1999 ~ほれ、みたことか!世紀末~
【いちきゅうきゅうきゅう ほれ みたことか せいきまつ】
ジャンル
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ボードゲーム
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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3MbitROMカートリッジ
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発売元
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ココナッツジャパンエンターテイメント
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発売日
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1992年9月18日
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定価
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7,300円
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判定
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バカゲー
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ポイント
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SFバカゲー (バカ)異星人に蹂躙される地球 どうあがいても絶望なエンディング
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物語
1995年。「ピンキー星人」は「ノーム星人」が地球侵略を開始したことを警告するため地球へと飛び立った。
しかし宇宙船は地球上空で燃料切れを起こし、呑気な大学生四人がキャンプに興じている所に不時着してしまう。
「ノーム星人が地球を狙っているが、落ちたときのショックで科学力が使えなくなってしまった。しかしきみたちだけでも助けたいから、1999年までに出来るだけ多くの『宇宙パワー』を集めるのだ」
それが世紀末の始まりだった……。
概要
ココナッツジャパンエンターテイメントが『爆笑!愛の劇場』に続いて発売したボードゲーム。おそらく同じ開発チームの作品と思われる。
四人のプレイヤーが双六形式でマップを進み、「宇宙パワー」を集めていく。最終的に最も多くのパワーを集めたものが勝利。
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「宇宙パワー」とは人が快感を得たりすることで発生するらしく、主に得をするイベントが起きると増え、損をするイベントで減る。
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マップ各所に存在する「核シェルター」を購入しておき、そのシェルターを通過したりピッタリ止まったりすることでも宇宙パワーが増加する。所有者でない者が止まっても意味はない。
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双六といってもゴールに辿り着けば終わりではない。マップは一種類のみで、一人がゴールすると全員がまたスタート地点に
戻って周回をする(トップになると宇宙パワーが少し増える)。ゲームはこれの繰り返し。
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1周すると、ゲーム中の時間で半年が経過する。時間が進む程ノーム星人の侵略(社会進出)と異常気象が進んで地球の危機は深刻になっていく。
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ゲームは「1995年1月」の周から開始され、「1999年7月」の周が終わると終了となる。つまり10周すると終了となる。
変な点(笑いとばせるなら評価点)
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ゲームを始めるとまずプレイヤーを作成するのだが、この時点ですでにバカゲー。
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最初に名前を入れる際、どんな名前を入れてもランダムで「かわいいなまえだね」「ふざけたなまえだね」と言われる。
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次にルーレットで顔を上下半分ずつ選ぶ。若禿げになったり鼻の穴が大きくなったりする。
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最後に職業もルーレットで決めるが、医者・ビジネスマン・芸能人等に混じって対象年齢をどう捉えているのか「ホスト」がある。
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ちなみに「フリーター」も存在。これになると(なってしまうと)定職に就くまでマップ開始時の給料が貰えない。
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最初は無難なゲーム中のマスも、周回が進む毎にどんどんマイナス傾向のものが多くなっていく。
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地球は砂漠化の後事故の影響による氷河期を迎えるため、それに該当する「砂漠」マスと「氷河」マスが存在。最初の2年間は職業に関するイベントのマス(成功すると儲かる)が多く存在するが、3年目の砂漠化になると一気に減少し、4年目以降の氷河期になると殆ど無くなり、5年目になると全てなくなってしまう。
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また、マップ上の背景も、周回が進む毎にどんどん荒廃していく。
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内容も「朝起きたら車が砂に埋もれていた」「突然地面の氷河が割れて股が裂ける」「つららが頭に落ちてきて入院」といったバカイベントだらけ。
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特筆すべきは「ノーム教」のマス。前作に続き(?)今作でも「ノーム、ノーム」と唱える某尊師に酷似した教祖が登場する。
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起こるイベントも「『特製爪の垢ドリンク』を買わされる」「恥ずかしい歌を歌わされる」といったマイナスイベントが大半。
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ただしミニゲームで脱退出来るイベントも発生。成功するとパワーが増える以上にプレイヤーの気分がいい。
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それ以外のノーム星人は「プレイヤーがナンパしていた美女に化けていて金を巻き上げる」「ボッタクリバーさながらの客引きでプレイヤーを釣る」などやけにセコい手段で地球人を苦しめてくる。
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また「おやかた」とかいう関取のような姿の怪獣(ちなみに文字通り人を食うらしい)による競馬(?)の胴元もやっていて、プレイヤーが参加して当たればそれなりに儲かる。
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プレイヤーたちも奇態な行動を取る。以下は一例。
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「神社の境内で昼寝していて神隠しにあう→母ちゃんがテレビの人捜しコーナーに出て恥ずかしいのでさらに逃げる」
