大江戸ファイト

【おおえどふぁいと】

ジャンル 対戦格闘
対応機種 アーケード(AX SYSTEM)
販売元 金子製作所
開発元 ATOP
稼動開始日 1994年7月下旬
プレイ人数 1人~2人
判定 バカゲー
ポイント 和風モータルコンバット


概要

実写取り込み型の格闘ゲーム。実は『富士山バスター』の続編にあたる。

富士山バスターは、ドット打ち込みの「欧米人が全力で勘違いした江戸時代」を世界観に持つ格闘ゲーム。発売は同じくカネコ。

そして本作は、「ドラッグをキメた欧米人が勘違いどころか1から妄想した江戸時代」へとレベルアップしている。


格闘ゲームとしての特徴・ゲームシステム・評価点

  • 格闘ゲームとしてはかなり大味な作りだが、実力者同士では差し合いの熱いゲームである。
  • ダッシュ及び超必殺技や隠しコマンド技は本作には存在しない。基本的にジャンプは角度が急な軌道で速いためジャンプ攻撃には独特の癖があり、間合いを詰めたり的確に攻撃を当てるには慣れが必要。
  • 相手の攻撃を受けたりガードすると、体力下の怒りゲージが溜まっていき、このゲージは攻撃を振ることで逆に減っていく。このゲージの量によって通常技や必殺技が強化され、ゲージ満タン時の強攻撃の威力は『サムライスピリッツ』の怒り時強斬りを彷彿とさせる破壊力。
  • ただし、ゲージが上昇した場合の通常技は弱攻撃やジャンプ攻撃でも吹っ飛んでダウンするようになるため、コンボに行けなくなるという短所もあり、この点が独自の駆け引きを生み出させている。(永久がやっかいな相手にはガードを強要させてゲージを溜めさせるというのも戦略として成り立つ。)
  • 一方、ガード硬直が全体的に短いのが特徴で、強攻撃はガードされると反撃確定。基本的には弱攻撃中心のちまちました駆け引きが繰り広げられるが、相手の隙を見てハイリスクハイリターンの強攻撃を決めた瞬間にはなかなかのカタルシスがある。
    • 但しカッパはリーチが長いため、強攻撃をガードされても反撃されない間合いがある。
  • ガードをするとパワーアップするシステムのため、ガードを崩す通常投げがよく機能するのだが、その投げは当時では珍しいスカりモーション付き。今でこそ通常投げにリスクが伴う格闘ゲームは珍しくないが、先見の明があったといえる。
  • BGMの質はメタル調が多いものの、全体的にノリが良く高評価。中でも一休のBGMはとくに印象的*1で、まずこれが真っ先に思い出される本作のプレイヤーは多い事だろう。
  • 必殺技は少ないが、キャラ選択画面に必殺技のコマンドが表記されているのでインストカードが無い状態で稼働していても楽しめる地味に嬉しい親切設計である。

問題点

  • ゲームバランスは、いたって普通に壊れている
    • カッパが異様に性能が良く、ゲームセンターによってはカッパ禁止と張り紙がされていたほど。
    • ほとんどのキャラクターに永久コンボが搭載されているなど、お世辞にも出来が良いとは言えないが、その絵面から永久コンボを決められても腹が立たない不思議な魅力を秘めている。
    • 必殺技のコマンド入力受付がややシビア。かなり慣れないと思った時に技が出ない事が多い。
    • さらに一部のキャラの必殺技が「レバー入力のみ」のものがあり、暴発してしまう事がある。

バカ要素

  • 当時の『モーコン』『サムスピ』ブームを反映させたのか、被ダメ時の出血量や残虐描写がやたら多い。
    • あまりにアレなので、表現を抑えたバージョン違いも出荷されたが、その種類もいやに多彩。
      おおまかに分けて「残虐バージョン」「モザイク入りバージョン」「ノーマルバージョン」の3種類、さらに血の色が赤・オレンジ・無出血とある。
      • しかもDIPスイッチではなくROM交換でしか変更できないという仕様。基板購入時はバージョンを確認しよう。
    • 2ラウンドを制したあとにボタンなどを操作すると、勝手に残虐技でとどめを刺すことが可能。とどめは技によって固定で、上半身吹っ飛び・真っ二つ・体破壊で生首のみ…等。
    • しかし、血の量がやたらと多過ぎたり、地面に転がる生首が不自然に真正面を向いてたりするので、実際にはあまりグロくない。逆にモザイクが入っているバージョンのほうが、想像力を醸し出すせいか余計グロく感じる。
      • というか着ぐるみカッパや 地蔵 の血飛沫グチャグチャフェィタリティに至ってはもはやギャグである。
  • 登場キャラクターは前作からの引継ぎも多いが、何かがおかしい。
    • キャラ名のほとんどは、どこかで聞いたことがあるような名前ばかりである。
    • ちなみに演じているのは、芸能事務所「ジャパンアクションクラブ(現:ジャパンアクションエンタープライズ)」所属の俳優達で、日光江戸村のアトラクションにてスタントマンを演じてた人達が起用されている。

