大王 DAIOH

【だいおう】

ジャンル シューティング
対応機種 アーケード
販売元 アテナ
発売元 サミー工業
稼動開始日 1993年5月31日
プレイ人数 1人~2人
配信 アーケードアーカイブス
【Switch】2023年11月2日/838円(税10%込)
【PS4】2023年11月2日/837円(税10%込)
判定 なし
ポイント TATSUJINと雷電の亜流作
シューティングとしてはオーソドックス
後の『紫炎龍』と『デザエモン』の元になる存在


概要

麻雀ゲーム『プロ麻雀 極』シリーズなどで定評のあるメーカー、アテナが1993年にてアーケードでリリースした縦シューティング。

ゲームタイトルに突っ込みがあるかもしれないが、紛れもなく『大王』である(ゲームでのタイトル画面にもデカデカと「DAIOH」と表記されている。)*1
「大王」というゲームタイトルからしてかなり異様なゲーム性を想像される方もいるかもしれないが、ゲームとしては至って普通のオーソドックスな縦シューティングである。

ちなみにゲームの世界観は真っ当なSF物で、歴史ゲームな訳ではない。

1993年のシューティングとしては、デザインセンスが妙にレトロ的で、プレイヤーからは「まるで80年代のゲーム」と呼ばれる事もある*2
全7ステージ構成の2周END。


主なルール・ゲームシステム

  • レバーにて自機の8方向移動、ボタンは2つで各自、ショットボタンとボンバーボタンに使用する。オーソドックスな操作系統といえる。
    • ボンバーは使用回数制限があり、画面広範囲の攻撃と敵弾かき消し能力を持つ特殊攻撃に該当。要は『雷電シリーズ』と似ている。
  • このゲームのショットは3種類存在し、それぞれの性能の違いがある。ショットの変化は下記のアイテム取得によって切り替えられる他、使用しているショットによってボンバーの性能も変化する。以下その詳細。
    • 「バルカン」:赤のショット。ゲーム開始時の初期ショットにあたる。連射が効き攻撃範囲が広い万能型バルカン。最大パワーアップ時には前方をほぼカバーできる範囲の通常弾に加え、前方へ火球弾を放つ攻撃が追加される。ボンバーは自機の中心から反時計回りで拡散していき、画面のほぼ全範囲を攻撃できるが攻撃力は低め。
    • 「ライトニングレーザー」:青のショット。殆どの敵を貫通する*3上にホーミング性能を持つが、攻撃力が低く状況によっては連射が効きにくいデメリットも持つ変則的レーザー。ボンバーは自機前後付近にしか攻撃判定がないが攻撃力の高い性能。
    • 「ミサイルシェル」:黄のショット。攻撃範囲は狭いが攻撃力に長け、パワーアップしていくと一部攻撃にホーミング性能が付加される火力重視ミサイル。ボンバーは自機の直下で爆発しつつ、画面の半分程度の範囲を攻撃してくれる性能を持つ。攻撃力は赤と青の中間。
  • アイテムキャリアーを破壊すると専用のアイテムを落とす。以下詳細。
    • 「赤」:自機ショットをバルカンに切り替える。
    • 「青」:自機ショットをライトニングレーザーに切り替える。
    • 「黄」:自機ショットをミサイルシェルに切り替える。
    • 「P」:今所持しているショットがパワーアップする。最大で9段階。
    • 「B」:ボンバーストックが増える。最大20発までストック可能。
    • 「S」:自機の移動速度が最大3段階まで上がる。
    • 「1UP」:自機が1機増える。
    • 「2UP」:自機が2機増える。出現するのは非常に稀。
    • 「特殊P」:今所持しているショットのパワーランクを最大まで上げ、さらには一回だけ敵ダメージを無効化してくれるシールド効果も得られる。
      • 既に効果を得られている状態で、そのアイテムを取得するとスコアボーナス(5000点)が入る*4
  • 残機制で全て無くなるとゲームオーバー。このゲームの復活は場所によって違い、道中戦でミスすれば戻り復活、ボス戦でミスすればその場復活という形式を採用している。
  • 各面をクリアするとその面の固定ボーナススコア(クリアした面×10000点)に加え、クリア時点での「ボンバーの残数×5000点」が追加ボーナススコアとして加算される。
  • 海外版は操作方法に以下の変更点が挙げられる。
    • 8方向レバー+6ボタンとなり、ボタンの配置はストIIなどの対戦格闘コントローラーと同じものとなっている。
    • ボタンは上3つは左から「バルカン」「ライトニングレーザー」「ミサイルシェル」の3種のショットに、下3つは各ショット順の3種のボンバーに対応している。
    • すなわち、好きなショットとボンバーを、アイテム切り替えなしで自由に放てるという操作系統となっており、国内版よりも操作の自由度が増している。
    • 海外版では「赤」「青」の武器チェンジアイテムが出現せず、「黄」に統一されている。しかしアイテムによるショット切り替えの概念がない為、取得してもスコアアイテムのみの効果となっている。また「特殊P」を取った場合の効果も前述のシールドが付くのは国内版と同じだが、「パワーアップ/スピードアップ/ボムなどの各種アイテムをばらまく」という仕様に変わっている。
    • 基板は国内/海外共通であり、国内版の基板でもある部分のジャンパーをカットする事で海外版に変更可能。但し、海外版はCPS1キックハーネス(カプコンハーネス)が必要となる。

