魔導物語
【まどうものがたり】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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セガサターン
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発売元
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コンパイル
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開発元
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コンパイル
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発売日
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1998年7月23日
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定価
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6,090円
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判定
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なし
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ポイント
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システムが普通の2DRPG化 物議を醸した路線変更 ほぼ難易度アップだけの周回要素
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魔導物語・ぷよぷよシリーズ関連作品リンク
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概要
魔導物語シリーズのセガサターン版。サブタイトルは無いが完全新作。「SS魔導」「サターン魔導」と通称される。
魔導物語シリーズには「HPやMPを数値で表さず、あいまいな文章で表現する」という特徴があったのだが今作では廃止され、普通に数値で表示される。
また、今までの魔導物語はSFC版を除きほとんどが3DダンジョンRPGだったが、本作ではスタンダードな2D型RPGになっている。
世界観も今までと異なり、ぷよぷよシリーズに準じており魔物と人間が共存しているなどパラレル的な内容になっている。
当時コンパイルは4か月前に経営破綻しており、和議法による経営再建中に発売された作品であった。しかし、6年後の2004年に再建叶わず破産した為、本作はコンパイルが開発した最後の魔導シリーズである。
キャッチコピーは「
みんなに優しいRPG
」。
ストーリー
ここは[ガイアース]と呼ばれる異世界…。勇者ラグナス・ビシャシは最後の戦いに挑んでいた。次元邪神ヨグ・スォートス――それは次元の狭間にその本体を置き、無限に生じる分身をあらゆる次元に派遣する、恐るべき次元生命体だ。派遣された分身ヨグスは更に己を八つの分身、ヨグに分ける。こうして、その世界を瘴気で覆い、狂化させ、食らうのだ。今、ヨグスに侵されきったこの世界では、人々はただ、光の勇者であるラグナスに希望を見ていた。「古の民」の封印により、この一時、ヨグスは大封印塔の屋上につなぎとめられている。神々の遺物だと言われるこの塔に、ラグナスは単身登っていった。そしてラグナスはついにヨグスを打ち倒し、全ては終わったかに思われた。だがヨグスはあくまで次元の狭間に潜む本体[ヨグ・スォートス]の分身に過ぎない。ラグナスの倒したそれも、無限に存在するうちの一体に過ぎなかったのだ。突如空間を割って現れた別のヨグスによって、ラグナスは亜空間へと吸い込まれていった。
「どうしたの……? そう、大事なものをなくしちゃったんだ。大丈夫、ボクが一緒に探しに行ってあげる!」アルル・ナジャは、十六歳の魔導師の卵だ。笛をなくした子供に即座にそう言ってあげるような、優しい女の子である。その日、買い物に行った町で、彼女は勇者の戦いを描いた紙芝居を見た。普通は勇者が魔王を倒してめでたしで終わるのに……勇者はこれからどうなってしまうのだろう?
それはさておき、最近町の外の魔物達が狂暴化しているという話があった。それに、裏山に何かがぶつかったらしい。見に行ってみると、辺りは瘴気に覆われており、見たことも無い肉の芽のような無気味な植物がそれを吐き出していた。その植物を滅ぼせるのはアルルのペット兼友達のカーバンクルだけだ。こんな異常事態を目の当たりにして、アルルは事態を解決するべく旅立ちを決意する。
基本システム
町や村で情報収集してダンジョンに入ってボスを倒す…というRPGとしては基本的なスタイル。
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全体マップには町やダンジョンがポイントとして表示され、選択する事で中に入るようになっているため、町から町へと移動などは楽。なお新しい町やダンジョンは情報を得られるまでマップには表示されない。
今作では3人までパーティーを組む事ができる。
仲間になるのは「魔導物語」や「ぷよぷよ」でおなじみの面々。
それぞれ個性にあった能力をもっている。特に攻撃技には属性を持つ物もあり、相性を考えて攻撃しないといけない。
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今作にはフィールド上で使えるアクションスキルが存在、これも全キャラでそれぞれ違いパーティトップになっているキャラが使用できる。
登場キャラ一覧
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ネタバレ注意
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パーティメンバー
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アルル
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お馴染み魔導物語シリーズの主人公。様々な魔法を使いこなす。特に「ファイヤー」と「アイスストーム」はMPを消費しないのでメイン攻撃として使える。回復魔法「ヒーリング」やサポート技の「ダイアキュート」も使えるのでアタッカーとしてもサポート要員としてもオールに活躍できる。反面、防御はかなり弱いので一撃でばたんきゅ~してしまうことも。代わりに運の数値はトップクラス。最強技は「ばよえ~ん」。マップ上ではファイヤーを使って火をつけたり物を燃やしたりできる。
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ルルー
