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187 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:48:44.80 ID:PFwEHQpd0
『α、β、共にチェック終了しました。十三番、十八番は内圧を百八十に調整。三十二番はロスト、破棄しました』 

『……』 

『お父様?』 

『……シュラトとゲーリーの動きがおかしい。なにか隠している。あなたもそう思いませんか?』 

『はい、両名とも不可解な行動が目立ちます。十中八九、情報をリークしているものと思われます』 

『問題はリーク先、ですか……』 

『他研究所ならば私の情報網にひっかかるはずです。……恐らくは』 

『政府。それも中枢も中枢ですか……』 

『その可能性が最も高いでしょう』 

『……どうしたものでしょう……』 

『……』 

『もし、ここになにかあっても、あなただけは逃げてください』 

『はい』 

『設備が、研究所が、この星が砕けようとも、あなたがいれば、あなたがいれば私の意志は残る。あなたさえいれば――』 

『はい』 

190 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:50:13.65 ID:PFwEHQpd0
                         ―― 七 ―― 



( (◎) )「テメエらがそこの色ボケじじィ殺るのは構わねェんでェすがァ、DATはボクの主様のモンなん 
       でェすよォ。手垢のついたきたねェ手で触れられちゃァ、困ンでェすよねェ」 

 アナンシがしゃべるたびに顔を構成している目玉が零れ落ちる。零れ落ちた目玉は膨れ上がっていき、周りの 
目玉蜘蛛と同じ大きさになった。巨大化した目玉が細かく蠢き、例のキシキシ音を立て、内部から表層を突き破 
って脚が生えて来た。脚にはぬるりとした液体が付着しているようで、赤色灯の下でもてかっているのがわかっ 
た。確認するように、瞳孔と虹彩部分の口を開閉していた。 

 アナンシが歩く。床に敷き詰められた目玉蜘蛛を避けようともせず、むしろ、進んで踏みながら歩いている。 
目玉が零れ落ちた隙間に、顔の内側から視神経のようなものの束が伸びてきた。束の先端がぷっくりと丸みを帯 
びる。丸みを帯びたそれは、肥大化し、先程までついていた目玉とまるで同じものとなった。触覚のように垂れ 
下がっていた目玉と視神経の束は、内側から引っ張られるように顔の位置に戻り、隙間を埋めた。 

 目玉を落とし再構築するサイクルが、高速で行われていく。当然、そのサイクルによって敵の数は増大してい 
く。床を敷き詰めるだけだった目玉蜘蛛が、今は互いに乗り合ってい、僕の腿の辺りまで目玉蜘蛛に埋め尽くさ 
れている。 

( (◎) )「まったく困ったじじィでェすよォ。おっチんじまったテメエのガキの代わりを、事もあろうにモ 
       ノで代替しようッてンでェすからねェ!」 
( ※ <●>)「この子はものではない。生きている私の娘です」 

 アナンシがワカッテマスと顔を突き合わせ、笑い声を上げる。馬鹿にするような笑い方だ。 

( (◎) )「はッ! 聞きヤがりまァしたかァ、ボクの敵ィ! これが娘だとよォ、意思を持たねェDATを 
       娘だってよォ! 耄碌しヤがりましたかクソじじィ! おいッ、ボクの敵ィ! 言ってやってく 
       ださァいよォ、さっきみてェによォ、それはモノだってよォオ!!」 

193 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:51:43.83 ID:PFwEHQpd0
( ※ <●>)「ペニサスはまだ生きていないだけです! あなたが私を貶めようとし、DATの存在を教えた事 
       はわかってます。ですが、DATに想う力を移植し、娘を、ペニサスをこの手で抱くことができ 
       るのは、紛れもない事実だ!」 

 目玉蜘蛛が腰の位置まで競りあがえい、身動きが取れなくなる。足元に、粘ついた液体の感触。見ると、重さ 
に耐え切れず、下の方の目玉蜘蛛が潰れているようだ。 

( (◎) )「それは叶わねェんでェすよォ! ボクの“たのしみ”のためにテメエは翻弄されてェ! ここで 
       喰われて尽きンでェすからよォ! 想いごとォ! ボクがァ! 喰らい尽くシてヤんだからよォ 
       オオオオオッッッ!!」 