問題点

  • 難易度がかなり高い。
    • 敵弾スピードがゲーム開始時から速く、自機の当たり判定が大きい*5上に、回避できるのかどうかも怪しい攻撃も発生する事も相まって、難易度はかなり高い部類。ゲームシステムとしては普通でも、クリアするのは決して容易ではないと思われる。
    • ボムの所持数*6やスコアボーナス化したアイテムの取得、後述のレバー操作などこれらを組み合わせたランク上昇が極端であり、出現するアイテムを全て取得して進むと序盤から高速弾が画面内を飛び交う。この為、中盤まではパワーアップをある程度までに留めて進行することが推奨されている*7
  • かなり豪快に爆風演出を多用している為なのか、ACゲームであるにもかかわらず、ちらつきや処理落ちがやたらと発生しやすい。
    • これにより、画面の状況がわかり辛い環境に遭遇する事もあり、それがミスを招きやすい要因となってしまっている。
  • スコア争いに支障をきたす永久パターンがある。
    • 詳しくは後述のアーケードアーカイブス版を参照。

評価点

  • BGMに関してはそこそこ評価は高い模様。
  • 処理落ち、チラツキの原因にもなっているが、ボス撃破時に爆風や破片が大量に飛び散ると破壊演出が派手。
    • ザコ敵が大量に現れる場面が点在し、群がるザコ敵をライトニングレーザーで一掃したりと、破壊の爽快感は高い。

総評

『TATSUJIN』の影響を受けつつも結果的には『雷電』のインスパイア作となった本作だが(後述)、当時1993年といえば『戦国エース』『雷電II』といった人気の縦シューティングが注目され、ましてやこの時期は対戦格闘ブーム真っ只中だった事が重なり、ひっそりと姿を消した空気な作品であった。家庭用移植は2023年になるまで一切されず、知名度的には後発の『紫炎龍』や『DAIOH GALE』の方が上であり、元となる本作の存在を知る人はかなり少ない現状。
ゲーム単体として見ても、「大味で古臭く、あまり褒められた出来ではない」という評価が一般的で、良作と呼ぶにはかなり無理があるゲームである感は否めない。とはいえ、前作品の『ストライクガンナー S.T.G』の反省が生かされてる部分もあり、シューティングとしてはそれなりに遊べる代物と言えるだろう。


