*  *  *

街の外れに佇む古風な屋敷。
その一室にて、私とヨーヨーマッの情報交換は続く。

『……では、先ほど行われた、荒木の第三放送に話を移しましょう』
「分かった。私も知りたい所だ」

――ちなみに我々は、今も肉声で会話をしている。
勿論、首輪の盗聴機能については、既に話を聞いている。
私はそれを知ると即座に筆談をヨーヨーマッに持ち掛けたのだが、
彼はあっさりとそれを断った。

『第四放送以降に参加者として街に入る、と荒木が宣言している以上、
 現状において、荒木に関する会話を書き言葉で行う事はほぼ無意味だと思いますね。
 荒木打倒の為に参加者が協力し合うのを許容している節の発言も、本人がしていますし。
 ジョルノ・ジョヴァーナのように『呼ばれる』心配ももう無いでしょう。
 元々あれはパフォーマンス的な意味合いが強い行動だったと思われますし、
 荒木は自身の能力に絶大な自信を持っている。
 参加者が反抗を狙っている可能性を、奴が想定していないはずがありませんよ。
 それに我々が幾ら頭を捻っても、結局、奴の予測の範囲内なのかも知れませんし……』
ヨーヨーマッはそのように語った。私も彼の意見に納得し、結果として今も筆談を使っていない。

『第三の放送が行われていたあの時。
 私が見る限り、だんな様は放心しておられましたよね?
 恐らく殆ど聞いていないのでしょう?』
「あ、ああ……正解だ。全然聞いていなかった。
 どうして分かったんだ?」
『見た通りの事を言ったまでですが……。
 放送内容の要約をだんな様に渡します。
 情報を整理しましょうかね』

ヨーヨーマッは彼が先ほどまで書いていたメモを私に遣して、語り始めた。

『まず、死亡者の発表ですね。
 驚くべき点は、この六時間の死者数です。
 なんと今までで最大の十五名。
 これは全くの予測外でしたよ。
 私は時間の経過につれて、徐々に死者数は低下していくと踏んでいたのですが。
 だんな様のお知り合いの名前はありませんかね?』

「そうだな……三、四人ほど、いるか」

花京院、そしてF・Fについては……何も言うべき事は無い。
全ては私の問題であり、責任だ。
私ができる償いは、彼等の遺志を継ぎ、荒木を打倒する事だけだ。しかし……。

先ほどヨーヨーマッの語ったホル・ホースの死に、私は愕然とした。
本来敵であるはずのジョージ・ジョースター卿を禁止エリアから護り、息絶えたらしい。
奴に比べて私は、何たる事をしていたのだろうか……。

「私は……一体……」
苦い過去に思いを馳せていた私に向けて、突如、ヨーヨーマッが喋り始めた。

『別に、私はだんな様の行動の是非に関して口出しするつもりはありませんけど、
 私が行うのは、だんな様を世話する事だけだと言う事をお忘れなく。
 悔やむのはだんな様一人がやればよろしい。
 他人に押し付ける行為に意味は無いですし、そもそも私は関係ありませんし……』

相変わらず何を考えているのか分からない、淡々とした口調で語り掛けるヨーヨーマッ。
彼の厳しい口調に、何故か私は励まされた。
過去を後悔していても意味は無い。
生き残った者たちは、未来に向けて行動しなければならないのだ。
そう諭された気がしたのだ。

「確かに……その通りだな……」
『分かればいいんですよ。
 では、次は禁止エリアについてです。良く聞いていてくださいね』
「ああ」
私は彼に向けて、大きく頷く。
ヨーヨーマッ……承太郎が去ってしまった今、
彼はこの街にて出会った私の唯一の、頼もしい仲間だ。
大切にしようと思う。共にエジプトに旅立った戦友たちと、同じ位に。