 すべての目玉蜘蛛からキシキシ音が鳴り、部屋を満たす。いや、最早音ではない。鼓膜が破られ、脳を喰らい 
尽くされそうだ。 

( (◎) )「だいたいィ、DATに意思を入れてナニしヤがるつもりなンでェすかァ? 絶対逆らわねェペッ 
       トにでもしヤがンでェすか!? そりゃァいいでェすねェ! そいつァいい“便器”になりそう 
       だァアア!!」 
( ※ <●>)「……なにを」 
( (◎) )「知ってンだっ“ツ”ってんでェすよォ! テメエが自分のガキに女房の面影写してるンのはよォ 
       オ! 腰振ってハッスルしヤがンでェすかァ!? おいクソじじィ! 腰の萎びたモンは使いモ 
       ンになンでェすかァ!? 勃たねェとイかせることもできねェでェすよォ!! じじィはおとな 
       しく“マス”かいてろってンだァァアアア!!」 

 反射的に、僕の体は動いていた。とても許せなかった。純粋な想いを踏みにじる目の前の敵を。敵が男を嘲る 
たびに、想う事を否定された気になった。 

 目玉の洪水を掻き分け、駆ける。 

(主;゚ω゚)「い、……があああぁぁぁッ!?」

195 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:53:13.41 ID:PFwEHQpd0
 細かい刃が少しづつ侵入していく激痛。腰に、脚に、腕に、全身に。外そうにも、体を動かせない。目玉蜘蛛
は僕を咬み千切ることはせず、中途半端なところで刃を留めている。 

( (◎) )「“たのしみ”はまだ終わってねェんでェすよォ、ボクの敵ィ。なんでボクが、こんなしちめんど 
       くせェことわざわざしてると思ってンでェすかァ。テメエらの目玉が飛び出るくらいのォ、とび 
       っきりの絶望を与えるためだろうがァ!」 
(´・ω・`)「いや、それは違うね」 

 ショボンの声が聞こえる。体を動かすことができないので、今どんな表情をしているかはわからない。 

( (◎) )「呼んでもいねェのにノコノコおいでェなすった来賓の方がァ、何か言いてェことがありヤがんで 
       ェすかァ?」 
(´・ω・`)「貴様の目玉蜘蛛は単体では脆く、殺傷能力も低い。群体で攻めかかろうとも、限定された空間でな 
      い限り、それ程の脅威にはなりえない。幾らでも対処の仕様はある。最終的には逃げてしまえばい 
      い。問題なのは、逃げ場のない空間にいるときだ。圧倒的質量で動きを封じられ、少しづつ体を削 
      られ、弱った所をやられるからな。お前は、限定空間で相手を仕留め、確実にDATを奪取するた 
      めに、クルベをここに呼んだんだ」 

 アナンシが笑う。 

( (◎) )「よくできまァしたァ、おりこうさァん! で、そこまでわかってて何でそんな冷めた面ァしてや 
       がんでェすかァ? ボクが無関係の人間を殺さないとでも考えヤがってンでェすかァ?」 
(´・ω・`)「いや、貴様は殺すだろう。躊躇うことなく、本当に無関係な人間でも殺す。貴様からは、血のにお 
      いがする。この世界でも、意味もなく殺戮を繰り返したんだろう? 相互干渉できないはずの秩序 
      を、DATの力で無理矢理捻じ曲げて」 
( (◎) )「気に喰わねェなァ! そこまでわかっててェ、なんでンな超然としてヤがんだァア!!」 

 わらいごえ。アナンシのものではない。もっと冷たく響く嘲笑。 

(´・ω・`)「テメエみてェな小物にィ、“悪霊”は殺せねェっ“ツ”ってんだよ」

197 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:54:42.48 ID:PFwEHQpd0

 雷光が駆けた。体に纏わりついていた重みが消え、膝が折れる。目玉蜘蛛だったものの残骸が壁に張り付いて 
いた。僕の周りにいたものだけではない。かなりの数の目玉蜘蛛が消滅していた。赤色の中に、入り口から白い 
光が差し込んでいる。扉が閉まり、白い光が消えると、それはよく見えた。入り口から直線状に、床が抉られて 
いる。その先に、雷光の正体がいた。 