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良家のお嬢様。サタンを愛しているためアルルをライバル視しているが、ほんとは友達と思っているツンデレ。序盤でボスとして登場した後、仲間になり以後ずっとついてきてくれる。魔法こそ使えないが様々な格闘スキルで戦う。攻撃力と素早さに優れているのでアタッカーとして終始まで活躍する。敵から攻撃を受けると低確率で反撃する事もある。最強技は「女王乱舞」。マップ上では掌底を出して特定の障害物を破壊できる。
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シェゾ
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毎度毎度とアルルの魔力を狙う
残念なイケメン魔導師。本作では中ボスとしても何度か戦うことになる。剣や魔法を使った戦いはもちろん、サポート技も充実している。最強技は「アレイアードS」。マップ上では剣を振って特定の障害物を斬れる。
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恐らく本作屈指の不運キャラ。ラグナスに精神を乗っ取られるは、サキュバスにお仕置きされるは、アルルに火あぶりにされたりと、とにかく色々と酷い目に合う。
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カーバンクル
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アルルの友達である謎の生き物。基本的に戦闘には参加しないがたまにビームを撃って敵を攻撃する。ザコ敵ならほぼ一撃で倒せる。
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ミノタウロス
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ルルーに忠誠を誓う牛の魔物。見た目どおりのパワータイプで強い力を生かした攻撃技が多い。マップ上では怪力で大岩をどかすことができる。
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すけとうだら
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ダンスを愛する奇妙な半魚人。攻撃技も踊りを生かしたもの。意外にも回復技持ちでサポートもこなせるが、ステータスは今ひとつパッとしない。マップ上では踊りで雨を降らし汚れたものを綺麗にできる。
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ハーピー
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歌が大好きだが超音痴な女の子の魔物。全体回復などサポート技が充実しているかわりに攻撃と守りは貧弱。マップ上では歌を歌って特定の仕掛けを作動させる。
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ウィッチ
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「おいっす!」「いってみよぉ!」などドリフっぽいフレーズを好んで使う魔法使いの女の子。本作ではウィッチとは一族全員に対する呼び名で、一人前になるまで真の名を持てないことになっている。戦闘では攻撃・回復・補助とあらゆる魔法を使いこなす。特に回復は全体掛けなため重宝する。守りと素早さの低さがネック。マップ上では魔法で壊れたものを直す事ができる。
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ドラコケンタウロス
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中国風の服装な半竜半人の女の子。自分の美貌に絶対の自信を持っており美少女コンテストに出ようとするが…。ドラゴンの力を生かしたブレスや体術攻撃が得意。マップ上ではジャンプして高いところにあるアイテムを取れる。
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ももも
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行商人。とあるダンジョンでのみ仲間になる。さまざまなアイテムを生かした技を持っている。マップ上ではもももからアイテムを買えるためダンジョン内で重宝する。
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ラグナス
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勇者の少年。今作における重要キャラとして登場し、最初は彼で話を進めて行くことになる。戦闘では攻撃・回復と両方に優れたオールマイティ。重装のためか素早さは低め。マップ上では全員のMPを50消費してSPを満タンにできる。
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その他
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サタン
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カーバンクルを溺愛し、アルルに求婚を迫る魔界の貴公子。毎度毎度のトラブルメーカーであるのだが今回もやはり…。
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キキーモラ
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メイド服とモップを着たとてもきれい好きで汚いものが大っ嫌いな女の子。本作ではとあるダンジョンでボス敵として立ちはだかる。
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インキュバス
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ナルシシストで女性をたぶらかすことが生きがいの夢魔。ボスとして登場し、倒したら仲間に加わるのだが外の日差しがキツイという理由ですぐに抜ける。
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セリリ
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お友達になってくれる人を探している人魚の女の子。隠しイベントで登場するが、見つけ出すのは非常に困難。
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その他、本作独自の要素。
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HP、MPの他にSPが存在。SPは戦闘中特定の行動をすると溜まり、満タンになると最強の攻撃技を出す事ができる。