『禁止エリアは、午後7時から【I-6】、9時から【E-3】、11時から【E-7】。
 注目すべきは勿論、ここから近い【E-7】ですね。
 11時の時点から、屋敷から街の中央部に向かうには、東側の海を船で渡るか、
 西側を通る以外の手段は無くなります。
 つまり、もし残りの参加者が市街地に集まっているのであれば、
 この場所は絶好の隠れ場所となるのですよ。
 それに関連した一つの提案があるのですが、これについては後ほどに。
 ホテル周辺にももう近付けませんが、忘れ物はありませんよね?』
「いや……別に」
『禁止エリアについては、【E-7】について把握していれば問題ありません。
 今回の放送の最大の重要点は、最後の部分に他なりませんから』
「ああ、『第四放送時点から荒木が参加』と書いてあるな」
『Exactry(その通りでございます)。
 教会に引き篭もって我々を観察していた荒木が、遂に動き始めるのですよ。
 支給品を持ち首輪を付けて、同じ参加者として。
 奴の危険性と強さは、誰よりもだんな様が知っているはず』
「ああ、そうだな」

全ての始まりの場所――教会にて、荒木は私の『クロス・ファイヤー・ハリケーン』を難なく消滅させた。
奴に呼び出され、奴によって殺されたジョルノという少年が遺したメモによれば、
荒木のスタンドは、空間を自在に操る能力らしい。
その凶悪さ、おぞましさは、この世の全ての時間を停止させるDIOの『世界』に勝るとも劣らない。

『何よりも避けなければならないのは、第四放送後の荒木との接触でしょうね。
 しかし我々の所に、奴が来ないと思われる理由が幾つかあるのですがね……
 それについては後ほどお話しましょう。
 これまでの話に、何か疑問はありますか?だんな様』

 *  *  *

……やはり、奴は逃げるばかりでは無かった。
逃走を続けながら、俺への攻撃の隙を伺っていたのだ。

『星の白金』のパワーで数十メートルの距離を飛び上がり、
俺が新たなる家の屋上に着地した、正にその瞬間だった。

そこに至るまでの過程も存在せず、全く唐突なタイミングで。
……眼前に、煌びやかな刃の群が存在していた。

「『星の白金』!」
即座に、全世界の時を停止させる。
襲い来る包丁、ナイフ、フォークは頭部から胸元に向けて、その数四。
数こそ少ないが、停止時間は限られている。全ての防御が可能か否か――!?

「オラ――――!」

止まった世界の中、綺麗に空中に停止した刃の並びを、
『星の白金』の拳が、全速力で弾き飛ばしていく。

「――オラオラオラオラオラァ!」

そして、全てが動き出す。時間差で送り込まれてきた包丁の一本を、
『星の白金』の足が、コンマ一秒の契機を逃さず蹴り飛ばす――。
ギリギリだったが、防御は成功した。

そして真っ直ぐに、眼を向ける。俺の視線はビルの屋上に佇むDIOを射る。
奴は、150メートル先で振り返り、こちらの様子を伺っていた。
DIO……次は俺の番だぜ。
『星の白金』の脚部に全集中力を預け、飛翔方向の修正を行う。
そして、奴目掛けて飛び上がろうと、脚に力を込め――!?

「――ッ!?」

俺の身体は……グラリと傾いた。

 *  *  *

バランスを失った身体は、民家の屋根から無様にも落下し、そのまま路面に激突した。
どうやら、『星の白金』のスタンドエネルギーが限界に達したらしい。スタミナ切れって奴だ。
着地衝撃の保護さえ、ままならない。
直に衝突した左肩の骨がへし曲がる音が聞こえる。これはバキ折れたな……。

路面に倒れた体勢で、俺はようやく気付く。
スタンドだけではない。俺の肉体も、極限までに疲労していたのだ。
『ハムスタンド』だ。奴の攻撃が、俺の体力を底から吸収し尽くしていた。
停止した世界の中で、アヴドゥルを殺しに掛かったDIOにラッシュを叩き込み、奴を屋敷から吹き飛ばした。
時を幾度も停止させながら逃げるDIOを追い、たった今、例のナイフ攻撃を防御した。
ここまでやれただけでも、奇跡的と言っていい。それ程までに俺は疲弊していた。
チッ、指一本動かせねェ。二、三時間程度、ここで休む必要がありそうだぜ。

崩れ落ちたままの姿勢で、俺の瞳だけは奴の姿を追い続けている。
DIOは俺に止めを刺しに戻らず、移動を続けていた。
足を封じた時点で、もう既に敵では無いと考えているのだろうか。
『仲間』と落ち合い、布陣を固めた状態で改めて殺しに掛かるのだろうか?

