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【だうんろーど】

ジャンル シューティング

対応機種 PCエンジン
メディア 4MbitHuカード
発売元 NECアベニュー
開発元 アルファ・システム
発売日 1990年6月22日
定価 6,800円
判定 なし
ポイント ストーリー性重視のシューティング
Huカードの限界? に挑んだビジュアルシーン
シューティングとしてはやや単調で理不尽
ダウンロードシリーズ
ダウンロード / ダウンロード2

概要

当時はアーケードからの移植がメインだったNECアベニューが放った、同社初のPCエンジンオリジナル横シューティング。
ストーリー原案に小説『ハルマゲドン黒書』『一万年の悪夢』などの中島渉氏、漫画『重機甲兵ゼノン』や後の『ドラゴンクエストVI 幻の大地』のコミカライズなどで知られる神崎将臣氏をキャラクターデザインに迎え、近未来を舞台に繰り広げられるハードなSFストーリーを売りとしている。
尚、関連は全く無いものの、中島氏がストーリーを、神崎氏がキャラデザインを担当した作品としては前年にFCで出たADV『星霊狩り』に続いて2作目である。

一人プレイ専用、全6ステージ(ステージによっては幾つかのエリアに分けられている)。 主人公機「モトローダー」を操作して、現実世界と電脳世界を舞台に戦いを繰り広げる。

ストーリー

22世紀目前、世界は経済的に破産した国家に代わり、いくつかの巨大企業によって経営されていた。
これらの企業は"会社"と呼ばれ、高度にシステム化されたコンピュータネットワークを支配し、ある意味で統一された社会を実現させた。
この時代をネオ キャピタリズム(新資本主義)の台頭期と言うが、
一方では人間の脳の情報をニューロメモリに"DOWN LOAD"させ
優れた頭脳をその生物学上の"死"から解放するという技術が実用化した時期でもあることから
サイヴァーリバイブ(電脳蘇生時代)とも呼ばれている。
人類は"DOWN LOAD"によってコンピュータの中での"不老不死"を手に入れたのである。
同時にネットワーク内に意識を移して行動する「サイヴィング」という特殊技能と
それを生業とする「サイバーダイヴァー」という仕事も生まれた。

主人公の「SYD2091」(シド)はSAライセンスを持つサイバーダイヴァーであるが、
とあるサイヴィングの最中に相棒のOHALA(オハラ)を失ってしまう。
一年後、恋人の「DEVA3255」(ディーヴァ)を仲介人として"会社"からのUNITへのサイヴィング依頼が舞い込むも、
直後にディーヴァは逮捕され、シドも主犯として指名手配された。
今回の依頼にまつわる何かがUNITのデータを改竄し、彼らを犯罪者に仕立てたのだ。
シドはディーヴァを救出し、敵の正体を突き止めるべく愛機「モトローダー」を駆って飛び立つ。
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1面 2面 3面 4面 5面 6面
1面/歌舞伎町…無実の罪でポリスに捕らわれた恋人ディーヴァを救い出す。
2面/警察署コンピュータ…ポリスユニットの制御システム内に入り込み、ウィルスプログラムを駆逐する。
3・4面/フジベース…再び捕らわれた恋人ディーヴァを救い出す。
5面/宇宙空間…宇宙ステーションに向かい、制御システムへのジャックインを行う。
6面/NERO内部…一連の騒動の発端となった意識体NEROを破壊する。

