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490 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:04:18.57 ID:GFGpUJzm0
 V103はどうやら無人のようだった。 
微かに部屋に残る廊下とは違う暖かな匂いに、僕はヒステリックな彼女を思い出していた。 
そう言えば彼女はブーンのガールフレンドだったか。 
2人揃ってイライラしていたのは、会えないストレスからだったのだろうかと僕は憶測をした。 

  (*゚ー゚)「誰も居ないね」 
(主^ω^)「お」 

ショボンには連れて行けと言われただけで、その後の行動は指定されていなかった。 
一体この先は何をしたらいいんだろうか。 
そう言えばこの部屋にはDATがあったんだ。今なら持ち出すチャンスかもしれない。 

  (*゚ー゚)「ねぇ、変態さんのお名前は?」 
(主^ω^)「僕かお?」 

突然名前を聞かれて答えようと開いた僕の口は、しかし名前を紡ぎ出せずに硬直してしまった。 
名前が思い出せなかったのだ。 
いや、思い出せないと言うよりは空白。名前があった場所にぽっかりと穴が開いているのだ。 

495 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:05:58.88
(主;^ω^)「う……あ……」
  (*゚ー゚)「まさか、すっごい恥ずかしい名前とか?」
(主;^ω^)「その……」
  (*゚ー゚)「わかった! 実は女の子みたいな名前だったとか!」

盛り上がる少女をよそに、僕は突発的なアイデンティティクライシスに陥っていた。
思春期に感じるようなものではなく、本当に自分と言う存在がバラバラに砕け散って、 
いつの間にか無くなってしまうかの様な危機感。 
僕は本当にここに居るのだろうか。

  (*゚ー゚)「ねぇ、どうしたの? そんなに名前を言うのがイヤなの?」
(主^ω^)「僕は……」

DATを取り返さなければいけない。世界の為と言うよりは寧ろ自分自身の為に。
改めて僕は決意を固めた。話が一段落したらあれを持って行こう。 

  (*゚ー゚)「ねぇ、聞いてる?」
(主^ω^)「聞いてるお」
  (*゚ー゚)「もう……。あ、そういえば私の名前知ってる?」 

僕は首を横に振った。 

501 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:08:12.52
(*゚ー゚)「私は、しぃ。お兄ちゃんは、よく『しぃのすけ~』とか『しぃたけ~』とか変な呼び方するけど
     間違えないでね」

その言葉だけで僕は容易に仲の良い兄妹を想像することが出来た。 
兄思いの妹に、妹思いの兄。この2人には出来るなら幸せになって欲しいと、僕は思った。 

(主^ω^)「わかったお。しぃちゃん」
  (*゚ー゚)「しぃちゃんはなんか子供っぽくてヤだよ。それになんか、気持ちわるい」
(主;^ω^)「きも……」

確かにちょっと照れはあったけれども気持ち悪いと言われるのはショックだった。
自分では気付いていないだけで、僕はそんなにも挙動が変態染みているのだろうか。

(*゚ー゚)「いつになったら会えるんだろ……」

唐突に、ぽつりとしぃが呟いた。
それを聞いた僕は途端に切ない気持ちになってしまう。

(主^ω^)「……」

しかし思い浮かぶ慰めの言葉全てが今のしぃには軽すぎるような気がして、僕は何も言えなかった。

507 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:10:08.68

(*゚ー゚)「あ、忘れ物した!」

澱んだ空気の中、弾ける様な声でしぃが大きめの独り言を発した。 

(主^ω^)「忘れ物?」
  (*゚ー゚)「うん、お兄ちゃんとの写真。あの台の引き出しの中に入れっ放しだった」
(主^ω^)「別に無くなったりはしないと思うお」 
  (*゚ー゚)「でも不安だよ~。あれ1枚しかないし。お願い! 持ってきて!」
(主;^ω^)「ぼ、僕が?」
  (*゚ー゚)「だって私はここに居なきゃショボンが困っちゃうでしょ」

けれども僕はそこにあるDATを早く手に入れたい。 
写真なんて引き出しに入れておいて先ず無くなるわけがない。 
そうだ、このままDATを取って僕は帰るべきだ。 
だってあのDATには世界が掛かっているんだから。 

  (*゚ー゚)「どうしたの?」
(主;^ω^)「……お? い、いやなんでもないお」

僕はチラチラとラジカセの方を見ながらも、結局はしぃに言われたとおりに写真を取りに
行くことにした。
この世界なんて僕には関係ないとあんなに思っていたのに、僕は何をしているのだろうか。
でも、それにしても少し自分勝手な考えをしていたかもしれない。

513 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:12:05.00

 しぃの部屋に戻り言われたとおり引き出しを開けると、確かにそこには1枚の写真があった。 
兄がしぃを抱えているのか2人の顔の高さはほぼ同じで、しぃはそんな兄の肩にしがみ付いていた。 
2人は互いの頬を寄せながら、こちらに笑顔を向けピースサインをしている。満面の笑みだ。 
頭にリボンを結ぶしぃは今よりもまだ少し幼いようだった。 
照りつける日差しは夏のものなのだろうか。2人の服装も薄着で背景には真っ青な空が
ずっと広がっていた。
その写真には間違いなく幸せが写っていた。 

