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361 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:00:35.68 ID:GFGpUJzm0

 ぼんやりと、先の見えないぬかるみの中を歩いていた。
近付くほどにその量は増し、やがては口の中には汚泥が入り込んで、体の芯までもが暗闇に
侵食されていくような感覚。
僕はどうしてこんな所に居るのか。そして何故口の中がこんなにもドロドロなのだろうか。
しかし答えを見つける前に僕は頭の天辺までをもその泥に囚われ、やがて五感を失った。






( ^ω^)ブーンが世界を巡るようです




  『 IN ( ^ω^)ブーンはピアノを弾かされるようです 』



365 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:02:35.64 ID:GFGpUJzm0

(主;^ω^)「へぶっ!」

顔面に鈍痛が走った。
何事かと反射的に首を後ろに反ると、どうやら僕は着地に失敗して床に突っ伏しているようだった。

(主;^ω^)「うわ、なんか髪の毛みたいなの口に入ったお! 汚い!」

口の中に異物感を感じながら強か打ち付けた下唇を摩り僕は起き上がる。
慌てて辺りの状況を確認してみるが、屋内と言うこと以外は蛍光灯の光が眩しいばかりで
予想がつかなかった。

(主^ω^)「え~と……?」

ただ長い廊下が続くばかりで、何を見ても手掛かりになりそうなものは無いのだ。
リノリウムの床は天井さえも映してしまうほどに綺麗に磨かれ、真っ白なペンキを塗られた壁は
指紋1つ付いていないかのような白さを保っていた。


368 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:04:13.89 ID:GFGpUJzm0
(主;^ω^)「もしかして僕1人とかだったりして……」

あまりに無機質な空間なものだから、僕はSF映画に出てくるようなロボットだけの研究所に
来てしまったのではないかと1人不安になった。

(主^ω^)「でもそれならそれでいいお! とにかくDAT探すお!」

自分を奮い立たせるために大声を出したは良いものの、状況は変わらず何も無い長い廊下であり
DATの気配すら感じられない。

(主^ω^)「……まぁ、簡単に見つかったら苦労しないっていう話なんだお」
      「おい!」

そこへ突然聞こえてきた大声に僕は驚き、身を縮めた。
見ると、白い制服姿の男が眉を顰めてこちらを睨んでいた。
どうやら人の様で、ロボットには見えなかったので僕は少し安心する。

369 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:06:18.01 ID:GFGpUJzm0
     男「お前か、今日入ってきた新人は」
(主;^ω^)「……お?」
     男「たく、ウロチョロするなよ。さっさと着替えて持ち場に行け! 誰だよこいつの担当……」

男は一頻りがなりたてるなり、踵を返してまたどこかへ行ってしまった。
いきなりで何が起きたのかさっぱり理解は出来なかったが、とにかくここにのんびりしていられる
状況ではないと言うことはわかった。
急かされるように僕は早足で歩き出したものの、どこに行ったらいいかは全く分からなかった。

 歩いていると色々な部屋の扉が目に入った。
それらは皆同じデザインの鉄の扉で、重厚な造りからはその頑丈さが窺われた。
中には猛獣でも居るのだろうか。そんなことを考えながら僕は半ば見物気分で歩いていた。
あちこちに自分のDATを掲げてみるものの、全く反応が無いものだからすっかりやる気が
なくなっていたのだ。


374 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:08:05.77 ID:GFGpUJzm0
 そんな中、どこからか微かにBGMのようなものが聞こえてきて、僕は立ち止まる。
ホテルのロビーを想起させるその音楽は、どうやらクラシックのようだった。
何か時間を知らせるためのものなのだろうか。
 しかしいきなり曲の途中で止まったり、何度も同じところが再生されたりしているのを聞くと、
それはどうやら今どこかで誰かが弾いているらしい。
当ても無い僕は、ふらふらとその音色に誘われるようにまた歩き出した。

 程なくして到着した場所は、あの見飽きたデザインの重々しい扉の前だった。
特別な部屋と言うわけでもなく、音楽が無くなってしまえば二度と辿り着けなさそうなその扉を
まじまじと観察して僕はあることに気が付いた。

(主^ω^)「V……085?」

扉の上、枠の外に部屋番号らしきものの書かれているプレートがあるのを見つけたのだ。

 ( ゚∀゚)「はい、どしたどした~」
(主;^ω^)「お!」

ぼーっと立ち尽くしていた僕の脇から、突然陽気そうな男の顔が現れた。
初対面とは思えぬほどに顔を近付けられ、僕は思わず一歩後ろに下がった。


377 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:10:03.16 ID:GFGpUJzm0
 ( ゚∀゚)「ん、お前誰だ? 見ない顔だと思ったら本当に知らない奴だな」
(主;^ω^)「ぼ、ぼくはその……新人……というか……」