 革の焦げるにおいを発しながら、そいつは立っていた。足元の高級そうな革靴から、煙が上がっている。全身 
をダークグレーでコーディネートした後姿。喉にあてがわれた、冷たく薄い感触がよみがえる。 

(主;゚ω゚)「渋沢!?」 
( ,_ノ` )「……呼んだか?」 



(主;゚ω゚)「どうして!? いや、どうやってここに!?」 

 ショボンの言葉を信じるまでもなく、あの箱は相当長い距離を移動していた。箱がもう一度上まで登り、それ 
からまた降下する時間を計算すると、渋沢がここにいるのはどう考えてもおかしい。通路を歩いていた時間と、 
会話していた時間を足しても、片道分がいいところだ。 

( ,_ノ` )「帰りはがんばってくれ。あのエレベーター、バラバラになった」 
(主;゚ω゚)「まさか、落ちたのかお! あの距離を!?」 
( ,_ノ` )「馬鹿な、跳んだのさ」 
(主;゚ω゚)「同じだー!」 

 そこまで言って、気づいた。赤い照明のせいで見えづらかったが、渋沢の体は僕に負けず劣らずの血まみれ状 
態だった。両腕を力なくぶら下げ、指先から血を垂れ流している。パリっと決まっていたスーツは破れ、中の筋 
肉が露出している。腹の真ん中に、人の頭がすっぽり嵌りそうな、不可解な陥没が見られた。額からもとめども 
なく血が溢れ、下の肌色が覆い隠されている。それでも渋沢は、押し殺した声で“くっくっ”とわらった。

202 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:56:11.68 ID:PFwEHQpd0
( ,_ノ` )「どうした少年。まるで死人でも見たような顔して」 
(主^ω^)「この状態で生きてる人間を見るくらいなら、死人を見たほうが驚かない自信があるお」 
( ,_ノ` )「少年こそ、それでよく生きてるもんだ」 
( (◎) )「『ライトニング』ゥ……。裏切るつもりでェすかァ?」 

 軽口を叩き合っていると、遮るようにアナンシが声を上げた。 

( ,_ノ` )「裏切るんじゃない、仕事をキャンセルするだけだ。どっちにしろお前にとっちゃ同じだろうし、俺 
      にとっても同じ事だがな」 
( (◎) )「なぜガキどもの味方なんてしヤがンでェす。テメエにとって利益なンぞねェってのにィ」 
( ,_ノ` )「少年に対して、黙ってたって負い目があるからな、そいつを晴らしたいだけだ。別に味方をするわ 
      けじゃない。それに、お前を斬ってみたかった」 

 渋沢の言葉が終わるか終わらないかという瞬間、ガラスの割れる甲高い音が聞こえた。音のした方向へ目を向 
けると、男が肘をシリンダーの中へと突っ込んでいた。緑色の溶液がシリンダーの中から流れ出る。溶液の緑に 
紛れて、男の肘から赤色が流れ出ていた。 

 男はシリンダーの切り口に触れる事も厭わず、DATの少女を抱き上げた。歩く事すら困難に思える体を、俊 
敏に動かし、僕の方へ駆けて来る。 

 僕は、自分から道を譲った。 

 男はそのまま駆けつづけ、部屋から出て行った。僕はその様子を、ただ呆然と見つめていた。 

(´・ω・`)「クルベ!」 
(主 ゚ω゚)「……あっ」 

 ショボンの言葉で我にかえる。男はDATを持っているんだ、はやく追いかけないといけない。男は人ひとり 
分余計に重りを背負っているが、僕の方も万全に動けるとは言えない。はやく追いかけないと、見失ったまま逃 
げられてしまう。体を揺り動かし、入り口へと向かう。 