(主^ω^)「……」 

僕は写真を胸ポケットにそっと仕舞うと、夏の匂いを思い出しながら部屋を後にした。 
夏の匂いは思い出すだけで僕の心を暖めてくれた。 

518 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:13:55.25 ID:GFGpUJzm0
 再び戻ったV103の扉の前には、どう言うことか大きなベッドがあった。
V103にあったものだろうか。事態は把握できなかったが、僕はベッドの脇に佇んでいた 
ショボンを見つけると挨拶の意を込めて手を上げた。 

(´・ω・`)「何処に行ってたんだ」 

ショボンの表情はいつもの通りだったが、どうにもその声色がワントーン低いように感じられ、 
僕は多少尻込みした。

(主;^ω^)「その、忘れ物を……」
 (´・ω・`)「忘れ物? ……まぁ、いい。このベッドをV154まで運んでくれ。あとこのラジカセもな」

そう言ってベッドの上に置かれたのは間違いなくDATの入っているあのラジカセだった。 
思わぬ形で転がり込んできたチャンスに、僕は嬉しさを表に出すまいと我慢しつつ頷いた。

 (´・ω・`)「わかったら行ってくれ。僕はまだまだやらなきゃいけないことがあるんだ」
(主^ω^)「わかったお」

多少の冷たい言い草も今の僕には関係なかった。 
今すぐDATを持ってこの世界とさよならをしてもいいのだが、最後に一仕事するくらいは 
良いだろうと、僕はベッドを引き摺りながらV154を目指して歩き出した。

524 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:16:19.44 ID:GFGpUJzm
 部屋の適当な場所にベッドを置いてそれに腰掛けると、僕は早速反対側にあるラジカセに
手を掛けようと体を伸ばした。 
すると自分のポケットから何かがヒラヒラと掛け布団の上へ落ちるのが見え、視線を移した。 
それはついさっきしぃに頼まれて持ち出した写真だった。 

(主^ω^)「……」

関係ない。僕はここでDATを取って帰るだけだ。 
写真なんてここに置いておけばきっと後で戻ってきた時に気付くはずだ。 
何か悪いことをしているだろうか。僕はたまたまこの世界に来ただけで関係者ではない。 
世界を救うDATと写真、そのどちらが僕にとって重要かなんて考えるまでも無い。
だが僕の腕はそれきり全くラジカセに近づくことは無く、ただ視線は写真の笑顔に釘付けに
なっていた。 

(主^ω^)「……ふう」

焦ることは無い。写真を持って行くくらい良いじゃないか。どうせすぐそこだ。 
そう思い僕はベッドから勢いよく飛び降りると、早足でしぃの居る部屋に向かった。 
滑稽だ。行ったり来たり、僕は本当に何をしているのだろうか。心が、落ち着かない。 

529 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:18:03.19
 それを聞いたのは丁度道のりの半分位に差し掛かったときだった。
ここの制服を着た男が2人、何かを話しながら向こうから歩いてきていた。
そして擦れ違い様に聞こえてきた話が妙に僕の心に引っかかったのだ。 

「で、もうバラしちゃったわけ」
「いや、ヌいたただけ。あとは今日中にバラして各家庭へ……ってな」 

(主^ω^)(……?) 

僕は立ち止まり耳を澄ませた。 

「哀れと言うか何と言うか」
「わざわざ戻ってくるなんて頭おかしいよな」 
「D221は通り道なのによぉ、なんか不気味で仕方ないわ」 
「よく言うぜ。出荷前のスパイスだとか言って鉢合わせさせたことあるくせに。あいつも確か妹居たよな」 

その会話に僕は更に興味と不安を覚え、2人の男の跡をゆっくりとつけ始めた。 

「そうそう、こんなちびっ子な。もう買い手付いたんだっけ?」 
「あぁ、もう何件かには絞ってるってさ。面白いことに兄貴の肉を予約した奴も要るぜ」 
「胃袋で感動のご対面ってか! ははは! でもずっと生き地獄よりは良いだろうな」 
「兄貴の肉が豚のエサじゃなけりゃあな」 
「ははは!」

そこまで聞いて次の瞬間には既に、僕はD221を目指していた。 
ただの偶然に決まっていると心の中で呟きながら。 

537 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:20:50.85 ID:GFGpUJzm0
 Dなんて付く場所には行ったことは無かったが、それでも迷うことなく着くことが出来た。 
空気が澱んでいるのを肌で感じるほどに嫌な場所だった。 
見た目には他と変わらないにもかかわらず、だ。 