僕は咄嗟に先ほどの情報を利用し、身分を偽った。

 ( ゚∀゚)「あぁ、そういやそんな話があったような、無かったような。……あったかな?」
(主^ω^)「失礼ですが、お名前は?」

我ながら機転の利いた質問だと思った。

( ゚∀゚)「あぁ、ショボンの方なのか。どうりで知らないはずだ。俺はジョルジュ、よろしくな新人!」

自己紹介をすると、ジョルジュは肩を組んでぐっと僕を引き寄せ笑った。
随分とフランクな人だと思いながらも僕は釣られて笑ってしまった。

382 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:12:05.53 ID:GFGpUJzm0
 ( ゚∀゚)「ところでショボンのとこはもう行ったのか? 早めに行かないとアイツは神経質だからな」
(主^ω^)「え~と……そうだお、道に迷ったんだお」
 ( ゚∀゚)「迷ったぁ? ん~まぁ、ここはややこしいからなぁ。よし、ちょっとここで待ってろ」

そうジョルジュは言うと鍵の束を取り出し、どこからか現れたやはり同じ白い制服の男3人に
目配せをしてV085と書かれた部屋の扉の鍵を開けた。
程なくして開かれた鋼鉄の扉の、油が足りてなさそうな音の向こうから、今しがた聞いたばかりの
滑らかなピアノの音色が聞こえてきた。
演奏はすぐに止み、その音色は僕の耳先をくすぐっただけだったが、きっと中には燕尾服を着た
ピアニストが真っ白な指を巧みに動かしていたに違いないと想像をした。
そしてジョルジュ以外の男3人はと言うと、中に入るわけでもなくただ中を険しい顔で覗いている
ばかりであった。

( ゚∀゚)「おまたせ。じゃあ行くか」

ここは一体何処なのだろうか。
改めて考えながらも、僕は黙って彼について行くことにした。



384 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:14:06.87 ID:GFGpUJzm0
 同じ景色ばかりが流れる中で、よくこの人は迷わないものだと僕は思った。
建物だから『使い勝手が悪い』とは言わないのかも知れないが、デザイナーは相当悪趣味だと思った。
こんなデザイン、人を迷わせるためのものだとしか思えなかった。

( ゚∀゚)「ほい、着いたぞ」

指された先の扉は何枚目か分からなかったが、唯一の目印としてプレートにA480と書いてあった。
アルファベットからするに区分が違うのだろうか。しかし相変わらず扉は重厚なままだった。
じろじろと扉の観察する僕を尻込みしているのと勘違いしたのか、ジョルジュは軽く僕の背中を
叩くとにこやかに笑って見せた。
その笑顔に促され僕は扉を開けた。

 部屋の中は至ってシンプルな造りだった。
目立つ物といえば簡素なデスクのみで、その上には小型のノートパソコンと何枚かの書類、
それに暖色のライトがあるだけだった。
例えるなら、人の居なくなった社屋に残された事務室のような、そんな寂しい印象だ。
少し肌寒い室温もそれに一役買っている気がしたが、それ以上にデスクに座っている男から
温度を感じなかった。ジョルジュとはまるで正反対の男だった。

(´・ω・`)「ん? ……君か。ちょっとごめん、今話中なんだ。」

小型の携帯電話のような物を耳に当てた男が、キィ、と回転椅子の背もたれから錆付いた音を出し、
顔だけをこちらに向けた。
柔和な顔つきだとは思ったが、やはり僕は緊張したままであった。


388 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:16:12.81 ID:GFGpUJzm0
(´・ω・`)「あぁ、なんでもない。それで、侵入者はどうした?」

侵入者と言う単語を聞き、僕は俄に汗が吹き出るのを感じた。
大丈夫だ。僕じゃないはず。

(´・ω・`)「そうか……いや、そのまま処分してくれ。……ああ」

終話をし、耳に当てていた物を仕舞うと、男は体ごとこちらに向けて言葉を待っているようだった。
とにかくここでは余所者であることが命の危機に繋がるとわかった。
どうにもDAT回収の協力は仰げなさそうだ。
果たして僕1人で目的を達成することは出来るだろうか。
フォックスの手先だっていつ現れるのか分からないのに。

( ゚∀゚)「ほれ、お前んとこの新人だ。迷子ってたぞ」
(´・ω・`)「新人?」

話の雲行きが怪しくなりそうだと感じ、僕はすかさず言葉を挟む。

(主^ω^)「お、おねがいしますお」
 (´・ω・`)「あ、よろしく。まぁそこら辺に座っててよ、今これ片付けちゃうから」

手元の書類を僕に見せると彼はまた机に向かい、ペンを走らせ始めた。
どうしたらいいものかと僕はジョルジュの方を見たが、既に彼はそこに居なかった。

390 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:18:10.40 ID:GFGpUJzm0
 椅子の軋む音に目をやると、大きく伸びをしている彼が目に入った。
どうやら書類は片付いたようだった。

 (´・ω・`)「さて、君さ……」
(主^ω^)「お?」
 (´・ω・`)「誰だ?」

掌からじわ、と汗が滲むのを感じた。

(主;^ω^)「ぼ、ぼくは今日からここでお世話になる……」
 (´・ω・`)「……居ないなぁ」
(主;^ω^)「?」
 (´・ω・`)「居ないんだよ。今日、僕のとこに入ってくる新人なんて」

心臓が跳ね上がったような錯覚を起こした。
一体この男は何を企んでいるのだろうか。
何故さっき僕をこの部屋に入れたのだろうか。
こんなことならば最初から身分を明かせばよかったのか。
尽きぬ思考にうろたえる僕は、ただ彼の顔を見つめることしか出来ずにいた。