主なルール

  • 使用コントローラーは十字キーにて自機の八方向移動。ボタンは各自、ウエポン(ショット)ボタンとサブウエポンボタンに使用する。他にSELECTボタンも使用対象に含まれる。
    • ウエポンボタンで使用回数無制限のメインウエポンを放つ(オート発射)。サブウエポンボタンで使用回数ありのサブウエポンを放つ。
    • SELECTボタンを押すと、自機のスピードを4段階から調整できる。
  • 各ステージを始める前に、自機のメインウエポンとサブウエポンを各一つずつ選び装備する事になる。サブウエポンに関しては搭載ストックがあり、撃つ度にそれが消費され0になると撃てなくなる。以下その詳細。
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メインウエポン系
ビームバルカン
連射可能で攻撃範囲が広いショット。
最大パワー状態では前方拡散型3方向 + 上下1方向づつ + 後方1方向のショットが撃てる。
レーザーキャノン
若干隙があるが貫通力に優れるショット。
最大パワー状態では前方直線型5方向 + 後方1方向のショットが撃てる。
サブウエポン系
チェイサー
単発では強くないが、連射可能で搭載ストックの多い敵弾を消す効果もあるホーミングミサイルを放つ。
クラッシャー
搭載ストックは少ないが、一発で画面の大半を攻撃できるボンバーを放つ。
バリアー
自機の前後左右四隅のどこかにシールドを張り、
それが敵などに触れると搭載ストックを消費してダメージを無効にできる。
サブショットボタンを押す度にシールドの位置を変更できる
(このサブウエポンのみボタンでは搭載ストックは消費されない)。
  • ときおりアイテムの入ったカプセル型の敵が出現し、破壊すれば以下のアイテムのどれかが現れる。
    • 「ライフ回復」…自機シールド値を1回復。
    • 「武器回復」…サブウエポンの搭載ストックを完全回復。
    • 「レベルアップ」…メインウエポンのパワーを最大4段階まで上げる。
    • 「無敵」…一定時間自機が無敵になる。
    • 「敵全滅」…画面内の敵を全滅させる。
  • 本作はライフ制を採用している。自機にはシールド*1が存在し、ダメージを受ける度に自機シールドが消費されていく。自機シールド値が赤点滅(下記)状態でダメージをもらうとミス(ゲームオーバー)となる。また、自機が壁などにめり込むと一撃死してしまう。
    • 自機シールドは画面上部で色で表示されており、ダメージを受ける度に「緑(満タン) ⇒ 黄色 ⇒ 赤 ⇒ PANIC!」と色が変化する。また、同時にメインウエポンのパワーが1ランク下がるペナルティがある。
    • 各ステージ/エリアをクリアすると、自機シールド値とサブウエポンの搭載ストックの両面が完全回復された状態で次場面に進める。また、レベルアップアイテムによるパワーランクはそのまま維持される。
    • ゲームオーバー後はやられたエリアの最初からの再開ができるコンティニュー(無制限)が可能。通常ではエリア途中ではメインウエポンなどの選択はできないが、コンティニュー時は特別としてエリア途中でもウエポンの選び直しが可能となる。
      • また、本作はパスワードコンティニューを採用している。パスワードはゲームオーバー時で毎回表示され、それをタイトル画面のパスワード項目で入力すればそのエリアからの再開ができる。

評価点

  • PCエンジンのHuカードシューティングとしては極めて珍しく、ストーリー性を重視した内容で、オープニングからステージ前後、エンディングに至るまで、ビジュアルカットを交えたイベントシーンが導入される。
    • このクオリティが非常に高く、Huカードとしては破格の出来といえる。神崎氏のデザインが上手く表現されている上に、そのビジュアルパターンも(もちろんHuカードとして見れば、だが)かなり多彩。はっきりいってイベントがメインと思える程に。
    • 演出がやたらと細かいのも見所の一つ。登場キャラの大半はちゃんと口パクするし、その時の環境によって表情も変わるし、ステージの舞台によっては自機の外見も変わる(ショットなどの性能は同じだが)こだわりぶり。
    • ゲームオーバー時にコンティニュー画面にて一枚絵が表示されるのだが、ステージ毎に個別の絵が用意されている。その為、すべてのビジュアルを堪能するにはステージ/エリア毎にあえて死ぬ必要もある。
    • 今でいうところのIT用語を多用したサイバーパンク系のストーリーであり、当時としてはかなり斬新な設定で多くのプレイヤーを驚かせた。
    • 荒唐無稽なSF的描写も多い。その一方で、国家ではなく巨大企業に統治される世界、脳とコンピュータネットワークの直結、兵器として使役されるイルカ等、将来あり得るかもしれないリアリティのある近未来像を描いていた。
  • ゲーム中のグラフィックもそれなりのクオリティ。多重スクロールステージ多し。
  • BGMもノリがいいものからおどおどろしいものまで、聞き応えのあるもの多し。残念ながらサウンドテストは不可。
  • 1ステージあたりの構造は短めで、間延びはほとんどなく(腕前があればだが)ストーリーに没頭できる。
  • シューティングとしては珍しくパスワードコンティニュー機能を採用している。