(主^ω^)「……D221」 

程なくして目的の部屋に辿り着くと、僕は声に出してその部屋番を確認した。 
気味の悪さから肌寒く感じているのかと思っていたが、握った取っ手がひんやりと冷たかった。 
躊躇うことも無く、考え込むことも無く、僕はただ扉を開けた。 

 中からは一層冷たい空気が溢れてきて、それと同時に僕の目にはこちらに足を向けて 
大の字に寝る裸の人が見えた。 
言い知れぬ不安を感じながらも、僕の胸には既に確信めいたものが湧いてきていた。 
しかし僕はそれを否定して欲しくて部屋の中へ踏み入った。 

(主;^ω^)「……」 

予想はしていてもショックは抑えられなかった。 
眠っているかのようなその顔は、写真で見た優しそうなしぃのお兄さんのものだった。 
そして、やはり既に事切れていた。 

(主^ω^)「……」 

恥ずかしいことではあるけれども、僕はこの時頭の中では既に帰るまでの手順を考えていた。 
しぃに会いたくなかった。会ってしまったら僕はきっとしぃに勘繰られてこの事実を関節的に伝えてしまう。 
そんな気がしていた。 
だから早足にその部屋を出て、僕はV154を目指した。 
心の赴くままに。早くDATを回収するために。 
もう、全てから逃げ出したかった。 

541 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:22:11.84
 V154の扉をなんら躊躇うことなく開けると、僕は一目散にDATに向かおうとして、見えた光景の 
予想との相違に面食らった。 
部屋の中にはブーンの彼女が居たのである。 

(主;^ω^)「な、何で居るんだお」 
ξ;゚⊿゚)ξ「あんたこそなんで入ってきてんのよ」 
(主^ω^)「お?」 

前回に比べ数段柔らかい彼女の物腰に、僕は軽い親近感を覚えた。 

(主^ω^)「怒らないのかお?」 
ξ゚⊿゚)ξ「……あんたに怒っても仕方ないもの。似てるけど、やっぱり全然違う。この前は 
       ちょっとびっくりしただけ」 
(主^ω^)「それは良かったお。ところで……」 

僕はチラリと視線をラジカセの方へ向けると、彼女の様子を窺いながら言った。 

(主^ω^)「あの中に入ってるメディアが欲しいお」 
ξ゚⊿゚)ξ「絶対ダメ」 
(主;^ω^)「あぁ……」 

即答だった。 
OKを貰える自信なんて無かったが、ここまで即座に拒否されるとは思っていなかった。 

546 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:23:55.31
(主^ω^)「どうしてもかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしても」
(主;^ω^)「……なんでそんなに大事にしてるんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「だって、今の私にはこれしかブーンを感じることが出来るものが無いんだもの。 
       絶対に渡せない」
(主^ω^)「そんなにブーンが好きなのかお?」 
ξ゚⊿゚)ξ「……当たり前じゃない。止めてよ、改めて言うまでも無いわ。どうしてブーン以外を 
       好きになれるのよ」 

いまいち回答としてずれていると思ったが、話の中身は掴めてきた。 
つまり彼女にはメディアじゃなくて、中身が重要なのだ。 

(主^ω^)「そうだ、じゃあダビングをするとか」 
ξ゚⊿゚)ξ「私にコピーを聴けって言うの? イヤよ。これは私だけの物なの」 
(主;^ω^)「えー……」 

名案だと思ったのに簡単に一蹴され、僕は唸りながら床に座り込み頭を抱えた。 
さっき取っておけば良かったと、今更ながらに後悔せずには居られなかった。 
そう思いながら先ほどの無人の部屋を回想していると、ふと写真の事を思い出した。 
そしてこちらもさっき渡しておけば良かったと、やはり後悔せずには居られなかったのだ。 

(主;^ω^)「……」 
ξ゚⊿゚)ξ「……」 

苦悩の表情で見つめてみたが、やはり駄目だった。 
こんなにも僕が困っているのに意地悪をして何が楽しいのだろうか。 
僕は段々と腹が立ってきて思考が定まらなくなってきた。 
頭の中にDATが欲しいという思いだけが、ぐるぐると渦巻いている。 

555 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:26:13.62 ID:GFGpUJzm0
ξ゚⊿゚)ξ「なに?」 
(主^ω^)「……」 

そう、大丈夫だ。何も怖いことなんて無い。 
この世界には、もうこれきり来ることなんて無い。 
躊躇うな、僕。今手に入れなければまたややこしいことになる。 

ξ;゚⊿゚)ξ「ねぇ、ちょっと……」 
(主^ω^)「……」 

気付けば僕は彼女のすぐ目の前まで歩み寄っていた。 
頭の芯がふわふわとアルコールに浮かんでいるような感覚。 
僕はそのまま彼女の首筋に手を伸ばして――突然しぃの顔が目の前に浮かんだ。 