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アルルとルルーのみ最強技がレベルアップで変わる。新しい最強技を覚えるとそれまで最強技として使っていた技を通常技としていつでも使用できるようになる。
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ボスもSPを持っており、満タンになると強烈な攻撃を仕掛けてくる。
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RPGには付き物の状態異常も「のうみそぷー」や「ひとめぼれ」といった魔導物語らしいユニークなものがある。
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装備品には一部を除き星が1~3個ついている。同じ装備でも星が多い方が強いという性質を持つ。
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「はなまる大幼稚園児」にあった日記システムが復活。読めば過去のストーリーを振り返ったり、今後の目的地を再確認できる。内容の中にはアルルの感想も書き込まれているので普通に見ても楽しい。他にアルルの家ではイベントで使われたビジュアルシーンをもう一度見る事もできる。
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ミニゲーム「ぷよカード」で遊べる。10人の相手の中から一人を選んで対戦し勝てばポイントが得られる。たまったポイントに応じて貴重なアイテムがもらえる。
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対戦相手は世界各地に点在し、会わないと対戦相手として選べない。
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このミニゲームは『ディスクステーション』に収録されている。
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クリア後、難易度の上がった2周目が存在。それ以降もクリアごとに難易度が上がり4周目まで存在する。
評価点
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ルルーやシェゾなどシリーズの人気キャラが仲間になってくれるのは楽しい。
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他にも「魔導物語」や「ぷよぷよ」でお馴染みの面々が多数登場するのも嬉しい所。
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サブイベントも結構多く、全て見るには最低でも2周する必要がある。
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また戦闘の会話も豊富で、ゲームオーバー時にもイベント進行に対応して多数の台詞があるなど、隠しメッセージ的な要素は多い。
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ストーリー自体は王道ストーリー。
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最初は冒険の規模が小さいものの、次第にスケールが大きくなっていき最後には世界の命運をかけた戦いに発展する。同シリーズでこのような展開になるのは珍しく一見の価値はある。
賛否両論点
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開発中に何度も何度も路線変更されたストーリー・世界観は賛否両論。
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やけにシリアスめいたゲーム後半の大規模な展開や、怖さと気持ち悪さばかりが目立ち、親しみを感じられない本作の黒幕の嫌悪感など、従来からすると「らしくない」という声もある。
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勿論、「これはこれで面白い」という声もあるし新規ユーザーには普通に楽しめるので、この点は各自で判断して欲しい。
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ごく普通のRPG化した事
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ステータスの数値化やダンジョンの2D化等、それまでの魔導物語と比べると異色とも呼べるアレンジ内容となっているが、それ故に「至って普通のRPG」となっている。
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ただしそのおかげで遊びやすくなっているのも確かで、ぷよぷよから入ったプレイヤー等、過去の魔導シリーズ未経験者には今までよりも手に取りやすい。
問題点
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シリーズ初のパーティー戦闘を謳い文句としていたものの、実際はシナリオに合わせて仲間が入れ替わる固定メンバー制度。
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しかも、メンバー三人のうち二人はアルルとルルーで完全な固定。ゲスト枠は一人だけで自由に編成出来る機会が一切なく、控え枠もない。
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基本的に一つのダンジョンを攻略したらその仲間とはお別れである。何度も仲間になるのはシェゾくらいなもので、それもレベルが継続されるわけではないので、ゲスト枠は育成する楽しみがない。
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ドラコとウィッチに至っては、どちらか一人しか選べない。RPGで選択肢次第というのは珍しいことではないが二人ともファンから人気が高いキャラなため不満とするユーザーは多かった。
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一応、どちらを助けたかでそれぞれをメインにした異なる内容のルートに分岐する(最終的には同じ本筋に収束する)ため、扱い自体は悪いわけではない。
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RPGとしての面白さに欠ける要素
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マップの移動方向は4方向とオーソドックスではあるが、ダッシュや斜め移動といった快適操作が一切なく、ただのろのろと歩くだけ。