余談

  • 微妙な出来の本作ではあるが、ごく一部に熱狂的なファンが存在する。現存数が少ない事も相まって現在基板は入手困難。
    • そのため、基板屋やオークション等ではプレミア価格で取引される事も珍しくない。
    • ちなみに本作の基板はセタとアルュメが共同開発した基板を使っており、時期的には『マッドシャーク』や『ウォーオブエアロ -Project MEIOU-』の頃と同系統のものと思われる。
    • また、かねてより同系統の基板に搭載されているカスタム音源チップ「X1-010」で問題視されていた「BGMは数~10数秒程度のごく短いフレーズを繰り返すだけ」というサウンドドライバのバグに起因するものは本作では見られなくなっており、ようやく本来の性能が発揮されたものとも言える。
  • 本作の開発メンバーの一部が後に独立して立ち上げたメーカー・童から1997年にACにてリリースした縦シューティング『紫炎龍』は、主にシステム周りの共通点が多い事から「大王の後継作」と認知されやすい傾向にある。
    • デザエモン』の2016年に発見された裏技で見れるスタッフの後書きで、プログラマーの田端氏は「じかいさくは、ダイオー2をつくるよていです」と書いていた。続編の『大王2』が作られることは無かったが、後に田端氏は童に移籍後『紫炎龍』でプログラマー兼ディレクターを務めている。
  • アテナが1994年にてスーパーファミコンにリリースしたシューティングゲーム製作ソフト『デザエモン』のサンプルゲーム『DAIOH GALE』は、本作の外伝的位置付けにある。また、デザエモンの仕様上のシステムであるショットやボンバーの性能*8が本作基準である他、隠しではあるが本作のアレンジ楽曲が収録されている(もちろん、それを自作ゲームで使用する事も可能。)。
    • PS『デザエモン+』、SS『デザエモン2』にも、DAIOH GALEの別バージョンがサンプルゲームとして収録されている。
  • 登場する敵はメカ主体なのだが、その中で異彩を放ち印象に残りやすいとされるのは以下の2体。
    • ステージ2ボスの第一形態は顔が3つ張り付いた奇妙な見た目をしている。『デザエモン2』『デザエモンKids!』収録の「雅シリーズ」は、「顔を受継ぐ者」なのかもしれない……
    • ステージ5中盤にて2本の腕が付いたどこか愛嬌のある外観の中型機が現れるのだが、戦闘中に何度か派手な効果音*9と共に腕を動かして奇妙なポーズを取る。
  • ゲームシステムなどの面で、東亜プラン開発の『TATSUJIN』やセイブ開発開発の『雷電』との類似点が多く見られる。
    • 後半ステージのマップや敵配置*10、ボスデザインは『TATSUJIN』を、漢字2文字とアルファベットのロゴデザインや、ミサイルシェルの挙動は『雷電』を彷彿とさせる。また、『TATSUJIN』と『雷電』、そして本作のいずれも「複数種類のウェポンを使い分ける」というシステムがあることも共通している。
  • 2023年11月2日のアーケードアーカイバーにて本作のプログラマーである田端勤氏がリモート出演した際、これまで分からなかったことが色々語られた。
    + その内容(抜粋) 『大王』というタイトルについて
    • 田端氏の証言によると「タイトルを決める時に社長から「商標が通る2文字のものにしよう」というところから始まり、それに絞って選定をしていく中で自分が「『大王』ってどうですかねぇ?」って言ったら、「あ、いいんじゃない?それにしようよ」と社長の一声でいきなり決まった」旨を述べている*11
    • ちなみにタイトル画面のタイトルコールは田端氏がシャウトした声を加工したもの。

    ランクシステムについて

    • 田端氏いわく「親父システム」と呼んでおり、「シューターにはきつく、親父シューター(いわゆる勘でやってるサラリーマン)には優しめ」という形でランクシステムを搭載したとのこと。
      • このゲーム独自のランクシステムとして「STGの上手い人と下手な人とではレバーの動きが明らかに違うのでレバー入力を見てランク調整がかかる要素を入れた」というもの。「ロケテストの時はシューターの方が見事にハマってくれて(ランクも上がりまくりで)ヒィヒィ言ってた」と田端氏は述べている*12
      • また、「ランク上昇はプレイ中に気づかれにくくするため、内部の値を即座に上げるのではなく1秒毎に1カウントずつ上げて到達時間を遅らせているのに対し、プレイヤーミスやボムの使用でランク値が下がる時は0.25秒毎に1カウント下がることで早めに反映される仕組みにしている」と述べている。
    • ランクシステムのからくりについては前述のアーケードアーカイバーの中で初公開され、田端氏の解説では「ランクが上昇することで変化するのは敵弾の速度と発射間隔だけで敵弾の数は(ランク値の最高/最低に関わらず)ほぼ変化しない」旨が併せて述べられている。
      • また、前述のレバー操作によるランク変動の条件もいわゆる「ちょん避け」を繰り返すとランク値が少しずつ上がり、左右に大きく避ける操作をするとランク値が少しずつ下がるというものである*13
    • 尚、田端氏が童に移ってから手掛けた『紫炎龍』にも(細かいパラメーター値は違うものの)同じランクシステムを組み込んでいるのこと。