 (´・ω・`)「……まぁいいさ、どこかで手違いがあったんだろう。よし、地理に慣れる意味も含めて
       僕についてきて。丁度人手が足りなかったんだ」
(主;^ω^)「えっと……」
 (´・ω・`)「僕は、ショボンでいい」
(主^ω^)「……」
 (´・ω・`)「しかし……やれやれ、仕事がまた増えそうだ。とりあえず着替えなよ」

計れない男だ。そう僕は思った。


396 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:19:58.71 ID:GFGpUJzm0
 白い制服に着替えた僕はショボンに連れられて廊下を歩いていた。
話題なんてあるわけが無かったが、新人らしくここの建物の構造なんかを質問したりしていた。
特徴が無い建物だと思っていたが、どうやら色々と仕掛けもあるらしかった。
まるで自分が何か釘を刺されているようで怖い気持ちもあった。

 (´・ω・`)「まぁ、そんなわけで他にも色々な仕掛けがあるんだ。逃げるのも捕まえるのもお手の物さ」
(主^ω^)「全部覚えきれるのかお?」
 (´・ω・`)「それは自分に言ってるのかい?」

そうして暫く当たり障りの無い会話をしていると、ショボンが思い出したように1室の前で立ち止まった。

(´・ω・`)「ここは僕が担当している部屋の1つだ。ただ、鍵は僕が持ってるから君が1人で
      来ても入れないけどね」

そう言ってジャラジャラと音を出して鍵の束を取り出すと、それを鍵穴に挿した。
ここの部屋番号は何番だろうか。そう思い僕は扉に近付いた。

(´・ω・`)「そうだ、君。危ないからそこから――」

途端に扉が勝手に開き、ショボンの言葉に反応する前に顔面を途轍もない衝撃が襲って、
世界が真っ暗になった。


399 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:21:54.16 ID:GFGpUJzm0
(主;^ω^)「へぶっ!」

たまらず床に転がったが鼻の奥がツーンとして前歯がジンジンと痛む。
勝手にくしゃみが2,3回出た。今日1日で大分顔面が歪んだんじゃないだろうか。
軽いデジャヴを覚えつつも、僕は何が起こったのかを把握するためにゆっくりと目を開いた。
そこには開け放された分厚い扉と、その横で少女を抱きながら僕に哀れみの視線を向けている
ショボンが居た。

 (*゚ー゚)「おかえり!」
(´・ω・`)「あぁ、今日も扉の前で待っていたのか?」
 (*゚ー゚)「うん!」

あの少女がこんな重そうな扉を一気に開けたのだろうか。
顔を擦りながら考えていると、指先に滑りを感じた。
見ればやはり鼻血が出ていた。

(主;^ω^)「あうあう……鼻血が……」
  (*゚ー゚)「……変態?」
 (´・ω・`)「あぁ、変態だ」
(主;^ω^)「……」

疎外感を覚えつつも、僕は少女の愛らしい笑顔に結局何も言えなかった。


401 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:24:00.74 ID:GFGpUJzm0
 少女の部屋を目にして、まずは白すぎると思った。
所々に少女らしい小物が置いてあるが、それさえも塗りつぶしてしまうほどに真っ白だったのだ。
そして次に何故少女がここに居るのかと疑問に思った。
鍵を別な人に管理されている、それはまるで監禁のようではないか。
しかしながら少女の顔に苦痛の色は無い。
ますます僕はここが何処なのかが分からなくなっていた。

  (*゚ー゚)「ねぇ、今日は何して遊ぼうか」
 (´・ω・`)「だから遊びに来てるんじゃないんだって。……そうだ、新人くん」
(主^ω^)「お?」
 (´・ω・`)「この子と遊んでてよ。僕はこれからまだ用事があるんだ」
(主;^ω^)「え、でも……」
 (´・ω・`)「頼んだよ」

一方的に世話を押し付け、ショボンはどこかへと行ってしまった。
知らない女の子の面倒なんて見れるはずも無い。それなら僕もいっそ抜け出してDAT探しをしようか。
そんなことを考えていた。

  (*゚ー゚)「ねぇ、変態さん」
(主;^ω^)「な、変態とは失礼な!」
  (*゚ー゚)「また鼻血出てるよ」
(主;^ω^)「お?」

僕は慌てて鼻の辺りに掌を当てた。


407 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:26:13.63 ID:GFGpUJzm0
  (*゚ー゚)「なんちゃって。焦った?」
(主^ω^)「……変態を怒らせたらどうなるか、その体に教えてやるお」
  (*゚ー゚)「キャー」

そうして結局僕は少女とドタバタと戯れあった。
勿論いやらしい事は何ひとつとしてしなかったが、第一印象に比べ随分と彼女は大人びていた。
体つきも少女と言うよりは殆んど女性のそれだったし、会話の端々に出るどこか憂慮を込めた
言い回しには知性を感じた。
そしてこんな自分は確かに変態に違いないと心の中で笑った。