(主;^ω^)「!」 
ξ;゚⊿゚)ξ「……」 
(主;^ω^)「……また来るお」 

走り去るようにして、僕はその場を後にした。 

 何を考えている。あり得ない。一時の感情に流されそうになった。何故、どうして。 
夜まで待とう。夜まで待って寝静まった頃にこっそり取ってしまおう。その方が良い。 
混乱する頭を整理しながら、僕は胸の辺りを手で押さえて廊下を早足で歩いていた。 
その途中ショボンと擦れ違ったが、酷く疲れた顔をしていて、どうやら僕にも気付いていない 
様子だった。仕事が忙しいのだろうか。 
しかしながら僕も人の心配をする余裕が無かったので、話し掛けずにそのまま部屋へと戻り、 
まだ陽は落ちていなかったが夜に備えてそのまま寝ることにした。 

563 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:28:54.56 ID:GFGpUJzm0
 僕は何て馬鹿なんだろうと燦々と窓から降り注ぐ陽に涙した。 
寝過ごしてしまったのだ。 
慣れない場所で疲れていたとは言え、まさかこんなに馬鹿みたいに 
眠ってしまうとは思わなかった。 

(主;^ω^)「……参ったお。これじゃあ台無しだお」 
 (´・ω・`)「何が台無しなんだい?」 

僕の独り言を聞いていたのか、ショボンが質問をしてきた。 
こうなったら駄目元でショボンに相談をしてみようと思い、僕は口を開いた。 

(主^ω^)「実はV154にあるメディアをちょっと借りれないかと思ってて……」 
 (´・ω・`)「……V154? ……君、彼女に会ったのかい?」 
(主^ω^)「お? 会ったお」 
 (´・ω・`)「そうか」 

そう言うとショボンは引き出しを開け、中を探り始めた。 
何か役立ちそうなアイテムでもあるのだろうかと、俄に僕の期待が膨らむ。 
そうして程なくして出てきたのは金属で出来た足錠だった。 

566 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:29:51.54 ID:GFGpUJzm0
(主;^ω^)「いや、幾らなんでもそれは……」 

しかしその足錠は手渡されること無く、そのままあろうことか僕の足にかけられた。 

(主;^ω^)「……お?」 
 (´・ω・`)「あの子に感謝しなよ、本当なら殺した方が早いんだ。……いや、あの子なんて居ない」 
(主;^ω^)「……」 

僕を見ているのかよく分からない虚ろな視線のショボンに、それ以上何を言うことも出来なかった。 


 そしてここから数日間、僕は足錠を部屋の隅の杭と鎖で繋がれ、この部屋に監禁された。 
食事は与えられたしトイレにも行けた。 
無駄に時間を過ごすイライラが募るだけで、一般的な監禁のイメージに比べれば大したことは無かった。 
そんな僕よりも寧ろショボン本人の方が、日に日に磨耗していっているような、そんな印象を受けた。 


578 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:32:02.07 ID:GFGpUJzm0

 何日経っただろうか。恐らく5日から7日程度だと思うのだが、確信は持てない。 
この日は朝から天気が悪かった。 
蛍光灯の点く部屋から眺める暗い空は、日常からの軽い離脱感を覚えた。 

(´・ω・`)「……」 

そんな窓の外を眺めていた僕の元にショボンが近寄り、何も言わないまま僕の足錠を外した。 
僕は何事かと戸惑いショボンに問いかける。 

(主;^ω^)「ショボン、一体これは……」 
 (´・ω・`)「今日で終りだ」 
(主^ω^)「?」 
 (´・ω・`)「今日で何もかも終りなんだ。君は僕の勝手な罪滅ぼしの対象だ。何処にでも行ってくれ」 
(主^ω^)「……ショボン?」 

しかしショボンは僕の呼びかけに応じることは無く、そのまま僕に背中を向け部屋を出て行ってしまった。 
恐ろしいほどに静まり返った部屋で1人、僕は言い知れぬ予感を覚えていた。 

594 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:34:13.71 ID:GFGpUJzm0
 監禁されている間に僕はいろいろなことを考えていた。 
DATのことは勿論だけど、しぃの事をよく考えていた。 
お兄さんがあんな事になって、この写真を僕が持っていってしまったらきっとしぃは辛いだろう。 
だから僕は、やはりこの写真だけは渡さなくてはいけないのだ。 
そう思い、今僕はV103を目指し歩いていた。 

 けれども、しぃに会った時僕はなんて言ったら良いのだろうか。 
写真を取ってくるのにこんなに時間が掛かったんじゃ何かを問われるに決まっている。 
でもきっとしぃなら、笑って冗談の1つでも言えば終りのような気もした。 
暗い顔をしていては駄目だ、楽観的に行こう。 
僕はそう心に決めて辿り着いたV103の扉をゆっくりと開けた。 

そして、それを見た。 

(主;^ω^)「……」 

言葉が出なかった。 
目の前に横たわっていたのは、いや、転がっていたのは、人形の出来損ないのようなもの。 
人間か作り物かの判断が一瞬では付かないほど現実離れしたそれは、人間足るべきならば 
腕と足が一本ずつ少なかった。 
しかし微塵も動かないそれは、まるで本当に作りかけの人形の様でもあった。 

