰り返さなくてはいけないため、非常に面倒。

戦闘関連

  • 前作は難易度が低かったが、今作は格段に難易度が上がっており、序盤からレベル上げを強制される。テンポが悪い。レベルの上がりも遅いためテンポの悪さに拍車がかかっている。
    • ゲーム開始直後に登場する(初期のレベル1の状態で戦う事になる)敵からして強く、回復を少しでも怠ればあっさり全滅する。過去のポポロクロイス作品と比較すると、難易度の差は一目瞭然。
    • 敵は状態異常技を早い時点で使いはじめる。しかも積極的に使う。さらに攻撃力も高く、HP200前後なのに一回の攻撃で50以上など。
    • こちらも特技や能力減少、状態異常を駆使して倒さないといけないが、その技がそろうのは中盤以降。
    • スキル振りをうまくしてようやく対等に戦えるレベルになる。スキル振りを失敗した場合は相当レベルを上げないといけない。
    • さらに、敵はストーリーが少し進むと極端に強くなる。今いるダンジョンで苦戦しているようでは、次のダンジョンに行ったときに詰むほど。
      • 平原からマップすら切り替わらない渓谷につながる橋を渡るとそこは地獄である。
    • 詰まなかった場合でも、スキル振りを失敗したりレベルを上げていない場合は回復ポイントに張り付いて、1回戦うごとに回復を繰り返す必要がある難易度。
    • 一応、エンカウント率を下げるアイテムがあるのだが、高額な上、効果の持続が視覚的に確認できなかったり、そもそも効果が眉唾ものであるため、ほとんど役に立たない。
  • 戦闘を早く終わらせると経験値が増加したりアイテムがもらえるというボーナスがあるが、敵が強すぎるためボーナスを得るのが難しい。
    • 敵はこちらの戦闘メンバー(最大3人)が増えると1度に出現する数が増えていく。しかし、戦闘ボーナスの受付時間は同じなのでボーナスがどんどん得られなくなっていく。
    • なお、お金やドロップアイテムはボーナスを取らなくては入手できないため、敵の強さも相まってアイテムや装備が不足しやすく、長いダンジョン攻略は苦行じみている。
    • ただでさえ得られるものが少ないというのに、よけいに厳しい戦いを強いられることに。
  • 使用できるキャラは6人となったものの、そのすべてを使わないと事実上クリアできない仕様。戦闘参加メンバーにしか経験値が入らないため、レベル上げも大変。
    • 途中で一部のキャラしか使用できなくなったりすることもある。前振りがないため詰みやすい。
    • さらにラスボス前には強制6人使用のボス戦がある(3人ずつにパーティを分けて各パーティごとに戦う)。これまた前振りがないため、ひとりでも育てていないキャラがいれば詰みとなる。
    • まったくヒントがないわけではない(一応序盤でアイテムにてレベルを全員そろえた方がいいというものがある)ものの、気がつきにくいため不親切。
  • ステータス上昇・下降の効果がわかりづらい
    • 他のRPG同様、戦闘中にアイテムや魔法、武器の追加効果などによって攻撃力などのステータスを上げたり下げたり出来るが、体力ゲージの横にアイコンが付いたり、キャラにエフェクトが付くなど、見た目でかかっていることがわからない。
    • ステータスの上昇・下降は、ステータス異常と同じく時間で効果が切れる。防御力アップがかかっているのでギリギリ大丈夫…と思いきや、すでに効果が切れていて大ダメージを受けて倒れる…といったこともある。
  • キャラ間の性能格差も見過ごせないものがあり、調整面でも厳しい面が目立つ。
    • 今作の戦闘システムは従来のポポロクロイスシリーズ作品と同様、素早さが高いキャラクターほど早く行動でき、その分だけ行動順もより回転しやすくなるシステム。
    • しかしながら、今作はここまででも記述している通り登場する敵が全体的に強いため、敵に先手を取られるだけでも一気に劣勢をつけられる事も少なくない。
    • その上、今作の素早さは行動順だけでなく、攻撃の命中率と回避率にも影響しており、素早さに差をつければつけるほど攻撃を命中(回避)させやすくなる。上から殴れる側により優勢をつける要素であり、素早さゲーにさらに拍車をかけている*1
    • 結果、素早さの高さ(低さ)がそのままキャラの使い勝手に反映されるような構図を生み出してしまっており、キャラクター性が根っからのパワータイプであるマルコなどはかなり悲惨な立ち位置である*2