  (*゚ー゚)「変態さんはいつからここに居るの?」
(主^ω^)「今日からだお」

すっかり僕の名前は変態さんで定着していた。

  (*゚ー゚)「そっか。じゃあまだよくここは分からないんだね」
(主^ω^)「さっぱりだお」
  (*゚ー゚)「……」

そこで少しの間、少女が沈黙した。
宝石のような瞳がキョロキョロと行ったり来たりして、やがてそれらが僕の瞳と向き合うと
少女は再び口を開いた。


409 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:27:57.81 ID:GFGpUJzm0
  (*゚ー゚)「あのね、私のお兄ちゃん絵描きさんなの」
(主^ω^)「絵描きさん?」
  (*゚ー゚)「うん。すっごい綺麗な絵をね、いっぱい描くの」
(主^ω^)「有名なのかお?」
  (*゚ー゚)「ううん、全然。でもね、お兄ちゃん言ってた」
(主^ω^)「?」
  (*゚ー゚)「たとえ貧乏でそのまま餓死しても、死ぬまで俺は絵を描き続けるんだ~って」
(主^ω^)「……すごい決意だお」
  (*゚ー゚)「いや、馬鹿なだけかもよ」

その時少女が見せた横顔に、僕はやはり憂いの色を覚えるのだった。

  (*゚ー゚)「でもね、だから私も待ってるんだ。私待ってるくらいしか出来ないし」
(主^ω^)「待ってるって?」

その先を聞こうとした時、扉の軋む音に会話が途切れた。

(´・ω・`)「お待たせ。それじゃあ戻ろうか」
 (*゚ー゚)「え~もうおしまい?」
(´・ω・`)「あぁ、随分仲良くなったみたいだね。でもまだ彼にはやってもらいたいこともあるんだ」
 (*゚ー゚)「あ、ねぇショボン。アレは?」
(´・ω・`)「あぁ、ゴメン。忘れた」
 (*゚ー゚)「また? もう、部屋中滅茶苦茶になっても知らないんだから!」

僕は膨れる少女に一瞥を投げると、彼女の名残を惜しむ台詞に幾許かの喜びを感じながら、
ショボンに従って部屋を後にした。

415 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:29:56.94 ID:GFGpUJzm0
 帰り道の途中に僕は質問を投げかけた。

(主^ω^)「ショボン、あの女の子は……」
 (´・ω・`)「君は新人だからここのシステムもよく把握してないのかな」
(主^ω^)「……お」

僕の返事にショボンは深く溜息を吐き、短く唸ると、歩きながら喋り始めた。

(´・ω・`)「ここは素晴らしい芸術を生むための施設なんだ」

ト、ト、と靴が床を叩く音が響く真っ白な廊下は、確かにその言葉に重みを感じさせた。

 (´・ω・`)「芸術には何が必要だと思う?」
(主^ω^)「必要……」

先ほどの少女との会話からか僕の頭には真っ先に筆や絵の具などの画材が浮かび上がった。
しかしどれもがショボンの質問の意図に合っていない気がして、僕は口を開かなかった。

 (´・ω・`)「簡単さ。人とエネルギーだ」
(主^ω^)「でも、人だけ居てもどうしようもないお」
 (´・ω・`)「揚げ足を取らないでよ。……でも、そうだな。確かに才能のある人じゃなきゃ駄目だ」

やはり道具は論外だったらしい。エネルギーと言う言葉からして抽象的な話のようだった。

421 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:32:01.49 ID:GFGpUJzm0
 (´・ω・`)「彼女はエネルギーの元だった。今言えるのはそれくらいかな」
(主^ω^)「……だった? 空になったってことかお?」
 (´・ω・`)「いや、必要が無くなったってことさ」
(主^ω^)「?」

ますます話がややこしくなってまるで理解できなかった。
彼女がエネルギーとは一体どういうことだろうか。必要が無くなったとはどういうことなのだろうか。
どうしてもはっきりさせたくて僕はショボンに食いついた。

(主^ω^)「必要がなくなったってどういうことだお」
 (´・ω・`)「……もう画家は居ないってことさ」
(主^ω^)「?」

何故唐突に画家の話なのか。エネルギーと画家の接点が見つからない。
少女、エネルギー、画家、必要、人。宙ぶらりの単語が頭の中を漂う。
そしてその中に1つの可能性を見出した。

(主;^ω^)「まさかそれって……」
 (´・ω・`)「喋りすぎた。忘れてくれ」
(主:^ω^)「でも居ないってどうして……」
 (´・ω・`)「……」

その時にはもう僕の中に部屋を出たときの喜びは、残っていなかった。

423 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:34:01.00 ID:GFGpUJzm0
 暫く嫌な気持ちで廊下を歩いていた。
あの子の思いが踏みにじられた気がして、僕はショボンに嫌悪感を覚えていたのだ。
勿論ショボンにとってみればいい迷惑なのだろうけれども、僕は歩きながら彼の背中を睨みつけていた。
と、その時唐突に僕の持っていたDATが強い反応を示した。

(主;^ω^)「!」

立ち止まり、うろたえた様子で辺りを見回す僕に気付きショボンが振り返った。

 (´・ω・`)「どうした?」
(主;^ω^)「え、いや、その……」

誤魔化しつつも僕はどこに反応しているのかを突き止めようと必死になった。
なし崩し的にここの一員になってしまったけれども、それだって永久にと言うわけじゃない。
僕の目的はDATを集めることであって、ここで感傷に浸ることではないのだ。
やがて僕はDATの在り処を1室の中に確信した。