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「鼻毛が凍結して鼻の穴が塞がる→口で呼吸すればいいのについ口を突っ張ってしまい呼吸困難になる」
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SF要素があるためか、「吸血サボテンに血を吸われる」「雪男に殴られ金を奪われる」といった怪生物イベントも発生する。
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そしてエンディング
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どうやってもバッドエンド(?)である
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上記の通りノーム星人の地球侵略はどんどん進み、これを防ぐ手立ては無い。地球人が一念発起しノーム星人を懲らしめる…などといった望みも当然無く、地球の状況は悪化の一途を辿るのみである。
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最後の1999年に至っては地球規模の食糧危機、そして核戦争の勃発すら示唆されるという、まさに絶望的としか言いようがない状況に追い込まれる。
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そして1999年7月の周を終えると期限が終わってエンディングとなり、集めた宇宙パワーを使って地球脱出ロケットに乗るのだが……。
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四位の者は点火役として地球に残留し、三位の者は途中でロケットを切り離され地球に不時着し消息不明。二位の者も同じくして宇宙を浮遊する羽目になる。
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一位の者だけがピンキー星に到着して歓迎されるが、そこには大量の白骨死体が……。それまで明るかったBGMも不穏なものに切り替わる。
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「変な異星人の甘言に乗って同胞を見捨てたものに未来はない」とでも言いたいのだろうか……。
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宇宙空間に取り残された二位は言わずもがな、三位と四位が取り残された地球も前述の通り荒れ果てているので、結果的に全員が不幸で終わる。
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ちなみに今回もスタッフロールは無い。
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問題点
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キャラメイクのあるボードゲームにもかかわらず、キャラの性別を選べず男性固定になっている。
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イベントなども女性であることが不都合になるものは存在しないため、女性でプレイできても良かったはず。
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殆どが運ゲーでありボードゲームとしては駆け引きや盛り上がりに欠ける。
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サイコロ代わりのカードを引く際に妨害カードを得られることがあるが、その場で使わなければならない上に相手が仕掛けたマスに止まらないと意味がない。
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イベントでのパワーの増減も幅が小さく一発逆転要素が無いため、大差が付くとほとんど跳ね返せない。
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パーティーゲームなのにストーリー及びエンディングの後味が悪い。
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笑えるイベントが多い一方で、怪獣が暴走して地球人が犠牲になるなど笑いごとでは到底済まないイベントも発生する。そしてその原因であるノーム星人に対してプレイヤー含む地球人はこれといった抵抗はできず、一方的に痛みつけられるばかりである。(前作に引き続き)人によっては不快感を覚えるだろう。
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迫りくる危機に対して数年かけてやる事が自分だけ助かるための行動で、その挙句がいずれもバッドエンドでは、本当にどうしようもないと言われるのも仕方のないところである。
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ナレーションのユルさが後味の悪さを若干緩和してくれてはいるが、合わない人には徹底的に合わないゲームと言える。
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フォント
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なぜかカタカナ語が、カタカナだったり平仮名だったり統一されていない。「かくみさいる」「はるまげどん」など、物騒な単語のイメージを和らげる狙いだろうか。
評価点
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ネタは豊富
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イベントは色々と用意されており、他にも「そうです うわたすが 放火魔です」といったパロディイベントをはじめとしてバカイベントには事欠かない。
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「酸性雨」「オゾン層破壊」など、当時深刻化していた環境問題に触れている点も見逃せない。
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本作の発売年である1992年はSDGsの前身とも言えるリオ宣言が採択された年でもあり、まさに作中でノーム星人が行うような乱開発による環境破壊を規制するための動きが世界中で広まっていった。
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BGMはかなり曲数が多く、1ループが短いものが多いものの、旋律が良く妙な中毒性があるものが多い。
総評
テンポはそこそこ早いので苛つきはしないが、ゲーム性はあまり高くない。前作同様に多人数でプレイしてバカイベントを笑いとばせれば、それなりに盛り上がれるゲームである。
余談
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ノーム教教祖のモデルはどう見てもオウム真理教の麻原彰晃。
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発売当時のオウムは「変なおじさんが率いるおもしろ集団」程度の認識しかなく、バラエティ番組でも芸能人が面白がって持て囃していたほどであった。
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しかし本作発売の3年後、地下鉄サリン事件を皮切りにオウムが悪逆非道の犯罪組織である事が露わになり、今ではとても笑えないネタになってしまった。
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「表向きにはおバカだが、その本質は最悪の被害をもたらす連中」といった点では本作のノーム星人と類似しており、カルト教団に対する当時の認識の軽さに対し「ほれ、みたことか!」と警鐘を鳴らしていた…と見られなくもない。
最終更新:2022年09月22日 04:09