だが……すぐに俺は自分の眼を疑う事になる。
このまま『西』に向かうと思われていた奴は、驚くべき行動を取ったのだ。
DIOは……“左側――すなわち『南』に方向転換をした”。

「…………!」
『世界』と共に、南に向けて飛翔し始めた奴の動きを見て、初めて。
俺は、奴の『逃走』の意味を理解した。
DIOは、始めから『西』などには向かっていない。
奴が目指していたのは、『南西』だったのだ。
緊張と疲労の為に、俺は忘れていた。『禁止エリア』の存在を。
踏み入れば首輪が爆破してしまう【D-6】のエリアを回避し、『目当てのもの』がある南西へと移動する。
DIOの目的は、それだったのだ。

俺は、奴が向かう先に『何』が待ち受けているかを知っている。
そして奴も、分かっているのだろう。
『目当てのもの』の位置を、その肉体で、感覚で理解しているのだ。

……ジョージ・ジョースター。
あの男は、俺の先祖だ。
出会った瞬間から――いや、出会う前から――頭でなく、心で理解していたぜ。
言葉を使わずとも、名前を聞かずとも、その瞳を見た瞬間に、ジジイの身内だと分かった。

DIOの首から下の肉体は俺の先祖、ジョナサン・ジョースターのもの。
その為に、他の誰よりもジョースターの一族の血液が奴の身体に『合う』らしい。
もしジョージが殺され、その血が奪われれば、奴の力は倍増する。
それは前の世界での戦いで、十分に承知している。
『世界』の停止時間も、圧倒的に増加するだろう。
俺の時間停止でさえ対応が難しくなる。非常に危うい事態だ。

DIOが求めていたのは、『仲間』ではなく、『宿敵』。
そしてジョースター卿は、スタンドを持たない只の無力な人間。
この状況はヤバイ、ヤバ過ぎるぜ……!

 *  *  *

空条承太郎、見るも無様だよ。
スタミナ切れの為に、もう一歩も動けないのだから。
『養分』を奪うとかのスタンドを持つ噴上祐也をぶつけたのは幸運だったかな?
奴は放送前にくたばったらしいが、始末の手間が省けただけでそれも良し、だ。

フゥ――――ッ。
でもな、正直な話、“時間の停止した『世界』に入り込み、
私にスタンドのラッシュを叩き込んできた”時には、実に、実に驚いたんだよ、承太郎。
この帝王DIOさえもが、ほんの少しだけ『恐怖』を味わってしまった瞬間だったよ。

自分でも良く実感が沸かないのが奇妙だが、その『恐怖』が理由なんだろうね――
私は今、君の元に戻っていない。『目的のもの』への前進を、一切止めていない。

私は、君が恐ろしく機転の利く人物で、例えば、
“わざとスタミナ切れになったフリをして隙を見せ、機を伺い私を攻撃する”
ような、卑怯な行いをする人物だと理解したんだよ。
私と同じ『停止した時の中に入り込む』スタンドを持つのなら尚更、用心に越した事は無いだろ?
だから、勝手ながら今回の勝負は一まず中断とさせて貰うよ。
君の頭をその学帽ごと叩き潰して血液を頂くのは、
私が『目的のもの』を手に入れてからでも、遅くないだろう?

もしかしたら、酷い勘違いをしているかも知れないから敢えて言わせて貰うけど、
背中を見せて立ち去る私を見て、承太郎、君は
“私が部下の元に逃げようとしている”とでも考えていたのではないかな?
そうだとしたら、大ハズレだ。我が無能な部下は、先の放送で全員死んだよ。

君のスタンドが時を止められると判明した以上、現在の私の目的はただ一つだよ。
それはジョースターのEXTRACTの奪取。
承太郎、君も感じているんだろう?
南西の方角に二つ程の、ジョースターの気配が存在している事に。

古き友人が与えてくれた、我がボディに対応した血液。
何としてでも、手に入れたいね。
もしもジョースターが仲間と身を挺して抵抗、なんて野暮な手段を取るのなら、
『世界』で友達もろとも皆殺しにするまで。
問題は何一つ無いさ。プランは順調に進んでいる。
ジョースターのEXTRACTを奪い、我がボディと『世界』が完成された暁には、
君の元に再び戻ってあげるよ、承太郎。
楽しみにして待っていてくれ。でも、その頃にはもう力尽きて死んでるかな?
完成された『世界』ならば、ワムウだろうが荒木だろうが指一本で一捻りさ。
全ての力は私の掌の上に集約し、私はその頂点に君臨する。
想像するだけで、心がハイになってくるじゃあないか。
実に。実に気分がいいぞッ!