203 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:57:40.91 ID:PFwEHQpd0

( (◎) )「だァれが逃げていいっ“ツ”ったよォォオオ!!」 

 残った目玉蜘蛛が入り口を塞ぐ壁になる。まだいけると思い、肩を突き出して特攻する。 

(主;゚ω゚)「! か、はぁッ!」 

 上から圧し掛かる急激な重みによって、僕の行動は阻まれた。目玉蜘蛛のぬらっとした感触が、纏った服の上 
から伝わってくる。重みが増す。内臓が口から吐き出されそうになる。僕の目の前に、目玉蜘蛛が落ちてくる。 
天井に残っていた目玉蜘蛛が、僕目掛けて降りかかってきているらしかった。 

 首を亀のように伸ばす。その上に圧し掛かる重み。キャップを握ったほうの腕を這いずりだす。目の前の目玉 
蜘蛛が、細くなった手首に合わせるように咬み付いてきた。拳が口内へと喰われていく。押し潰された体からは、 
悲鳴すら上がらない。 

 想う事もせず、咬み付いている目玉蜘蛛にDATを突き立てる。喰われた拳に力を込め、キャップごと目玉蜘蛛 
の内臓を引きずり出す。咬み付かれた刃の形に合わせて、肉が削げていくのがわかった。けれど、このキャップ 
は大事な絆なんだ。痛みなど気にしていられない。消化なんて、させてたまるか。 

 圧し掛かる重みが更に強くなった。まぶたを閉じる事ができず、頭の奥から目玉が飛び出そうになる。腕にも 
重みが襲い掛かり、完全に動けなくなった。キシキシ音と、目玉蜘蛛が潰れる音に耳内を支配され、潰れた目玉 
蜘蛛から溢れだす液体と、身にかかる重さに感覚を支配された。 

 地響きが起きる。最初は気のせいかと思った。少しだけ大きくなる。目玉蜘蛛の重みのせいで床が潰れたのだ 
と思った。地響きは更に強まっていき、最高潮に達した瞬間、何かが爆発した音が轟いた。爆発音によって、僕 
の耳内の支配者が変わった。支配の合間から仄見えるか細い音は、繊維を引きちぎるような音をしていた。 

 感覚の支配者が消える。飛び出しかけた目玉が引っ込み、一度強くまばたきをする。まともに視界が開けるこ 
とが、こんなにもしあわせなことだとは思わなかった。埃舞う先に、人の足が見えた。 

205 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 21:59:11.43 ID:PFwEHQpd0
 首を上げる。見えるのは、普通の成人男性よりも一回りも二回りも大きな体躯。異常なまでに膨れ上がった筋 
肉。人の頭よりも巨大な拳。何を考えているのかわからない瞳。人というよりも、筋肉の固まりにしか見えなか 
い。僕は、素直に思ったことを口にした。 

(主;^ω^)「あんた……、誰だお?」 
(*゚∋゚)「…………」 



 砂みたいに粉々になった破片が降っている。天井を見上げると、人が通れそうな馬鹿でかい穴。穴の奥は照明 
も届かない暗闇に包まれている。まさか、掘ったのか、あの距離を。んなバカな。目の前の筋肉を見上げる。 

 筋肉も、僕や渋沢と似たような状態だった。全身赤まみれの、生きているほうがおかしな状態。隆起した筋肉 
の下、骨らしきものが覗いている。胸から腹にかけて元の皮膚が見えないくらいに斬り裂かれている。頬の横に 
穴が空いており、筋肉が呼吸するたびに口腔の肉が見えそうになる。特に危なげなのが肩だ。繋がっているのが 
不自然なぶら下がり方で、線維のようなものが見え隠れしているしている。引っ張ればそのままもげそうだ。 

 首だけを動かし、ショボンを見る。ショボンも僕と同じような格好で床にへばりついていた。動いている所を 
見ると、死んではいないようだ。僕から浴びた返り血も褪せるほど、全身隈なく赤まみれだ。目玉蜘蛛の血が主 
だろうが、自身の血液も出ているだろう。少しだけ、ほんのちょびっとだけ、いい気味だと思った。 

 ショボンのそばに渋沢が立っていた。相変わらず腕をぶら下げたままだ。もしかしたら、動かせないのかもし 
れない。それ以外も、当然治っているはずはない。自身が流した血と、新たに浴びた返り血によって赤まみれだ。 
陥没した腹に沿って、雫が伝い、落ちている。 