キャラクター

    • 巨大な手裏剣を背負った忍者。額にガンダムのようなV字アンテナがついている。他のキャラがもっと強烈なデザインをしているので、ゲームキャラの忍者としてはまだマトモな部類に見えてしまう。忍者のくせに事あるごとに叫ぶ。
      • 前作の「忍者」にあたる。名前の由来は『変身忍者 嵐』からか。
  • 弁慶
    • 源義経の部下、武蔵坊弁慶その人らしい。昔は京の五条大橋で刀狩をしていたが、今では何故か江戸の日本橋に現れて刀狩りをしているという設定。どこから出すのかわからない巨大な鉄球など、様々な武器を駆使して戦う。豪快な掛け声や笑い声で性格が察せられるが、勝利後のキャラクターアップでは目が死んでいる。
      • 前作だと使用不可能の中ボス。
  • 五右衛門
    • カブキの隈取りをした伊達男。勝利台詞が「せんべぃ!」「おまんじゅう!」カブキだからド派手なのが当たり前で本来はイロモノキャラ枠のはずだが、他のキャラが桁違いにイロモノばかりなので逆に本作内ではややインパクトに欠ける無難なキャラデザインとなってしまっている。
      • 前作だと使用不可能のラスボス。名前の由来は大泥棒・石川五右衛門からか。
  • 一休
    • 浅草寺の微笑み顔の地蔵で、開発者にもよく分からない存在らしい。立ちポーズでは前後に腰を振り、ピョンピョン跳ねながら移動し、攻撃時には手足や頭部が巨大化する。独特な口調で声にはエコーがかかっており「南無阿弥陀仏」「一触即発」「喝」などの台詞を言いながら闘う…というか文字そのものが飛び道具の必殺技でもある。しかもその文字は何らかの力が具現化したものなのか命中すると爆発する。勝利ポーズでは後光が差すなど、ありがたいというより胡散臭い。地蔵なのだがやはり出血し臓物をぶちまけるので妖怪の類かもしれない。大江戸ファイトといえば一休と言うほどの本作の顔とも言える超強烈なインパクトを放つキャラで、一度見たら永遠に忘れる事は出来ないだろう。ステージ背景には同じお仲間も数人いて怪しい動きをしながら応援している。こんなのが数体もいる大江戸は怖い所だ。
      • 新キャラ。名前の由来は『一休さん』でも有名な一休禅師からか。
    • 餓狼伝説シリーズの不知火舞の出来損ないのような、きわどい服装のくのいち。長い鍵爪で武装している。
      • くのいちなのに顔丸出しとかそういうことは今更として、勝利後のキャラクターアップの顔があまりかわいくない。それ以前にくのいちと思えないほどぽっちゃりしている…が、本作の登場キャラは当時の実在の人物からの実写取り込みなのでそれを言ってはいけない。*2
  • 前作の芸者に代わる紅一点。名前の由来は不明だがくのいちにありがちな名前ではある。*3
  • 金四郎
    • 上半身裸の侍。肩に桜吹雪の刺青が入っているが、比較的普通。ただ、勝利後のキャラクターアップで肩の刺青がおおよそ刺青には見えないなど、衣装の出来の悪さが目に付く。と言うか刺青に関してはモンモン柄のTシャツを着ていると言うのが公式設定で、そこがまた笑いを誘い、無難なキャラ枠のはずが強烈な印象を残す。
      • 前作の侍にあたる。桜吹雪からしても名前の由来は『遠山の金さん』(遠山金四郎)だろう。しかし、勝利時のセリフに 「またつまらぬものを斬ってしまった」 と某斬鉄剣使いそのまんまなのがあることはこの際忘れよう。
  • 三平
    • カッパ。元々は隅田川(荒川)の上流に住み着いていたらしい。こいつだけしゃがみ状態から出せる通常投げを持っていたり、リーチが長い*4ため強攻撃をガードされても反撃されない間合いがあるなど、本作のバランスブレイカーで対戦では使用禁止の警告を出す店もあった。やたら顔のつくりが怖い着ぐるみ。
      • 前作の「かっぱ」にあたる。名前の由来は『河童の三平』からか。
  • 獅子丸
    • 歌舞伎の連獅子。「日本に来てニ年目くらいのアメリカ人」みたいな喋り方をする。勝利ポーズの台詞「Oh!カッブーキ!」が印象的。五右衛門と共にカブキなキャラが二人もいる上、本作の中ではマトモなキャラデザインの部類なので、お互い派手なのにどうにも目立たない印象を受ける。
      • 前作の歌舞伎にあたる。名前の由来は『忍者ハットリ君』の忍犬か『快傑ライオン丸』(『風雲ライオン丸』)に変身する主人公からか。
  • 秀月
    • 鎧武者の幽霊で、強烈なデザインのキャラばかりな本作では全体的にマトモでカッコイイと言えるだろう。幽霊だからか声にエコーがかかっている。あくまでも鎧に取り憑いているという設定だが、勝利後のキャラクターアップでバッチリ生身の顔を晒しているし、やはり血は出るし臓物をぶちまける。海外版では勝利時のセリフが「しゃぶしゃぶ~」「コンニチワ!」と、もう何がなんだか。
      • 前作の「将軍」にあたる。名前の由来は『人形の秀月』(老舗の人形会社)からか。