 (´・ω・`)「そこがどうかしたのかい?」
(主^ω^)「ここは何の部屋だお?」

プレートを見るとV103とあった。どうもVの付く部屋が多い。

 (´・ω・`)「ここは差し詰め謁見室と言ったところかな」
(主^ω^)「?」
 (´・ω・`)「いやいや、中に居るのは猛獣かもしれないな。まぁ、君には関係ないさ。行こう」

僕は歩きだすショボンに急かされながらも、もう一度プレートの文字を目に焼きつけ、
その後を追った。


430 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:36:10.25 ID:GFGpUJzm0
 ショボンと共に部屋に戻った僕は、あれこれと規則を教わっていた。
勿論真面目に聞いていたわけではないが、郷に入っては郷に従えと言う言葉もあるし、
帰るまでの間スムーズに事を運ぶには必要だろうと頭には入れておいた。

 (´・ω・`)「じゃあちょっと見張りの奴らにも色々指導してくるけど、勝手にパソコンは弄らないように」
(主^ω^)「わかってるお」

そう言ってショボンは大きな鞄を抱えて部屋を出て行った。

 薄々感じてはいたけれども、やはりここは社会から隔離されている施設のようだった。
監禁に見張りと来て芸術だなんて言っている時点で常軌を逸しているのだ。
でも未だに監禁については確信が持てないのも事実だった。

(主^ω^)「……まぁ、関係無いお。今の内にDATを回収しに行くお」

関係無いと独りごちた傍から浮かんだ少女の笑顔を、僕は振り切るようにして部屋から出た。

434 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:38:05.32 ID:GFGpUJzm0
 目印の無い廊下だと思っていたが部屋番の並びにはちゃんと規則性があって、先ほどの
部屋には難なく着くことが出来た。V103と書かれたプレートを確認すると、僕は取っ手を握り
扉を開けようとして、はたと鍵を持っていなかったことに気が付いた。

(主;^ω^)「あっちゃー……そう言えばさっきショボンがジャラジャラ鍵持ってたお」

ここにも錠前がついている以上、鍵が掛かっているに違いなかった。
僕は腹いせに取っ手をガチャガチャと煩く鳴らそうと手に力を込めた。

(主^ω^)「お?」

するとどう言うことか扉は何の抵抗も受けずに開き始めたのだ。
偶然なのか壊れているのか、どちらにしても幸運なことには変わりなく、僕は期待に胸を
膨らませて鉄の扉を開けた。

ξ゚⊿゚)ξ「ショボ……え?」
(主;^ω^)「お?」

これも予想外だった。いや、予想は出来た筈だったけれども全く考えて居なかった。
中には可愛らしい女の子がいたのだ。年の頃は僕と同じか、もしくは少し若いようにも見えた。


438 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:40:04.89 ID:GFGpUJzm0
ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン?」
(主;^ω^)「ブーン?」

いきなりブーンとは一体その擬音はどういう意図なのだろうか。
僕にはすぐに理解できなかったが、女の子はどうやら酷く驚いているようだった。
丸々と見開かれた瞳と僅かに開いた唇が、1度微かに震えるのが見えた。
しかしそれで平静を取り戻したのかそれらが一旦閉じられると、溜息と共に女の子は
しっかりとした目つきで僕を見つめてきた。

ξ゚⊿゚)ξ「誰?」
(主^ω^)「えーと……ちょっとこの部屋に危険物の反応が出たから調べに来たお」

僕は咄嗟にこの施設の一員になりきって話を展開し始めた。
そんな僕の言葉を聞いた彼女は口をへの字に曲げ、不愉快そうな顔をした。

ξ゚⊿゚)ξ「無いです。お帰り下さい」
(主^ω^)「でも放っておくと大変なことになるお。すぐに終わるから頼むお」

ここで引き下がっては目的が果たせなくなってしまう。
出来るならやはり事は静かに運びたいと思っていた僕は、更に丁寧に頼み込んだ。
そんな僕の顔をチラチラと見ながら、彼女は更に不機嫌さを増しているようだった。


442 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:42:07.13 ID:GFGpUJzm0
ξ゚⊿゚)ξ「帰って。今忙しいの」
(主;^ω^)「でも……」

しつこく食い下がる僕の声を大音量のピアノの音が掻き消した。
部屋に入ったときにピアノなど無かった筈だと音のほうに視線を向けると、そこには小さな
ラジカセがあった。
そしてそのラジカセは、目を釘付けにするほどの異様な光を放っていた。
それも全体からではなく、液晶ディスプレイの下部、恐らくはメディアが挿入されているであろう
部分だけが異彩を放っていたのだ。

(主;^ω^)「せめて話を聞いてくれお!」
ξ#゚⊿゚)ξ「いや! 近づかないで!」

騒音とも言える音楽の中、必死に僕は訴えかけたが彼女は嫌の一点張りだった。
しかし僕だってこれが無いと世界を元に戻せないのだ。
僕はラジカセを奪い取るような勢いで手を伸ばした。
が、それと同時に伸びてきた彼女の手が僕の腕に触れたかと思うと、そこを裂くような痛みが走った。

