403 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:30:05.21 ID:e5U/hMe20


('A`)「……で、何で俺の所に来たんだ?えぇ?」

(;^ω^)「冷たい事を言わないでほしいお」

黒と白、そして銀色を基調に彩られた、シンプルながらもオシャレな部屋。
相当に便利な物の配置なのに、部屋に汚さや乱雑さは欠片も見られない。

そこはブーンの親友、ドクオの部屋だった。
ベッドには“彼”が眠っており、ブーンの左ももには紅く滲んだ包帯が巻かれている。

('A`)「うるせぇ。受け入れてやっただけでもありがたいと思え」


クリテロとの戦闘の後、ブーンはドクオの家へと向かった。
その理由は、家が近い所にあったからというもの。

ふとももから紫色の杭を生やし、肩に見知らぬ男を担いで突然訪れたブーンを、ドクオは驚きもせずに家に入れた。
何も言わずに、何も問わずに。
ブーンが理由を話そうとした時に、「そんな事よりもまずは中に入れ」とまで言ったほどだ。

408 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:31:57.77 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「礼は何度も言ってるお!肩だって揉んだし、飯だって作ったし、掃除だってしたお!
      お前がコーヒー飲んでる間のBGMとして、ピアノまで弾かされたお!お前は一体何なんだお!」

('A`)「あーん?その程度の奉仕で、俺に感謝の意志が伝わると思ってんのかてめぇ。粉砕するぞ」

(;^ω^)「お前はどんだけ偉いんだお!」

('A`)「俺よか偉い奴なんていねぇよ。俺がナンバーワンだ」

ドクオがそんな冗談を言った時。


ベッドの上の“彼”が、うっ、とうめいた。


そしてまもなく、その上半身を起こす。

(主^ω^)「……おっ……?」

('A`)「おっ……起きたみたいだな」

そう言うドクオを、“彼”は不思議そうな眼で見詰める。

(主;^ω^)「ここは……?そして君は……?」

415 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:33:51.74 ID:e5U/hMe20

(;^ω^)「やっと起きたかお!」

(主;^ω^)「ブーン?どこだおここは?何でここにいるんだお?」

( ^ω^)「あぁ、ここh」
('A`)「ここは俺んちだバーロー」

(主;^ω^)「なっ……?」

(;^ω^)「ドクオ!初対面の人に、いきなり何言ってんだお!」

('A`)「るせぇ。この家では俺が全てのルールだ。俺が王だ。称えやがれ」

(主;^ω^)「えっ……あっ……?」

( ^ω^)「気にしないで良いお。あいつはドクオっていう僕の友達で、ああいう性格なんだお」

('A`)ノシ「よろしく」

(主;^ω^)「……おー」

( ^ω^)「とりあえずは現状把握の為に、ここに来るまでの出来事を話すお」

ブーンはゆっくりと、“彼”が意識を失ってからの事を口にする。

420 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:35:15.83 ID:e5U/hMe20

DATの力によって、擬似異能者となったクリテロの“力”。
クリテロの戦闘能力の高さ。
傷を受けた事。敗けそうになって、逃げた事。
そしてドクオの家に逃げ込んだ事。時間的に、今は夜の十時頃だという事。

それを聞いている間、“彼”はずっと申し訳なさそうな顔をしていた。

勝手に問題に巻き込んでしまったブーンを戦闘させ、当の自分は意識を失っていた事。
それに傷付いたブーンに自分を背負わせてしまった事が心に引っかかっているらしい。


( ^ω^)「……と、いう事だお」

(主;´ω`)「……色々とごめんお」

( ^ω^)b「別に良いおー。君の事は放っておけないんだおー」

そう言うブーンを無理矢理押しのけて、ドクオが“彼”の前に出る。

('A`)「ちょっと良いかい?」

(主;^ω^)「おっ?」

('A`)「いきなりだが、あんたは誰だ?名前は?」

423 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:36:32.49 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「……名前。えーっと。名前、は……」

