RPGツクール

【あーるぴーじーつくーる】

ジャンル コンストラクション
対応機種 プレイステーション2
発売元 エンターブレイン
開発元 Runtime
発売日 2004年12月16日
定価 7,140円
判定 クソゲー
ポイント ツクール初の頭身の高い3DRPG製作ゲーム
簡単には作れるが、制作自由度は大幅ダウン
クセの強すぎる洋ゲーグラフィック
主人公素材が頭頂ハゲに見えるオッサン
製作時間よりも長いロード地獄
独特のオサレ文字入力システムがストレス
素直に褒められるのはBGMだけ
ツクールシリーズリンク


概要

RPGツクールシリーズ初の無印タイトルである。
RPGツクールを冠する1作目はPC98の『RPGツクールDante98』、コンシューマーのツクールシリーズ1作目は『RPGツクール SUPER DANTE』であり、サブタイトルが付いていた。
本作はSFC版の初代と区別するために「PS2版」「無印」「オールドツクール*1」などと呼ばれている。

最大の特徴として、フィールドや街など全画面が3Dとなっている点が挙げられる。また『5』はドラクエ風の作りだがこちらはFF風である。
前作に当たる『RPGツクール5』の反省から制作難易度が引き下げられ、3Dの美麗なグラフィックと戦闘シーンが公開されたことで大いに期待された。
だが、後述する様々な問題点によってその期待は裏切られることとなった。


問題点

自由度の大幅低下

  • 登場人物を100人までしかつくれない。これは主人公などプレイヤーキャラのみならず、町人・イベントキャラ含めて100人*2である。これに加えて容量もそんなに多いわけではない。
    • イベントに関係ないエンカウントモンスターは流石にこれには入らない。
  • 主人公の武器はそのモデリングに合わせたものでないと装備させられない。
    • 例えばシリーズ定番の勇者グラフィックには剣しか装備出来ず、斧などは装備設定してもちゃんと反映出来ないor装備されない。
  • キャラクターのグラフィックデザインが洋ゲーを意識したものが多く、顔が全般的に濃い。
    • シリーズではほぼ毎回そうだとはいえ、パッケージのような正統派主人公のグラフィックは存在すらしない。
    • 顔グラも癖が強く、おまけに歩行グラフィックとデザインや色が合わないものもいる(顔グラフィックの色は変更不可)。ちなみに顔グラフィックという要素自体は『4』から復活したものではある。
    • 主人公・勇者向けに製作されたと思われるグラフィックNo.1は髭を生やしており、どう考えても30代のオッサンにしか見えない。にもかかわらず、サンプルゲーム「太陽の登る街」では学校に通う17歳の少年に設定されている。サバ読みすぎ。
      • 頭が禿げていると言われがちだが、実際は頭頂部は光に照らされて真っ白になっているだけでちゃんともっさりとした髪がある。もっとも髪の毛がテカり過ぎているという時点で雲行きの怪しい毛髪だが。
    • 顔グラフィックのタッチを4種類の中から選べるが、前述の洋ゲー風の濃いタッチ以外もアメコミ調やコメディタッチの下手ウマな絵といった癖の強いものばかり。
      • 動きも全体的にカクカクしており、非常にチープ。モンスターの戦闘モーションも同様に出来が悪い*3
    • また、3Dモデル自体もライティングがおかしく、物によっては妙にテカっており、人を選ぶ独特なグラフィック*4。先の通り主人公もそれが問題視されていた。
  • スキルのムービーのバリエーションが少なく、同じエフェクトの色違いも多い。
    • しかもムービーはすぐに終わる。自由度も何もあったものではない。
  • 大きいモンスターのカラーパターンが少ない。
    • Sサイズのモンスターはきちんと3色用意されているのだが、Mサイズは2色、Lサイズに至っては色の変更自体できない…と、大きくなるにつれてなぜかカラーパターンが1つずつ減っていく。
  • 『4』程の酷さではないが、フィールドマップ1枚あたりの広さはあまり広いとは言えない。
    • と言うのも、実際に主人公が歩けるのはフィールドマップの中心部分のみで、端の方に行こうとすると行き止まりマークが出てそれ以上先に進入出来ない為である。
      • またマップが広大に見える割に主人公の歩行スピードが遅い。ダッシュは出来るのだが、その肝心のダッシュすらそれほど早く移動出来るわけではない。
    • 幸いにもフィールドマップは複数枚作成可能なので、マップ移動などを駆使してそれらを1つの広大なフィールドに見せるといった工夫も出来なくはない。
  • 前述のようにマップは3Dとなっているのだが、マップ製作においてはいくつかの難点もある。
    • 剣山のような急な斜面でテクスチャが伸びる上にそれを普通に上れてしまうため、普通のゲームなら遠回りするような峠を配置しても直線で移動できてしまう。また、本作ではトンネルも作れない。
    • 例外は海だけであるが、それ故に川や湖といったものを作ろうにも水面が海と同じ高さになってしまう。
    • 町などの配置できるオブジェクトはヴィネットのようになっているため、周りの地面が茶色いのに村の周りだけ緑のクッションに乗っているような見た目になることもある。
  • イベントシーン用にストーリーテラーを作れるのだが、自由度が低く演出もショボい。
    • かけられるエフェクトはフェードイン、フェードアウト、画面フラッシュ、色調変更の4つのみ。アイテムグラフィックを表示したりもできるが焼け石に水。
      • 文章をキャラのフキダシのように表示することができるが、そうするとなぜか文字の表示音が「ミョミョミョミョミョ」という間の抜けたものになる。男女で音の高さが違うので、恐らく声の高さを表現したものだと思われるが…。
      • ちなみに、作者名を「ツクール」にすると100個以上の隠し背景が解放されるという裏技がある。最初から使わせろ。