(主;^ω^)「ひっう!」

反射的に腕を庇い床に転がった僕は、何が起こったのかと軽いパニックを起す。
顔を上げた先にあったのは、彼女の白い手に握られたスタンガンだった。

ξ#゚⊿゚)ξ「帰って!」

痛みに加えその一言で、僕は情けないことに這いずるようにして部屋を後にしてしまった。


450 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:44:09.40 ID:GFGpUJzm0
 やっとの思いで廊下に出た僕は、四つんばいのまま移動して壁にもたれ掛かると深呼吸をした。
腕は未だにヒリヒリしているし、DATを手に入れようにもあんな見張りが居るとは思いもしなかった。
フォックスの手先だろうか。
しかしそれならば僕を知っていてもおかしくないし、もうDATを持ち去っていてもおかしくない。
何と言うか、考えたくないことだけれども、ただ単に僕が嫌われているだけのように思えた。

 ( ゚∀゚)「おいーっす」
(主;^ω^)「お!」

突然ジョルジュが目の前に現れ僕は短く声を上げた。
近づく気配を全く感じなかったが、それほどに考え込んでいたと言うことだろうか。

 ( ゚∀゚)「こんなとこに座ってどうした?」
(主^ω^)「……ちょっと疲れただけだお」

説明しようかとも思ったが、どこか後ろめたい気持ちがあり僕は適当にはぐらかした。

 ( ゚∀゚)「そういやお前アイツに似てるな」
(主^ω^)「アイツ?」
 ( ゚∀゚)「あぁ、俺の担当にブーンって奴が居てな、そいつにそっくりだわ。うわ、そっくりだ。気持ち悪い」

ブーンとは名前だったのかと僕はここで初めて気が付いた。
そう言えば今までにもそんな名前の人に出会った。
とすると彼女はブーンの知り合いなのだろうか。
だとしたら何故僕は避けられたのだろうか。
その意味も知りたかったが、それ以上にDATを手に入れる上でこれに関しては知っておいて
損は無いと思い、僕はジョルジュに色々と尋ねることにした。

452 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:46:13.97 ID:GFGpUJzm0
(主^ω^)「その、ブーンって人は何をしているんだお?」
 ( ゚∀゚)「ブーンはピアノだな。楽器系は沢山居たけどピアノは初めてなんだよなぁ」
(主^ω^)「楽器系ってどういうことだお?」
 ( ゚∀゚)「ん? 芸術って言っても色々区分があるだろ? 絵画だったり、造形だったり」

なるほど、と相槌を打って僕は続きを促した。

(主^ω^)「えーと、ブーンって人の知り合いもここには来てるのかお?」

僕のその一言にジョルジュは顔の筋肉を緩め、肘で小突いてきた。

 ( ゚∀゚)「おいおい、なんだなんだ。お前もあの子が気になるのか?」
(主;^ω^)「え? あ、気になると言うか……」
 ( ゚∀゚)「まぁ、あの子は可愛いからなぁ。でもブーンの彼女なんだから手は出すなよ?」
(主^ω^)「彼女?」
 ( ゚∀゚)「あぁ、そうだ。残念だったな、諦めろ」
(主^ω^)「その彼女は何をしてるんだお?」
 ( ゚∀゚)「さぁ、そんな毎日張り付いて見てたら変態だしな」
(主;^ω^)「違うお。楽器をやってるとか絵を描いてるとか……」
 ( ゚∀゚)「ん? あぁ、そっちか。でもブーンがピアノ弾いてるんだから何もしてないんじゃないか?」
(主^ω^)「どういうことだお?」
 ( ゚∀゚)「どういうことって聞かれてもなぁ……大体2人1組でここに来るんだよな。俺は、担当外だから
       知らないけど、片方は本人にやる気を出させるために来てるらしいぜ」
(主^ω^)「応援とかをするのかお?」
 ( ゚∀゚)「さてなぁ……」

と言うことはあの少女も兄弟で1セットだったと言うことなのだろうか。
そこで僕はずっと引っかかっていた疑問をジョルジュにぶつけた。


454 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:48:02.84 ID:GFGpUJzm0
(主^ω^)「皆、自分からここに来たのかお?」
 ( ゚∀゚)「……そう言う奴も居ないわけではないってとこだな」
(主^ω^)「……わかったお」

やはり拉致されてきていたのだなと、ここで確信が持てた。

 ( ゚∀゚)「悪いとは思ってる。だけどすごい芸術が出来たらさ、そいつだって嬉しい筈なんだよ」
(主^ω^)「……」

この人は良い人なんだろうなと僕は思った。
そしてそれと同時に良い人足る程度しか知っていないのだなとも思った。
良い人が出来ることには限度があるのだ。

 ( ゚∀゚)「さて、と話が長くなったな。そうだ、ついでだからブーンに会ってくか?」
(主^ω^)「僕が?」
 ( ゚∀゚)「あぁ、つっても見るだけだけどな。中にいれたら俺怒られちまうから」