('A`)「あーん?何で名前を言えないんだ?何か問題でも?」

(主;´ω`)「名前を教えたいところなんだけど……僕には、名前がないんだお。
        正確に言えば、名前を奪われたんだお」

('A`)「んー?あんたイカレてるのか?つっても、そうは見えないしな……。
   もしかして、あんたアレか。深い事情抱えちゃってるって奴か」

(主;´ω`)「……その通りだお」

('A`)「っしゃ。だったら事情話せ」

(主;^ω^)「……お?」

('A`)「暇だったしな。ブーンが負傷して帰って来るって事は、つまり“そういう事”だろ?
   事情によっては手ぇ貸してやるからよ。さっさと話せ。
   俺ぁまだこいつから何も聞いてないから、何も分かんねぇんだ」

(;^ω^)「ドクオ……?」

('A`)「あぁん?何だよ」

(;^ω^)「いきなりどうしたんだお?お前、そういう事めんどくさがる奴じゃ……」

426 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:37:55.05 ID:e5U/hMe20

('A`)「暇だったっつってんだろ。人の話聞きやがれ。ぶち殺すぞ。
   それに、チキンのお前が手ぇ貸してるって事は、かなり深い理由なんだろ?
   だったらここで手を貸さないのはダチとしても人間としても酷ってもんだろ」

(*^ω^)「ドクオ……」

('A`)「笑顔で見詰めるな気持ち悪い」

ドクオはゆっくりと顔を“彼”に向ける。

('A`)「さ、俺も手ぇ貸してやっから、さっさと話せよ」

(主;^ω^)「で、でもっ……」

('A`)「あぁん?」

(主;^ω^)「この問題は、既に一般人の入れるレベルじゃないお。
       命のかかってる戦いの域に入ってるんだお。だから……」

「君には頼めない」と、“彼”がそう言おうとしたところで。

“彼”の言葉を遮るかのように、『ゴキリ』と音が響く。
それは“彼”がブーンと出会った時に聞いた音。異能者が“力”を解放した時に鳴り響く音。


その音の元は、ドクオ。ドクオの左腕だった。
彼の左腕は闇色の、悪魔のようなグロテスクなものへと変化していた。

432 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:39:37.90 ID:e5U/hMe20

('A`)「誰が一般人だと?えぇ?」

(主;^ω^)「ど、ドクオ君……君も、異能者なのかお?」

('A`)「見れば分かるだろ。どう見ても異能者です本当にありがとうございましたってな。
    俺だって戦える人間だ。文句ねぇだろ? さぁ話せ。さっさと話せ。俺は待つのは嫌いだ」

(主^ω^)「……ありがとうだお。本当に」


それから、“彼”はドクオに全てを話す。
ブーンに話した事と同じ事に事に加え、クリテロの存在も、全て。


全てを話し終えた後、ドクオはにやりと微笑む。

('A`)「ほぅ、何だか楽しそうじゃねぇか。暇潰しには最高だ」

(;^ω^)「話を聞いてもそんな事が言えるお前が信じらんねぇお」

('A`)「うるせぇ黙ってろ。お前のアナル閉鎖してやろうか」

(;^ω^)「流石にそれはごめんだお。想像するだけで辛いお」
438 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:41:11.98 ID:e5U/hMe20

('A`)「だったらギコでも呼びつけて、お前の髪の毛アフロにしてやろうか?」

(;^ω^)「僕の髪の毛の量じゃせいぜいアイパーにしかならねぇお」

('A`)「……そろそろやめようか。話が進まない」

( ^ω^)「賛成だお」

と、そこでドクオはいきなり険しい顔をして、“彼”を見る。

(主;^ω^)「お?何だお?」

('A`)「ここで超重要な問題が一つ」

そう言って、ドクオは指を一本上げる。

('A`)「名前がないって、あんたの事を何て呼べば良いんだ?」

(;^ω^)「超重要でも何でもないけど……そういやそうだお。何て呼べば良いんだお?」

(主;^ω^)「おー、どうするかお……」

そうして悩み始めてから、わずか十分。
ドクオがふいに口を開いた。

442 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:43:36.13 ID:e5U/hMe20

('A`)「ポチとか?」

(主^ω^)「やだお」

('A`)「じゃあ、トロッソ?」

(主^ω^)「どこの世界の方の名前だお?」


('A`)「じゃあ、カレー?」

(主;^ω^)「お?何だか聞いた事ある名前だけど……それもやだお。食い物じゃないかお」

( ^ω^)「それに名前被るお」

(主^ω^)「え?」

( ^ω^)ノシ「いや、何でもないお」


('A`)「じゃあ……パン?」

(主;^ω^)「やだお。パンだって食い物じゃないかお」

('A`)「いや、効果音だ」

( ^ω^)「え?」

('A`)ノシ「いや、何でもない」
446 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:45:08.69 ID:e5U/hMe20