 *  *  *

「そういえば、お前と話し始めてから何かが妙だとは思っていたのだが……」

私は、会話の最中にふと浮かんだ疑問を、
ヨーヨーマッに向けて口に出した。

「私の背中の『チープ・トリック』だ。
 私の身体に取り憑いて以来、常にベラベラとうるさかったコイツが、
 どうしてお前と出会ってから一言も言葉を発していないのだろうか?
 何か分かるか?」

『ああ、彼の事ですか……』

それがさも当然かの如く、ヨーヨーマッは淡々とした調子で語り始めた。

『彼の能力の一つは、既に封印されていますよ。
 もうその鬱陶しいスタンドは、もう貴方に下手に語り掛けられません』
「……!?」
『……既に説明しましたよね。
 だんな様から私に対して、『自害しろ』と言う命令は不可能です。
 ですが、一定の条件を満たした場合なら……
 例えば、『チープ・トリックが何らかの無駄口を叩いてきた時、だんな様の背中を見ろ』と言う命令の形ならば、
 その遂行は可能なんですよね』
「お前が私の背中を……!?
 待てッ、そんな事をしたら私の命は」
『ハイ、私がだんな様の背中を見た場合、
 『チープ・トリック』は私に移動し、だんな様は死亡します。
 ですが……考えてみて下さい、“その時は奴もタダでは済みませんよ”』

『ヨーヨーマッ』の顔がニヤついている。
実に愉快そうな、イヤらしい表情。

「『私の消滅条件』を覚えていますか?
 一つは、『私の所有権を持つ人物と20メートル以上離れる事』。
 そしてもう一つは、『私の所有権を持つ人物が死ぬ事』です。
 ……気付きました? 私がもしだんな様の背中を見たら、だんな様は死にます。
 しかしその瞬間に『チープ・トリック』が乗り移った私も消滅する訳で、
 さらになし崩し的に『本体』を失ったそいつも死んでしまうんですよ。
 彼も馬鹿ではありませんねぇ……私が『ルール』を話した瞬間から黙り込んでしまって。
 奴は何も話せなくなってしまったのです。
 我々に、不死身だったはずの命を握られているのですからね。
 もうどんな言葉も、『ささやき』も、許されない』

「……!」
私は、目の前の『ヨーヨーマッ』の言葉にただただ圧倒されていた。
気付かなかった。私の背中に取り付いて離れない、この恐るべきスタンドの『弱点』に。

『ククッ……! その『チープ・トリック』、話を聞く限り無敵のスタンドに思えますが、
 少しだけ頭を捻らせれば、対抗手段は簡単に見出せるんですよ。
 その名の通り、『くだらない仕掛け』と言う訳です。
 ククククッ……! アッハッハハハハアァァァァ』

腹を抱えて爆笑し始めた『ヨーヨーマッ』をよそ目に、
私は背中の『チープ・トリック』の様子を確認した。

『…………ッ』

奴は、黙り込んでいた。
これまでに見た事も無い、必死な表情で。
良く観察すると、僅かにブルブルと震えている。
奴は恐怖していた。不死身の存在であるはずの自らに襲い掛かろうとしている『死』に。
……いい気味だ。奴は私をとかく悩ませてくれたからな。
危険な状況が変わった訳ではないが、
もう奴に無駄口は許されなくなった。コイツに一矢報いられたのは、実に気分がいいぞッ。

