GERMS 狙われた街

【じゃーむ ねらわれたまち】

ジャンル アドベンチャー パッケージ画像
ホラー画像と化しているので、隠しています。
閲覧注意
対応機種 プレイステーション
発売元 KAJ
発売日 1999年7月22日
定価 5,800円(税別)
判定 怪作
ポイント ある意味『LSD』に匹敵する奇ゲー
技術は遅すぎるのにセンスは早すぎた
パッケージの時点で引く
「変化」してしまった上級者向けのゲーム?


概要

  • 99年7の月に空から降ってきた(?)謎のPS1ソフト。開発はCG制作会社のKAJ。
    • NHKスペシャル生命IIIのCGなどを担当している。

特徴

  • アメリカにあるという設定の架空の田舎町で起こった事件を解決するというアドベンチャーゲーム。
    • ……見事に前年の『ミザーナフォールズ』とかぶっている。こちらはSF調。
    • 主人公は新聞記者となり、「街」で続発する「身内が別人になってしまったような違和感」の正体を探る。
    • 実は「街」は外部(端的にいえば宇宙)からの侵略を受けており、住人達は次々と「変化」していた…というありがちなパラサイト系SFドラマ風のストーリー。
    • タイトルは『ボディー・スナッチャー』『インベージョン』の原作であるジャック・フィニイ『盗まれた街』+ちゃぶ台対談で有名な『ウルトラセブン』の「狙われた街」からと思われる。
  • フルポリゴンで再現された街を散策するフリーローミング系のゲームの一つ。演出は全てプレーヤー目線のリアルタイムであり、ムービー1本入らない。
    • 街で中ではシームレスに移動できて途中のローディングは一切ない。もっとも後述のようにその分かなり妥協しているわけだが。

街の散策

  • ゲーム中全てがポリゴンなのだが、外の世界は完全に白黒
    • それなのに入れる建物の前には赤い大きな矢印が空中に浮いているため、非常に違和感がある。
    • 開発初期はカラーだったらしいが、「昔のSFドラマっぽくするために」わざと白黒にしたとのこと。
  • 外のマップには住人、対向車はまったくない。プレイヤー以外誰もいない無人の街に来てしまったかのような錯覚を覚える。
    • この点に関してはミザーナフォールズに及ぶべくもない。白黒の謎空間はもはや『LSD』の領域である。
    • また、重要なキャラ数人を除くと、住人達・ミュータントの顔はテクスチャのないのっぺらぼう。怖い。
  • 金の概念はない。空腹の時はレストランでバカ食いするだけでステータスが全回復する。
    • 何度も食べると食べすぎで腹を壊しダメージを受ける。
    • レストランの他、ファーストフードや総菜屋など店の種類やメニューに無駄にバリエーションがあり、つけ合わせの有無等も選べる。
      • 尚、アメリカが舞台なのにレストランに「豚の生姜焼き」があったりするのはご愛嬌。

戦闘システム

  • KING'S FIELD』風の一人称視点の本ゲームであるが、戦闘は経験値による確率性の上当たり判定がない。
    • 武器を持っていて、敵の頭上に黄色いマークが出ているときに攻撃ボタンを押すと攻撃判定が行われる。成功すれば命中率が少しだけ上昇する。
  • キャラクターを殺害すると、そのキャラクターの「残留思念」が読める。
    • 肝心の攻略のヒントになる情報はほとんどない。なぜか日記のようだったり、独り言だったりする。
  • 友好的な市民すら殺害できる。もちろん残留思念を読める。
    • 市民殺害が一定数に達すると警察署に拘留される。ただし、逆に警察署に入り込んで大暴れすることもできる。警察仕事しろ。
      • 警察が真面目に「変化」した相手に仕事をしているシーンは2~3ほどしかない。挙句の果てに警察署が乗っ取られたりする。仕事してくれ。頼む。
  • 持ち歩ける武器は一度に二種のみ。また助手いわく「武器を持ち歩かないと危険なので」一度に購入できる武器は一つだけ。

怪作要素

  • パッケージは裸体。しかもタイトルロゴの記載がない。そして、怖い。
    • 一見『エイリアン』のフェイスハガーに取りつかれた直後のようにしか見えない。
    • まだレーティングが厳しくなかったころの作品だが、ゲームの内容的にも結構ギリギリである。