そこまで言って、ドクオは腕を組んで唸る。

('A`)「うーん……じゃあ、どうするかな」

( ^ω^)「どうするかおー」

('A`)「ん?そういや、ブーン。そういや、お前の本名は『内籐ホライゾン』だよな?
   ずーっと『ブーン』で呼んでたから忘れてたが」

(;^ω^)「そうだお。っつーか何で友達の名前忘れてんだお」

('A`)「だってお前の事ブーンとしか呼んでないもん。
   多分、ギコ辺りはお前の本名知らないんじゃね?」

(;^ω^)「……おー。あり得るから怖いお」

('A`)「……っと、話を戻すぞ。ブーン、確かお前、ぃょぅには『ジョン』って呼ばれたよな。
   『ホライゾン』を噛んで『ホライジョン』って呼んじゃったから、もういっそ『ジョン』で良いやってさ」

(;^ω^)「そうだお。ぃょぅ君はよく分からんお。お前と同じ臭いがするお」

('A`)「……まぁ、その辺はどうでも良いがよ」

言って、ドクオは“彼”に向き合う。

450 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:46:38.54 ID:e5U/hMe20

('A`)「じゃあ、そうだな。あんたの話だと、あんたはブーンと同じ存在だそうだから、
     あんたを『ジョン』と呼ぼう。どうだ?呼びやすくて良いと思うんだが」

(主^ω^)「……ジョン?」

('A`)「嫌か?」

(;^ω^)(嫌って言われたら僕はどうすりゃ良いんだお)

(主^ω^)「いや、何だかかっこいい響きだお。気に入ったお」

( ^ω^)('A`)「それは良かった」

ところで、とドクオは続けて口を開く。

('A`)「いつまた行くんだ?その……『クリテロ』?とかいう奴の所」

(;^ω^)「僕のこの足が治るまで待ってほしいお」

('A`)「どれくらいかかる?」

( ^ω^)「かかっても三日くらいかお。つっても、相当深くなければもっと早く治るお」

(主;^ω^)「杭が刺さったっていうのに、何でそんな早いんだお?」

( ^ω^)「言わなかったかお?異能者は傷がすごく早く治るんだお」

(主;^ω^)「……本当に異能者ってすごいお」
453 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:47:55.51 ID:e5U/hMe20

そう言う“彼”―――ジョンの顔を、ドクオがじっと覗き込む。

(主;^ω^)「お?何だお?」

('A`)「……何だか暗いな」

(主^ω^)「お?」

('A`)「お前の表情だよ。何か嫌な事でもあるのか?」

(主;^ω^)「い、いや。別にそんな事……」

('A`)「良いから言えよ。粉砕するぞ」

(主;^ω^)「分かったお。言うお。
       ……クリテロを殺すって事が、どうにも上手く飲み込めないんだお」

( ^ω^)「お?」

(主;´ω`)「クリテロは、僕を闇に引きずり込む為の“影”として創られたんだお?
       要するに、僕を殺す為だけの、そんな存在として。
       そんなの、可哀相過ぎるお。そんな人を、僕は殺さないといけないっていうのが……」

( ^ω^)「ジョン……」
454 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:49:20.36 ID:e5U/hMe20

(主;´ω`)「DATは取り返さなきゃいけないし、僕も死ぬわけにはいかないお。
       みんなを助ける為には。僕の世界を救うには、クリテロを殺すしか方法はないんだお。
       分かってる。分かってるお。……分かってる事なんだけど、それをどうしても飲み込めなくて……」