『……アハッハハハハハハァァッ、アヘラアヘヘヘェェェェ』
それにしても、いい加減に笑うのを止めて欲しいな。
我が頼もしき、相棒よ。

 *  *  *

ヨーヨーマッが、ようやく笑いを終えた。
壁時計を見ると、時刻は午後7時を過ぎている。
一時間以上、我々はこの場所で話し合っていたのだ。

『では、情報交換も一通り済ましましたし、
 そろそろ我々も行動方針を決めましょうかね』
「ああ、そうだな……だが、我々は一体何処に向かえば良いのだろうか。
 ヨーヨーマッ。お前はどう思う?」
『考えられる選択肢としての目標場所なら、駅……でしょうね。
 承太郎様も集合場所にしようとしていましたし。
 ですが、一つ気になる点がございます』
「ジョージ・ジョースター達と出会った際の事だろう?
 彼らにとって私は『敵』だ。下手に近付いてしまうと、事態がどう動くか分からない。
 私が攻撃されるのは良いとしても、彼等が混乱してしまうのは避けなくてはならない」
『はい……だんな様でもその程度の判断はしていましたか。
 仰るとおり、そこが最大の問題なんですよね。
 だんな様は、ジョージ・ジョースター様達のチームを攻撃し、分裂させました。
 現在でも危険人物――荒木の思惑に乗った一人として認識されているでしょう。
 いやそれどころか、だんな様が『悪』である情報が、
 生き残っている参加者達に広まっている可能性さえあるのです。
 状況は、より厄介になっていると考えて良いと思いますよ。
 だんな様の汚名を晴らすのは限りなく難しい』
「……ううむ」
『ですから、私は一つの提案をしたい』

『ヨーヨーマッ』は人差し指を立て、
テーブルにそのずんぐりとした身体を乗り上げさせた。

『“待ってみる”と言うのはどうでしょう、だんな様?
 下手に動くとあなたも他の参加者も、危険に晒される事になってしまいますからね……。
 先ほどの放送で発表された死亡者……その数十五人ですよ。
 この街を取り巻く状況は緊迫化、複雑化の一途を辿っています。
 『敵』であるだんな様が下手に行動すれば、それに拍車を掛けかねない。
 だから、この家に一まず待機するのですよ。
 第四放送までか、場合によってはそれ以降も。
 ……承太郎様もDIOも行ってしまいましたが、もうあの二人はこの屋敷に戻ってこないでしょう。
 吸血鬼のDIOは日光を避ける為に、臨時的にここを使っていたのですからね』
「……盲点だったな……。待機、とは」

現在の私を取り巻く状況を考えれば、かなりいいアイデアかも知れない。
私も疲労しているので休息を取りたいし、
背中の『チープ・トリック』も事実上の『軟禁』状態になる。
奴と一緒にいる限り、被害を防ぐためにも第三者との接触を避けるのが最善の選択だ。

『問題は先ほども申した通り、第四放送後に荒木が運悪くあなたの元にやってきた場合です。
 戦闘となれば一対一。ほぼ間違いなく殺されるでしょうが、
 だんな様は“そいつ”を背中に持っているのです。
 荒木にとっても危険だと思うんですよね、“そいつ”の存在は』

なる程、『チープ・トリック』が背中に取り付くような事態になれば、
あの荒木と言えども危険な状況に追い込まれるのは必至。
奴としてもそれは避けたいはずだ。
私はずっとコイツを最悪の支給品だと思っていたが、
視点を変えれば、荒木さえ封じる最強の牽制武器なのだ。

『それに、奴は大勢に向けて圧倒的パワーを見せ付け、楽しむ事を良しとするタイプの人間です。
 ならば、屋敷にひっそりと隠れているだんな様一人を殺すためだけにこちらに赴くでしょうか?
 意味が無い行為だと思いませんか?私は荒木は来ないと考えますね。
 どうでしょう、だんな様?“待ってみる”選択肢は』

ヨーヨーマッは冷静で、頭も回る。
つい時折の感情で動いてしまう私とは対照的に、
状況を的確に判断する能力も十分に備えている。
極めて異常なこの事態の中で、ベストパートナーと呼べる存在だ。

「……よし。お前の案を取ろう」

いいだろう。
お前の強靭な『忠誠心』と……
その黄金のような『夢』に賭けよう。ヨーヨーマッ。
同盟、結成だ。


To Be Continued...