別段断る理由も無かったので僕は軽く頷いてジョルジュの後に付いて行った。
体が回復していたのに気付いたのはブーンの部屋に着いてからであった。

 部屋の前には僕の他にも3人男が居た。あの時見た男達だ。
1人は背が低く長髪、他の2人は僕と同じくらいの背で、片方は眼鏡をかけていた。
3人に共通しているのが、体つきがしっかりしていると言うことだった。
ジョルジュは男達に軽く挨拶を済ませると部屋の前にあったコンテナから、トレーに乗った
食事を取り出した。

( ゚∀゚)「んじゃま行って来るわ」

背の低い男が扉を開けたのを確認して、ジョルジュはそう言うと部屋の中へと入っていった。
僕はそれを見届けた後、男達の様子を気にしつつも、ゆっくりと部屋の中を覗いた。


456 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:50:07.16 ID:GFGpUJzm0
 歌うようなピアノの旋律が流れている部屋の中はやはり真っ白で、ピアノさえも真っ白
だったものだから何か映画のワンシーンを見ているような気分だった。
白い部屋に差し込む陽光がまるでスポットライトのように部屋に佇む2人を照らしていた。
その片方、ピアノを弾いている人物は確かに僕に似ているような気がした。

( ゚∀゚)「おーい、ブーン、飯だぞー」

ジョルジュがトレーをテーブルに置きながら話しかけたが、ブーンは聞こえていないのか
ピアノを止めようとはしない。随分無愛想な男だなと僕は思った。

 ( ゚∀゚)「腹減ってないのか? 今日のは結構旨そうだぞ?」
(#^ω^)「うるさい!」

全力で鍵盤に五指を叩きつけながらブーンが立ち上がるのが見えた。
部屋中に不協和音が響き渡り、僕は思わず息を飲んだ。

( ^ω^)「……ごめん」
 ( ゚∀゚)「……」

ジョルジュも何かを感じたのか、そこから一言も喋ることなく部屋に置いてある食事を済ませた食器を
持ち、そのまま部屋から出てきた。

( ゚∀゚)「さ、行くか」

なんでもない風にそう言って歩き出すジョルジュを見て、僕は何も言い出すことが出来なかった。


462 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:52:12.83 ID:GFGpUJzm0
 部屋に戻ると僕は一人考え込んでいた。
勿論DATをどうやって手に入れようかと言うことについてだ。
 この世界は僕にとっては例えるなら夢のようなものだ。現実とは非常に細い糸でしか繋がりを持ち得ない。
だから薄情なようだけれども、この世界がどうなろうと僕にはなんら影響は無いのだ。
彼らが彼らの世界で必死に生きようとするように、僕も自分の世界に必死になればいいのだ。
そうだ、彼女を殴ったっていい。果てには殺してしまったとしても僕は次の瞬間には全く関係ないのだ。
それならば僕は――

 (´・ω・`)「ただいま」
(主^ω^)「……え? あ……お、おかえりだお」

呟き始めた途端ショボンが部屋に帰ってきた。そこで僕の考え事も霧散してしまった。

 部屋に帰ってくるなりショボンは大きな鞄を置いて溜息を吐くと、デスクの椅子に座った。
僕は床にそのまま座っているのだが、未だに気遣うような言葉は1つも無い。
すると、ぼーっとPCの画面を見たままのショボンが、そのまま視線を僕へ向けずに小さく呟いた。

(´・ω・`)「悪いけど頼まれごとをしてくれるかな」

独り言かとも思えたが、僕は一応曖昧に返事をした。
するとやはり問いかけだったのかショボンがまたゆっくりと呟いた。

 (´・ω・`)「あの子をV103に連れて行ってくれ」
(主^ω^)「あの子って……僕を変態呼ばわりした?」
 (´・ω・`)「……あぁ、頼む」

少しは笑ってくれるかとも思ったのだが、ショボンは自分の脇に鍵を1つ置いただけで、
こちらを向きもしなかった。
僕はそんな空気に耐えかねて、立ち上がると静かにV154と彫られていたその鍵を取り
そそくさと部屋を出て行った。


468 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:53:57.78 ID:GFGpUJzm0
 ショボンの様子は気になったが、僕は深く考えることは止め真っ直ぐ部屋に向かっていた。
そう言えば彼女のお兄さんは一体どうなったのだろうか。
もう居ない。その言葉にどれだけの意味が潜んでいるのか、今の僕には計り兼ねた。

(主^ω^)「152……153……154」

迷うことなく部屋の前に辿り着いた僕は、右手の鍵を暫く見つめてから、ゆっくりとそれを鍵穴に
押し込んだ。
そして、開錠し終え扉の取っ手に手を掛け、僕は違和感を覚えた。
その違和感の形もよく分からぬままに扉を開けると、少女は壁に向かって座ったままで、どうやら
僕には気付いていないようだった。

(*゚ー゚)「ら~ららら~る~う~」

何かのメロディを口ずさんでいるが、壁に向かって歌う癖でもあるのだろうか。

(*゚ー゚)「え? わ!」

僕の存在にようやく気付いたのか少女はこちらを見ると、驚いたような声と共に近くの台を
無理矢理引っ張って自分と壁の間に引き寄せた。
そうだ、僕が違和感を抱いたのは彼女が飛び出して来なかった所為だ。

471 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:56:25.43 ID:GFGpUJzm0
  (*゚ー゚)「ちょっと! いつから居たの?」
(主;^ω^)「え? あ、えーと……ついさっき……」