その他問題点

  • グラフィック劣化。ムービーでのモーションが硬く、不自然になり、口パクもセリフごとに合わせていたのに、今作はただパクパクするだけという表現の劣化も問題に。
  • 全体的なテンポの悪さ
    • 先に述べた非常に長いロードに加え、妙な間が空くなどムービーのテンポ自体も悪い。
    • また、必要がないような場面でムービーに入ることもあり、そのたびにロードが入ることもあって非常に野暮ったい。
  • 全体的な難易度の上昇。考えてやってほしいということで難易度を上げたらしいが、1のように評価されることはなかった。やればいいってもんじゃない。
  • 前述のシステムのせいで戦闘で必ずお金やアイテムを入手できる訳ではないのに、全体的に装備の値段が高くすべてそろえる前にお金がなくなる。まともに回復アイテムすら買うことが不可能。難易度の上昇に拍車をかけてしまっている。
    • 装備を一新していないので敵が倒せない → お金が手に入らないので装備が買えない → 装備を一新していないので…という悪循環が生まれてしまう。
    • さらにクリア後にムービーをみられる「アルバムモード」がある。装備を変えることも可能だが、クリア時に持っていた装備のみ変えられるという仕様。設定画どおりの初期装備すら、持っていなければ見られない。
      • 先に述べたように資金がなかなか手にはいらないため、初見プレイでは使わない装備を売ってしまうことが多く、クリア後にこの仕様を知って泣きを見たものも少なくはあるまい…。
      • ちなみに周回要素などはない。クリアしたデータはクリアデータとして残りロードすることも可能だが、上書きセーブするとクリアデータフラグが消滅するので再度エンディングを迎えるまでアルバムモードで選択出来なくなる。また、何度も述べている通り慢性的な資金難を抱えることになるこのゲームで装備品を残してプレイすることは、無理ではないが苦行じみている。
      • 一応、最終章でこれまでショップに並んでいた装備に加えて初期装備が再販売されるため、最終装備以外であれば手持ちになくとも回収することはできる。
  • 一本道
    • 冒険の規模もダンジョンの数も増えたには増えたが、シナリオ上後戻りは出来ず、ほとんどのダンジョンはシナリオを進めると戻れない。
  • アイテムを買わないと深まらない世界設定への理解
    • 旅先の店や、ダンジョン内に隠れているモンスターから買える「仙人の書」というアイテムを使うことで、システムの解説や世界設定が見られ、中には重要な設定ながら、ここでしか語られないものもある。
    • しかし、先に述べたように常に資金難に陥るため、世界観をもっと知りたくても買っている余裕が無い。
    • また、場所によって売っているものが違い、一度クリアすると二度と来られないダンジョンや町もあるため、あとで買いに戻るといったことも難しい。
  • キャラクター設定の変化
    • ヒロインのルナは前作では「海人」と自称し、鍵がなくては姿が見えなくなってしまうと言っていたが、今作では普通に誰の目にも見えており、「海の妖精族」という設定になっている。
      • 一応、世界設定としては、妖精は特定の場所にしか居ないだけで、姿は誰にでも見える。
    • 前作からのパーティキャラであるマルコは、前作ではガキ大将のような乱暴な性格ながら、面倒見の良さも見せており、ピノンとルナを助けたり、少しずれた2人のツッコミ役も果たしていたのだが、今作では知らない言葉が出てきては「美味いのか?」「食えるのか?」と質問したり、食に関しての意地汚さや子供っぽさが強調され、声を担当した高木渉氏の演技の変化*3も相まって別人のようになっている。
      • 今作では新たに新キャラクターのモンバがパーティキャラとして登場しており、それに伴ってキャラクター性の差別化を図った部分があったのかもしれない。