【吉良吉影宅(C-8)/1日目/夜(午後7時過ぎ)】

【波紋の達人と幽波紋の達人 B班 解散】

【ヨーヨーマッと哀れな主人】

【モハメド・アヴドゥル】
[スタンド]:『マジシャンズ・レッド』
[時間軸]:
[状態]:胴体、両肩にダメージ。両腕が辛うじて動かせる程度。やや疲労
[装備]:背中に『チープ・トリック』
[道具]:支給品一式(食糧のみ2人分)
[思考・状況]:
1)第四放送まで屋敷に待機し、休息する。それ以降は第四放送の内容を判断
2)ヨーヨーマッを強く信頼
3)打倒荒木を目指す者と出会っても、混乱させてしまうため出会いたくない
4)打倒DIO。しかし自分の能力では勝てないと確信
5)打倒荒木。一人でも多くの人たちを元の世界へ返す。それが、俺が今出来る贖罪だ
6)屋敷にいる間はチープ・トリックは放置。荒木への防衛策にもなる

[補足1]:アヴドゥルは承太郎と情報交換を行なっていません。
[補足2]:アヴドゥルはヨーヨーマッから情報を得ました。

【ヨーヨーマッ(支給品)】
[現在の主人]:モハメド・アヴドゥル
[装備]:マスク
[持ち物]:拡声器
[任務]:
1)アヴドゥルを“助ける”
[補足]
1)ヨーヨーマッは攻撃出来ない。能力も完全に封じられている(主人がヨーヨーマッ自体を利用して攻撃というのは可能かも知れない)。
2)主人の命令には絶対服従、しかし命令を曲解して受け取る事もあるかも知れない(ヨーヨーマッを殺すような命令には従えない)。
3)ヨーヨーマッは常に主人の半径20m以内に居なければならない。
4)ヨーヨーマッの主人が死んだ時、又はヨーヨーマッが規則を破ったならヨーヨーマッは消滅。
5)主人変更の命令があれば主人は変わる。但し変更対称人物の同意が必要。
6)主人変更の命令をされた時、次の主人がヨーヨーマッの視界に入っていなければ命令は無効化される。


【市街地(C-6)/1日目/夜(午後7時過ぎ)】

【空条承太郎】
[スタンド]:『スタープラチナ』
[時間軸]:ロードローラーが出て来る直前
[状態]:左肩骨折。体力、スタンドエネルギーの著しい消耗状態。身体が動かせない。数時間の休息が必要。
[装備]:無し
[道具]:支給品一式
[思考・状況]:
1)暫くの間休む。周囲を警戒
2)DIOがジョージの血を奪ったら非常にヤバイ
3)DIOを斃した後、カフェ・ドゥ・マゴに戻る。
4)打倒荒木

[補足1]:承太郎はアヴドゥルと情報交換していません。

【市街地(C-5)/1日目/夜(午後7時過ぎ)】

【DIO】
[スタンド]:『ザ・ワールド』
[時間軸]:ポルナレフ対ヴァニラ・アイスの直前
[状態]:ラッシュによる傷はほぼ回復。健康。気分はハイ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式(ランダムアイテムなし)
[思考・状況]:
1)南西のジョースターの気配(ジョージ、仗助)を追跡、殺害し、EXTRACTを奪いボディを完璧とする。
 その為の邪魔者は皆殺しにする
2)時を止められる承太郎を警戒。
 勝利を完璧なものにする為に、ジョースターの血液を得た後に承太郎の元に戻り、彼を殺害する
3)優勝し、荒木も殺害する
4)ナランチャを発見次第殺害する
5)首輪の解除は必須ッ!
6)ワムウ(柱の男の肉体が欲しい)、首輪解除に役立つ者の探索
7)手下が全滅した以上、もう杜王グランドホテルに用は無いと判断

[補足1]:DIOは承太郎が時を止められる事を知りました。


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キャラを追って読む

115:『くだらない仕掛け その①』 空条承太郎 121:『箱庭の開放』(前編)~絶大は絶対の前には無力~
115:『くだらない仕掛け その①』 モハメド・アヴドゥル 121:『箱庭の開放』(前編)~絶大は絶対の前には無力~
115:『くだらない仕掛け その①』 DIO 117:愛と夢(前編)

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最終更新:2009年09月20日 11:17