('A`)「甘ぇな」

(主;^ω^)「……お?」

(;^ω^)「ドクオ?」

('A`)「かわいそうだから殺せませんってか?そんなんでどうする。
   お前は肉を食べる時、毎回毎回涙を流して食べるのか?あぁ?」

(;^ω^)「ドクオッ! お前には人の心ってもんg」
('A`)「黙ってろ、ブーン」

(;^ω^)「お……」

('A`)「仕方のない殺害なんだ。説得は出来ない。殺らなきゃ殺られる。生きるには殺らなきゃならない。諦めろ。
   お前には負けられない理由があるんだろ?だったら惑うな。ただの通過点に眼を取られるな。
   大義名分があるならば、その為にあいつを殺せ。あいつを“クリテロ”としてでなく、“邪魔者”として見ろ」

(主;^ω^)「……お」
457 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:50:47.96 ID:e5U/hMe20

('A`)「お前があいつを殺さなければ、お前の大切にしている全てが失われる。お前自身も殺される。
   殺す事で生かせ。生かす為に殺せ。所詮、人の命なんて命の上に成り立つもんだ。
   人の上に人がいて、人の下に人がいるから世界は成り立ってるんだ。それを考えろ」

(主;^ω^)「…………………」

('A`)「分かったか?」

(主;^ω^)「簡単には割り切れそうもないけど……そう思えるよう、頑張ってみるお」

('A`)「それで良い」

(;^ω^)「ドクオ……お前が良い奴なのか極悪人なのか、僕には分からないお」

('A`)「こんなに良い奴を目の前にして何を言っているんだか」

言って、ドクオは溜め息を一つ。

('A`)「さて、ブーンが全快するまでの間どうしようか」

( ^ω^)「僕はぐだぐだしてるお。傷を早く治すのが再優先だお」

('A`)「ジョンは?」

(主^ω^)「……僕はちょっとやりたい事があるお」

('A`)「何すんだ?」

ごそごそと、ジョンは懐を探る。 459 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:52:12.68 ID:e5U/hMe20

そこから出した物は―――DATの欠片だった。

(主^ω^)「依存はただの停滞だお。僕は君達に頼りっぱなしになるのは嫌なんだお。
       僕も、DATを武器として扱うお。クリテロのように、擬似異能者として。
       だから、ブーンが回復するまでにDATの扱いに慣れておきたいんだお」

(;^ω^)「DATを武器として……?そんな事出来るのかお?
      僕はてっきり、クリテロのDATが特別なのかと……」

(主^ω^)「僕のDATも、一応は武器化出来るお。
      ただ、僕のDATは使い過ぎると一時的に力を失ってしまうんだお。
      だから武器として使うのは避けたかったんだけど……そうもいかないみたいだし」

(:^ω^)「確かに、クリテロは強かったお。不意打ちでもしなければ、僕だけじゃ歯が立たなかったお」

('A`)「ほぉ、そんな強かったのか。楽しみだ」

(;^ω^)「ドクオ、すごく軽く見てないかお?」
463 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:53:25.52 ID:e5U/hMe20

('A`)「まぁな。遊びくらいにしか考えてない」

(;^ω^)「そんなんでどうすんだお!」

('A`)「戦闘の時に本気になれば良いだろ。そうでない時はゆとりを持とうぜ」

(;^ω^)「……僕が回復するまで、ドクオはどうすんだお?」

('A`)「俺は気の向くままに過ごすさ」

それから三人は、どうでも良い事をぐだぐだと話す。
彼等が就寝したのは深夜二時ほどだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

468 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:55:29.26 ID:e5U/hMe20


翌日。
ブーンとドクオに一言だけ残して、ジョンは家を出た。
向かう先は、己が最初に現れた公園。

十数分後、彼は公園に辿り着く。
彼の期待通り、公園には誰もいなかった。

ジョンはごそごそと懐を探り、DATを取り出す。

(主^ω^)「……さ、どんな“力”にするかお」

DATの欠片を手で弄びながら、彼は一人呟く。

(主^ω^)「クリテロの“力”に対抗出来るように、遠距離武器にするべきなのかお?
       それともブーンやドクオのような、ああいう“力”の方が良いのかお……?」

うなりながら、悩む。
数十分後、彼が出した答えは―――

(主^ω^)「……うん、決めたお」

呟いて、彼はDATの欠片を、左腕で掲げる。


471 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:57:47.78 ID:e5U/hMe20

(主´ω`)「僕のせいで、ブーンはあんな深手を負ったお。
       僕の世界を取り返す為とは言え、嘘を吐いた僕を護る為に。
       しかもこんどはドクオも協力してくれる。……こんな僕の為に」