常に付きまとうロード地獄

  • 3D化の弊害からかロードが異常に長く何をするにもロードが必要なロード地獄に陥る。サンプルグラフィックでもロード、建物間を移動するときにも生じるロード、とにかくロードが差し込まれる。しかもNowLoadingというメッセージがいちいち表示される上に一つ一つが長い。
    • と言っても、前作『5』はここまで言われるほどロードで突っ込まれることはなかった。頭身が高いため、情状酌量の余地はあるが…。
    • 戦闘は『4』のようなサイドビュー的なアクティブタイムバトル(以下ATB)方式を採用しているが、ロード地獄とモーションのぎこちなさが重なってテンポがとにかく悪い。
      • まず戦闘に入るにも戦闘終了後にも10秒程度のロードが挟まり、初期のCD-ROM製RPGでも見られない戦闘時のNowLoadingのメッセージまで表示される。
      • 攻撃がヒットした際、ダメージが表示される前にいちいち「Hit」というテロップが表示される。
      • スキルを使った時、ムービーを設定すると、その度少しロードが入るので一瞬映像が止まりさらにテンポが悪くなる。このことから戦闘周りの仕様は快適とは程遠い。
  • 「ロード時間>制作時間」とすら感じるほど製作テンポが悪化。
    • 作品製作中なら多少のロード問題は我慢できるかもしれないが、他人に作品をプレイさせる事を想定すると、この長いロードは意図せずプレイヤーにストレスを与えることになりかねない。
    • たかがロード問題だが、本作に至っては製作者側の工夫で緩和する事がほぼ不可能な事が判明しており、この事が他のツクールで見られる理不尽な仕様を乗り越えてでも完成させるというメリットが本作では皆無な状態であった。
      • 結果ロード問題が要因で制作そのものを中止して見切りを付けてしまう作者が続出し、 このソフトのロード問題は多少のレベルで済むものではない深刻なレベルの問題 となってしまった。

快適とは言い難い文字入力の仕様変更

  • コントローラーでも楽に文字入力できるように文字入力のインターフェイスの仕様が変更されたが、それは歴代最悪と言われる程大幅に劣化している。
    • ありとあらゆる入力が、なぜかフリック入力になっている*5。家庭用ゲームのコントローラーと、小さなタッチパネル向け*6の画面に向いた入力がかみ合うはずがない。
      • では、別売りのUSBキーボードを使おうにもまさかの USBキーボード非対応 (前作『5』は対応)。嫌でもこの面倒くさい文字入力を使わないといけない。
      • 当時としては最先端で、デザイン自体はオシャレかもしれないが、デザインが先行した結果使用環境を考えていないのはどう考えても落ち度。例えば、 千代紙という素材がSNSでもてはやされるからといって、それで水着を作る ようなものである。
    • 慣れれば使いやすいという声もある。ただしアルファベットの文字送りだけはどうしても煩わしさが否めない。

評価点

  • マップ制作は3D設定ながら意外と簡単な構造の元に作られており、それっぽい広大マップが気楽に作れる。
    • 前述の難点もあるため良くも悪くもだが、最近のUnity等のゲーム制作ツールで見られるようなマップも製作できる。
    • 一方で、ダンジョンは自由かつ簡単に製作可能。罠を配置して主人公がそこを通ろうとするとダメージを受けるようにしたり、壁を調べると崩れて隠し通路が出現したりといった仕掛けを盛り込むことも簡単に出来る。
      • 従来作でもイベントで罠などを作ることは可能だったが、本作ではダンジョンエディタ自体に仕掛けを作る機能が搭載されている。
  • 3D自体はデザインを除けばRPG制作ツール用の素材ということを加味すればそれなりのクオリティを持つ。
    • ロード問題を緩和できる事もあって戦闘無しのファンタジー風3D世界お散歩ゲームを作るなら最適なのかもしれない。…根本的解決とは言えないが。
  • BGMはプロの音楽制作会社が手がけたオーケストラ調なので、良曲揃い。
    • だからこそ本作のしょぼい雰囲気に合っていないのが悲しいところである。
      • これは後に『RPGツクールXP』のバリュー版にサンプル素材として再録後、現在では「オールドツクール音楽素材集」としてダウンロード販売しておりPC版ツクール作品で使用する事ができる。
  • サンプルゲームが2つ収録されている。
    • 1つ目「DearBraveHeart」は王道ファンタジー、2つ目「太陽の登る街」は少年少女のコミカルな冒険譚と、内容はしっかり差別化されている。*7
    • ただ前述の通りゲームテンポが壊滅的なので、両方をクリアまで遊ぶプレイヤーがどれだけいるか…。