605 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:36:03.09 ID:GFGpUJzm0
(主;^ω^)「……うぐっ……」 

目眩と同時に吐き気を催した。 
だが僕の足は近づこうとしていた。僕の目は確かめようとしていた。 
僕の手が目隠しをゆっくりとずらし、僕の口は呼吸を忘れた。 
そして僕の頭はそれがしぃであることを認識して、心はそれを否定しようとした。 
更に猿轡を外すも、だらしなく開いたその口は、確信を高めさせるばかりだった。 
目隠しをされ、猿轡をかまされ、服も着させてもらえずに、しぃは床に放置されていたのだ。 
こんな姿にまでされてこの子は独り、辱めを受けていたのだ。 
その事実は僕の心には入りきらずに、形を変えて目から溢れ出た。 

(主;ω;)「……」 

大きな喪失感は、僕から言葉をも奪った。 
そしてぽっかりと空いた空虚を埋めるように、心の奥から怒りが湧いてきた。 
しぃをこんな目に合わせた奴は一体何を考えているんだ。絶対に頭がおかしい。 
未だに、しぃの瞳はこちらを見ることなく何処か虚を眺めている。 
しぃはこんな顔だっただろうか。 

『(*゚ー゚)』 

あの笑顔は、何処だ。 

617 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:39:01.71 ID:GFGpUJzm0
 不意に扉の開く音がして、僕はただそのまま後ろを振り返った。 
そこに居たのは白いポリタンクをぶら下げたショボンだった。 

 (´・ω・`)「……君、見たんだね」 
(主;ω;)「……」 

何故ショボンはあんなに落ち着いているんだろうか。 
その時突然、僕の頭の中で全てが繋がった。 

(主^ω^)「ショボン……なのかお」 
 (´・ω・`)「……仕事の邪魔だ。出て行け」 
(主^ω^)「イヤだお」 
 (´・ω・`)「……」 

今はっきりと自分の意思の様なものを感じた。僕は確かにここに居た。 

(主^ω^)「しぃをこれ以上傷つけることは許さないお」 
 (´・ω・`)「……しぃ? 誰だいそれは」 
(主^ω^)「とぼけるなお。目が見えないのかお?」 
 (´・ω・`)「煩いな。しぃなんて居ないんだよ。そんな子は居ない。僕はただ人形をバラしただけなんだ」 
(主#^ω^)「いい加減に……」 
 (´・ω・`)「このままにしろと? このままが幸せだとでも?」 
(主#^ω^)「何を言ってるんだお……こんな目に遭わせたのはショボン自身だお!」 

怒りは静まるどころか、ますますその勢いを激しくしていた。 
奥歯がガタガタと熱に震え、背筋を粘っこい嫌悪の念が這い回る。 
もう少し近ければ僕は間違いなく怒りに任せてショボンを殴っていたに違いない。 

628 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:40:39.85 ID:GFGpUJzm0
 (´・ω・`)「教えてあげるよ新人。この人形は予約済みだったんだ」 
(主^ω^)「?」 
 (´・ω・`)「もう用が無いと判断されると、色々な人達に買ってもらうんだ。僕達の活動もお金が要るからね」 
(主^ω^)「だからなんだお」 
 (´・ω・`)「なに、お手伝いさんにするなんてものじゃないこと位は予想が付くだろうに」 
(主^ω^)「……?」 
 (´・ω・`)「例えば昨日、先月引き渡した子の左中指が手紙と一緒に届いたよ。 
       『こんなに大きくなりました。自慢の娘です』だそうだ」 
(主^ω^)「……」 
 (´・ω・`)「勿論自分を正当化するつもりは無い。僕は悪人だ。でもどうせ買われた先で酷いことを 
       されるなら役に立ってもらった方が良いじゃないか」 
(主^ω^)「……本気で言ってるのかお? 命を天秤にかけられるとでも思ってるのかお?」 
 (´・ω・`)「逆さ。この世に天秤に掛けられるものなんて、ごく僅かしかないんだ。『自分』が圧倒的で」 

いつの間にか僕の怒りは半ば呆れへと変わっていた。 
つまずいた石に怒ることをしないように、僕はこの怒りが徒労に終わってしまうことを感じていた。 
しかし、だからと言ってこの怒りが消えるわけではなかった。 

(主^ω^)「それ以上近付かせないお」 
 (´・ω・`)「……」 

戦う術だとかそんなものは全く考えていなかったが、とにかくしぃを守りたい一心で僕はショボンを 
睨みつけていた。 

636 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:42:12.80 ID:GFGpUJzm0
 (´・ω・`)「世の中が全て君の思い通りに行くと思うなよ」 
(主^ω^)「その言葉そのままそっくり返してやるお」 
 (´・ω・`)「違うね。これは当然だったんだ。より確率の高い事象になるのは当然だ」 
(主^ω^)「僕はここを退かないお」 
 (´・ω・`)「自惚れるなよ。1人の人間が書き換えられるのは本の世界までだ。君が出来ることなんて 
       せいぜい僕を回り道させることくらいだ」 
(主^ω^)「でも!」 