掲げたDATの欠片に語りかけるように、ジョンは続ける。

(主´ω`)「僕は……もう、ブーンを傷付けたくないお。ドクオだって傷付けたくないお。
       だから……DATよ、僕に力を貸してくれお。
       騙して巻き込んでしまった二人を護れるだけの力を。
       そして、僕の世界を救えるだけの力を―――!」

掲げ上げたDATを力強く握り、叫ぶ。


(主`ω´)「DATよ!僕に力を貸せお!!」


その言葉に呼応するように、DATがまぶしく光り輝いた。

そして、DATが消えていく。
否―――DATが、己を掲げ上げている彼の左腕に、吸い込まれていく。
ゆっくりと、ゆっくりと。

その姿が見えなくなるまで吸い込まれた時―――今度はジョンの左腕に変化が起きる。


473 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 20:59:10.96 ID:e5U/hMe20

『ゴキリ』。音が響く。
左腕が硬質の物へと変化し、肌の色が白銀へと変化し、左腕の肘までが異形へと変わる。
その中でも特別眼を引くのは、その手の甲から飛び出る片刃の長い刃。

(主^ω^)「…………………」

変化が終わって、彼はその腕を振ってみる。
薄い刃が風を斬り、ヒュンという軽い音がした。

(主^ω^)「見た目と違って、全然軽いお。
       普通に腕を振ってるのとそう変わらないお」

今度は続けて二度振るってみる。

(主^ω^)「それに使いやすい。まるで最初から体の一部だったみたいだお」

呟いて、何度も連続で刃を振るう。
目の前に敵がいる事を想定して、縦に、横に、袈裟懸けに。

(主^ω^)「さて……こんなもんかお」

素振りを十数分ほど続けて、ようやくジョンは動きを止めた。
その額からは汗が流れ出ており、口元にはわずかに笑みが浮かんでいた。

(主;^ω^)「いけるお……これなら、僕も戦えるお。“力”が湧いて来るお。
        身体がいつもより軽い気がするお」

顎から垂れ落ちた汗の雫が、彼の刃で二つに分かれた。

475 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:00:30.35 ID:e5U/hMe20

その時。


「へぇーっ、何だか面白そうな奴がいるじゃん」


後ろからのそんな声が、彼の耳に届いた。

(主;^ω^)「誰だおっ!?」

勢いよく彼は振り返る。
そこにはオレンジ。

オレンジ色の髪をした女性が楽しそうに笑いながら、ジョンに歩み寄ってきていた。

从 ゚∀从「誰、だと?そりゃあ私はハインだよ。ハインリッヒ高岡。そういうあんたは?」

ジョンは警戒しながら、ハインと名乗る女性に答える。

(主;^ω^)「……僕はジョンだお。何の用だお?」

从 ゚∀从「いやー、あたしはいっつも暇を持て余している天才で最高の暇人なんだ。
      それは今日も例外じゃあなく、暇潰しになりそうな楽しい物を探して歩いてたんだけどさ」

(主;^ω^)「……?」

从 ゚∀从「何だか暇潰しには丁度良さそうな異能者を見付けちゃってよ」


477 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:01:56.64 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「な、何を言ってるんだお?」