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先に発売された同じく2D式の「はなまる大幼稚園児」がダッシュを取り入れていただけに、後続の本作はシステム的には劣化している。
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広い空間を移動できる町のマップはまだ良いが、ただただグネグネと曲がっただけの狭い道を歩き続けるだけのダンジョン攻略は退屈。
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ワープ装置とマップ切り替え以外に大したギミックがあるわけでもないので印象に残らないダンジョンが大半である。元々がダンジョンゲームだった頃の面影は殆どない。
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各自のキャラがフィールド上で使えるアクションスキルを活用する手段は、実は殆ど「目の前の障害物をどけるだけ」「目の前の取れない宝箱が取れるようになる」に終始している事が多い。内容的には鍵の掛かった扉を開ける事に何ら変わりはなく、あまりにも面白みに欠ける。このゲームでは仲間=鍵と言ってもよい。
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従来のファンにしてみると、大幅に変更された描写や内容そのものに違和感がある。
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シリーズでもお馴染みの「ばよえ~ん」が攻撃魔法に変更される、「アレイアード」は闇の波動のアニメーションなのに、上位版である「アレイアードスペシャル」は単に高速で斬りつけるだけ、等。
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他にも、シェゾにとってはトレードマークとも言える「闇の剣」が普通に店で売却可能、これより強い剣が普通に宝箱で入手出来るなど、過去作(『魔導物語A・R・S』など)のエピソードを知っている人からすると憤慨ものとも思える数々の要素の「単なる記号化」が目立つ。
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戦闘シーンの画面切り替えのロードが長め。また戦闘のアニメーションは凝っているものの、通常攻撃でさえ無駄に長いものが多く、カットできないので全体的にテンポが悪い。
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ボス戦が単調になりがち
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SPゲージはゲージの溜まる量がほぼ一定である為、最強技が溜まるまで同じ行動を繰り返すだけになり勝ちで、ここ一番で溜まって大逆転になるといったような面白みがない。
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最強技がほぼ「高威力なだけの全体攻撃」なのも単調さに拍車をかけている。
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周回難易度が高い割に変化が少ない
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一度クリアすると、獲得経験値が多くなる「2周目」が遊べるようになるが、敵の強さも跳ね上がる。その為、「入手経験値が高い」というより「レベルの前倒し」といった方が正しいので、いわゆる「強くてニューゲーム」といった気軽に遊べる周回要素にはなっていない。
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この難易度向上は雑魚戦のないプロローグにも反映される為、2周目からしてプロローグのボス戦が一番の難所。3周目以降はさらに厳しくなる。
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本編開始後も同じく最初が難所。しばらくは気を使った雑魚狩りで適正レベルまで上げる必要がある。
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こういった高難易度になっている割には2周目限定要素は少なく、1周目では見られなかったCGのコレクションを埋める他は、細かな変化(「隠しアイテムが変化している」「ルルーの屋敷にメイドが沢山いる」「ラグナスが救出される夢が観れる(隠し要素)」「すけとうだらの川くだりの歌の歌詞内容が違う」など)や1周目で選ばなかった分岐を楽しむくらいしかない。
総評
単純にRPGとして見ると、そこまで悪くない出来ではあるし、テンポがダルいだけで致命的なバグは無く作りは丁寧。
ぷよぷよのキャラは知っているけど…というライトなユーザーが普通にストーリーを楽しむのならば、普通に楽しめる出来。
ただし、キャラ抜きのRPGとして見ても、目を見張るような独自要素があるわけでもなく、逆にシリーズおなじみの特徴が薄れてしまったためファンには賛否両論な点は否めない。
同シリーズは元々、個々の魔導キャラや過去のエピソードに強い想い入れを持つファンが多かった為、本作に対しては古参ユーザーであればあるほど低評価になりやすい。
余談
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本作は、本来コンパイル史上でも最大級の、『魔導』シリーズ集大成とでもいうべき大作として発売されるはずだった。しかしコンパイルが倒産、和議申請。一時は製作がストップしたが、残留したスタッフが死力を尽くしてストーリー等を縮小・変更したものを完成させた。
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当初予定されていた筈のオリジナル版のエピソードは、当時のプロデューサーであった織田健司氏自らの手により、小説『真・魔導物語』(第一期、全8巻)としてファミ通文庫から発売されている。
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この小説ではこれまでの魔導物語シリーズの世界観を再構築して全て繋ぐ集大成的な内容となっており、それに沿った年表なども付属していたのだが、最終的には商業二次にとどまった。『ぷよぷよ外伝 ぷよウォーズ』およびそのノベライズなど一部作品でのみこの作品に沿った内容が反映されている。
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小説版の第一期自体は完結しているものの、当初想定されていた第二期は出ることなく終わった。
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本作SS魔導のゲーム版シナリオ自体も小説『魔導物語'98』としてノベライズされ、さらにSS魔導と真魔導の間を繋ぐ小説『真・魔導物語外伝』も出版されている。
最終更新:2023年07月06日 22:01