総評

3Dのゲームが増加傾向にあった時代に、3DのRPGが手軽に作れるというコンセプトを持って生まれた本作だがその出来は、自由度の低さ、操作性、ロードの回数・長さといった、製作作業面のみならず作った作品をプレイさせるためのプレイ環境面でも大きな問題点を抱えていた。
大元のコンセプトを実現するノウハウ不足が徐々に露呈していき、本作は「使えないRPG製作ツール」として認知される。初心者ツクラーはおろか、今まで慣れていたベテランツクラーでさえ、仕様上の問題で製作を断念する作者が続出してしまった。
仕様やバグの問題を掻い潜ればそれなりのものが作れる『4』や、難解だが知識さえあれば市販並の3DRPGが作れる『5』に対し、こちらはゲーム作りという意味においても見所はほとんどない。
結果、ツクラーの間では三度目の正直として『4』『5』の不評を覆すどころか、家庭用ツクール最低のレッテルを貼られ、二度あることは三度あると期待を大きく裏切る形となった。そういう意味で、本作は満を持して出てきてしまった隙のないクソゲーであると言える。



余談

  • 本作の開発元である「Runtime」自体、ほとんど無名の会社である。
    • 家庭用版RPGツクールの開発に定評のあった「空想科学にカムバックして欲しい」と望む声もあったが、当の空想科学は家庭用ゲーム開発から撤退しているため、復帰はもはや望むべくもない。
    • 「Runtime」はツクールシリーズでは本作以外に『3D格闘ツクール2』(PS2)(2002年)を担当している。
    • Runtime(有限会社ランタイム)は元気株式会社から独立したプログラマが2001年に設立。社員の9割がプログラマであり『BLEACH 放たれし野望』『どこでもいっしょ トロと流れ星』などのプログラム部分を担当。その後2006年にマーベラスエンターテイメントの子会社になった。(参考)
  • 「3DタイプのRPGが作れる」というコンセプト自体は需要があったはずだが、前作『5』と続けて不評だったためか*8、以降のRPGツクールシリーズは基本的に見下ろし型2Dタイプとなっており、今後3DタイプのRPGツクールが登場するか否かは不透明な状況となっている。
  • 本作の失敗が祟ってか、家庭版用RPGツクールは、2010年の『RPGツクールDS』まで6年も間が空く事となった。
    • 据え置きゲーム機用のRPGツクールに至っては、2018年の『RPGツクールMV Trinity』まで14年の歳月を要している。
    • なお、本作以降家庭用ゲーム機でRPGツクール以外のツクールシリーズは発売されていない。
  • 洋ゲーを意識したグラフィックから想像できるが、本作は海外版も販売している。海外版のタイトルは「RPG MAKER 3」
    • 前述の「オールドツクール音楽素材集」のフォルダ名が本作の海外版タイトルになっているのはこのため。
      • 日本では、タイトルで混同しないように音楽素材集としての製品名を上記に変更されたものと考えられる。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 2004年
  • PS2
  • エンターブレイン
  • ツクール

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最終更新:2023年11月13日 20:30

*1 本作のBGMが収録されたPC版ツクールで使用できる音楽素材集のタイトルが「オールドツクール音楽素材集」となっている事から

*2 参考までにいうと、このルールで「登場人物100人」というのは初代『ドラゴンクエスト』以下。DQ1はFC版箱裏で「登場人物は、なんと100人以上」と明記。

*3 しかも近接攻撃であってもその場で動くだけ。

*4 モンスターの中には人形だとかそういうデザインというわけでもないのに陶器のような質感の物も。

*5 スティックを倒して文字を選択するのだが、まずスティックを下に倒して「あかさたなはまやらわ」そして「記号」といったように文字の列を選択し、その後でさらにスティックを倒し、表示されたあいうえおでの中で、使いたい文字をスティックを倒して選択するという方式。

*6 ここで指すのは、本当に小さな、携帯電話サイズのもの。iPadクラスだと大抵普通のキーボード入力が使われることからも、この入力形式は入力のしやすさではなく、あくまで文字の可読性と画面スペースを考えて作られたものだと分かる

*7 ちなみに「DearBraveHeart」は経験値の概念が存在せず、装備の変更とイベントでの特技習得によってのみこちらを強化できるという歴代でも珍しいゲームデザインである。

*8 自由度が高すぎて使いこなせないがツール自体は優秀な『5』とは、不評のベクトルもツールの可能性も真逆ではあるが。