反論しようとしたその時、後ろからか細い声が聞こえてきて、思わず僕は震え上がった。 

(*゚-゚)「……ショボン……何処」 

振り向くと、相変わらず何処を見ているか分からないしぃが、間違いなくショボンの名を呼んでいたのだ。 
僕はあまりの衝撃に、一切の事を忘れその場に立ち尽くしてしまった。 
そんな僕の横をすり抜けショボンがポリタンク片手にしぃの脇にしゃがみ込んだ。 
それでも僕は何故しぃがショボンの名を呼ぶのかが理解できず、ただ見ていることしか出来なかった。 

644 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:44:00.22 ID:GFGpUJzm0
(´・ω・`)「……」 
 (*゚-゚)「……あ……う」 

ショボンがしぃの上半身を支えて起こしてあげると、彼女はしばらくショボンの顔を見つめた後、 
脇のポリタンクに視線を移した。 

 (*゚-゚)「がようし……」 
(´・ω・`)「……それは、画用紙じゃない」 

訂正する言葉には全くの熱がこもっておらず、まるであの時見た2人とはかけ離れていた。 
だが、しぃは笑ったのだ。ショボンに抱えられながらゆっくりと眉尻を下げ、口元をほころばせて。 

 (*゚ー゚)「がようし……ショボン、ありがとう」 
(´・ω・`)「……」 

その頃には、僕の心に怒りなんて少しも残ってはいなかった。 
ただ、悲しかった。 

656 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:45:53.59 ID:GFGpUJzm0
 (´・ω・`)「……昔担当していた女の子が居た。あぁ、今となっては昔の話だ」 
(主^ω^)「?」 

しぃを床に横たえると、ゆっくりと呟きながらショボンは立ち上がった。 

(´・ω・`)「彼女には絵描きの兄が居てな、そのおまけと言うわけさ」 

ショボンがポリタンクの蓋を開け、ゆっくりと中を覗きこんだ。 
薄らと透けて見える桃色は、僕に容易に中身を連想させた。 

(´・ω・`)「だが兄はここを逃げ出した。妹は取り残され、その価値を失った」 

ポケットをまさぐり、取り出したのはブックマッチ。 
おもむろに1本をちぎって点火させると、ショボンはふっと息を吹きかけそれを消した。 

 (´・ω・`)「僕はその子に全てを話したよ。逃げ出した兄の事も、売られていくことも。そうしたら 
       その子は言ったんだ。待ちくたびれたって」 
(主;^ω^)「ショボン、それは……」 
 (´・ω・`)「もう少し黙っていてくれ」 

ショボンはもう一度しゃがむとしぃの頬をそっと撫で、目を瞑った。 

667 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:48:02.70 ID:GFGpUJzm0
(´・ω・`)「確かに逃げ出した兄を待つなんて正気で出来ることじゃない。僕ならその場で 
      発狂しているだろうさ」 

違う。それは間違いだ。 
立ち上がりこちらを見るショボンの悟ったような表情に、僕は反論した。 

(主^ω^)「違う! 僕は見たお!」 
 (´・ω・`)「止めろ」 

間髪入れずにショボンの静止が入った。だが僕は止めない。 

(主^ω^)「戻ってきたんだお! 会いに来たんだお! しぃのお兄さんはここに帰って来たんだお!」 
 (´・ω・`)「……何を考えているんだ。君は、僕より残酷だ」 

伏し目がちに呟いたショボンの言葉に僕はドキリとした。 
何故妹を思う兄の心が残酷なのかが分からない。 

(主;^ω^)「何が残酷なんだお?」 
 (´・ω・`)「……戻ってきて無事で居られるか? ……もし無事なら何故会いに来ない」 

消え入りそうな小さな声で、ショボンは呟いた。 
そして僕は自分の犯した行為の重さに戦慄した。 

  (*゚ー゚)「……やっぱり……死んで……たんだ……」 
(主;^ω^)「……あ、ちが……」 
  (*゚ー゚)「……ありがとう」 

ありがとう? どうして? 
僕はしぃにこれ以上無い残酷なことをしたのに、どうして彼女は笑っているんだ。 
その笑顔が、途轍もなく僕の心を締め付けた。 

674 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:49:59.44 ID:GFGpUJzm0
(主;^ω^)「僕は……」 
 (´・ω・`)「君は外に出ていたほうが良い」 
(主;^ω^)「あ……う……駄目だお……」 

外に出たらおしまいだ。 
けれども僕は、これ以上ここに居るとさらにしぃを傷付けてしまうのではないかと怯えてもいた。 
その2つがせめぎ合い、動けなかった。 

 (´・ω・`)「君は何も分かってない。誰の心も理解して無い。まるで自分だけが何かに 
       立ち向かっている気でいるんだ。……僕は腹立たしくて仕方ないよ」 
(主;^ω^)「僕は……」 