つい罪悪感から僕は言葉を濁してしまった。やはりノック位はするべきだったのだろうか。

  (*゚ー゚)「も~……本当に変態だね」
(主;^ω^)「いや、その……」
  (*゚ー゚)「ところで用事は、なぁに?」

僕が言い訳を始めるより先に少女は話題を変えてしまった。
思考が追いつかない僕はとりあえず質問に答えた。

(主^ω^)「えっと、なんかショボンがV103に連れてけって」
  (*゚ー゚)「V103って?」
(主^ω^)「お? ……あ、えーと違う部屋だお」
  (*゚ー゚)「ふ~ん。なんだろ」

話しながらも僕は変態の汚名は返上できないものかと、話題とは別なことを考えていた。

(主^ω^)「ところで何をしていたんだお?」
  (*゚ー゚)「え? 何が?」
(主;^ω^)「何がじゃないお。明らかに僕が来た時、そこに何か隠したお」
  (*゚ー゚)「あはは、バレちゃったか」

少女はそう言って軽く苦笑いをすると、目を伏せながらもじもじとし始めた。

478 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 20:58:02.23 ID:GFGpUJzm0
  (*゚ー゚)「誰にも言わない? 特にショボン」
(主^ω^)「言わないお」
  (*゚ー゚)「あのね……落書きしちゃった」
(主;^ω^)「……お?」

それがここまで人に隠匿を頼む事実なのかと僕は拍子抜けした。
それと同時に急に彼女が幼い子供のように見えてきて、僕は噴出しそうになった。

(主^ω^)「別にそれ位大したことじゃないと思うお」
  (*゚ー゚)「甘いよ。ショボンにこれが知られたら……今度は、お説教5時間だよ~」

まだバレたわけでも無いのに急に涙目になりながらふにゃふにゃと崩れる少女を見て、僕は
勝手にネチネチと説教をするショボンを想像した。
それは想像するだけでとても粘っこくてイヤなものだった。

(主;^ω^)「……わかったお。僕は何も見て無いし何も聞いて無いお。だから安心するお」
  (*゚ー゚)「ホント? やった!」

喜び、僕に飛び掛ってきた彼女が満面の笑みを見せた。
僕は照れながらも、なんだか釣られて一緒に笑ってしまった。


482 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:00:05.78 ID:GFGpUJzm0
  (*゚ー゚)「えへへ、キョウハンシャだね」
(主^ω^)「キョウ……なんだお?」
  (*゚ー゚)「んっふ~。さ、行こ行こ」

話題を完結させるまで喋らないのは、この子の癖なんだろうか。
そう考える僕の腕を引っ張って少女は部屋の外へ飛び出した。
しかし、何を思ったのか少女は廊下に出ると先ほどまでの勢いを失い、立ち止まってしまった。

(主^ω^)「……どうしんだお?」
  (*゚ー゚)「どこに行けばいいのかわかんないや」

なるほど、と笑って僕は少女の手を握りV103に向かって歩き出した。


 少女の手は想像よりもずっと小さくて、薄っぺらく感じた。
それでも伝わってくる暖かさは、たしかに少女がそこに息づいていることを感じさせた。
僕は吐息と足音しか聞こえない現状を打開しようと、少女に話を振った。

(主^ω^)「なんでまた落書きしようと思ったんだお?」
  (*゚ー゚)「あ、落書きだなんてひどーい!」
(主;^ω^)「お、お? さっき自分で言ってなかったかお?」
  (*゚ー゚)「あれ? そだっけ」

おどけた様子でそう言うと少女はケラケラと笑い出した。

(*゚ー゚)「これでも絵描きの妹ですから。そうそう、この前だってショボンに絵を描いてあげたら
     結構褒められたんだよ!」

そう言って余っている手を腰に当て胸を張る少女を見て、僕は上手く笑えなかった。
僕はそれを誤魔化すために更に質問を加えた。


486 名前: 練習生(北海道) 投稿日: 2007/03/16(金) 21:02:09.25 ID:GFGpUJzm0
(主^ω^)「ショボンが? なんか冷たく一蹴される気がするお」
  (*゚ー゚)「イッシュウ?」
(主^ω^)「お。僕は、あんまりショボンが好きじゃないお」
  (*゚ー゚)「そう? 私はショボン大好きだよ。ワガママも結構聞いてくれるし……いや、ちょっとかな。
      それにいっぱい面白い話知ってるんだよ」
(主^ω^)「そうなのかお」
  (*゚ー゚)「そうなのだお」

僕の口調を真似してまた少女はケラケラと笑い出した。
それを聞いて僕はと言えば、照れ笑いのようなものをするばかりだったが。

(*゚ー゚)「ショボンが画用紙持ってきてくれないからこうなるんだよ。あと3日もあればあの部屋は
    メルヘンワールドになるよ」

メルヘンワールドだなんて一体どんな落書きをしていたのだろうか。
そう思いながら何気なく僕は要らぬ気遣いをしてしまう。

(主^ω^)「そうしたらお兄さんに見てもらうといいお」
  (*゚ー゚)「……うん、そうだね」

そのせいで会話は霞み、消えてしまった。