ちなみにボスキャラは存在せず、全キャラを倒せばエンディングである。キャラごとのバックストーリーとかは何も無い簡素なエンディングだが、とても賑やかでおめでたい雰囲気なので達成感はある。CPUはやや強めだが理不尽な強さではないので、何度も練習してがんばってクリアしよう。


総評

ゲームバランスの悪さにより対戦ツールとしては問題があるものの、1人で遊ぶ分にはゲーム性に問題は無く、この絵面の怪しさの前では問題点など笑い飛ばせる些細な事である。日本のアーケードゲーム史上1位2位を競う怪作で、事実1994年度の裏ゲーメスト大賞受賞作でもある。(ちなみに読者投稿ではなく、編集部が裏ゲーメスト大賞を選考するのはこの年が唯一。)
だが蓋を開けてみると格闘ゲームとしてはなかなかの出来だったりする辺りが侮れない。大江戸ファイトを1コインクリアした経験、自分は大江戸ファイトの対戦が強い!という技術と自信は、きっとあなたの人生の何かの糧となるだろう。多分。


その後

  • カネコは本作以降にもジャッキー・チェンを出演させた実写格ゲー『ザ・カンフーマスター ジャッキー・チェン』を手掛けている。
    • こちらも(おそらくジャッキー傘下の)アクション俳優(スタントマン)を出演させているのだが、勝利時にフェイタリティを決められるのは相変わらずである。
  • ただし、(当然とも言うべきか)ジャッキーはスプラッタの餌食にならない。というかジャッキーはラスボスであってプレイヤーキャラではない*5
  • 同作のアップデート版である『ジャッキー・チェン in FISTS OF FIRE 成龍伝説』も作られたが、日本未発売。こちらは3種類(五形拳、八卦掌、酔拳)の格闘スタイルを駆使するジャッキーがプレイアブルとして使用可能。
  • 社員の話によると、社長が海外研修に行った際に、当時流行っていた『Mortal Kombatシリーズ』の影響で海外の関係者から「もっとバイオレンスがあったほうが受ける」と言われ、帰国するや否や「血を出せ! 切腹させろ! フェイタリティしろ!!」という具合になってしまったらしい。
    • 格闘ゲームを作るにあたって、よりによってモータルコンバットを目指したカネコのその姿勢には敬服せざるを得ない。
    • また当時カネコ社員であった「悪趣味ゲーム紀行」でおなじみのがっぷ獅子丸氏によると、本作の燃焼やられ画像用のキャプチャーのために実際に(安物の)防火服を着た人間を燃やして撮影したという涙ぐましい逸話がある。芥川龍之介の「地獄変」か!
      • ちなみに当初近所の公園で燃やそうとしたが、警察に見つかって怒られたらしい。

余談

  • ステージ背景は日光江戸村で撮影したものを加工。キャラクターのモデルはアクション俳優やスタントマンの大手であるジャパンアクションエンタープライズ(JAE)*6のタレントを起用している。
    • 後にセガがサターンで発売した実写取り込みアクションゲーム『真・忍伝』でもJAE出身タレントが起用されている。何やってんすか
  • 開発スタッフが後に語った話によると、コンシューマ移植を検討した際、ソニーどころかセガからも断られたらしい。
  • 本作はカネコの新基板である「AX SYSTEM」のデビュー作でもあるが、専用の一枚基板バージョンも存在しており、先述の残虐描写違いのバージョンを含めるとかなりの数のバージョンが存在している。ちなみに本作以外で「AX SYSTEM」が使われたのは『グレート1000マイルラリー』と『グレート1000マイルラリー2』(国内未発売)のみである。*7

参考動画 (グロ注意)


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最終更新:2022年12月15日 18:48

*1 容量の関係もあると推測されるが一休と弁慶はキャラ専用BGMである。あとは1曲で二人キャラ分。

*2 熱心なファンが、スタッフロールには名前が載ってはいるが、霞を演じた俳優は誰なのか?を調査したところ、芸名を替えずに現在でも鈴木みゆきという人である事が判明した。個人のホームページやwikiは存在しないようだが断片的な情報だけでも、現在でも脇役などでドラマや映画に出演しているようである。

*3 今では『DEAD OR ALIVE』のかすみの方が有名だろう。

*4 所謂ダルシム系。伝承でも河童は片腕を縮める事で反対側の腕を伸ばすことが出来る。

*5 ちなみにCPU戦では計3回も技の異なるジャッキー・チェンと戦う仕様。ラストは八卦掌スタイルのジャッキー・チェンが相手。

*6 旧名:ジャパンアクションクラブ。2001年に現社名に変更

*7 なお、お蔵入りとなったAC版『究極!PC原人』も同ボードの作品として出る予定だったが、実際に流出しているサンプル基板は専用の一枚基板だった。