しぃがこれ以上苦しむのを防ぐためには終りにするべきなのか。僕の心に迷いが生まれていた。 
そんな棒立ちの僕を尻目にショボンはポケットから取り出した何かをしぃの口元にやった。 
そしてショボンはそのままその手をしぃの頬に添え、しばらくの間その顔を見つめ続けた。 
僕がようやく事態を把握した頃、しぃは小さく痙攣を始めていた。 

 (´・ω・`)「さよならだ。すまないが出て行ってくれないか」 
(主;^ω^)「……駄目だお。まだしぃは……僕が……」 
 (´・ω・`)「出て行け」 
(主;^ω^)「……」 

一喝された僕は頭の中が真っ白になってしまい、ただそれに従って部屋を後にした。 
扉を閉めた後しばらくその場に立ち尽くしていたら、中からショボンの叫び声が聞こえた。 
悲鳴に近い泣き声のように、僕には聞こえた。 
僕はそれを聞いてはいけないような気がして、部屋に戻った。 

684 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:52:05.99 ID:GFGpUJzm0
 部屋に戻ってから僕はしばらく写真を眺めていた。勿論しぃの写っている写真だ。 
写真の中には楽しそうに笑う2人の幸せそうな笑顔がある。 
そう、僕は笑顔を見ている。なのに心はどんどんと沈んでいくのだ。 
 いつか僕はこの世界の事を夢に例えた。 
夢の中で何をしようとも、目が覚めた後の現実にはなんら関係が無いと。 
けれどもそれはやはり的外れだったのだ。 

(主^ω^)「僕は……」 

呟いた言葉が次を待たずに消えてなくなるのを感じた後、僕の足は再びV103に向かっていた。 

 部屋の中は暑く、ガソリンの臭いが立ち込めていた。 
そして未だ燃え続けるものがそこにあった。 
僕はそこに向かって歩いていく。 

(´・ω・`)「……」 

ショボンは一度こちらを見たが、すぐに視線を戻した。 
僕はおもむろにポケットから写真を取り出すと、一度ショボンの方を窺ってからそれを投げ入れた。 
炙られる写真は、炎から2人を守ろうとするかのように内側へ丸まっていく。 
僕はそれを見ていられず、目を瞑り黙祷した。 

 黙祷を終えると僕は無言のままショボンの頬を1回殴った。 
しかしショボンはその表情を変えることは無く、また視線をこちらに向けることも無かった。 
彼もきっと今は夢を見ているんだろう。しぃは最初から居なかったと言う夢を。 
その夢は覚めるのだろうか。もしくはそれがそのまま現実になってしまうのだろうか。 
どちらにしろ僕の心の痛みは、夢から覚めてもずっと残りそうだった。 

692 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:54:09.38 ID:GFGpUJzm0
 部屋を出た僕は、ただ歩いていた。 
ぼやけた思考の中でしぃを思い浮かべながら、ろくに前も見ずにぶらぶらと廊下を歩く。 
歩いている途中急に胸が苦しくなって涙が出た。 
今更になって喪失感を肌に感じたのだ。 
 ぼやける視界を戻すために涙を拭い顔を上げると、どうにも僕は道を間違えたようだった。 
近くのプレートには部屋番ではなく『鑑賞室』と書かれていたのだ。 
芸術を扱うと謳うだけあってそういった部屋もあるのだろう。 
もしかしたらしぃのお兄さんの絵なんかが無いだろうか。 
僕はそう思い、扉を開けた。 

 最初はその赤に気品を感じた。赤い絨毯が敷いてあるように見えたのだ。 
しかしそれは一瞬で吹き飛んだ。
それは全てが血だったのだ。むせ返るような臭気がそれを如実に伝えていた。 
そして部屋の中には男が3人。
2人が僕に背中を向けたまま銃を構え、1人が反対側にナイフを片手に立っていた。 
僕がそれだけ把握すると、銃を構えていた1人がこちらに振り向き、僕を見て目を見開いた。 

     男「おい、お前も! こいつをヤれ!」 
(主;^ω^)「え……あ」 

未だに事態の整理が出来ていない僕は、ろくに返事をすることも出来なかった。 
そうやって後ろを振り向いた男に、ナイフの男があっという間に接近するのが見えた。

704 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:55:56.40 ID:GFGpUJzm0
(主;^ω^)「あ!」 

僕はそれを伝えようと言葉を発したが、男が正面を向いた時には既に2人は肉薄しており、
彼はただ悲鳴を上げることしか出来ずに膝から崩れ落ちた。
そして崩れ落ちる男の向こうから現れたのは、血飛沫を浴びたジョルジュだった。 