 そして僕。直接見ることはできないが、その必要性は感じられなかった。目玉蜘蛛の血液が、鉄のような重さ 
を持つほどに染み付いている。目にかかった髪先も、元の色がわからなくなる程に真っ赤。腕の先に握ったDA 
Tとキャップまで血まみれの、赤まみれ。 

 この体制では見ることのできない目玉野郎、アナンシ。血を被る必要もないほどに、赤まみれの姿をしている。 

209 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 22:00:40.45 ID:PFwEHQpd0

( (◎) )「『ライトニング』ゥゥゥ! 『ビースト』ォォォ! なぜボクの邪魔をするかァァアアアア!!」 

 アナンシが今までにない怒声を上げる。甲高いだけでなく、異様なまでに大きい。耳の中がぶち破られそうな 
衝撃。空のシリンダーが衝撃波によってひび割れた。僕は頭をふらつかせながら、立ち上がる。 

(主^ω^)「任せて、いいのかお?」 
( ,_ノ` )「少年、“らしい”ことをやってこい」 

 ショボンが頭をゆらしながら立ち上がり、駆け、渋沢の横を通り過ぎる。 

( ,_ノ` )「ショボン、今度会ったら斬らせろ」 
(´・ω・`)「ごめんだよ」 

 ショボンが僕の横に並ぶ。僕も一緒になって駆け出す。 

( (◎) )「だから逃げんなっ“ツ”ってんだろうがァァアアア!! アアアアアアアアア!?」 

 アナンシの叫びと同時に、大量の目玉蜘蛛が後方から跳びかかってくる。気にせず、駆け、筋肉の横を通り過 
ぎる。直後、僕がいた場所が筋肉によって踏みつけられ、粉砕される。粉砕された床の破片は空へと舞い上がり、 
目玉蜘蛛の行く手を遮る厚い壁となった。 

 ふたりを残し、入り口まで駆ける。入り口の扉が壁の中に吸い込まれ、赤い部屋の中に白い光が差し込んでき 
た。白い光の中へと全力で駆け込む。赤色が消え、健全な色が視界の中を満たした。 

 振り向くと扉が閉まっていた。渋沢と、名も知らぬ筋肉さんの無事を祈った。 



(´・ω・`)「! こっちだ!」  

211 名前: プロスキーヤー(山梨県) 投稿日: 2007/03/17(土) 22:02:11.54 ID:PFwEHQpd0

 ショボンが叫び、降下する箱があったのとは逆の方向へと駆け出す。僕がいた所からでは角度的に見えなかっ 
たが、ショボンからは男がどちらに向かったのか見えていたのかもしれない。 

 長い無機的な通路を駆けながら、途中で見つけた個別の部屋もすべて調べまわった。男の持つDATを見つけ 
なければならない。けれど、それと同じくらいに、それ以上に、しぃのことが心配だった。共鳴によって近くに 
あることがわかるDATよりも、どこにいるのか、どうしているのかわからないしぃのことが心配で仕方がなか 
った。 

(主;゚ω゚)「……うっ、あっ……」 

 開け放った部屋の中。しぃも男もいない。だが、視線を外すことができなかった。DATがいれられていたの 
と同じシリンダーの中に、人間の臓器らしきものが入っていたのだ。まさか、という気持ちと、そんなはずはと 
いう想いが、胸のうちでせめぎあう。 

(´・ω・`)「これはしぃのものじゃない。急ぐぞ」 

 ショボンが断定的な口調で言った。不安が晴れたわけではなかったけれど、僕は従った。 

 駆けつづけていると、一本の長い通路の先が、ふたつに分かれていた。ショボンが立ち止まり、床を見て、何 
かを思案するような表情をしている。 

(´・ω・`)「二手に分かれよう。僕はこっちへ行く。きみは向こうを探してくれ」 

 早口でそれだけ言うと、ショボンは駆けていった。僕も考える事で時間を費やすような真似はせず、示された 
道に向かって駆けだした。両の手の中、それぞれ違う感触を握りしめて。 



                         ―― 了 ――
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