    『TATSUJIN』っぽい部分が多いことと変遷について

    • 本作の開発が始まった時、「『TATSUJIN』を作ってください」というリクエストがあり、デザイナーがそれっぽい敵デザインなどを作り、明らかに『TATSUJIN』風なテイストのシステムで開発が進み、最初の3面が出来た時点でロケテストを行うことになり*14、ロケテにしては(製品版よりも)ランクシステムが高難易度寄りにしていたこともあってかシューターが苦しみながらプレイしてくれたおかげ*15でインカムもそこそこあって悪くはなかったのだが・・・
      • ロケテの後、「なんか絵が古臭いのでやっぱり『雷電』にしよう」と社長の鶴の一声から半ば作り直しになってしまい、見た目のいい1面から3面を新たに作って、それまでの『TATSUJIN』風味だったステージは後半の方に持っていく仕様に改められた*16
    • 元々2面が本来の最終面となる予定だったのが、開発途中で前半の方に移ってしまったことで最終面が無くなってしまい、新たに最終面を作ることになった。その時に「ロボット出してみようよ」という話が出て、タイトルデモにも出てくるラスボスのデザインが作られた。しかし、その反面で道中が作れなくなってしまい最終面はいきなりボス戦という展開にせざるを得なかった。この影響で他の面では「ボス戦のみがその場復活」の仕様が、最終面はボス戦でも通常の戻り復活になっている。
      • なお、いつの間にかラスボスが「大王」という扱いになっていたようだがこれについては田端氏も記憶にないとのこと。

移植

アーケードアーカイブス版

  • 2023年11月2日にNintendo Switchとプレイステーション4にて配信開始、30年越しで初移植となる。国内版と海外版とを収録。「こだわり設定」で1P側コントローラーで2P側機体を使用する、ステージ5に登場する特定の敵が毎回1UPアイテムをドロップする原作挙動を再現するか否か*17に加え、海外版のボタン設定で「バルカンとミサイルシェルの交互連射」ボタンを設定可能。ハイスコアモードとキャラバンモードは国内版と海外版それぞれを集計している。
    • 後にアップデートにて「こだわり設定」でゲームプレイ中に上下するランク値を表示させる事が出来るようになった。
    • 権利的な都合の関係でインストカードにあったサミー工業のロゴが削除されている。

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最終更新:2024年04月11日 12:47

*1 また、デモ音設定がONになっている場合はタイトル画面で「だいおぉぉぉぉぉ!!」とタイトルコールも聞くことが出来る。

*2 一応フォローしておくと、グラフィックそのものがショボい訳ではなく、デザインが前世代的というべき外見である。

*3 一部、耐性を持つ敵もいる。

*4 例えばバルカン状態で赤アイテムを取る、フルパワー状態でPアイテムを取る、ボンバーストック最大でBアイテムを取るなど。

*5 具体的に言うと「自機の見た目ほぼそのまま」である。

*6 実際にはボムの所持数に加え、それを保持している時間が長くなるとランクが上がる。この場合はボムを使用すればランクが下がる。

*7 但し、プログラマーの田端氏の発言によるとパワーアップ状態によるランク上昇は他の要素よりも上昇値が低い事が判明しており、後半は「フルパワーに近い状態にまで上げないと敵への対処がキツイ」とまで言われている。また、残機数や自機のスピードはランク変動の条件には含まれていない。

*8 SFC版デザエモンはショット性能などが固定であり、自分好みのショットやボンバーを作る機能は無い。

*9 クレジット投入音と同じ音

*10 分かりやすいのは中ボス格の敵が続々出現するステージ5前半、中盤。

*11 もっとも田端氏自身は「『こんなので決まるわけ無いだろう』のつもりでポロッと言ってしまった」とも述懐している。

*12 流石にひどすぎたのか製品版では弱目に調整された。「ただ、細かくランクが変動するのでゲームとして成り立つように調整をするのは結構難しかった」とも述べている。

*13 とはいえ、「いつか(仕組みが)バレることを避けるため、後者の操作については同じ操作を連続で4回やると逆にランク値が大きく上がるペナルティを入れた。但し、左右移動を3回やった後に上下移動をするとこの状態はリセットされる」ことも述べている。

*14 「ロケテはアテナの社長の知人が経営していた祖師ヶ谷大蔵のゲームセンターに置いてもらった」とのこと

*15 田端氏いわく「大体3面に行く手前で全滅する人が多かった」とのこと

*16 当然ながら各種調整もやり直しになった

*17 問題点で触れた永久パターンに関わる部分のため、ハイスコアモードでは再現オフで固定となっている。