賛否両論点

  • 当時としては斬新な設定
    • ストーリーに関して「何かよくわからない」というプレイヤーも少なからず存在した。PCエンジンはファミコンなどと比べるとプレイヤーの年齢層が高いハードではあったが、このストーリーの趣旨に関しては好みが分かれる傾向があったように思える。
    • 何しろ当時はインターネットなど普及しておらず、マニア向けのパソコン通信が精々と言った時代。コンピュータネットワークなど多くの人には縁の無いものであり、ゲームタイトルの「ダウンロード」を始め「スキャン」「アクセス」などの単語も聞き慣れない、或いは聞いた事も無い人が多かった。それ故に馴染めない人にはとことん馴染めないシナリオだった。
    • IT、ネットワークが一般化した現在でも、そのハードSFな世界観とストーリーは初見で完全に理解はするのは難しいかもしれない。特にその分野が苦手な人には。
    • ただし、ストーリー自体は極力わかりやすいシナリオ構成であり、特別理解するのが難しい訳ではない。専門知識に詳しくなくても先に進むにつれ、「何となく盛り上がってるんだな」と分かるストーリーではある。
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当時(1990年)としては聞きなれないIT用語が並ぶビジュアルシーン。

  • 一部イベントで流血などのグロテスクなシーンや、欝ともとれる展開もあり、ハードな作風であるのも人を選ぶ一因となっている。

問題点

  • シューティングとして見ると、やや単調であっさりした作りという印象。やはり、イベントシーンに力を入れすぎてしまった影響なのだろうか?
  • 自機がやたらと虚弱体質で油断しているとすぐ死ぬ。「ライフ制だからある程度のダメージは無問題」なんて常識はほとんど通用しないといっていい程に。
    • 上記ルールでも示した通り、本作はダメージで自機シールドと同時にメインウエポンのパワーランクも下がる、「ダメージとパワーダウンを兼ね備えた」恐ろしい仕様である。しかもダメージ後の無敵時間は極めて短く連鎖ダメージを受けやすい。それ故に「ダメージ = 死亡フラグ」という事態が頻繁に起きてしまいがちである。
    • コンティニューしても貧弱なパワー初期段階から挑まなければならない。特に難易度が大分上がる後半ステージをその状態で挑むのは非常にきつく、プレイヤーによってはほぼ詰み確定に陥りやすい。ちなみにコンティニューは無制限なので、根気とパターン記憶する気力さえあれば何とかならない事もない。
  • 一部ステージの背景に敵の弾が隠れて見え辛くなる事がある。これは当時のゲーム雑誌にも指摘されていた模様。
  • 緻密且つハードな設定とストーリーは魅力だが、ラストステージ以降は急激に失速する。
    • ラストの一歩手前のステージは因縁のボスの存在もあり非常に盛り上がるのだがそこがピークであり、肝心のラストステージはイベントも無いまま大して強くもない地味なラスボスを倒してあっさり終了。道中の演出は緊張感を煽るし、ラスボスの強大さは散々語られていたのだが、実際のラストバトルは全然盛り上がる事なく終わってしまう。
    • エンディングもディーヴァとの軽いやりとりの後に帰還し、最後に黒背景のまま淡白なナレーションが入るだけで、本編の盛り上がりとは裏腹に拍子抜けする内容である。

総評

PCエンジンでビジュアルシーンを多用するゲームはCD-ROM×2系の専売特許で、Huカードはあくまでもゲーム性の特化したメディアである、という定説を覆そうとした試みと、その斬新なシナリオの存在感は大いに評価できる一作であろう。
シューティングとしては良くも悪くも普通。ちょっと理不尽気味な死にやすさがストーリーに惹かれたライトシューターを遠ざけてしまっているが。


その後の展開

  • 本作の一年後、続編として『ダウンロード2』がリリースされた。
    • メディアがCD-ROM×2になり、ビジュアルの強化やHuカードでは不可能だった豪華声優陣のフルボイスが導入される事になる。
    • 原案は引き続き中島氏が務め、主人公のシド、ヒロインのディーヴァも続投しているがキャラデザインは交代され、大幅に絵柄が変わっている。
  • 本作発売から一ヶ月後、原案の中島氏によって小説版『魔の回路(ダウンロード) 』が発売されている。
  • 1992年には『ダウンロード 南無阿弥陀仏は愛の詩』としてOVA化されたが、タイトルを見れば判る通り内容はゲームとは無関係となっている。
    • 共通点と言えば、サイバーパンクの世界観と、主人公が「シド」と名乗っている程度である。

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最終更新:2023年02月05日 17:10

*1 サブショットのシールドとは無関係、以下「自機シールド」と表記する。