13歳のハローワークDS

【じゅうさんさいのはろーわーくでぃーえす】

ジャンル 職業体験アドベンチャー

対応機種 ニンテンドーDS
メディア 2048MbitDSカード
発売・開発元 デジタルワークスエンタテインメント
発売日 2008年5月29日
定価 3,990円(税5%込)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント 明らかにゲーム化に向いていない原作
ゲームとしては遊べる方だが、実用性は怪しい


概要

『13歳のハローワーク』は『様々な職業』をテーマにした、小説家村上龍作の2003年発表の書籍。
実に数百近くもの職業についてわかりやすく、かつユーモアを伴って書かれており、多感な小中学生の時期に将来についてうまく考えさせる構成になっている。
出版以来各地の小中学校で教材として採用されているロングセラーでありベストセラー。2010年には改訂版も出版されている。どこの小中学校にも確実に1冊は入っているので、読んだことがある・読んでいるという人も多いのではないだろうか?

その名著を 「何を思ったか」ゲーム化したのが本作である。
過去からしてもこの手の作品は大抵クソゲー化するのが定石であるが、良作とまではいかないものの、出来そのものは比較的まともな部類に入る。

また、後述する理由から一部のユーザーにとっては地味に知名度の高い作品である。

ストーリー

西暦2030年…

穏やかな成長を続けていた人類の科学・文明。

だがその裏では人々の「ココロ」が失われつつあり

かつての人間が思っていたような「家庭」「社会」は
繁栄と共に消え去ろうとしていた… 
事態を重く見た加藤博士は、タイムトラベルによって
過去の世界から「ココロ」を取り戻そうとする。
だが過去へ干渉することはさらに先の未来世界にも
影響を及ぼすことととなってしまう。

この物語は加藤博士の13歳の娘「ミク」は

過去(つまり私たちのいる西暦)2008年にタイムスリップし 様々な職業体験を通して未来世界で失われた
「ココロ」を取り戻すまでを描きます。

(公式サイトより)

システム

  • 2008年にタイムスリップしてしまった加藤ミク。2030年に帰るためには職業体験の記憶を集めて「ココロ・クリスタル」を30個手に入れなければならないのであった…。
    • NHK教育並みに強引きわまりない設定だが、職業体験しなければいけない必然性のある設定など、そうそう思いつくものでもないので仕方ないだろう。
      • 80年代なら「魔法少女が魔法で大人の女性(職業のエキスパート)に変身する」という古典的かつ王道なスタイルの設定でゲームに活かせただろうが、これも時代の変遷*1故か。
  • 本作には30種類の職業が用意されており、これらの職業を「夏休みの課題」として体験することで「ココロ・クリスタル」が集まるのである。
    • 職業体験は街中に用意されたイベントをこなすことで増えていく。街中は普通のRPGのように十字ボタン、またはタッチペンで移動させられる。
      • イベントが近くにあると、その存在方向を察知できる。また上画面のマップにもどこにイベントがあるか表示させられている。
  • 職業体験イベントでは3つのミニゲームをこなすことになる。
    • 一つ一つのミニゲームには合格点が定められており、この点数以下だとゲームオーバーになる。
      • ちなみに一つのミニゲームは100点満点。よって合計300点満点になる、

評価点

  • ゲームとしては意外にも遊べる部類
    • 各職業のミニゲームは割と凝ったものも多い。単なるクイズや難易度違いによる水増しもあるが、1職業につき3つ、90種類のミニゲームが用意されているのは結構すごい。
      • 特にゲームクリエイターの職業で体験できるゲームは、グラフィック、音楽共にかなり力を入れており、商品として売ってもおかしくないレベル。
  • ストーリー、キャラクターの設定が意外に奥深い。
    • 「多元宇宙論がどうのこうの」なんてディープなSFネタが出てきたりする。
      • そもそも主人公が2008年の世界に受け入れられているのは「周囲の人間に自分の存在を違和感なく受け入れさせ、さらに職業体験が積極的に実施できるように環境を改変する装置」のおかげである。
      • …ゲーム中ではサラッと流しているが、よくよく考えるとかなり怖い装置である。SFホラーに登場しても不思議ではない。
    • また、主人公の加藤ミクは将来の自分の母親である藤井カナと「同級生」として対面している。
  • DSのゲームながら、ボイス量が多め。
    • 主人公加藤ミク役は北乃きいが担当。
      • ただし、あまり上手くはない。棒読みと言うほどではないが、時折声が裏返ったり(音源の関係もあるが)声が割れたりする。
    • キャイーンがゲスト出演している。
      • 特に主人公のサポートキャラ、ラッシュ役の天野ひろゆきは登場回数が多いだけでなく、演技自体も問題なく安定して聞ける。
    • 一方、相方のウド鈴木が担当しているRは序盤以外の登場回数が少なく、かなり冷遇されている。
  • グラフィック、キャラデザ共に特に問題はない。
    • 加藤ミクのデザインは露骨に萌えは狙っていないが、普通に可愛く万人受けするもの。
    • 立ち絵が割と豊富で、基本、制服がある職業の体験時はその制服に着替える事も多く、完備されている。コスプレマニア歓喜物である。
    • また、ストーリー中随所にアニメが入るが、このクオリティも高い。
  • 値段が安い。
    • 普通のDSゲームよりは一回り安い値段で売られている。ボリュームなどはそれなりにあるので安心していい。