ストーリー

  • トンデモ感あふれる登場人物たちによるぶっ飛んだストーリーが展開する。
    • 親の遺産を趣味の研究につぎ込むアマチュア科学者の友人、ミステリーサークルの隣に引っ越してきたマッドサイエンティスト、「街」のエネルギーの中心を守護している超能力者集団……
      • 宇宙人、地底人、超能力者と未来人以外はひとしきり揃っている。
      • 友人のフジタは「仕事の関係」でプラスチック爆弾を持っていたり、自力でレーザー兵器を開発したりする。本当の仕事は何?
      • 「ただの新聞記者」である主人公に興味を持って、国防局エージェントや超能力者、果ては「善玉宇宙人」までもが協力を依頼してくる。俺も一体何なんだ。
    • 「変化」したミュータントはかなり不気味。トチ狂ったデザインばかり
      • 顔の人間離れは序の口。人の「脚」が4組上半身に生えた裸の人間や、3人の人間が「融合」した力士風の三本脚、自分をおいしい食材にしようと香草を食べ続けたという巨大化コック、知能に目覚めたうえで耳からビームを撃ってくる犬、作業機械と融合した男…。
      • 後半のミュータントは完全にシュールレアリズムの極み。もはやモチーフも分からない。
  • プレイヤーがミュータントに倒されると、プレイヤーもミュータントになる
    • これまでの敵と味方の立場が逆転する。かつての友人にも目の敵にされる。
      • もっとも街中の施設はミュータントの侵食がかなり進んでいて、住人から排斥されるということはない。
    • 病院で元に戻れる。元の人間に戻ると、周りの人間は何事も無かったかのように接してくる
  • ラスボスが突然の「な、なんだってー!!!」としか言いようのないありえない宣言をする。
    • それに関する伏線も何もない上、その後の展開に影響する訳でもないので、ただプレイヤーをその場で驚かせる為だけに考えたように思えてしまうが……。
  • エンディングがない
    • これも制作者によると「演出」なのだから恐れ入る。「実世界再現」をある意味でうまく利用した(?)オチ…と言えるのだろうか?

問題点

  • 街は無駄に広く、交通機関なしにゲームを進行できない。普通の人はまずこの移動の時点でプレイを断念する
    • 乗物を使用しない場合、一番近い建物に行くだけでも相当な時間がかかる。外では一応「走る」ことができるが焼け石に水である。
    • 自由に操縦できる車があるが、道の段差やトンネルに頻繁に引っかかる。そうなった時は「公衆電話」を見つけて車を移動する必要がある。
    • 地下鉄と私鉄があるが、駅も車内も無人。寂しいを通り越して怖い。
    • 乗物の中ではバス停が一番使い勝手が良い。バス停で目的地を選ぶと一瞬で移動できる。バス停というよりどこでもドア
    • プレイヤーはマップ中を自由に移動できない割に、他のNPCはいつもワープする
      • これはNPCを主人公に追随させるのが難しかったのか、主人公と一緒にいる事になっているNPCは会話イベントのある部屋にいきなり立っているという処理になっている為。
      • 特に「足が不自由」という設定の友人・フジタのワープが激しい。「時空連続体を歪めているのはコイツではないか?」と言われることも。
  • 街の中、建物の中でロードは発生しないが、車に乗り込む・外に出る・建物に入るといった場合のロードは結構長く、プレイヤーを苛立たせる。
  • 建物の中のみBGMがあるが音質がよくない。とくにホテルの「カラカラ何かが騒音を立てているだけ」のBGMは耳障りで不快。

評価点

  • フリーローミング系としては「画期的」というところまではいかないが、「立場の逆転」「残留思念」などの斬新な要素は評価できる。
    • 車で移動中でも方向キーで周りを見渡せる、街のはずれにあるイベントもないのに作り込まれた建物等の細かいこだわりもある。
  • トンデモ系をかじっている人ならより楽しめる(?)濃いネタもいくつかある。展開はほぼSFだが、超能力者協会では突然ファンタジーになったりもする。
    • 自分の精○を研究して生体エネルギー・オルゴンを発見したと主張したフロイトの弟子ヴィルヘルム・ライヒや、数々の画期的技術を残した「早すぎた天才発明家」ニコラ・テスラなどへの言及がある。
    • 街を封鎖するために建造した大型歩行兵器(見た目は『宇宙戦争』のトライポッド)も登場する。外で戦えればもっと楽しかったかもしれない。
    • 周りの「変化」に耐えきれず銃を片手に飛び出してしまった一般人、たとえ相手が「変化」しても続く愛を語る夫婦、政府の捨て駒という扱いを覚悟で調査に向かい、「変化」した自身の運命をプレーヤーにゆだねるエージェント等の印象深いNPCも多数いる。
    • 数々の超展開と単調な移動、時折入るロードに耐えられるのであれば、どっぷり「街」の生活に浸れることだろう。
      • まさかこのソフト、人々に「変化」を伝えるために作りだされたのでは…?

総評

こんなスペースには書ききれない怪しい魅力に満ち溢れている怪作である。単なる「クソゲー」で済ませるのは惜しい。
とりあえず99年に(例えるなら『シェンムー』のような)すごく大きなことをやろうとしたという心意気は感じられる。



余談

  • 制作スタッフは6人。
  • その後、KAJは本作を教訓にメタバースコミュニティ(SecondLifeのようなもの)『Splume(スプリューム)』を開発。本ゲームのノウハウは無駄ではなかったと言える。
  • 開発者いわく4,000本程度しか出回っていないらしいので見つけたら即GET。
    • ただしクリアできる根性の持ち主はほとんどいないと思われる。
  • オープニングムービーはないのだが、謎のムービーがディスク内に含まれている(下記「外部リンク」参照)。ディスクを解析しないと見ることができないと思われる。
    • 内容は「谷間や宇宙空間を2機の戦闘機のようなものがくぐりぬけていく」というもの。本編と全く関わりがないうえに見る方法も分からない全くの謎ムービー。

外部リンク

プレイ動画

+ 外部サイト

ラストまでの攻略動画のpart1
問題の謎ムービー。オープニングムービーと投稿者は書いているが、起動直後に放置しても出てこない。
一体何のためのムービーなのだろうか。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年08月29日 13:55