从 ゚∀从「分かんないかなー」

『ゴキリ』。ハインの両腕を元として、音が爆ぜる。
ジョンはそれが何の音かをすぐに認識。大慌てでハインから大きく距離を取った。

从 ゚∀从「あんた、異能者だろ?あたしも異能者なんだよ」

ジョンの眼に映るのは、オレンジ。
オレンジの髪を持つ女性の、オレンジ色の異形の両腕。

ハインはその腕を持ち上げ、ジョンを指差して言う。

从 ゚∀从「戦り合おうよ。あたしの暇潰しの相手になってよ」

たんっ、とハインはジョンの答えを待たずに走り出す。

(主;^ω^)「お!?あんた何言ってんだお!?」

戸惑いながらも、ジョンは刃を構える。

从 ゚∀从「問答無用っ!!」

金属音。
ジョンの刃とハインの右腕がぶつかり合った。

从 ゚∀从「よっし、一撃で終わるザコ敵レベルじゃなさそうだな!加速するぜ!」


479 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:03:50.58 ID:e5U/hMe20

刃と腕が離れ、また打ち合う。ニ回、三回、四回五回。
六回打ち合った時、ジョンはまたもハインから大きく距離を取った。

(主;^ω^)「ちょっ!待てお!あんた何なんだお!」

从 ゚∀从「あたしはハイン様だっつってんだろうが!」

(主;^ω^)「聞きたい事はそんな事じゃなくて!」


从 ゚∀从「問答無用っ!!」


叫んで、ハインは腰からナイフを抜き出す。同時に投擲。

(主;^ω^)「おぉっ!?」

ジョンはそれを刃でガード。
それから息もつかぬ間にハインが走り寄って来た。

从 ゚∀从「はっはー!つーからナイフ一本パクっといて良かった!」

(主;`ω´)「くっ……!!」

ジョンは苦し紛れに刃を前に突き出す。
だがハインはそれを軽く横に回避。ジョンの胸をえぐるように殴りつけた。


482 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:05:18.10 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「うぇっ……!」

ジョンはうめいて、後ろに下がる。ハインは追って来なかった。
彼はハインが追って来ない事を不審に思い、ハインを見やる。そして驚きに眼を見開いた。

(主;^ω^)「!? な、何で……」

そのジョンの言葉を遮るように、ハインがジョンを指差す。
その手はオレンジの異形ではなく、幾筋か傷の走る普通の人間の腕だった。

ハインはいつのまにか“力”の解放を辞めていたのだ。

从 ゚∀从「次にお前は『何で“力”を封印したんだ?』と聞くっ!」

(主;^ω^)「何で“力”を封印したんだお?……はっ!?」

从 ゚∀从「はっはー!」

(主;^ω^)「……いや、本当に何でだお?」

从 ゚∀从「だってあんた弱いんだもん」

言って、ハインはふざけるようなファイティングポーズを取る。

从 ゚∀从「あたしの素手とあんたの左腕で戦って、ようやく勝負になるくらいだろ。
      あたしは一発食らえばすぐ致命傷。対するあんたはあたしの攻撃を何度も受けても痛いだけ。
      公平だろ?ははっ!」


484 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:06:53.87 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「公平……なのかお?」

从 ゚∀从「おっと、あんたの中の物差しであたしを計るんじゃねぇぞ。
     あたしは天才だ。あんたの考える以上のな」

(主;^ω^)「自分の事をここまで堂々と天才と言える人を初めて見たお……」

从 ゚∀从「だってあたしは誰もが認める天才だしな」

そこでハインは、幾筋か傷の走る己の両手を見やる。

从 ゚∀从「それにしてもあんたの“力”……面白いな」

(主^ω^)「お?何がだお?」

从 ゚∀从「鋭すぎる。さっきまで“力”を解放していたにも関わらず、あたしの両腕がずたずただ。
      普通、異能者の刃は人は容易く斬れても、異能者の変化した部位は傷付けられないもんなんだがな」

(主^ω^)「おー。思った以上に僕の“力”は強いのかお」

从 ゚∀从「おおよ。あんたの“力”は強い」

くくくっ、と、まるで悪戯っ子のように笑うハイン。

从 ゚∀从「強い相手は遊びがいがあるんだよなっ!」

心底楽しそうに笑って飛び出す。
ジョンは戸惑いながらも、その左腕を構える。

484 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:06:53.87 ID:e5U/hMe20

(主;^ω^)「公平……なのかお?」

从 ゚∀从「おっと、あんたの中の物差しであたしを計るんじゃねぇぞ。
     あたしは天才だ。あんたの考える以上のな」

(主;^ω^)「自分の事をここまで堂々と天才と言える人を初めて見たお……」

从 ゚∀从「だってあたしは誰もが認める天才だしな」

そこでハインは、幾筋か傷の走る己の両手を見やる。

从 ゚∀从「それにしてもあんたの“力”……面白いな」

(主^ω^)「お?何がだお?」

从 ゚∀从「鋭すぎる。さっきまで“力”を解放していたにも関わらず、あたしの両腕がずたずただ。
      普通、異能者の刃は人は容易く斬れても、異能者の変化した部位は傷付けられないもんなんだがな」