問題点

  • RPG要素はかなり無駄。
    • 特にエンカウントや謎解きがあるわけでもなく、イベントを探して街中を歩き回るだけ。そのイベントの場所も上画面の地図で一発でわかる。
      • 移動速度が妙に遅く、道も結構入り組んでいるので移動のストレスはかなり大きい。
  • 実用性は怪しい
    • 各職業の体験前にはTIPSという形で知識が披露されるのだが、その職業と関係あるのかかなり怪しい
      • 例えば雑誌編集者の職業で得られる知識は「昔の本の作り方」「印刷機の発明」「雑誌の歴史」である。
        …どう考えても実際の雑誌編集という職業には必要ない。内容的に知識というより雑学といった方が適切である。
        その上、詳細と言っても文章量的にたかが知れているレベル。本気で情報を得たいなら原作を読んだ方がいい。
      • 一度クリアした職業は図鑑からより詳細な情報を得られるが、よりにもよってこの図鑑がトップメニューからしか行けず、利用するのに手間がかかる。
      • そもそもRPG的に順番に職業を体験していくというシステム上、「この職業についての情報が欲しい」と思ってもその職業を体験できるところまでストーリーを進める必要がある。
    • 一応「その職業に関する雑学を得よう」と思うならそれなりに使えるが、そこまで需要があるとも思えない。
  • 初音ミクが登場する「ミュージシャン」のミニゲームはやたら難易度が高く(そもそもDSでタッチペンを使うリズムゲームがレスポンスの悪さゆえに難しくなりやすいという土壌もあるのだが)、ゲーム序盤の「壁」とも言える。ここで挫折するプレイヤーも割と多い。
    • 参考動画はこちら。オリジナル曲は12:17から。
      なお、この動画ではあっさり満点を出しているが、実際にはかなり難しいことは重ねて書いておく。特に短いためリカバリーの難しいステージ1と2。むしろ満点を出すだけなら3の方が楽である。バーの両端の色の濃い部分はタッチしない場所と覚えておくと、少し楽になるかも。

総評

基本的には職業に関する知識を軽めに広めつつ、ミニゲームを楽しみましょう、という主旨の作品。
その意味では割とよくできており、少なくともクソゲーとまではいっていない。
しかし、プレイしている内に垣間見えるカオスはすさまじく、プレイする内に「やはり対象年齢が間違っているような……」という気にさせられてくるだろう
そんな作風も楽しめる人には楽しめるかもしれないが、肝心の実用性についてはハッキリ言って期待できるものではない。
職業に関する知識や考えを真面目に深めたいのであれば、素直に原作を読んだ方がいいだろう。

余談

  • 原作は松岡昌宏主演でテレビドラマ化もされた。本作同様にタイムトラベルを行う点では共通している。
  • 初音ミクコンシューマー初登場作。
    • 本作が一部の層に知名度がある理由がコレ。主人公も「ミク」なので多分狙っている。
      • なお、ゲーム内では「アーティスト」の講師役として登場する。本作の世界観では初音ミクは実在するアーティストという設定である。
      • ちなみにゲーム中オリジナル曲を披露する…が、開発陣に得意な人がいなかったのか、だいぶ調教不足でありかなりの棒歌ロイド。いかんせん曲自体はいいだけにもったいない。
      • それにしても大胆きわまりない起用である。初音ミクの発売が2007年8月31日なので、1年経っていない*2。当時まだまだ一般に受け入れられているとは言いがたかった初音ミクを、しかもよりにもよって小中学生向けのゲームに採用したのは…開発陣にファンでもいたのだろうか?
      • ちなみにキャラクターデザインはそのまんまだが意外と違和感はない(髪の毛以外は)。むしろ初音ミクに合わせて全体のキャラクターがデザインされているように感じる。
    • これに限らず、開発陣は対象年齢を間違えているのでは?という部分が多々見受けられる。
      • 雑誌編集者ではなんと本物の『週刊ファミ通』とコラボしている。なぜ、小中学生の読者が大しているとは思えないファミ通なのかは謎。その上実在の編集者が登場する。
      • しかもこの体験内容が無駄に凝っており、実際に記事を作らされる。扱っているのが架空のゲームであることを除くと本物と見間違うレベルの記事になる。
      • サポートキャラ犬型ロボットラッシュである。本家シリーズにはここしばらく登場していないのだが、本当に通じるのか、コレ?
        ちなみに、上記のミュージシャンのミニゲームのステージ2の音色が、ラッシュの元ゲーのそれである。
      • 加藤ミクと藤井カナにスクール水着姿、更に+同級生との温泉シーンがある(水着は立ち絵と一枚絵。温泉は一枚絵)。
        水着立ち絵は同級生と女教師にもあり、更に一瞬だが美少年の女装姿まで。何かがおかしい。