評価点

  • ストーリーは相も変わらず評価されている。
    • ただ、このシリーズには珍しく、EDで全て解決とは行かず、若干後味が悪いため賛否両論ではあるが。
    • 2でも出てきたピエトロの妹:エレナや、2での扱いが悪かったガミガミ魔王が仲間になったことには多くのファンから好意的に評価された。
    • エレナはピノン同様「風の刃」をピエトロから受け継いでいるだけでなく、ナルシアの代名詞ともいえる大技「ホーリーバースト」も使用できるなど、ファンサービスの要素も多数盛り込んでの登場。
    • ガミガミ魔王は復活参戦に伴い、お手製のダンジョンが再登場。3D作品となり、ピエトロ世代とはまた違った趣きの作りとなっており、ファン懐かしの「四畳半」もしっかり再現。
  • ボリュームが増えた。使えるキャラが6人になり、ストーリーも前作より長く、冒険の規模も大きくなった。
  • 戦闘BGMはポポロ作品の中でもかなり豊富。曲の総数は初代にも引けをとらない。
  • 装備品の種類が格段に増えた。
    • 立ち寄った町や、船、ダンジョン内のモンスターから買えるものの他、特定のモンスターが落とすアイテムとトレードして手に入るものなど、豊富。
    • そして、前述のとおりすべての装備品がグラフィックに反映される。
    • しかし、トレードについては対策無しだとドロップアイテムが非常に取りにくい上、要求される数が非常に多い。更にアイテムを落とすモンスターはタフな上に逃走率も高い為非常に倒しにくく、すべて集めるには根気が必要。
      • トレードで入手できる装備はショップでお金で売られているものより優秀なものが揃っていることが多く、その時々で入手できればその過程で蓄積した経験値・お金・アイテムと合わせて後々のプレイにいくらか余裕を持たせられる。
      • もっとも、この行為自体がテンポを悪さに拍車をかけている感は否めない上、敵が強くなるスピードが早くその余裕も長続きしないので結局油断はできないのだが…。
  • 装備品がゲーム上のグラフィックに反映される。中にはきぐるみや旧作キャラのコスプレ、メイド服(!)まで。
    • なおエレナのチャイナ服は、CERO的な意味で色々と苦労したようである。
  • ゲーム全体の難易度の高さ故か、システム的に配慮されている面もあり、一部のボスとの戦闘では開始前にパーティや装備の調整、スキルの振り分け、アイテムによる回復などの準備が可能。初見プレイで起きがちな「十分な用意でないままボス戦の場面に突入してしまった」という状況を回避できるようになっている。
  • ED曲であるLocal Busの『桜見丘』は非常に評価が高い。

総評

難易度の高さを鑑みて配慮されている部分はあるものの、前作で悪かった部分が大きく改善されているわけでもなく、良かった部分が前作以上に減少してしまったことで、ファンからの評価を著しく落としてしまった。
ストーリーそのものは旧作と変わらず評価はよいだけに、グラフィックが変わってもシステム周りの作りがしっかり改良されてさえいれば、作品全体の評価もよいものになっていただろうが、結果的に「やはり2Dでなければだめだ」といわれることとなってしまった。



余談

  • 発売前にアニメ版が放送されており、オリジナルキャラがいたりするほど。ストーリーだけをみたいならばそれを見て楽しむのがよいだろう。
    • アニメで本編ストーリーの大半と結末までが確認できる。
      • 裏を返せばこれにより数少ない「良い点」のうまみが更に落ち込んでしまったわけだが……。
  • この後PSPでピエトロ世代の移植が発表され、期待度は高まった。
  • 原作者である田森氏がブログで「 春にはなんらかの動きがあると思いますが… 」と発言。これが新作なのか、旧作のアーカイブスなのか定かではないが、今後に期待したい……と、されていた。その願いがかなったのか、2015年に『牧場物語シリーズ』とのコラボレーションで『ポポロクロイス牧場物語』がリリースされた。こちらはRPGとしてはともかく、ポポロとしては評価が高い。
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  • ポポロクロイス物語

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最終更新:2023年05月22日 18:59

*1 攻撃を回避するとダメージは0になるため、ゲームバランスとして見た場合「防御力が高いが素早さが低く、攻撃を受ける」パワータイプよりも、「防御力は低いが素早さが高い分、攻撃を回避できる」スピードタイプの方が有利な場面が多くなってしまうのである

*2 今作のマルコにもHPや攻撃力が高いなどキャラの個性に見合った強みはあるが、悉くシステムと噛み合っていない上、一見似たような性能だが相手全体の素早さを下げる技を習得でき、敵の妨害に重要な影響力を持つモンバ、スピードタイプ寄りだが火力も高いピノンなど競合する相手が強いことも一因となっている

*3 ちなみに、高木氏は初回特典DVDにてこの時喉を潰していたと語っている。