(主^ω^)「おー。思った以上に僕の“力”は強いのかお」

从 ゚∀从「おおよ。あんたの“力”は強い」

くくくっ、と、まるで悪戯っ子のように笑うハイン。

从 ゚∀从「強い相手は遊びがいがあるんだよなっ!」

心底楽しそうに笑って飛び出す。
ジョンは戸惑いながらも、その左腕を構える。

490 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:10:21.49 ID:e5U/hMe20

(主#^ω^)「…………………」

のそりと、ジョンは立ち上がる。
その額には青筋がピキピキと走っていた。

そして―――

(主#゚ω゚)「調子に乗んなおっ!!」

ジョンは大きく一歩踏み出す。
そして、左腕を大きく円を描くように振るった。

从;゚∀从「おおっと!危ない危ない!」

ジョンの豹変に驚きつつも、ハインは後ろに下がってそれを回避。

だが休む暇も与えずに、ジョンはそれを追う。
そして、明らかに慌てるハインに思いきり左腕を突き出した。

(主#゚ω゚)「おぉおぉぉぉ!!」

从;゚∀从「おぉおぉぉぉ!!」

腹を捉えようとしたジョンの刃。
だがその刃をハインは握り込む。その手からは血が噴き出た。

492 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:11:19.24 ID:e5U/hMe20


それからは一瞬の出来事。


ジョンの突きの勢いを利用して、ハインは彼を投げ飛ばす。
彼の体は少しの間宙を飛び、かなり離れた所で地面に叩き付けられた。

(主;^ω^)「うぇっ!」

妙な呻き声を出して、ジョンはそこに大の字で寝そべる。

从;゚∀从「危なかった。今のは正直危なかった。油断ってのは怖いもんだなー」

相変わらず口元に笑みを浮かべたまま、ハインはジョンに歩み寄る。
彼は流石に立ち上がる気力もなく、そこに大の字で寝そべったままだった。

从;゚∀从「あんためちゃめちゃ戦えるじゃんよ。最初からその気迫で来いってんだ」

(主;^ω^)「……おー」

从 ゚∀从「まぁ、それなりに楽しめたから良かったけどさ」

言って、彼女はくるりと向きを変える。
そしてジョンの方を見ないままにひらひらと手を振って見せた。
その手はやはり傷だらけで、血が滴り落ちている。

495 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:12:42.99 ID:e5U/hMe20

从   从ノシ「じゃあまた会おうぜ、ジョン少年。今度は最初から本気で戦り合おうぜ!」

(主;^ω^)「もうこんなのはごめんだお……」

彼がそう言い終えない内に、彼女はもう足を進めていた。

だが、すぐにピタリと動きを止めた。

从   从「あぁ、そうだ」

(主^ω^)「おー?」

从 ゚∀从彡クルッ「そんだけ“力”を上手く使って戦えるなら、もう十分戦えるだろ。
          あたしのトレーニングは中々のもんだろー?ひゃははっ!」

(主;^ω^)「なっ……!?」

「何で戦うって事を?」そう訪ねる前に、既にハインはジョンに背を向けていた。

从   从ノシ「はははー。じゃあなー」

ジョンはそれからしばらく寝そべっていた。

496 名前: 相場師(東京都) 投稿日: 2007/03/14(水) 21:13:42.74 ID:e5U/hMe20


(主^ω^)「あれが本当にトレーニングの為に戦ってくれたのだとしたら……。
       なるほど。本当にあの人は、紛れもなく天才だお」


(主^ω^)「…………………」

   _, ,_
(主^ω^)「いや、やっぱりトレーニングってのはおかしいお。やりすぎだお。
       やっぱり暇潰しじゃないかお?っつーか何で僕が戦うって事知ってんだお」


そんな事を呟いたりしながら。


太陽の柔らかい光の中、その表情は太陽の光のように柔らかな笑顔。

彼の心の中には「僕も戦える。あの二人を護れる」という、確かな自信が育っていた。


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最終更新:2007年03月14日 21:41