男「うわぁぁぁぁ!」 

残っていた1人が叫びながら銃を乱射し始めた。
僕は身の危険を感じ思わず両手を顔の前に出して縮こまる。
1発くらいは当たってしまうのかもしれない。
そんな風に思ったが、気付けば銃声は既に鳴っていなかった。 
恐る恐る顔を上げると、男は胸を刺されたまま泣き顔でジョルジュの顔目掛けて何度も弾切れの
銃の引き金を引いていた。

 やがて男がぐったりと腕を下ろすと、ジョルジュはナイフを男の胸から抜き、ゆらり、とこちらを見た。
その感情の窺えない表情に僕は恐怖し、竦み上がってしまった。 
そんな僕に向かってジョルジュは一歩一歩近づいてきて、ついには手を伸ばせば届くだろう
位置まで来てしまった。 

 ( ゚∀゚)「倒れろ」 
(主;^ω^)「……え?」 

倒れろとは殺す前の決め台詞か何かなのか、僕は目眩を覚えながらその意味を探る。 

711 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:57:59.05
 ( ゚∀゚)「早く倒れて死んだフリをしろ。誰か来る前に。あと、出来るだけ顔を上げるな」 
(主;^ω^)「え、あ……」 

訳も分からず言われた通り床に手足を広げてうつ伏せになった。 
床は血だらけだったがそんなことを気にしている場合ではなかった。 

( ゚∀゚)「俺が居なくなったら自分で判断してこの建物から出ろ。良いな?」 

依然死への恐怖はあったが、思いの外優しさのこもっていたジョルジュの声に、僕はなんだか 
このまま生きていられるような気がしていた。 

 うつ伏せになってみるとジョルジュの歩く音が良く聞こえた。 
顔を上げるなと言われた僕はそれに従っていたため、ジョルジュが何をしているのかは分からない。 
しかし僕から遠ざかっていくジョルジュの足音はどこかで一度止まると、再び引き返してきた。 
続いて足音とは違う何か柔らかく重いものが床に落ちる音がした。 
そしてそこからしばらくの間、湿った衝突音が繰り返された。 
声も無く、ただ断続的に漏れる気息の音と共に聞こえる生々しい音。 
何をしているか想像できない訳では無かったが、恐ろしくて僕はそれ以上考えることはしなかった。  

720 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 22:00:09.46 ID:GFGpUJzm0
 しばらくして不気味な音が止まった。一体次は何をするのだろうか。 
もしかしたら気が変わったジョルジュに僕は殺されてしまうのではないだろうか。 
心の中にえも言われぬ不安が渦巻き、僕は床に寝ているのにグラグラと地面が回っているような 
錯覚を覚えた。 
そうして平衡感覚の失われた世界に身が沈み始めた時、扉の開く音がした。 
殺し合いが始まってしまう。息が詰まるような感覚と共に僕はそう思った。 
しかし扉を開けた主の第一声は酷く力ないものだった。 

(;´・ω・`)「何してるんだ……」 

そしてその声はショボンのものだった。 

(;´・ω・`)「何してるんだよ、ジョルジュ」 
( ゚∀゚)「……ショボン」 

冷静に考えればショボンの主張はもっともだった。 
何故ジョルジュはこんなところで殺人なんてしているのか。 

( ゚∀゚)「ショボン、逃げろ」 
(´・ω・`)「あ、あぁ……でも君は」 
( ゚∀゚)「あいつらが幸せならそれでいい。俺はこいつらが殺した人数だけ、こいつらを殺した。もう満足だ」 

ごと、と重いものが落ちる音がした。僅かに身じろぎしてしまったが、ばれてないだろうか。 

726 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 22:01:59.66 ID:GFGpUJzm0
(´・ω・`)「でも、ジョルジュ……僕は」 
( ゚∀゚)「……俺はもう同じ人数の人を殺した。だからショボン、お前はもう誰も殺すな。でないと 
     俺はお前を殺さなきゃならない」 

そこで会話は途切れ、どちらかの足音が遠ざかるのが聞こえた。 
顔を上げるべきか上げないべきか。 
残っているのがショボンだとして、僕がここに居ることがばれて何か不都合があるだろうか。
あらゆる身の危険を考えているうちに、いつしか今まで立ち込めていた臭いとは別な臭いが
僕の鼻を刺激し始めた。

(;´・ω・`)「……ジョルジュ! あいつ!」

ショボンが何かに気付いたように走り去っていくのが聞こえた。 
残っていたのはショボンだったのかと僕はゆっくりと顔を横に向けた。 
すると開け放された扉の向こう、白い廊下を灰色の煙が浮かんでいた。 

(主;^ω^)「え?」

鼻を突く何かの焼ける臭いに加え、この煙。
僕は人が居ないのをざっと確認すると、立ち上がり廊下に飛び出した。

(主;^ω^)「ゲホッ! おぇ!」

飛び出る際に吸い込んでしまった煙にむせながらも、左右を確認する。
何かを少し焼いただけでこんなにも煙が出るわけが無い。
間違いなく今この建物で火事が起こっていた。

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